(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015911
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】拡底部材、鉄塔基礎構造及び鉄塔基礎の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
E02D27/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118294
(22)【出願日】2022-07-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年12月16日、令和3年12月21日 令和4年01月19日、令和4年01月27日 プレキャスト化した逆T字型基礎の耐力確認試験見学会にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亜理
(72)【発明者】
【氏名】田邉 成
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA14
2D046BA22
(57)【要約】
【課題】基礎の引き抜き荷重に対する抵抗を確保しつつ、基礎の構築作業が煩雑になることを抑制することができる拡底部材、鉄塔基礎構造及び鉄塔基礎の構築方法を提供する。
【解決手段】拡底部材40は、地盤26に掘削された掘削穴26Aの内側に配置されて鉄塔10の鉄骨脚部20の一部を構成する脚材24を保持する床板30の周方向に沿って複数配置可能とされ、掘削穴26Aの下部が掘削穴26Aの径方向に拡大された拡底部26A2に一部が挿入可能とされると共に、床板30の外周面部30Bと荷重の伝達が可能とされたプレキャストコンクリート製の本体部80を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に掘削された掘削穴の内側に配置されて鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板の周方向に沿って複数配置可能とされ、当該掘削穴の下部が当該掘削穴の径方向に拡大された拡底部に一部が挿入可能とされると共に、当該床板の外周面部と荷重の伝達が可能とされたプレキャストコンクリート製の本体部を有する拡底部材。
【請求項2】
前記本体部が前記外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に位置するときに当該本体部の当該内周面部側となる部分は、前記拡底部に差し込み可能な差し込み部とされており、
前記差し込み部の上面部における前記本体部の底面部に対する高さが当該差し込み部の先端部に向かうに従って低くなっている、
請求項1に記載の拡底部材。
【請求項3】
前記本体部が前記外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に位置するときに当該外周面部側となる当該本体部の内側側面部に、当該外周面部側に突出した内側凸部と、当該内周面部側に凹んだ内側凹部と、が設けられている、
請求項2に記載の拡底部材。
【請求項4】
前記本体部の前記周方向両端部における前記鉄塔の高さ方向上側となる部分には、当該高さ方向下側に凹むと共に隣接する前記本体部側が開放された上側凹部が設けられており、
前記本体部の前記両端部における前記高さ方向下側となる部分には、当該高さ方向上側に凹むと共に隣接する前記本体部側が開放された下側凹部が設けられており、
前記本体部に一部が埋め込まれると共に、当該本体部から前記周方向に延出されて前記高さ方向から見て前記上側凹部に収まる一対の第1延出部を備えた第1接続鉄筋と、
前記本体部に一部が埋め込まれると共に、当該本体部から前記周方向に延出されて前記高さ方向から見て前記下側凹部に収まる一対の第2延出部を備えた第2接続鉄筋と、
をさらに有する、
請求項3に記載の拡底部材。
【請求項5】
前記本体部は、第1構成部と、当該第1構成部と別体とされた第2構成部とを備え、
前記第1構成部には、前記周方向一方側に隣接する前記本体部に面する第1端面部と、前記第2構成部に面する第2端面部と、が設けられ、
前記第2構成部には、前記第2端面部に面すると共に当該第2端面部と平行な第3端面部と、前記周方向他方側に隣接する前記本体部に面すると共に当該第3端面部と平行な第4端面部と、が設けられている、
請求項4に記載の拡底部材。
【請求項6】
地盤に掘削された掘削穴の内側に配置されて鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における当該鉄塔の高さ方向下側の部分を保持する床板と、
前記床板の外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に当該床板を囲むようにかつ当該外周面部と荷重の伝達が可能な状態で配置可能とされると共に、前記掘削穴の下部が当該掘削穴の径方向に拡大された拡底部に一部が挿入可能とされたプレキャストコンクリート製の本体部を有する複数の拡底部材と、
を有する鉄塔基礎構造。
【請求項7】
地盤に掘削穴を形成すると共に当該掘削穴の下部を当該掘削穴の径方向に拡大して拡底部を形成し、
プレキャストコンクリート製の本体部を有する拡底部材を当該本体部の一部が前記拡底部に挿入されるようにかつ前記掘削穴の内周面部に沿うように複数配置し、
鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板を複数の前記拡底部材で囲まれるように配置し、
前記拡底部材と前記床板との荷重の伝達が可能となるように当該拡底部材と当該床板との間に介在部を形成する、
鉄塔基礎の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡底部材、鉄塔基礎構造及び鉄塔基礎の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、逆T字型基礎に関する発明が記載されている。この逆T字型基礎では、床板の上面部に外周縁部に形成されたハンチの形状を調整することで、逆T字型基礎が設置される傾斜地盤における山側の土塊重量と谷側の土塊重量との平衡を保っている。このため下記特許文献1に係る逆T字型基礎では、引き抜き荷重に対する抵抗を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基礎を設置する地盤が固い場合には、掘削穴の下部をその径方向に拡大した拡底部に基礎の一部を係合させることで、引き抜き荷重に対する抵抗を確保することができる。
