(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159091
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】集塵装置
(51)【国際特許分類】
F24F 8/80 20210101AFI20241031BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20241031BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20241031BHJP
B03C 3/36 20060101ALI20241031BHJP
F24F 8/192 20210101ALI20241031BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20241031BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20241031BHJP
F24F 11/79 20180101ALI20241031BHJP
F24F 120/12 20180101ALN20241031BHJP
F24F 110/65 20180101ALN20241031BHJP
【FI】
F24F8/80 254
B03C3/41 B
B03C3/40 A
B03C3/36 Z
B03C3/41 A
F24F8/192
F24F7/003
F24F7/007 B
F24F11/79
F24F120:12
F24F110:65
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074856
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 優治
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 弘彬
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
4D054
【Fターム(参考)】
3L056BD07
3L260AB18
3L260BA08
3L260BA09
3L260CA02
3L260CA17
3L260CA29
3L260FC06
3L260FC22
4D054AA08
4D054AA20
4D054BA02
4D054BA09
4D054BB03
4D054BB04
4D054BB11
4D054BC31
4D054CA10
4D054CA12
4D054EA11
4D054EA14
(57)【要約】
【課題】経済的な負担を軽減すると共に、作業者の作業環境や作業設備の設置環境の改善に掛かる時間を抑制する室内用の集塵装置を提供する。
【解決手段】
集塵装置1は、筐体2と、室内の空気を吸引して排気側に送り出す吸引部3と、吸引空気中の塵埃を除塵する少なくとも1つの電気集塵部21、41と、室内の環境状況を検知する環境検知部10と、吸引空気の排気流路を分岐する分岐部5と、吸引部3、電気集塵部、環境検知部10および分岐部5を制御する制御部50と、を備える。筐体2は、室内での循環のために排気する第1排気流路13aと、室内での送風のために排気する第2排気流路13bとを有する。制御部50は、環境検知部10の検知結果に応じて分岐部5を制御して、第1排気流路13aを経由する排気と、第2排気流路13bを経由する排気と、第1排気流路13aおよび第2排気流路13bを経由する排気との何れかに切り換える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内で空気中の塵埃を吸引除塵する集塵装置であって、
筐体と、
前記室内の空気を前記筐体の内部に吸引して排気側に送り出す吸引部と、
吸引空気中の塵埃を除塵する少なくとも1つの電気集塵部と、
前記室内の環境状況を検知する環境検知部と、
吸引空気の排気流路を分岐する分岐部と、
前記吸引部、前記電気集塵部、前記環境検知部および前記分岐部を制御する制御部と、を備え、
前記筐体は、前記排気流路として、前記室内での循環のために排気する第1排気流路と、前記室内での送風のために排気する第2排気流路とを有し、
前記制御部は、前記環境検知部の検知結果に応じて前記分岐部を制御して、前記第1排気流路を経由する排気と、前記第2排気流路を経由する排気と、前記第1排気流路および前記第2排気流路を経由する排気との何れかに切り換えることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
前記環境検知部は、前記環境状況として、前記室内における塵埃濃度と、前記室内における送風対象の存在と、前記送風対象の稼働状況との内、少なくとも1つを検知することを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記第2排気流路には、前記電気集塵部と、前記筐体の外部に向かう排気の風向を変更する風向変更部とが設けられることを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記電気集塵部として、吸引空気の流通方向において前記第1排気流路および前記第2排気流路よりも上流側に設けられる主電気集塵部と、前記第2排気流路に設けられる追加電気集塵部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記主電気集塵部は、針電極の放電極からなる主荷電極を備え、
前記追加電気集塵部は、ブラシ電極の放電極からなる追加荷電極を備えることを特徴とする請求項4に記載の集塵装置。
【請求項6】
前記主電気集塵部は、主荷電極に対して7KV~10KVの印加電圧を印加し、
前記追加電気集塵部は、追加荷電極に対して4KV~6KVの印加電圧を印加することを特徴とする請求項4に記載の集塵装置。
【請求項7】
前記主電気集塵部は、吸引空気の流通方向を遮るように配置される接地電極と、吸引空気の流通方向において当該接地電極よりも下流側に所定距離を離間して配置される放電極とを有する主荷電極を備え、
前記主荷電極の前記接地電極は、吸引空気を通過させる多数の開口部を有し、
前記主荷電極の前記放電極は、放電点が前記開口部の中心に対応するように配置され、
前記追加電気集塵部は、吸引空気の流通方向と平行に配置される接地電極と、当該接地電極と平行に配置される放電極とを有する追加荷電極を備え、
前記追加荷電極の前記接地電極と前記放電極とは、所定距離を離間して配置されることを特徴とする請求項4に記載の集塵装置。
【請求項8】
前記主電気集塵部および前記追加電気集塵部は、高電圧を印加して発生させたコロナ放電により吸引空気中の塵埃を帯電させ、前記コロナ放電の放電極性をプラスまたはマイナスの何れかに設定することを特徴とする請求項4に記載の集塵装置。
【請求項9】
前記主電気集塵部は、コロナ放電により吸引空気中の塵埃を帯電させる主荷電極を備え、
前記主電気集塵部および前記追加電気集塵部は、前記主荷電極で帯電させた塵埃を、強電界を発生させて捕集する主集塵極および追加集塵極をそれぞれ備えることを特徴とする請求項4に記載の集塵装置。
【請求項10】
前記環境検知部は、前記室内の空気中の塵埃の濃度を計測する塵埃濃度計であり、
前記制御部は、前記塵埃濃度計の計測値が所定の濃度閾値未満である場合に、当該集塵装置を起動したまま前記電気集塵部を停止することを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項11】
前記主電気集塵部と、前記吸引部と、前記分岐部とが、吸引空気の流通方向において上流側からこの順に直列に配列され、
前記第1排気流路および前記第2排気流路は、それぞれから排気される気流が互いに干渉しないように構成され、
前記第2排気流路には、前記追加電気集塵部と、風向変更部とが、吸引空気の流通方向において上流側からこの順に直列に配列されることを特徴とする請求項4に記載の集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内において空気中の塵埃を吸引除塵する集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー加工機などの自動加工設備(作業設備)を備えた機械工場などの、部品の加工作業を行う工場内では、加工作業によって塵埃が発生して作業者の作業環境や作業設備の設置環境が悪化するため、このような塵埃から作業者や作業設備を保護する必要がある。そのため、作業設備の周辺に塵埃を吸引除去する室内用の集塵装置を設置することが多い。その際に、集塵装置を効率的に稼働させるために、人の存在の有無に応じて運転状態を可変する集塵装置がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、室内用集塵装置は、室内に設置され風向および風量を変化させ室内に気流を発生させる送風手段と、吸引により室内の気流に乗って移動する塵埃を回収すると共に排気によって室内に気流を発生させる集塵手段と、室内の人の存在を検知する人検知部とを備える。当該室内用集塵装置は、送風手段および集塵手段が互いに連携制御し風向および風量を変化させることで、それぞれの気流から集塵気流を生成すると共に、人検知手段により室内に人が所定時間以上不在であることを検知した場合に、不在動作モードとして一定時間毎に生成した集塵気流の方向を変更し室内の塵埃を集塵気流に乗せて集塵手段で集塵する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来技術の室内用の集塵装置は、家庭などの室内で使用されることを想定しており、室内全体に気流を発生させ、床面に落ちた塵埃を気流に乗せて集塵する。しかしながら、自動加工設備を備えた機械工場では広い室内空間を有するので、従来技術のような集塵装置を室内に1台設置しただけでは、室内全体に気流を発生させて効率よく集塵することができず、複数の集塵装置を室内に設置することが必要となる。
