(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159080
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】吊り荷検出装置、吊り荷検出方法、侵入検知システム及び侵入検知方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20241031BHJP
B66C 15/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074840
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲則
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】福岡 瑛莉奈
(72)【発明者】
【氏名】安保 知紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 征史
(72)【発明者】
【氏名】蘆 海洋
(72)【発明者】
【氏名】堂園 浩一
(57)【要約】
【課題】様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者が吊り荷の位置や形状を確認することができる吊り荷検出装置、吊り荷検出方法、及びそれらを用いた侵入検知システム及び侵入検知方法を提供することができる。
【解決手段】クレーン100で吊り下げられた吊り荷200を撮像するカメラ20と、カメラ20で撮像された吊り荷200の撮像データに基づき吊り荷200の三次元情報を検出する検出処理部64と、三次元情報に基づき吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報を算出する算出処理部66と、算出処理部66による算出結果を出力する端末報知部41とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンで吊り下げられた吊り荷を撮像する撮像部と、
該撮像部で撮像された前記吊り荷の撮像データに基づき前記吊り荷の三次元情報を検出する検出部と、
前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置のうち少なくとも一方を算出する算出部と、前記算出部による算出結果を出力する出力部とを備えた
吊り荷検出装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記吊り荷の下方の床面を撮像し、
前記検出部は、該撮像部で撮像された撮像データに基づき前記床面の三次元情報を検出し、
前記算出部は、
前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置を算出するとともに、
前記吊り荷及び前記床面の三次元情報に基づき、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを算出し、前記出力部は前記算出部が算出した前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを出力する
請求項1に記載の吊り荷検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の吊り荷検出装置と、
前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定部と、
前記領域設定部によって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知部とが設けられ、前記出力部は前記侵入検知部による検知結果を出力する
侵入検知システム。
【請求項4】
前記算出部は、少なくとも前記吊り荷の形状を算出するとともに、
前記領域設定部は、前記算出部によって算出された前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定する
請求項3に記載の侵入検知システム。
【請求項5】
請求項2に記載の吊り荷検出装置と、
前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定部と、
前記領域設定部によって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知部とが設けられ、
前記出力部は、前記侵入検知部による検知結果を出力し、
前記領域設定部は、
前記算出部によって算出された前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定する
侵入検知システム。
【請求項6】
前記算出部によって算出された、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さが所定高さ以下の場合、
前記出力部による前記侵入検知部の検知結果の出力方法を変更する
請求項5に記載の侵入検知システム。
【請求項7】
前記検出部は、タイミングの異なる前記吊り荷の前記撮像データに基づき、前記吊り荷の旋回を検出し、
前記領域設定部は、
前記吊り荷の旋回方向の前方が後方より広い前記設定領域を設定する
請求項5に記載の侵入検知システム。
【請求項8】
クレーンで吊り下げられた吊り荷を撮像部で撮像する撮像ステップと、
該撮像部で撮像された前記吊り荷の撮像データに基づき前記吊り荷の三次元情報を検出する検出ステップと、
前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置のうち少なくとも一方を算出する算出ステップと、前記算出ステップにおいて算出された算出結果を出力する出力ステップとを行う
吊り荷検出方法。
【請求項9】
前記撮像ステップでは、前記吊り荷の下方の前記床面を撮像し、
前記検出ステップは、該撮像部で撮像された撮像データに基づき前記床面の三次元情報を検出し、
前記算出ステップでは、前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置を算出するとともに、
前記吊り荷及び前記床面の三次元情報に基づき、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを算出し、前記出力ステップにおいて算出した前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを出力する
請求項8に記載の吊り荷検出方法。
【請求項10】
請求項8に記載の吊り荷検出方法と、
前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定ステップと、
前記領域設定ステップによって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知ステップとを行い、前記出力ステップにおいて、前記侵入検知ステップによる検知結果を出力する
侵入検知方法。
【請求項11】
前記算出ステップでは、少なくとも前記吊り荷の形状を算出するとともに、
前記領域設定ステップでは、前記算出部によって算出された前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定する
請求項10に記載の侵入検知方法。
【請求項12】
請求項9に記載の吊り荷検出方法と、
前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定ステップと、
前記領域設定ステップによって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知ステップとを行い、
