(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159151
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20241031BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20241031BHJP
B05B 11/10 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101G
B05B11/00 101E
B05B11/10 101G
B05B11/10 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074960
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】長村 隆央
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084BA02
3E084CB04
3E084DB12
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB11
3E084GB17
3E084JA20
3E084KA20
3E084KB05
3E084LC01
3E084LD07
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】ロック解除時において吐出ヘッドの押下げを可能にしつつ吐出ヘッドの向きを変えることができる吐出器を提供する。
【解決手段】リング状の装着キャップ4の内側から上方付勢させて昇降可能に立設させた筒状体36の上端に、吐出口46を開口する吐出ヘッド44を付設してなる作動部材33を具備する。前記装着キャップ4から、筒状体36を囲む案内筒10を立設する。前記案内筒10の内面を周方向に延びるストッパ突条12と、筒状体36の外面に付設された係合突起38とを設ける。この係合突起38が通過可能な切欠き14を、ストッパ突条12の周方向の一部に設ける。作動部材33の回転により、前記案内筒10の筒径方向から見て、切欠き14の周方向の片方側S1で係合突起38がストッパ突条12の上に在るロック状態と、切欠き14の周方向の他方側S2で係合突起38がストッパ突条12の下に在るロック解除状態との間を移行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(90)の口頸部(92)に装着する、リング状の装着キャップ(4)と、
前記装着キャップ(4)の内側から上方付勢させて昇降可能に立設させた筒状体(36)の上端に、吐出口(46)を開口する吐出ヘッド(44)を付設してなる作動部材(33)と、を具備し、
前記装着キャップ(4)から、前記筒状体(36)を囲む案内筒(10)が立設されており、
縦方向の中心線(О)の周りで前記作動部材(33)を回転させることにより、その作動部材(33)の下降を解除可能に規制できるロック機構(L)を設けており、
このロック機構(L)は、前記案内筒(10)の内面を周方向に延びるストッパ突条(12)と、前記筒状体(36)の外面に付設され、前記作動部材(33)の回転により、前記ストッパ突条(12)に沿って周方向に移動可能に配設された係合突起(38)とで構成されており、
上方から見て、この係合突起(38)を通過させることが可能な大きさの切欠き(14)が、前記ストッパ突条(12)の周方向の一部を縦断して形成されており、
前記作動部材(33)を正逆いずれか一方向(B1、B2)へ回転することにより、前記案内筒(10)の筒径方向から見て、前記切欠き(14)の周方向の片方側(S1)で前記係合突起(38)が前記ストッパ突条(12)の上に在るロック状態と、前記切欠き(14)の周方向の他方側(S2)で前記係合突起(38)が前記ストッパ突条(12)の下に在るロック解除状態との間を移行することが可能であることを特徴とする、吐出器。
【請求項2】
前記作動部材(33)の正方向(B1)への回転により、前記切欠き(14)の周方向の片方側(S1)で前記ストッパ突条(12)の上に在る前記係合突起38)を、前記切欠き(14)の周方向の他方側(S2)で前記ストッパ突条(12)の下へ導く正方向案内手段(C1)と、
