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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159082
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】接触型入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20241031BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20241031BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G06F3/01 560
B06B1/04 S
G06F3/041 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074842
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和隆
(72)【発明者】
【氏名】石谷 智也
【テーマコード(参考)】
5D107
5E555
【Fターム(参考)】
5D107AA16
5D107BB08
5D107CC09
5D107CD01
5D107CD08
5D107DD03
5D107DD12
5E555AA08
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC30
5E555CA12
5E555CB12
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】操作部への振動出力を確保すると共に非操作部への振動伝達を抑制する。
【解決手段】接触型入力装置は、操作パネルと、前記操作パネルの裏面に配置される振動アクチュエータと、を有し、前記操作パネルへの接触操作に応じて前記振動アクチュエータを面直方向に振動させ、操作者に触感を付与する接触型入力装置であって、前記操作パネルは、表面に操作部と非操作部とを含み、前記振動アクチュエータは、前記裏面において前記操作部に対応する第一部分に配置され、前記操作パネルを固定する固定具が、前記裏面において前記操作部と前記非操作部との境界部に対応する第二部分に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルと、前記操作パネルの裏面に配置される振動アクチュエータと、を有し、前記操作パネルへの接触操作に応じて前記振動アクチュエータを面直方向に振動させ、操作者に触感を付与する接触型入力装置であって、
前記操作パネルは、表面に操作部と非操作部とを含み、
前記振動アクチュエータは、前記裏面において前記操作部に対応する第一部分に配置され、
前記操作パネルを固定する固定具が、前記裏面において前記操作部と前記非操作部との境界部に対応する第二部分に配置される、
接触型入力装置。
【請求項2】
前記固定具は、前記第二部分に配置され、前記第一部分の全周を囲う形状のフレームを有する、
請求項1に記載の接触型入力装置。
【請求項3】
前記振動アクチュエータは、
前記操作パネルと平行に配置される磁性体と、
前記面直方向で前記磁性体に対向して配置され、コアの中央部にコイルを巻回してなる電磁石と、
前記電磁石を支持し、前記磁性体に接続される、弾性変形可能な弾性体と、
を有し、
前記電磁石又は前記磁性体の一方が、
前記コイルへの通電により生ずる前記電磁石の磁力により、前記電磁石又は前記磁性体の他方に向かって前記面直方向の一方向に変位して、
前記弾性体の弾性変形により生ずる前記弾性体の弾性力により、前記面直方向の双方向に振動する、
請求項1に記載の接触型入力装置。
【請求項4】
前記磁性体は、板面が前記操作パネルと平行に配置される平板状であり、振動時に、内部に前記コイルを配置した状態で前記電磁石と前記磁性体との相対移動を可能とする開口を有する、
請求項3に記載の接触型入力装置。
【請求項5】
前記磁性体、前記電磁石及び前記弾性体は、夫々の板面が前記操作パネルと平行に配置される平板状であり、前記電磁石又は前記磁性体の一方が前記面直方向で中立位置にあるときに、前記弾性体の全体が前記面直方向で前記磁性体と前記電磁石との間のギャップ内に位置する、
請求項3に記載の接触型入力装置。
【請求項6】
前記弾性体は、前記磁性体及び前記電磁石を囲う矩形枠状であり、一対の対辺で前記電磁石を支持し、他方の対辺で前記磁性体に接続される、
請求項5に記載の接触型入力装置。
【請求項7】
前記振動アクチュエータは、前記第一部分内の中央部の一か所に配置される、
請求項1に記載の接触型入力装置。
【請求項8】
前記振動アクチュエータは、前記第一部分内の複数か所に配置される、
請求項1に記載の接触型入力装置。
【請求項9】
前記複数か所は、前記第一部分を長手方向で四等分した四つの領域のうち両端の領域に対応する二か所である、
請求項8に記載の接触型入力装置。
【請求項10】
前記接触操作の位置及び荷重を夫々検出する位置センサ及び荷重センサと、
前記位置の検出結果及び前記荷重の検出結果に基づいて、前記複数か所の前記振動アクチュエータを選択的に駆動する制御部と、
をさらに有する請求項8に記載の接触型入力装置。
【請求項11】
前記固定具は、前記フレームにおいて前記第二部分から前記第一部分に突出する突出部を有し、前記突出部は、前記接触操作の荷重を検出する荷重センサを片持ち状態で支持する、
請求項2に記載の接触型入力装置。
【請求項12】
前記フレームの外周部と前記操作パネルとの間に配置される減衰材をさらに有する、
請求項2に記載の接触型入力装置。
【請求項13】
前記フレームは、前記第一部分の中央を横切って延在する中央部と、有し、
前記フレームの前記中央部と前記操作パネルとの間に配置される減衰材をさらに有する、
請求項2に記載の接触型入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作パネル(以下、単に「パネル」ともいう)に接触した操作者の指腹等に対し、触感或いは操作感(以下、これらを纏めて「触感」という)として、電磁的な機構により発生させた振動を付与する構成が、例えば特許文献1-3により知られている。
【0003】
特許文献1に記載の振動アクチュエータは、パネル面に対して垂直にガイドシャフトを配置し、シャフトの径方向で内側外側に可動マグネットと固定コイルとを配置して、ガイドシャフトに沿って可動マグネットを往復移動させる構成である。よって、この装置自体に一定以上の高さが必要となる。特許文献2に記載の振動アクチュエータ(振動呈示装置)は、パネル面に対して垂直にセンターヨークを配置し、シャフトの径方向で内側外側に可動コイルと固定マグネットとを配置し、その外周を立壁で囲んでパネルを支持する支持部を配置して、支持部の内側でセンターヨークに沿って可動コイルを往復移動させる構成である。よって、この装置自体も一定以上の高さが必要となる。そして、特許文献1、2に記載の振動アクチュエータでは、マグネット(永久磁石)を使用しており、製造コストや製造容易性の点で課題がある。
【0004】
