(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159152
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】劣化評価装置、劣化評価システム、劣化評価方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241031BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20241031BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20241031BHJP
F01D 21/00 20060101ALI20241031BHJP
F01D 21/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01N17/00
F01D25/00 W
F01D25/00 V
F01D21/00 U
F01D21/00 W
F01D21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074962
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮
【テーマコード(参考)】
2G024
2G050
3G071
【Fターム(参考)】
2G024AD06
2G024AD24
2G024BA12
2G024BA21
2G024BA27
2G024CA13
2G024CA21
2G024CA22
2G024DA09
2G024FA06
2G024FA15
2G050AA01
2G050BA06
2G050BA12
2G050EB01
2G050EB07
3G071BA26
3G071GA02
(57)【要約】
【課題】地熱発電タービン部材の表面劣化状態診断により寿命を把握することができる評価装置を提供する。
【解決手段】評価装置は、タービンの静翼の表面の色と形状を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得する計測データ取得部と、前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応に基づいて前記動翼に生じるピットの許容サイズを算出する許容ピットサイズ算出部と、前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生したピットのサイズと、前記許容サイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価する評価部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの静翼の表面の色と形状を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得する計測データ取得部と、
前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じる腐食ピットの許容サイズを算出する許容ピットサイズ算出部と、
前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容サイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価する評価部と、
を備える劣化評価装置。
【請求項2】
前記許容ピットサイズ算出部は、前記スケールの付着により狭まった静翼間の隙間量に基づいて前記励振力を算出し、前記励振力に基づいて前記動翼の振動応力を解析する、
請求項1に記載の劣化評価装置。
【請求項3】
前記許容ピットサイズ算出部は、前記振動応力と、応力および腐食ピットサイズに基づいて疲労き裂進展下限界の応力拡大係数範囲を算出する所定の計算式と、前記動翼について予め定められた前記応力拡大係数範囲の値とに基づいて、前記許容サイズを算出する、
請求項1又は請求項2に記載の劣化評価装置。
【請求項4】
前記許容ピットサイズ算出部は、前記振動応力の分布に基づいて区分された前記動翼の領域毎に前記許容サイズを算出する、
請求項1又は請求項2に記載の劣化評価装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記領域毎に前記許容サイズと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記領域毎の前記腐食ピットのサイズとを前記領域毎に比較して、何れかの前記領域で前記腐食ピットのサイズが前記許容サイズを上回っていれば、前記動翼は寿命を迎えたと評価する、
請求項4に記載の劣化評価装置。
【請求項6】
前記評価部は、前記領域毎に前記許容サイズと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記領域毎の前記腐食ピットのサイズとを前記領域毎に比較して、全ての前記領域で前記腐食ピットのサイズが前記許容サイズ以下であれば、前記動翼は寿命を迎えていないと評価する、