【0005】
しかしながら、掘削穴の下部を拡径した後に早期に拡底部を補強することができなければ、掘削穴における拡底部の上側の部分が崩れ、基礎の構築作業が煩雑になることが考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、基礎の引き抜き荷重に対する抵抗を確保しつつ、基礎の構築作業が煩雑になることを抑制することができる拡底部材、鉄塔基礎構造及び鉄塔基礎の構築方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る拡底部材は、地盤に掘削された掘削穴の内側に配置されて鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板の周方向に沿って複数配置可能とされ、当該掘削穴の下部が当該掘削穴の径方向に拡大された拡底部に一部が挿入可能とされると共に、当該床板の外周面部と荷重の伝達が可能とされたプレキャストコンクリート製の本体部を有している。
【0008】
第1の態様に係る拡底部材によれば、プレキャストコンクリート製の本体部を有している。そして、この本体部は、地盤に掘削された掘削穴の内側に配置されて鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板の周方向(以下、単に周方向と称する)に沿って複数配置される。
【0009】
また、本体部は、その一部が、掘削穴の下部が掘削穴の径方向に拡大された拡底部に挿入されると共に、床板の外周面部と荷重の伝達を行うことができる。
【0010】
このため、本態様では、鉄塔の脚材に作用する引き抜き荷重が、床板を介して拡底部材の本体部に伝達される。そして、この本体部が掘削穴の拡底部で支持されることで、上記引き抜き荷重が支持される。
【0011】
さらに、本態様では、上述したように、掘削穴の拡底部に挿入される本体部がプレキャストコンクリート製とされており、拡底部に生コンクリートを打設して本体部を形成するような構成に比し、拡底部に対して速やかに本体部を設置することができる。このため、拡底部に対して本体部を設置するときに、掘削穴における拡底部の上側の部分が崩れることを抑制することができる。
【0012】
第2の態様に係る拡底部材は、第1の態様に係る拡底部材において、前記本体部が前記外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に位置するときに当該本体部の当該内周面部側となる部分は、前記拡底部に差し込み可能な差し込み部とされており、前記差し込み部の上面部における前記本体部の底面部に対する高さが当該差し込み部の先端部に向かうに従って低くなっている。
【0013】
第2の態様に係る拡底部材によれば、本体部に差し込み部が設けられており、この差し込み部は、本体部が床板の外周面部に対して掘削穴の内周面部側に位置するときに、内周面部側に位置している。
【0014】
そして、差し込み部は、拡底部に差し込み可能とされており、差し込み部の上面部における本体部の底面部に対する高さが、差し込み部の先端部に向かうに従って低くなっている。このため、拡底部に本体部を差し込む過程において、差し込み部が拡底部に密着し、本体部から拡底部への荷重の伝達効率を確保することができる。
【0015】
第3の態様に係る拡底部材は、第2の態様に係る拡底部材において、前記本体部が前記外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に位置するときに当該外周面部側となる当該本体部の内側側面部に、当該外周面部側に突出した内側凸部と、当該内周面部側に凹んだ内側凹部と、が設けられている。
【0016】
第3の態様に係る拡底部材によれば、本体部が床板の外周面部に対して掘削穴の内周面部側に位置するときに、この外周面部側となる本体部の内側側面部に、内側凸部と、内側凹部とが設けられている。
【0017】
そして、この状態において、内側凸部は、床板の外周面部側に突出しており、内側凹部は、掘削穴の内周面部側に凹んでいる。
【0018】
このため、本態様では、内側凸部及び内側凹部に、床板の一部を係合させたり、床板と本体部との間に打設されたモルタルやコンクリートの一部を係合させたりすることができる。その結果、本態様では、鉄塔の脚材に作用する引き抜き荷重に対する抵抗を大きくすることができる。
【0019】
第4の態様に係る拡底部材は、第3の態様に係る拡底部材において、前記本体部の前記周方向両端部における前記鉄塔の高さ方向上側となる部分には、当該高さ方向下側に凹むと共に隣接する前記本体部側が開放された上側凹部が設けられており、前記本体部の前記両端部における前記高さ方向下側となる部分には、当該高さ方向上側に凹むと共に隣接する前記本体部側が開放された下側凹部が設けられており、前記本体部に一部が埋め込まれると共に、当該本体部から前記周方向に延出されて前記高さ方向から見て前記上側凹部に収まる一対の第1延出部を備えた第1接続鉄筋と、前記本体部に一部が埋め込まれると共に、当該本体部から前記周方向に延出されて前記高さ方向から見て前記下側凹部に収まる一対の第2延出部を備えた第2接続鉄筋と、をさらに有している。
【0020】
第4の態様に係る拡底部材によれば、本体部の周方向両端部における鉄塔の高さ方向(以下、単に高さ方向と称する)上側となる部分には、高さ方向下側に凹むと共に隣接する本体部側が開放された上側凹部が設けられている。
【0021】
そして、本体部には、一対の第1延出部を備えた第1接続鉄筋の一部が埋め込まれており、第1延出部は、本体部から周方向に延出されると共に、高さ方向から見て上側凹部に収まっている。
【0022】
一方、本体部の両端部における高さ方向下側となる部分には、高さ方向上側に凹むと共に隣接する本体部側が開放された下側凹部が設けられている。
【0023】
そして、本体部には、一対の第2延出部を備えた第2接続鉄筋の一部が埋め込まれており、第2延出部は、本体部から周方向に延出されると共に、高さ方向から見て下側凹部に収まっている。