【0006】
また、従来技術の室内用の集塵装置では、含塵空気の1パスの処理によって99%以上の高い除塵率を実現するためには、大型の除塵部が必要となるので装置が大型化してしまう。更に、機械工場内で複数の大型集塵装置を運用するためには経済的な負担が大きくなるので、除塵率を下げた適切な大きさの集塵装置を運用することで経済的な負担を軽減させる必要があるが、その場合、機械工場内の塵埃の集塵などによって作業者の作業環境や作業設備の設置環境を改善するのに時間が掛かってしまう。
【0007】
本発明は、上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、経済的な負担を軽減すると共に、作業者の作業環境や作業設備の設置環境の改善に掛かる時間を抑制することができる室内用の集塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の集塵装置は、室内で空気中の塵埃を吸引除塵する集塵装置であって、筐体と、前記室内の空気を前記筐体の内部に吸引して排気側に送り出す吸引部と、吸引空気中の塵埃を除塵する少なくとも1つの電気集塵部と、前記室内の環境状況を検知する環境検知部と、吸引空気の排気流路を分岐する分岐部と、前記吸引部、前記電気集塵部、前記環境検知部および前記分岐部を制御する制御部と、を備え、前記筐体は、前記排気流路として、前記室内での循環のために排気する第1排気流路と、前記室内での送風のために排気する第2排気流路とを有し、前記制御部は、前記環境検知部の検知結果に応じて前記分岐部を制御して、前記第1排気流路を経由する排気と、前記第2排気流路を経由する排気と、前記第1排気流路および前記第2排気流路を経由する排気との何れかに切り換えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の集塵装置によれば、工場などの室内の含塵空気を除塵した後、第1排気流路を介して循環処理させる構成にすることで、集塵装置の装置全体を小型化することができ、経済性および効率性を向上することができる。また、集塵装置は、排気の一部を第2排気流路に分岐して、高度に浄化して作業者や加工機に向けて排気することで、集塵装置の周りの空気を素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境を素早く改善することができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の集塵装置は、前記環境検知部は、前記環境状況として、前記室内における塵埃濃度と、前記室内における送風対象の存在と、前記送風対象の稼働状況との内、少なくとも1つを検知する。
【0011】
本発明の第2の集塵装置によれば、室内の空気の汚れ具合や、室内の作業者などの人や加工機などの作業設備を正確に判定して、一部の排気を高度に浄化して作業者や加工機に向けることができる。そのため、作業者や加工機の周りの空気をより素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境をより素早く改善することができる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第3の集塵装置において、前記第2排気流路には、前記電気集塵部と、前記筐体の外部に向かう排気の風向を変更する風向変更部とが設けられる。
【0013】
本発明の第3の集塵装置によれば、室内の作業者などの人や加工機などの作業設備に対して、高度に浄化した排気を正確に向けることができる。そのため、作業者や加工機の周りの空気をより素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境をより素早く改善することができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第4の集塵装置は、少なくとも1つの前記電気集塵部として、吸引空気の流通方向において前記第1排気流路および前記第2排気流路よりも上流側に設けられる主電気集塵部と、前記第2排気流路に設けられる追加電気集塵部とを備える。
【0015】
本発明の第4の集塵装置によれば、室内に循環させる空気の除塵と、室内の人や作業設備に送風させる空気の除塵とで、異なる処理を主電気集塵部と追加電気集塵部とで行うことができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第5の集塵装置において、前記主電気集塵部は、針電極の放電極からなる主荷電極を備え、前記追加電気集塵部は、ブラシ電極の放電極からなる追加荷電極を備える。
【0017】
本発明の第5の集塵装置によれば、そのサイズやスペックに合わせた電気集塵部を主電気集塵部と追加電気集塵部とに適用することで、循環や送風に求められる塵埃の除塵率を得ることができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第6の集塵装置において、前記主電気集塵部は、主荷電極に対して7KV~10KVの印加電圧を印加し、前記追加電気集塵部は、追加荷電極に対して4KV~6KVの印加電圧を印加する。
【0019】
本発明の第6の集塵装置によれば、主電気集塵部の主荷電極や追加電気集塵部の追加荷電極の構造に合わせて最適な電圧を印加することで、循環や送風に求められる塵埃の除塵率を効率的に得ることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第7の集塵装置において、前記主電気集塵部は、吸引空気の流通方向を遮るように配置される接地電極と、吸引空気の流通方向において当該接地電極よりも下流側に所定距離を離間して配置される放電極とを有する主荷電極を備え、前記主荷電極の前記接地電極は、吸引空気を通過させる多数の開口部を有し、前記主荷電極の前記放電極は、放電点が前記開口部の中心に対応するように配置され、前記追加電気集塵部は、吸引空気の流通方向と平行に配置される接地電極と、当該接地電極と平行に配置される放電極とを有する追加荷電極を備え、前記追加荷電極の前記接地電極と前記放電極とは、所定距離を離間して配置される。
【0021】
本発明の第7の集塵装置によれば、吸引空気中の塵埃濃度が高い室内環境に対して、接地電極に多数の開口部が設けられることによって汚れに強い荷電極構造を有する主電気集塵部を適用することで、メンテナンス期間を延ばすことが可能となり、経済性を向上することができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の第8の集塵装置は、前記主電気集塵部および前記追加電気集塵部は、高電圧を印加して発生させたコロナ放電により吸引空気中の塵埃を帯電させ、前記コロナ放電の放電極性をプラスまたはマイナスの何れかに設定する。
【0023】
本発明の第8の集塵装置によれば、高圧放電の放電極性を工場内の作業環境に応じて切り替えることができ、例えば、工場内の臭気対策として酸化物質のオゾンを積極的に発生させて利用することで、より幅広い作業環境の改善を行うことができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の第9の集塵装置は、前記主電気集塵部は、コロナ放電により吸引空気中の塵埃を帯電させる主荷電極を備え、前記主電気集塵部および前記追加電気集塵部は、前記主荷電極で帯電させた塵埃を、強電界を発生させて捕集する主集塵極および追加集塵極をそれぞれ備える。
【0025】
本発明の第9の集塵装置によれば、第2排気流路に流通する空気中の塵埃は、既に主電気集塵部によって帯電されているため、追加電気集塵部は追加集塵極のみを運転させるだけで、効率良く空気中の塵埃を除塵することができ、追加電気集塵部の追加集塵極のメンテナンス期間を延ばすことが可能となり、経済性を向上することができる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の第10の集塵装置は、前記環境検知部は、前記室内の空気中の塵埃の濃度を計測する塵埃濃度計であり、前記制御部は、前記塵埃濃度計の計測値が所定の濃度閾値未満である場合に、当該集塵装置を起動したまま前記電気集塵部を停止する。
【0027】
本発明の第10の集塵装置によれば、工場内の塵埃濃度が所定の濃度閾値未満であると判定した場合に、主電気集塵部や追加電気集塵部の運転を停止することで、電気代を抑えて経済性を向上することができる。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の第11の集塵装置は、前記主電気集塵部と、前記吸引部と、前記分岐部とが、吸引空気の流通方向において上流側からこの順に直列に配列され、前記第1排気流路および前記第2排気流路は、それぞれから排気される気流が互いに干渉しないように構成され、前記第2排気流路には、前記追加電気集塵部と、風向変更部とが、吸引空気の流通方向において上流側からこの順に直列に配列される。
【0029】