特許文献3に記載の振動アクチュエータは、コイルが巻回されたコアの両端部に板状のヨークを対向配置し、コア組立体が固定された扁平状のベース部と板状のヨークとを板状の弾性部で支持する構成を採る。この振動アクチュエータでは、コイルへの通電によりコアの両端部に生じる磁力により、ヨークをコア組立体に向けて吸引し、ヨークの移動により弾性部に生じる弾性力により、ヨークを対向方向に振動させる。これにより、振動アクチュエータが薄型化され、さらに、マグネットを使用しない電磁的な機構による振動出力・触感付与を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-070729号公報
【特許文献2】特開2016-163854号公報
【特許文献3】特開2020-069447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、操作パネルを介して操作者の接触操作入力を受け付ける接触型入力装置において、上記振動アクチュエータ等の振動源は、操作面の裏面に配置される。操作面となる表面は、必ずしも全面が、操作者の接触操作入力を受け付ける操作部とはならず、操作部と操作者の接触操作入力を受け付けない非操作部とが存在する場合がある。このような場合、操作部への振動の出力強度を確保する一方、非操作部への振動の出力強度を抑制することが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、操作部への振動出力を確保すると共に非操作部への振動伝達を抑制できる接触型入力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る接触型入力装置の一態様は、
操作パネルと、前記操作パネルの裏面に配置される振動アクチュエータと、を有し、前記操作パネルへの接触操作に応じて前記振動アクチュエータを面直方向に振動させ、操作者に触感を付与する接触型入力装置であって、
前記操作パネルは、表面に操作部と非操作部とを含み、
前記振動アクチュエータは、前記裏面において前記操作部に対応する第一部分に配置され、
前記操作パネルを固定する固定具が、前記裏面において前記操作部と前記非操作部との境界部に対応する第二部分に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作部への振動出力を確保すると共に非操作部への振動伝達を抑制できる接触型入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A及び図1Bは、実施の形態1に係る接触型入力装置を表面側及び裏面側から夫々見た外観図である。
図2図2は、実施の形態1に係る接触型入力装置を裏面側から見た分解斜視図である。
図3図3は、実施の形態1に係る接触型入力装置の操作パネルにおいて表面又は裏面の区分を説明するための図である。
図4図4は、実施の形態1に係る接触型入力装置の操作パネルにおける位置センサの配置を説明するための図である。
図5図5は、実施の形態1に係る接触型入力装置を裏面側から平面視した図である。
図6図6は、実施の形態1に係る接触型入力装置の振動アクチュエータの外観斜視図である。
図7図7は、同振動アクチュエータの平面図である。
図8図8は、同振動アクチュエータの底面図である。
図9図9は、同振動アクチュエータの正面図である。
図10図10は、同振動アクチュエータの右側面図である。
図11図11は、図7のA-A線矢視断面図である。
図12図12は、図7のB-B線矢視断面図である。
図13図13は、同振動アクチュエータの分解斜視図である。
図14図14は、同振動アクチュエータにおいて可動部と弾性支持部との関係を示す分解斜視図である。
図15図15は、同振動アクチュエータにおいて可動部と弾性支持部とベース部との関係を示す分解斜視図である。
図16図16A図16B及び図16Cは、同振動アクチュエータの動作の説明に供する図である。
図17図17は、同振動アクチュエータの変形例の斜視図である。
図18図18は、同振動アクチュエータの変形例の分解斜視図である。
図19図19は、同振動アクチュエータの制御部の回路構成を示す図である。
図20図20は、実施の形態1に係る接触型入力装置の制御系を模式的に示す図である。
図21図21は、実施の形態2に係る接触型入力装置を裏面側から平面視した図である。
図22図22は、実施の形態3に係る接触型入力装置の操作パネルにおける位置センサ及び荷重センサの配置を説明するための図である。
図23図23は、実施の形態3に係る接触型入力装置の制御系を模式的に示す図である。
図24図24は、実施の形態4に係る接触型入力装置を裏面側から平面視した図である。
図25図25A及び図25Bは、実施の形態4に係る接触型入力装置を裏面側及び表面側から夫々見た分解斜視図である。
図26図26は、実施の形態4に係る接触型入力装置の制御系を模式的に示す図である。
図27図27は、実施の形態5に係る接触型入力装置を裏面側から平面視した図である。
図28図28は、実施の形態5に係る接触型入力装置を表面側から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る装置について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
以下説明する各実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。X方向、Y方向及びZ方向は夫々、接触型入力装置の短手方向、長手方向及び面直方向に対応するものとして説明される。ただし、接触型入力装置のX方向の長さとY方向の長さとは、同一であってもよい。なお、接触型入力装置が備える振動アクチュエータにおいては、X方向、Y方向及びZ方向は夫々、左右方向、前後方向及び上下方向に対応するものとして説明されるが、これらの対応関係が振動アクチュエータの設置態様に応じて異なることは、言うまでもない。また、Z方向に関して言えば、本実施の形態では、Z方向プラス側(裏側又は裏面側)は、操作者が操作する際に押圧する方向であり、Z方向マイナス側(表側又は表面側)は、操作者に振動フィードバックを付与する方向である。
【0013】
なお、各実施の形態の説明で用いる形状に関する表現は、内容理解促進のための便宜的な表現であり、また、各実施の形態で採用される形状自体、一例であり、種々変更して実施可能である。
【0014】
(実施の形態1)
<接触型入力装置1の全体構成>
図1A及び図1Bは、実施の形態1に係る接触型入力装置を表面側及び裏面側から夫々見た外観図である。図2は、本実施の形態に係る接触型入力装置を裏面側から見た分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る接触型入力装置の操作パネルにおいて表面又は裏面の区分を説明するための図である。図4は、本実施の形態に係る接触型入力装置の操作パネルにおける位置センサの配置を説明するための図である。図5は、本実施の形態に係る接触型入力装置を裏面側から平面視した図である。
【0015】
本実施の形態に係る接触型入力装置(以下、単に「入力装置」ともいう)1は、触感としてフィードバックされる振動の振動源である振動アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」ともいう)2と、アクチュエータ2の取付対象である操作パネル(以下、単に「パネル」ともいう)3と、振動伝達阻止機能を発揮するフレーム4と、パネル3とフレーム4とを接合する接合部材5と、を有する。
【0016】