前記出力ステップは、前記侵入検知ステップによる検知結果を出力し、
前記領域設定ステップは、
前記算出ステップによって算出された前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定する
侵入検知方法。
【請求項13】
前記算出ステップによって算出された、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さが所定高さ以下の場合、
前記出力ステップによる前記侵入検知ステップの検知結果の出力方法を変更する
請求項12に記載の侵入検知方法。
【請求項14】
前記検出ステップにおいて、タイミングの異なる前記吊り荷の前記撮像データに基づき、前記吊り荷の旋回を検出し、
前記領域設定ステップでは、
前記吊り荷の旋回方向の前方が後方より広い前記設定領域を設定する
請求項12に記載の侵入検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンによる揚重作業における吊り荷を検出するとともに、吊り荷の下方への作業者等の侵入を検知する吊り荷検出装置、吊り荷検出方法、侵入検知システム及び侵入検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場などでは施工箇所まで資材を運搬・楊重するためにクレーンが用いられる。クレーンはクレーン運転者(オペレータ)が吊り荷の揚重操作を行うものの、クレーン運転者から死角となる施工箇所(以下において死角箇所)に吊り荷を荷下ろしたり、吊り上げたりなどの揚重作業を行うことがある。このような死角箇所における揚重作業では、クレーン運転者から前記吊り荷を直接目視できないため、誘導者による合図等の誘導に従って行われる。
【0003】
しかしながら、クレーン運転者からは吊り荷を直接、目視確認できないため、クレーン運転者は安心して操作できないおそれがあった。特に、死角箇所から吊り荷を吊り上げる際には、吊り荷の形状も目視確認できないため、クレーン運転者は安心して操作できないおそれは高かった。
【0004】
例えば、特許文献1では、クレーン運転者にとって直接に見ることができない領域を検出するため、リフト装置により昇降可能に配置された画像検出システムを備えたクレーンが開示されている。
しかしながら、上記クレーンでは、死角箇所における吊り荷の位置や形状を確認することはできず、クレーン運転者が安心して操作することにはならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者が吊り荷の位置や形状を確認することができる吊り荷検出装置、吊り荷検出方法、及びそれらを用いた侵入検知システム及び侵入検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、クレーンで吊り下げられた吊り荷を撮像する撮像部と、該撮像部で撮像された前記吊り荷の撮像データに基づき前記吊り荷の三次元情報を検出する検出部と、前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置のうち少なくとも一方を算出する算出部と、前記算出部による算出結果を出力する出力部とを備えた吊り荷検出装置であることを特徴とする。
【0008】
またこの発明は、クレーンで吊り下げられた吊り荷を撮像部で撮像する撮像ステップと、該撮像部で撮像された前記吊り荷の撮像データに基づき前記吊り荷の三次元情報を検出する検出ステップと、前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置のうち少なくとも一方を算出する算出ステップと、前記算出ステップにおいて算出された算出結果を出力する出力ステップとを行う吊り荷検出方法であることを特徴とする。
【0009】
上記撮像するとは、前記吊り荷を画像認識可能に撮像した動画像、静止画像などの画像を撮像するステレオカメラや形状や大きさが既知であるマーカとともに前記吊り荷を撮像するカメラ、前記吊り荷の点群データを取得するスキャナなどによって撮像することが含まれる。
【0010】
上記検出するとは、撮像部によって撮像された撮像データに写り込む前記吊り荷を画像認識によって検出してその三次元情報を取得することや、撮像(走査)された点群データの中から前記吊り荷に該当する箇所を検出してその三次元情報を取得することが含まれる。なお、検出する方法として、周知の画像認識技術や点群データ処理を用いてもよいし、AIを用いた画像認識技術や点群データ処理であってもよい。
【0011】
上述の前記吊り荷の三次元位置を算出するとは、検出するとともに、その三次元情報を取得した前記吊り荷の三次元位置情報として三次元座標系における座標値によって特定するがその座標系は絶対座標系であってもよいし、作業現場における相対座標系であってもよい。また、上述の前記吊り荷の形状を算出するとは、検出するとともに、その三次元情報を取得した吊り荷の平面形状であってもよいし、全体の外形であってもよい。
【0012】
上述の算出結果を出力するとは、音による報知、警告灯などの光による報知、振動による報知、さらにはこれらの組み合わせであってもよいし、ログデータとして算出結果をデータ出力してもよい。算出結果を出力する出力先は、クレーン運転者、誘導者、作業員、施工管理者などに報知してもよい。
【0013】
この発明により、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者が吊り荷の位置や形状を確認することができる。
詳述すると、前記撮像部(撮像ステップ)で撮像された前記吊り荷の撮像データに基づき前記吊り荷の三次元情報を前記検出部(検出ステップ)で検出し、前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置のうち少なくとも一方を算出部(算出ステップ)で算出することができる。また、前記算出部(算出ステップ)による算出結果を出力する出力部(出力ステップ)とを備えた(行う)ため、例えば、クレーン運転者は、出力結果によって、目視に加え、あるいは目視することなく、前記吊り荷の三次元位置や形状を確認しながら操作することができる。したがって、前記死角箇所での揚重や前記死角箇所への吊り降ろしに加え、目視可能な箇所での揚重など様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者は安心して操作することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記撮像部は、前記吊り荷の下方の床面を撮像し、前記検出部は、該撮像部で撮像された撮像データに基づき前記床面の三次元情報を検出し、前記算出部は、前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置を算出するとともに、前記吊り荷及び前記床面の三次元情報に基づき、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを算出し、前記出力部は前記算出部が算出した前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを出力してもよく、前記撮像ステップでは、前記吊り荷の下方の前記床面を撮像し、前記検出ステップは、該撮像部で撮像された撮像データに基づき前記床面の三次元情報を検出し、前記算出ステップでは、前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置を算出するとともに、前記吊り荷及び前記床面の三次元情報に基づき、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを算出し、前記出力ステップにおいて算出した前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを出力してもよい。
