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特開2024-159069電解銅めっき液の再生処理方法および電解銅めっき液の再生処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159069
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電解銅めっき液の再生処理方法および電解銅めっき液の再生処理システム
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/18 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
C25D21/18 H
C25D21/18 C
C25D21/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074822
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡町 琢也
(72)【発明者】
【氏名】立花 眞司
(72)【発明者】
【氏名】田邉 克久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅亮
(72)【発明者】
【氏名】小田 幸典
(57)【要約】
【課題】電解銅めっき液における有機不純物の濃度をめっき液の継続使用が可能な基準以下に低下させて、めっき液の再建浴を行うことなく、めっき液を再生することができる電解銅めっき液の再生処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】銅イオンと、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤とを含有する電解銅めっき液の再生処理方法であり、電解銅めっき液を酸化して、電解銅めっき液中の有機不純物を分解する紫外線・オゾン処理工程と、紫外線・オゾン処理工程が行われた電解銅めっき液を活性炭と接触させることにより、電解銅めっき液から有機不純物を除去する活性炭処理工程とを少なくとも備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオンと、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤とを含有する電解銅めっき液の再生処理方法であって、
前記電解銅めっき液を酸化して、該電解銅めっき液中の有機不純物を分解する紫外線・オゾン処理工程と、
前記紫外線・オゾン処理工程が行われた前記電解銅めっき液を活性炭と接触させることにより、前記電解銅めっき液から前記有機不純物を除去する活性炭処理工程と
を少なくとも備えることを特徴とする電解銅めっき液の再生処理方法。
【請求項2】
前記電解銅めっき液を収容するめっき槽から該めっき液を循環させることにより、前記有機不純物が分解・除去された前記電解銅めっき液を前記めっき槽に戻すことを特徴とする請求項1に記載の電解銅めっき液の再生処理方法。
【請求項3】
前記電解銅めっき液が硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解銅めっき液の再生処理方法。
【請求項4】
銅イオンと、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤とを含有する電解銅めっき液の再生処理システムであって、
前記電解銅めっき液を酸化して、該電解銅めっき液中の有機不純物を分解する紫外線・オゾン処理装置と、
紫外線・オゾン処理工程が行われた前記電解銅めっき液を活性炭と接触させることにより、前記電解銅めっき液から前記有機不純物を除去する活性炭処理装置と
を少なくとも備えることを特徴とする電解銅めっき液の再生処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅めっき液の再生処理方法および電解銅めっき液の再生処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品分野において、有機パッケージ基板、フレキシブル基板やシリコンウェハ基板上にフォトレジストで形成されたパターンへ電解銅めっき皮膜を形成することが行われている。
【0003】
ここで、電解銅めっき処理においては、電解銅めっき液を使用して電解処理を行い続けると、時間経過に伴い、添加剤の分解に伴う副生成物やフォトレジストの溶出物等の有機不純物が増加するため、めっき性能が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、この対策として、活性炭を使用して有機不純物を除去する方法が提案されている。より具体的には、活性炭カートリッジを使用して、定期的に有機不純物(例えば、プロパンジスルホン酸のナトリウム塩と低分子化したポリエーテル)の除去を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/174705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、レベラー、ブライトナー、及びキャリアー等の添加剤を含有する電解銅めっき液を使用して電解処理を行い続けると、上述のごとく、時間経過に伴い、添加剤の副生成物等の有機不純物が増加するが、上記特許文献1に記載の電解銅めっき液の処理方法においては、活性炭カートリッジを使用して、定期的に有機不純物を除去する処理のみを行うため、有機不純物の増加に十分に対応することができず、有機不純物を効率よく除去することができない。