本発明の第11の集塵装置によれば、各部を適切に配置することによって、工場内の空気中の塵埃を、循環や送風に求められる除塵率で適切に除塵しつつ、高度に浄化した排気を作業者や加工機に向けて送風することで、作業者や加工機の周りの空気をより素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境をより素早く改善することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、室内用の集塵装置は、経済的な負担を軽減すると共に、作業者の作業環境や作業設備の設置環境の改善に掛かる時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る集塵装置の構成例を側方から示す概要図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る集塵装置の設置例を側方から示す概要図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る集塵装置の主電気集塵部、追加電気集塵部の例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る集塵装置の主電気集塵部、追加電気集塵部における荷電極の例を概要的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る集塵装置の主電気集塵部、追加電気集塵部における荷電極の他の例を概要的に示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る集塵装置の主電気集塵部、追加電気集塵部における集電極の例を概要的に示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る集塵装置の主電気集塵部、追加電気集塵部の他の例を概要的に示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る集塵装置の主電気集塵部、追加電気集塵部の他の例を概要的に示す正面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る集塵装置の分岐部の例を上方から示す概要図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る集塵装置の分岐部の例を側方から示す概要図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る集塵装置の排気流路の例を側方から示す概要図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る集塵装置の風向変更部の例を内側から示す概要図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る集塵装置の風向変更部の例を側方から示す概要図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る集塵装置において、加工機に対する風向変更部の例を示す概要図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る集塵装置において、加工機に対する風向変更部の他の例を示す概要図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る集塵装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る集塵装置における環境状況の検知結果と各部の制御との関係例を示す表である。
【
図18】本発明の実施形態に係る集塵装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図19】本発明の実施形態に係る集塵装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
【0033】
本発明の実施形態による集塵装置1について説明する。
図1は、集塵装置1の構成を示す概要図であり、
図2は、集塵装置1の設置を示す概要図である。本実施形態の集塵装置1は、レーザー加工機などの自動加工設備(作業設備)を備えた機械工場などの、部品の加工作業を行う工場内に設置されるものである。集塵装置1は、工場内(室内)の空気中の塵埃を吸引除塵し、室内で空気を循環させるように排気することで、作業者αなどの人の作業環境や加工機βなどの作業設備の設置環境を改善することができる。また、集塵装置1は、人や作業設備などの送風対象に対して送風する(吹き掛ける)ように排気することで、人や作業設備に付着する塵埃を取り除くことができる。
【0034】
具体的には、工場などの室内において、含塵空気を集塵装置1が1パスで処理した際に99%以上の高い除塵率を実現するためには、高性能かつ大型の除塵部が必要となるので装置が大型化してしまう。これに対して、本実施形態では、経済性や効率性を考慮し、含塵空気を集塵装置1が1パスで処理した際に達成される除塵率を最低限の目標値(例えば、90%)に下げて、排気した空気を室内で循環させて再度、集塵装置1で処理するものである。
【0035】
また、集塵装置1が循環方式を適用した場合、室内の含塵空気は直ぐに浄化されないので、室内の作業環境を改善するまでに時間が掛かることがある。そこで、本実施形態では、集塵装置1は、循環させる空気を排気するだけでなく、更に追加した除塵部によって含塵空気を高い除塵率(例えば、99%)まで浄化した空気を、人や作業設備などの送風対象に対して送風する(吹き掛ける)ように排気することで、人や作業設備の周りの塵埃の滞留を抑制して、時間を掛けることなく作業環境を改善することができる。
【0036】
集塵装置1は、室内において作業設備を避けた位置に設置される。また、集塵装置1は、効率よく室内で含塵空気を吸引できるように、
図2に示すように、地面から所定の高さ(例えば、4m)に、天吊りなどによって設置される。集塵装置1は、例えば、前方から空気を吸引するために、前面が室内の内側に向けられ、また、後方や上方に循環する空気を排気するために、背面や上面が壁や天井から所定距離を離間して配置される。
【0037】
図1に示すように、集塵装置1は、筐体2と、吸引部3と、主除塵部4と、分岐部5と、追加除塵部6と、風向変更部7と、制御ユニット8と、無線通信部9と、環境検知部10とを備える。吸引部3、主除塵部4、分岐部5および追加除塵部6は、筐体2の内部に設けられ、風向変更部7、制御ユニット8、無線通信部9および環境検知部10は、筐体2の内部または外部に設けられる。
【0038】
筐体2は、略箱型形状を有して構成され、集塵装置1の設置される室内の空気を吸引するための吸引口11と、吸引した空気を排気するための排気口12とを有し、吸引口11から排気口12に至る空気の流通方向を形成する。筐体2は、吸引空気の排気流路として、室内で循環させる空気を排気するための第1排気流路13aと、室内で送風させる空気を排気するための第2排気流路13bとを有し、排気口12は、第1排気流路13aから空気を排気するための第1排気口12aと、第2排気流路13bから空気を排気するための第2排気口12bとを有する。
【0039】
例えば、吸引口11は、筐体2の前面に設けられる。第1排気口12aは、筐体2の背面または上面、若しくは側面に設けられ、第2排気口12bは、排気される気流が第1排気口12aとは干渉しないように設けられ、例えば、前下方に設けられる。筐体2は、第1排気口12aと干渉しない位置に第2排気口12bを設けるために、筐体2の下面から第2排気口12bでの排気方向(例えば、前下方)に延出された延出部2aを有して、延出部2aの先端面に第2排気口12bを設けてよい。
【0040】
図1では、筐体2において、前方から後方に向かって吸引口11、主除塵部4、吸引部3、分岐部5がこの順に配置される例を示す。この例では、筐体2の前面に設けられた吸引口11から筐体2の内部に空気が吸引され、吸引空気は、前方から後方に向かって流通し、主除塵部4、吸引部3を経由して分岐部5に至る。筐体2において、吸引部3よりも後方には、吸引空気の排気流路が、更に後方に向かう第1排気流路13aと、前下方に向かう第2排気流路13bとに分岐されている。
【0041】
吸引部3は、室内の空気を筐体2の内部に吸引して排気側に送り出すもので、シロッコファンやターボファンなどのファン部材3aと、ファン部材3aを回転させるファン用モータユニット3bとから構成される。吸引部3は、室内で循環させる空気を排気できるような比較的強い風量(例えば、60m3/min)に制御されるとよい。吸引部3は、ファン部材3aが吸引口11からの空気の吸引方向に対向するように配置される。なお、吸引部3は、集塵装置1の圧力損失に応じて多段化してもよい。
【0042】
主除塵部4は、筐体2に吸引された空気(吸引空気)中の塵埃を除塵するもので、吸引口11と吸引部3との間に配置される。主除塵部4は、プレフィルター20と、主電気集塵部21とを備え、
図3に示すように、主電気集塵部21は、高圧電源部22と、電極部23とを備え、主電気集塵部21の内部を流通する空気中の塵埃を帯電し、また、帯電した塵埃を捕集する。
【0043】
なお、フィルター式の除塵部は、寿命(フィルターの圧力損失が上限に上昇するまでの期間)が短く、除塵性能の劣化割合が激しい(オイルミストの場合、除塵率が0%付近まで急激に低下する)ため、主除塵部4には好ましくない。また、フィルター式の除塵部は圧力損失が高く、電気集塵方式の除塵部と同等の圧力損失まで近付けるためには、倍以上のフィルター面積が必要であり、装置を小型化することが困難となる。特に、捕集効率が99%以上のHEPAフィルターを用いる場合、装置の大型化の問題が顕著に生じる。更に、低圧力損失のエレクトレットフィルターを用いる除塵部があるが、エレクトレットフィルターはオイルが付着すると電荷が失活して除塵性能が急減するので、オイルミスト環境下では使用することができず。対応できる塵埃が電気集塵方式に比べて少なくなる。
【0044】