【0015】
上記床面は、いわゆる作業床であり、高架作業である場合は例えば床版面などの作業面となり、ステージ上での作業の場合はステージ上面となり、地上作業の場合は地盤面となる。なお、前記床面の三次元情報としては、前記床面自体でもよいし、前記床面に設置した載置箇所であってもよい。
【0016】
この発明により、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者が吊り荷の位置をさらに詳しく確認することができる。
例えば、前記吊り荷の吊り降ろし作業において、前記吊り荷が前記床面に着地する際により慎重な操作が必要となるため、前記床面と前記吊り荷の距離が重要となる。しかしながら、前記床面との距離が確認できない場合、クレーン運転者は誘導者の誘導にしたがって操作することとなる。
【0017】
これに対し、前記撮像部(撮像ステップ)で撮像された前記床面の撮像データに基づき前記床面の三次元情報を前記検出部(検出ステップ)で検出し、前記三次元情報に基づき前記吊り荷の形状、及び三次元位置を前記算出部(算出ステップ)で算出する。さらに、前記算出部(算出ステップ)では、前記吊り荷及び前記床面の三次元情報に基づき、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを算出し、前記出力ステップにおいて算出した前記床面に対する前記吊り荷の相対高さを出力する。したがって、例えば、クレーン運転者は、目視に加え、あるいは目視することなく、出力された前記吊り荷の相対高さを確認しながら操作することができる。したがって、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者はより安心して操作することができる。
【0018】
またこの発明は、上述の吊り荷検出装置と、前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定部と、前記領域設定部によって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知部とが設けられ、前記出力部は前記侵入検知部による検知結果を出力する侵入検知システムであることを特徴とする。
【0019】
またこの発明は、上述の吊り荷検出方法と、前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定ステップと、前記領域設定ステップによって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知ステップとを行い、前記出力ステップにおいて、前記侵入検知ステップによる検知結果を出力する侵入検知方法であることを特徴とする。
【0020】
上述の前記吊り荷の下方に設定する設定領域は、前記吊り荷の直下の領域はもちろん、前記吊り荷の直下より所定の範囲で拡大された領域を含む。
上述の設定領域への侵入を検知は、前記撮像部による前記設定領域の撮像データに基づいて作業員や誘導員などが前記設定領域に侵入したことを画像認識によって検知することや、撮像(走査)された点群データの中から前記作業員や誘導員に該当する箇所を検知することに加えて、赤外線センサー等の非接触センサーによる検知、あるいはGPSや通信機器による位置情報に基づく検知などが含まれる。なお、検知方法としては、周知の画像認識技術や点群データ処理を用いてもよいし、AIを用いた画像認識技術や点群データ処理であってもよい。
【0021】
この発明により、前記吊り荷の下方に設定された設定領域に作業員や誘導員などが侵入したことを検知することができる。
詳述すると、上述の前記吊り荷検出装置(吊り荷検出方法)によって、撮像データに基づき三次元情報を検出するとともに前記吊り荷の形状、及び三次元位置のうち少なくとも一方が算出された吊り荷の下方に設定領域を領域設定部(領域設定ステップ)で設定することができる。したがって、様々な状況下であっても、前記吊り荷の下方に前記設定領域を設定することができる。
【0022】
また、設定された前記設定領域に対する作業員や誘導員などが侵入した場合、侵入検知部(侵入検知ステップ)で検知し、検知結果を出力することができる。したがって、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者は、前記設定領域への侵入を確認できるため、より安心して操作することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記算出部(算出ステップ)は、少なくとも前記吊り荷の形状を算出するとともに、前記領域設定部(領域設定ステップ)は、前記算出部(算出ステップ)によって算出された前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定してもよい。
【0024】
さらにまたこの発明は、上述の吊り荷検出装置と、前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定部と、前記領域設定部によって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知部とが設けられ、前記出力部は、前記侵入検知部による検知結果を出力し、前記領域設定部は、前記算出部によって算出された前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定する侵入検知システムであることを特徴とする。
【0025】
さらにまたこの発明は、上述の吊り荷検出方法と、前記吊り荷の下方に設定領域を設定する領域設定ステップと、前記領域設定ステップによって設定された前記設定領域への侵入を検知する侵入検知ステップとを行い、前記出力ステップにおいて、前記侵入検知ステップによる検知結果を出力し、前記領域設定ステップは、前記算出ステップによって算出された前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定する侵入検知方法であることを特徴とする。
上述の前記吊り荷の形状に基づいて、前記設定領域を設定するとは、例えば、吊り荷の外縁を基準として所定距離を確保して設定することを含む。
【0026】
これらの発明により、前記吊り荷の形状に応じた前記設定領域が設定されるため、より適切な前記設定領域を設定し、当該設定領域への侵入を検知することができる。したがって、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者は、前記設定領域への侵入を確認できるため、より安心して操作することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記算出部(算出ステップ)によって算出された、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さが所定高さ以下の場合、前記出力部(出力ステップ)による前記侵入検知部(侵入検知ステップ)の検知結果の出力方法を変更してもよい。
【0028】
上述の出力方法を変更するとは、音による場合は音量を小さくする、消音する、発音パターンを変更する、音色を変更するなど様々な態様を含む。また、表示による出力方法の場合は、表示内容、表示態様あるいは表示パターンを変更する、不表示とするなど様々な態様を含む。
【0029】