【0024】
このため、周方向に隣接して配置された拡底部材において、周方向一方側の拡底部材の第1延出部と周方向他方側の拡底部材の第1延出部とを、周方向一方側の拡底部材の第2延出部と周方向他方側の拡底部材の第2延出部とを、それぞれ溶接等による接合部で接合することができる。その結果、複数の拡底部材を高さ方向上側と高さ方向下側とにおいて周方向に連結し、脚材側から作用する高さ方向の荷重に起因するモーメントを、複数の拡底部材によって支持することができる。
【0025】
第5の態様に係る拡底部材は、第4の態様に係る拡底部材において、前記本体部は、第1構成部と、当該第1構成部と別体とされた第2構成部とを備え、前記第1構成部には、前記周方向一方側に隣接する前記本体部に面する第1端面部と、前記第2構成部に面する第2端面部と、が設けられ、前記第2構成部には、前記第2端面部に面すると共に当該第2端面部と平行な第3端面部と、前記周方向他方側に隣接する前記本体部に面すると共に当該第3端面部と平行な第4端面部と、が設けられている。
【0026】
第5の態様に係る拡底部材によれば、本体部が、第1構成部と、第1構成部と別体とされた第2構成部とを備えており、本体部を分割して配置することができる。
【0027】
ところで、本体部における周方向両側の端面部が互いに対して直交しているとき、複数配置される拡底部材のうち最後の一つは、他の拡底部材と干渉し、掘削穴の拡底部にその一部を挿入することが困難となることが考えられる。
【0028】
ここで、本態様では、第1構成部に、周方向一方側に隣接する他の本体部に面する第1端面部と、第2構成部に面する第2端面部とが設けられている。一方、第2構成部には、第1構成部の第2端面部に面すると共に当該第2端面部と平行な第3端面部と、周方向他方側に隣接する他の本体部に面すると共に当該第3端面部と平行な第4端面部とが設けられている
【0029】
このため、本態様では、他の拡底部材の設置後に第1構成部を配置し、第1構成部と他の拡底部材との間に第2構成部を挿入することができる。その結果、全ての拡底部材を掘削穴の拡底部に挿入することが容易となる。
【0030】
第6の態様に係る鉄塔基礎構造は、地盤に掘削された掘削穴の内側に配置されて鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における当該鉄塔の高さ方向下側の部分を保持する床板と、前記床板の外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に当該床板を囲むようにかつ当該外周面部と荷重の伝達が可能な状態で配置可能とされると共に、前記掘削穴の下部が当該掘削穴の径方向に拡大された拡底部に一部が挿入可能とされたプレキャストコンクリート製の本体部を有する複数の拡底部材と、を有している。
【0031】
第6の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、地盤に掘削された掘削穴の内側に鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材が配置されており、脚材の高さ方向下側の部分が、床板で保持されている。
【0032】
また、床板の外周面部に対して掘削穴の内周面部側に床板を囲むように複数の拡底部材が配置されており、この拡底部材は、プレキャストコンクリート製の本体部を有している。この本体部は、その一部が、掘削穴の下部が掘削穴の径方向に拡大された拡底部に挿入されると共に、床板の外周面部と荷重の伝達を行うことができる。
【0033】
このため、本態様では、上述した第1の態様と同様に、鉄塔の脚材に作用する引き抜き荷重を、拡底部材を介して地盤で支持することができると共に、拡底部材を設置するときに掘削穴における拡底部の上側の部分が崩れることを抑制することができる。
【0034】
第7の態様に係る鉄塔基礎の構築方法は、地盤に掘削穴を形成すると共に当該掘削穴の下部を当該掘削穴の径方向に拡大して拡底部を形成し、プレキャストコンクリート製の本体部を有する拡底部材を当該本体部の一部が前記拡底部に挿入されるようにかつ前記掘削穴の内周面部に沿うように複数配置し、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板を複数の前記拡底部材で囲まれるように配置し、前記拡底部材と前記床板との荷重の伝達が可能となるように当該拡底部材と当該床板との間に介在部を形成する。
【0035】
第7の態様に係る鉄塔基礎構造の構築方法によれば、地盤に掘削穴を形成すると共に、この掘削穴の下部を当該掘削穴の径方向に拡大して拡底部を形成する。
【0036】
次に、プレキャストコンクリート製の本体部を有する拡底部材を、当該本体部の一部が掘削穴の拡底部に挿入されるようにかつ掘削穴の内周面部に沿うように複数配置する。
【0037】
次に、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板を、複数の拡底部材で囲まれるように配置する。
【0038】
そして、拡底部材と床板との荷重の伝達が可能となるように、拡底部材と床板との間に介在部を形成する。
【0039】
このため、本態様では、上述した第1の態様と同様に、鉄塔の脚材に作用する引き抜き荷重を、拡底部材を介して地盤で支持することができると共に、拡底部材を設置するときに掘削穴における拡底部の上側の部分が崩れることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明に係る拡底部材、鉄塔基礎構造及び鉄塔基礎の構築方法は、基礎の引き抜き荷重に対する抵抗を確保しつつ、基礎の構築作業が煩雑になることを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】本施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の構成を模式的に示す平面図(
図1の2方向矢視図)である。
【
図3】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の要部の構成を模式的に示す断面図(