請求項4に記載の劣化評価装置。
【請求項7】
前記許容サイズと、所定時間経過後の腐食ピットのサイズを算出する所定の計算式または過去の計測結果を用いた補正式と、に基づいて、前記動翼に生じた前記腐食ピットのサイズが前記許容サイズに到達するまでの時間を予測する予測部と、
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の劣化評価装置。
【請求項8】
前記許容サイズと、所定時間経過後の腐食ピットのサイズを算出する所定の計算式または過去の計測結果を用いた補正式と、に基づいて、前記動翼に生じた前記腐食ピットのサイズが前記許容サイズに到達するまでの時間を予測する予測部と、
をさらに備える請求項6に記載の劣化評価装置。
【請求項9】
前記タービンの車室を開放せずに前記タービンの静翼および動翼の表面を計測する計測装置と、
請求項1又は請求項2に記載の劣化評価装置と、
を備える劣化評価システム。
【請求項10】
前記計測装置は、カメラ又は3次元計測器を備える、ボアスコープ、多関節ロボット、小型のロボットのうちの何れかを含む、
請求項9に記載の劣化評価システム。
【請求項11】
タービンの静翼の表面の色と形状を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得するステップと、
前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じる腐食ピットの許容サイズを算出するステップと、
前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容サイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価するステップと、
を有する劣化評価方法。
【請求項12】
前記タービンの車室を開放せずに前記静翼および前記動翼の表面を計測するステップ、をさらに有し、
前記取得するステップでは、前記計測するステップで計測した前記静翼計測データと前記動翼計測データとを取得する、
請求項11に記載の劣化評価方法。
【請求項13】
コンピュータに、
タービンの静翼の表面の色と形状を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得するステップと、
前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じる腐食ピットの許容サイズを算出するステップと、
前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容サイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地熱発電タービン部材表面の劣化評価装置、劣化評価システム、劣化評価方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地熱発電プラントでは、生産井を通じて地中から水蒸気を取り出し、取り出した水蒸気を蒸気タービンへ送って発電を行う。地熱蒸気・熱水に含まれる不純物が各種機器においてスケールの堆積や金属材料の腐食の原因となるため、表面の腐食ピット生成、腐食減肉、応力腐食割れ等の部品の劣化や、スケール付着による性能低下など、経年的な変化が生じる。また、地熱発電では、火力発電と比較して使用する蒸気のエンタルピーが低く、蒸気タービン入口でほぼ飽和蒸気であり、下流での湿り度も高くエロージョンが発生しやすい。従って、地熱発電プラントでは、地熱蒸気に対する前述の機器の経年変化を監視して、プラントの信頼性を確保する技術が重要である。これに対し、特許文献1には、地熱発電プラントの蒸気タービンに供給される蒸気に含まれるスケールを測定し、その測定結果に基づいて適切な量および種類のスケール抑制剤を噴霧する制御が開示されている。しかし、スケール抑制剤を噴霧することにより部品の寿命を延ばすことはできても、部材の損傷や性能低下を完全に防ぐことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地熱発電プラントを安定して運用するためには、事前に計画的に故障や性能低下への対策を講じることができるように、蒸気タービン部材表面の劣化状況を定量的に評価・監視できるようにする必要がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる劣化評価装置、劣化評価システム、劣化評価方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の劣化評価装置は、タービン部材の静翼や動翼などの表面状態の撮影・計測データを取得する計測データ取得部と、腐食ピット、エロージョン量、微小な亀裂長さ等の評価対象表面の劣化度合いを画像診断等により定量化し、劣化の進展速度を予測して取り替えまでの許容値に達するまでの寿命を算出する評価部と、を備える。
