(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159109
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】転倒防止器具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20241031BHJP
F16B 2/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E04G21/16
F16B2/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074889
(22)【出願日】2023-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】521095880
【氏名又は名称】片山鐵工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】片山 友裕
【テーマコード(参考)】
2E174
3J022
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA32
2E174EA05
3J022DA11
3J022EA42
3J022EB13
3J022EC12
3J022EC23
3J022ED22
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022FB24
3J022GA07
3J022GA12
3J022GB32
(57)【要約】
【課題】
本開示は、簡単な構造で、取付容易な上、被取付部材への取付状態を安定させ、被取付部材の転倒防止性を高める。
【解決手段】転倒防止器具1は、棒状部材と、前記棒状部材2に、長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた2つ一組の爪部7を、少なくとも2組有する爪部材3と、前記棒状部材2に移動可能に取り付けた爪部7を、前記棒状部材2に対して長手方向に位置規制する位置規制部材4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部材と、
前記棒状部材に、長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた2つ一組の爪部を、少なくとも2組有する爪部材と、
前記棒状部材に移動可能に取り付けた爪部を、前記棒状部材に対して長手方向に位置規制する位置規制部材と、
を備える、転倒防止器具。
【請求項2】
前記爪部は、筒部を有し、前記筒部は、前記棒状部材にスライド可能に配置される、請求項1に記載の転倒防止器具。
【請求項3】
前記棒状部材は、外周に雄ねじ部を有し、
前記位置規制部材は、前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部を有する、請求項1に記載の転倒防止器具。
【請求項4】
前記棒状部材は、長手方向に延び、被取付部材に載置される平坦面を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の転倒防止器具。
【請求項5】
前記雌ねじ部は、前記雌ねじ部を回転操作可能に把持可能な把手部を備える、請求項3に記載の転倒防止器具。
【請求項6】
前記把手部は、前記雌ねじ部に対して摺動可能に取り付けられている、請求項5に記載の転倒防止器具。
【請求項7】
前記爪部は、H形鋼のフランジ部の形状に沿った傾斜面を備える、請求項1に記載の転倒防止器具。
【請求項8】
前記爪部は、旋回可能に取り付けられている、請求項1に記載の転倒防止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転倒防止器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、H形鋼の転倒防止器具として、例えば、次のような構成のものが公知である。
【0003】
特許文献1に記載の転倒防止器具では、H形鋼の上フランジの上面と、他のH形鋼の上フランジの下面とを接触させて平行に配置し、棒状体に取り付けた第1当接部と第2当接部とで挟み込んで一体化することにより、複数のH形鋼の転倒を防止するようにしている。
【0004】
特許文献2に記載の転倒防止器具では、長さを調整可能な入れ子状パイプの両端に、それぞれ回転可能に取り付けたクランプにより、高低差のある状態であっても複数のH形鋼同士を接続して一体化することにより、複数のH形鋼の転倒を防止するようにしている。