パネル3は、表面3aに、操作者の接触操作入力を受け付け可能な領域である操作部3a1と、操作部3a1の外縁部3a2の外周に位置し、操作者の接触操作入力を受け付け可能でない領域である非操作部3a3と、を有する。本実施の形態では、パネル3の表面3aの外装は、シームレスなデザインであり、操作部3a1と非操作部3a3との境界線である外縁部3a2は、見かけ上は区別が付かない。ただし、パネル3の表面3aの外装は、シームレスでなくてもよい。
【0017】
パネル3は、裏面3bにおいては、操作部3a1に対応する位置範囲が第一部分3b1であり、操作部3a1と非操作部3a3との境界線(外縁部3a2)の外周を囲う環状の位置範囲が第二部分3b3である。つまり、この第二部分3b3は、裏面3bにおいて、操作部3a1と非操作部3a3との境界部に対応する部分である。第二部分3b3の外縁部3b4のさらに外周には、第三部分3b5が広がる。裏面3bにおいて、非操作部3a3に対応する位置範囲は、第二部分3b3と第三部分3b5とに分かれている。
【0018】
本実施の形態に係る接触型入力装置1が例えばノートパソコン等におけるポインティングデバイスとしてのトラックパッドに適用される場合、パネル3の操作部3a1が、トラックパッドとして機能する。そして、その場合、操作部3a1を囲む外装部分である非操作部3a3は、典型的にはパームレストとして機能する。すなわち、非操作部3a3は、操作する手指の位置を安定化させるために操作者が手を乗せることで、操作者の接触が発生する部分である。
【0019】
なお、接触型入力装置1が適用可能なデバイスの種類は、トラックパッドに限定されず、接触操作入力を受け付け可能な操作部が平面状であり、操作部と同一面内に非操作部が存在するデバイスであれば、タッチパッド又はタッチパネル等、他の種類のデバイスであってもよい。
【0020】
また、本実施の形態では、図4に示すようにパネル3の表面3aには、複数の位置センサ3cが二次元アレイ状に配置されており、操作部3a1の中のどの位置に接触操作が付与されたのかが検出可能となっている。位置センサ3cの種類は特に限定されないが、例えば静電容量式センサである。複数の位置センサ3cは、接触位置を高精細に検出可能とするよう高密度で配置されてもよいし、図示されているように互いに分離して配置されてもよい。
【0021】
アクチュエータ2は、パネル3の裏面3bの第一部分3b1に配置される。アクチュエータ2は、パネル3への操作者の接触操作に応じてパネル面(表面3a、裏面3b)に直交する面直方向に振動し、この振動を裏面3b側から表面3a側の操作部3a1に付与することで、操作者に触感を付与する。アクチュエータ2の内部構成については後述するが、電磁駆動式で面直方向に振動を発生させるタイプであることから、高出力で振動をパネル3に対して付与することができる。
【0022】
本実施の形態では、二つのアクチュエータ2が、第一部分3b1に配置される。より具体的には、第一部分3b1の長手方向(Y方向)長さを四等分した区分領域DR1、DR2、DR3、DR4のうち、長手方向両端に位置する二つの区分領域DR1、DR4に配置される。すなわち、二つのアクチュエータ2は、操作部3a1に対応する第一部分3b1の内部ではあるものの、非操作部3a3に対応する第二部分3b3に比較的近い位置に夫々配置される。第二部分3b3では、後述する通りフレーム4によってパネル3が固定され、振動伝達が抑制されるので、その影響により、第一部分3b1においては、中央部よりも端部のほうが、振動の出力強度を確保しにくい。しかしながら、本実施の形態では、第一部分3b1の長手方向両端部にアクチュエータ2が配置されるため、第一部分3b1の長手方向両端部でも高出力の振動を確保することができる。すなわち、不要な触感提示となる非操作部3b3への振動伝達を抑制しながら、広範囲での触感提示が可能となる。
【0023】
フレーム4は、パネル3を固定する固定具として機能する。フレーム4は、剛性の高い枠形状の板状部材であり、例えば板金の中央部を打ち抜いて環状とした部材である。本実施の形態では、フレーム4は、両面テープ等、粘着性を有する接合部材5によりパネル3の裏面3bの第二部分3b3に装着される。なお、接合部材5は、例えばねじであってもよく、この場合、ねじをフレーム4の貫通孔4a(図4参照)に挿通してパネル3に螺合させることで、フレーム4をパネル3に取り付けてもよい。
【0024】
フレーム4は、矩形状の外周部4bと、第一部分3b1を横切って外周部4bの一対の対辺を橋渡すよう延在し、フレーム4の剛性や機械的強度を確保する中央部4c(本実施の形態では二本の中央部4c)と、を有する。外周部4bは、第二部分3b3に配置され、第一部分3b1の全周を囲う形状である。この形状により、アクチュエータ2から第一部分3b1に入力された振動が、第二部分3b3、第三部分3b5へと広がって伝達するのを、第一部分3b1の全周にわたって阻止することができるため、パネル3の表面3aにおいては操作部3a1から3a3へと振動が伝達するのを抑制することができる。
【0025】
<振動アクチュエータ2の構成>
以下、振動アクチュエータ2の構成について説明する。なお、振動アクチュエータ2の構成の説明においては、Z方向プラス側が「平面側」又は「上側」とされ、Z方向マイナス側が「底面側」又は「下側」とされる。そして、振動アクチュエータ2を構成する各部品において、「平面側」又は「上側」にある面は「表面」又は「上面」とされ、「背面側」又は「下側」にある面は「裏面」又は「下面」とされる。
【0026】
<振動アクチュエータ2の全体構成>
振動アクチュエータ2は、平板或いは薄板状の薄型振動アクチュエータであり、Z方向を厚み方向とすると、厚み方向で、操作機器の裏面側に対向して、且つ操作機器を振動可能に配置される。
【0027】
振動アクチュエータ2は、薄板状に形成されており、可動部20と、ベース部30と、可動部20をベース部30に対して移動自在に支持する弾性支持部(弾性体)としての板状弾性部40と、を有する。なお、弾性支持部は、板状弾性部40としたが、可動部20をベース部30に対して移動自在に支持するものであれば板状に限らない。また、ベース部30も、本実施の形態では平板状であるため、以下では、「ベースプレート」とも称するが、板状でなく曲げ加工が多少加えられていてもよい。可動部20も、本実施の形態では板状であるが、薄型であれば板状でなくてもよい。可動部20、ベース部30及び板状弾性部40は、各板面がXY平面に沿うような配置となっており、これにより、振動アクチュエータ2の全体構成もXY平面に沿う薄板状の構成となっている。
【0028】
振動アクチュエータ2では、可動部20及びベース部30のうちの一方を介して、操作者の接触操作入力を受け付ける操作パネル3に接続可能である。
【0029】
振動アクチュエータ2は、可動部20が、Z方向、具体的には、ベース部30に対して接離する動作で振動することにより、その振動を、振動アクチュエータ2が取り付けられる操作機器に、触感として付与する。
【0030】
<可動部20>
可動部20は、矩形板状に形成され、コイル22と、コア24と、錘部26とを有する。コイルは扁平形状に形成され、コア24の中央部を囲むように配置されている。なお、コイル22は、コア24の中央部の外周に絶縁材料を介して配置される。絶縁材料は例えば、コア24に塗布されて硬化する塗布剤であってもよいし、ボビン状の絶縁部材として構成し、コイル22とコア24との間に介在させてもよい。絶縁材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(Poly Butylene Terephthalate:PBT)等の樹脂材料を用い、これにより、コイル22とコア24との間の電気的絶縁を確保できる。
