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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159104
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20241031BHJP
   E03D 5/01 20060101ALI20241031BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D5/01
E03D11/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074872
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 知祥
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 勝美
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
2D039AD01
2D039AD04
2D039BA16
2D039DB00
2D039FD01
(57)【要約】
【課題】オーバーフロー性能を高めること。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、貯水タンクと、便器本体と、洗浄水供給流路と、オーバーフロー流路とを備える。貯水タンクは、洗浄水を貯留する。便器本体は、汚物を受けるボウル部と、ボウル部の内部へ洗浄水を吐出する吐水口と、ボウル部の下部に入口部が接続されてボウル部の内部の汚物を排出する排水流路の一部を形成する排水トラップ部とを有する。洗浄水供給流路は、貯水タンクから便器本体まで延びている。オーバーフロー流路は、貯水タンクの内部の洗浄水が規定以上の水位を上回った場合に洗浄水をオーバーフローさせる。オーバーフロー流路は、上流端部が貯水タンクと貯水タンクへ洗浄水を供給する給水口との間へ延びており、オーバーフロー発生時において給水口からの洗浄水の少なくとも一部が上流端部へ直接流入する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
洗浄水を貯留する貯水タンクと、
汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部の内部へ洗浄水を吐出する吐水口と、前記ボウル部の下部に入口部が接続されて該ボウル部の内部の汚物を排出する排水流路の一部を形成する排水トラップ部とを有する便器本体と、
前記貯水タンクから前記便器本体まで延びている洗浄水供給流路と、
前記貯水タンクの内部の洗浄水が規定以上の水位を上回った場合に洗浄水をオーバーフローさせるオーバーフロー流路と
を備え、
前記オーバーフロー流路は、上流端部が前記貯水タンクと該貯水タンクへ洗浄水を供給する給水口との間へ延びており、オーバーフロー発生時において前記給水口からの洗浄水の少なくとも一部が前記上流端部へ直接流入する
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記オーバーフロー流路の前記上流端部は、上面視において前記給水口と重なっている
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記オーバーフロー流路は、オーバーフロー発生時には通常時と比べて前記給水口からの洗浄水をより上方で受けるように当該オーバーフロー流路を形成する切替機構部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記切替機構部は、前記貯水タンクの内部の水位に応じて前記オーバーフロー流路を形成するためのフロートを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記切替機構部は、前記貯水タンクの内部の水位に応じて回転するように構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記切替機構部は、前記貯水タンクの内部の水位に応じて回転可能な可動部を有し、
前記可動部は、オーバーフロー発生時において、上流端側が前記オーバーフロー流路の内部に位置し、下流端側が前記オーバーフロー流路の外部に位置する
ことを特徴とする請求項5に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器において、洗浄水を貯留する貯水タンクと、貯水タンクから便器本体まで延びる洗浄水供給流路と、貯水タンクの内部の洗浄水が規定以上の水位を上回った場合に洗浄水をオーバーフローさせるオーバーフロー流路とを備えるものが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の水洗大便器では、洗浄水がリム導水路を流れて、便器本体において汚物を受けるボウル部の内部へ排出されることで、貯水タンクの内部の洗浄水をオーバーフローさせる。