【0005】
しかしながら、前者の転倒防止器具では、複数のH形鋼をフランジの上面と下面とを接触させた状態で並べなければならない。このため、転倒防止器具でH形鋼の転倒を防止するための前段階での準備が煩雑である。
【0006】
一方、後者の転倒防止器具では、入れ子状パイプの長さを調整し、クランプによってH形鋼のフランジを把持しなければならないため、調整作業が面倒である。また、H形鋼の数が増えると、その分、用意しなければならない転倒防止器具の数も増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3868478号公報
【特許文献2】特開2003-90131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、簡単な構造で、取付容易な上、被取付部材への取付状態を安定させ、被取付部材の転倒防止性を高めることができる転倒防止器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、前記課題を解決するための手段として、棒状部材と、前記棒状部材に、長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた2つ一組の爪部を、少なくとも2組有する爪部材と、前記棒状部材に移動可能に取り付けた爪部を、前記棒状部材に対して長手方向に位置規制する位置規制部材と、を備える、転倒防止器具を提供する。
【0010】
前記構成によれば、棒状部材に沿って爪部を移動させ、一組の爪部で被取付部材を挟持し、移動させた爪部を位置規制部材によって位置規制するだけで、複数の被取付部材を容易に連結することができる。しかも、単一の棒状部材に複数の爪部を移動可能に取り付け、位置規制部材で爪部を位置規制するだけの簡単な構造である。また、1つの被取付部材に対して一対の爪部で両側から挟み込むことができる。このため、取付状態を安定させて、被取付部材の転倒防止性を高めることが可能となる。
前記爪部は、筒部を有し、前記筒部は、前記棒状部材にスライド可能に配置されるのが好ましい。
前記構成によれば、構成が簡単で、爪部単体のみならず、全体でも剛性に優れたものとすることができる。
前記棒状部材は、外周に雄ねじ部を有し、前記位置規制部材は、前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部を有するのが好ましい。
【0011】
前記構成によれば、棒状部材に対して位置規制部材を回転させて、雄ねじ部に対する雌ねじ部の噛み合わせ位置を変更するだけで、棒状部材に対する位置規制部材の長手方向の位置を変更することができる。これにより、位置規制部材によって簡単に爪部を位置規制することが可能となる。
前記棒状部材は、長手方向に延び、被取付部材に載置される平坦面を備えるのが好ましい。
【0012】
前記構成によれば、被取付部材に対する棒状部材の配置状態を安定させることができる。このため、ユーザは棒状部材の位置決めなどの付加的な作業が必要なくなり、作業性を向上させることが可能となる。
前記雌ねじ部は、前記雌ねじ部を回転操作可能に把持可能な把手部を備えるのが好ましい。
【0013】
前記構成によれば、ユーザが把持部を掴んで簡単に位置規制部材を回転させることができる。また、ユーザが把持部を掴んで回転方向に力を加えた後は、慣性力によって位置規制部材の回転状態を継続させることができる。このため、位置規制部材の移動を容易に行わせることが可能となる。
前記把手部は、前記雌ねじ部に対して摺動可能に取り付けられているのが好ましい。
前記構成によれば、把持部を操作する際、手で握りやすくて操作しやすい位置に移動させることができる。
前記爪部は、H形鋼のフランジ部の形状に沿った傾斜面を備えるのが好ましい。
前記構成によれば、被取付部材に対する爪部の取付状態を安定させることができ、被取付部材同士の連結状態を強固なものとすることが可能となる。
前記爪部は、旋回可能に取り付けられているのが好ましい。
【0014】
前記構成によれば、複数の被取付部材の位置関係が平行でなく、多少斜めになっていても爪部を旋回させることで、確実に把持させることができる。したがって、被取付部材の配置で時間を取られることもなく、作業性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、棒状部材に爪部材と位置規制部材と取り付けただけの簡単な構成とすることができる。一組の爪部によって1つの被取付部材を挟持し、複数組の爪部によって複数の被取付部材同士を連結することにより、取付状態を安定させることができる。このため、被取付部材の転倒防止性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る転倒防止器具の一部を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す転倒防止器具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係る把持部を示す側面図である。