図2の3-3線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図4】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の一部を構成する拡底部材の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された鉄塔の構成を模式的に示す側面図である。
【
図6】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造の構築方法の各工程を示しており、(A)は第1工程を示しており、(B)は第2工程を示しており、(C)は第3工程を示しており、(D)は第4工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、
図1~
図6を用いて、本発明に係る拡底部材、鉄塔基礎構造及び鉄塔基礎の構築方法の実施形態の一例について説明する。
【0043】
図5に示されるように、本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された「鉄塔10」は、山岳地に建設されると共に、複数の主柱材12、複数の水平材14、複数の斜材16及び主柱材12と斜材16とに架け渡された複数の主柱材用補助材18を含んで構成されており、4本の「鉄骨脚部20」を備えている。そして、それぞれの鉄骨脚部20に対して基礎部22が設けられている。なお、以下では、特にことわりのない限り、鉄塔10の高さ方向を単に高さ方向と称することとする。
【0044】
図1に示されるように、基礎部22は、鉄骨脚部20の一部を構成する「脚材24」を「地盤26」に対して支持すると共に、内側ピース28、「床板30」、螺旋筋32、フープ筋34、柱体36、介在部としての「間詰部材38」、「拡底部材40」及び接続部42を含んで構成されている。
【0045】
脚材24は、山形鋼で構成された本体部44と、本体部44の下端部に設けられると共に平型鋼で構成された図示しない基部とが、溶接等による図示しない接合部で接合されることでその主な部分が構成されている。
【0046】
より詳しくは、本体部44は、高さ方向下側の部分が内側ピース28に埋設されており、高さ方向上側の部分が内側ピース28から露出されて鉄塔10の頂部に向かって延びている。
【0047】
なお、本体部44には、その延在方向に沿って山形鋼で構成された図示しない複数の支圧板が取り付けられている。また、脚材24の基部における高さ方向下側には、図示しない平板状の支持板部が配置されており、この支持板部は、地盤26上に設置されている。
【0048】
一方、内側ピース28は、脚材24の高さ方向下側の端部と一体的に設けられている。この内側ピース28は、プレキャストコンクリート製とされており、高さ方向に延在する角柱状に構成されている。そして、内側ピース28の外周側には、螺旋筋32及びフープ筋34が配置されている。なお、鉄塔10の仕様等に応じて脚材24に内側ピース28を設けないような構成も採り得る。
【0049】
螺旋筋32は、異形棒鋼で構成されており、高さ方向から見て円環状とされると共に、軸方向を高さ方向とされた螺旋状とされている。なお、螺旋筋32は、丸鋼で構成されていてもよい。
【0050】
一方、フープ筋34は、螺旋筋32よりも断面積が大きい(螺旋筋32よりも太い)丸鋼が高さ方向から見て円環状に曲げられると共に端部同士が溶接等による図示しない接合部で接合されることで構成されている。このフープ筋34は、高さ方向から見て螺旋筋32の下端部を囲むように配置されている。
【0051】
床板30は、基礎部22の設置時において、地盤26に掘削された「掘削穴26A」の内側に配置されている。この床板30は、全体では、高さ方向から見て中央部に円形の貫通部46が形成された円盤状とされており、貫通部46の内側には、内側ピース28、螺旋筋32及びフープ筋34が配置されている。つまり、床板30は、高さ方向から見て、その内周面部30Aで脚材24の高さ方向下側の部分を囲むように配置されている。
【0052】
この床板30は、
図2にも示されるように、その高さ方向上側の部分を構成する複数(一例として4つ)の上側床板ブロック48と、その高さ方向下側の部分を構成する複数(一例として4つ)の下側床板ブロック50とを含んで構成されている。なお、上側床板ブロック48及び下側床板ブロック50は、何れもプレキャストコンクリート製とされている。
【0053】
詳しくは、上側床板ブロック48は、螺旋筋32における高さ方向上側の部分の外周側に螺旋筋32の周方向に沿うように連なって配置されており、隣接する上側床板ブロック48は、互いに当接された状態となっている。この上側床板ブロック48は、高さ方向から見て上側床板ブロック48同士の境界に位置する一対の端面部48Aの成す角度が90度となる略扇形状に形成されている。
【0054】
また、上側床板ブロック48には、異形棒鋼で構成されると共に一部が高さ方向に延在している上側補強筋52が設けられており、この上側補強筋52には、螺旋筋32の高さ方向上側の部分が係止されている。
【0055】
さらに、上側床板ブロック48の脚材24側の内周面部48Bは、内周面部30Aの一部を構成しており、上側床板ブロック48における掘削穴26Aの「内周面部26A1」側の外周面部48Cは、床板30の外周面部30Bの一部を構成している。
【0056】
そして、
図3にも示されるように、外周面部48Cの高さ方向上側の部分には、外側凹部54が設けられており、外側凹部54は、床板30の周方向(以下、単に周方向と称する)から見て台形状となるように脚材24側に凹むと共に周方向に延在している。一方、外周面部48Cの高さ方向下側の部分には、外側凸部56が設けられており、外側凸部56は、周方向から見て台形状となるように内周面部26A1側に突出すると共に周方向に延在している。
【0057】
図1に戻り、下側床板ブロック50は、螺旋筋32における高さ方向下側の部分の外周側に螺旋筋32の周方向に沿うように連なって配置されており、隣接する下側床板ブロック50は、互いに当接された状態となっている。この下側床板ブロック50は、高さ方向から見て下側床板ブロック50同士の境界に位置する一対の端面部50Aの成す角度が90度となる略扇形状に形成されている。
【0058】