【0004】
特許文献2に記載の水洗大便器では、貯水タンクの上部から延びるオーバーフローバイパス流路が、排水トラップ管路の内部において封水が形成される部分よりも下流側の排水流路に接続されることで、貯水タンクの内部の洗浄水をオーバーフローさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-48675号公報
【特許文献2】特開2020-117927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の水洗大便器はいずれも、オーバーフロー性能を高める点においてさらなる改善の余地があった。
【0007】
特許文献1に記載の水洗大便器では、たとえば、貯水タンクを低い位置に設定すると、排水流路から臭気または汚物逆流の可能性がある。また、特許文献2に記載の水洗大便器では、排水流路へ延びるオーバーフローバイパス流路のような専用流路があるため、陶器が重量化するとともにデザイン性が低下するおそれがある。
【0008】
実施形態の一態様は、オーバーフロー性能を高めることができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に水洗大便器は、洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、洗浄水を貯留する貯水タンクと、汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部の内部へ洗浄水を吐出する吐水口と、前記ボウル部の下部に入口部が接続されて該ボウル部の内部の汚物を排出する排水流路の一部を形成する排水トラップ部とを有する便器本体と、前記貯水タンクから前記便器本体まで延びている洗浄水供給流路と、前記貯水タンクの内部の洗浄水が規定以上の水位を上回った場合に洗浄水をオーバーフローさせるオーバーフロー流路とを備え、前記オーバーフロー流路は、上流端部が前記貯水タンクと該貯水タンクへ洗浄水を供給する給水口との間へ延びており、オーバーフロー発生時において前記給水口からの洗浄水の少なくとも一部が前記上流端部へ直接流入する。
【0010】
このような構成によれば、オーバーフロー発生時において洗浄水がオーバーフロー流路を流れる場合には、給水口から貯水タンクへ供給される洗浄水の勢いを利用することができるため、洗浄水がオーバーフロー流路を確実に流れるようになる。これにより、オーバーフロー性能を高めることができる。具体的には、通常のオーバーフロー発生時の洗浄水の溢流の位置エネルギーに貯水タンクへの給水の運動エネルギーが加わることで、洗浄水がオーバーフロー流路を所望の水勢で流れる。これにより、洗浄水がオーバーフロー流路を確実に流れるようになり、オーバーフロー性能を高めることができる。また、このような構成によれば、貯水タンクの位置を低く設定してもオーバーフロー性能を確保することができるため、オーバーフロー性能を維持しつつローシルエット化を図ることができ、デザイン性の向上に寄与することができる。この場合、貯水タンクを低く設定しても、排水流路からの臭気および汚物の逆流の発生を抑えることができる。また、排水流路へと延びる排水のための専用流路が不要でもあるため、軽量化が可能となるとともにデザイン性の向上も可能となる。
【0011】
また、上記の水洗大便器において、前記オーバーフロー流路の前記上流端部は、上面視において前記給水口と重なっている。
【0012】
このような構成によれば、給水口からの洗浄水がオーバーフロー流路に流れるようになる。これにより、オーバーフロー発生時において給水口から貯水タンクへ供給される洗浄水の勢いを利用することができ、洗浄水がオーバーフロー流路を確実に流れるようになる。
【0013】
また、上記の水洗大便器において、前記オーバーフロー流路は、オーバーフロー発生時には通常時と比べて前記給水口からの洗浄水をより上方で受けるように当該オーバーフロー流路を形成する切替機構部を有する。
【0014】
このような構成によれば、オーバーフロー発生時とオーバーフロー発生時ではない通常時とにおいて洗浄水の流路を切り替えて、オーバーフロー発生時にはオーバーフロー流路が形成される。そして、オーバーフロー発生時には給水口からの洗浄水がオーバーフロー流路へ供給されるため、給水口からの洗浄水がオーバーフロー流路に流れるようになる。これにより、オーバーフロー発生時において給水口から貯水タンクへ供給される洗浄水の勢いを利用することができ、洗浄水がオーバーフロー流路を確実に流れるようになる。
【0015】
また、上記の水洗大便器において、前記切替機構部は、前記貯水タンクの内部の水位に応じて前記オーバーフロー流路を形成するためのフロートを有する。
【0016】
このような構成によれば、オーバーフロー発生時においてオーバーフロー流路を確実に形成することができる。また、電力を使用しないオーバーフロー対応が可能となるため、停電時においてもオーバーフロー対応が可能となる。
【0017】