【0031】
コア(磁性コア)24は、磁性体であり、巻回軸方向の両端部24a、24bがコイル22から突出する、つまり、巻回されるコイル22から両端部24a、24bが突出する。コア24の両端部24a、24bの先端には、それぞれ弾性支持部に接合されるばね接続部241、242が設けられている。コア24は矩形板状に形成され、両端部24a、24bはそれぞれ幅広の矩形板状をなし、裏面側でベース部30と対向する。両端部24a、24bの表面には、ばね接続部241、242上に延在する錘部26が取り付けられている。
【0032】
錘部26は板状であり、コア24の形状、例えば横幅(X方向の長さ)及び奥行き方向の長さ(Y方向の長さ)に対応して設けられることが好ましい。その重量は任意に設定でき、例えば、錘部26のY方向の長さを調整したり、Z方向の長さを調整したり、材料を調整したりする等して調整できる。このように、錘部26は、可動部20の重量を調整でき、この調整により固有振動数を設定できる。なお、厚み(Z方向)の配置スペースが制限される場合は、XY方向で重量が増加する形状としてもよい。
【0033】
コア24は、コイル22への通電により磁化され、電磁石として機能する。両端部24a、24bは磁極となり、近接する磁性体、つまり、ベース部30との間で磁気吸引力を発生する。言い換えると、可動部20は、コア24の中央部にコイル22を巻回してなる電磁石を有する。
【0034】
コア24は、コイル22への通電により両端部24a、24b、特に、両端部24a、24bの裏面が面状の磁極面となる。なお、コア24は、例えば、ケイ素鋼板、パーマロイ、フェライト等の軟磁性材料により形成されることが好ましい。また、コア24は、電磁ステンレス、焼結材、MIM(メタルインジェクションモールド)材、積層鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)等により構成されてもよい。
【0035】
<ベース部30>
ベース部30は、板状弾性部40を介して、ベース部30の接離方向、図6ではZ方向に、可動部20を移動自在に支持する。ベース部30は、コア24の両端部24a、24bに対してコイル22の巻回軸方向と交差する対向方向でギャップ(隙間)Gを空けて対向配置される磁性体である対向部32a、32bを有する。ベース部30は、Z方向に所定の厚みを有する扁平形状の部材であり、振動アクチュエータ2の底面を形成する。
【0036】
ベース部30は、磁性体であるベース本体部31を有し、ベース本体部31には、両端部24a、24bと対向配置される対向部(磁性体)32a、32bと、弾性部接続部であるばね接続部34a、34bと、固定部36とが設けられている。
【0037】
ベース本体部31は、中央に開口部38を有し、平面視正方形枠状に形成されている。開口部38は、コイル22の下部が挿入される空間であり、コイル22の外形に対応した形状、例えば、正方形状に形成されている。
【0038】
ベース本体部31において、互いに対向して離間する一対の辺部311のそれぞれに対向部32a、32bが形成され、一対の辺部311間で、互いに対向して離間する他の一対の辺部312のそれぞれに、ばね固定部34a、34bが形成されている。対向部32a、32b及びばね固定部34a、34bは、それぞれベース本体部31の表面、つまり、可動部側の面に形成されている。
【0039】
一対の辺部311及び他の一対の辺部312はそれぞれ面状体であり、ベース本体部31の外周部を構成する4つ外縁部の中央部には、それぞれ切り欠き部311a、312aが形成されている。切り欠き部311a、312aは、それぞれ、配置される板状弾性部40の一部の変形領域を確保するためのものである。
【0040】
対向部(対向面)32a、32bは、ベース部30の一部であり、コア24の両端部24a、24bに対してコイル22の巻回軸方向と交差する対向方向、例えば、Z方向で隙間(ギャップ)Gをあけて対向配置される磁性体を構成する。対向部32a、32bは、コイル22への通電により、両端部24a、24bの裏面との間に発生する磁気吸引力により、両端部24a、24bに吸引される。対向部32a、32bは、例えば、一対の辺部311のそれぞれの中央部に形成され、開口部38をY方向で挟む位置に配置されている。
【0041】
対向部32a、32bは、両端部24a、24bの裏面に全面的に対向する面であるので、両端部24a、24bの裏面との間で効率よく磁束を流すことができる。対向部32a、32bは、ベース本体部31の一部として、強磁性体であり、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガドリニウム(Gd)等で形成される。対向部32a、32bは、ばね接続部34a、34b及び固定部36とともにベース本体部31として、特に、鉄、コバルト、ニッケル等の金属材料(例えば鉄)により形成される。
【0042】
対向部32a、32bの上方(Z方向)で離間して対向して両端部24a、24bが配置され、X方向、Y方向のそれぞれの中心で左右対称形をなしている、ばね接続部34a、34bは、開口部38をX方向で挟むように配置され、ベース部30の表面側で、板状弾性部40の他端部に接合される。
【0043】
固定部36は、ベース部30を固定するものである。固定部36は、例えば、止着部材を介して、操作者が接触操作する操作機器(パネル3)に止着される止着孔である(図7図8参照)。
【0044】
固定部36は、ベース部30の四隅に形成され、ベース部30を固定対象に確実に止着して固定できる。なお固定部36は、四隅に形成されているが、固定対象にベース部30を固定できれば、固定部36の数はいくつでもよい。
【0045】
上述した通り、ベース部30は、板面が操作パネル3と平行なXY平面に沿って配置される平板状であり、振動時に、内部にコイル22を配置した状態で、可動部20の電磁石とベース部30の磁性体との相対移動を可能とする開口部38を有する。この構成により、可動部20においてコイル22により増大する厚みの一部をベース部30の開口部38で吸収できるため、振動アクチュエータ2全体の薄型構成を確保でき、振動アクチュエータ2を搭載する接触型入力装置1全体の薄型化にも寄与することができる。
【0046】
<板状弾性部40>
板状弾性部40は、板状であり、具体的には、弾性変形する板ばねであり、ベース部30に対して可動部20を可動自在に支持する。板状弾性部40は、所定の厚み(Z方向の厚み)を有する薄板枠状に形成され、厚み方向(Z方向)でベース部30と可動部20との間に層状に配置される。
【0047】
板状弾性部40は、可動部20とベース部30のそれぞれに接続される。また、板状弾性部40は、ベース部30を囲む矩形枠状に形成され、互いに平行な一対の辺部461のそれぞれに可動部20が接合され、一対の辺部461に隣り合う互いに対向する他の一対の辺部462のそれぞれにベース部30が接合される。言い換えれば、板状弾性体40は、一対の対辺で可動部20の電磁石を支持し、他方の対辺で磁性体であるベース部30に接続される。これにより、板状弾性部40は、可動部20をベース部30に対して対向方向(振動方向)に対して垂直な方向(X方向及びY方向)で対称に、バランスよく支持する。板状弾性部40は、矩形の枠体(ここでは薄板枠状体)であるので、部品点数の削減、全体の薄型化を図ることができ、更に、部品の曲げ加工等も無くして製造できる。さらに枠体であるので、枠体内に他部品を配置することにより、他部品に干渉しないように配置できる。また、板状弾性部40は、ばね定数の設定により、可動部20の変位量、固有振動数を決めることができる。
