(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015913
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20240130BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240130BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20240130BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F28D15/04 B
F28D15/02 101H
F28D15/02 102C
F28D15/02 M
H01L23/46 B
H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118296
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 厚
(72)【発明者】
【氏名】児玉 正英
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸充
(72)【発明者】
【氏名】篠部 賢二
(72)【発明者】
【氏名】平井 慶太
(72)【発明者】
【氏名】金井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 亨
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】浦井 隆司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 啓雅
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322AB01
5E322DB01
5E322DB06
5E322DB12
5E322FA01
5E322FA04
5F136CC12
5F136CC14
5F136CC18
(57)【要約】
【課題】容器内での冷媒の蒸発と凝縮とによって熱移動を行う冷却装置において、冷媒の蒸発を促進して冷却効率を高くする。
【解決手段】冷却装置42は、冷媒RFが密封された容器44の一部を成し発熱体からの熱を受ける受熱板60と、容器44の内部で液相の冷媒RFを受熱により蒸発させる蒸発部61と、容器44の内部で気相の冷媒を放熱により凝縮させる凝縮部72と、を有する。さらに、冷却装置42は、受熱板60における容器22の内側の面に形成された複数の凹部66を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が密封された容器と、
前記容器の一部を成し発熱体からの熱を受ける受熱板と、
前記容器の内部で液相の前記冷媒を受熱により蒸発させる蒸発部と、
前記容器の内部で気相の前記冷媒を放熱により凝縮させる凝縮部と、
前記受熱板における前記容器の内側の面に形成された複数の凹部と、
を有する冷却装置。
【請求項2】
複数の前記凹部は、前記受熱板の受熱面に向けて一定の開口断面を有している請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
複数の前記凹部は、前記受熱板の受熱面に向けて段階的に小さくなる開口断面を有している請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
複数の前記凹部は、前記容器の内側の開口部から前記受熱板の受熱面に向けて部分的に広がる形状の開口断面を有している請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
複数の前記凹部は、前記受熱板の受熱面に向けて連続的に小さくなる開口断面を有している請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
複数の前記凹部を前記受熱板の内部で連通させる連通部を有する請求項1に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒が密封された容器の内部に、液相の冷媒を受熱により蒸発させる蒸発部と、容器の内部で気相の冷媒を放熱により凝縮させる凝縮部と、容器の内部での冷媒を毛細管現象により蒸発部に輸送する管状の輸送部と、を有する冷却装置がある。また、受熱部の発熱体の位置に対応する伝熱壁部を、凹凸面と金属製多孔体とにより構成した沸騰冷却装置がある。凹凸面は受熱部の内壁面に沿って延びる複数の凹条を有している。金属製多孔体は、凹凸面に対し、凹凸面の凹条の少なくとも一部が内部空間に開放された状態で重ねるように取り付けられ、一方向に延びる複数の貫通孔が形成され、貫通孔の一方の開口が凹凸面に対面し、他方の開口が内部空間に開放されるように取り付けられている。(例えば特許文献1、特許文献2等参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-190479号公報
【特許文献2】特開2018-204882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒が密封された容器内で、冷媒の蒸発と凝縮とによって熱移動をする冷却装置では、冷媒の蒸発を促進することで、熱を効率的に輸送し、冷却効率を高めることができる。容器内で冷媒の蒸発を促進できる冷却装置の構造について、改善の余地がある。
【0005】