また、上記の水洗大便器において、前記切替機構部は、前記貯水タンクの内部の水位に応じて回転するように構成される。
【0018】
このような構成によれば、たとえば、貯水タンクの内部の水位に応じて直動するような機構と比べて小型かつ簡素な構成とすることができる。また、切替機構部が、小型かつ簡素な構成であることで故障も少なくなるため、オーバーフロー発生時においてオーバーフロー流路を確実に形成することができる。
【0019】
また、上記の水洗大便器において、前記切替機構部は、前記貯水タンクの内部の水位に応じて回転可能な可動部を有し、前記可動部は、オーバーフロー発生時において、上流端側が前記オーバーフロー流路の内部に位置し、下流端側が前記オーバーフロー流路の外部に位置する。
【0020】
このような構成によれば、オーバーフロー発生時には切替機構部の回転動作を規定位置で確実に止めることができる。そして、切替機構部の回転動作を規定位置で止めることでオーバーフロー流路が形成されるため、オーバーフロー発生時においてオーバーフロー流路を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
実施形態の一態様に係る水洗大便器によれば、オーバーフロー性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器の全体構成を示す概略側面図である。
図2図2は、実施形態に係る水洗大便器の全体構成を示す概略平面図である。
図3図3は、貯水タンクおよび洗浄水供給流路を示す概略斜視図である。
図4図4は、給水口、貯水タンクおよびオーバーフロー流路を示す概略側断面図(その1)である。
図5図5は、貯水タンクおよびオーバーフロー流路を示す概略斜視図である。
図6図6は、給水口、貯水タンクおよびオーバーフロー流路を示す概略側断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
<水洗大便器の全体構成>
図1~3を参照して実施形態に係る水洗大便器1の全体構成ついて説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器1の全体構成を示す概略側面図である。図2は、実施形態に係る水洗大便器1の全体構成を示す概略平面図である。図3は、貯水タンク41および洗浄水供給流路5を示す概略斜視図である。
【0025】
なお、図1~3には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。また、以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0026】
図1および2に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、給水部3と、タンク部4と、洗浄水供給流路5と、オーバーフロー流路6とを備える。なお、水洗大便器1は、後述する便器本体2がトイレ室の壁面WS(あるいは、キャビネットなどの前壁面)に固定された、いわゆる壁掛け式の水洗大便器である。
【0027】
便器本体2は、陶器製である。なお、便器本体2は、陶器製に限定されず、たとえば、樹脂製であってもよいし、陶器と樹脂とを組み合わせたものであってもよい。便器本体2は、ボウル部21と、リム部22と、吐水口23と、排水トラップ部24と、スカート部27とを備える。ボウル部21は、凹状に形成される。ボウル部21は、汚物を受けるボウル面21aを有する。リム部22は、ボウル部21の上方に設けられる。リム部22は、ボウル面21aの上縁部に設けられる。
【0028】
吐水口23は、ボウル部21の内部に形成され、タンク部4からの洗浄水をボウル部21の内部のボウル面21aへ吐出する。
【0029】
排水トラップ部24は、ボウル部の内部の内部の汚物を排出する排水流路の一部を形成する。排水トラップ部24は、一端側がボウル部21の下部に接続され、他端側が排水管25に接続される。なお、排水トラップ部24の一端側は、排水トラップ部24の入口部24aであり、排水流路の入口部ともなる。
【0030】
また、排水トラップ部24は、上流側から下流側へ向けて、屈曲管路24bと、下降管路24cとを備える。屈曲管路24bは、上流側の入口部(排水トラップ部24の入口部24a)がボウル部21の下部に接続される。そして、入口部24aから後方かつ下方の最下端部24dまで延びた後、後方かつ上方の頂部24eまで上昇する排水流路を形成する。
【0031】
下降管路24cは、屈曲管路24bの頂部24eから後方かつ下方へ下降した後に排水ソケット26に接続される排水流路を形成する。なお、屈曲管路24bにおける頂部24eよりも上流側(前方側)の領域には封水(封水面WL0)が形成される。また、排水トラップ部24の他端側が接続される排水管25は、床面FSよりも下方から上方へ延びた後、便器本体2側(前方側)へ差し向けられ、排水管25の上流端に位置する入口部が排水ソケット26を介して排水トラップ部24の下流端の出口部24fに接続される。
【0032】