【
図8】
図8は、他の実施形態に係る爪部を示す正面図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態に係る位置規制部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下、本開示に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している場合がある。
【0018】
(転倒防止器具1)
図1は、本実施形態に係る転倒防止器具1の斜視図、
図2はその正面図である。この転倒防止器具1は、棒状部材2と、爪部材3と、位置規制部材4とを備える。転倒防止器具1(棒状部材2と、爪部材3と、位置規制部材4)の材料としては、例えば、一般構造圧延鋼(SS400など)で形成することが好ましい。ただし、被取付部材を一体化し、転倒防止に有効な強度を有する場合には、他の種々の材料を使用することも可能である。さらに、転倒防止器具1(棒状部材2と、爪部材3と、位置規制部材4)の材料としては、特に制限はないが、例えば、金属、合成樹脂、FRP(Fiberglass Reinforced Plastics)、カーボン、木材等が挙げられる。
【0019】
(棒状部材2)
棒状部材2は棒状である。棒状部材2は、棒状部材の軸方向(長手方向)に直交する断面において、円形であることが好ましい。ただし、円形に限らず、棒状部材の軸方向(長手方向)に直交する断面において、楕円形、長方形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、菱形、平行四辺形等であってもよい。
【0020】
棒状部材2は一端側から他端側に向かって延びるねじ軸で構成されている。ねじ軸には、長手方向に沿って延びる一対の平行な平坦面5(
図1では、下面側は図示されていない)が形成されることにより、雄ねじ部6の一部が除去されている。一方(下面側)の平坦面は、後述する被取付部材であるH形鋼19のフランジの上方平面に面接触状態で載置するために利用される。このため、平坦面5は1つ(下面側に)だけ形成するようにしてもよい。
【0021】
(爪部材3)
爪部材3は、棒状部材2に、長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた2つ一組の爪部7を、少なくとも2組有する。本実施形態において、
図1に示すように、爪部材3は複数組の爪部7を備える(
図1では2組の爪部7が図示されている。)。爪部7は、後述する被取付部材が転倒しないように、被取付部材の一端と他端(例えば、H形鋼のフランジにおいては、H形鋼のウェブの高さ方向端部からウェブの両面側にそれぞれ張り出す右フランジと左フランジ)をそれぞれ挟み込むように、2つ一組で構成される。なお、複数組の爪部7は、それぞれ1つの被取付部材を挟み込める位置に移動可能に構成されている。移動可能とは、本実施形態のようなスライド移動の他に、任意の位置に着脱可能に固定されることも含む。
【0022】
爪部7は、第1爪部8と第2爪部9の2つを用いた組み合わせと、第2爪部9を2つ用いた組み合わせがある。本実施形態では、第1爪部8は棒状部材2の一端部に固定される。第2爪部9は、棒状部材2の雄ねじ部6にスライド可能に配置される。
【0023】
棒状部材2の一端部には第1爪部8が固定され、棒状部材2の他端側に第2爪部9が配置されている。本実施形態では、棒状部材2の一端部に第1爪部8が1つ、他端側に第2爪部9が3つ配置されている。これ以外の組み合わせとしては、すべて第2爪部(スライド可能な爪部)を採用しても良い。
【0024】
第1爪部8は、
図4に示すように、第1固定板10と、この第1固定板10に固定される第1当接板11とからなる。第1固定板10は平板状で、棒状部材2の一端部に、溶接等により直接固定される固定部10aと、この固定部10aに続いて斜めに延びる傾斜部10bとからなる。固定部10aと傾斜部10bとによって第1傾斜縁12aと第2傾斜縁12bからなる内側縁12が形成されている。第1当接板11は平板状で、第1傾斜縁12aと第2傾斜縁12bに沿うように屈曲されることにより第1当接部11aと第2当接部11bとが形成されている。第1当接部11aと第2当接部11bは第1傾斜縁12aと第2傾斜縁12bにそれぞれ溶接等により固定され、第1固定板10に対して直交している。