主電気集塵部21において、高圧電源部22は、4KV~10KVの高電圧を電極部23に印加する高圧電源として高圧トランス22aや倍圧部22bを備え、交流電源からの交流電圧を高圧トランス22aで昇圧し、倍圧部22bで直流電圧に変換する。
【0045】
主電気集塵部21において、電極部23は、コロナ放電により空気中の塵埃を帯電する荷電極として主荷電極24と、帯電した塵埃を捕集する集塵極として主集塵極25とを有する。空気の流通方向において、主荷電極24は上流側に配置され、主集塵極25は下流側に配置される。主荷電極24と主集塵極25とは、別体で構成されてよく、あるいは、一体的に構成されてもよい。
【0046】
以下に、主電気集塵部21の主荷電極24と主集塵極25とが別体で構成される例を説明する。
【0047】
主荷電極24は、
図4または
図5に示すように、空気の流通方向に平行に延びていて、高電圧が印加される放電極26と、基準電位点(アース)に接地される接地電極27とから構成され、放電極26は、空気の流通方向との交差方向において両側から接地電極27によって所定間隔を空けて挟まれている。
【0048】
放電極26は、例えば、
図4に示すように、複数の針電極26aを備え、針電極26aは、空気の流通方向に平行(例えば、流通方向の上流側や下流側、交差方向など)に延びた状態で支持部材26bによって支持される。針電極26aは、タングステンやチタンなどで形成され、特に、64チタンで形成することでオゾン発生量を低く抑えることができる。針電極26aには、高圧電源部22によって7KV~10KVの高電圧が印加される。
【0049】
接地電極27は、アルミまたはステンレスなどの金属によって空気の流通方向に平行な平板で形成され、一対の接地電極27が所定間隔を空けて配置されて、当該一対の接地電極27の間に放電極26が配置される。なお、主荷電極24は、複数の放電極26と複数の接地電極27とを備えて、空気の流通方向との交差方向において放電極26と接地電極27とを交互に配置しつつ、両端に接地電極27を配置するように構成されてよい。
【0050】
あるいは、放電極26は、例えば、
図5に示すように、複数の針電極26aに代えて、多数の線材を束ねた複数のブラシ電極26cを備えて支持部材26bによって支持してもよい。ブラシ電極26cは、非磁性ステンレス繊維などで形成される。ブラシ電極26cには、高圧電源部22によって4KV~6KVの高電圧が印加される。若しくは、放電極26は、針電極26aやブラシ電極26cに代えて、金属製で先端の尖った尖端部材を複数備えて支持部材26bによって支持してもよい。ブラシ電極26cは、例えば、約100本の線材が束ねられることで形成されている。また、ブラシ電極26cは、直径5~25μmの線材を10~200本束ねて形成されていても良い。例えば、ブラシ電極26cの線材は、直径12μmの非磁性のステンレス繊維で形成されており、ステンレスは、流通性と経済性と耐食性に優れた、18%のCrと8%のNiを含むSUS304を使用している。なお、線材は、非磁性のステンレスであれば、例えば、18%のCrと12%のNiにモリブデン(Mo)を添加したSUS316など、他の材質を使用しても良い。このように線材に非磁性のステンレス繊維を使用することにより、線材が離間しやすく、放電性能を高めるこができる。例えば、磁性を備えたフェライト系では、線材が離間し難いため、電界干渉による影響が大きく、強電界のコロナ放電を発生させることが難しい。
【0051】
主集塵極25は、
図6に示すように、高電圧が印加される放電極28と、基準電位点(アース)に接地される接地電極29とから構成される。放電極28は、例えば、空気の流通方向に平行な平板で構成される。接地電極29は、アルミまたはステンレスなどの金属によって空気の流通方向に平行な平板で形成され、一対の接地電極29が所定間隔を空けて配置されて、当該一対の接地電極29の間に放電極28が配置される。主集塵極25は、放電極28と接地電極29との高圧放電(強電界)によって、主荷電極24で帯電された塵埃を捕集する。なお、主集塵極25は、複数の放電極28と複数の接地電極29とを備えて、空気の流通方向との交差方向において放電極28と接地電極29とを交互に配置しつつ、両端に接地電極29を配置するように構成されてよい。
【0052】
主電気集塵部21は、主荷電極24の放電極26に針電極26aを適用し、接地電極29に平行平板を適用することで、大型の電極構造とすることができる。また、主電気集塵部21は、主集塵極25の放電極28および接地電極29の両方に平行平板を適用することで、塵埃を除塵する面積を十分に確保することができる。
【0053】
以下に、主電気集塵部21の主荷電極24と主集塵極25とが一体で構成される例を説明する。
【0054】
主荷電極24は、
図7に示すように、空気の流通方向に平行に延びていて、高電圧が印加される放電極30と、空気の流通方向において放電極30よりも上流側に配置され、基準電位点(アース)に接地される接地電極31とから構成される。
【0055】
接地電極31は、アルミまたはステンレスなどの金属によって、空気の流通方向との交差方向に延びた平板で形成され、
図7および
図8に示すように、丸形の複数の開口部31aを有する。接地電極31において、複数の開口部31aは、空気の流通方向から見て上下左右に等間隔に配置された状態に対して、左右に隣接した開口部31aが半個分以上上下にずらして配置される千鳥状に配列される。
【0056】
放電極30は、複数の針電極30aを備え、針電極30aは、空気の流通方向との交差方向(例えば、上下方向)に延びた支持部材30bに基端が支持されていて、先端が空気の流通方向の上流側に延びている。支持部材30bは、複数の針電極30aの配列に合わせて複数設けられる。各針電極30aは、先端が接地電極31の開口部31aから所定距離を離間した位置であって開口部31aの中心線上の位置となるように配置される。針電極30aは、タングステンやチタンなどで形成され、特に、64チタンで形成することでオゾン発生量を低く抑えることができる。針電極30aには、高圧電源部22によって7KV~10KVの高電圧が印加される。
【0057】
主集塵極25は、
図7に示すように、空気の流通方向に平行に延びていて、高電圧が印加される放電極32と、空気の流通方向に平行に延びていて、基準電位点(アース)に接地される接地電極33とから構成される。
【0058】
接地電極33は、アルミまたはステンレスなどの金属によって空気の流通方向に平行な平板で形成される。放電極32は、空気の流通方向に平行な平板で構成され、接地電極33の一対の平板の間に配置される。なお、放電極32の平板は、空気の流通方向との交差方向(例えば、左右方向)において、主荷電極24の放電極30の支持部材30bの位置に対して、両側の位置に設けられる。
【0059】
集塵装置1に吸引される塵埃濃度が高い室内環境の場合、例えば、所定値以上となるような室内環境の場合、含塵空気を除塵する際に汚れに強い電極構造が必要であるため、上記したように、主荷電極24の接地電極31が開口された開口放電式の主電気集塵部21を適用するとよい。開口放電式の主電気集塵部21は、放電極30の先端と接地電極31の開口部31aの縁とでコロナ放電を発生させるため、接地電極31に塵埃が付着し難く、汚れに強い構造となっている。
【0060】
なお、主電気集塵部21の主荷電極24は、吸引空気中の塵埃の帯電効率を向上させるために、空気の流通方向の上流側と下流側の両方に放電極30が突出するように構成されてもよい。この場合、上流側と下流側との放電極30の放電エリアが干渉したり、重なり合って抜けたりすることのないように、上下または左右に放電極30の放電点の位置をずらしてもよい。例えば、放電極30の放電点の位置を斜めにオフセットしてもよく、若しくは、接地電極31と放電極30の放電点との距離(ギャップ)分、放電極30の配置をずらして配置させてもよい。
【0061】
分岐部5は、吸引空気の排気流路を分岐するもので、空気の流通方向において主除塵部4および吸引部3よりも下流側に配置される。分岐部5は、例えば、ダンパーなどで構成され、
図9に示すように、金属で形成されていて空気の流通方向との交差方向(左右方向)に延びた回動軸に取り付けられた衝突板15と、衝突板15を回動駆動させる分岐用モータユニット16とを備える。分岐部5は、制御ユニット8に制御された分岐用モータユニット16によって衝突板15を回動させて、空気の流通を衝突板15に衝突させて遮ることで、排気流路を分岐させることができる。分岐用モータユニット16は、例えば、ステップモータと歯車(ギア)とを組み合わせて構成される。なお、分岐部5は、ダンパーに加えて、別途小型ファンを備えることで、分岐した排気の流通を促進してもよい。
【0062】
分岐部5は、第1排気流路13a側または第2排気流路13b側へ回動する衝突板15の回動角度に応じて、筐体2から外部へと流通する吸引空気について、第1排気流路13aを経由する流通割合と第2排気流路13bを経由する流通割合とを変更することができる。このとき、分岐部5は、
図10に示すように、筐体2から外部への吸引空気の排気を、第1排気流路13aを経由する排気(
図11(a)参照)と、第2排気流路13bを経由する排気と(
図11(c)参照)、第1排気流路13aおよび第2排気流路13bの両方を経由する排気(
図11(b)参照)との何れかに切り換える。例えば、分岐部5は、衝突板15によって第2排気流路13bを遮ることで、第1排気流路13aのみの排気に切り換えることができ、また、衝突板15によって第1排気流路13aを遮ることで、第2排気流路13bのみの排気に切り換えることができる。
【0063】
追加除塵部6は、筐体2に吸引された空気(吸引空気)中の塵埃を除塵するもので、第2排気流路13bに設けられる。追加除塵部6は、第1排気流路13aから第2排気流路13bに分岐された吸引空気から、更に塵埃を除去して高度に浄化した空気にして排気するために、小型の除塵部を追加したものである。追加除塵部6は、主除塵部4で除塵された含塵空気を更に除塵するため、サイズは小型でよい。