スカート部27は、ボウル部21および排水トラップ部24を外側から取り囲むように設けられる。なお、スカート部27は、便器本体2と一体に設けれた陶器製に限定されず、たとえば、便器本体2とは別体に設けられ、便器本体2に対して外側から覆うように取り外し可能に取り付けられた樹脂製などのパネル部材であってもよい。
【0033】
給水部3は、給水管31を備える。給水管31は、後述するタンク部4へ洗浄水を供給する。給水管31の上流端側は、水道などの給水源32に接続される。給水管31には、給水源32から下流側へと順に、止水栓33、バルブユニット34が設けられる。
【0034】
バルブユニット34は、定流量弁(図示せず)、定流量弁の下流側に設けられた開閉弁であるダイヤフラム弁(図示せず)およびダイヤフラム弁を開閉させる電磁弁(図示せず)などを備える。
【0035】
給水管31の下流端には、給水ノズル31aが設けられる。給水ノズル31aは、後述する貯水タンク41(図3参照)へと洗浄水を供給する給水口31bを備える。たとえば、バルブユニット34の電磁弁の作動によってダイヤフラム弁が開弁されると、給水源32から水道などの給水圧によって給水管31へ供給された洗浄水は、止水栓33からバルブユニット34の定流量弁を通過することで流量が一定に調整された後、ダイヤフラム弁を通過する。バルブユニット34を通過した洗浄水は、たとえば、給水ノズル31aの給水口31bから落下することで、貯水タンク41の供給口41aから貯水タンク41の内部へ供給される。
【0036】
図3に示すように、タンク部4は、貯水タンク41と、加圧ポンプ42とを備える。貯水タンク41は、給水口31bから供給される洗浄水を貯留する。貯水タンク41は、便器本体2の下部に組み込まれる。給水口31bから供給される洗浄水は、上記のように、貯水タンク41(図3参照)の内部へ供給される。貯水タンク41は、貯水タンク41の上面に給水口31bからの洗浄水の入口部となる供給口41aを有する。
【0037】
加圧ポンプ42は、貯水タンク41からの洗浄水を加圧して便器本体2のボウル部21へ供給する。加圧ポンプ42は、便器本体2の内部に組み込まれる。加圧ポンプ42が作動することで、貯水タンク41の内部へ供給された洗浄水は、後述する洗浄水供給流路5を流れて便器本体2へ供給され、さらに、便器本体2に設けられた主導水路(図示せず)を流れて吐水口23(リム吐水口ともいう)からボウル部21の内部(ボウル面21a)へ供給される。
【0038】
また、水洗大便器1は、加圧ポンプの作動を制御するコントローラ(図示せず)を備える。コントローラは、便器本体2のいずれかの位置に設けられる。また、給水部3は、タンクの内部の水位を検知するフロートスイッチ(図示せず)を備える。バルブユニット34の電磁弁の開閉動作は、フロートスイッチによって検知された連結ユニット43の内部の水位に基づいて、コントローラによって制御される。ここで、連結ユニット43は、貯水タンク41の上方に設けられる。連結ユニット43は、給水口31bおよび貯水タンク41の供給口41aを含んで略閉塞した空間を形成する。
【0039】
また、加圧ポンプ42の作動も、フロートスイッチによって検知されたタンクの内部の水位に基づいて、コントローラによって制御される。たとえば、フロートスイッチによって検知された連結ユニット43の内部の水位が所定以下である場合には、バルブユニット34の電磁弁が開弁するとともにダイヤフラム弁が開弁する。これにより、給水ノズル31aの給水口31bが開放され、給水口31bから貯水タンク41への洗浄水の供給が開始される。
【0040】
これと同時に、加圧ポンプ42が作動し、貯水タンク41の内部の洗浄水が加圧ポンプ42から便器本体2の主導水路へ圧送された後、リム導水路を流れて吐水口23へと供給される。この結果、吐水口23からの吐水(リム吐水)によって便器洗浄を行う、いわゆる「リム吐水100%による便器洗浄」による便器洗浄が実行される。そして、貯水タンク41の内部の水位が所定水位まで到達すると、バルブユニット34の電磁弁が閉弁するとともにダイヤフラム弁が閉弁する。これにより、給水口31bが閉鎖され、加圧ポンプ42が停止する。
【0041】
洗浄水供給流路5は、貯水タンク41から便器本体2まで延びる流路である。洗浄水供給流路5は、加圧ポンプ42によって加圧された洗浄水が便器本体2へ向けて流れる流路である。洗浄水供給流路5の下流端側は、リム導水路を介して吐水口23に接続される。洗浄水供給流路5は、洗浄水供給流路5の下流端側に吐水端部51を備える。なお、洗浄水供給流路5は、便器本体2のリム導水路(図示せず)を含んでもよい。
【0042】
オーバーフロー流路6は、貯水タンク41へ供給される洗浄水が規定以上の水位WL1(図6参照)を上回った場合に、この洗浄水をオーバーフローさせる流路である。オーバーフロー流路6は、後述する上流端部61が貯水タンク41と給水口31bとの間へ延びている。オーバーフロー流路6では、オーバーフロー発生時において、給水口31bからの洗浄水の少なくとも一部がこのオーバーフロー流路6の上流端部61へ直接流入する。
【0043】
