(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159154
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】耐水性高圧耐火ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/295 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01B7/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074967
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】505399236
【氏名又は名称】株式会社フジクラ・ダイヤケーブル
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】松林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】片山 英治
【テーマコード(参考)】
5G315
【Fターム(参考)】
5G315CA01
5G315CB01
5G315CC01
5G315CD11
(57)【要約】
【課題】耐火層のマイカの剥離を防ぎ耐火性能の向上させること、および遮水層による絶縁性能の低下を防ぐことが可能な耐水性高圧耐火ケーブルを提供する。
【解決手段】耐水性高圧耐火ケーブルは、導体2と、前記導体の外側にある耐火層3と、前記耐火層の外側にある絶縁体4と、前記絶縁体の外側にある半導電層5と、前記半導電層の外側にある遮蔽層6と、前記遮蔽層の外側にある遮水層8と、前記遮水層の外側にあるシース9と、を備え、前記耐火層は前記導体に巻き付けられた複数の重ねられたマイカテープを有し、前記マイカテープはそれぞれ、基材と、マイカ層と、前記基材および前記マイカ層を接着する接着層と、を有し、前記接着層は、前記基材と前記マイカ層との間にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体の外側にある耐火層と、
前記耐火層の外側にある絶縁体と、
前記絶縁体の外側にある半導電層と、
前記半導電層の外側にある遮蔽層と、
前記遮蔽層の外側にある遮水層と、
前記遮水層の外側にあるシースと、を備え、
前記耐火層は前記導体に巻き付けられた複数の重ねられたマイカテープを有し、
前記マイカテープはそれぞれ、基材と、マイカ層と、前記基材および前記マイカ層を接着する接着層と、を有し、
前記接着層は、前記基材と前記マイカ層との間にある、耐水性高圧耐火ケーブル。
【請求項2】
前記遮蔽層と前記遮水層との間に、金属化テープ層をさらに備え、
前記金属化テープ層は、ベーステープと金属箔とをそれぞれ有する一対の金属化テープを含み、
一対の前記金属化テープは、前記金属箔同士を向き合わせ、かつ一部重ねた状態で前記遮蔽層の外側にラップ巻きされている、請求項1に記載の耐水性高圧耐火ケーブル。
【請求項3】
前記遮蔽層と前記遮水層との間に、半導電テープをさらに備える、請求項1に記載の耐水性高圧耐火ケーブル。
【請求項4】
前記遮水層は、金属層と前記金属層の径方向外側に設けられた接着剤層とを有する金属テープを備え、
前記金属テープの厚さは0.175mm以上0.25mm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の耐水性高圧耐火ケーブル。
【請求項5】
消防法告示第10号に要求される耐火性能及び難燃性能を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の耐水性高圧耐火ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性高圧耐火ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧耐火ケーブルでは、火災等による延焼を防ぐため消防法によって定められた耐火特性が要求される。特許文献1では、ガラスマイカテープおよびフィルムマイカテープを含む耐火テープを導体の上に巻き付けた高圧耐火ケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧耐火ケーブルでは、高難燃性を付与するためシース材料に難燃剤が配合される場合がある。難燃剤を高い割合で配合すると、シースを介してケーブルの内部へ水分が浸透しやすくなる。このため、ケーブルが水の影響する環境下に配置された際にケーブル内部に水分が浸透し、水トリーの発生や金属テープの腐食による地絡を招く可能性がある。
また、水の進入を防ぐために高圧耐火ケーブルに遮水層を設けただけでは、耐火試験における加熱後の絶縁性能を満足しない可能性がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、耐火層のマイカの剥離を防ぎ耐火性能の向上させること、および遮水層による絶縁性能の低下を防ぐことが可能な耐水性高圧耐火ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様1は、導体と、前記導体の外側にある耐火層と、前記耐火層の外側にある絶縁体と、前記絶縁体の外側にある半導電層と、前記半導電層の外側にある遮蔽層と、前記遮蔽層の外側にある遮水層と、前記遮水層の外側にあるシースと、を備え、前記耐火層は前記導体に巻き付けられた複数の重ねられたマイカテープを有し、前記マイカテープはそれぞれ、基材と、マイカ層と、前記基材および前記マイカ層を接着する接着層と、を有し、前記接着層は、前記基材と前記マイカ層との間にある、耐水性高圧耐火ケーブルである。