【0048】
板状弾性部40は、可動部側固定部42a、42bと、ベース部側固定部44a、44bと、可動部側固定部42a、42bとベース部側固定部44a、44bとを接続し弾性変形するアームを含む面状の弾性本体部46と、を有する。
【0049】
弾性本体部46は、可動部側固定部42a、42bとベース部側固定部44a、44bとを、Z方向で弾性変形可能に接続する。
【0050】
弾性本体部46は、可動部側固定部42a、42bとベース部側固定部44a、44bとを接続する変形可能なアーム部を有する。アーム部は、例えば、L字状で形成することにより、平面視してベース部30を囲む枠形状に形成され、ベース部30の外周側でZ方向に変形自在となっている。
【0051】
弾性本体部46において、可動部側固定部42a、42bとこれらに直線的に接続されるL字アームの一辺で、互いに平行な一対の辺部461を構成し、これら一対の辺部461に隣り合う他の一対の辺部462には、内側に突出するようにベース部側固定部44a、44bが形成されている。
【0052】
板状弾性部40において、弾性本体部46、可動部側固定部42a、42b及びベース部側固定部44a、44bは同一平面上に配置されている。
【0053】
可動部側固定部42a、42bは、面状であり、可動部20に固定される。可動部側固定部42a、42bは、弾性本体部46において平面視して、ベース部30の外側に配置される一対の辺部311の中央部に設けられ、表面で、コア24のばね接続部241、242に裏面側で面接触して固定されている。可動部側固定部42a、42bは、X方向の中心或いは、Y方向の中心に対して、それぞれの方向で対称となるように設けられている。ベース部側固定部44a、44bは、面状であり、ベース部30に固定される。
【0054】
板状弾性部40は、弾性を確保するために、弾性本体部46のアームを有し、このアーム形状は可動部側固定部42a、42b及びベース部側固定部44a、44bをZ方向に変位自在に連結するものであれば、どのような形状であってもよい。また、弾性本体部46は可動部20をXY平面上に位置した状態で、Z方向(振動付与方向)に移動させるようにバランス良く変形するよう形成されていればどのような形状であってもよい。
【0055】
板状弾性部40は、可動部20の両端部の裏面と、ベース部30の対向部32a、32bとを、互いの垂直方向である振動方向(Z方向)でギャップGを空けて対向するように可動部20を支持する。板状弾性部40は、その厚み(Z方向の長さ)によりギャップGを形成する。
【0056】
板状弾性部40は、コア24或いはコイル22の上面と、ベース部30の底面との間で変形する。このように板状弾性部40は、矩形枠状に形成され、矩形枠を構成するそれぞれの辺部の中央部に、可動部側固定部42a、42bとベース部側固定部44a、44bとが配置されている。可動部20の駆動時に可動部側固定部42a、42bがベース部側固定部44a、44bに対して変位する。
【0057】
可動部20は、弾性本体部46において、可動部側固定部42a、42bとベース部側固定部44a、44bと接続するL字形状のアームにより両側方で支持する。よって、弾性変形する際の応力分散が可能となり、可動部20を、ベース部30に対して傾斜することなく、振動方向(Z方向)に移動させることができ、振動状態の信頼性の向上、安定性の改善を図ることができる。
【0058】
ベース部30、可動部20(特に、コイル22通電時に磁化し電磁石として機能するコア24)及び板状弾性部40は、夫々の板面が操作パネル3と平行に配置される平板状であり、コア24又はベース部30の一方が面直方向で中立位置にあるときに、板状弾性部40の全体が面直方向でベース部30とコア24との間のギャップG内に位置する(図12等参照)。この構成により、面直方向での可動部20のストロークを確保しながらも、互いに積層配置されたベース部30、可動部20及び板状弾性部40が面直方向に嵩張らないので、振動アクチュエータ2全体の薄型構成を確保でき、振動アクチュエータ2を搭載する接触型入力装置1全体の薄型化にも寄与することができる。
【0059】
<振動アクチュエータ2の磁気回路>
図16A図16Cは、振動アクチュエータの動作の説明に供する図である。なお、図16A図16Cは、図7のB-B線で切断した部分を示す振動アクチュエータ2の斜視図であり、磁気回路は、図示しない部分も図示される部分と同様の磁束の流れMを有する。
【0060】
図16Aは、振動アクチュエータ2の静止状態(静止位置SIに位置)を示す図である。図16Aに示す振動アクチュエータ2のコイル22に電流を流すと、コア24が励磁されて磁界が発生し、コア24の両端部24a、24bが磁極となる。例えば、図16Bでは、コア24において、一端部24aがN極となり、他端部24bがS極となっている。すると、コア24と、ベース部30の対向部32a、32bとの間には、磁束の流れMで示す磁気回路が形成される。この磁気回路における磁束の流れMは、一端部24aから対向する対向部32aに流れ、対向部32aから対向部32bに至り、対向部32bから、コア24の他端部24bに流れ、コア24を通り一端部24aから再び出射される。
【0061】
これにより、電磁ソレノイドの原理により、コア24の両端部24a、24bは、磁気吸引力KRを発生する。すると、ベース部30の対向部32a、32bの双方に、両端部24a、24bの双方が引き寄せられる。ベース部30は、固定部36を介して筐体等に固定されているため、対向部32a、32bに、両端部24a、24bが引き寄られ、吸着する。つまり、板状弾性部40が変形し、可動部20がベース部30側に引き寄せられる。可動部20は、ベース部30が固定された位置(KI)側に近接配置される。
【0062】
次いで、コイル22への通電を解除すると、磁界は消滅し、図16Cに示すように、可動部20の磁気吸引力KRは無くなり、ベース部30側に変形した板状弾性部40の付勢力が解放される。すなわち、板状弾性部40としてのバネの反力HRが発生し、板状弾性部40の反力HRにより可動部20は、元の位置(基準位置である非駆動の静止状態での位置SI)に移動(磁気吸引力KRの吸引方向とは反対のプラスZ方向に移動)するように移動する。このとき可動部20は、反力HRにより、静止状態である静止位置SIよりもベース部30から離間する方向に変位した位置HIまで移動することになり、強い振動を発生する。
【0063】
この振動は、付勢力の減衰に伴い、減衰しつつ繰り返して自由振動する。また、コイル22への通電、解除を繰り替えして可動部20をZ方向に往復移動して振動を発生するようにしてもよい。このように振動アクチュエータ2では、ベース部30に対して板状弾性部40で吊られた状態で支持された可動部20は、通電すると電磁石と磁性体である対向部32a、32bとの間で発生する磁気吸引力により、機械的に変位し、その後、自由振動する。
【0064】