<オーバーフロー流路の構成>
次に、図4~6を参照してオーバーフロー流路の構成について説明する。図4は、給水口31b、貯水タンク41およびオーバーフロー流路6を示す概略側断面図であり、オーバーフロー流路6の通常時の状態を示す図である。図5は、貯水タンク41およびオーバーフロー流路6を示す概略斜視図である。図6は、給水口31b、貯水タンク41およびオーバーフロー流路6を示す概略側断面図であり、オーバーフロー流路6のオーバーフロー発生時の状態を示す図である。なお、図4および6は、図2におけるIV-IV線の概略断面図でもある。
【0044】
図4に示すように、オーバーフロー流路6は、上流端部61と、下流端部62(図3参照)と、中途部63(図3参照)と、切替機構部64とを備える。上流端部61は、上記のように、オーバーフロー流路6のうち、連結ユニット43の内部に位置するとともに、側面視において貯水タンク41と給水口31bとの間へ延びている部位である。上流端部61は、給水管31の給水口31bからの洗浄水W(W1,W2)を受ける受け口61aを備える。受け口61aは、上流端部61の最上流端であり、上方を向けて開口している。
【0045】
上流端部61の受け口61aは、上面視において、給水口31bと一部または全部が重なっている。なお、オーバーフロー流路6の上流端部61は、上面視において給水口31bと重なっている配置に限定されず、たとえば、給水口31bが連結ユニット43の側面に設けられ、給水口31bから供給される洗浄水W1が給水口31bから側方へ吐出されるような場合には、上面視において上流端部61と給水口31bとが重なっていなくてもよい。この場合、上流端部61は、側面視において、少なくとも上下方向における貯水タンク41と給水口31bとの間にある位置関係となる。
【0046】
下流端部62は、洗浄水供給流路5と接続される。中途部63は、オーバーフロー流路6における上流端部61と下流端部62との間の流路である。
【0047】
切替機構部64は、上流端部61に設けられる。図4および5に示すように、切替機構部64は、通水孔65と、ステー66と、可動部67と、フロート68とを備える。通水孔65は、上流端部61の下部に形成された孔である。通水孔65は、オーバーフロー流路6における洗浄水W2(図6参照)の流れ方向に沿って所定の長さを有する。また、通水孔65は、洗浄水W2の流れ方向と直交する方向においても、給水口31bからの洗浄水W1が通水可能な所定の長さを有する。
【0048】
ステー66は、上流端部61から下方へ延びて設けられる。ステー66は、可動部67を回転可能に支持する。可動部67は、通水孔65と対応する形状に形成される。可動部67は、後述する回転軸を支点として上方へ回動することで、通水孔65を閉塞する形状である。可動部67は、オーバーフロー流路6の外側となる面に連動片671を有する。連動片671は、可動部67の外側の面と一体に設けられる。
【0049】
連動片671は、上流端部61の受け口61a側(上流側)となる一端側に回転軸672を有する。連動片671は、回転軸672を支点として回転可能に設けられる。これにより、可動部67は、回転軸672を支点として回転可能となる。
【0050】
また、連動片671は、上流端部61の受け口61aとは反対側(下流側)となる他端側に、連動片371の長手方向に沿って長い長孔673を有する。長孔673には、後述するフロート68から延びたピン681が挿通される。
【0051】
フロート68は、上下方向へ直動可能に設けられる。フロート68は、貯水タンク41から洗浄水W1が便器本体2側へ供給されないオーバーフロー発生時において連結ユニット43の内部の水位WL1(図6参照)が上昇した場合に、水位WL1に応じて浮力によって上昇する。また、フロート68は、フロート68の側面から水平方向へ突出しているピン681を有する。ピン681は、連動片671の長孔673に挿通される。
【0052】
図6に示すように、フロート68が上昇すると、フロート68の上昇に応じて連動片671が上方へ回動し、連動片671が上方へ回動すると、可動部67が上方へ回動する。これにより、可動部67は、通水孔65を閉塞してオーバーフロー流路6を形成する。そして、オーバーフロー流路6が形成されると、給水口31bからの洗浄水W1(図4参照)は、オーバーフロー流路6を流れて吐水口23(図1参照)へ供給され、吐水口23からボウル部21(図1参照)の内部へ排出される。
【0053】
なお、オーバーフロー流路6が形成されると、連結ユニット43の内部の洗浄水W1は、上流端部61の受け口61aからもオーバーフロー流路6へ供給される。
【0054】
また、図4に示すように、上昇したフロート68が下降すると、フロート68の下降に応じて連動片671が下方へ回動し、連動片671が下方へ回動すると、可動部67が下方へ回動する。これにより、可動部67は、通水孔65を開放する。
【0055】
このように、切替機構部64は、オーバーフロー発生時には、オーバーフローが発生していない通常時と比べて給水口31bからの洗浄水W1をより上方で受けるように、その形状が変化して、すなわち、可動部67の姿勢が変化してオーバーフロー流路6を形成する。この場合、貯水タンク41の内部の水位WL1に応じて上下動するフロート68によって、可動部67の姿勢が変化してオーバーフロー流路6を形成する。
【0056】
切替機構部64は、オーバーフロー発生時には、給水口から供給される洗浄水W2の水勢(水圧)によって、オーバーフロー流路6を形成したままで姿勢が維持される。
【0057】
また、可動部67は、オーバーフロー発生時において通水孔65を閉塞している状態では、可動部67の上流端67a側がオーバーフロー流路6の内部に位置し、可動部67の下流端67b側がオーバーフロー流路6の外部に位置することがより好ましい。また、可動部67の上流端67a側および下流端67b側に、たとえば、樹脂製のパッキンが設けられてもよい。これにより、通水孔65と可動部67との接続部からの漏水をさらに確実に抑えることができる。
【0058】
以上説明した実施形態に係る水洗大便器1によれば、オーバーフロー発生時において洗浄水Wがオーバーフロー流路6を流れる場合には、給水口31bから貯水タンク41へ供給される洗浄水Wの勢いを利用することができるため、洗浄水Wがオーバーフロー流路6を確実に流れるようになる。これにより、オーバーフロー性能を高めることができる。具体的には、通常のオーバーフロー発生時の洗浄水Wの溢流の位置エネルギーに貯水タンク41への給水の運動エネルギーが加わることで、洗浄水Wがオーバーフロー流路6を所定の水勢で流れる。これにより、洗浄水Wがオーバーフロー流路6を確実に流れるようになり、オーバーフロー性能を高めることができる。また、貯水タンク41の位置を低く設定してもオーバーフロー性能を確保することができるため、オーバーフロー性能を維持しつつローシルエット化を図ることができ、デザイン性の向上に寄与することができる。この場合、貯水タンク41を低く設定しても、排水流路からの臭気および汚物の逆流の発生を抑えることができる。また、排水流路へと延びる排水のための専用流路が不要でもあるため、軽量化が可能となるとともにデザイン性の向上も可能となる。
【0059】
また、オーバーフロー流路6の上流端部61が上面視において給水口31bと重なっていることで、給水口31bからの洗浄水Wがオーバーフロー流路6に流れるようになる。これにより、オーバーフロー発生時において給水口31bから貯水タンク41へ供給される洗浄水Wの勢いを利用することができ、洗浄水Wがオーバーフロー流路6を確実に流れるようになる。
【0060】
また、オーバーフロー発生時にはオーバーフロー流路6を形成する切替機構部64を有することで、オーバーフロー発生時と通常時とにおいて洗浄水Wの流路を切り替えて、オーバーフロー発生時にはオーバーフロー流路6が形成される。そして、オーバーフロー発生時には給水口31bからの洗浄水Wがオーバーフロー流路6へ供給されるため、給水口31bからの洗浄水Wがオーバーフロー流路6に流れるようになる。これにより、オーバーフロー発生時において給水口31bから貯水タンク41へ供給される洗浄水Wの勢いを利用することができ、洗浄水Wがオーバーフロー流路6を確実に流れるようになる。
【0061】
また、切替機構部64がオーバーフロー流路を形成するためのフロート68を有することで、オーバーフロー発生時においてオーバーフロー流路6を確実に形成することができる。また、電力を使用しないオーバーフロー対応が可能となるため、停電時においてもオーバーフロー対応が可能となる。
【0062】
また、切替機構部64が回転するように構成されることで、たとえば、貯水タンク41の内部の水位WL1に応じて直動するような機構と比べて小型かつ簡素な構成とすることができる。また、切替機構部64が、小型かつ簡素な構成であることで故障も少なくなるため、オーバーフロー発生時においてオーバーフロー流路6を確実に形成することができる。
【0063】
また、オーバーフロー発生時においては、切替機構部64の可動部67の上流端67a側がオーバーフロー流路6の内部に位置し、下流端67b側がオーバーフロー流路6の外部に位置することで、オーバーフロー発生時には切替機構部64の回転動作を規定位置で確実に止めることができる。そして、切替機構部64の回転動作を規定位置で止めることでオーバーフロー流路6が形成されるため、オーバーフロー発生時においてオーバーフロー流路6を確実に形成することができる。
【0064】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 水洗大便器
2 便器本体
5 洗浄水供給流路
6 オーバーフロー流路
21 ボウル部
22 リム部
23 吐水口
24 排水トラップ部
24a 入口部
31b 給水口
41 貯水タンク
51 吐水端部
61 上流端部
62 下流端部
64 切替機構部
67a 上流端
67b 下流端
68 フロート
W 洗浄水
WL1 水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6