以降、タービン動翼表面の腐食ピット評価を例にした寿命評価システムについて述べるが、これに限られたものでなく、表面検査によりタービン部材の劣化を検出できる事象として、例えば水滴による低圧タービン動翼前縁やケーシングのエロージョン評価、タービンロータ表面の疲労き裂評価などへの適用が考えられる。
【0007】
本開示の劣化評価システムは、前記タービンの車室を開放せずに前記タービンの静翼および動翼の表面を計測する計測装置と、上記の評価装置とを備える。
【0008】
本開示の劣化評価方法は、タービンの静翼の表面を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得するステップと、前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じるピットの許容サイズを算出するステップと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容サイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価するステップと、を有する。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに、タービンの静翼の表面を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得するステップと、前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じる腐食ピットの許容サイズを算出するステップと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容ピットサイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価するステップと、実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の劣化評価装置、劣化評価システム、劣化評価方法及びプログラムによれば、蒸気タービン部材表面の劣化状態に基づいた取替寿命を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る地熱発電プラントの一例を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る動翼の腐食ピット生成に伴う寿命評価装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る静翼のスケール付着に伴う隙間状況の一例を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る動翼に生じる腐食ピットの成長によるき裂発生プロセスの模式図である。
【
図5】実施形態に係る動翼に生じる応力分布の解析結果の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る領域毎の許容ピットサイズと腐食ピットの計測結果の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る寿命評価処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る評価装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の評価装置について、
図1~
図8を参照して説明する。
(地熱発電プラントの構成)
図1は、実施形態に係る地熱発電プラントの一例を示す模式図である。地熱発電プラント100は、気水分離器1と、フラッシャー2と、蒸気タービン3と、発電機4と、復水器5と、冷却塔6と、評価装置10と、計測装置20と、を含む。気水分離器1は、生産井PWを通じて地中から汲み上げられた温水を蒸気と熱水に分離する。分離後の蒸気は蒸気タービン3へ送られ、分離後の熱水はフラッシャー2へ送られる。フラッシャー2は、気水分離器1から供給された熱水を減圧し、蒸気を発生させる。フラッシャー2にて発生した蒸気は蒸気タービン3へ送られ、残りの熱水は還元井JWを通じて地中へ戻される。蒸気タービン3は、静翼31と動翼32とロータ33を備えており、気水分離器1とフラッシャー2から供給された蒸気が静翼31と動翼32を交互に流れることにより、ロータ33が回転する。ロータ33に接続された発電機4は、ロータ33の回転により回転駆動し、発電する。ロータ33の回転に用いられた蒸気は蒸気タービン3が排出される。排出された蒸気は、復水器5にて冷却塔6から供給された冷却水で凝縮されて温水となり、冷却塔6へ送られる。冷却塔6へ送られた温水は、冷却塔6で冷却されて冷却水となり、復水器5へ送られる。
【0013】