前記作動部材(33)の逆方向(B2)への回転により、前記切欠き(14)の周方向の他方側(S2)で前記ストッパ突条(12)の下に在る前記係合突起(38)を、前記切欠き(14)の周方向の片方側(S1)で前記ストッパ突条(12)の上へ導く逆方向案内手段(C2)と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記ストッパ突条(12)は、前記切欠き(14)の周方向の片方側(S1)に、前記係合突起(38)の下面と摺接可能な上側ストッパ面(18)を、前記切欠き(14)の周方向の他方側(S2)に、前記係合突起(38)の上面と摺接可能な下側ストッパ面(24)をそれぞれ有していることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の吐出器。
【請求項4】
前記案内筒(10)の内面には、前記上側ストッパ面(18)から前記切欠き(14)側への前記係合突起(38)の脱落を制限する抜止め用凸部(22)を付設したことを特徴とする、請求項3に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出器として、容器の口頸部に装着するリング状の装着キャップの内側から、上方付勢させて昇降可能にステムが起立され、このステムに、吐出ヘッドから垂設する取付筒部を嵌合させるとともに、この取付筒部を囲む案内筒を前記装着キャップから立設し、かつ、初期状態の吐出ヘッドの回転位置でポンプの動作を規制する吐出規制機構と、吐出ヘッドの回転を規制するロック機構とが設けられており、吐出ヘッドを下限位置付近へ押し下げたときに、吐出ヘッドの回転のロックが解除され、吐出ヘッドを、内容物の吐出可能な位置へ回転することができるように構成したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、吐出ヘッドが一定方向に配向された状態で、吐出ヘッドを押し下げることはできたが、使用時、すなわちロック解除時において、吐出ヘッドの向き(吐出ヘッドの吐出口の開口方向をいう。)を変えて吐出させることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、使用時(ロック解除時)において吐出ヘッドの押下げを可能にしつつ吐出ヘッドの向きを変えることができる吐出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、容器90の口頸部92に装着する、リング状の装着キャップ4と、
前記装着キャップ4の内側から上方付勢させて昇降可能に立設させた筒状体36の上端に、吐出口46を開口する吐出ヘッド44を付設してなる作動部材33と
を具備し、
前記装着キャップ4から、前記筒状体36を囲む案内筒10が立設されており、
縦方向の中心線Оの周りで前記作動部材33を回転させることにより、その作動部材33の下降を解除可能に規制できるロック機構Lを設けており、
このロック機構Lは、前記案内筒10の内面を周方向に延びるストッパ突条12と、前記筒状体36の外面に付設され、前記作動部材33の回転により、前記ストッパ突条12に沿って周方向に移動可能に配設された係合突起38とで構成されており、
上方から見て、この係合突起38を通過させることが可能な大きさの切欠き14が、前記ストッパ突条12の周方向の一部を縦断して形成されており、
前記作動部材33を正逆いずれか一方向B1、B2へ回転することにより、前記案内筒10の筒径方向から見て、前記切欠き14の周方向の片方側S1で前記係合突起38が前記ストッパ突条12の上に在るロック状態と、前記切欠き14の周方向の他方側S2で前記係合突起38が前記ストッパ突条12の下に在るロック解除状態との間を移行することが可能である。
【0007】
本手段では、
図1(A)に示す如く、装着キャップ4と、作動部材33とを具備し、作動部材33の筒状体36を囲む案内筒10を装着キャップ4から立設するとともに、作動部材33の下降を解除可能に規制できるロック機構Lを設けている。
このロック機構Lは、
図2(B)に示す如く、前記案内筒10の内面を周方向に延びるストッパ突条12と、前記筒状体36の外面に付設された係合突起38とからなり、前記ストッパ突条12の周方向の一部には、係合突起38が通過可能な切欠き14を設ける。
そして、作動部材33を正逆いずれか一方向へ回転することにより、切欠き14の周方向の片方側S1で係合突起38がストッパ突条12の上に在るロック状態(
図1(B)参照)と、切欠き14の周方向の他方側S2で係合突起38がストッパ突条12の下に在るロック解除状態(
図3(B)参照)との間を移行することが可能に構成されている。
この構造によれば、従来技術の如く作動部材33を回転させるために下限位置まで押し下げる必要がなく、吐出ヘッド44の押下げを可能としつつ、吐出ヘッド44の向きを調整することができ、使い勝手がよい。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ前記作動部材33の正方向B1への回転により、前記切欠き14の周方向の片方側S1で前記ストッパ突条12の上に在る前記係合突起38を、前記切欠き14の周方向の他方側S2で前記ストッパ突条12の下へ導く正方向案内手段C1と、