【0007】
この構成により、耐火層のマイカ層におけるマイカの剥離を防ぎ耐火性能の向上させること、および遮水層により耐水性能を向上させつつ絶縁性能の低下を防ぐことが可能となる。
【0008】
また、本発明の態様2は、態様1の耐水性高圧耐火ケーブルにおいて、前記遮蔽層と前記遮水層との間に、金属化テープ層をさらに備え、前記金属化テープ層は、ベーステープと金属箔とをそれぞれ有する一対の金属化テープを含み、一対の前記金属化テープは、前記金属箔同士を向き合わせ、かつ一部重ねた状態で前記遮蔽層の外側にラップ巻きされている、耐水性高圧耐火ケーブルである。
【0009】
また、本発明の態様3は、態様1または態様2の耐水性高圧耐火ケーブルにおいて、前記遮蔽層と前記遮水層との間に、半導電テープをさらに備える、耐水性高圧耐火ケーブルである。
である。
【0010】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの耐水性高圧耐火ケーブルにおいて、前記遮水層は、金属層と前記金属層の径方向外側に設けられた接着剤層とを有する金属テープを備え、前記金属テープの厚さは0.175mm以上0.25mm以下である、耐水性高圧耐火ケーブルである。
【0011】
また、本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの耐水性高圧耐火ケーブルにおいて、消防法告示第10号に要求される耐火性能及び難燃性能を有する、耐水性高圧耐火ケーブルある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、耐火層のマイカの剥離を防ぎ耐火性能の向上させること、および遮水層による絶縁性能の低下を防ぐことが可能な耐水性高圧耐火ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る耐水性高圧耐火ケーブルの横断面図である。
【
図4】遮蔽層、金属化テープ層、および遮水層の構造を説明するための耐水性高圧耐火ケーブルの一部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態の耐水性高圧耐火ケーブル100の構成を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の耐水性高圧耐火ケーブル100は、導体2と、耐火層3と、絶縁体4と、半導電層5と、遮蔽層6と、金属化テープ層7と、遮水層8と、シース9と、を有し、導体2を中心として、各層がこの順で内側から配置されている。
耐火層3、絶縁体4、半導電層5、遮蔽層6、金属化テープ層7、遮水層8、およびシース9は、それぞれ導体2に対して同軸に形成されている。
【0015】
(方向定義)
本実施形態では、耐水性高圧耐火ケーブル100の中心軸線をケーブル中心軸Oという。また、耐水性高圧耐火ケーブル100の長手方向を単に長手方向という。長手方向に直交する断面(ケーブル中心軸Oに直交する断面)を横断面といい、長手方向に沿う断面を縦断面という。横断面視(
図1)において、ケーブル中心軸Oに交差する方向を径方向といい、ケーブル中心軸O周りに周回する方向を周方向という。
【0016】
導体2は、銅などの金属により形成されている。横断面において、導体2の断面形状は、例えば、円形状である。導体2は、複数の導体の細線を撚り合わせることで形成された撚線であってもよい。
【0017】
耐火層3は、複数のマイカテープ30を導体2に巻き付けることで形成されている。
図2に示すように、マイカテープ30は、基材31と、マイカ層32と、基材31およびマイカ層32を接着する接着層33を備える。基材31として、ガラスクロス、樹脂フィルム(例えば、PETフィルム)等が挙げられる。マイカ層32は、軟質集成マイカ等である。接着層33は、シリコーン接着剤等である。
【0018】
耐火層3は、導体2に巻き付けられた複数の重ねられたマイカテープ30を有する。耐火層3は、複数のマイカテープ30が、複数層に重ねられることで形成されている。本実施形態では、6層または7層のマイカテープ30の層(以降、テープ層と呼ぶ。)により耐火層3は形成されている。
より詳しくは、複数のテープ層のうち、径方向において最も内側に配置される最内テープ層は、導体2の外周面にらせん状に巻き付けられたマイカテープ30により形成される。
最内テープ層では、マイカテープ30を導体2の外周面にらせん状に巻いた隙間から導体2が露出しないよう、マイカテープ30がラップ巻きされる。ここで、「ラップ巻き」とは、帯状のテープの幅方向の端部同士が重なるようにらせん状に円筒体に巻き付ける方法である。
マイカテープ30同士の重なり幅は、例えば、テープ幅の1/2、またはテープ幅の1/3等である。
最内テープ層の上に、最内テープ層が露出しないよう、さらにマイカテープ30をラップ巻きし、第2テープ層を形成する。以降、同様の手順でテープ層を積層していき、所定の層数のテープ層を形成する。
【0019】