本願の開示技術は、1つの側面として、容器内での冷媒の蒸発と凝縮とによって熱移動を行う冷却装置において、冷媒の蒸発を促進して冷却効率を高くすることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する技術では、冷媒が密封された容器と、容器の一部を成し発熱体からの熱を受ける受熱板と、容器の内部で液相の冷媒を受熱により蒸発させる蒸発部と、容器の内部で気相の冷媒を放熱により凝縮させる凝縮部と、を有する。さらに、受熱板における容器の内側の面に形成された複数の凹部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する技術では、容器内での冷媒の蒸発と凝縮とによって熱移動を行う冷却装置において、冷媒の蒸発を促進して冷却効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は第一実施形態の冷却装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の冷却装置を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の冷却装置を備えた電子機器を冷却装置の内部構造と共に示す部分的平面図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の冷却装置の内部構造を示す平面図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の冷却装置を示す
図4の5-5線断面図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の冷却装置を示す
図4の6-6線断面図である。
【
図7】
図7は第一実施形態の冷却装置を受熱部の近傍で拡大して示す平面図である。
【
図8】
図8は第一実施形態の冷却装置を示す
図4の8-8線断面図である。
【
図9A】
図9Aは第一実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰していない状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図9B】
図9Bは第一実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰している状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は比較例の冷却装置を受熱部の近傍で拡大して示す平面図である。
【
図11】
図11は比較例の冷却装置を受熱部の近傍で拡大して示す縦断面図である。
【
図12】
図12は第一変形例の冷却装置を受熱部の近傍で拡大して示す平面図である。
【
図13】
図13は第二変形例の冷却装置を受熱部の近傍で拡大して示す平面図である。
【
図14】
図14は第二変形例の冷却装置を受熱部の近傍で拡大して示す縦断面図である。
【
図15A】
図15Aは第二実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰していない状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図15B】
図15Bは第二実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰している状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図16A】
図16Aは第三実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰していない状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図16B】
図15Bは第三実施形態の冷却装置を凹部への冷媒の供給途中の状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図16C】
図15Cは第三実施形態の冷却装置を凹部への冷媒の供給途中の状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図16D】
図15Dは第三実施形態の冷却装置を凹部への冷媒の供給途中の状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図16E】
図15Eは第三実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰している状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図17A】
図17Aは第四実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰していない状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図17B】
図17Bは第四実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰している状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図18A】
図18Aは第五実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰していない状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図18B】
図18Bは第五実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰している状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図19A】
図19Aは第六実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰していない状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図19B】