このように、振動アクチュエータ2は、コイル22への通電によりコア24と対向部(磁性体)32a、32bとの間に発生する磁気吸引力によりベース部30側への可動部20の移動を生じさせる。この移動は、板状弾性部40に発生する(付勢力)弾性力により可動部20の振動を発生して、操作者に触感を付与する。
【0065】
振動アクチュエータ2では、コイル22が巻回されるコア24が、ベース部30の開口部38にコイル22を挿通させた状態で、板状弾性部40によりベース部30に対してZ方向に可動自在に支持されている。振動アクチュエータ2は、薄板状のコア24、コア24上のコイル22の部位、板状弾性部40及びベース部30を積層した高さのみで構成できる。これにより、振動アクチュエータ2は薄い板状に構成でき、配置スペースの省スペース化を実現できる。また、この構成は、コイルとマグネットをZ方向で対向して配置する等のように、磁気を発生してZ方向に可動部を駆動させる部材をZ方向で重ねて設ける構成と比較して、一層薄型化された構成を有する。
【0066】
また、板状のコア24がベース部30の対向部32a、32bに対して垂直に対向して配置され、可動部20は、コア24とベース部30の間に配置される板ばねである板状弾性部40を介して垂直方向(振動方向)に移動自在に保持されている。これにより、コア24はベース部30に対して板状弾性部40の厚み分のスペースを振幅のためのギャップとして確保した状態で振動自在に支持される。
【0067】
ベース部30は、コイル22が対向方向に移動自在に挿通される開口部(開口)38が設けられた板状である。ベース部30において開口部38の周囲には、ベース部30を操作者の接触操作入力を受け付ける操作パネル3に固定するための固定部36が設けられている。板状弾性部40は、固定部36の外側でベース部30を囲むよう延在する。これにより、ベース部30の固定を邪魔せず、板状弾性部40は弾性変形でき、しかもその弾性変形のためのストロークを確保できる。
【0068】
また、振動アクチュエータ2では、ベース部30、板状弾性部40、可動部20、加えて、錘部26等の構成要素は全てZ方向、つまり、厚み方向での組み立てとなるため、容易に組み立てることができ、組み立て時のばらつきが発生しにくく安定して駆動する振動アクチュエータを製造できる。
【0069】
また、振動アクチュエータ2は、板状弾性部40の厚みでコア24とベース部30との間の距離を確保した構成を有している。これにより、コア24とベース部30との間の距離を形成するために別部材を設ける必要がなく、一層、部品点数を削減することができ、さらにサイズダウン、組み立ての簡易化、低コスト化を図ることができる。
【0070】
さらに、板状弾性部40は、製造上、厚みの精度が高い板ばねであるので、コア24とベース部30(具体的には対向部32a、32b)との間のギャップは、バラツキが抑制され、安定したギャップとして確保される。コア24の両端部24a、24bの表面が露出する構成であるので、表面のスペースを用いて可動部20側の重量の増加を容易に行うことができる。
【0071】
また、マグネットを用いることなく、可動部20を往復直線移動させることで、振動を発生するので、マグネットを用いる構成と比較してコストの低廉化を図ることができる。
また、部品点数を少なくして、容易に製造できる。
【0072】
振動アクチュエータ2によれば、組立が容易であり、薄型化が図られることにより、省スペースに配置して好適に振動する。また、振動アクチュエータ2は薄型化、小型化を図ることができ、操作パネル3への操作者の押圧操作に対応した好適な触感を付与できる。
【0073】
なお、電流パルスを用いて振動アクチュエータに共振現象を発生させて可動部を駆動することについては、例えば特許文献3において、その駆動原理が、運動方程式及び回路方程式を交えて説明されている。この駆動原理は、本実施の形態に適用可能である。
【0074】
<振動アクチュエータ2の構成の変形例>
振動アクチュエータ2の構成は、上述した構成に限定されるものではなく、種々変更して実施可能である。ここで、振動アクチュエータ2の構成の変形例を一つ例示する。
【0075】
図17及び図18は、振動アクチュエータの変形例の斜視図及び分解斜視図である。
【0076】
ここに例示する振動アクチュエータ2Aでは、ベース部30であるベースプレート3930に開口が設けられていない。ベースプレート3930は、ベース部30(図8参照)の構成において開口部の無い形状とした高透磁率のベースプレートである。このベースプレート3930上に、板状コア24の中央部にコイル22を有する電磁石Dが配置されている。
【0077】
また、ベースプレート3930を囲う枠体である弾性体3940が、板状コア24を支持した状態でベースプレート3930に接続されている。この構成において、コイル22への通電により生ずる磁力により、可動部20の電磁石Dはコア24の板面に対して垂直方向に振動する。その場合、コイル22とベースプレート30との間隔調整は、図53に示すスペーサ62の設置により行うことができる。スペーサ62は、ベースプレート3930と弾性体3940のプレート側接続部との間に介設される。
【0078】
<振動アクチュエータ2の駆動回路>
図19は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの制御部の回路構成を示す図である。
【0079】
図19に示す駆動回路は、振動アクチュエータ2の制御部に含まれる。駆動回路は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成される電流パルス供給部としてのスイッチング素子152、電圧パルス印加部としての信号発生部(Signal generation)154、抵抗R1、R2、SBD(Schottky Barrier Diodes:ショットキーバリアダイオード)を有する。この駆動回路は、後述するアクチュエータドライバ174の具体的構成の一例である。
【0080】
電源電圧Vccに接続された信号発生部154は、スイッチング素子152のゲートに接続されている。スイッチング素子152は、放電切換スイッチである。スイッチング素子152は、振動アクチュエータ2(図19では[Actuator]で示す)、特に振動アクチュエータ2のコイル22に接続されている。振動アクチュエータ2には、電源部Vactから電圧が印加されている。よって、信号発生部154によるゲート電圧制御によりスイッチング素子152がオンオフされ、スイッチング素子152がオンされたときに電流が流れて、振動アクチュエータ2において、コイル22が通電される。
【0081】
なお、制御部は、振動アクチュエータ2が実装される接触型入力装置1の装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)等から構成される演算処理装置と、演算処理装置の作業領域として動作する例えばRAM(Random Access Memory)等から構成される主記憶装置と、演算処理装置の動作プログラムを記憶する例えばフラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性メモリから構成される補助記憶装置と、を有してよい。演算処理装置、主記憶装置及び補助記憶装置を含む構成は、後述するマイコン173の具体的構成の一例である。演算処理装置は、各種制御プログラム及び当該プログラムに付随する各種データ等(以下、各種制御プログラム及び各種データ等を纏めて「プログラム等」という)を、補助記憶装置から読み出して主記憶装置に記憶させ、データ等を使用しつつ制御プログラムを実行して、振動提示装置の各種機能を実現させる。例えば、データは、複数の異なる振動減衰期間や複数の異なる振動強度等を表現する様々なパターンのパルス波形データを含んでよい。各種制御プログラムは、操作者の接触操作を示す情報が入力された際に、その入力情報に対応する振動を発生するアクチュエータ駆動信号を生成するためのパルス波形データを読み出し、読み出したパルス波形データに従ってアクチュエータ駆動信号を生成するプログラムを含んでよい。