【0025】
このように、第1爪部8では、第1固定板10及び第1当接板11を平板状とすることにより軽量化が図られている。第1当接板11を屈曲させることにより傾斜した第2当接部は、後述する被取付部材であるH形鋼19の上フランジ部20の下方傾斜面に当接するように形成されている。したがって、H形鋼19への取付状態を安定させることができる。第1当接板11に対して第1固定板10が直交しているので、第1当接板11に対して力が作用する方向に対して十分な強度を持って支えることができる。
【0026】
第2爪部9は、
図5に示すように、円筒体13と、この円筒体13に固定される第2固定板14と、この第2固定板14に固定される第2当接板15とからなる。円筒体13は、棒状部材2の周囲、すなわち雄ねじ部6の外周部分にスライド可能に配置される。棒状部材2の雄ねじ部6との接触は、ねじ山の最も突出した部分だけであり、円筒体13との接触面積が小さく、摩擦抵抗を受けにくい。このため、棒状部材2に対して第2爪部9を、それほど力を加えなくてもスムーズに移動させることができる。なお、第2固定板14及び第2当接板15は、第1爪部8の第1固定板10及び第2当接板15と同一構造であるため、その説明を省略する。
【0027】
(位置規制部材4)
位置規制部材4は棒状部材2に移動可能に取り付けた爪部7を、棒状部材2に対して長手方向に位置規制する。位置規制部材4は爪部7の位置を規制するように構成されている。位置規制部材4は、爪部材3(爪部7)とは別体で設けられている。ただし、後述のように位置規制部材4は爪部材3(爪部7)とは一体で設けられても良い。位置規制部材4は爪部材3の一部として、爪部7の位置を規制する構成を持たせても良い。
【0028】
位置規制部材4は、
図3に示すように、筒部16と把持部17とからなる。筒部16は、内周面に雌ねじ部18が形成されている。雌ねじ部18は、前記棒状部材2の雄ねじ部6に噛み合っている。筒部16を回転させることで、雄ねじ部6に対する雌ねじ部18の噛み合う位置が変化し、棒状部材2に対して位置規制部材4の位置を長手方向へと移動させることができる。筒部16は、断面が正六角形となるように、外周面が6つの平面で構成された、六角ボルトと同様な形状である。ただし、筒部の形状は、断面が正六角形に限られず、断面において、楕円形、長方形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、菱形、平行四辺形等であってもよい。
把持部17は、筒部16の1つの平面に溶接・一体化される部分と、そこから直角に折れ曲がって延び、手で把持する部分とで構成されている。
【0029】
前記構成からなる転倒防止器具1は、複数の被取付部材を連結して一体化し、その転倒を防止するために使用する。被取付部材はH形鋼が好ましい。ただし、被取付部材としては、例えば、H形鋼、I形鋼、T形鋼、Z形鋼、十字形鋼、山形鋼、及び溝形鋼等であってもよい。本実施形態ではH形鋼を例に上げて説明する。
H形鋼19は、
図6に示すように、上フランジ20と下フランジ21の中心部分をウェブ22で連結してなる、断面H形をした鋼材である。
以下、H形鋼19の転倒防止を目的とした転倒防止器具1の使用方法について説明する。
【0030】
複数のH形鋼19を、下フランジ21の下面が地面に載置されるようにして平行に並べて配置する。また転倒防止器具1の各爪部7の位置及び間隔を、平行に配置したH形鋼19の上フランジ20の両側に位置するように調整する。
【0031】
この準備が完了すれば、棒状部材2の一端側の第1爪部8の先端をH形鋼19の上フランジ20の縁部に当接させる。そして、棒状部材2の一方(下方側)の平坦面5をH形鋼19の上フランジ20の上面に当接させる。
【0032】
続いて、棒状部材2に沿って第2爪部9を移動させ、第1爪部8と第2爪部9の間にH形鋼19の上フランジ20を挟み込む。そして、把持部17を掴んで位置規制部材4を回転させる。位置規制部材4の回転では、突出する把持部17によって遠心力が付加される。したがって、把持部材17を掴んで回転力を付与すれば、把持部17から手を離しても慣性力によって位置規制部材4は回転を続ける。
【0033】