この発明により、吊り降ろされた前記吊り荷が前記床面に近づくと、作業員や誘導員は介添えロープ等で前記吊り荷の向きなどを調整することがある。また、吊り上げ初期では前記吊り荷が前記床面近傍にあり、前記吊り荷の近くで前記吊り荷の向き等を作業員や誘導員などが調整しながら吊り上げる。このように、前記床面の近傍の危険でない高さに前記吊り荷がある場合、作業員や誘導員などが前記吊り荷の近傍で作業するため、必然的に作業員や誘導員などが前記設定領域に侵入することになる。そうすると、侵入検知システムや侵入検知方法では通常の作業であっても作業員や誘導員などを検知して出力することとなる。
【0030】
これに対し、前記床面に対する前記吊り荷の相対高さが、例えば危険でない所定高さ以下の場合、前記出力部(出力ステップ)による前記侵入検知部(侵入検知ステップ)の検知結果の出力方法を変更することで、クレーン運転者は前記吊り荷が前記床面の近傍にあり、作業員や誘導員などの侵入が通常の作業であることを確認しながら、より安心して操作することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記検出部(検出ステップ)は、タイミングの異なる前記吊り荷の前記撮像データに基づき、前記吊り荷の旋回を検出し、前記領域設定部(領域設定ステップ)は、前記吊り荷の旋回方向の前方が後方より広い前記設定領域を設定してもよい。
上述のタイミングの異なる前記吊り荷の前記撮像データは、撮像時間が異なる複数の静止画像や点群データであってもよいし、動画像における時間差を有するコマ画像であってもよい。
【0032】
この発明により、旋回する前記吊り荷に対して前記設定領域をより適切に設定することができる。
詳述すると、前記吊り荷が旋回する場合、前記吊り荷の下方において旋回方向の前方より後方の方が、危険度が低くなる。そのため、前記領域設定部(領域設定ステップ)は、前記吊り荷の旋回方向の前方が後方より広い前記設定領域を設定するため、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者は、より適切に設定された前記設定領域への侵入を確認できるため、より安心して旋回操作をすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、様々な状況にある吊り荷であってもクレーン運転者が吊り荷の位置や形状を確認することができる吊り荷検出装置、吊り荷検出方法、及びそれらを用いた侵入検知システム及び侵入検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
本実施形態では、吊り荷の揚重作業を支援する揚重操作支援システム1について、
図1から
図7を用いて説明する。
【0036】
なお、
図1は楊重作業状況の概略図を示し、
図2は揚重操作支援システム1の構成図を示し、
図3は揚重操作支援システム1のブロック図を示し、
図4は揚重操作支援システム1のフローチャートを示し、
図5は領域設定処理のフローチャートを示し、
図6は設定領域Saの概略図を示し、
図7は設定領域Saの概略図を示し、
図8は侵入検知処理のフローチャートを示している。
【0037】
まず、吊り荷の揚重作業は、
図1に示すように、クレーン100で吊り荷200を吊り下げ、載置箇所(床版面300)に吊り荷200を吊り降ろす、或いは載置箇所(床版面300)から吊り荷200を吊り上げて所定の箇所まで移動させる。
【0038】
具体的には、
図1に示すように、地盤面310に据え付けられたクレーン100で、高架橋の床版面300に対して、吊り荷200の揚重作業を行うものである。また、例えば、平面サイズより上下方向が薄い覆工板などを吊り荷200としている。そして、吊り荷200は、クレーン100のブーム101の先端からワイヤーで吊り下がるフック102にかけたスリング210で吊り下げられる。
【0039】
なお、地盤面310に据え付けられたクレーン100は、クレーン運転者が内部に乗り込んで操作するため、地盤面310より高い位置にある床版面300での揚重作業の目視が困難となる。そのため、床版面300には、誘導員Mが配置されている。そして、クレーン運転者は、無線通信等を介して誘導員からの誘導指示によって、床版面300上での吊り上げ・吊り下げ操作(以下において揚重操作という)。
【0040】
このようなクレーン100による吊り荷200の揚重作業におけるクレーン運転者の揚重操作を支援する揚重操作支援システム1は、
図2に示すように、床版面300に配置されたカメラ20、ウェアラブル端末30及びオペレータ端末40と、床版面300から離れた場所に配置された管理端末50及びサーバー60とを備えている。なお、揚重操作支援システム1は後述するように、吊り荷200を検知する吊り荷検出装置としても機能するし、設定領域Saへの誘導員Mの侵入を検知する侵入検知システムとしても機能する。
【0041】
まず、カメラ20は、
図1に示すように、吊り荷200を揚重する床版面300における施工範囲を定点で撮像可能な状態に固定されている。このカメラ20は、通信回線11を介してサーバー60に接続されている。
【0042】
また、ウェアラブル端末30は、
図2に示すように、誘導員Mが装着する腕時計型の端末である。このウェアラブル端末30は、通信回線11を介してサーバー60に接続されている。
【0043】
また、オペレータ端末40は、クレーン100の内部において、内部で揚重操作を行うクレーン運転者が見える位置に配置され、通信回線11を介してサーバー60に接続されている。
また、管理端末50は、
図1及び
図2に示すように、例えば床版面300から離れた管理事務所6に配置された端末であって、通信回線11を介してサーバー60に接続されている。この管理端末50は、揚重作業を管理する現場担当者が使用する。
【0044】
また、サーバー60は、
図2に示すように、例えば床版面300から離れた遠隔地に配置され、通信回線11を介してカメラ20、ウェアラブル端末30、オペレータ端末40及び管理端末50と通信可能に接続されている。
このサーバー60は、カメラ20、ウェアラブル端末30、オペレータ端末40及び管理端末50との間で各種情報を授受する機能と、各種情報を処理する機能とを有している。
【0045】
詳述すると、カメラ20は、
図3に示すように、施工箇所を撮像して動画像を取得するカメラ本体21を備えるとともに、カメラ本体21を通信回線11に無線接続または有線接続する回線接続部(図示省略)と、これらの動作を制御するカメラ制御部22とを備えている。
【0046】
このカメラ20は、通信回線11を介したサーバー60からの信号に基づくカメラ制御部22の制御によって、撮像の開始及び撮像の停止が可能に構成されるとともに、撮像した動画像を、通信回線11を介してサーバー60に出力可能に構成されている。なお、カメラ20は、撮像範囲に床版面300が写り込むように床版面300上に設置される。
【0047】
ウェアラブル端末30は、
図3に示すように、音や振動で所定の情報を報知する端末報知部31と、ウェアラブル端末30の動作を制御する端末制御部32とを備えるとともに、通信回線11に無線接続する回線接続部(図示省略)や、図示を省略した記憶部などを備えている。
【0048】
なお、ウェアラブル端末30に、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite
System)の信号を受信して、ウェアラブル端末30の現在位置を示す位置情報を取得するGNSS受信部を備えてもよい。
このウェアラブル端末30は、電源オンの状態において、通信回線11を介したサーバー60からの信号に基づく端末制御部32の制御によって、端末報知部31の動作を制御する。
【0049】
また、オペレータ端末40は、