【0064】
追加除塵部6は、主除塵部4の主電気集塵部21と同様に、高圧電源部42と電極部43とからなる追加電気集塵部41を備え、追加電気集塵部41の内部を流通する空気中の塵埃を帯電し、また、帯電した塵埃を捕集する。この場合、追加電気集塵部41の電極部43は、主電気集塵部21と同様に、コロナ放電により空気中の塵埃を帯電する追加荷電極44と、帯電した塵埃を捕集する追加集塵極45とを有する。追加電気集塵部41は、主電気集塵部21と追加荷電極44や追加集塵極45の構造が同じでもよいが、あるいは、異なっていてもよい。
【0065】
追加電気集塵部41は、例えば、追加荷電極44の放電極46にブラシ電極46cを適用し、接地電極47に平行平板を適用するとよい。ブラシ電極46cは複数設けられ、各ブラシ電極46cは多数の線材を束ねて形成されるので、多数の放電点を安定して確保することができるため、追加電気集塵部41を小型化しても安定したコロナ放電を維持することができる。また、追加電気集塵部41は、例えば、追加集塵極45の放電極48と接地電極49とに平行平板を適用するとよい。
【0066】
なお、追加電気集塵部41は、
図4、
図5、
図6に示すように、追加荷電極44と追加集塵極45とが別体で構成されたものでもよいが、あるいは、小型化のために、
図7、
図8に示すように、追加荷電極44と追加集塵極45とが一体的に構成されたものでもよい。
【0067】
あるいは、追加電気集塵部41の電極部43は、主電気集塵部21の主荷電極24で帯電した塵埃を追加電気集塵部41の追加集塵極45で捕集するように、状況に応じて追加荷電極44を作動させずに追加集塵極45のみを作動させてもよく、若しくは、追加荷電極44を備えずに追加集塵極45のみを備えてもよい。
【0068】
若しくは、追加除塵部6は、追加電気集塵部41に代えて、エレクトレットフィルターなどのフィルター式集塵部で構成されてもよい。なお、追加除塵部6をフィルター式集塵部で構成する場合には、追加電気集塵部41を備える場合に比べて、圧力損失が高くなり、大きなフィルター面積を必要とするので、小型化の点で不利である。また、複数の追加電気集塵部41を直列に配置しても圧力損失が上昇することはないが、複数のフィルター集塵部を直列に配置すると、その分だけ圧力損失が上昇するので、フィルター式集塵部は圧力損失の点でも不利である。
【0069】
集塵装置1では、室内で循環させるために第1排気流路13aを経由して排気する空気を主除塵部4のみで除塵し、室内で送風させるために第2排気流路13bを経由して排気する空気を主除塵部4および追加除塵部6で除塵することができる。ここで、主除塵部4による除塵率を99%からどのくらいの目標値(レベル)まで下げるか、主除塵部4の集塵面積をどのくらいまで小さくするか、追加除塵部6のサイズをどのくらいまで小さくするかなどの設計事項について、以下のドイチェの数式(1)に基づいて除塵率を予め算出することで、設計することができる。循環方式の集塵装置1では、有効集塵面積を例えば1/2以下まで下げて設計することで、室内用の集塵装置1の主除塵部4のサイズを抑えることができる。
ドイチェの式:η=1-exp(-wA/Q)・・・(1)
η:除塵率
w:塵埃の移動速度(m/s)
A:有効集塵面積(m2)
Q:処理ガス流量(m3/s)
【0070】
なお、主電気集塵部21や追加電気集塵部41の放電極26、28、46、48は、プラスおよびマイナスの何れの放電極性に設定されてもよい。マイナス放電は、プラス放電よりもコロナ放電の安定性が高いがオゾンが発生し易い特性を有するので、主電気集塵部21や追加電気集塵部41は、基本的には、オゾン発生量を抑制するために、プラス放電を適用するとよい。しかしながら、塵埃の濃度が高い場合には、主電気集塵部21や追加電気集塵部41は、放電安定性の高いマイナス放電を適用するとよい。また、室内の臭気対策のために、主電気集塵部21や追加電気集塵部41は、マイナス放電を適用してオゾンやイオンを効率良く発生させてもよい。
【0071】
風向変更部7は、筐体2の前下方の延出部2aの先端、即ち、第2排気流路13bの先端の第2排気口12bに設けられる。風向変更部7は、
図12および
図13に示すように、排気する空気の気流を所定方向(例えば、下向き)に固定したルーバー17と、第2排気流路13bでの空気の流通方向との交差方向にルーバー17を回転させるルーバー用モータユニット18とを備える。風向変更部7は、ルーバー用モータユニット18によってルーバー17を回転させることで、第2排気口12bのルーバー17から排気される空気の気流を上下左右方向に変更することができる。ルーバー用モータユニット18は、例えば、ステップモータと歯車(ギア)とを組み合わせて構成される。なお、風向変更部7は、空気調和機のクーラーのルーバー17と歯車との組み合わせによって風量を変更するように構成されてもよい。
【0072】
例えば、風向変更部7は、
図14に示すように、室内の作業設備の加工機βに対して、ルーバー17を下向きにして第2排気口12bから下方に空気を排気することで、加工機βに送風を吹き掛けることができる。また、室内の作業設備の加工機βの近傍に作業者αが存在する場合、
図15に示すように、ルーバー17を回転させることで、第2排気口12bから作業者αに向けた斜め下方向(D方向)に空気を排気することで、作業者αに送風を吹き掛けることができる。
【0073】
制御ユニット8は、
図16に示すように、CPU(Central Processing Unit)などの制御部50と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶部51とを備える。
【0074】
制御部50は、室内の加工機βなどの作業設備と連動して集塵装置1を起動させてもよく、または、別途備えたリモコンの起動操作に応じて当該リモコンから起動信号を無線通信で受信した場合に集塵装置1を起動させてもよい。あるいは、制御部50は、室内に別途備えた統合制御盤による起動操作に応じて当該統合制御盤から起動信号を有線で受信した場合に集塵装置1を起動させてもよい。
【0075】
制御部50は、記憶部51に格納されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、集塵装置1の各部および各種機能を統括制御する。例えば、制御部50のようなコンピュータが、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53、稼働状況判定部54、分岐制御部55、主除塵制御部56、追加除塵制御部57、ファン回転数制御部58、風向変更制御部59として動作する。
【0076】
無線通信部9は、Wi-Fiなどの無線LANやBluetooth(登録商標)などの近距離無線によって外部機器との無線通信を行うためのインターフェースである。無線通信部9は、例えば、塵埃濃度計60やサーバ61などの外部の環境検知部10と通信可能に接続されて、環境検知部10から検知結果のデータを無線通信によって受信する。
【0077】
環境検知部10は、室内の環境状況を検知するもので、環境状況の検知結果のデータを制御ユニット8へと送信する。
【0078】
例えば、環境検知部10は、室内の作業者αなどの人や、加工機βなどの作業設備のような送風対象の存在を検知する送風対象検知装置62として、カメラやLRF、TOFカメラなどでよい。送風対象検知装置62の環境検知部10は、
図1に示すように、筐体2の外面(例えば、下面)に取り付けられてよいが、若しくは、他の例として、外部機器として室内に設置されてもよい。カメラやLRF、TOFカメラなどで取得された画像データを解析することで、人や作業設備などの送風対象の存在とその位置を検出することができる。あるいは、環境検知部10は、送風対象検知装置62として、人を検知する赤外線式または超音波式の人感センサーを備えてもよい。
【0079】
また、環境検知部10は、室内で設置された場所の空気中の塵埃の濃度を測定する塵埃濃度計60でもよい。塵埃濃度計60は、例えば、ハンディタイプのパーティクルカウンターでもよく、若しくは、光学式(赤外線)の簡易粉塵濃度計でもよい。塵埃濃度計60の環境検知部10は、
図1に示すように、外部機器として室内に設置されてよいが、若しくは、他の例として、筐体2に取り付けられてもよい。外部機器の塵埃濃度計60は、制御ユニット8と無線によって通信可能に接続され、測定結果の塵埃濃度のデータを無線通信で制御ユニット8へと送信する。
【0080】
また、環境検知部10は、室内に設置された加工機βなどの作業設備の設備データを保持するサーバ61でもよい。サーバ61は、作業設備の作業スケジュール(ON/OFF)、運転時間、作業種別、作業部品の種類、切削油などの作業油の使用量などを、設備データとして保持する。外部機器のサーバ61は、制御ユニット8と無線によって通信可能に接続され、設備データを無線通信で制御ユニット8へと送信する。
【0081】
次に、制御ユニット8の塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53、稼働状況判定部54、分岐制御部55、主除塵制御部56、追加除塵制御部57、ファン回転数制御部58、風向変更制御部59について説明する。
【0082】
塵埃濃度判定部52は、室内の空気中の塵埃濃度を判定するもので、例えば、室内に設置された環境検知部10である塵埃濃度計60から測定結果の塵埃濃度のデータを無線通信部9によって無線通信で受信して取得する。塵埃濃度判定部52は、取得した塵埃濃度が所定の濃度閾値以上か否かを判定する。