図19Bは第六実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰している状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図20A】
図20Aは第七実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰していない状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【
図20B】
図20Bは第七実施形態の冷却装置を冷媒が沸騰している状態で凹部の近傍において拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第一実施形態の冷却装置42について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1及び
図2には、第一実施形態の冷却装置42が示されている。また、
図3には、この冷却装置42を備えた電子機器32が示されている。電子機器32としては、サーバ等の情報通信機器を挙げることができるが、これに限定されない。
【0011】
電子機器32は、剛性及び絶縁性を備えた基板34を有している。基板34には、複数の素子36、38が搭載されている。素子36、38の種類は特に限定されないが、本実施形態では、素子36はプロセッサチップであり、素子38はメモリチップである。この場合、素子36は、発熱体の一例である。そして、素子36を冷却するために、冷却装置42が素子36に対し配置される。なお、
図5及び
図8に示すように、素子36はパッケージ40に収容されている。また、素子36は、たとえば複数のランドを用いた、いわゆるLGA(Land Grid Array)によって、基板34に対し電気的に接続される。
【0012】
図1~
図5に示すように、冷却装置42は、容器44を備えている。この容器44内には、冷媒RF(
図5参照)が密封されている。そして、冷却装置42は、受熱部46、放熱部48及び接続部50を有している。
【0013】
冷媒RFの種類は、容器44内で、液相と気相との相転移を行いつつ循環することで熱を移動させることができれば限定されず、たとえば、水を用いることができる。水の他にも、オイルやアルコールを用いることも可能であるが、水は入手が容易で、且つ取り扱いも容易であり、本実施形態においても水が用いられている。
【0014】
受熱部46は、
図5及び
図8に示すように、素子36の熱を受ける部分である。受熱部46には、液相の冷媒RFをこの熱によって気化させる蒸発部62が備えられている。
【0015】
受熱板60は、
図5及び
図8に示すように板状に形成されている。本開示の技術では、受熱板60は、上下に重ねられた2枚の板材を含んでいるが、1枚の板材であってもよい。そして、受熱板60は、熱接合材82を介してパッケージ40に接触配置され、素子36の熱を受ける部分である。熱接合材82としては、たとえば、熱伝導性を有するグリスや熱伝導シート等が用いられる。熱接合材82によって、パッケージ40と受熱板60との密着性が高められ、パッケージ40から受熱板60への効率的な熱の移動が可能になる。
【0016】
受熱部46には、液相の冷媒RFをこの熱によって気化させる蒸発部62が備えられている。
【0017】
図4及
図5に示すように、放熱部48は、受熱部46から離間して配置されている。放熱部48は、容器44に密封された冷媒RFの熱を外部に放出する部分である。放熱部48には、気相の冷媒RFを放熱によって液化する凝縮部72が備えられている。
【0018】
接続部50は、蒸発部62と放熱部48とを接続している部分である。そして、接続部50は、冷媒RFが蒸発部62と凝縮部72との間で移動する移動領域74でもある。なお、気相状態の冷媒RFの熱エネルギーの一部は、接続部50においても外部に排出され、冷媒RFが液化される。
【0019】
図面において、容器44の幅方向、奥行き方向及び高さ方向を、それぞれ矢印W、矢印D及び矢印Hで示す。本実施形態では、放熱部48は蒸発部62よりも幅方向に広く、奥行き方向に短い形状である。接続部50は、蒸発部62よりも幅方向に狭く、且つ受熱部46と放熱部48とを接続するための奥行きを有している。
【0020】
図2に示すように、容器44は、底板52と天板54との2枚の板材が、厚み方向(高さ方向)に重ねた状態で固定された構造である。
【0021】
図2~
図4に示すように、底板52からは、複数の支柱56が立設されている。支柱56の先端(上端)は天板54に接触しており、天板54が支柱56によって支持されている。容器44の内部は低圧状態に維持されているが、低圧状態であっても、支柱56によって、天板54と底板52の間隔が維持されると共に、容器44の内部の容積が確保される。
【0022】
本実施形態では、
図2及び
図4に示すように、支柱56は放熱部48において、容器44の幅方向に間隔をあけて複数配置され、さらに、接続部50において、容器44の奥行方向に間隔をあけて複数配置されている。加えて、受熱部46においても、蒸発部62を間において接続部50の反対側に1つの支柱56が設けられている。
【0023】
図2に示すように、底板52において、受熱板60の部分には開口58が形成されている。この開口58に受熱板60がはめ込まれることで、底板52、天板54及び受熱板60によって容器44における密封構造が実現される。
【0024】
受熱板60には、複数の柱部材64が天板54に向けて立設されている。
図5及び
図7にも詳細に示すように、複数の柱部材64は、幅方向及び奥行き方向に一定の間隔をあけて配置されており、柱部材64の間に、格子状の溝部66が形成されている。この溝部66の溝幅は、後述する輸送パイプ78の内径よりも狭い。