評価装置10は、蒸気タービン3の運転停止時に、計測装置20を使って、静翼31、動翼32の状態を計測し、これらの計測結果に対する評価を組み合わせて、蒸気タービン3の寿命を評価する。一般に、静翼31や動翼32の状態評価は、定期点検などの蒸気タービンの車室を開放する機会に行われる。しかし、車室を開放する機会は限られているため状態評価の間隔が長期化すると、次に車室を開放する機会が来る前に故障が発生したり、車室開放時に重大な損傷が発見されて復旧に時間が掛かったりするようなことが起こり得る。これに対し、本実施形態では、蒸気タービン3の運転停止時に車室を開放せずに、蒸気タービン3のケーシングに設けられた静翼31の洗浄穴34やタービン最終段後方のマンホール穴などを利用して、計測装置20をケーシング内に挿入する。そして、計測装置20によって、静翼31や動翼32の表面の形状や色などを撮影・計測し、その撮影・計測結果に基づいて状態評価を行う。これにより、静翼31および動翼32の点検頻度を高くし、異常等の早期発見、状態評価の精度向上に結び付ける。計測装置20は、カメラや3次元計測器等のセンサ部を備え、車室を開放せずにセンサ部を車室内部へ挿入してモニタリングできる、例えば、ボアスコープ、多関節のアーム型ロボット、小型の検査ロボットなどの装置である。ボアスコープや検査ロボット等を制御して、センサ部を注目箇所へ接近させて、注目箇所の計測を行ってもよいし、カメラによって静翼31、動翼32の全周を撮影して定点カメラ画像を計測してもよい。本実施形態では、計測装置20を使って、静翼31や動翼32表面の様子を計測し、動翼32に発生した腐食ピットや静翼31に付着したスケールおよび翼と翼の隙間へのスケール付着の影響を計測する。
【0014】
図2に実施形態に係る評価装置10の機能構成の一例を示す。評価装置10は、計測装置20が計測した計測データに基づいて、静翼31や動翼32の状態評価を行い、それらの寿命を評価、予測する。図示するように、評価装置10は、計測データ取得部11と、入力受付部12と、制御部13と、出力部14と、記憶部15と、を備える。
計測データ取得部11は、計測装置20が計測した計測データ(例えば、画像データや3次元点群データなど)を取得する。
入力受付部12は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置を用いて入力された指示情報や設定情報などを受け付ける。
【0015】
制御部13は、蒸気タービン3の寿命を評価する処理を制御する。制御部13は、隙間量算出部131と、許容ピットサイズ算出部132と、ピットサイズ算出部133と、評価部134と、予測部135と、を備える。
【0016】
隙間量算出部131は、静翼31の翼間の隙間の大きさを算出する。隙間の大きさは、隙間を通過した蒸気等が動翼32に与える励振力と関係する。
図3に静翼31の模式図を示す。静翼31には所定の間隔で複数の翼311が配置されている。
図3に示す翼311の領域311aはスケールが付着している領域である。例えば、隙間量算出部131は、静翼31を撮影した画像データからパターンマッチング等によりスケールを検出し、スケールの付着量、翼311の隙間量を算出する。例えば、隙間量算出部131は、静翼31を撮影した画像データから静翼31の個々の翼311の形状を特定するための特徴点を数点決定し、3次元CADデータ上の当該特徴点との一致度の良い角度から画像の撮影角度を推定することにより、撮影画像上の各翼311間の隙間の大きさから
図3に模式的に示す最小隙間量312を算出する。
なお、スケールの付着量や隙間量は、別途、解析者が計測装置20による静翼31の寸法計測データを解析して算出してもよい。この場合、解析者は、解析結果の隙間量を評価装置10へ入力し、入力受付部12が、入力された隙間量を取得する。
【0017】
図4に腐食ピットを起点とした腐食疲労のプロセスを示す。腐食ピットが成長し限界寸法を超えると、き裂に遷移する限界ピット条件が破壊力学的に決まることが公知文献で示されている。この限界寸法を以後、許容ピットサイズと呼ぶ。許容ピットサイズ算出部132は、隙間量算出部131が算出した隙間量に基づいて動翼32に発生するピットサイズ(表面径)の限界値(許容ピットサイズ)を算出する。例えば、許容ピットサイズ算出部132は、隙間量算出部131が算出した隙間量から動翼32への励振力がどれぐらい増大するかを推定する。例えば、FEM(有限要素法)等による蒸気タービン3の物理モデルを用いた解析結果や、実機を用いた試験等の結果から、予め隙間量と励振力の関係を解析しておく。例えば、スケールが付着していない状態の隙間量を「1」、そのときの励振力を「1」とした場合に、スケールの付着により隙間量が0.9となると励振力がX
1倍となり、隙間量が0.8となると励振力がX
2倍となり、・・・、といった対応関係を予め解析しておく。許容ピットサイズ算出部132は、この対応関係と、励振力の初期値(スケールが付着していない状態での励振力であり、例えば、設計時に物理モデルを用いた解析により算出されている。)に基づいて、隙間量に応じた励振力を推定する。次に許容ピットサイズ算出部132は、動翼32の物理モデルを用いて、励振力を受けた動翼32が振動するときに加わる振動応力を算出する。
図5に動翼32に生じる応力分布の解析結果の一例を示す。
図5の出典元は、蒸気タ-ビン超長大最終翼群3600rpm-50IN/3000rpm-60IN の開発、福田 寿士 他、三菱重工技報 Vol.46 No.2 (2009)である。
図5に示す翼321は、動翼32を構成する複数の翼のうちの1つである。FEM等の物理モデルを使って、静応力や励振力から動翼に加わる振動応力を求める方法は、公知であり、応力分布の解析により、