前記作動部材33の逆方向B2への回転により、前記切欠き14の周方向の他方側S2で前記ストッパ突条12の下に在る前記係合突起38を、前記切欠き14の周方向の片方側S1で前記ストッパ突条12の上へ導く逆方向案内手段C2と、
を備える。
【0009】
本手段では、
図2(C)に示す如く、作動部材33の正方向B1への回転により、前記切欠き14の周方向の片方側S1で前記ストッパ突条12の上に在る前記係合突起38を、前記切欠き14の周方向の他方側S2で前記ストッパ突条12の下へ導く正方向案内手段C1を設けている。
また、
図4(C)に示す如く、作動部材33の逆方向B2への回転により、前記切欠き14の周方向の他方側S2で前記ストッパ突条12の下に在る前記係合突起38を、前記切欠き14の周方向の片方側S1で前記ストッパ突条12の上へ導く逆方向案内手段C2を設けている。
この構造によれば、単に回転操作により、作動部材33の下降をロックし、或いは、ロックを解除することができ、使い勝手がよい。
【0010】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ前記ストッパ突条12は、前記切欠き14の周方向の片方側S1に、前記係合突起38の下面と摺接可能な上側ストッパ面18を、前記切欠き14の周方向の他方側S2に、前記係合突起38の上面と摺接可能な下側ストッパ面24をそれぞれ有している。
【0011】
本手段では、
図2(C)に示す如く、前記ストッパ突条12は、前記切欠き14の周方向の片方側S1に、前記係合突起38の下面と摺接可能な上側ストッパ面18を(
図2(C)参照)、前記切欠き14の周方向の他方側S2に、前記係合突起38の上面と摺接可能な下側ストッパ面24を(
図4(C)参照)それぞれ有している。
この構造によれば、ロック状態及び非ロック状態において、吐出ヘッド44の向きを容易に調整することができる。
【0012】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ前記案内筒10の内面には、前記上側ストッパ面18から前記切欠き14側への前記係合突起38の脱落を制限する抜止め用凸部22を付設した。
【0013】
本手段では、
図2(B)に示す如く、案内筒10の内面には、上側ストッパ面18から切欠き14側への係合突起38の脱落を制限する抜止め用凸部22を付設している。
この構造によれば、不意にロック状態が解除されるリスクを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用時(ロック解除時)において吐出ヘッドの押下げを可能にしつつ吐出ヘッドの向きを変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る吐出器のロック状態での構成を示しており、同図(A)は側方から見た断面図、同図(B)はその一部拡大図である。
【
図2】
図1に示す吐出器の作用説明図であり、同図(A)はロック状態で吐出ヘッドを回転する様子を、同図(B)は横断面で示す要部の状態を、同図(C)は180°パノラマ展開図で示す、ロック状態からロック解除状態への移行の様子を表している。
【
図3】
図2に示す吐出器のロック解除状態での構成を示しており、同図(A)は側方から見た断面図、同図(B)はその一部拡大図である。
【
図4】
図3に示す吐出器の作用説明図であり、同図(A)はロック解除状態で吐出ヘッドを回転する様子を、同図(B)は横断面で示す要部の状態を、同図(C)は180°パノラマ展開図で示す、ロック状態からロック解除状態への移行の様子を表している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から
図4は、本発明の実施形態に係る吐出器を示している。この吐出器は、容器90の口頸部92に装着させて使用するものである。
前記吐出器は、本実施形態において、装着部材2と、シリンダ30と、作動部材33とで構成されている。これら各部材は、例えば合成樹脂や金属により形成することができる。
図示例の吐出器は泡吐出器であるが、吐出ヘッドを用いて吐出するタイプである限り、吐出器の種類はどういうものでも構わない。
【0017】
装着部材2は、容器90の口頸部92に装着するためのリング状の部材であり、本実施形態において、
図1(A)に示す如く、装着キャップ4と案内筒10とで構成されている。