図3に示すように、音や振動で所定の情報を報知する端末報知部41と、所定の情報を表示する端末表示部42と、オペレータ端末40の動作を制御する端末制御部43とを備えるとともに、通信回線11に無線接続する回線接続部(図示省略)や、図示を省略した記憶部などを備えている。
【0050】
そして、オペレータ端末40は、例えば、いわゆるタブレットであり、クレーン100の操縦席に配置され、電源オンの状態において、通信回線11を介したサーバー60からの信号に基づく端末制御部43の制御によって、端末報知部41や端末表示部42の動作を制御する。
【0051】
また、管理端末50は、管理者が揚重作業の状況を確認したり、吊り荷200の直下となる直下エリアUaに対して設定する設定領域Saの範囲の諸条件や所定高さ等の入力情報を設定する端末である。
管理端末50は、
図3に示すように、ユーザーの各種操作を受け付ける操作受付部51と、各種情報を表示する端末表示部52と、各種情報を記憶する端末記憶部53と、通信回線11に接続する回線接続部(図示省略)と、これらの動作を制御する端末制御部54とを備えている。
【0052】
具体的には、管理端末50の操作受付部51は、
図2に示すように、例えばキーボード51aやマウス51bなどで構成され、ユーザーによる入力操作を受け付ける機能と、受け付けた入力内容を示す情報を端末制御部54に出力する機能とを有している。
また、管理端末50の端末表示部52は、
図2に示すように、例えば液晶ディスプレイなどで構成され、端末制御部54からの制御信号により、各種情報を表示する機能を有している。
【0053】
また、管理端末50の端末記憶部53は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成され、各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。この端末記憶部53には、サーバー60と協働して各種情報を処理するクライアントプログラム(図示省略)などが記憶されている。
また、管理端末50の回線接続部(図示省略)は、例えば有線LANボードなどで構成され、通信回線11に接続する機能と、通信回線11を介して各種情報の受送信を行う機能とを有している。
【0054】
また、管理端末50の端末制御部54は、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。
この端末制御部54は、サーバー60との各種情報の授受に係る処理機能と、操作受付部51、端末表示部52、端末記憶部53及び回線接続部(図示省略)との各種信号の授受に係る処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0055】
また、サーバー60は、
図3に示すように、通信回線11に接続する回線接続部(図示省略)と、各種情報を記憶するサーバー記憶部61と、これらの動作を制御するサーバー制御部62とを備えている。
具体的には、サーバー60の回線接続部(図示省略)は、例えば有線LANボードなどで構成され、通信回線11に接続する機能と、通信回線11を介して各種情報の受送信を行う機能とを有している。
【0056】
また、サーバー60のサーバー記憶部61は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成され、カメラ20で撮像した撮像データなど各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。
【0057】
このサーバー記憶部61には、後述するサーバー制御部62と協働して各種情報を処理するサーバープログラム(図示省略)が記憶されている。そして、サーバー60のサーバー制御部62は、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。
【0058】
さらに、このサーバー制御部62は、カメラ20、ウェアラブル端末30、オペレータ端末40及び管理端末50との各種情報の授受に係る処理機能と、回線接続部(図示省略)及びサーバー記憶部61との各種信号の授受に係る処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0059】
そして、サーバー制御部62は、サーバー記憶部61に記憶されたサーバープログラムによって実行される領域設定処理部63、吊り荷200や床版面300を検出する検出処理部64、誘導員Mを検知する検知処理部65、算出処理部66及び比較判定部67として機能する。
領域設定処理部63は、管理端末50で設定された諸条件に基づき直下エリアUaに対する設定領域Saの設定処理を実行する。
【0060】
検出処理部64は、カメラ20で撮像した撮像データより吊り荷200や床版面300を検出するとともに、その三次元情報を取得する処理を実行し、検知処理部65はカメラ20で撮像した撮像データより誘導員Mを検出するとともに、その三次元情報を取得する処理を実行する。
なお、検出処理部64と検知処理部65とは、対象が異なるものの、撮像データから対象物を検出するとともに、その三次元情報を取得するという機能は同じであるため、別々に記載しているが、ひとつで構成し、検出処理部64と検知処理部65とで検出するとともに、その三次元情報を取得する両対象を抽出可能に構成してもよい。
【0061】
算出処理部66は、カメラ20による撮像データから検出処理部64によって抽出され、その三次元情報が取得された吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報や、検知処理部65によって抽出され、その三次元情報が取得された誘導員Mの三次元位置情報の算出処理を実行する。
比較判定部67は、算出処理部66による算出処理で算出された算出結果を比較し、判定する比較判定処理を実行する。
【0062】
次に、このように構成された揚重操作支援システム1において、吊り荷200を検出するサーバー60の吊り荷検出処理について、
図4を用いて説明する。
揚重操作支援システム1において吊り荷検出装置として機能するための吊り荷検出処理では、揚重作業の開始に合わせ、まず、カメラ20による撮影を開始する(撮像処理:ステップs1)。
【0063】
カメラ20によって撮像された撮像データは通信回線11を介してサーバー60に送信され、サーバー記憶部61に記憶される。なお、撮像データは、カメラ20による撮像中は、常時、あるいは所定の間隔でサーバー60に送信される。
【0064】
カメラ20によって撮像された撮像データには床版面300が写り込んでいるため、検出処理部64によって撮像データから床版面300を検出するとともに、その三次元情報を取得する(床版面検出処理:ステップs2)。また、検出処理部64で検出され、その三次元情報が取得された床版面300に関する三次元位置情報を検知処理部65により算出する(床版高さ算出処理:ステップs3)。
【0065】
詳述すると、検出処理部64による床版面300の検出は、AIによって床版面300を画像認識して検出してもよいし、床版面300から所定の高さに設置した所定の径の球体であるマーカを床版面300とともに撮像し、マーカを画像認識して検出してもよい。
【0066】
また、算出処理部66は、撮像データから検出されるとともに、その三次元情報が取得された床版面300三次元位置情報を算出するが、当該三次元位置情報は絶対座標系における座標値として算出してもよいし、施工現場で設定した相対座標系における座標値として算出してもよい。
【0067】
そして、揚重された吊り荷200が撮像された撮像データから、検出処理部64によって吊り荷200を検出するとともに、その三次元情報を取得し(吊り荷検出処理:ステップs4)、検出処理部64で検出した吊り荷200に関する三次元位置情報及び形状情報を算出処理部66で算出する(位置・形状算出処理:ステップs5)。