【0025】
図5に示すように、溝部66では、受熱板60からの熱により、液相の冷媒RFの気化が促進される。溝部66における「気化」には、矢印GFで示すように、冷媒RFの表面から気化する「蒸発」の他に、気泡GBで示すように、冷媒RFの内部から気化する「沸騰」も含まれる。柱部材64を備えた部分は、このように液相の冷媒RFが蒸発する部分であり、蒸発部62である。
【0026】
柱部材64の先端は、天板54に接触している。これによっても、容器44の内部の低圧状態において、天板54と底板52の間隔が維持されると共に、容器44の内部の容積が確保される。
【0027】
図4に示すように、柱部材64の周囲では、天板54と底板52の間に拡散領域68が形成されている。蒸発部62で蒸発した気相の冷媒RFは、拡散領域68に拡散する。
【0028】
さらに、受熱部46と放熱部48の間では、天板54と底板52の間に移動領域74が形成されている。蒸発部62で蒸発した気相の冷媒RFは、移動領域74を通って放熱部48に移動する。この移動途中で、冷媒RFの熱が容器44の外部に排出されることで、気相の冷媒RFが凝縮・液化される。すなわち、接続部50及び放熱部48は、このように気相の冷媒RFが凝縮される部分でもある。
【0029】
天板54には、複数の突起76が底板52に向けて形成されている。突起76のそれぞれは、先端側に向かって先細りとなる形状である。このような突起76を設けたことで、突起76がない構造と比較して、凝縮部72における天面の表面積が広くなっている。
【0030】
図4~
図6に示すように、容器44の内部には、奥行き方向に延在する輸送パイプ78が配置されている。輸送パイプ78は、1本でもよいが、本実施形態では複数本(
図13に示す例では、幅方向に隣接して配置された8本の組が支柱56を間において2組配置されており、合計で16本の輸送パイプ78が配置されている。輸送パイプ78の長手方向は、容器44の奥行き方向(矢印D方向)と一致している。
【0031】
輸送パイプ78の内径は、液相の冷媒RFを毛細管現象により輸送することが可能で、且つ、複数の輸送パイプ78の全体で蒸発部62に十分な量の冷媒RFを輸送可能な径に設定されている。輸送パイプ78は、液相の冷媒RFを毛細管現象によって蒸発部62に輸送する輸送部の一例である。
【0032】
輸送パイプ78の内径は、一端部分78Aが他端部分78Bよりも高くなるように冷却装置42が傾斜した場合でも、他端部分78Bから一端部分78Aへ毛細管現象により冷媒RFを輸送できるように、その上限が決められている。
【0033】
なお、本実施形態では、
図6に示すように、幅方向に隣接して配置された輸送パイプ78の間と、底板52の間の空間80も、液相の冷媒RFを毛細管現象により輸送することが可能な領域である。
【0034】
図5及び
図8に示すように、受熱板60には、複数の凹部84が形成されている。これらの凹部84は、受熱板60の上面60A、すなわち容器44の内側の面に形成されている。複数の凹部84はいずれも、受熱板60を貫通しない形状、すなわち容器44の外側の面には達しない形状である。
【0035】
また、
図7に示すように、複数の凹部84はいずれも、受熱板60を平面視すると、受熱板60の四辺に開放されることなく、閉じた形状である。したがって、受熱板60を平面視すると、受熱板60の四辺よりも内側の位置にある。具体的には、第一実施形態では、凹部84は、円柱状である。換言すれば、凹部84は、上下方向の位置に関わらす一定の内径の円形断面を有している。
【0036】
複数の凹部84はいずれも、複数の溝部66の交点の位置に形成されている。第一実施形態では、受熱板60を平面視した場合の幅方向の中心線CL-W及び奥行方向の中心線CL-Dに対し、対称に配置されている。
図7に示す例は、複数の凹部84の配置の一例であり、幅方向及び奥行方向にそれぞれ5列、合計で25個の凹部84を示している。もちろん、複数の凹部84の数及び配置はこれに限定されない。
【0037】
図2~
図4に示すように、容器44の内部には、接続部50の部分に固定具86が配置されている。
図6にも示すように、固定具86は、幅方向(矢印W方向)の両側において、天板54と底板52との間にはめ込まれる嵌込部86Aと、幅方向の中央において、複数の輸送パイプ78を底板52に向かって押し付ける押付部86Bと、を有している。押付部86Bによって、輸送パイプ78は底板52に押し付けられて固定される。複数の輸送パイプ78が底板52に接触して固定されるので、天板54と輸送パイプ78との間には、実質的に気相の冷媒RFが移動するために十分な流路断面積が確保されている。
【0038】
さらに、輸送パイプ78の組は、支柱56と、押付部86Bの側面部86Cとの間に位置するので、幅方向にも保持される。
【0039】
図1~
図4に示すように、容器44の底板52には、締結孔88が設けられている。この締結孔88には、ネジ等の締結具が挿通されて基板34に締結されることで、冷却装置42が基板34に固定される。基板34には冷却対象である素子36がパッケージ40と共に搭載されているので、冷却装置42は素子36及びパッケージ40に対しても固定される。
【0040】
なお、天板54は、底板52との重なり方向(
図1に示す矢印A1方向)にみて、締結孔88を避ける形状とされている。したがって、冷却装置42を基板34に固定する際に、天板54が邪魔にならずに、締結具に対し締結動作(たとえばネジを回す動作)を行うことが可能である。
【0041】
図1及び
図2に示すように、天板54には、フィン90が取り付けられている。フィン90によって、容器44の実質的な表面積、すなわち外部に放熱(空冷)するための放熱面積が増えている。特に、本実施形態では、フィン90が、天板54の略全域に設置されており、広い放熱面積が確保されている。
【0042】