前記装着キャップ4は、前記口頸部92の外面に嵌合する装着筒6の上端側から内向きフランジ8を内方突設してなる。
前記装着筒6の内面には、口頸部92のオネジ部94にかみ合わせるためのメネジ部7が形成されている。
また内向きフランジ8の下面からは、作動部材33の上方抜け出しを防止するための抜止め筒11が垂設されている。
前記案内筒10は、後述の作動部材33の筒状体36の昇降を案内するための部位であり、この筒状体36を囲むように内向きフランジ8から立設されている。
案内筒10の内面には、作動部材33の下降を制限するためのストッパ突条12が付設されている。このストッパ突条12については、説明の都合上、吐出器の一般的な構造・作用を説明した後に、後述の係合突起38とともに解説する。
【0018】
シリンダ30は、前記装着部材2を介して容器90内へ垂設されている。
図示例のシリンダ30は、外周面上部に付設された鍔部32を前記口頸部92と前記内向きフランジ8との間にパッキンを介して気密に挟持させることにより、容器90の内部に支承されている。
また図示例では、前記シリンダ30は、大径シリンダ30bから小径シリンダ30aを垂設してなる。
もっとも、これらの構造は適宜変更することができる。
【0019】
作動部材33は、ステムである筒状体36の上端部に、吐出ヘッド44を取り付けるとともに、筒状体36の下半部側にピストン35を連係させた部材であり、これらピストン35及び筒状体36の下半部を上方付勢状態でシリンダ30へ挿入させている。作動部材33は案内筒10の筒軸О(中心線)の周りを回転することが可能に形成されている。
図示例の筒状体36は、背高の内筒部36aと背低の外筒部36bとを環状の連結部36cを介して連結してなる2重筒状の部材であり、その外筒部36bの外面に装着部材2側へ係止させるための係合突起38が付設されている。
この筒状体36の構造は適宜変更することができる。
図示の筒状体36のうちで内筒部36aの内部の構成は従来のステムと同じであり、説明を省略する。係合突起38の構造については、さらに後述する。
図示例では、ピストンとして、前記小径シリンダ30a内を摺動する液用ピストン35a及び前記大径シリンダ30b内を摺動するエアピストン35bとを設けており、また、これら両ピストンの昇降をガイドするピストンガイド39が、前記筒状体36の内筒部36aに連結されている。
前記エアピストン35bの内周からは、立筒jが起立されており、この立筒jは前記外筒部36bの下部内に嵌挿されている。
図示例では、筒状の液用ピストン35aの内部から前記小径シリンダ30aの内部に亘って従来公知のポペット弁34が昇降可能に配備されている。
そして、従来公知のポンプ機構により、小径シリンダ30a内に液体を、大径シリンダ30b内に空気を取り込み、圧縮し、気液混合させて、発泡部Fを介して発泡させ、泡として吐出できるように構成している。もっとも、この構造は適宜変更でき、例えば単に液体を吐出する構成でも構わない。
また、
図1(A)の状態で、前記エアピストン35bには、前記抜止め筒11が当接している。
図示例の吐出ヘッド44は、天板44aから大径周壁44bと中径周壁44dと小径周壁44cとを同心状に垂設させ、この小径周壁44cが前記筒状体36の内筒部36aの外面に回転不能に嵌着されている。前記小径周壁44cと内筒部36aとの対向箇所には、例えばローレット機構などの回り止め手段Rを形成する。
小径周壁44cの上部からは、中径周壁44d及び大径周壁44bを貫通して側外方へノズル筒44eを突設しており、その先端に吐出口46が開口されている。
【0020】
本発明においては、前記筒状体36の外面に付設された係合突起38と、前記案内筒10の内面に付設したストッパ突条12とにより、前記作動部材33の下降を規制するロック機構Lが形成されている。
このロック機構Lの役割は、作動部材33を正方向又は逆方向へ回転させることにより、ロック状態とロック解除状態との切り替えを可能とすることである。
なお、本明細書において、「正方向」とは、吐出器をロック解除状態とするために作動部材33を回転させる向きを、「逆方向」とは、吐出器をロック状態とするために作動部材33を回転させる向きをそれぞれ指すものとする。
【0021】
係合突起38は、前記筒状体36の外周面のうちで案内筒10と向かい合う箇所から外方へ突設された突片である。
以下、係合突起38の機能、形態、個数及び配置に関してそれぞれ説明する。
【0022】
係合突起38の主たる機能は、後述のロック状態で作動部材33を押し下げようとしたときに、ストッパ突条12に突き当ることで、その押下げ力に対抗することである。