【0068】
詳述すると、検出処理部64による吊り荷200の検出は、AIによって吊り荷200を画像認識して検出してもよいし、吊り荷200から所定の高さに設置した所定の径の球体であるマーカを吊り荷200とともに撮像し、マーカを画像認識して検出してもよい。
【0069】
また、算出処理部66は、撮像データから抽出され、その三次元情報が取得された吊り荷200について、その三次元位置情報及び形状情報を算出するが、当該三次元位置情報は絶対座標系における座標値として算出してもよいし、施工現場で設定した相対座標系における座標値として算出してもよいが、床版面300を算出した座標系と同じ座標系における座標値として算出する。
【0070】
算出処理部66は、上述のように、吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報を算出するとともに、さらに、算出した吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報に基づき、床版面300に対する相対高さHを算出する(相対高さ算出処理:ステップs6)。
【0071】
具体的には、形状情報が算出された吊り荷200の最下端の三次元位置情報と床版面300の三次元位置情報との差分を、床版面300に対する吊り荷200の相対高さH(
図1参照)とする。そして、算出処理部66によって算出された相対高さHを、通信回線11を介してオペレータ端末40や管理端末50に送信し、オペレータ端末40の端末表示部42や管理端末50の端末表示部52に出力する(相対高さ表示処理:ステップs7)。
【0072】
なお、吊り荷200が移動すると(ステップs8:Yes)、吊り荷検出処理(ステップs4)に戻って上述の吊り荷検出処理(ステップs4)から相対高さ表示処理(ステップs7)までを揚重作業の終了(ステップs9:Yes)まで繰り返す。
【0073】
上述のように吊り荷検出装置として機能する揚重操作支援システム1(吊り荷検出方法)は、クレーン100で吊り下げられた吊り荷200を撮像するカメラ20(撮像処理:ステップs1)と、カメラ20で撮像された吊り荷200の撮像データに基づき吊り荷200の三次元情報を検出する検出処理部64(吊り荷検出処理(ステップs4))と、三次元情報に基づき吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報を算出する算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))と、算出処理部66による算出結果を出力する端末報知部41(相対高さ表示処理:ステップs7)とを備えている。
【0074】
そのため、様々な状況にある吊り荷200であってもクレーン運転者が吊り荷200の位置や形状を確認することができる。
詳述すると、カメラ20(撮像処理:ステップs1)で撮像された吊り荷200の撮像データに基づき吊り荷200の三次元情報を検出処理部64(吊り荷検出処理(ステップs4))で検出し、三次元情報に基づき吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報を算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))で算出することができる。
【0075】
また、算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))による算出結果を出力する端末報知部41(相対高さ表示処理:ステップs7)とを備えた(行う)。そのため、例えば、クレーン運転者は、出力結果によって、目視に加え、あるいは目視することなく、吊り荷200の三次元位置や形状を確認しながら操作することができる。したがって、死角箇所での吊り荷200の揚重や死角箇所への吊り荷200の吊り降ろしに加え、目視可能な箇所での吊り荷200の揚重など様々な状況にある吊り荷200であってもクレーン運転者は安心して操作することができる。
【0076】
また、カメラ20(撮像処理:ステップs1)は、吊り荷200の下方の床版面300を撮像し、検出処理部64(吊り荷検出処理(ステップs4))は、カメラ20(撮像処理:ステップs1)で撮像された撮像データに基づき床版面300の三次元情報を検出する。そして、算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))は、三次元情報に基づき吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報を算出するとともに、吊り荷200及び床版面300の三次元情報に基づき、床版面300に対する吊り荷200の相対高さHを算出する。端末報知部41(相対高さ表示処理:ステップs7)は算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))が算出した床版面300に対する吊り荷200の相対高さHを出力する。
【0077】
そのため、様々な状況にある吊り荷200であってもクレーン運転者が吊り荷200の位置をさらに詳しく確認することができる。
詳述すると、カメラ20(撮像処理:ステップs1)で撮像された床版面300の撮像データに基づき床版面300の三次元情報を検出処理部64(吊り荷検出処理(ステップs4))で検出するとともに、算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))で、吊り荷200及び床版面300の三次元情報に基づき、床版面300に対する吊り荷200の相対高さHを算出する。そして、端末報知部41(相対高さ表示処理:ステップs7)に、算出した床版面300に対する吊り荷200の相対高さHを出力する。
【0078】
よって、例えば、クレーン運転者は、目視に加え、あるいは目視することなく、出力された吊り荷200の相対高さHを確認しながら操作することができる。したがって、様々な状況にある吊り荷200であってもクレーン運転者はより安心して操作することができる。
【0079】
次に、侵入検知システムとして機能する揚重操作支援システム1によって設定領域Saへの誘導員Mの侵入を検知する侵入検知処理について説明する。
侵入検知システムとして機能する揚重操作支援システム1による侵入検知処理は、上述の吊り荷検出処理を基本とし、吊り荷検出処理に対して所定のタイミングで、
図5に示す領域設定処理及び
図8に示す侵入検知処理を行うことで実現する。
【0080】
まず、
図5に示す領域設定処理について説明する。
領域設定処理は、吊り荷200の下方に、誘導員Mが侵入することで報知する領域である設定領域Saを領域設定処理部63により設定する処理である。
【0081】
具体的には、
図6に示すように、領域設定処理では、吊り荷200の直下である直下エリアUaに対して、所定の第1距離L1を確保した第1設定領域Sa1と、第1設定領域Sa1に対して所定の第2距離L2を確保した第2設定領域Sa2を領域設定処理部63により設定する。
なお、第1距離L1及び第2距離L2は、予め管理端末50の操作受付部51によって入力され、サーバー60のサーバー記憶部61に記憶しておく。
【0082】
さらには、吊り荷200が旋回する場合、
図7に示すように、設定領域Saを変形させて変形設定領域Taとする。
具体的には、変形設定領域Taは、設定領域Saにおいて、吊り荷200の旋回方向R(
図7において矢印で図示)の前方を、旋回方向Rの後方より広くなるように変形させる。設定領域Sa(Sa1,Sa2)から変形設定領域Ta(Ta1,Ta2)に変形させる変形量については、予め管理端末50の操作受付部51によって入力され、サーバー60のサーバー記憶部61に記憶しておく。
【0083】
なお、
図6に示す変形前の設定領域Sa(Sa1,Sa2)のサイズを維持したまま、旋回方向Rにずらして変形設定領域Taを設定してもよいし、例えば、旋回方向Rの後方は変形させず、旋回方向Rの前方のみを広げるように、変形前の設定領域Sa(Sa1,Sa2)のサイズを変形させて変形設定領域Taを設定してもよい。
【0084】
上述のように、直下エリアUaに対して設定領域Saを設定する領域設定処理は、上述の吊り荷検出処理における位置・形状算出処理(ステップs5)によって、吊り荷200の三次元位置情報と形状情報とが算出されると、算出された吊り荷200の形状情報に応じた設定領域Saを設定する(領域設定処理:ステップt1)。
【0085】
具体的には、算出された吊り荷200の形状情報において、吊り荷200の平面形状に応じた直下エリアUaが定まる。そして、直下エリアUaに対して、
図6に示すように、予め設定した第1距離L1及び第2距離L2に基づいて、第1設定領域Sa1と第2設定領域Sa2とを設定する。なお、領域設定処理(ステップt1)で設定した設定領域Sa(Sa1,Sa2)について、通信回線11を介してサーバー60に送信し、サーバー記憶部61に記憶する。
【0086】
そして、タイミングの異なる複数の撮像データから吊り荷200を検出した結果、吊り荷200が旋回していると、
図7に示すように、吊り荷200の旋回方向Rに応じて、領域設定処理部63により、変形設定領域Taを設定する(変形領域設定処理:ステップt3)。なお、変形領域設定処理(ステップt3)で設定した変形設定領域Ta(Ta1,Ta2)についても通信回線11を介してサーバー60に送信し、サーバー記憶部61に記憶する。
【0087】
続いて、侵入検知システムとして機能する揚重操作支援システム1によって設定領域Saへの誘導員Mの侵入を検知する侵入検知処理について
図8とともに説明する。
【0088】
上述の吊り荷検出処理を基本とする揚重操作支援システム1による侵入検知処理は、吊り荷検出処理において位置・形状算出処理(ステップs5)の後に実行した領域設定処理により設定領域Saや変形設定領域Taが設定された後に実行する。なお、床版面300に対する吊り荷200の相対高さHを算出する相対高さ算出処理(ステップs6)の後に、侵入検知処理を行うことがより好ましい。
【0089】
上述のように、設定領域Saへの誘導員Mの侵入を検知する侵入検知処理は、上述の吊り荷検出処理における相対高さ算出処理(ステップs6)及び領域設定処理における領域設定処理(ステップt1)や変形領域設定処理(ステップt3)を行った後、撮像データから検知処理部65によって誘導員Mを検知する(誘導員検知処理:ステップu1)。
【0090】
誘導員検知処理(ステップu1)において誘導員Mを検知し、その三次元情報を取得すると、算出処理部66によって誘導員Mの三次元位置情報を算出処理部66によって算出する(誘導員位置算出処理:ステップu2)。
【0091】
誘導員位置算出処理(ステップu2)において算出された誘導員Mの三次元位置情報が、領域設定処理(ステップt1)で設定された設定領域Saや変形領域設定処理(ステップt3)で設定された変形設定領域Taの内部に位置するか、比較判定部67によって比較し、判定する(比較判定処理:ステップu3)。
【0092】
具体的には、比較判定処理(ステップu3)は、誘導員位置算出処理(ステップu2)において算出された誘導員Mの三次元位置情報が、直下エリアUa、第1設定領域Sa1,第2設定領域Sa2,第1変形設定領域Ta1及び第2変形設定領域Ta2の内部に位置するかどうかを比較判定部67で比較判定する。
【0093】
比較判定部67による比較判定結果が、直下エリアUa、設定領域Sa(Sa1,Sa2)及び変形設定領域Ta(Ta1,Ta2)のいずれの範囲内でない場合(ステップu3:No)、侵入検知処理を終了する。
【0094】
比較判定部67による比較判定結果が、直下エリアUa、設定領域Sa(Sa1,Sa2)及び変形設定領域Ta(Ta1,Ta2)のいずれかの範囲内である場合(ステップu3:Yes)、上述の相対高さ算出処理(ステップs6)で算出した相対高さHを、比較判定部67によって予め設定した所定高さと比較する。
なお、比較判定部67によって比較する所定高さは、予め管理端末50の操作受付部51によって入力され、サーバー60のサーバー記憶部61に記憶しておく。
【0095】
相対高さHを比較判定部67によって予め設定した所定高さと比較した結果、相対高さHが所定高さ以下であれば(ステップu4:No)、直下エリアUa、設定領域Saあるいは変形設定領域Taに誘導員Mが侵入する通常業務であると判断し、誘導員検知処理(ステップu1)に戻って、以降の誘導員Mの検知に備える。
【0096】
相対高さHを比較判定部67によって予め設定した所定高さと比較した結果、相対高さHが所定高さ以上であれば(ステップu4:Yes)、以下に説明するように報知処理に進む。
具体的には、検知された誘導員Mの三次元位置情報が第2設定領域Sa2や第2変形設定領域Ta2の内部である場合(ステップu5:Yes)、比較判定部67による判定結果を、通信回線11を介してサーバー60に送信し、サーバー60は、オペレータ端末40の端末表示部42などで第2アラートを報知するように第2アラート報知信号をオペレータ端末40に送信する。
【0097】
第2アラート報知信号を受信したオペレータ端末40は端末報知部41により第2アラートを報知する(第2アラート報知処理:ステップu6)。なお、侵入する誘導員Mに装着したウェアラブル端末30に対して、第2アラートを報知するように、第2アラート報知信号を送信してもよい。
【0098】
逆に、検知された誘導員Mの三次元位置情報が第2設定領域Sa2や第2変形設定領域Ta2の内部でない場合、つまり誘導員Mの三次元位置情報が第1設定領域Sa1や第1変形設定領域Ta1あるいは直下エリアUaの内部である場合(ステップu5:No)、比較判定部67による判定結果を、通信回線11を介してサーバー60に送信し、サーバー60は、オペレータ端末40の端末報知部41などで第1アラートを報知するように第1アラート報知信号をオペレータ端末40に送信する。
【0099】
第1アラート報知信号を受信したオペレータ端末40は端末報知部41により第1アラートを報知する(第1アラート報知処理:ステップu7)。なお、侵入する誘導員Mに装着したウェアラブル端末30に対して、第1アラートを報知するように、第1アラート報知信号を送信してもよい。
【0100】
なお、直下エリアUa、設定領域Saあるいは変形設定領域Taへの誘導員Mの侵入が継続すると(ステップu8:Yes)、ステップu4に戻って上述のフローを、誘導員Mの侵入がなくなる(ステップu8:No)まで繰り返す。
【0101】
このように、侵入検知システムとして機能する揚重操作支援システム1(侵入検知方法)は、上述した吊り荷検出装置として機能する揚重操作支援システム1(吊り荷検出方法)に、吊り荷200の下方に設定領域Saを設定する領域設定処理部63(処理領域設定処理(ステップt1))と、領域設定処理部63(処理領域設定処理(ステップt1))によって設定された設定領域Saへの侵入を検知する検知処理部65(誘導員検知処理(ステップu1))とが設けられ、端末報知部41(第2アラート報知処理(ステップu6)、第1アラート報知処理(ステップu7))は検知処理部65による検知結果を出力する。
【0102】
そのため、吊り荷200の下方に設定された設定領域Saに誘導員Mなどが侵入したことを検知することができる。