このようにして、棒状部材2の雄ねじ部6との噛み合い位置を変更し、位置規制部材4が第2爪部9に当接すれば、把持部17を掴んで締め付け、位置規制部材4によって第2爪部9を上フランジ20の縁部に押し付けて位置規制する。この状態では、第1爪部8の第1当接板11の第1当接部11aが上フランジ20の一方の縁部に当接し、第2当接部11bが上フランジ20の一方の下方傾斜面に当接する。また、第2爪部9の第2当接板15の第1当接部15aが上フランジ20の他方の縁部に当接し、第2当接部15bが他方の下方傾斜面に当接する。したがって、転倒防止器具1は、棒状部材2、第1爪部8及び第2爪部9が上フランジ20に当接した状態となり、上フランジ20に対して強固に取り付けられる。
【0034】
他のH形鋼19では、対応する一対の第2爪部9を棒状部材2に沿ってそれぞれ移動させ、各H形鋼19の上フランジ20を挟み込む。この場合、前記同様にして、各第2爪部9に対して位置規制部材4をそれぞれ回転させて位置規制する。これにより、転倒防止器具1は、一対の第2爪部9によってH形鋼19の上フランジ20にそれぞれ強固に取り付けられる。そして、全てのH形鋼19の上フランジ20を各一対の爪部7によってそれぞれ挟み込むことにより、転倒防止器具1によって全てのH形鋼19を一体化することができる。
【0035】
このように、本実施形態に係る転倒防止器具1は、棒状部材2に爪部7をスライド可能に取り付け、棒状部材2の雄ねじ部6に位置規制部材4の雌ねじ部18を噛み合わせただけの簡単な構成である。前準備としては、H形鋼19を平行に配置するだけでよい。そして、棒状部材2に沿って爪部7を移動させ、位置規制部材4を回転させて締め付けるだけで、簡単に取付作業を完了することができる。しかも、全てのH形鋼19を一対の爪部7によって個別に固定して一体化した状態とすることができる。このため、H形鋼19の転倒防止性に優れた状態を簡単に得ることが可能となる。
【0036】
<他の実施形態>
なお、本開示は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。前記実施形態では、転倒防止器具1を使用する被取付部材の例としてH形鋼19について説明したが、H形鋼19に限らず、例えば、I形鋼、T形鋼、Z形鋼、十字形鋼、山形鋼、及び溝形鋼等、他の鋼材についても同様に、前記実施形態に係る転倒防止器具1を使用すれば、効果的に転倒を防止することができる。また、鋼材のサイズについては特に言及しなかったが、現存する種々のものに対応することができる。鋼材の数やサイズに応じて棒状部材2の長さや爪部7のサイズを変更すればよい。
【0037】
前記実施形態では、位置規制部材4の構成を、把持部17が筒部16に固定される構成としたが、
図7に示すように、把持部17は筒部16から突出する支持片16aに対して、把持部17の軸方向に摺動可能に取り付けるようにしてもよい。把持部17が筒部16から突出する反対側の2箇所でそれぞれ位置決めできるようにすれば、把持部17を把持しやすい位置へと移動させておくことができる点で好ましい。
【0038】
前記実施形態では、爪部7を固定するようにしたが、
図8に示すように、支軸7aを中心として旋回可能な構成とすることもできる。これによれば、被取付部材は平行に並べなくても多少斜めになっていても、爪部7を旋回させることにより両側から挟み込むことができる。これにより、より一層作業性を向上させることが可能となる。
【0039】
前記実施形態では、位置規制部材4を第2爪部9とは別体で設けるようにしたが、
図9に示すように、第2爪部9の円筒体13を、回転軸13aを中心として開閉可能な2つ割りとし、ボルト13b及びナット13cなどの締付け具によって締め付けることにより、円筒体13の内周面を棒状部材2の外周面に圧接するようにしても良い。
さらに、別例では、円筒体の内側にクサビを差し込んで、円筒体(爪部)の位置を規制しても良い。その他の手段によって位置規制できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…転倒防止器具
2…棒状部材
3…爪部材
4…位置規制部材
5…平坦面
6…雄ねじ部
7…爪部
8…第1爪部
9…第2爪部
10…第1固定板
11…第1当接板
12…内側縁
13…円筒体
14…第2固定板
15…第2当接板
16…筒部
17…把持部
18…雌ねじ部
19…H形鋼
20…上フランジ
21…下フランジ
22…ウェブ
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部材と、
前記棒状部材に、前記棒状部材の長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた2つ一組の爪部を、少なくとも2組有する爪部材であって、前記棒状部材に、前記棒状部材の長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた爪部材と、