【0083】
送風対象判定部53は、室内の作業者αなどの人や、加工機βなどの作業設備のような送風対象の存在を判定するもので、例えば、環境検知部10である送風対象検知装置62(カメラやLRF、TOFカメラなど)から室内の画像データを取得する。送風対象判定部53は、取得した画像データを解析して室内の人や作業設備などの送風対象が存在するか否かを判定する。
【0084】
このとき、送風対象判定部53は、人工知能を用いて学習させた人や作業設備の画像の学習データを用いて、画像データにおける送風対象の存在を検出してもよく、若しくは、セグメンテーションによって画像データにおける送風対象を分類して送風対象の存在を検出してもよい。また、送風対象判定部53は、画像データを複数にグリッド分けして、人や作業設備がどのグリッドに存在するか判定することで、人や作業設備の送風対象の位置を判定してもよい。更に、送風対象判定部53は、画像データを空間座標系にデータに変換し、画像データ中の人や作業設備の送風対象の座標を把握して送風対象の位置を判定してもよい。
【0085】
あるいは、送風対象判定部53は、環境検知部10である人感センサーから人の検知結果を取得して、当該検知結果に基づいて室内の人の送風対象が存在するか否かを判定してもよい。
【0086】
稼働状況判定部54は、室内の加工機βなどの作業設備の送風対象の稼働状況を判定するもので、例えば、環境検知部10であるサーバ61から作業設備の設備データ(作業設備の作業スケジュール、運転時間、作業種別、作業部品の種類、作業油の使用量など)を無線通信部9によって無線通信で受信して取得する。稼働状況判定部54は、取得した設備データに基づいて送風対象の稼働状況を判定し、例えば、送風対象の加工機βが運転中か停止中かの運転状況を判定する。なお、塵埃濃度判定部52は、稼働状況判定部54による送風対象の稼働状況の判定結果に基づいて、送風対象の近傍に発生する塵埃の濃度が所定の濃度閾値以上か否かを判定してもよい。
【0087】
分岐制御部55、主除塵制御部56、追加除塵制御部57、ファン回転数制御部58、風向変更制御部59は、環境状況の検知結果として、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53、稼働状況判定部54の判定結果に基づいて、分岐部5、主除塵部4、追加除塵部6、吸引部3、風向変更部7を制御する。
図17には、環境状況の検知結果と各部の制御との関係を示す。
【0088】
分岐制御部55は、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53および稼働状況判定部54の少なくとも1つの判定結果に基づいて分岐部5を制御して、第1排気流路13aのみを経由して循環のみを行う第1排気パターン(
図11(a)参照)と、第2排気流路13bのみを経由して送風のみを行う第2排気パターン(
図11(c)参照)と、第1排気流路13aおよび第2排気流路13bを経由して循環および送風の両方を行う第3排気パターン(
図11(b)参照)との何れかに切り換える。
【0089】
分岐制御部55は、第1排気パターンに切り換える場合、
図11(a)に示すように、衝突板15によって第2排気流路13bを遮るように分岐部5を制御する。分岐制御部55は、第2排気パターンに切り換える場合、
図11(c)に示すように、衝突板15によって第1排気流路13aを遮るように分岐部5を制御する。
【0090】
また、分岐制御部55は、第3排気パターンに切り換える場合、
図11(b)に示すように、事前に設定された所定の回動角度まで衝突板15を回動させて、衝突板15を第1排気流路13aと第2排気流路13bとの間に配置するように分岐部5を制御する。例えば、分岐制御部55は、集塵装置1の全体風量の1/5~1/4の風量が第2排気流路13bに流通するように衝突板15の回動角度を予め設定する。なお、分岐部5の衝突板15の回動角度と、全体風量に対する第2排気流路13b(若しくは第1排気流路13a)の風量との様々な関係は、事前の試験運転によって測定しておいて、分岐制御部55は、状況に応じて所望の風量を得られるように回動角度を設定可能である。なお、第3排気パターンについては、室内の塵埃濃度が更に高濃度の場合に、第2排気流路13bに風量をより多く流せる第2の設定角度を用意しておき、塵埃濃度判定部52が室内の塵埃濃度が高濃度であると判定した場合は、分岐部5を第2の設定角度に設定してより多くの送風を送風対象に吹き掛けても良い。
【0091】
例えば、分岐制御部55は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されずに、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満である場合、第1排気パターンに切り換える。また、分岐制御部55は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されずに、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上である場合、第3排気パターンに切り換える。
【0092】
また、分岐制御部55は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されて、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満である場合、第2排気パターンに切り換える。また、分岐制御部55は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されて、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上である場合、第3排気パターンに切り換える。
【0093】
主除塵制御部56は、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53および稼働状況判定部54の少なくとも1つの判定結果に基づいて主除塵部4を制御して、主電気集塵部21を稼動するか否かを切り換え、具体的には、高圧電源部22による電極部23への高電圧の印加を行うか否かを切り換える。
【0094】
例えば、主除塵制御部56は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であれば、作業者α(人)が検知されたか否かに拘わらず、また、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上であるか否かに拘わらず、主電気集塵部21を稼動させる。
【0095】
追加除塵制御部57は、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53および稼働状況判定部54の少なくとも1つの判定結果に基づいて追加除塵部6を制御して、追加電気集塵部41を稼動するか否かを切り換え、具体的には、高圧電源部42による電極部43への高電圧の印加を行うか否かを切り換える。
【0096】
例えば、追加除塵制御部57は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されずに、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満である場合、追加電気集塵部41の稼動を停止させる。また、追加除塵制御部57は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されずに、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上である場合、追加電気集塵部41を稼動させる。
【0097】
また、追加除塵制御部57は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されて、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満である場合、追加電気集塵部41の稼動を停止させる。また、追加除塵制御部57は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されて、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上である場合、追加電気集塵部41を稼動させる。
【0098】
あるいは、主除塵制御部56および追加除塵制御部57は、環境状況の検知結果として、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満になった場合に、主電気集塵部21および追加電気集塵部41の稼動を停止させてもよく、これにより、電極部23、43に汚れが付着するのを抑え、電極部23、43の寿命を延長することができる。この場合、集塵装置1は待機運転として起動したままでよく、環境検知部10(塵埃濃度計60や送風対象検知装置62、サーバ61)による環境状況の検知や、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53および稼働状況判定部54による環境状況の判定は継続していてよい。また、主除塵制御部56および追加除塵制御部57は、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上になった場合に、主電気集塵部21および追加電気集塵部41の稼動を再開させるとよい。
【0099】
ファン回転数制御部58は、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53および稼働状況判定部54の少なくとも1つの判定結果に基づいて吸引部3を制御して、ファン部材3aを回転させるか否かを切り換え、また、ファン部材3aの回転数を制御する。
【0100】
例えば、ファン回転数制御部58は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であれば、作業者α(人)が検知されたか否かに拘わらず、また、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上であるか否かに拘わらず、ファン部材3aを回転させて、筐体2の吸引口11から排気口12への空気の流通を形成する。
【0101】
ファン回転数制御部58は、環境状況の検知結果として、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満になった場合に、集塵装置1が待機運転として起動したままであるとき、ファン部材3aの回転を停止してよく、あるいは、ファン部材3aを低風量で回転させてもよい。これにより、主電気集塵部21や追加電気集塵部41の電極部23、43に汚れが付着するのを抑え、電極部23、43の寿命を延長することができるまた、ファン回転数制御部58は、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上になった場合に、ファン部材3aの回転を再開させてよく、あるいは、ファン部材3aの風量を通常に戻してもよい。
【0102】
風向変更制御部59は、塵埃濃度判定部52、送風対象判定部53および稼働状況判定部54の少なくとも1つの判定結果に基づいて風向変更部7を制御して、具体的には、ルーバー用モータユニット18によってルーバー17を回転させて、第2排気流路13bの第2排気口12bのルーバー17から排気される空気の気流を上下左右方向に変更する。
【0103】
例えば、風向変更制御部59は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されずに、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満である場合、第2排気流路13bの第2排気口12bからの排気が行われないので、風向変更部7の制御を行わない。また、風向変更制御部59は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されずに、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上である場合、加工機βに向けて送風を吹き掛けるために、ルーバー17からの排気方向が加工機βに向かうようにルーバー17を回転させる。
【0104】
また、風向変更制御部59は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されて、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満である場合、作業者αに向けて送風を吹き掛けるために、ルーバー17からの排気方向が作業者αに向かうようにルーバー17を回転させる。また、風向変更制御部59は、環境状況の検知結果として、加工機β(作業設備)が運転中であり、作業者α(人)が検知されて、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上である場合、検知された作業者αに向けて送風を吹き掛けた後、加工機βに向けて送風を吹き掛けることを繰り返すように、ルーバー17を回転させる。
【0105】
なお、加工機βに向けて送風を吹き掛けた後、作業者αに向けて送風を吹き掛けた場合、加工機βから発生した塵埃を作業者αに吹き掛けることになり、作業環境を悪化させてしまう。そのため、風向変更制御部59は、作業者αへの送風と加工機βへの送風とを繰り返す際のインターバルを設けてもよい。
【0106】
次に、本実施形態の集塵装置1の動作例を
図18および
図19のフローチャートを参照しながら説明する。
【0107】
図18に示すように、先ず、集塵装置1を起動すると、制御ユニット8は、環境検知部10であるサーバ61から加工機βの設備データを受信して取得する(ステップS1)。
【0108】
制御ユニット8の稼働状況判定部54は、取得した設備データに基づいて室内の送風対象の稼働状況を判定し、例えば、送風対象の加工機βが運転中か停止中かの運転状況を判定する(ステップS2)。
【0109】
また、制御ユニット8は、環境検知部10である塵埃濃度計60から塵埃濃度のデータを受信して取得し、また、環境検知部10である送風対象検知装置62から室内の画像データを取得する(ステップS3)。
【0110】
次に、制御ユニット8は、分岐制御部55、主除塵制御部56、追加除塵制御部57、ファン回転数制御部58、風向変更制御部59によって、環境検知部10による環境状況の検知結果に基づいて、集塵装置1の各部(分岐部5、主除塵部4、追加除塵部6、吸引部3、風向変更部7)を制御する(ステップS4)。加工機βが運転中であれば、ファン回転数制御部58は吸引部3を稼動する。
【0111】
図19に示すように、例えば、塵埃濃度判定部52は、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上か否かを判定し(ステップS11)、送風対象判定部53は、画像データに基づいて室内に送風対象の作業者αが存在するか否かを判定する(ステップS12、ステップS13)。
【0112】
濃度閾値以上であって(ステップS11:Yes)、作業者αが存在する場合(ステップS12:Yes)、分岐部5は、第1排気流路13aおよび第2排気流路13bの両方を経由する第3排気パターンに切り換え、主除塵制御部56は、主電気集塵部21を稼動(ON)し、追加除塵制御部57は、追加電気集塵部41を稼動(ON)し、風向変更制御部59は、作業者αに送風を吹き掛けた後、加工機βに送風を吹き掛けることを繰り返すように風向変更部7を制御する(ステップS14)。
【0113】
濃度閾値以上であって(ステップS11:Yes)、作業者αが存在しない場合(ステップS12:No)、分岐部5は、第1排気流路13aおよび第2排気流路13bの両方を経由する第3排気パターンに切り換え、主除塵制御部56は、主電気集塵部21を稼動(ON)し、追加除塵制御部57は、追加電気集塵部41を稼動(ON)し、風向変更制御部59は、加工機βに送風を吹き掛けるように風向変更部7を制御する(ステップS15)。
【0114】
濃度閾値未満であって(ステップS11:No)、作業者αが存在する場合(ステップS13:Yes)、分岐部5は、第2排気流路13bのみを経由する第2排気パターンに切り換え、主除塵制御部56は、主電気集塵部21を稼動(ON)し、追加除塵制御部57は、追加電気集塵部41を停止(OFF)し、風向変更制御部59は、作業者αに送風を吹き掛けるように風向変更部7を制御する(ステップS16)。
【0115】
濃度閾値未満であって(ステップS11:No)、作業者αが存在しない場合(ステップS13:No)、分岐部5は、第1排気流路13aのみを経由する第1排気パターンに切り換え、主除塵制御部56は、主電気集塵部21を稼動(ON)し、追加除塵制御部57は、追加電気集塵部41を停止(OFF)し、風向変更制御部59は、風向変更部7を制御しない(ステップS17)。
【0116】
また、環境状況の検知結果に基づいて集塵装置1を制御した結果、塵埃濃度が所定の濃度閾値以上のままである場合(ステップS5:Yes)、ステップS3に戻って、制御ユニット8は、環境状況の検知結果に基づく集塵装置1の制御を継続する。
【0117】
一方、塵埃濃度が所定の濃度閾値未満になった場合(ステップS5:No)、制御ユニット8は、集塵装置1の運転を継続するか否かを判定する(ステップS6)。集塵装置1の運転を継続する場合(ステップS6:Yes)、ステップS1に戻って、上記のフローを繰り返し、一方、集塵装置1の運転を継続しない場合(ステップS6:Yes)、集塵装置1を停止する。
【0118】
上述のように、本実施形態によれば、工場などの室内で空気中の塵埃を吸引除塵する集塵装置1は、筐体2と、室内の空気を筐体2の内部に吸引して排気側に送り出す吸引部3と、吸引空気中の塵埃を除塵する少なくとも1つの電気集塵部(主電気集塵部21、追加電気集塵部41)と、室内の環境状況を検知する環境検知部10と、吸引空気の排気流路を分岐する分岐部5と、吸引部3、電気集塵部、環境検知部10および分岐部5を制御する制御部50と、を備え、筐体2は、排気流路として、室内での循環のために排気する第1排気流路13aと、室内での送風のために排気する第2排気流路13bとを有し、制御部50は、環境検知部10の検知結果に応じて分岐部5を制御して、第1排気流路13aを経由する排気と、第2排気流路13bを経由する排気と、第1排気流路13aおよび第2排気流路13bを経由する排気との何れかに切り換える。
【0119】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、工場などの室内の含塵空気を除塵した後、第1排気流路13aを介して循環処理させる構成にすることで、集塵装置1の装置全体を小型化することができ、経済性および効率性を向上することができる。また、集塵装置1は、排気の一部を第2排気流路13bに分岐して、高度に浄化して作業者や加工機に向けて排気することで、集塵装置1の周りの空気を素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境を素早く改善することができる。このように、本実施形態によれば、経済的な負担を軽減すると共に、作業者の作業環境や作業設備の設置環境の改善に掛かる時間を抑制することができる室内用の集塵装置1を提供することができる。
【0120】
また、本実施形態によれば、環境検知部10は、環境状況として、室内における塵埃濃度と、室内における送風対象の存在と、送風対象の稼働状況との内、少なくとも1つを検知する。
【0121】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、室内の空気の汚れ具合や、室内の作業者などの人や加工機などの作業設備を正確に判定して、一部の排気を高度に浄化して作業者や加工機に向けることができる。そのため、作業者や加工機の周りの空気をより素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境をより素早く改善することができる。
【0122】
また、本実施形態によれば、第2排気流路13bには、追加電気集塵部41と、筐体2の外部に向かう排気の風向を変更する風向変更部7とが設けられる。
【0123】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、室内の作業者などの人や加工機などの作業設備に対して、高度に浄化した排気を正確に向けることができる。そのため、作業者や加工機の周りの空気をより素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境をより素早く改善することができる。
【0124】
また、本実施形態によれば、少なくとも1つの電気集塵部として、吸引空気の流通方向において第1排気流路13aおよび第2排気流路13bよりも上流側に設けられる主電気集塵部21と、第2排気流路13bに設けられる追加電気集塵部41とを備える。
【0125】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、室内に循環させる空気の除塵と、室内の人や作業設備に送風させる空気の除塵とで、異なる処理を主電気集塵部21と追加電気集塵部41とで行うことができる。
【0126】
また、本実施形態によれば、主電気集塵部21は、針電極26aの放電極26からなる主荷電極24を備え、追加電気集塵部41は、ブラシ電極46cの放電極46からなる追加荷電極44を備える。
【0127】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、そのサイズやスペックに合わせた電気集塵部を主電気集塵部21と追加電気集塵部41とに適用することで、循環や送風に求められる塵埃の除塵率を得ることができる。
【0128】
また、本実施形態によれば、主電気集塵部21は、主荷電極24に対して7KV~10KVの印加電圧を印加し、追加電気集塵部41は、追加荷電極44に対して4KV~6KVの印加電圧を印加する。
【0129】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、主電気集塵部21の主荷電極24や追加電気集塵部41の追加荷電極44の構造に合わせて最適な電圧を印加することで、循環や送風に求められる塵埃の除塵率を効率的に得ることができる。
【0130】
また、本実施形態によれば、主電気集塵部21は、吸引空気の流通方向を遮るように配置される接地電極31と、吸引空気の流通方向において接地電極31よりも下流側に所定距離を離間して配置される放電極30とを有する主荷電極24を備え、主荷電極24の接地電極31は、吸引空気を通過させる多数の開口部31aを有し、主荷電極24の放電極30は、放電点が開口部31aの中心に対応するように配置される。追加電気集塵部41は、吸引空気の流通方向と平行に配置される接地電極47と、接地電極47と平行に配置される放電極46とを有する追加荷電極44を備え、追加電気集塵部41の接地電極47と放電極46とは、所定距離を離間して配置される。
【0131】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、吸引空気中の塵埃濃度が高い室内環境に対して、接地電極31に多数の開口部31aが設けられることによって汚れに強い荷電極構造を有する主電気集塵部21を適用することで、メンテナンス期間を延ばすことが可能となり、経済性を向上することができる。
【0132】
また、本実施形態によれば、主電気集塵部21および追加電気集塵部41は、高電圧を印加して発生させたコロナ放電により吸引空気中の塵埃を帯電させ、コロナ放電の放電極性をプラスまたはマイナスの何れかに設定する。
【0133】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、高圧放電の放電極性を工場内の作業環境に応じて切り替えることができ、例えば、工場内の臭気対策として酸化物質のオゾンを積極的に発生させて利用することで、より幅広い作業環境の改善を行うことができる。
【0134】
また、本実施形態によれば、主電気集塵部21は、コロナ放電により吸引空気中の塵埃を帯電させる主荷電極24を備え、主電気集塵部21および追加電気集塵部41は、主荷電極24で帯電させた塵埃を、強電界を発生させて捕集する主集塵極25および追加集塵極45をそれぞれ備える。
【0135】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、第2排気流路13bに流通する空気中の塵埃は、既に主電気集塵部21によって帯電されているため、追加電気集塵部41は追加集塵極45のみを運転させるだけで、効率良く空気中の塵埃を除塵することができ、追加電気集塵部41の追加集塵極45のメンテナンス期間を延ばすことが可能となり、経済性を向上することができる。
【0136】
また、本実施形態によれば、環境検知部10は、室内の空気中の塵埃の濃度を計測する塵埃濃度計60であり、制御部50は、塵埃濃度計60の計測値が所定の濃度閾値未満である場合に、集塵装置1を起動したまま電気集塵部を停止する。
【0137】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、工場内の塵埃濃度が所定の濃度閾値未満であると判定した場合に、主電気集塵部21や追加電気集塵部41の運転を停止することで、電気代を抑えて経済性を向上することができる。
【0138】
また、本実施形態によれば、主電気集塵部21と、吸引部3と、分岐部5とが、吸引空気の流通方向において上流側からこの順に直列に配列され、第1排気流路13aおよび第2排気流路13bは、それぞれから排気される気流が互いに干渉しないように構成され、第2排気流路13bには、追加電気集塵部41と、風向変更部7とが、吸引空気の流通方向において上流側からこの順に直列に配列される。
【0139】
このような構成により、本実施形態に係る集塵装置1は、各部を適切に配置することによって、工場内の空気中の塵埃を、循環や送風に求められる除塵率で適切に除塵しつつ、高度に浄化した排気を作業者や加工機に向けて送風することで、作業者や加工機の周りの空気をより素早く清浄に保つことができ、室内の作業環境をより素早く改善することができる。
【0140】
なお、上記した実施形態では、環境検知部10である塵埃濃度計60が工場などの室内に設置される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、塵埃濃度計60は、工場内で部品を搬送するAGVなどの自動搬送ロボットや、工場内を清掃する自動清掃ロボットのような自律走行移動装置に設けられて、ロボットが工場内を自律移動する際に連続して塵埃濃度を測定して集塵装置1に送信してもよい。
【0141】
また、上記した実施形態では、集塵装置1が、吸引口11から筐体2の内部に空気を流通する1つの吸引流路と、排気流路として循環流路となる1つの第1排気流路13aと、送風流路となる1つの第2排気流路13bとを有する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、集塵装置1は、複数の吸引流路、複数の第1排気流路13a、複数の第2排気流路13bを有してもよい。これにより、1台の集塵装置1によって、工場内のより広いエリアで発生する塵埃を選択して吸引除去することができ、また、より多くの作業者や加工機に清浄した排気を吹き掛けて周辺の作業環境を素早く回復することができる。
【0142】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う集塵装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、室内(工場内)における加工設備(作業設備)から発生する塵埃を集塵する集塵装置において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1 集塵装置
2 筐体
3 吸引部
4 主除塵部
5 分岐部
6 追加除塵部
7 風向変更部
8 制御ユニット
9 無線通信部
10 環境検知部
13a 第1排気流路
13b 第2排気流路
21 主電気集塵部
22 高圧電源部
23 電極部
24 主荷電極
25 主集塵極
26 放電極
26a 針電極
26c ブラシ電極
27 接地電極
28 放電極
29 接地電極
30 放電極
30a 針電極
31 接地電極
31a 開口部
32 放電極
33 接地電極
41 追加電気集塵部
42 高圧電源部
43 電極部
44 追加荷電極
45 追加集塵極
46 放電極
46c ブラシ電極
47 接地電極
48 放電極
49 接地電極
50 制御部
51 記憶部
52 塵埃濃度判定部
53 送風対象判定部
54 稼働状況判定部
55 分岐制御部
56 主除塵制御部
57 追加除塵制御部
58 ファン回転数制御部
59 風向変更制御部
60 塵埃濃度計
61 サーバ
62 送風対象検知装置