【0007】
従って、時間経過に伴い、電解銅めっき液における有機不純物の濃度が増加して、めっき性能が低下するため、めっき液の再建浴を行う必要があるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑み、電解銅めっき液における有機不純物の濃度をめっき液の継続使用が可能な基準以下に低下させて、めっき液の再建浴を行うことなく、めっき液を再生することができる電解銅めっき液の再生処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電解銅めっき液の再生処理方法は、銅イオンと、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤とを含有する電解銅めっき液の再生処理方法であって、電解銅めっき液を酸化して、電解銅めっき液中の有機不純物を分解する紫外線・オゾン処理工程と、紫外線・オゾン処理工程が行われた電解銅めっき液を活性炭と接触させることにより、電解銅めっき液から有機不純物を除去する活性炭処理工程とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電解銅めっき液の再生処理システムは、銅イオンと、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤とを含有する電解銅めっき液の再生処理システムであって、電解銅めっき液を酸化して、電解銅めっき液中の有機不純物を分解する紫外線・オゾン処理装置と、紫外線・オゾン処理工程が行われた電解銅めっき液を活性炭と接触させることにより、電解銅めっき液から有機不純物を除去する活性炭処理装置とを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外線・オゾン処理工程、及び活性炭処理工程を行うことにより、電解銅めっき液における有機不純物の濃度をめっき液の継続使用が可能な基準以下に低下させて、電解銅めっき液を再生することが可能になるため、めっき液の再建浴をすることなく、半永久的に電解銅めっき液を継続使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の電解銅めっき液の再生処理方法を説明するための図である。
図2】本発明の電解銅めっき液の再生処理方法において使用される紫外線・オゾン処理装置を説明するための図である。
図3】本発明の電解銅めっき液の再生処理方法の変形例を説明するための図である。
図4】実施例1における電解銅めっき処理を説明するための図である。
図5】実施例1におけるビアホールフィリングめっきの窪み量の測定方法を説明するための図である。
図6】実施例1におけるTOC(Total Organic Carbon)値の測定結果を示す図である。
図7】実施例1におけるビアホールフィリングめっきの窪み量の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電解銅めっき液の再生処理方法について説明する。
【0014】
<被処理めっき液>
本発明の再生処理方法が適用されるめっき液は、電解銅めっき液であり、この電解銅めっき液としては、特に限定されないが、例えば、硫酸銅めっき液、シアン化銅、ピロリン酸銅等が挙げられる。以下、本発明においては、再生処理方法が適用される電解銅めっき液として、硫酸銅めっき液を例に挙げて説明する。
【0015】
この硫酸銅めっき液としては、例えば、水を溶媒とし、硫酸イオン等の電導塩と、銅イオンと、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤と、塩化物イオン源とを含有するめっき液が挙げられる。
【0016】
電導塩の供給源としては、特に限定されず、例えば、硫酸、硫酸銅、メタンスルホン酸、及びこれらの水和物(例えば、硫酸銅5水和物)等を使用することができる。なお、これらの電導塩の供給源は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
また、硫酸銅めっき液中の硫酸イオンの濃度は、特に限定されないが、めっき皮膜の均一性とフィリング性能を向上させるとの観点から、1~300g/Lが好ましく、50~200g/Lがより好ましい。
【0018】