図5に例示するような応力分布を色別に表示した解析結果を得ることができる。翼321の外周端付根付近の部位321aや、プラットフォーム付根付近の部位321bなどの曲面を有するR部には応力集中しやすく、その他の平坦な部位321cと比較して高応力となる。低応力の部位321cよりも、高応力の部位321aや部位321bの方が許容ピットサイズは小さくなり、翼の部位により許容ピットサイズは異なる。具体的には、翼321の応力分布に基づいて、許容ピットサイズ算出部132は、ピットを表面半だ円き裂としてモデル化した応力拡大係数範囲ΔKの算出式から、翼321に発生したピットがき裂に遷移する限界ピット条件(許容ピットサイズ)を算出する。応力拡大係数範囲ΔKは、以下の式(1)で算出されることが知られている。
【0018】
【0019】
ここでσaは動翼32に生じる応力であり、σaには応力解析結果を適用することができる。Qは形状係数、腐食ピットの表面径2c、深さa、αはピットのアスペクト比a/cである。また、腐食ピットからき裂進展に移行する下限界条件ΔKの値は、腐食環境に応じて実験や過去の経験から予め判明しており、上記の式(1)と応力解析結果と予め判明しているΔKから、ピットサイズcの限界値(許容ピットサイズ)を算出することができる。このとき、応力は翼321の部位によって異なることから、例えば、
図4に例示する領域ごと(例えば、領域1、領域2、・・・)に許容ピットサイズ(例えば、c
1、c
2)を算出する。なお、許容ピットサイズは、許容ピットサイズ算出部132が算出したピットサイズの限界値に所定のオフセット値を加えた値としてもよい。
【0020】
ピットサイズ算出部133は、動翼32の計測データから動翼32に生じたピットサイズ(表面径)を算出する。例えば、ピットサイズ算出部133は、動翼32を撮影した画像データからパターンマッチング等により、ピットを検出し、そのピットの直径を画像処理により算出する。ピットサイズ算出部133は、ピットが写った部分の色や形状などから、画像データに写るピットを検出し、その大きさ(直径)を算出する。あるいは、計測装置20が3次元計測器であって、計測データ取得部11がピットの3次元点群データを取得した場合、ピットサイズ算出部133は、3次元点群データからピットを検出し、検出したピットの最大径をピット径として算出してもよい。
なお、ピットサイズは、別途、解析者が計測装置20による動翼32の計測データを解析して算出してもよい。この場合、解析者は、解析結果のピットサイズを評価装置10へ入力し、入力受付部12が、入力されたピットサイズを取得する。
【0021】
評価部134は、許容ピットサイズ算出部132が算出した許容ピットサイズとピットサイズ算出部133が計測データに基づいて算出したピットサイズとを比較して、動翼32の寿命を評価する。例えば、算出したピットサイズの値が許容ピットサイズを上回っていれば、評価部134は、動翼32は取替寿命を迎えたと評価する。例えば、算出したピットサイズの値が許容ピットサイズ以下であれば、評価部134は、静翼31および動翼32は取替寿命を迎えておらず継続使用可能であると評価する。例えば、
図6に示すように、翼321の領域1、2の許容ピットサイズがそれぞれX1(mm),X3(mm)、ピットサイズ算出部133が算出した領域1、2に発生したピットサイズの最大値がそれぞれX2(mm)、X4(mm)のとき、X1<X2又はX3<X4であれば、評価部134は、動翼32は寿命を迎えたと評価する。X1>X2およびX3>X4であれば、評価部134は、動翼32は寿命を迎えていないと評価する。
【0022】
予測部135は、動翼32の寿命を予測する。例えば、
図4に示すピット成長の領域では、あるピットについてのピットサイズ2cの進展は次式(2)で計算することができる。
2c=Cp・t
β ・・・・(2)
なお、
図4の出典元は、腐食ピット成長に基づく腐食疲労き裂発生余寿命予測、近藤良之、日本機械学会論文集(A編)53巻495号(昭62-11)である。
【0023】
ここで2cは伸展後のピットサイズ、Cpは所定の係数、tは時間である。上記の式(2)に示すようにピットサイズ2cは、時間のβ乗に比例して大きくなり、例えばβは1/3乗で整理できる結果が公知文献に示されているが、より正確には本手法による評価対象部位のピットサイズ計測結果を蓄積してβの値を決定しても良い。(このようにして決定したβを用いた式(2)は過去の計測結果を用いた補正式の一例である。)予測部135は、許容ピットサイズ算出部132によって算出される許容ピットサイズと、式(2)とにより算出されるピットサイズにより、あるピットのピットサイズが許容ピットサイズに成長するまでに要する時間を算出する。例えば、
図6に示すように、予測部135は、翼321の領域1に発生したピットの現在のピットサイズX2と、許容ピットサイズX1と、式(2)により、現在のピットサイズX2(mm)がX1(mm)に至るまでの時間である残寿命Y1(h)を算出する。同様に、予測部135は、領域2に発生したピットの現在のピットサイズX4と、許容ピットサイズX3と、式(2)により、残寿命Y2(h)を算出する。そして、予測部135は、Y1(h)とY2(h)のうち短い方を、評価対象の翼321の残寿命として算出する。