また、下側床板ブロック50には、異形棒鋼で構成されると共に一部が高さ方向に延在している下側補強筋58が設けられており、この下側補強筋58には、螺旋筋32の高さ方向下側の部分及びフープ筋34が高さ方向上側から係止されている。
【0059】
さらに、下側床板ブロック50の脚材24側の内周面部50Bは、内周面部30Aの一部を構成しており、下側床板ブロック50における内周面部26A1側の外周面部50Cは、外周面部30Bの一部を構成している。
【0060】
そして、
図3に示されるように、外周面部50Cの高さ方向上側の部分には、外側凹部60が設けられており、外側凹部60は、周方向から見て台形状となるように脚材24側に凹むと共に周方向に延在している。一方、外周面部50Cの高さ方向下側の部分には、外側凸部62が設けられており、外側凸部62は、周方向から見て台形状となるように内周面部26A1側に突出すると共に周方向に延在している。そして、床板30の高さ方向上側には、柱体36が配置されている。
【0061】
図1に戻り、柱体36は、その主な部分をプレキャストコンクリートで構成された複数の部品、すなわち柱体36の高さ方向下側の部分を構成する定着ピース64及び定着ピース64の高さ方向上側に積み上げられた図示しない複数の柱体パーツを含んで構成されている。
【0062】
定着ピース64は、プレキャストコンクリート製の柱体定着部66と、複数の柱体定着筋68とを含んで構成されている。柱体定着部66は、高さ方向から見て、その内周が床板30の内周面部30Aに沿う円形とされた筒状又はリング状に形成されている。
【0063】
一方、柱体定着筋68は、異形棒鋼で構成されており、その一部が柱体定着部66に埋め込まれると共に、柱体定着部66の周方向に互いに対して間隔をあけて配置されている。この柱体定着筋68は、柱体定着部66の高さ方向上側に、脚材24の延在方向に沿うように延出された上側延出部68Aと、柱体定着部66の高さ方向下側に延出された下側延出部68Bとを含んで構成されている。
【0064】
そして、上側延出部68Aには、柱体パーツが取り付けられており、下側延出部68Bは、螺旋筋32の内周側に配置されると共に、接続部42に埋め込まれている。
【0065】
接続部42は、柱体36の内周側並びに内側ピース28と床板30との間にコンクリートが充填されることで構成されている。また、上記のように構成された接続部42には、脚材24の高さ方向下側の部分、螺旋筋32、フープ筋34、上側補強筋52の一部、下側補強筋58の一部及び柱体定着筋68の下側延出部68Bが埋め込まれた状態となっている。
【0066】
間詰部材38は、
図2及び
図3に示されるように、高さ方向から見て床板30の外周面部30Bを囲むように複数(一例として8つ)連なって配置されており、プレキャストコンクリート製の本体部70と、本体部70に内蔵された図示しない複数の補強横筋とを含んで構成されている。
【0067】
詳しくは、本体部70は、高さ方向から見て、周方向に沿うように延在するブロック状とされており、隣接する間詰部材38同士の境界に位置する一対の端面部70A同士の成す角度が45度に設定されている。
【0068】
また、本体部70における外周面部30Bと対向する内側側面部70Bには、内側凸部72及び内側凹部74が高さ方向において交互に設けられている。内側凸部72は、本体部70の延在方向から見て台形状となるように外周面部30B側に突出すると共に当該延在方向に沿って設けられている。
【0069】
一方、内側凹部74は、本体部70の延在方向から見て台形状となるように掘削穴26Aの内周面部26A1側に凹むと共に当該延在方向に沿って設けられている。なお、本実施形態では、一例として、内側側面部70Bに内側凸部72及び内側凹部74がそれぞれ2つずつ設けられている。そして、2つの内側凸部72のうち高さ方向上側の内側凸部72が内側側面部70Bの上縁部に沿うように配置されており、2つの内側凹部74のうち高さ方向下側の内側凹部74が内側側面部70Bの下縁部に沿うように配置されている。
【0070】
また、高さ方向と直交する方向から見て、高さ方向上側の内側凸部72が、上側床板ブロック48の外側凹部54と重なっており、高さ方向下側の内側凸部72が、下側床板ブロック50の外側凹部60と重なっている。
【0071】
さらに、高さ方向と直交する方向から見て、高さ方向上側の内側凹部74が、上側床板ブロック48の外側凸部56と重なっており、高さ方向下側の内側凹部74が、下側床板ブロック50の外側凸部62と重なっている。
【0072】
そして、高さ方向上側の内側凸部72と外側凹部54との間、高さ方向下側の内側凸部72と外側凹部60との間、高さ方向上側の内側凹部74と外側凸部56との間並びに高さ方向下側の内側凹部74と外側凸部62との間には、モルタル又はコンクリートが充填されることで介在部としての「接続部79」が構成されている。
【0073】
つまり、高さ方向上側の内側凸部72と外側凹部54、高さ方向下側の内側凸部72と外側凹部60、高さ方向上側の内側凹部74と外側凸部56並びに高さ方向下側の内側凹部74と外側凸部62は、それぞれ接続部79を介して係合されているとみなすことができる。なお、本体部70の内側側面部70Bと床板30の外周面部30Bとは、直接的に係合されていてもよい。
【0074】
また、本体部70における掘削穴26Aの内周面部26A1側の外側側面部70Cには、外側凹部76及び外側凸部78が高さ方向において交互に設けられている。そして、外側凹部76は、本体部70の延在方向から見て台形状となるように外周面部30B側に凹むと共に当該延在方向に沿って設けられている。
【0075】
一方、外側凸部78は、本体部70の延在方向から見て台形状となるように内周面部26A1側に突出すると共に当該延在方向に沿って設けられている。なお、本実施形態では、一例として、外側側面部70Cに外側凹部76及び外側凸部78がそれぞれ2つずつ設けられている。そして、高さ方向と直交する方向から見て、外側凹部76は、内側凸部72と重なっており、外側凸部78は、内側凹部74と重なっている。
【0076】
拡底部材40は、高さ方向から見て複数の間詰部材38を囲むように複数(一例として4つ)連なって配置されており、プレキャストコンクリート製の「本体部80」、本体部80に一部が埋め込まれた「第1接続鉄筋82」及び「第2接続鉄筋84」を含んで構成されている。
【0077】