銅イオンの供給源としては、特に限定されず、例えば、硫酸銅、メタンスルホン酸銅、含リン銅、酸化銅、及びこれらの水和物(例えば、硫酸銅5水和物)等を使用することができる。なお、これらの銅イオンの供給源は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
また、硫酸銅めっき液中の銅イオンの濃度は、特に限定されないが、めっき皮膜の均一性とフィリング性能を向上させるとの観点から、5~90g/Lが好ましく、20~50g/Lがより好ましい。
【0020】
塩化物イオンの供給源としては、特に限定されず、例えば、塩化ナトリウムや塩酸等を使用することができる。なお、これらの塩化物イオンの供給源は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
また、硫酸銅めっき液中の塩化物イオンの濃度は、特に限定されないが、めっき皮膜の均一性とフィリング性能を向上させるとの観点から、0.1~300mg/Lが好ましく、0.5~100mg/Lがより好ましい。
【0022】
また、硫酸銅めっき液は、添加剤としてレベラーを含有してもよい。このレベラーとしては、窒素含有有機化合物が使用され、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体、部分3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル化ジアリルアミン塩酸塩・ジアリルジメチルアンモニウムクロリド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、アリルアミン塩酸塩重合体、アリルアミン(フリー)重合体、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアミンとエポキシの重合物、モルホリンとエピクロロヒドリンの重合物、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε-カプロラクタムからなる重縮合物のエピクロロヒドリン変性物、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリビニルイミダゾール及びその誘導体、ポリビニルアルキルイミダゾール及びその誘導体、ビニルピロリドンとビニルアルキルイミダゾール及びその誘導体とのコポリマー、ヤヌスグリーンBなどの染料等を使用することができる。なお、これらのレベラーは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
また、硫酸銅めっき液中のレベラーの濃度は、特に限定されないが、めっき皮膜の均一性と表面形状のフラット性を向上させるとの観点から、0.01~3000mg/Lが好ましく、0.05~2000mg/Lがより好ましい。
【0024】
また、硫酸銅めっき液は、添加剤としてブライトナーを含有してもよい。このブライトナーとしては、硫黄含有有機化合物が使用され、例えば、下記式(1)~(3)で表される硫黄含有化合物を使用することができる。なお、これらのブライトナーは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
【化1】
【0026】
(式中、R1は水素原子、または-(S)m-(CH-(O)-SOMで示される基、R2は各々独立して炭素数1~5のアルキル基、Mは水素原子又はアルカリ金属、mは0または1、nは1~8の整数、pは0または1である。)
より具体的には、例えば、有機チオ化合物や有機酸アミド類、酸素含有高分子有機化合物等を使用することができる。
【0027】
また、硫酸銅めっき液中のブライトナーの濃度は、特に限定されないが、0.01~1000mg/Lが好ましく、0.05~500mg/Lがより好ましい。
【0028】
また、硫酸銅めっき液は、添加剤としてキャリアーを含有してもよい。このキャリアーとしては、ポリエーテル化合物が使用され、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらのコポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等のエーテル結合(-O-)を4個以上含有するポリアルキレングリコールを含む化合物を使用することができる。なお、これらのキャリアーは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
また、硫酸銅めっき液中のキャリアーの濃度は、特に限定されないが、均一電着性を向上させるとの観点から、5~5000mg/Lが好ましく、10~3000mg/Lがより好ましい。
【0030】
また、硫酸銅めっき液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他の添加剤を使用することができる。また、硫酸銅めっき液を用いてめっき被膜を形成する際には、めっき液のpHは1以下となる。
【0031】
また、めっき皮膜を形成する際の温度は、特に限定されないが、20~50℃が好ましい。また、めっき皮膜を形成する際の電流密度は、特に限定されないが、0.1~10A/dm2が好ましく、0.5~8A/dm2がより好ましい。