【0082】
なお、補助記憶装置は、振動提示装置に着脱可能な記憶媒体であってもよい。また、制御部を外部と通信可能に構成して、プログラム等が通信ネットワークを介して外部から制御部(の主記憶装置又は補助記憶装置)にダウンロードされるようにしてもよい。
【0083】
上述した主記憶装置及び補助記憶装置は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の一例である。
【0084】
<接触型入力装置1の制御系>
図20は、接触型入力装置1の制御系を模式的に示す図である。
【0085】
図20に示す接触型入力装置1の制御系は、二つのアクチュエータ2、操作パネル3、マイコン173及び二つのアクチュエータドライバ174を有する。なお、各振動アクチュエータ2において、機能的に制御系に組み込まれるのは、可動部20のコイル22である。
【0086】
操作パネル3は、操作パネル3上における操作者による接触操作を受け付けて、その接触位置を示す信号(操作位置検出信号)を出力する位置センサ3cを有する。位置センサ3cは、操作位置検出信号をマイコン173に出力する。
【0087】
マイコン173は、操作位置検出信号に基づき、接触操作に対応する位置で振動が発生するように、いずれか一方又は両方のアクチュエータドライバ174を制御する。マイコン173により制御されたアクチュエータドライバ174は、対応するアクチュエータ2のコイル22に、アクチュエータ駆動信号として駆動電流を供給する。
【0088】
アクチュエータドライバ174からの駆動電流を受けたアクチュエータ2は、操作パネル3に振動を伝達して振動させることにより、操作パネル3を操作した操作者に触感を付与する。このように、位置センサ3cにより検出された位置に応じて、適切なアクチュエータ2のコイル22への通電を行い、適切な位置で振動を操作パネル3に付与することにより、スイッチの感触のようなリアルな触感表現を実現することができる。
【0089】
<実施の形態1のまとめ>
以上説明したように、本実施の形態によれば、接触型入力装置1は、操作パネル3と、操作パネル3の裏面3bに配置される振動アクチュエータ2と、を有し、操作パネル3への接触操作に応じて振動アクチュエータ2を面直方向に振動させ、操作者に触感を付与する接触型入力装置である。このような接触型入力装置1において、操作パネル3は、表面3aに操作部3a1と非操作部3a3とを含み、振動アクチュエータ2は、裏面3bにおいて操作部3a1に対応する第一部分3b1に配置され、操作パネル3を固定するフレーム4が、裏面3bにおいて操作部3a1と非操作部3a3との境界部に対応する第二部分3b3に配置される。この構成により、操作パネル3において、操作部3a1への高出力の振動を確保できるとともに非操作部3a3への振動伝達を抑制できる。すなわち、接触操作入力を受け付けない領域(非操作部3a3)に触れている手指への不要な触感フィードバックを抑制しながら、操作部3a1を操作している手指に対して必要な触感フィードバックを行うことができる。操作者に対して優れた操作触感を付与することができる。
【0090】
また、接触型入力装置1に搭載される振動アクチュエータ2は、操作パネル3と平行に配置されるベース部30と、面直方向でベース部30に対向して配置され、コア24の中央部にコイル22を巻回してなる電磁石と、電磁石(コイル22、コア24)を支持し、ベース部30に接続される、弾性変形可能な板状弾性部40と、を有し、電磁石(コイル22、コア24)又はベース部30の一方が、コイル22への通電により生ずる電磁石(コイル22、コア24)の磁力により、電磁石(コイル22、コア24)又はベース部30の他方に向かって面直方向の一方向に変位して、板状弾性部40の弾性変形により生ずる板状弾性部40の弾性力により、面直方向の双方向に振動する。このような面直方向に振動する電磁式の振動アクチュエータ2の構成により、必要な触感をより高出力で付与することができる。
【0091】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について説明する。なお、本実施の形態は、実施の形態1と基本的に同様である。よって、本実施の形態において実施の形態1と共通する構成要素については、実施の形態1と同じ参照符号を付与し、その詳細な説明を省略する。本実施の形態は、振動アクチュエータ2が接触型入力装置1の第一領域3a1内の中央部に一つだけ配置されている点で、実施の形態1と相違する(図21参照)。この構成の場合でも、実施の形態1で述べた効果を実現することは可能であり、また、振動アクチュエータ2の配置個数を最小限に抑えることにより、それらの効果を低コストで実現することができる。
【0092】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について説明する。なお、本実施の形態は、実施の形態1と基本的に同様である。よって、本実施の形態において実施の形態1と共通する構成要素については、実施の形態1と同じ参照符号を付与し、その詳細な説明を省略する。本実施の形態は、操作パネル3において、接触操作の位置を検出可能な位置センサ3cに加えて、接触操作の荷重を検出可能な荷重センサが設けられている点で、実施の形態1と相違する。なお、本実施の形態では、位置センサ3cと荷重センサとを纏めて「位置荷重センサ3d」と称する。図22に示すように、位置荷重センサ3dの配置位置は、実施の形態1で説明した位置センサ3cの配置位置と同じである。
【0093】
図23は、本実施の形態に係る接触型入力装置1の制御系を模式的に示す図である。
【0094】
図23に示す接触型入力装置1の制御系は、二つのアクチュエータ2、操作パネル3、マイコン173及び二つのアクチュエータドライバ174を有する。
【0095】
操作パネル3は、操作パネル3上における操作者による接触操作を受け付けて、位置荷重センサ3dから、接触操作の接触位置を示す信号(操作位置検出信号)及び接触操作の操作荷重を示す信号(操作荷重検出信号)を、マイコン173に出力する。
【0096】
マイコン173は、操作位置検出信号及び操作荷重検出信号に基づき、接触操作に対応する位置及び強度で振動が発生するように、いずれか一方又は両方のアクチュエータドライバ174を制御する。マイコン173により制御されたアクチュエータドライバ174は、対応するアクチュエータ2のコイル22に、アクチュエータ駆動信号として駆動電流を供給する。
【0097】
アクチュエータドライバ174からの駆動電流を受けたアクチュエータ2は、操作パネル3に振動を伝達して振動させることにより、操作パネル3を操作した操作者に触感を付与する。このように、位置荷重センサ3dにより検出された位置及び荷重に応じて、適切なアクチュエータ2のコイル22への通電を行い、適切な位置及び強度で振動を操作パネル3に付与することにより、より一層リアルな触感表現を実現することができる。また、接触操作の位置の検出結果だけでなく荷重の検出結果も含めて考慮して適切なアクチュエータ2を選択的に駆動することができるため、アクチュエータ2の誤作動を抑制して動作精度を向上することができる。