また、係合突起38の他の機能は、前記作動部材33の回転により、前記ストッパ突条12に沿って周方向に移動(摺動)させることができ、これにより、後述の切欠き14を経由して、作動部材33の押下げが可能な場所と、押下げが不可能な場所とを往来できることである。
【0023】
係合突起38の形態に関しては、図示例の係合突起38は、前記押下げ力に対抗する強度を確保するため、図示例では、前記係合突起38は、
図2(B)に示すように、突出長に比べて周方向の幅が大きく、
図2(C)に示すように肉厚に形成している。
また係合突起38の上面及び下面は、水平な平坦面に形成されている。
また、側方(筒状体36の筒径方向)から見て、係合突起38の両側面は、それぞれ第1傾斜面40及び第2傾斜面42に形成されている。
これら第1傾斜面40及び第2傾斜面42は、
図2(C)に示す正方向B1へ下向きに傾斜している。
第1傾斜面40は、係合突起38の正方向B1側の側面であり、
図2(C)に示す正方向B1へ作動部材33を回転させたときに、後述の傾斜端面26に摺接する。この摺接により、係合突起38は、後述の切欠き14を上から下へ通過するように導かれる。
また第2傾斜面42は、
図4(C)に示すように、係合突起38の逆方向B2側の側面であり、逆方向B2へ作動部材33を回転させたときに、後述の傾斜壁部13に摺接する。この摺接により、係合突起38は、後述の切欠き14を下から上へ通過するように導かれる。
【0024】
係合突起38の個数に関しては、図示例では、一個の係合突起38を筒状体36の周方向の一部に配備させている。
もっとも、等角的に離間させた複数(例えば2個)の係合突起38を配備させることにより、作動部材33の押下げ力に対してバランスよく対抗させるようにしてもよい。
この場合には、後述の切欠き14を周方向に係合突起38と同数設ける。
係合突起38の配置に関しては、図示例では、前述の如く、筒状体36の内筒部36aと一体的に連結された外筒部36bから、係合突起38を突設している。もっとも、この構造は適宜変更することができる。
例えば、特許文献1のように、装着キャップの内側からステムを起立するとともに、吐出ヘッド44から垂設した取付筒部を前記ステムの外面に嵌合させた構成では、この取付筒部の外面に係合突起を配備させても構わない。
本明細書において、「筒状体」とは、吐出ヘッドを吐出器の内部構造(ポンプ機構)と連係する筒状の部位であればよく、前述のステムと取付筒部とを嵌合させた構造も含まれる。
【0025】
前記ストッパ突条12は、
図2(B)に示す如く、前記案内筒10から内方へ突設され、周方向に延びるように形成されている。
「周方向」に延びるとは、上方から見て周方向に延びるように配置されているという程度の意味であり、周方向に水平にのみ延びる形態に限定されない。
図示例のストッパ突条12は、
図1(B)に示す如く、上下両面が水平な断面矩形の形状に形成されているが、係合突起38を垂直方向に係止できればどのような形態であっても構わない。
【0026】
前記ストッパ突条12には、当該突条の周方向の一部を縦断する切欠き14が形成されている。
これにより、切欠き14をはさんで2つの突条部分同士が対峙するように構成している。
また、前記切欠き14は、上方から見て、前記係合突起38が通過可能な大きさに形成されている。
これにより、
図2(A)及び
図4(C)に示す如く、作動部材33の正方向B1及び逆方向B2への回転操作により、対峙する2つの突条部分の一方の上側箇所と他方側の下側箇所とを、前記係合突起38が切欠き14を通って往来することが可能に形成している。これにより、作動部材33のロック状態とロック解除状態との切り替えを可能としている。
この往来を容易かつ確実に行うために、後述の正方向案内手段C1及び逆方向案内手段C2が設けられている。
【0027】
本実施形態において、前記ストッパ突条12は、案内筒10の径方向から見て、
図2(C)に示す如く、切欠き14の片方側S1の突条部分を低位の第1平坦部12aに、切欠き14の他方側S2の突条部分を第2平坦部12bにそれぞれ形成している。
これら第1平坦部12a及び第2平坦部12bは、案内筒10の径方向から見て、
図2(C)に示す如く、当該案内筒10の内面に棚板状に配備されている。
第1平坦部12aは、ロック状態において係合突起38を支持するための部位である。
第1平坦部12aの上面は、作動部材33の押下げ力に対抗して係合突起38を受持するための上側ストッパ面18であり、水平な平坦面に形成されている。そうすることにより、係合突起38が摺動し易いようにしている。
第2平坦部12bは、ロック解除状態で、その下面側に係合突起38を保持するための部位である。