図5に示すように、容器44には、この容器44の内部と外部とを連通する注入孔92が設けられている。注入孔92からは、容器44の外側へ注入パイプ96が延出されている。容器44内に冷媒RFを注入するには、容器44内の空気を、真空ポンプ等を用いて排出する。その後、注入パイプ96を通じて容器44内へ冷媒を注入する。そして、容器44内の冷媒を加熱して沸騰させ、冷媒RF内の溶解空気を容器44の外部に排出する。ただし、あらかじめ溶解空気が除去された脱気冷媒を使用する場合は、この作業は不要である。次に、注入パイプ96を外側から圧縮して封止する。さらに、注入パイプ96の先端に図示しない栓を詰めることで、注入パイプ96をより強く封止する。すなわち、注入孔92が設けられていることで、容器44の内部に、この注入孔92を通じて冷媒RFを注入できる。
【0043】
容器44の内部では、複数の凹部84のそれぞれに冷媒RFが満たされ、さらに、冷媒RFの液面が、容器44の内寸の中間位置まで達するように冷媒RFが注入される。ずなわち、
図5及び
図8にも示したように、複数の柱部材64の下部が、冷媒RFに浸漬された状態となる。そして、注入後に、注入孔92を栓94で封止することで、容器44の内部に冷媒RFを密封できる。なお、
図5以外の図面では、注入孔92、栓94及び注入パイプ96の図示を省略している。
【0044】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0045】
図5及び
図8に示すように、素子36は、パッケージ40及び熱接合材82を介して受熱板60に接しており、素子36の熱は、パッケージ40及び熱接合材82を介して受熱板60に伝わる。
【0046】
受熱板60には、複数の凹部84が形成されている。
図9Aにも示すように、凹部84の内側に存在している冷媒RFは、凹部84の外側、すなわち受熱板60の上面60Aの上に存在している冷媒RFよりも、素子36に近い位置にある。したがって、素子36の熱が凹部84の内側に存在している冷媒RFに伝わりやすく、凹部84の内側では冷媒RFの沸騰が促進される。
【0047】
具体的には、
図9Bに示すように、凹部84の内側において、液相の冷媒RFの核沸騰が生じ、気泡BBが生成される。特に、凹部84の角部84Cは、凹部84の側面Aと底面Bとが交わる部分であるので、冷媒RFの沸騰開始時における過熱度(角部84Cの温度と冷媒RFの飽和温度との差)が大きくなる。また、角部84Cは、側面Aと底面Bの両面から冷媒RFが加熱されるので、冷媒RFの温度が上昇しやすい。これにより、角部84Cでは、気泡核が発生しやすい状態が実現される。そして、角部84Cの過熱度が大きいことで、高熱の冷媒RFの流束が生じやすくなり、気泡核が合体して成長するための条件である不均質核の生成に適した条件となる。
【0048】
なお、素子36から受熱板60に伝わった熱は、さらに、柱部材64にも伝わる。したがって、容器44の内部では、凹部84の外側、すなわち、柱部材64の間の溝部66においても、液相の冷媒RFが気化される。溝部66における冷媒RFの気化には、冷媒RF表面からの蒸発(矢印GF参照)と、冷媒RF内部からの沸騰(気泡GB参照)と、の両方がある。これにより、容器44の内部では、気相の冷媒RFが発生する。
【0049】
気相の冷媒RFは、拡散領域68に拡散されると共に、移動領域74を通って放熱部48に移動する(
図5の矢印F1参照)。拡散領域68及び移動領域74では、気相の冷媒RFの一部がフィン90を通じた放熱により凝縮され液化される。さらに、気相の状態を維持したまま放熱部48に達した冷媒RFも、放熱部48でフィン90を通じて冷却されることで、凝縮され液化される。このように気相の冷媒RFが液化されることで、凝縮熱が天板54から、容器44の外部に放出される。結果的に、素子36の熱が、外部の空気中に排出される。
【0050】
図4に示すように、凝縮部72は、幅方向(矢印W方向)において、蒸発部62よりも幅広に形成されている。したがって、このように凝縮部72が幅広とされていない構造と比較して、気相の冷媒RFから放熱する面積を広く確保でき、冷媒RFの凝縮を促進することができる。
【0051】
容器44の内部において、液相の冷媒RFは、輸送パイプ78の内部、及び輸送パイプ78の間と、底板52の間の空間80を
図5に示す矢印F3方向に流れる、そして、この冷媒RFは、毛細管現象によって、蒸発部62に向かって輸送される。
【0052】
蒸発部62では、凹部84において、液相の冷媒RFが再度沸騰される。また、溝部66においても、液相の冷媒RFが再度蒸発され気化される。このように、容器44の内部では、冷媒RFが液相と気相との相転移を繰り返しつつ蒸発部62と凝縮部72とで循環されることで、受熱板60で受けた熱を、放熱部48に移送できる。これにより、冷却対象である素子36を冷却できる。
【0053】
このように、本実施形態では、受熱板60に凹部84が形成されていることで、容器44内での冷媒RFの気化が、凹部84が形成されていない場合と比較して促進される。容器44の内部での冷媒RFの相変化が促進されるので、冷却装置42の冷却効率が高くなる。
【0054】
なお、容器44の内部の液相の冷媒RFを、素子36に近い部分に位置させれば、素子36から冷媒RFに効率的に伝熱できる。このような観点からは、たとえば、受熱板60を全体的に薄くして、容器44内の冷媒RFを、受熱面60B側の全域で素子36に近づける構造も考えられる。
【0055】
しかし、単に受熱板60を薄くすると、受熱板60の曲げ剛性が低下し、受熱板60が撓みやすくなる。本実施形態では、パッケージ40と容器44との間に熱接合材82が介在されている。そして、容器44を基板34に対し押し付けることにより、熱接合材82がパッケージ40及び容器44に密着される。したがって、受熱板60の曲げ剛性が低下している場合には、容器44を基板34に向けて押し付けた場合に、受熱板60が撓むことある。また、受熱板60に、たとえば、受熱板60の上面60Aに、受熱板60の一辺から、対向する他辺に達し、両端で開放されている溝を形成した場合でも、溝によって、受熱板の曲げ剛性が局所的に低下する。