詳しくは、本体部80は、高さ方向から見て、周方向に沿うように延在するブロック状とされており、隣接する本体部80同士の境界に位置する一対の端面部80A同士の成す角度が90度に設定されている。
【0078】
この本体部80は、その天面部80Bから掘削穴26Aの内周面部26A1側に延びる上面部としての「傾斜面部80C」を備えている。この傾斜面部80Cは、周方向から見て脚材24側から内周面部26A1側に向かうに従って本体部80の底面部80Dに対する高さが低くなるように傾斜している。
【0079】
また、本体部80における内周面部26A1側の部分は、掘削穴26Aの下部が掘削穴26Aの径方向に拡大された「拡底部26A2」に挿入されており、以下では、この部分を「差し込み部80E」と称することとする。
【0080】
一方、本体部80における間詰部材38の外側側面部70Cと対向する「内側側面部80F」には、「内側凸部86」及び「内側凹部88」が高さ方向において交互に設けられている。内側凸部86は、本体部80の延在方向から見て台形状となるように外側側面部70C側に突出すると共に当該延在方向に沿って設けられている。
【0081】
一方、内側凹部88は、本体部80の延在方向から見て台形状となるように掘削穴26Aの内周面部26A1側に凹むと共に当該延在方向に沿って設けられている。なお、本実施形態では、一例として、内側側面部80Fに内側凸部86及び内側凹部88がそれぞれ2つずつ設けられている。そして、2つの内側凸部86のうち高さ方向上側の内側凸部86が内側側面部80Fの上縁部に沿うように配置されており、2つの内側凹部88のうち高さ方向下側の内側凹部88が内側側面部80Fの下縁部に沿うように配置されている。
【0082】
また、高さ方向と直交する方向から見て、内側凸部86が、間詰部材38の外側凹部76と重なっており、内側凹部88が、間詰部材38の外側凸部78と重なっている。
【0083】
そして、内側凸部86と外側凹部76との間並びに内側凹部88と外側凸部78との間には、モルタル又はコンクリートが充填されることで介在部としての「接続部90」が構成されている。
【0084】
つまり、内側凸部86と外側凹部76並びに内側凹部88と外側凸部78とは、それぞれ接続部90を介して係合されているとみなすことができる。なお、本体部80の内側側面部80Fと間詰部材38の外側側面部70Cとは、直接的に係合されていてもよい。また、接続部90は、隣接する本体部80における対向する端面部80A間並びに本体部80と拡底部26A2との間にも介在している。
【0085】
また、本体部80における周方向(本体部80の延在方向)の「端部80G」における高さ方向上側の部分には、高さ方向下側に凹むと共に、この本体部80と隣接する本体部80側が開放された「上側凹部92」が設けられている。
【0086】
そして、本体部80の高さ方向上側の部分には、第1接続鉄筋82の長手方向中央部が埋め込まれており、この第1接続鉄筋82の周方向一方側及び周方向他方側の部分は、本体部80から延出されると共に、高さ方向から見て上側凹部92に収まっている。なお、以下では、第1接続鉄筋82における本体部80から延出した部分を「第1延出部82A」と称することとする。
【0087】
一方、本体部80の端部80Gにおける高さ方向下側の部分には、高さ方向上側に凹むと共に、この本体部80と隣接する本体部80側が開放された「下側凹部94」が設けられている。
【0088】
そして、本体部80の高さ方向下側の部分には、第2接続鉄筋84の長手方向中央部が埋め込まれており、この第2接続鉄筋84の周方向一方側及び周方向他方側の部分は、本体部80から延出されると共に、高さ方向から見て下側凹部94に収まっている。なお、以下では、第2接続鉄筋84における本体部80から延出した部分を「第2延出部84A」と称することとする。
【0089】
また、隣接して配置された拡底部材40において、一方の拡底部材40の第1延出部82Aと、他方の拡底部材40の第1延出部82Aとが溶接等による図示しない接合部で接続されると共に、一方の拡底部材40の第2延出部84Aと、他方の拡底部材40の第2延出部84Aとが溶接等による図示しない接合部で接続されている。つまり、本実施形態では、複数の拡底部材40が一体化された状態となっている。
【0090】
さらに、本実施形態では、
図2及び
図4に示されるように、拡底部材40の本体部80が複数の部材で構成されている。
【0091】
詳しくは、本実施形態では、1つの拡底部材40の本体部80が、「第1構成部96」と、第1構成部96と別体とされた「第2構成部98」とで構成されている。
【0092】
第1構成部96は、本体部80の周方向一方側から3分の2程度の部分を構成しており、周方向一方側に隣接する本体部80に面する第1端面部としての「端面部96A」と、第2構成部98と面する第2端面部としての「端面部96B」とを備えている。なお、端面部96Aは、端面部80Aと同じものを指しているが、説明の便宜上、第1構成部96の説明においては、端面部80Aを端面部96Aと称することとする。
【0093】
なお、上側凹部92は、第1構成部96における端部80Gと反対側の端部にも設けられている。
【0094】
一方、第2構成部98は、本体部80の周方向他方側から3分の1程度の部分を構成しており、端面部96Bに面すると共に端面部96Bと平行な第3端面部としての「端面部98A」と、周方向他方側に隣接する本体部80に面すると共に端面部98Aと平行な第4端面部しての「端面部98B」とが設けられている。なお、端面部98Bは、端面部80Aと同じものを指しているが、説明の便宜上、第2構成部98の説明においては、端面部80Aを端面部98Aと称することとする。
【0095】
なお、上側凹部92は、第2構成部98における端部80Gと反対側の端部にも設けられている。
【0096】
また、第1構成部96及び第2構成部98には、それぞれ第1接続鉄筋82及び第2接続鉄筋84が設けられている。そして、隣接する第1構成部96と第2構成部98との境界部において、一方の第1延出部82Aが他方の第1延出部82Aと、一方の第2延出部84Aが他方の第2延出部84Aと、それぞれ溶接等による図示しない接合部で接続されている。
【0097】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0098】