前記棒状部材に移動可能に取り付けた爪部を、前記棒状部材に対して長手方向に位置規制する位置規制部材と、
を備える、転倒防止器具。
【請求項2】
前記爪部は、筒部を有し、前記筒部は、前記棒状部材にスライド可能に配置される、請求項1に記載の転倒防止器具。
【請求項3】
前記棒状部材は、外周に雄ねじ部を有し、
前記位置規制部材は、前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部を有する、請求項1に記載の転倒防止器具。
【請求項4】
前記棒状部材は、長手方向に延び、被取付部材に載置される平坦面を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の転倒防止器具。
【請求項5】
前記雌ねじ部材は、前記雌ねじ部材を回転操作可能に把持可能な把手部を備える、請求項3に記載の転倒防止器具。
【請求項6】
前記把手部は、前記雌ねじ部材に対して摺動可能に取り付けられている、請求項5に記載の転倒防止器具。
【請求項7】
前記爪部は、H形鋼のフランジ部の形状に沿った傾斜面を備える、請求項1に記載の転倒防止器具。
【請求項8】
前記爪部は、被取付部材への取付状態において、鉛直下方に延びる支軸を中心として旋回可能に取り付けられている、請求項1に記載の転倒防止器具。
【請求項9】
棒状部材と、
前記棒状部材に固定した第1爪部、及び前記第1爪部に対し、前記棒状部材の長手方向に沿って移動可能に取り付けられた第2爪部を有する第1爪部材と、
前記第1爪部材に対し、前記棒状部材の長手方向に沿って移動可能に取り付けられているとともに、前記棒状部材の長手方向に沿って、相対的に移動可能に取り付けられた2つ一組の第2爪部を、少なくとも1組有する第2爪部材と、
前記第1爪部材の第2爪部及び前記第2爪部材の第2爪部のそれぞれを、前記棒状部材に対して長手方向に位置規制する位置規制部材と、
を備える、
転倒防止器具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、棒状部材と、前記棒状部材に、前記棒状部材の長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた2つ一組の爪部を、少なくとも2組有する爪部材であって、前記棒状部材に、前記棒状部材の長手方向に沿って相対的に移動可能に取り付けた爪部材と、前記棒状部材に移動可能に取り付けた爪部を、前記棒状部材に対して長手方向に位置規制する位置規制部材と、を備える、転倒防止器具を提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
前記構成によれば、ユーザが把持部を掴んで簡単に位置規制部材を回転させることができる。また、ユーザが把持部を掴んで回転方向に力を加えた後は、慣性力によって位置規制部材の回転状態を継続させることができる。このため、位置規制部材の移動を容易に行わせることが可能となる。
前記把手部は、前記雌ねじ部に対して摺動可能に取り付けられているのが好ましい。
前記構成によれば、把持部を操作する際、手で握りやすくて操作しやすい位置に移動させることができる。
前記爪部は、H形鋼のフランジ部の形状に沿った傾斜面を備えるのが好ましい。
前記構成によれば、被取付部材に対する爪部の取付状態を安定させることができ、被取付部材同士の連結状態を強固なものとすることが可能となる。
前記爪部は、被取付部材への取付状態において、鉛直下方に延びる支軸を中心として旋回可能に取り付けられているのが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
前記構成によれば、複数の被取付部材の位置関係が平行でなく、多少斜めになっていても爪部を旋回させることで、確実に把持させることができる。したがって、被取付部材の配置で時間を取られることもなく、作業性を向上させることが可能となる。
また、本開示は、前記課題を解決するための手段として、棒状部材と、前記棒状部材に固定した第1爪部、及び前記第1爪部に対し、前記棒状部材の長手方向に沿って移動可能に取り付けられた第2爪部を有する第1爪部材と、前記第1爪部材に対し、前記棒状部材の長手方向に沿って移動可能に取り付けられているとともに、前記棒状部材の長手方向に沿って、相対的に移動可能に取り付けられた2つ一組の第2爪部を、少なくとも1組有する第2爪部材と、前記第1爪部材の第2爪部及び前記第2爪部材の第2爪部のそれぞれを、前記棒状部材に対して長手方向に位置規制する位置規制部材と、を備える転倒防止器具を提供する。