【0032】
硫酸銅めっき液は、例えば、半導体チップやパッケージ基板のめっきバンプの形成に用いることができる。めっきバンプを形成する場合には、所定の位置に所定のサイズのめっき被膜を形成した後、リフロー処理を行えばよい。このリフロー処理は、特に限定されず、通常のリフロー装置を用いて行うことができる。
【0033】
<電解銅めっき液の再生処理方法>
上述のごとく、レベラー、ブライトナー、及びキャリアー等の添加剤を含有する電解銅めっき液を使用して電解処理を行い続けると、時間経過に伴い、添加剤の副生成物(例えば、キャリアーの分解に伴う副生成物であるカルボン酸)、及びフォトレジストの溶出物等の有機不純物が増加し、結果として、めっき性能が低下するという問題があった。
【0034】
そこで、本発明者らは、上記問題点について検討したところ、上記不純物が含まれる電解銅めっき液を循環させて、紫外線・オゾン処理により有機不純物を分解するとともに、活性炭と接触させて有機不純物を除去することにより、めっき液における有機不純物の濃度をめっき液の継続使用が可能な基準以下に低下させ、電解銅めっき液を再生することが可能になることを見出した。
【0035】
以下、図面を用いて、本発明の電解銅めっき液の再生処理方法について具体的に説明する。図1は、本発明の電解銅めっき液の再生処理方法を説明するための概略図である。
【0036】
図1に示すように、本発明の電解銅めっき液の再生方法は、めっき槽2に収容された電解銅めっき液1(すなわち、上述のレベラー、ブライトナー、及びキャリアー等の添加剤を含有する電解銅めっき液)を、電解銅めっき液1の循環経路に配置された紫外線・オゾン処理装置9により酸化して、電解銅めっき液1中の有機不純物(すなわち、添加剤の副生成物やフォトレジストの溶出物等の有機不純物)を分解する紫外線・オゾン処理工程と、紫外線・オゾン処理がされた電解銅めっき液1を、電解銅めっき液1の循環経路に配置された活性炭処理装置3内に収容された活性炭4と接触させることにより、電解銅めっき液1に残存する有機不純物(すなわち、上述の紫外線・オゾン処理工程において、分解しきれなかった有機不純物)を除去する構成としている。
【0037】
なお、図1に示すように、めっき槽2には、不溶性アノード(酸化イリジウム)により形成されたアノード7と、被めっき部材である基板(カソード)8が、電解銅めっき液1に浸漬した状態で設置されている。
【0038】
(紫外線・オゾン処理工程)
電解めっき処理において使用された電解銅めっき液1は、めっき処理が行われためっき槽2からポンプ(不図示)により、電解銅めっき液1の循環経路に配置された紫外線・オゾン処理装置9における処理槽に送られる。
【0039】
この紫外線・オゾン処理装置9としては、例えば、図2に示すように、電解銅めっき液1を収容する処理槽10と、処理槽10に収容された電解銅めっき液1を循環させるためのポンプ11と、オゾンに変換される酸素が収容された酸素ボンベ12と、酸素ボンベ12に接続され、酸素ボンベ12から供給された酸素をオゾンに変換するオゾン発生装置13と、オゾン発生装置13に接続され、オゾン発生装置13において発生したオゾンを、循環する電解銅めっき液1中に分散させるエジェクター14と、エジェクター14及び処理槽10に接続され、循環する電解銅めっき液1に対して紫外線を照射する紫外線照射装置15が設けられたものが使用できる。
【0040】
そして、紫外線・オゾン処理装置9において、酸素ボンベ12から供給された酸素がオゾン発生装置13においてオゾンに変換された後、エジェクター14により、オゾン発生装置13において発生したオゾンが、循環する電解銅めっき液1中に分散されることにより、電解銅めっき液中の添加剤(上述のレベラー、ブライトナー、及びキャリアー)と有機不純物が二酸化炭素と水に分解される。
【0041】
より具体的には、例えば、キャリアーとしてポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコールモノエチルエーテル)を使用した場合、まず、下記式(4)に示すように、式(A)で表されるポリエチレングルコールモノエチルエーテルのエーテル結合(-O-)がオゾンにより切断され、式(B)で表されるカルボン酸(酢酸)が生成する。
【0042】
【化2】
【0043】
次に、下記式(5)に示すように、電解銅めっき液中の溶存酸素と生成した酢酸とが反応して、式(C)で表されるジカルボン酸(シュウ酸)が生成する。
【0044】
【化3】
【0045】
次に、下記式(6)に示すように、電解銅めっき液中のオゾンにより、式(C)で表されるシュウ酸における炭素-炭素結合が切断され、式(D)で表されるカルボン酸(ギ酸)が生成するとともに、二酸化炭素が発生する。
【0046】
【化4】
【0047】
そして、下記式(7)に示すように、電解銅めっき液中の溶存酸素により、式(D)で表されるギ酸が二酸化炭素と水に分離される。
【0048】
【化5】
【0049】