【0056】
これに対し、本実施形態では、受熱板60の凹部84は、受熱板60において平面視で部分的に形成されており、受熱板60の全体を薄くした形状ではない。また、凹部84は、受熱板60の四辺に開放されることなく、閉じた形状である。したがって、凹部84を形成したことによる受熱板60の曲げ剛性の低下が抑制されている。たとえば、容器44を基板34に対し強く押し付けて熱接合材82をパッケージ40及び容器44に密着させた場合でも、受熱板60の撓みを抑制できる。
【0057】
そして、熱接合材82をパッケージ40及び容器44に密着させることで、素子36から容器44へ効率的に熱を伝えることが可能となる。
【0058】
また、いわゆるLGA(Land Grid Array)によって素子36を基板34に実装する構造においても、受熱板60の撓みを抑制しつつ、容器44及びパッケージ40を介して素子36を基板34に押し付けることが可能である。
【0059】
第一実施形態では、凹部84の数は複数である。ここで、
図10及び
図11には、比較例の冷却装置102が受熱部46の近傍で拡大して示されている。
【0060】
比較例の冷却装置102では、凹部84が受熱板60の平面視で中央に1つのみ形成されている。このような構造であっても、凹部84内において液相の冷媒RFは沸騰される。
【0061】
しかし、比較例の冷却装置102では、凹部84が1つであるので、受熱板60の全体で見た場合は、液相の冷媒RFを凹部84において沸騰させ、冷却装置102の冷却効率を高める効果は、凹部84が複数である構造と比較して小さい。
【0062】
これに対し、本願の開示の技術では、凹部84が複数であるので、凹部84が1つである構造と比較して、より多くの冷媒RFの沸騰を促進でき、冷却装置42の冷却効率を高めることができる。
【0063】
第一実施形態では、凹部84の形状は円柱状である。受熱板60の板厚方向で一定の断面(円形)を有しているので、凹部84の形成が容易である。たとえば、凹部84が形成されておらず、両面が平坦である板材を準備し、この板材の一方の面をドリル等で加工することで、容易に凹部84を形成できる。
【0064】
第一実施形態では、凹部84は、格子状の溝部66の交点の位置に形成されている。溝部66の交点の位置では、柱部材64が存在していないので、凹部84の形成が容易である。
【0065】
第一実施形態では、複数の凹部84は、受熱板60の平面視で、中心線CL-W及び中心線CL-Dに対し対称に配置されている。複数の凹部84が、受熱板60の平面視で偏在しないので、受熱板60において偏りなく、凹部84によって冷媒RFの沸騰を促進できる。
【0066】
なお、第一実施形態の冷却装置42として
図7に示した例では、複数の凹部84は、幅方向(矢印W方向)に特定のパターンで形成され、奥行方向(矢印D方向)にも特定のパターンで形成されている。したがって、受熱板60を平面視すると、隣接する凹部84は、長方形の頂点を成している。
【0067】
これに対し、複数の凹部84の配置として、
図12に示す第一変形例の配置とすることも可能である。
【0068】
なお、以下に示す各変形例及び各実施形態において、冷却装置の全体的な構造は、第一実施形態と同様であるので、図示を省略する。また、以下において、第一実施形態と同一の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0069】
図12に示す第一変形例の冷却装置112では、受熱板60の平面視で、幅方向の凹部84の列を考える。具体的には、
図12に示す例では、縦方向にM1~M7までの7つの凹部84の列が存在している。そして、奇数番目の列であるM1、M3、M5、M7では、奥行方向に一定のピッチ(間隔)のパターンで配置された6個の凹部84を含んでいるのに対し、偶数番目の列であるM2、M4、M6では、奥行方向に同じく一定ピッチ(間隔)のパターンで配置された5個の凹部84を含んでいる。そして、奇数番目の列と偶数番目の列とでは、このパターンが奥行方向に半ピッチずらして配置されている。これにより、複数の凹部84を全体でみると、列ごとに凹部84の位置を奥行方向にずらした配置、いわゆる千鳥配置となっている。
【0070】
このような凹部84の配置であっても、受熱板60の凹部84が形成されていることで、容器44内での冷媒RFの気化が促進される。容器44の内部での冷媒RFの相変化が促進されるので、冷却装置112の冷却効率が高くなる。
【0071】
第一変形例においても、複数の凹部84は、中心線CL-W及び中心線CL-Dに対し対称で配置されている。
【0072】
また、複数の凹部84の配置としては、
図13に示す第二変形例の配置とすることも可能である。
【0073】
図13に示す第二変形例の冷却装置114では、複数の凹部84が、受熱板60の平面視で、中心線CL-Dに対しては対称に配置されているが、中心線CL-Wに対しては、
図13における右側に偏って配置されている。具体的には、中心線CL-W上と、中心線CL-Wよりも右側の範囲に配置されている。
【0074】
第二変形例では、
図14に示すように、素子36が、中心線CL-Dよりも右側に配置されている。すなわち、素子36の位置に偏りがある場合に、素子36に位置に対応させた複数の凹部84の配置である。これより、偏って配置された素子36の熱により、凹部84の内側の冷媒RFを効率的に沸騰させることができる。
【0075】
なお、複数の凹部84を偏って配置させる具体例としては、