【0024】
出力部14は、計測データ取得部11が取得した画像データ、隙間量算出部131が算出した翼311ごとのスケールの付着量および隙間量、許容ピットサイズ算出部132が算出した領域ごとの許容ピットサイズ、評価部134による評価結果、予測部135が予測した残寿命などを表示装置や電子ファイルへ出力する。
記憶部15は、計測データ取得部11や入力受付部12が取得した各種データ、寿命評価処理中の各種データ、領域毎の応力拡大係数範囲ΔKの値などを記憶する。
【0025】
(動作)
次に
図7を参照して、寿命評価処理の手順の一例について説明する。
図7は、実施形態に係る寿命評価処理の一例を示すフローチャートである。
まず、計測データ取得部11が、静翼31および動翼32の計測データを取得する(ステップS11)。計測データには、静翼31および動翼32の1周分の計測結果が含まれていてもよいし、全周のうちの一部分の計測結果のみが含まれていてもよい。以下のステップS12~ステップS17、ステップS20の処理は、取得された計測結果の全てについて実行されてもよいし、一部についてのみ(例えば最もクリティカルな計測結果)実行されてもよい。計測データ取得部11は、取得した計測データを記憶部15に記録する。
【0026】
次にユーザが、寿命評価処理の実行を評価装置10へ指示すると、入力受付部12がこの指示情報を取得し、制御部13に寿命評価処理の開始を指示する。すると、隙間量算出部131が、静翼31の隙間量を算出する(ステップS12)。例えば、隙間量算出部131は、ステップS11で取得された計測データに基づいて、翼311出口の背側と腹側の隙間312を撮影した画像データと、翼311の3次元CADデータとを活用して隙間量を算出する。隙間量算出部131は、算出した隙間量を記憶部15に記録する。次に許容ピットサイズ算出部132が、励振力を算出する(ステップS13)。許容ピットサイズ算出部132は、ステップS12で算出された隙間量に基づいて、スケール付着により隙間量が狭くなった影響で、動翼32に生じる励振力がどの程度増大するかを評価する。例えば、許容ピットサイズ算出部132は、静翼31と動翼32の3次元モデルに基づく動的解析により励振力を解析する。あるいは、隙間量と励振力を対応付けたデータを蓄積しておき、隙間量を入力すると励振力を出力するモデルを機械学習などにより構築する。そして、許容ピットサイズ算出部132は、ステップS12で算出された隙間量と予め構築された学習済みモデルに基づいて、励振力を算出してもよい。次に許容ピットサイズ算出部132は、動翼の振動応力を推定する(ステップS14)。例えば、許容ピットサイズ算出部132は、動翼32の3次元モデルに基づいて、ステップS14で評価した励振力を与えたときの動翼32の振動応力解析を行い、動翼32を構成する翼321に生じる応力を算出する。次に、許容ピットサイズ算出部132は、ステップS14で推定した振動応力と、腐食ピットからき裂進展に移行する下限界応力拡大係数範囲ΔKの既知の値と、上記した式(1)により、許容ピットサイズを算出する(ステップS15)。許容ピットサイズ算出部132は、翼321の領域毎(
図5の領域1、領域2など)に許容ピットサイズを算出してもよい。許容ピットサイズ算出部132は、算出した許容ピットサイズを記憶部15に記録する。
【0027】
ステップS12~ステップS15の処理と並行して、ピットサイズ算出部133は、動翼32表面の腐食ピットサイズを算出する(ステップS16)。ピットサイズ算出部133は、ステップS11で取得した計測データから動翼32に発生したピットを検出し、そのピットサイズを算出する。ピットサイズ算出部133は、翼321の領域毎(
図4の領域1、領域2など)に最大ピットサイズを算出してもよい。ピットサイズ算出部133は、算出したピットサイズを記憶部15に記録する。
【0028】
次に評価部134が、ステップS16で算出されたピットサイズが許容ピットサイズ以下かどうかを判定する(ステップS17)。領域毎に許容ピットサイズが算出された場合、評価部134は、領域毎にこの判定を行い、一つでもステップS16で算出されたピットサイズが許容ピットサイズ以下でない領域が存在すれば、算出されたピットサイズは許容ピットサイズ以下ではないと判定する。評価部134が、算出されたピットサイズは許容ピットサイズ以下ではないと判定すると(ステップS17;No)、出力部14は、静翼31や動翼32の交換等を推奨する情報を出力する(ステップS18)。翼321に生じたピットのサイズが許容ピットサイズを上回っていれば、その翼321にき裂が発生・進展し、故障する可能性がある。従って、出力部14は、動翼32の交換を推奨するメッセージ等を表示装置へ出力したり、他装置へ通知したりする。また、動翼32を故障に導くような励振力を発生させる程スケールが付着している静翼31についても洗浄等のメンテナンスが必要であると考えられる。従って、出力部14は、静翼31の交換等を推奨するメッセージの出力、通知などを行う。地熱発電プラント100を運用する事業者は、この出力を参照して、車室開放してき裂の有無を確認する詳細点検や、静翼31や動翼32の交換を検討する。