また、紫外線照射装置15により、循環する電解銅めっき液1に対して紫外線が照射されることにより、上述のオゾン処理による酸化反応の効率が高まることになる。
【0050】
なお、紫外線・オゾン処理時の処理温度は特に限定されないが、常温~50℃が好ましい。これは、処理温度が常温未満の場合は、反応速度が低下して酸化効率が低下する場合があり、処理温度が50℃よりも高い場合は、電解銅めっき液1中におけるオゾンの溶存量が減少して酸化効率が低下する場合があるためである。
【0051】
(活性炭処理工程)
次に、紫外線・オゾン処理装置9において処理された電解銅めっき液は、紫外線・オゾン処理装置9からポンプ(不図示)により、電解銅めっき液1の循環経路に配置された活性炭処理装置3に送られる。
【0052】
そして、紫外線・オゾン処理がされた電解銅めっき液1を循環させ、活性炭処理装置3内に収容された活性炭4と接触させることにより、電解銅めっき液1に残存する有機不純物(すなわち、上述の紫外線・オゾン工程において、分解しきれなかった有機不純物)5を活性炭4に吸着させて除去する構成としている。
【0053】
なお、図1に示すように、有機不純物が除去された電解銅めっき液1は、活性炭処理装置3からポンプ(不図示)により、電解銅めっき液1の循環経路に配置された貯槽6に送られるとともに、新たに、めっき槽2から紫外線・オゾン処理装置9における処理槽10に送られる電解銅めっき液1の量(例えば、めっき槽1の容量が20000Lの場合、その2%である400L)に対応して、貯槽6からポンプ(不図示)により、再び、めっき槽1に戻る構成となっている。
【0054】
また、上述の再生処理が行われ、貯槽6からめっき槽1に戻る電解めっき液1においては、上述の紫外線・オゾン処理により、添加剤(すなわち、レベラー、ブライトナー、及びキャリアー)が分解されており、添加剤の濃度が減少しているため、めっき槽1において、これらの添加剤の濃度の調整を行うことができる。
【0055】
以上に説明したように、本発明においては、上述の紫外線・オゾン処理工程、及び活性炭処理工程を行うことにより、電解銅めっき液における有機不純物の濃度をめっき液の継続使用が可能な基準以下に低下させて、電解銅めっき液を再生することが可能になるため、めっき液の再建浴を行うことなく、半永久的に電解銅めっき液を継続使用することが可能になる。
【0056】
また、本発明においては、紫外線・オゾン処理により、電解銅めっき液に残存する有機不純物の分解を行うため、上記従来技術に比し、活性炭処理における活性炭の使用量を大幅に削減することができ、リサイクルコストを大幅に削減することが可能になる。
【0057】
例えば、後述の実施例のごとく、電解銅めっき液の通電量が30AH/Lとなる毎に、紫外線・オゾン処理と、活性炭処理を行うことにより、通電量が300AH/L毎の活性炭処理は不要となるため、活性炭処理における活性炭の使用量を大幅に削減することができる。
【0058】
なお、上述の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0059】
図3に示すように、電解銅めっき液1を収容するめっき槽が複数(図3においては4個)のめっき槽2a~2dに分割されたホイスト型のめっき槽を使用する構成としてもよい。そして、この場合も、上述の実施形態と同様に、まず、めっき槽2aに収容された電解銅めっき液1を、紫外線・オゾン処理装置9により酸化して、電解銅めっき液1中の有機不純物を分解し、紫外線・オゾン処理がされた電解銅めっき液1を活性炭処理装置3内に収容された活性炭4と接触させることにより、電解銅めっき液1に残存する有機不純物5を除去する。そして、有機不純物が除去された電解銅めっき液1を、活性炭処理装置3から貯槽6に送るとともに、新たに、めっき槽2bから紫外線・オゾン処理装置9における処理槽10に送られる電解銅めっき液1の量(例えば、各めっき槽2a~2dの容量が400Lの場合、その10%である40L)に対応して、貯槽6から、再び、めっき槽2bに戻る構成となっている。そして、めっき槽2c→めっき槽2d→めっき槽2a→めっき槽2bの順で、上述の再生処理を繰り返すことにより、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例0060】
以下、実施例及び比較例に基づき本出願に係る発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
<電解銅めっき液の調製>
硫酸銅5水和物が200g/L、硫酸が100g/L、塩化物イオンが50mg/L、ブライトナーであるビス-(3-ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィドが10mg/L、キャリアーであるポリエチレングリコールモノエチルエーテル(平均分子量:6000)が1000mg/L、及びレベラーであるジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体が100mg/Lとなるように混合して撹拌することにより、本実施例の電解銅めっき液を調製した。