図13に示した構造に限定されない。たとえば、中心線CL-Dに対しては対称で、中心線CL-Wに対し偏って配置されてもよく、さらには、中心線CL-Wと中心線CL-Dの両方に対し非対称で配置されてもよい。
【0076】
次に、第二実施形態について説明する。
【0077】
図15Aに示すように、第二実施形態の冷却装置122では、内径が受熱面60Bに向かって段階的に小さくなる凹部84の形状である。
図15Aの例では、受熱板60の上面60Aから凹部84の底面84Bまでで、2段階で内径が小さくされている。したがって、受熱板60を水平方向の断面で見ると、受熱面60Bに向かうにしたがって段階的に小さくなる3種類の面が現れる。また凹部84を矢印A1方向に見ると、内径の異なる複数の同心円が現れる。
【0078】
したがって、第二実施形態では、垂直方向の断面で見て、凹部84に第一実施形態よりも多くの角部84Cが存在している。角部84Cは、凹部84の内側で冷媒RFが沸騰する場合の気泡核の発生部位、すなわち、気泡核が生成されやすい部位である。このため、素子36から受けた熱によって冷媒RFが沸騰しやすくなり、冷却効果が高い構造を実現できる。
【0079】
次に第三実施形態について説明する。
【0080】
図16Aに示すように、第三実施形態の冷却装置132では、凹部84の開口部84Dは一定の内径を有する円柱状である。そして、凹部84は、開口部84Dの下側では、凹部84は受熱面60Bと平行に広がる拡径部84Eを有している。拡径部84Eの下方では、垂直方向の断面で見て、受熱面60Bに向かって凸に湾曲する湾曲部84Fである。拡径部84Eと湾曲部84Fの間に角部84Cが存在している。なお、このように、開口部84D(入口部)よりも内部が広がっている形状の断面は、リエントラント(re-entrant)型の断面と称されることがある。
【0081】
第三実施形態において、素子36の発熱が停止する等によって冷媒RFが過冷却状態になった場合を考える。この場合、一次的に凹部84内に液相の冷媒RFが存在していない状態から、
図16Bに示すように、凹部84内に、開口部84D側から液相の冷媒RFが浸入する。液相の冷媒RFの液面LSは、この液面LSが開口部84Dにある状態では
図16Bに示すように略水平であり、冷媒RFの接触角θ1は鈍角である。そして、
図16Cに示すように、液面LSが拡径部84Eに達すると、拡径部84Eにおける冷媒RFの接触角θ1は鋭角となる。さらに、液面LSが拡径部84Eを凹部84の外側に向けて進行している状態では、
図16Dに示すように、液面LSが下に凸に湾曲した形状で、液相の冷媒RFが湾曲部84F内に浸入する。液面LSと湾曲部84Fとの間には、気相の冷媒RFが飽和状態で存在している。
【0082】
したがって、第三実施形態では、液面LSが湾曲部84Fに達した状態であっても、湾曲部84F及び角部84Cでは、気泡核を内在しやすい状態となる。従って、
図16Eに示すように、凹部84において、特に角部84C及び湾曲部84Fにおいて気泡核が発生しやすいので、凹部84における伝熱面過熱度を低く抑えることができる。
【0083】
次に、第四実施形態について説明する。
【0084】
図17Aに示すように、第四実施形態の冷却装置142では、凹部84が円錐形状である。すなわち凹部84を垂直方向の断面で見ると、受熱面60Bに向けた三角形状であり、この三角形の下端の頂点が角部84Cである。凹部84の開口断面は、受熱面60Bに向けて連続的に小さくなる。換言すれば、凹部84の側面84Sは、角部84Cを通る中心線CL-Yに対し左右対称であり、且つ、中心線CL-Yに対し傾斜している。
【0085】
したがって、第四実施形態では、
図17Bに示すように、角部84Cにおいて生成された気泡BBが、凹部84の側面84Sに接触しつつ成長する。このように気泡BBが成長する場合、液相の冷媒RFは上方に後退する。側面84Sは鉛直面に対し傾斜しているので、冷媒RFの後退接触角θ1は一定に保たれやすい。液面LS(気相の冷媒RFと液相の冷媒RFとの気液界面)が
図17Bにおける左右で均等になることで、液面LSの面積を大きくする(好ましくは最大化する)ことが可能であり、気泡BBが成長しやすい構造である。
【0086】
次に、第五実施形態について説明する。
【0087】
第五実施形態の冷却装置152では、
図18Aに示すように、複数(
図18Aの例では2つ)の凹部84が、それぞれの凹部84の下部において連通している。すなわち、それぞれの凹部84の下部は、凹部84どうしを連通させる連通部98である。第五実施形態では、連通部98を通る中心線CL-Zに対し、2つの凹部84が対称に形成されており、凹部84は受熱面60Bに対し傾斜している。
【0088】
したがって、第五実施形態では、いずれか一方の凹部84(
図18Bでは左側の凹部84)において発生した気泡BBが上昇する場合に、この凹部84内での気泡の上昇に伴い、他方の凹部84(
図18Bでは右側の凹部84)には、矢印F2で示すように、上方から液相の冷媒RFが浸入する。すなわち、凹部84内で沸騰した冷媒RFが凹部84から排出された場合でも、あらたな液相の冷媒RFが凹部84内に供給される。
【0089】
そして、連通部98によって連通された複数の凹部84は、いずれも受熱面60Bに対し傾斜しているので、複数の凹部84のいずれにおいて気泡BBが発生した場合でも、他方の凹部から液相の冷媒RFを浸入させやすい構造である。
【0090】
次に、第六実施形態について説明する。
【0091】
第六実施形態の冷却装置162では、
図19Aに示すように、複数の凹部84がそれぞれの下部において連通部98により連通されている。そして、連通部98により連通された複数の凹部84の一部(
図19Aでは左側の凹部84)は、受熱面60Bに対し垂直の向きであり、他の凹部(
図19Bでは右側の凹部84)は、受熱面60Bに対し傾斜している。
【0092】