【0029】
評価部134が、算出されたピットサイズは許容ピットサイズ以下であると判定すると(ステップS17;Yes)、出力部14は、静翼31や動翼32は継続使用可能である旨の情報を出力する(ステップS19)。出力部14は、動翼32に生じたピットのピットサイズは許容ピットサイズ以下であって、継続使用可能であることを含むメッセージ等を表示装置へ出力したり、他装置へ通知したりする。また、予測部135は、許容ピットサイズと、現在のピットサイズと、上記した式(2)により、翼321に発生しているピットのピットサイズが許容ピットサイズに到達するまでの時間(残寿命)を算出する(ステップS20)。より正確には、本手法による評価対象部位のピットサイズ計測結果を蓄積して、式(2)の補正を行っても良い(過去の計測結果を用いた補正式)。予測部135は、算出した残寿命を記憶部15に記録する。次に出力部14が、予測部135によって予測された残寿命を出力する(ステップS21)。このとき、出力部14は、残寿命と共に、寿命を延長できる対策を提案してもよい。例えば、出力部14は、スケール付着防止コーティングの実施、ノズル洗浄(静翼31の洗浄)の実施、スケール抑制剤噴霧などの水質管理の実施を提案する情報を出力してもよい。
【0030】
(効果)
地熱発電プラント100の蒸気タービン3では、地熱蒸気・熱水に含まれる不純物の影響によって、一般的な火力発電等の場合などと比べて、スケール付着や金属材料の腐食などによる劣化や性能低下など、経年的な変化が生じやすい。これに対し、本実施形態によれば、静翼31へのスケール付着による影響を考慮した動翼32の状態評価(ステップS17)や寿命予測(ステップS20)を行う。これにより、厳しい腐食環境下で運転する蒸気タービン3の正確な状態評価が可能になり、故障発生前に動翼32の残寿命を把握できる可能性が高まる。また、一般的に静翼31や動翼32の状態評価は、車室開を伴う点検時の点検結果に基づいて実施される。しかし、車室開放を伴う点検は、プラントの運転停止や点検コストが必要となる為、次の点検までの期間を延長する傾向にあり、それまでの間に故障が発生するリスクが高まる。これに対し、本実施形態によれば、車室開放を伴わない簡易検査や蒸気タービン3の運転停止時を利用して、計測装置20を車室内に挿入して静翼31と動翼32の短期間の表面を計測することにより、静翼31や動翼32の劣化状態を評価することができる。評価頻度を高くすることで、静翼31や動翼32の変化や異常に早く気づくことができ、また、状態評価や寿命予測の精度を向上することができる。
【0031】
図8は、実施形態に係る評価装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
評価装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0032】
なお、評価装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0033】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0034】
<付記>
各実施形態に記載の劣化評価装置、劣化評価システム、劣化評価方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0035】
(1)第1の態様に係る劣化評価装置は、タービンの静翼の表面の色と形状を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得する計測データ取得部と、前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じる腐食ピットの許容サイズを算出する許容ピットサイズ算出部と、前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容サイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価する評価部と、を備える。
これにより、静翼と動翼のモニタリング結果に基づいて、動翼の寿命を評価することができる。
【0036】
(2)第2の態様に係る劣化評価装置は、(1)の劣化評価装置であって、前記許容ピットサイズ算出部は、前記スケールの付着により狭まった静翼間の隙間量に基づいて前記励振力を算出し、前記励振力に基づいて前記動翼の振動応力を解析する。
静翼にスケールが付着すると、翼間の隙間が狭まり動翼に加わる励振力が増大する。第2の態様によれば、この増大分を考慮して動翼の寿命を評価することができる。
【0037】
(3)第3の態様に係る劣化評価装置は、(1)~(2)の劣化評価装置であって、前記許容ピットサイズ算出部は、前記振動応力と、応力および腐食ピットサイズに基づいて疲労き裂進展下限界の応力拡大係数範囲を算出する所定の計算式と、前記動翼について定められた前記応力拡大係数範囲の値とに基づいて、前記許容サイズを算出する。