【0062】
<電解銅めっき液の再生処理>
次に、不溶性アノード(酸化イリジウム)(60dm)により形成された陽極と、銅張積層板(60dm)により形成された陰極が設けられためっき槽内に、調製した電解銅めっき液(200L)を収容し、液温が25℃、電流密度が3A/dmの条件で、電解銅めっき液の通電量(老化度)が1200AH/Lになるまで電解処理を行った。
【0063】
また、電解銅めっき液の通電量が30AH/Lとなる毎に、200Lの20%に相当する40Lの電解銅めっき液を、めっき槽から紫外線・オゾン処理装置に送り、電解処理が行われた電解銅めっき液(40L)に対して、紫外線・オゾン処理装置(カイリン社製、商品名:UV-O3-1)を使用して、24時間、紫外線・オゾン処理を行った。
【0064】
より具体的には、紫外線・オゾン処理装置において、ポンプを用いて、電解銅めっき液(常温)を30L/分で循環させながら、エジェクターにより、1L/分の電解銅めっき液に対して10g/時の供給量でオゾン含有気体を吹き込んで、オゾン処理を行った。また、紫外線照射装置により、循環する電解めっき液に対して、波長が254nmの条件下で紫外線を照射して、紫外線処理を行った。
【0065】
次に、紫外線・オゾン処理装置において処理された電解銅めっき液を、40L/60分の速度で、紫外線・オゾン処理装置から活性炭処理装置を経由して貯槽に送った。
【0066】
より具体的には、まず、活性炭処理装置として活性炭フィルター(外径:65mm、内径:30mm、長さ:250mm、活性炭の平均粒子径:20μm)を使用し、電解銅めっき液を活性炭に接触させて、活性炭処理を行った。
【0067】
そして、活性炭処理が行われた電解銅めっき液(40L)を、活性炭処理装置から、電解銅めっき液の循環経路に配置された貯槽に送り、その後、貯槽からめっき槽に移動させた。
【0068】
<TOC値の測定>
そして、0AH/L(新浴)、100AH/L、200AH/L、300AH/L、400AH/L、500AH/L、600AH/L、700AH/L、800AH/L、900AH/L、1000AH/L、1100AH/L、及び1200AH/Lの各通電量において、上述の再生処理が行われた電解銅めっき液におけるTOC(Total Organic Carbon)値[ppm]を測定し、このTOC値を電解銅めっき液に残存する有機不純物の量とした。
【0069】
より具体的には、全有機炭素系装置(株式会社 島津製作所製、商品名:TOC-L CSH/CSN)を用いて、TOCを測定した。以上の結果を図6に示す。
【0070】
なお、めっき浴におけるTOC値が1000ppm以下であれば、めっき液の再建浴をすることなく、半永久的に継続使用が可能なめっき浴であると言える。
【0071】
<添加剤の濃度の測定>
次に、再生処理前の電解銅めっき液(電解銅めっき液の通電量:0AH/L)、及び再生処理後の電解銅めっき液(電解銅めっき液の通電量:1200AH/L)における添加剤(ブライトナー、キャリアー、及びレベラー)の濃度を測定した。より具体的には、CVS分析装置(ECI Technology社製、商品名:QL-5EZ)を用いて、ブライトナーであるビス-(3-ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィドの濃度[mg/L]、キャリアーであるポリエチレングリコールモノエチルエーテルの濃度[mg/L]、及び、レベラーであるジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体の濃度[mg/L]を測定した。以上の結果を表1に示す。
【0072】
<電解銅めっき処理>
まず、上述の再生処理が行われた電解銅めっき液において、上述の電解処理、紫外線・オゾン処理及び活性炭処理で消費された銅、硫酸、塩化物イオン、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーの濃度分析を行い、各物質の濃度が、上述の電解銅めっき液の調製において説明した濃度となるように、補給調整を行い、本実施例の電解銅めっき処理において使用される電解銅めっき液を調製した。
【0073】
次に、図4に示す、不溶性アノード(酸化イリジウム)(1dm)により形成されたアノード21と、循環用の配管22に接続されたエダクターノズル23が設けられたセル25に、上述の調整した電解銅めっき浴(すなわち、0AH/Lの新浴)、及び100AH/L、200AH/L、300AH/L、400AH/L、500AH/L、600AH/L、700AH/L、800AH/L、900AH/L、1000AH/L、1100AH/L、及び1200AH/Lの各通電量における上述の再生処理が行われた電解銅めっき液を5L採液して収容し、各通電量の電解銅めっき液(5L)を使用して、開口径80μm、深さ60μmのビアホールを有する被めっき部材である基板(カソード)24に対して、液温が25℃、電流密度が2A/dm、噴流量が1L/分の条件で、45.4分間、電解銅めっき処理を行った。
【0074】