詳述すると、上述の揚重操作支援システム1(吊り荷検出方法)によって、撮像データに基づき三次元情報を検出するとともに吊り荷200の三次元位置情報及び形状情報が算出された吊り荷200の下方に設定領域Saを領域設定処理部63(処理領域設定処理(ステップt1))で設定することができる。したがって、様々な状況下であっても、吊り荷200の下方に設定領域Saを設定することができる。
【0103】
また、設定された設定領域Saに対する誘導員Mなどが侵入した場合、検知処理部65(誘導員検知処理(ステップu1))で検知し、検知結果を出力することができる。したがって、様々な状況にある吊り荷200であってもクレーン運転者は、設定領域Saへの誘導員Mの侵入を確認できるため、より安心して操作することができる。
【0104】
また、算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))は、吊り荷200の形状を算出するとともに、領域設定処理部63(処理領域設定処理(ステップt1))は、算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))によって算出された吊り荷200の形状に基づいて、設定領域Saを設定する。
【0105】
そのため、吊り荷200の形状に応じたより適切な設定領域Saを設定し、設定領域Saへの誘導員Mの侵入を検知することができる。したがって、様々な状況にある吊り荷200であってもクレーン運転者は、設定領域Saへの侵入を確認できるため、より安心して操作することができる。
【0106】
また、算出処理部66(位置・形状算出処理(ステップs5))によって算出された、床版面300に対する吊り荷200の相対高さHが所定高さ以下の場合、端末報知部41(第2アラート報知処理(ステップu6)、第1アラート報知処理(ステップu7))による検知処理部65(誘導員検知処理(ステップu1))の検知結果の出力方法を変更する。
【0107】
そのため、床版面300に対する吊り荷200の相対高さHが、例えば危険でない所定高さ以下の場合、端末報知部41(第2アラート報知処理(ステップu6)は、第1アラート報知処理(ステップu7))による誘導員検知処理(ステップu1)の検知結果の出力方法を変更することとしてアラートを放置しないことで、クレーン運転者は吊り荷200が床版面300の近傍にあり、誘導員Mなどの侵入が通常の作業であることを確認しながら、より安心して操作することができる。
【0108】
また、検出処理部64(吊り荷検出処理(ステップs4))は、タイミングの異なる吊り荷200の撮像データに基づき、吊り荷200の旋回を検出し、領域設定処理部63は、吊り荷200の旋回方向Rの前方が後方より広い設定領域Saを設定する。そのため、旋回する吊り荷200に対して設定領域Saをより適切に設定することができる。
【0109】
詳述すると、吊り荷200が旋回する場合、吊り荷200の下方において旋回方向Rの前方より後方の方が、危険度が低くなる。そのため、領域設定処理部63(処理領域設定処理(ステップt1))は、吊り荷200の旋回方向Rの前方が後方より広い変形設定領域Ta(Ta1,Ta2)を設定する。よって、様々な状況にある吊り荷200であってもクレーン運転者は、より適切に設定された変形設定領域Ta(Ta1,Ta2)への侵入を確認できるため、より安心して旋回操作をすることができる。
【0110】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明のクレーンはクレーン100に対応し、
以下同様に、
吊り荷は吊り荷200に対応し、
撮像部はカメラ20に対応し、
検出部は検出処理部64に対応し、
算出部は算出処理部66に対応し、
出力部は端末報知部41に対応し、
吊り荷検出装置は揚重操作支援システム1に対応し、
床面は床版面300に対応し、
設定領域は設定領域Saに対応し、
領域設定部は領域設定処理部63に対応し、
侵入検知部は検知処理部65に対応し、
侵入検知システムは揚重操作支援システム1に対応し、
撮像ステップは撮像処理(ステップs1)に対応し、
検出ステップは吊り荷検出処理(ステップs4)に対応し、
算出ステップは位置・形状算出処理(ステップs5)に対応し、
出力ステップは相対高さ表示処理(ステップs7)に対応し、
領域設定ステップは処理領域設定処理(ステップt1)に対応し、
侵入検知ステップは誘導員検知処理(ステップu1)に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0111】
例えば、上述の説明では、カメラ20で撮像した動画像の撮像データから吊り荷200や誘導員Mを検出したが、カメラ20により所定間隔で連続撮影した静止画像を撮像データとしてもよいし、複数のカメラ20を備え、複数のカメラ20で撮像した撮像データにより吊り荷200や誘導員Mの三次元情報を取得するように構成してもよい。さらには、カメラ20を三次元レーザスキャナ等のスキャナで構成し、スキャナで走査した点群データを撮像データとしてもよい。また、誘導員Mではなく、床版面300で作業する誘導員Mとは別の作業員を検出するように構成してもよい。
【0112】
また、上述の説明では、高架橋における床版面300を高所な床面としたが、地盤面310を床面としてもよいし、ステージ上での作業におけるステージ上面を床面としてもよい。
また、上述の説明では、誘導員Mの侵入を検知する領域を吊り荷200直下の直下エリアUaに対して設定した設定領域Saや変形設定領域Taとしたが、さらに複数の設定領域を設けてもよいし、直下エリアUaを設定領域Saとしてもよい。
【0113】
また、設定領域Saや変形設定領域Taへの誘導員Mの侵入検知として、カメラ20による撮像データから誘導員Mを検知し、取得するその三次元情報に基づいて算出する三次元位置情報によって、設定領域Saや変形設定領域Taへの侵入を比較判定したが、設定領域Saや変形設定領域Taの三次元位置情報が把握できているため、誘導員Mに装着したウェアラブル端末30に備えたGPS等によって誘導員Mの三次元位置情報を取得して、設定領域Saや変形設定領域Taへの侵入を検知するように構成してもよい。
【0114】
また、上述の侵入検知処理では、吊り荷200の相対高さHが所定の高さ以上の場合、アラート報知処理を行い、相対高さHが高さ以下の場合、報知処理を行わないこと、つまりアラートを消音して区別したが、相対高さHが所定高さ以上の場合のアラートに対して所定高さ以下の場合のアラートの音量を小さくしてもよいし、発音パターンを変更する、あるいは音色を変更するなどによって区別してもよい。
【0115】
また、吊り荷200の相対高さHが所定の高さ以上の場合のアラート報知処理として、オペレータ端末40の端末報知部41にアラート表示を行ってもよく、この場合、表示内容、表示態様や表示パターンを変更する、あるいは不表示とするなどによって相対高さHが所定高さより低いことを区別してもよい。
【0116】
さらに、上方の侵入検知処理では、タイミングの異なる吊り荷200の撮像データによって吊り荷200の旋回を検出したが、タイミングの異なる複数の撮像データからクレーン100におけるブーム101の旋回を検出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…揚重操作支援システム
20…カメラ
41…端末報知部
63…領域設定処理部
64…検出処理部
65…検知処理部
66…算出処理部
100…クレーン
200…吊り荷
300…床版面
Sa…設定領域
ステップs1…撮像処理
ステップs4…吊り荷検出処理
ステップs5…位置・形状算出処理
ステップs7…表示処理
ステップt1…処理領域設定処理
ステップu1…誘導員検知処理