第2平坦部12bの下面は、作動部材33の上方付勢力に対抗して係合突起38を受持するための下側ストッパ面24であり、水平な平坦面に形成されている。
【0028】
前記第1平坦部12aは、切欠き14の片方側S1で、正方向B1下向きへ傾斜する傾斜壁部13に連続しており、かつ、その傾斜壁部13の下端からは、主仕切り突条16が垂設されている。
これら傾斜壁部13及び主仕切り突条16は案内筒10の内面から一体的に内方突設されている。これら傾斜壁部13及び主仕切り突条16の突出長は、係合突起38の突出長と同じとすることができる。この説明は、後述の副仕切り突条17に援用する。
前記傾斜壁部13は、後述の逆方向案内手段C2の構成要素である。
主仕切り突条16は、係合突起38の移動経路を限定する役割を有する。
図示例では、
図2(C)に示す如く、第1平坦部12aと傾斜壁部13との境目e付近で、案内筒10の内面から抜止め用凸部22が突設されている。この抜止め用凸部22は、第1平坦部12aの上の係合突起38が不意に傾斜壁部13側へ脱落することを防止する。抜止め用凸部22の突出長は、前記係合突起38が抜止め用凸部22を強制的に乗り越えることが可能な範囲で設定する。
【0029】
また前記第1平坦部12aは、前記切欠き14と反対側で、横向き段部20を介して、第2平坦部12bと連続している。
横向き段部20は、係合突起38の制止段部であり、係合突起38の移動範囲を限定する役目を有する。
図示例では、
図2(C)に示す如く、横向き段部20の段差h1は、係合突起38の高さh2と同程度に設計されている。
また前記横向き段部20の下側付近から、副仕切り突条17が垂設されている。この副仕切り突条17は、
図2(C)に示す如く、第2平坦部12bの下面を摺動する係合突起38のスライド範囲を限定する役割を有する。
【0030】
本実施形態では、前記係合突起38を切欠き14側へ導くため、正方向案内手段C1と逆方向案内手段C2とを設けている。なお、本実施形態においては、正方向案内手段C1とはロック状態からロック解除状態へ切り替えるための構成を指し、逆方向案内手段C2とはロック解除状態からロック状態へ切り替えるための構成を指す。
図示例では、前記切欠き14の他方側S2に面するストッパ突条12の端面を、正方向B1側下向きへ傾斜する傾斜端面26とすることにより、この傾斜端面26と前述の係合突起38の第1傾斜面40とで前記正方向案内手段C1を形成している。
この正方向案内手段C1の案内により、
図2(C)に示す如く、前記作動部材33を正方向B1へ回転したときに、係合突起38は、前記切欠き14の周方向の片方側S1でのストッパ突条12の上側位置から、切欠き14を通って、前記切欠き14の周方向の他方側S2でのストッパ突条12の下側位置へ導かれる。
また図示例では、傾斜壁部13と前述の係合突起38の第2傾斜面42とで前記逆方向案内手段C2を形成している。
前記逆方向案内手段C2の案内により、前記作動部材33を逆方向B2へ回転したときに、前記係合突起38は、前記切欠き14の周方向の他方側S2での前記ストッパ突条12の下側位置から、切欠き14を通って、前記切欠き14の周方向の片方側S1での前記ストッパ突条12の上側位置へ導かれる。
【0031】
前記作動部材33の回転範囲を、作動部材33の動作に応じて分類すると、
図4(B)に示す如く、係合突起38が第1平坦部12aの上にあって、作動部材33の押下げができないロック領域A1、係合突起38が第2平坦部12bの下にあり、作動部材33を下限位置まで押し下げることができる使用領域A2、及び、係合突起38が切欠き14内を通過途中である移行領域A3とに分かれる。
具体的には、
図4(B)に示す如く、第1平坦部12a及び傾斜壁部13の境目を符号eで示すと、ロック領域A1は横向き段部20と境目eとの間の領域、移行領域A3は境目eと傾斜端面26との間の領域、使用領域A2は傾斜端面26と副仕切り突条17との間の領域である。もっとも、これらの構成は適宜変更することができる。
従来技術と比較して本発明が異なる点の一つは、ロック領域A1と使用領域A2との間に移行領域A3があることである。移行領域A3において、筒状体36の係合突起38をストッパ突条12の下側へ案内することにより、ロック解除状態となる。また、移行領域A3で、前記係合突起38をストッパ突条12の上側へ案内することにより、ロック状態となる。この構成により、ロック状態とロック解除状態との切り替えをスムーズに行うことができる。
本実施形態では、使用領域A2が他の2つの領域より広く、過半分を占める。
本実施形態では、
図2(A)に示す如く、容器の平面形状が長径DL及び短径DSを有する楕円形である。