本実施形態では、
図1に示されるように、拡底部材40がプレキャストコンクリート製の本体部80を有している。そして、この本体部80は、地盤26に掘削された掘削穴26Aの内側に配置されて鉄塔10の鉄骨脚部20の一部を構成する脚材24を保持する床板30の周方向に沿って複数配置される。
【0099】
また、本体部80は、その一部が、掘削穴26Aの下部が掘削穴26Aの径方向に拡大された拡底部26A2に挿入されると共に、床板30の外周面部30Bと荷重の伝達を行うことができる。
【0100】
このため、本実施形態では、鉄塔10の脚材24に作用する引き抜き荷重が、床板30を介して拡底部材40の本体部80に伝達される。そして、この本体部80が掘削穴26Aの拡底部26A2で支持されることで、上記引き抜き荷重が支持される。
【0101】
さらに、本実施形態では、上述したように、掘削穴26Aの拡底部26A2に挿入される本体部80がプレキャストコンクリート製とされており、拡底部26A2に生コンクリートを打設して本体部80を形成するような構成に比し、拡底部26A2に対して速やかに本体部80を設置することができる。このため、拡底部26A2に対して本体部80を設置するときに、掘削穴26Aにおける拡底部26A2の上側の部分が崩れることを抑制することができる。
【0102】
また、本実施形態では、本体部80に差し込み部80Eが設けられており、この差し込み部80Eは、本体部80が床板30の外周面部30Bに対して掘削穴26Aの内周面部26A1側に位置するときに、内周面部26A1側に位置している。
【0103】
そして、差し込み部80Eは、拡底部26A2に差し込み可能とされており、差し込み部80Eの上面部すなわち傾斜面部80Cにおける本体部80の底面部80Dに対する高さが、差し込み部80Eの先端部に向かうに従って低くなっている。このため、拡底部26A2に本体部80を差し込む過程において、差し込み部80Eが拡底部26A2に密着し、本体部80から拡底部26A2への荷重の伝達効率を確保することができる。
【0104】
また、本実施形態では、
図3に示されるように、本体部80が床板30の外周面部30Bに対して掘削穴26Aの内周面部26A1側に位置するときに、この外周面部30B側となる本体部80の内側側面部80Fに、内側凸部86と、内側凹部88とが設けられている。
【0105】
そして、この状態において、内側凸部86は、床板30の外周面部30B側に突出しており、内側凹部88は、掘削穴26Aの内周面部26A1側に凹んでいる。
【0106】
このため、本実施形態では、内側凸部86及び内側凹部88に、床板30の一部を係合させたり、床板30と本体部80との間に打設されたモルタルやコンクリートの一部を係合させたりすることができる。その結果、本実施形態では、鉄塔10の脚材24に作用する引き抜き荷重に対する抵抗を大きくすることができる。
【0107】
また、本実施形態では、
図4にも示されるように、本体部80の周方向両端部80Gにおける高さ方向上側となる部分には、高さ方向下側に凹むと共に隣接する本体部80側が開放された上側凹部92が設けられている。
【0108】
そして、本体部80には、一対の第1延出部82Aを備えた第1接続鉄筋82の一部が埋め込まれており、第1延出部82Aは、本体部80から周方向に延出されると共に、高さ方向から見て上側凹部92に収まっている。
【0109】
一方、本体部80の両端部80Gにおける高さ方向下側となる部分には、高さ方向上側に凹むと共に隣接する本体部80側が開放された下側凹部94が設けられている。
【0110】
そして、本体部80には、一対の第2延出部84Aを備えた第2接続鉄筋84の一部が埋め込まれており、第2延出部84Aは、本体部80から周方向に延出されると共に、高さ方向から見て下側凹部94に収まっている。
【0111】
このため、周方向に隣接して配置された拡底部材40において、周方向一方側の拡底部材40の第1延出部82Aと周方向他方側の拡底部材40の第1延出部82Aとを、周方向一方側の拡底部材40の第2延出部84Aと周方向他方側の拡底部材40の第2延出部84Aとを、それぞれ溶接等による接合部で接合することができる。その結果、複数の拡底部材40を高さ方向上側と高さ方向下側とにおいて周方向に連結し、脚材24側から作用する高さ方向の荷重に起因するモーメントを、複数の拡底部材40によって支持することができる。
【0112】
また、本実施形態では、複数の拡底部材40のうち、1つの拡底部材40の本体部80が、第1構成部96と、第1構成部96と別体とされた第2構成部98とを備えており、この本体部80を分割して配置することができる。
【0113】
ところで、本体部80における周方向両側の端面部80Aが互いに対して直交しているとき、複数配置される拡底部材40のうち最後の一つは、他の拡底部材40と干渉し、掘削穴26Aの拡底部26A2にその一部を挿入することが困難となることが考えられる。
【0114】
ここで、本実施形態では、
図2にも示されるように、第1構成部96に、周方向一方側に隣接する他の本体部80に面する端面部96Aと、第2構成部98に面する端面部96Bとが設けられている。一方、第2構成部98には、第1構成部96の端面部96Bに面すると共に端面部96Bと平行な端面部98Aと、周方向他方側に隣接する他の本体部80に面すると共に端面部98Aと平行な端面部98Bとが設けられている
【0115】
このため、本実施形態では、他の拡底部材40の設置後に第1構成部96を配置し、第1構成部96と他の拡底部材40との間に第2構成部98を挿入することができる。その結果、全ての拡底部材40を掘削穴26Aの拡底部26A2に挿入することが容易となる。
【0116】
次に、
図6を用いて、本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎部22の構築方法の手順の一例を示す。
【0117】
最初に、
図6(A)に示される第1工程において、図示しない掘削機等を用いて地盤26に掘削穴26Aを形成すると共に、この掘削穴26Aの下部を掘削穴26Aの径方向に拡大して拡底部26A2を形成する。
【0118】
次に、
図6(B)に示される第2工程において、拡底部材40を、拡底部材40の本体部80の一部が掘削穴26Aの拡底部26A2に挿入されるようにかつ掘削穴26Aの内周面部26A1に沿うように複数配置する。