したがって、第六実施形態では、受熱面60Bに対し垂直の凹部84では、気泡BBが上昇しやすくなる。そして、受熱面60Bに対し傾斜している凹部84には、矢印F2で示すように、上方から液相の冷媒RFが浸入する。このように、第六実施形態では、複数の凹部84のうち、一部の凹部84では発生した気泡が上方に抜けやすく、他の凹部84では、液相の冷媒RFが供給されやすい構造を実現できる。
【0093】
次に第七実施形態について説明する。
【0094】
第七実施形態の冷却装置172では、
図20Aに示すように、複数の凹部84が、それぞれの凹部84の底部において、連通部98で連通されている。第七実施形態の連通部98は、受熱面60Bに沿って、すなわち受熱面60Bと平行に延在されている。なお、
図20Aの例では、連通部98は少なくとも4つの凹部84を連通している。連通部98は、さらに4つ以上の凹部84、たとえばこれら4つの凹部84の右側及び左側の図示しない凹部を連通していてもよい。
【0095】
したがって、第七実施形態では、連通部98で連通された複数の凹部84のうちのいずれかにおいて気泡BBが発生して上方に抜けた場合に、他の凹部84から液相の冷媒RFが浸入する。連通部98は受熱面60Bに沿って形成されており、水平なので、複数の凹部84の間での液相の冷媒RFの流れやすさに偏りが生じにくい構造である。
【0096】
上記の第二実施形態~第七実施形態で示した形状の複数の凹部84を、受熱板60の平面視でどのように配置するか、という点は特に限定されない。第二実施形態~第七実施形態で示した各種の形状の複数の凹部84を、たとえば、
図7に示すように配置してもよいし、
図12に示す配置、及び
図13に示す配置等としてもよい。
【0097】
上記では、蒸発部62において、溝部66をなすための部材として柱部材64を挙げたが、溝部66をなす部材は、この柱部材に限定されない。たとえば、奥行き方向に延在する複数の壁部材が、幅方向に一定間隔で並べて配置された構造でもよい。壁部材を有する構造では、壁部材の間に、奥行き方向に延在する溝部が形成される。
【0098】
以上、本願の開示する技術の実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0099】
本明細書は、以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
冷媒が密封された容器と、
前記容器の一部を成し発熱体からの熱を受ける受熱板と、
前記容器の内部で液相の前記冷媒を受熱により蒸発させる蒸発部と、
前記容器の内部で気相の前記冷媒を放熱により凝縮させる凝縮部と、
前記受熱板における前記容器の内側の面に形成された複数の凹部と、
を有する冷却装置。
(付記2)
前記受熱板から前記容器の内部に向けて立設され、前記容器の内部を格子状の複数の溝部に区画する複数の柱部材、を有する付記1に記載の冷却装置。
(付記3)
複数の前記溝部は交差しており、
複数の前記凹部が、複数の前記溝部の複数の交点の位置にそれぞれ形成されている付記2に記載の冷却装置。
(付記4)
複数の前記凹部が、前記受熱板の平面視で前記受熱板の中心線に対し対称に配置されている付記3に記載の冷却装置。
(付記5)
複数の前記凹部が、前記受熱板の平面視で前記受熱板の中心線に対し偏って配置されている付記3に記載の冷却装置。
(付記6)
複数の前記凹部が、前記受熱板の平面視で縦方向又は横方向のうちの一方向で一定のパターンで配置され、縦方向又は横方向のうちの他方向では前記パターンを前記一方向にずらして配置されている付記3~付記5のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記7)
複数の前記凹部は、前記受熱板の受熱面に向けて一定の開口断面を有している付記1~付記6のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記8)
複数の前記凹部は、前記受熱板の受熱面に向けて段階的に小さくなる開口断面を有している付記1~付記6のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記9)
複数の前記凹部は、前記容器の内側の開口部から前記受熱板の受熱面に向けて部分的に広がる形状の開口断面を有している付記1~付記6のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記10)
複数の前記凹部は、前記受熱板の受熱面に向けて連続的に小さくなる開口断面を有している付記1~付記6のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記11)
複数の前記凹部を前記受熱板の内部で連通させる連通部を有する付記1~付記10のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記12)
前記連通部によって連通される前記凹部は、いずれも前記受熱板の受熱面に対し傾斜している付記11に記載の冷却装置。
(付記13)
前記連通部によって連通される前記凹部の一方は前記受熱板の受熱面に対し垂直であり、前記凹部の他方は前記受熱面に対し傾斜している、付記11に記載の冷却装置。
(付記14)
前記連通部は、前記受熱板の受熱面に沿って前記受熱板に形成され、複数の前記凹部を繋いでいる付記11~付記13のいずれか一項に記載の冷却装置。
【符号の説明】
【0100】
32 電子機器
34 基板
36 素子(発熱体の一例)
42 冷却装置
44 容器
46 受熱部
48 放熱部
50 接続部
60 受熱板
60A 上面
60B 受熱面
62 蒸発部
64 柱部材
66 溝部
72 凝縮部
82 熱接合材
84 凹部
84B 底面
84C 角部
84D 開口部
84E 拡径部
84F 湾曲部
84S 側面
90 フィン
92 注入孔
94 栓
96 注入パイプ
98 連通部