次に、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製、商品名:VK-X3000)を使用して、図5に示す、基板24のビアホール50に形成されたビアホールフィリングめっき51の窪み量h[μm]を測定した。以上の結果を図7に示す。
【0075】
(比較例1)
上述の実施例1と同様に電解銅めっき液を調製した後、下記の電解処理を行うとともに、電解銅めっき液の再生処理として、下記の活性炭処理のみを行い、活性炭処理を行った電解銅めっき液を循環させて、活性炭処理装置からめっき槽に移動させた。
【0076】
<電解処理>
まず、不溶性アノード(酸化イリジウム)(60dm)により形成された陽極と、銅張積層板(60dm)により形成された陰極が設けられためっき槽内に、調製した電解銅めっき液(200L)を収容し、液温が25℃、電流密度が3A/dmの条件で、電解銅めっき液の通電量(老化度)が1200AH/Lになるまで電解処理を行った。
【0077】
<活性炭処理>
また、電解銅めっき液の通電量が300AH/Lとなる毎に、めっき槽に収容された全ての電解銅めっき液(200L)を、50L/分の速度で循環させて、めっき槽に収容された全ての電解銅めっき液(200L)に対して、活性炭処理装置を使用して、24時間、活性炭処理を行った。
【0078】
より具体的には、活性炭処理として活性炭フィルター(外径:65mm、内径:30mm、長さ:250mm、活性炭の平均粒子径: 20μm)を使用し、電解銅めっき液を活性炭に接触させて、活性炭処理を行った。その後、活性炭処理を行った電解銅めっき液を、活性炭処理装置からめっき槽に移動させた。
【0079】
そして、上述の実施例1と同様にして、TOC値[ppm]の測定、及び添加剤の濃度[mg/L]の測定を行った。以上の結果を図6、及び表1に示す。
【0080】
また、上述の再生処理が行われた電解銅めっき液において、上述の電解処理、及び活性炭処理で消費された銅、硫酸、塩化物イオン、ブライトナー、キャリアー、及びレベラーの濃度分析を行い、各物質の濃度が、上述の実施例1における電解銅めっき液の調製において説明した濃度となるように、補給調整を行い、本比較例の電解銅めっき処理において使用される電解銅めっき液を調製した。そして、上述の実施例1と同様にして、0~1200AH/Lの各通電量の電解銅めっき液(5L)を使用して、電解銅めっき処理を行い、ビアホールフィリングめっき51の窪み量h[μm]を測定した。以上の結果を、図7に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
図6に示すように、実施例1においては、上述の紫外線・オゾン処理、及び活性炭処理を行うことにより、有機不純物が分解されるとともに除去され、1200AH/Lまでの通電量において、めっき液におけるTOC値が、めっき液の継続使用が可能な基準値(1000ppm)を大きく下回る400ppm前後で推移していることが分かる。
【0083】
また、図7に示すように、実施例1においては、比較例1に比し、ビアホールフィリングめっき51の窪み量h[μm]が小さく、1200AH/Lまでの通電量において、ビアホールフィリングめっき51の窪み量h[μm]が、約1~2μmで推移しており、継続使用を行った場合であってもめっき性能が低下しておらず、めっき液の再建浴をすることなく、めっき液を半永久的に継続使用できることが分かる。
【0084】
一方、比較例1においては、上述の紫外線・オゾン処理を行っておらず、活性炭処理のみを行っているため、図6に示すように、有機不純物の除去が不十分であり、通電量の増加に伴い、めっき液におけるTOC値が増加しており、300AH/L毎に活性炭処理を行った場合であっても、1200AH/Lの通電量において、TOC値が、基準値の1000ppm以上になっていることが分かる。
【0085】
また、比較例1においては、図7に示すように、実施例1に比し、ビアホールフィリングめっき51の窪み量h[μm]が大きく、長期間の使用に起因する有機不純物の蓄積により、めっき性能が低下しており、めっき液の再建浴が必要であることが分かる。
【0086】
また、表1に示すように、実施例1においては、比較例1とは異なり、再生処理後の電解銅めっき液(電解銅めっき液の通電量:1200AH/L)における添加剤(ブライトナー、キャリアー、及びレベラー)の濃度が1mg/L以下となっており、紫外線・オゾン処理により、電解銅めっき液中の添加剤(上述のレベラー、ブライトナー、及びキャリアー)が確実に分解されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の電解銅めっき液の再生処理方法は、特に、半導体チップやパッケージ基板のめっきバンプの形成に用いる電解銅めっき液において、好適に使用される。
【符号の説明】
【0088】
1 電解銅めっき液
2 めっき槽
3 活性炭処理装置
6 貯槽
9 紫外線・オゾン処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7