そして容器90の長径DLを中心として、ロック領域A1を設定している。この構成では、例えば吐出ヘッド44の吐出口46の向きを、ロック領域A1内であれば、容易に調整することができる。
また吐出ヘッド44の向きが非ロック状態(使用領域A2)にあるときにも、作動部材33を押し下げることなく、単に回転操作だけで、その向きを変更することができる。例えば
図4(A)に示す如く、吐出器を容器の長径側に向けたり、短径側に向けることができる。
【0032】
また図示はしないが、前記下側ストッパ面24と前記係合突起38の上面との一方に凸状の位置決め手段(例えば位置決め用凸部)を、他方に凹状の位置決め手段(例えば受穴)をそれぞれ設け、前記吐出ヘッド44が好適な向きに配向されたときに、凸状位置決め手段と凹状位置決め手段とが相互に嵌合するように形成してもよい。そのように構成する場合には、凸状位置決め手段又は凹状位置決め手段の一方を、周方向に離間して複数形成し、複数の場所で位置決めができるようにしてもよい。
凸状位置決め手段又は凹状位置決め手段が着脱する際にクリック感があり、位置を合わせ易くなる。もちろん、位置決め手段は、凸状同士で構成してもよい。
【0033】
前記構成において、
図1の状態では、吐出器は、前記係合突起38がストッパ突条12の上に在るロック状態であり、作動部材33を押し下げようとしても、押下げることができない。
しかし、係合突起38は、係合突起38の第1平坦部12aの上にあるので、作動部材33を中心軸О周りで回転させることはできる。
作動部材33を回転させることにより、
図2(A)に示す如く、ロック状態のままで吐出ヘッド44の向きを整えたり、或いはロック解除状態へ移行することができる。
図1(A)の状態から
図3(A)の如く、作動部材33を正方向B1へ大きく回転させると、
図2(C)に示す如く、係合突起38がストッパ突条12の第1平坦部12aの上側から抜止め用凸部22を乗り越え、ストッパ突条12の傾斜端面26に摺接した後に、切欠き14を通り、ストッパ突条12の第2平坦部12bの下側へ入る。これにより、作動部材33を自由に押し下げることができる。
なお、前述の係合突起38の移動により、吐出ヘッド44が僅かな距離(Δh)だけ下降するが、係合突起38の第1傾斜面40とストッパ突条12の傾斜端面26とで形成する案内手段(正方向案内手段C1)の作用により、回転力が押下げ力に変換されるだけであり、利用者が作動部材33を押し下げながら回転させる必要はない。
吐出器がロック解除状態に在るときでも、作動部材33を押し下げることなく、吐出ヘッド44の向きや使用範囲を自由に変更することができる。
【0034】
前記構成及び作用によれば、案内筒10の内面を周方向に延びるストッパ突条12の一部に、上方から見て作動部材33の係合突起38が通過可能な切欠き14を設けたから、吐出ヘッド44の押下げを可能としつつ、吐出ヘッド44の向きを調整することができる。
また、係合突起38を切欠き14側へ案内する正方向案内手段C1、逆方向案内手段C2を設けたから、作動部材33を回転させるだけで、ロック状態とロック解除状態との切り替えができる。
また、ストッパ突条12は、係合突起38との摺接可能な上側ストッパ面18及び下側ストッパ面24を有するから、吐出ヘッド44の向きを容易に調整できる。
また上側ストッパ面18からの係合突起38の脱落を制限する抜止め用凸部22を設けたから、不意にロック状態が解除されるリスクを低減できる。
【符号の説明】
【0035】
2…装着部材 4…装着キャップ 6…装着筒 7…メネジ部 8…内向きフランジ
10…案内筒 11…抜止め筒 12…ストッパ突条 12a…第1平坦部
12b…第2平坦部 13…傾斜壁部 14…切欠き 16…主仕切り突条
17…副仕切り突条 18…上側ストッパ面 20…制止段部(横向き段部)
22…抜止め用凸部 24…下側ストッパ面 26…傾斜端面
30…シリンダ 30a…小径シリンダ 30b…大径シリンダ 32…鍔部
33…作動部材 34…ポペット弁 35…ピストン 35a…液用ピストン
35b…エアピストン 36…筒状体(ステム) 36a…内筒部 36b…外筒部
36c…連結部 38…係合突起 39…ピストンガイド 40…第1傾斜面
42…第2傾斜面 44…吐出ヘッド 44a…天板 44b…大径周壁
44c…小径周壁 44d…中径周壁 44e…ノズル筒 46…吐出口
90…容器 92…口頸部 94…オネジ部
A1…ロック領域 A2…使用領域 A3…移行領域 B1…正方向 B2…逆方向
C1…正方向案内手段 C2…逆方向案内手段 DL…長径方向 DS…短径方向
e…境目 F…発泡部 j…立筒 L…ロック機構 О…中心線 R…回り止め手段
S1…片方側 S2…他方側