これにより、動翼の寿命評価に必要な許容サイズを算出することができる。
【0038】
(4)第4の態様に係る劣化評価装置は、(1)~(3)の劣化評価装置であって、前記許容ピットサイズ算出部は、前記振動応力の分布に基づいて区分された前記動翼の領域毎に前記許容サイズを算出する。
動翼は領域によって応力が異なる。第3の態様によれば、応力分布に応じた許容サイズを算出することができる。
【0039】
(5)第5の態様に係る劣化評価装置は、(1)~(4)の劣化評価装置であって、前記評価部は、前記領域毎に前記許容サイズと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記領域毎の前記腐食ピットのサイズとを前記領域毎に比較して、何れかの前記領域で前記腐食ピットのサイズが前記許容サイズを上回っていれば、前記動翼は寿命を迎えたと評価する。
これにより、動翼が寿命を迎えたかどうかを判定することができる。
【0040】
(6)第6の態様に係る劣化評価装置は、(1)~(5)の劣化評価装置であって、前記評価部は、前記領域毎に前記許容サイズと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記領域毎の前記腐食ピットのサイズとを前記領域毎に比較して、全ての前記領域で前記腐食ピットのサイズが前記許容サイズ以下であれば、前記動翼は寿命を迎えていないと評価する。
これにより、動翼が継続使用可能かどうかを判定することができる。
【0041】
(7)第7の態様に係る劣化評価装置は、(1)~(6)の劣化評価装置であって、前記許容サイズと、所定時間経過後の腐食ピットのサイズを算出する所定の計算式または過去の計測結果を用いた補正式と、に基づいて、前記動翼に生じた前記腐食ピットのサイズが前記許容サイズに到達するまでの時間を予測する予測部と、をさらに備える。
これにより、動翼の寿命を予測することができる。
【0042】
(8)第8の態様に係る劣化評価システムは、前記タービンの車室を開放せずに前記タービンの静翼および動翼の表面を計測する計測装置と、(1)~(7)の何れかに記載の評価装置と、を備える。
これにより、車室を開放せずに、動翼の寿命評価を行うことができる。
【0043】
(9)第9の態様に係る劣化評価システムは、(8)の劣化評価システムであって、前記計測装置は、カメラ又は3次元計測器を備える、ボアスコープ、多関節ロボット、小型のロボットのうちの何れかを含む。
これらの計測装置を活用することにより、車室を開放すること無く、車室内部を計測することができる。
【0044】
(10)第10の態様に係る劣化評価方法は、タービンの静翼の表面の色と形状を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得するステップと、前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じる腐食ピットの許容サイズを算出するステップと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容サイズとに基づいて、前記動翼の寿命を評価するステップと、を有する。
【0045】
(11)第11の態様に係る劣化評価方法は、(10)の劣化評価方法であって、前記タービンの車室を開放せずに前記静翼および前記動翼の表面を計測するステップ、をさらに有し、前記取得するステップでは、前記計測するステップで計測した前記静翼計測データと前記動翼計測データとを取得する。
これにより、車室を開放せずとも動翼の寿命評価を行うことができる。
【0046】
(12)第12の態様に係るプログラムは、コンピュータに、タービンの静翼の表面の色と形状を計測した静翼計測データと、前記タービンの動翼の表面を計測した動翼計測データと、を取得するステップと、前記静翼計測データに基づいて、前記静翼に付着したスケールの影響を考慮した前記動翼へ加わる励振力を算出し、前記励振力によって生じる前記動翼の振動応力を算出し、前記振動応力に基づいて前記動翼に生じる腐食ピットの許容サイズを算出するステップと、前記動翼計測データに基づいて算出された前記動翼に発生した腐食ピットのサイズと、前記許容サイズと、に基づいて、前記動翼の寿命を評価するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0047】
100・・・地熱発電プラント
1・・・気水分離器
2・・・フラッシャー
3・・・蒸気タービン
10・・・評価装置
11・・・計測データ取得部
12・・・入力受付部
13・・・制御部
131・・・隙間量算出部
132・・・許容ピットサイズ算出部
133・・・ピットサイズ算出部
134・・・評価部
135・・・予測部
14・・・出力部
15・・・記憶部
20・・・計測装置
31・・・静翼
32・・・動翼
33・・・ロータ
34・・・洗浄穴
4・・・発電機
5・・・復水器
6・・・冷却塔
JW・・・還元井
PW・・・生産井
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース