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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159094
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B62D21/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074859
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和広
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203BA17
3D203CA23
3D203CA40
3D203CB09
3D203DB05
3D203DB07
(57)【要約】
【課題】車両の走行時の剛性を確保でき、かつ前面衝突時の衝突荷重を効果的に吸収できる車両構造を提供する。
【解決手段】車両の左右に配置されたフロントサイドメンバと、前記フロントサイドメンバに橋渡されて電装機器が取り付けられるサポートメンバと、を備える車両構造であって、前記サポートメンバは、前記フロントサイドメンバの各々の前方に第一締結部材で締結された第一部材と、前記フロントサイドメンバの各々の後方に第二締結部材で締結された第二部材と、を有し、前記第一部材と前記第二部材は、前記第一締結部材と前記第二締結部材との間で互いに接合された接合部を有し、前記車両の前面衝突時、前記第一締結部材の後方への変位に伴って前記接合部の少なくとも一部を破断するように構成された、車両構造。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右に配置されたフロントサイドメンバと、
前記フロントサイドメンバに橋渡されて電装機器が取り付けられるサポートメンバと、を備える車両構造であって、
前記サポートメンバは、
前記フロントサイドメンバの各々の前方に第一締結部材で締結された第一部材と、
前記フロントサイドメンバの各々の後方に第二締結部材で締結された第二部材と、を有し、
前記第一部材と前記第二部材は、前記第一締結部材と前記第二締結部材との間で互いに接合された接合部を有し、
前記車両の前面衝突時、前記第一締結部材の後方への変位に伴って前記接合部の少なくとも一部を破断するように構成されている、
車両構造。
【請求項2】
前記サポートメンバは、前記第一部材に固定された板材をさらに備え、
前記第一部材は、筒状に構成されており、
前記板材は、前記接合部の前方に向き合うように配置されており、
前記第二部材は、前方に向かうに従って前記板材から離れるように構成された前端部を有している、請求項1に記載の車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の左右に配置されたフロントサイドメンバと、フロントサイドメンバに橋渡されて電装機器が取り付けられるサポートメンバとを備える車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両では、ダッシュパネルよりも前方に電動車両の動力源であるモータを含む電装機器が配置されている。電装機器は、通常、左右のフロントサイドメンバに橋渡されたサポートメンバに取り付けられている。左右のフロントサイドメンバは、前後に延びるように配置されている。サポートメンバは、前方メンバと後方メンバと左右の連結メンバとが一連に構成された井桁形状の部材である。前方メンバと後方メンバとは、車両の前後において左右に延びるように配置されている。左右の連結メンバは、車両の左右において前方メンバと後方メンバとをつないでいる。
【0003】
特許文献1の電動車両では、前方メンバおよび後方メンバの左右の端部が左右のフロントサイドメンバに締結されている。
【0004】
特許文献2の電動車両では、前方メンバおよび後方メンバの左右の端部がブラケットによって左右のフロントサイドメンバに接続されている。ブラケットは、車両の上方から見た形状がU字状に構成された部材である。ブラケットは、前側締結部と後側締結部と連結部とを有する。前側締結部と後側締結部と連結部とは、一連に構成されている。前側締結部は、フロントサイドメンバと前方メンバの端部の両方に重なるように配置されており、フロントサイドメンバに締結される車外側領域と、前方メンバの端部に締結される車内側領域とを有する。後側締結部は、フロントサイドメンバと後方メンバの端部の両方に重なるように配置されており、フロントサイドメンバに締結される車外側領域と、後方メンバの端部に締結される車内側領域とを有する。連結部は、前側締結部の車内側領域と後側締結部の車内側領域とをつないでいる。前側締結部の車外側領域と後側締結部の車外側領域との間には空間が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-20602号公報
【特許文献2】特開2019-51914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両は、前面衝突時の衝突荷重の大部分を左右のフロントサイドメンバの変形によって吸収するように設計されている。衝突荷重を効果的に吸収する観点から、左右のフロントサイドメンバの座屈を適切にコントロールすることが望まれる。左右のフロントサイドメンバの先端から衝突荷重が入力されたとき、左右のフロントサイドメンバが蛇腹状に座屈することで、衝突荷重を効果的に吸収できる。
【0007】
特許文献1の電動車両では、前方メンバと後方メンバと左右の連結メンバとが一連に構成されていて、前方メンバおよび後方メンバの左右の端部が左右のフロントサイドメンバに直接締結されている。そのため、左右のフロントサイドメンバとサポートメンバとが強固に固定される。よって、特許文献1の電動車両では、走行時には電装機器の支持剛性が確保され易い。しかし、特許文献1の電動車両では、前面衝突時には左右の連結メンバが突っ張り易いことで、フロントサイドメンバの座屈が阻害されるおそれがある。フロントサイドメンバの座屈が阻害されると、衝突荷重を効果的に吸収することが難しくなる。
【0008】
特許文献2の電動車両では、前方メンバおよび後方メンバの左右の端部と左右のフロントサイドメンバとがブラケットによって接続され、ブラケットに上記空間が設けられている。そのため、特許文献2の電動車両では、前面衝突時には上述した突っ張りが生じ難いため、フロントサイドメンバの座屈が適切にコントロールされ易い。しかし、特許文献2の電動車両では、ブラケットに上記空間が設けられていることで、走行時には電装機器の支持剛性が確保され難い。
【0009】
本発明の目的の一つは、車両の走行時の支持剛性を確保でき、かつ前面衝突時の衝突荷重を効果的に吸収できる車両構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一態様に係る車両構造は、
車両の左右に配置されたフロントサイドメンバと、
前記フロントサイドメンバに橋渡されて電装機器が取り付けられるサポートメンバと、を備える車両構造であって、
前記サポートメンバは、
前記フロントサイドメンバの各々の前方に第一締結部材で締結された第一部材と、
前記フロントサイドメンバの各々の後方に第二締結部材で締結された第二部材と、を有し、
前記第一部材と前記第二部材は、前記第一締結部材と前記第二締結部材との間で互いに接合された接合部を有し、
前記車両の前面衝突時、前記第一締結部材の後方への変位に伴って前記接合部の少なくとも一部を破断するように構成されている。
【0011】
(2)上記(1)の車両構造において、
前記サポートメンバは、前記第一部材に接合された板材をさらに備え、
前記第一部材は、筒状に構成されており、
前記板材は、前記接合部の前方に向き合うように配置されており、
前記第二部材は、前方に向かうに従って前記板材から離れるように構成された前端部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)の車両構造では、サポートメンバが互いに独立して構成された第一部材および第二部材を有し、第一部材と第二部材とが左右のフロントサイドメンバの前後に締結されていて、第一部材と第二部材とが互いに接合されている。そのため、上記(1)の車両構造は、車両の走行時には電装機器の支持剛性を確保できる。また、上記(1)の車両構造は、車両の前面衝突時、接合部の少なくとも一部が破断されるように構成されている。接合部の少なくとも一部が外れることによって、左右のフロントサイドメンバの座屈が阻害され難い。そのため、上記(1)の車両構造は、車両の前面衝突時には左右のフロントサイドメンバの座屈を適切にコントロールすることができる。よって、上記(1)の車両構造は、車両の前面衝突時の衝突荷重を効果的に吸収できる。上記(1)の車両構造では、簡易な構成で、通常走行時の支持剛性の確保と前面衝突時の左右のフロントサイドメンバの適切な座屈とを実現できるため、コストを低減し易い。
【0013】
上記(2)の車両構造では、サポートメンバが板材を備えることで、前面衝突時の第一締結部材の後方への変位に伴って板材が後方へ変位する。上記(2)の車両構造では、第二部材の上記前端部が前方に向かうに従って板材から離れるように構成されていることで、後方へ変位した板材が第二部材と第一部材との間に差し込まれ易い。そのため、上記(2)の車両構造は、板材によって接合部を破断させ易い。よって、上記(2)の車両構造は、左右のフロントサイドメンバの座屈がより一層阻害され難く、左右のフロントサイドメンバの座屈をより一層適切にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の車両構造の概略を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態の車両構造の第一部材および第二部材を拡大して示す拡大斜視図である。
図3図3は、実施形態の車両構造の第一部材および第二部材を拡大して示す拡大上面図である。
図4図4は、実施形態の車両構造の第一部材および第二部材を示す右側面図である。
図5図5は、変形例の車両構造の第一部材および第二部材を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の車両構造の実施形態および変形例を図1から図5を参照しつつ以下に説明する。図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。図中の「UP」は実施形態の車両構造1を備える車両の上方、「LWR」は下方、「FR」は前方、「RR」は後方、「RH」は右方、「LH」は左方を示す。以下の説明の「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、および「左」のそれぞれは、上記車両の「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右方」、および「左方」のそれぞれに対応している。
【0016】
《実施形態》
〔車両構造〕
図1から図4を参照して、実施形態の車両構造1を説明する。実施形態の車両構造1は、図1に示されるように、車両の左右に配置されたフロントサイドメンバ2とフロントサイドメンバ2に橋渡されるサポートメンバ3とを備える。サポートメンバ3は、電装機器4が取り付けられる。車両構造1を備える車両は、電気自動車またはハイブリッド自動車などの電動車両である。実施形態の車両構造1の特徴の一つは、以下の要件(A)および要件(B)を満たす点にある。
【0017】
(A)サポートメンバ3は、図2に示されるように、互いに独立した特定の第一部材31および第二部材35を有する。第一部材31は、図1に示されるように左右のフロントサイドメンバ2の各々の前方に第一締結部材51で締結されている。第二部材35は、左右のフロントサイドメンバ2の各々の後方に第二締結部材52で締結されている。第一部材31と第二部材35とは、図3図4に示されるように、第一締結部材51と第二締結部材52との間で互いに接合された接合部55を有する。
(B)車両の前面衝突時、第一締結部材51の後方への変位に伴って接合部55の少なくとも一部が破断するように構成されている。接合部55の少なくとも一部とは、接合部55の数が1つの場合、1つの接合部55のうち少なくとも一部の領域であり、接合部55の数が複数の場合、複数の接合部55のうち少なくとも1つの接合部55である。
【0018】
[フロントサイドメンバ]
左右のフロントサイドメンバ2は、車両の前部の骨格を構成する部材である。左右のフロントサイドメンバ2は、前後に延びている。左右のフロントサイドメンバ2は、概ね左右対称に構成されている。図2から図4では、右方のフロントサイドメンバ2が示されている。この点は、後述する変形例において参照する図5でも同様である。
【0019】
各フロントサイドメンバ2は、ダッシュパネル91の下方から前方に延びるように設けられている。ダッシュパネル91は、モータルームと車室とを隔てる部材である。ダッシュパネル91は、左右に沿って配置されている。ダッシュパネル91よりも前方において、各フロントサイドメンバ2の上部には、前方から後方に向かって順にエプロンメンバ92およびサスペンションタワー93が接続されている。
【0020】
本例の各フロントサイドメンバ2は、図3に示されるように凹部21を有する。凹部21は、図示しない操舵時の前輪がフロントサイドメンバ2に干渉することを防止する。凹部21は、車内側に向かって窪むように設けられている。本例の凹部21は、各フロントサイドメンバ2のうち、エプロンメンバ92が接続される箇所に対応する領域であって、第一締結部材51と第二締結部材52との間の領域に設けられている。
【0021】
[サポートメンバ]
図1に示されるように、サポートメンバ3は、電装機器4が取り付けられる。電装機器4は、例えば、モータ、充電器、インバータ、コンバータ、電力分配器、およびECU(Electronic Control Unit)の少なくとも1つである。電装機器4は、充電、電力変換、および電力分配などの機能が一つにまとめられた集約ユニットであってもよい。集約ユニットは、例えばESU(Electricity Supply Unit)である。電装機器4は、集約ユニット41とモータ42とを有する。
【0022】
本例のサポートメンバ3は、図2に示されるように、本体部材30と第一部材31と第二部材35と板材39とを有する。本例では、本体部材30と第一部材31と第二部材35と板材39とは、互いに独立した部材で構成されている。本例とは異なり、本体部材30と第一部材31とが一連の部材で構成され、この一連の部材と第二部材35と板材39とが互いに独立した部材で構成されていてもよい。
【0023】
(本体部材)
本体部材30は、図1に示されるように、電装機器4を支持する。本体部材30は、前方メンバ30aと後方メンバ30bと左右の連結メンバ30cとを有する。本例では、前方メンバ30aと後方メンバ30bと左右の連結メンバ30cとは互いに独立した部材で構成されている。
【0024】
本例では、本体部材30を上方から見た形状が矩形枠状である。前方メンバ30aは、車両の前方において、左右に延びるように配置されている。後方メンバ30bは、前方メンバ30aよりも車両の後方において、左右に延びるように配置されている。本例では、前方メンバ30aの上面と後方メンバ30bの上面とに、図示が省略されたブラケットによって集約ユニット41が取り付けられ、前方メンバ30aの下面と後方メンバ30bの下面とに、図示が省略されたブラケットによってモータ42が取り付けられている。左方の連結メンバ30cは、前方メンバ30aの左端部と後方メンバ30bの左端部とをつないでおり、右方の連結メンバ30cは、前方メンバ30aの右端部と後方メンバ30bの右端部とをつないでいる。
【0025】
本例とは異なり、本体部材30の上方から見た形状が井桁形状となるように、左右の連結メンバ30cが前方メンバ30aの途中と後方メンバ30bの途中とをつないでいてもよい。本例とは異なり、前方メンバ30aと後方メンバ30bと連結メンバ30cとは、一連の部材で構成されていてもよい。
【0026】
(第一部材)
第一部材31は、左右のフロントサイドメンバ2の各々の前方に第一締結部材51で締結されている。第一締結部材51の数は、単数でも複数でもよい。本例の第一締結部材51の数は単数である。第一部材31は、本体部材30の端部に第三締結部材53で締結されている。即ち、第一部材31は、フロントサイドメンバ2の上面と本体部材30の上面とにつながっている。第三締結部材53の数は、単数でも複数でもよい。本例の第三締結部材53の数は、3本である。1本の第三締結部材53が第一部材31と前方メンバ30aとを締結し、2本の第三締結部材53が第一部材31と連結メンバ30cとを締結している。
【0027】
本例の第一部材31は、図4に示されるように、第一上板32と第一下板33とを有する。本例の第一部材31を右方からみた形状は、矩形の筒状である。第一上板32は、下方に開口するU字状に構成されている。第一上板32は、第一天井部321と第一前壁部322と第一後壁部323とを有する。第一天井部321と第一前壁部322と第一後壁部323とは、一連に構成されている。第一下板33は、上方に開口するU字状に構成されている。第一下板33は、第一底部331と第一前壁部332と第一後壁部333とを有する。第一底部331と第一前壁部332と第一後壁部333とは、一連に構成されている。第一天井部321と第一底部331とは、互いに間隔を空けて向かい合っている。第一前壁部322と第一前壁部332とが前後に重ねられており、その重ねられた領域が接合されている。第一後壁部323と第一後壁部333とが前後に重ねられており、その重ねられた領域が接合されている。第一締結部材51は、第一天井部321と第一底部331とを貫通して第一部材31とフロントサイドメンバ2とを締結している。
【0028】
本例の第一上板32は、切欠部321aと上部湾曲部321bとを有する。切欠部321aは、図3に示されるように、車外側の後方に設けられている。切欠部321aによって形成された第一天井部321の縁部は、L字状に構成されている。上部湾曲部321bは、図4に示されるように、切欠部321aと第一締結部材51との間に設けられている。本例の上部湾曲部321bは、上方に凸となるように構成されている。本例では、上部湾曲部321bの車幅に沿った長さは、第一天井部321の下面に接合された板材39の車幅に沿った長さよりも長い。第一下板33は、切欠部331aと下部湾曲部331bとを有する。切欠部331aは、車外側の後方に設けられている。切欠部331aによって形成された第一底部331の縁部は、L字状に構成されている。下部湾曲部331bは、切欠部331aと第一締結部材51との間に設けられている。本例の下部湾曲部331bは、下方に凸となるように構成されている。本例では、下部湾曲部331bの車幅に沿った長さは、第一底部331の上面に接合された板材39の車幅に沿った長さよりも長い。
【0029】
(第二部材)
第二部材35は、図1に示されるように、左右のフロントサイドメンバ2の各々の後方に第二締結部材52で締結されている。第二締結部材52の数は、単数でも複数でもよい。本例の第二締結部材52の数は単数である。第二部材35は、第一締結部材51よりも後方に配置されている。本例の第二部材35は、図3図4に示されるように、切欠部321a、331aから露出するように配置されている。第二部材35は、第一部材31とは異なり、本体部材30には締結されていない。図3に示されるように、本例の第二部材35を上方から見た形状は、四角形状である。図3において、紙面右側に位置する車幅に沿った縦破線と、その縦破線の下端よりも紙面右側に延びる横破線が、第二部材35の縁を示している。第二部材35は、第一締結部材51と第二締結部材52との間で第一部材31に接合されている。
【0030】
本例の第二部材35は、図4に示されるように、第二上板36と第二下板37とを有する。第二部材35を右方からみた形状は、C字状である。第二上板36は、L字状に構成されている。第二上板36は、第二天井部361と第二後壁部362とを有する。第二天井部361と第二後壁部362とは、一連に構成されている。第二下板37は、L字状に構成されている。第二下板37は、第二底部371と第二後壁部372とを有する。第二底部371と第二後壁部372とは、一連に構成されている。第二天井部361と第二底部371とは、互いに間隔を空けて向かい合っている。第二後壁部362と第二後壁部372とが前後に重ねられており、その重ねられた領域が接合されている。
【0031】
図3図4に示されるように、本例の第二天井部361は、第一天井部321の下面における切欠部321aの周辺に接合部55によって接合されている。図3では、接合部55がX印で示されている。本例では、図3に示されるように、第二天井部361と第一天井部321との接合部55の数は、3つである。2つの接合部55は、第二締結部材52よりも前方に設けられており、1つの接合部55は、第二締結部材52よりも車内側に設けられている。第二天井部361と第一天井部321との接合部55の数は、3つに限定されない。図4に示されるように、本例の第二底部371は、第一底部331の上面における切欠部331aの周辺に接合部55によって接合されている。本例では、第二底部371と第一底部331との接合部55の数は、第二天井部361と第一天井部321との接合部55の数と同じであるものの、異なっていてもよい。第二底部371と第一底部331との接合部55が設けられる箇所は、第二天井部361と第一天井部321との接合部55が設けられる箇所と同じであるものの、異なっていてもよい。接合部55は、焼抜き栓溶接(SPW)、スポット溶接などの溶接によって形成できる。第二後壁部362および第二後壁部372は、第一後壁部323および第一後壁部333の前面に接合されている。第二締結部材52は、第二天井部361のうち切欠部321aから露出された部分と第二底部371のうち切欠部331aから露出された部分とを貫通して第二部材35とフロントサイドメンバ2とを締結している。
【0032】
図4に示されるように、本例の第二天井部361は、前方に向かうに従って第一天井部321から離れるように構成された前端部361aを有している。前端部361aは、接合部55よりも前方に設けられている。本例の前端部361aは、傾斜している。本例とは異なり、前端部361aは、湾曲していてもよい。本例の第二底部371は、前方に向かうに従って第一底部331から離れるように構成された前端部371aを有している。前端部371aは、接合部55よりも前方に設けられている。本例の前端部371aは、傾斜している。本例とは異なり、前端部371aは、湾曲していてもよい。
【0033】
(板材)
板材39は、前面衝突時に接合部55の少なくとも一部を破断させる。板材39は、第一部材31に接合されている。板材39の数は、単数でも複数でもよい。本例の板材39の数は2枚である。
【0034】
図3に示されるように、1枚の板材39は、第一天井部321の下面に接合部56によって接合されている。本例では、接合部56の数は、4つである。4つの接合部56は、第一締結部材51と上部湾曲部321bとの間において、前後に2つずつ左右に設けられている。接合部56の数は、4つに限定されない。本例では、第一天井部321の下面に接合された板材39の車幅に沿った長さは、第二天井部361の車幅に沿った長さと実質的に等しいものの、第二天井部361の車幅に沿った長さよりも長くても短くてもよい。第一天井部321の下面に接合された板材39の車幅に沿った長さは、左右の2つの接合部55の外幅以上であってもよい。左右の2つの接合部55の外幅とは、左方の接合部55の左端と右方の接合部55の右端との間の車幅に沿った長さである。図4に示されるように、1枚の板材39は、第一底部331の上面に接合部56によって接合されている。本例では、板材39と第一底部331との接合部56の数は、板材39と第一天井部321との接合部56の数と同じであるものの、異なっていてもよい。本例では、板材39と第一底部331との接合部56が設けられる箇所は、板材39と第一天井部321との接合部56が設けられる箇所と同じであるものの、異なっていてもよい。本例では、第一底部331の上面に接合された板材39の車幅に沿った長さは、第一天井部321の下面に接合された板材39の車幅に沿った長さと同じであるものの、異なっていてもよい。
【0035】
(前端部と板材との位置関係)
図4に示されるように、各前端部361a、371aおよび各板材39の後端は、上部湾曲部321bおよび下部湾曲部331bよりも後方に配置されている。即ち、各板材39の一部は、上部湾曲部321bおよび下部湾曲部331bに重なっている。
【0036】
(前面衝突時の挙動)
車両の前面衝突時、左右のフロントサイドメンバ2に作用する荷重によって、左右のフロントサイドメンバ2の凹部21が車内側に向かって凸となるように変形する。凹部21が車内側に向かって変形することで、第一締結部材51が後方へ変位する。第一締結部材51の後方への変位に伴って各板材39が後方へ変位する。後方へ変位した各板材39が第二天井部361と第一天井部321との接合部55の少なくとも一部を破断させ、第二底部371と第一底部331との接合部55の少なくとも一部を破断させる。よって、第一部材31と第二部材35との接合強度が弱まるため、第二締結部材52の近傍が車外側に向かって凸となるように変形する。これらの変形によって、左右のフロントサイドメンバ2が蛇腹状に座屈する。このように、車両構造1は、左右のフロントサイドメンバ2の座屈を適切にコントロールできるため、衝突荷重を効果的に吸収できる。
【0037】
第一天井部321が上部湾曲部321bを有し、第一底部331が下部湾曲部331bを有することによって、前面衝突時に上述したように第一締結部材51の後方への変位に伴って、第一天井部321および第一底部331が変形し易い。そのため、各板材39が後方へ変位し易い。特に、上部湾曲部321bおよび下部湾曲部331bの車幅に沿った長さが各板材39の車幅に沿った長さよりも長いことで、各板材39が後方へ変位し易い。各板材39の車幅に沿った長さが左右の2つの接合部55の外幅以上であることで、各板材39によって接合部55の少なくとも一部を破断し易い。
【0038】
図4の例では、各板材39の後端は、後述する図5に示される変形例に比較して、第二天井部361と第一天井部321との接合部55、および第二底部371と第一底部331との接合部55に近い。そのため、図4の例は、前面衝突時に上述したように各板材39が後方へ変位した際、図5の例に比較して、各板材39によって第二天井部361と第一天井部321との接合部55、および第二底部371と第一底部331との接合部55の少なくとも一部を破断させ易い。
【0039】
車両構造1では、第二部材35の前端部361a、371aおよび各板材39が第一部材31の内部に配置されている。そのため、車両構造1では、組み付け作業時に前端部361a、371aおよび各板材39のエッジなどが作業者の手に当たり難い。よって、車両構造1は、組み付け作業性に優れる。
【0040】
《変形例》
図5を参照して、変形例の車両構造を説明する。変形例の車両構造は、各前端部361a、371aおよび各板材39の後端の位置が、実施形態の車両構造1と異なる。図5に示されるように、各前端部361a、371aおよび各板材39の後端は、上部湾曲部321bおよび下部湾曲部331bに重なる位置に配置されていてもよい。
【0041】
図5の例では、第一天井部321と前端部361aとの間隔と、第一底部331と前端部371aとの間隔とが、図4の例に比較して大きい。そのため、図5の例は、前面衝突時に上述したように各板材39が後方へ変位した際、図4の例に比較して、第一天井部321に接合された板材39が第二天井部361と第一天井部321との間に差し込まれ易く、第一底部331に接合された板材39が第二底部371と第一底部331との間に差し込まれ易い。その上、図5の例は、図4の例に比較して、板材39と第一部材31との接触面積、および第二部材35と第一部材31との接触面積が少ないため、走行時の振動による錆および異音の発生を抑制し易い。
【0042】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0043】
図4図5に示される上部湾曲部321bは、下方に凸となるように構成されていて、下部湾曲部331bは、上方に凸となるように構成されていてもよい。その場合、第二天井部361は、第一天井部321の上面における切欠部321aの周辺に接合部55によって接合される。第二底部371は、第一底部331の下面における切欠部331aの周辺に接合部55によって接合される。1枚の板材39は、第一天井部321の上面に固定される。1枚の板材39は、第一底部331の下面に固定される。
【符号の説明】
【0044】
1 車両構造
2 フロントサイドメンバ
21 凹部
3 サポートメンバ
30 本体部材
30a 前方メンバ
30b 後方メンバ
30c 連結メンバ
31 第一部材
32 第一上板
321 第一天井部
321a 切欠部
321b 上部湾曲部
322 第一前壁部
323 第一後壁部
33 第一下板
331 第一底部
331a 切欠部
331b 下部湾曲部
332 第一前壁部
333 第一後壁部
35 第二部材
36 第二上板
361 第二天井部
361a 前端部
362 第二後壁部
37 第二下板
371 第二底部
371a 前端部
372 第二後壁部
39 板材
4 電装機器
41 集約ユニット
42 モータ
51 第一締結部材
52 第二締結部材
53 第三締結部材
55、56 接合部
91 ダッシュパネル
92 エプロンメンバ
93 サスペンションタワー
図1
図2
図3
図4
図5