【0119】
次に、
図6(C)に示される第3工程において、脚材24を保持する床板30を、複数の拡底部材40で囲まれるように配置する。なお、図示してはいないが、このとき、脚材24やフープ筋34等が、床板30の内周側に配置される
【0120】
次に、
図6(D)に示される第4工程において、拡底部材40と床板30との荷重の伝達が可能となるように、拡底部材40と床板30との間を埋める。詳しくは、拡底部材40と床板30との間に間詰部材38を配置すると共に、床板30と間詰部材38との間と、間詰部材38と拡底部材40との間とに、モルタル又はコンクリートを充填する。そして、柱体36の内周側並びに内側ピース28と床板30との間にモルタル又はコンクリートを充填して養生した後に、床板30の上側から地盤26を掘削するときに排出された掘削土を埋め戻すことで基礎部22が完成する。
【0121】
以上、説明したように、本実施形態に係る拡底部材40、鉄塔基礎構造及び鉄塔基礎の構築方法によれば、基礎部22の引き抜き荷重に対する抵抗を確保しつつ、基礎部22の構築作業が煩雑になることを抑制することができる。
【0122】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、床板30と拡底部材40との間に間詰部材38が配置されていたが、鉄塔10の仕様等に応じて、床板30と拡底部材40との間を、間詰部材38を用いることなくモルタル又はコンクリートで埋める構成としてもよい。
【0123】
(2) また、上述した実施形態では、1つの基礎部22に対して拡底部材40が4つ配置されていたが、拡底部材40を小型化して1つの基礎部22に対して設置される拡底部材40の個数を増やしてもよい。また、このような構成を採用する場合には、拡底部材40を分割することなく、全ての拡底部材40を同様の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10 鉄塔
20 鉄骨脚部
24 脚材
26 地盤
26A 掘削穴
26A1 内周面部
26A2 拡底部
30 床板
38 間詰部材(介在部)
40 拡底部材
79 接続部(介在部)
80 本体部
80C 傾斜面部(上面部)
80F 内側側面部
80G 端部
82 第1接続鉄筋
82A 第1延出部
84 第2接続鉄筋
84A 第2延出部
86 内側凸部
88 内側凹部
90 接続部
92 上側凹部
94 下側凹部
96 第1構成部
98 第2構成部
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に掘削された掘削穴の内側に配置されて鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板の周方向に沿って複数配置可能とされ、当該掘削穴の下部が当該掘削穴の径方向に拡大された拡底部に一部が挿入可能とされると共に、当該床板の外周面部と荷重の伝達が可能とされたプレキャストコンクリート製の本体部を有し、
前記本体部が前記外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に位置するときに当該本体部の当該内周面部側となる部分は、前記拡底部に差し込み可能な差し込み部とされており、
前記差し込み部の上面部における前記本体部の底面部に対する高さが当該差し込み部の先端部に向かうに従って低くなっている、
拡底部材。
【請求項2】
前記本体部が前記外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に位置するときに当該外周面部側となる当該本体部の内側側面部に、当該外周面部側に突出した内側凸部と、当該内周面部側に凹んだ内側凹部と、が設けられている、
請求項1に記載の拡底部材。
【請求項3】
前記本体部における前記床板の周方向の両端部における前記鉄塔の高さ方向上側となる部分には、当該高さ方向下側に凹むと共に隣接する前記本体部側が開放された上側凹部が設けられており、
前記本体部の前記両端部における前記高さ方向下側となる部分には、当該高さ方向上側に凹むと共に隣接する前記本体部側が開放された下側凹部が設けられており、
前記本体部に一部が埋め込まれると共に、当該本体部から前記周方向に延出されて前記高さ方向から見て前記上側凹部に収まる一対の第1延出部を備えた第1接続鉄筋と、
前記本体部に一部が埋め込まれると共に、当該本体部から前記周方向に延出されて前記高さ方向から見て前記下側凹部に収まる一対の第2延出部を備えた第2接続鉄筋と、
をさらに有する、
請求項2に記載の拡底部材。
【請求項4】
前記本体部は、第1構成部と、当該第1構成部と別体とされた第2構成部とを備え、
前記第1構成部には、前記周方向一方側に隣接する前記本体部に面する第1端面部と、前記第2構成部に面する第2端面部と、が設けられ、
前記第2構成部には、前記第2端面部に面すると共に当該第2端面部と平行な第3端面部と、前記周方向他方側に隣接する前記本体部に面すると共に当該第3端面部と平行な第4端面部と、が設けられている、
請求項3に記載の拡底部材。
【請求項5】
地盤に掘削された掘削穴の内側に配置されて鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における当該鉄塔の高さ方向下側の部分を保持する床板と、
前記床板の外周面部に対して前記掘削穴の内周面部側に当該床板を囲むようにかつ当該外周面部と荷重の伝達が可能な状態で配置可能とされると共に、前記掘削穴の下部が当該掘削穴の径方向に拡大された拡底部に一部が挿入可能とされたプレキャストコンクリート製の本体部を有する複数の拡底部材と、
を有する鉄塔基礎構造。
【請求項6】
地盤に掘削穴を形成すると共に当該掘削穴の下部を当該掘削穴の径方向に拡大して拡底部を形成し、
プレキャストコンクリート製の本体部を有する拡底部材を当該本体部の一部が前記拡底
部に挿入されるようにかつ前記掘削穴の内周面部に沿うように複数配置し、
鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材を保持する床板を複数の前記拡底部材で囲まれるように配置し、
前記拡底部材と前記床板との荷重の伝達が可能となるように当該拡底部材と当該床板との間に介在部を形成する、
鉄塔基礎の構築方法。