【0098】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について説明する。なお、本実施の形態は、実施の形態1と基本的に同様である。よって、本実施の形態において実施の形態1と共通する構成要素については、実施の形態1と同じ参照符号を付与し、その詳細な説明を省略する。本実施の形態は、荷重センサ4dがフレーム4に設けられている点、及び、荷重センサ4dが配置される位置のフレーム4の形状が、実施の形態1と相違する。よって、本実施の形態の説明では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0099】
図24図25A及び図25Bに示すように、本実施の形態に係る接触型入力装置1において、フレーム4は、外周部4bの四隅が夫々内側に突出した突出部4eを有する。そして、各突出部4eにはC字状のスリットが形成されている。言い換えれば、スリットにより画定された舌片4fが、片持ち状態で外周部4bに繋がった構成となっている。そのため、フレーム4は、舌片4fが押圧力を受ければ、舌片4fと外周部4bとが繋がる部分に局所的な歪みを生じさせることができるようになっている。そして、外周部4bと繋がる部分で舌片4fが荷重センサ4dを支持する。
【0100】
このように、フレーム4は、第二部分3b3から第一部分3b1に突出する突出部4eを有し、突出部4eは、接触操作の荷重を検出する荷重センサ4dを片持ち状態で支持するため、フレーム4にあまり複雑な加工を施すことなく接触操作の荷重を検出する構成を実現することができ、実施の形態3で述べたような動作精度の向上を図ることができる。なお、舌片4fと操作パネル3の裏面3bとの間にスペーサ4gを配置して、操作パネル3に加わった接触操作の荷重が確実に舌片4fに伝達するようにすることが好ましい。
【0101】
図26は、本実施の形態に係る接触型入力装置1の制御系を模式的に示す図である。
【0102】
図26に示す接触型入力装置1の制御系は、二つのアクチュエータ2、操作パネル3、マイコン173及び二つのアクチュエータドライバ174、アンプ171、ADC172に加えて、複数の荷重センサ4dを有する。なお、アンプ171及びADC172は、個々の荷重センサ4dに対応して設けられるが、図26では簡略化のため荷重センサ4d、アンプ171及びADC172が夫々一つだけ示されている。
【0103】
操作パネル3は、操作パネル3上における操作者による接触操作入力を受け付けて、位置センサ3cから、接触操作の接触位置を示す信号(操作位置検出信号)を、マイコンに出力する。また、荷重センサ4dは、接触操作の操作荷重を示す信号(操作荷重検出信号)を、アンプ171及びADC172を介して、マイコン173に出力する。
【0104】
マイコン173は、操作位置検出信号及び操作荷重検出信号に基づき、接触操作に対応する位置及び強度で振動が発生するように、いずれか一方又は両方のアクチュエータドライバ174を制御する。マイコン173により制御されたアクチュエータドライバ174は、対応するアクチュエータ2のコイル22に、アクチュエータ駆動信号として駆動電流を供給する。
【0105】
アクチュエータドライバ174からの駆動電流を受けたアクチュエータ2は、操作パネル3に振動を伝達して振動させることにより、操作パネル3を操作した操作者に触感を付与する。このように、位置センサ3c及び荷重センサ4dにより検出された位置及び荷重に応じて、適切なアクチュエータ2のコイル22への通電を行い、適切な位置及び強度で振動を操作パネル3に付与することにより、より一層リアルな触感表現を実現することができる。また、接触操作の位置の検出結果だけでなく荷重の検出結果も含めて考慮して適切なアクチュエータ2を選択的に駆動することができるため、アクチュエータ2の誤作動を抑制して動作精度を向上することができる。
【0106】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について説明する。なお、本実施の形態は、実施の形態4と基本的に同様である。よって、本実施の形態において実施の形態1、4と共通する構成要素については、実施の形態1、4と同じ参照符号を付与し、その詳細な説明を省略する。本実施の形態は、フレーム4の外周部4bと操作パネル3との間に、減衰材4hが設けられている点、及び、フレーム4の中央部4cと操作パネル3との間にも、減衰材4iが設けられている点で、実施の形態4と相違する(図27及び図28参照)。
【0107】
操作パネル3の剛性等の材質によっては、フレーム4だけでは非操作部3a3への振動伝達を十分に抑制できないことも想定される。これに対し本実施の形態では、減衰材4hを外周部4bに配置することで、非操作部3b3に振動が伝達しても適度に減衰させることができるので、振動余韻の収まりが良好となり、優れた操作触感を提供することが可能となる。
【0108】
また、本実施の形態では、減衰材4iが、フレーム4の中央部4cに設けられる。フレーム4と操作パネル3との固定状況によっては、フレーム4による振動伝達阻止の度合いが不均等になり、操作位置によって触感が異なってしまうになることも想定される。これに対し本実施の形態では、減衰材4iを中央部4cに配置することで、最も動きやすい位置である中央付近の振動を減衰させ、これにより、動きやすい位置で提供される触感と動きにくい位置で得られる触感との差分を低減させることができ、触感ムラを抑制することができる。
【0109】
ちなみに、触感ムラは、接触操作の位置によって駆動電流値を調整することでも抑制可能であるが、本実施の形態のように中央部4cに減衰材4iを配置しておくことで、駆動電流の調整幅を狭めることができることから、触感ムラの抑制を容易に実現することができる。
【0110】
なお、本実施の形態に係る接触型入力装置1の構成には、実施の形態4で説明した構成が含まれているが、減衰材4h、4iは、実施の形態4の構成がなくても、実施の形態1の構成に対して加えることができる。
【0111】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る接触型入力装置は、例えばトラックパッド等、平面状の操作部を有する入力デバイスにおいて好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 接触型入力装置
2 振動アクチュエータ
3 操作パネル
3a 表面
3a1 操作部
3a2、3b2、3b4 外縁部
3a3 非操作部
3b 裏面
3b1 第一部分
3b3 第二部分
3b5 第三部分
3c 位置センサ
3d 位置荷重センサ
4 フレーム
4a 貫通孔
4b 外周部
4c 中央部
4d 荷重センサ
4e 突出部
4f 舌片
4g スペーサ
4h、4i 減衰材
5 接合部材
152 スイッチング素子
154 信号発生部
171 アンプ
172 ADC
173 マイコン
174 アクチュエータドライバ
DR1、DR2、DR3、DR4 区分領域
図1
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