各テープ層における、ラップ巻きの重なり幅、らせん巻き付け方向、およびマイカテープ30の上下面の向きは同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、耐火層3に含まれるテープ層の数は6層または7層に限定されず、1~5層であってもよいし、8層以上であってもよい。
【0020】
マイカテープ30は、基材31の第1表面31aに接着層33を塗布し、その上にマイカ層32を積層させることで形成されている。
従来のマイカテープでは、ガラスクロスの第1表面の上にマイカ層を積層し、ガラスクロスの第2表面から接着剤を毛管力により第1表面側へ吸い上げ、ガラスクロスの第1表面とマイカ層とを接着させていた。この場合、ガラスクロスの第2表面に接着剤が残留し、耐火層において、ガラスクロスの第2表面と、当該第2表面に積層された他のマイカテープのマイカ層とが接着する場合があった。これにより、ケーブルを曲げた時にマイカ層の剥離が生じやすくなり、耐火層の耐火性能が下がる可能性があった。
【0021】
本実施形態のマイカテープ30は、基材31の第2表面31bには接着層33が露出していない。このため、従来のマイカテープにおいて生じていた、マイカテープの表面に露出した接着剤と当該接着剤の上に重ね合わされた他のマイカテープのマイカとが接着してマイカが剥離する現象を防ぐことが可能となる。また、本実施形態のマイカテープ30は、マイカテープ30のマイカ層32が設けられている面にも接着層33が露出していない。このため、本実施形態では、耐火層3に含まれる各テープ層同士の間、および各テープ層でラップ巻きされて重ね合わされたマイカテープ30同士の間において、マイカの剥離を防止することができるので、耐火性能を向上できる。
なお、マイカテープ30の構成は、上述の構成に限られず、耐火層3におけるマイカの剥離を防止できる構成であればよい。例えば、基材31の第2表面31bに微量に接着層33が存在する場合でも、微量に存在する接着層33による接着力がマイカ層32のマイカの剥離に必要な力よりも弱くなっていればよい。また、積層されたマイカテープ30同士の間に、接着を防止するためのパウダーやフィルム等を配置してもよい。
【0022】
絶縁体4は、耐火層3を径方向外側から覆っている。絶縁体4は、円筒状に形成された樹脂である。絶縁体4を構成する樹脂としては、架橋ポリエチレン、発泡ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0023】
半導電層5は、絶縁体4を径方向外側から覆っている。半導電層5は、例えば、半導電性を有するテープを絶縁体4の外周面にラップ巻きすることで形成されている。なお、半導電層5は、半導電性を有するテープを絶縁体4の外周面に縦添えされることで形成されていてもよい。ここで、縦添えとは、帯状のテープの延びる方向がケーブル中心軸Oと平行に配置された状態で、テープの幅方向の両端部が互いに重なるように円筒体を包む方法である。
【0024】
遮蔽層6は、半導電層5を径方向外側から覆っている。遮蔽層6は、例えば、軟銅テープを半導電層5の外周面に縦添えまたはラップ巻きすることで形成されている。
【0025】
金属化テープ層7は、一対の金属化テープ70pを備える層であり、遮蔽層6を径方向外側から覆っている。一対の金属化テープ70pは、第1金属化テープ70aと、第2金属化テープ70bとを含む。以下の説明において、第1金属化テープ70aと第2金属化テープ70bとで共通する構成を説明する際に、第1金属化テープ70aと第2金属化テープ70bとをまとめて、単に金属化テープ70とも称する。
図3に示すように、金属化テープ70は、ベーステープ71と、ベーステープ71上に設けられた金属箔72を備える。ベーステープ71の材質としては、加工紙を含む紙、またはポリエステル、ポリエチレン、ナイロンおよびPET等のプラスチックが挙げられる。金属箔72の材質としては、アルミ、及び銅などが挙げられる。
【0026】
図4は、耐水性高圧耐火ケーブル100の一部の縦断面図である。
図4に示すように、金属化テープ層7は、一対の金属化テープ70pが遮蔽層6の外周面にらせん状に巻かれることで形成されている。
一対の金属化テープ70pにおいて、第1金属化テープ70aおよび第2金属化テープ70bは、それぞれ幅方向の一部において重なるように配置されている。この重なる部分においては、第1金属化テープ70aが、第2金属化テープ70bよりも径方向内側に位置しており、第1金属化テープ70aおよび第2金属化テープ70bの金属箔72同士が接触している。径方向で、第1金属化テープ70aおよび第2金属化テープ70bの金属箔72同士が接触する箇所を、金属積層部70mとする。
さらに、
図4に示す縦断面図において、遮蔽層6にらせん状に巻き付けられた一対の金属化テープ70pのうち、長手方向で隣り合う部分を第1部分70p1および第2部分70p2とする。金属化テープ層7を形成する際には、第1部分70p1が遮蔽層6上に巻き付けられた後、第1部分70p1に含まれる第2金属化テープ70bの一部に、第2部分70p2の第1金属化テープ70aの一部が重なるようにラップ巻きされることになる。この際、第1部分70p1の金属積層部70mと、第2部分70p2の金属積層部70mとが長手方向で重ならないようにラップ巻きされる。
【0027】
これにより、一対の金属化テープ70pにおいて、第1金属化テープ70aの金属箔72の一部が遮水層8に接触する第1接触部70fと、第2金属化テープ70bの金属箔72の一部が遮蔽層6に接触する第2接触部70sと、が設けられる。第1接触部70fと第2接触部70sとは、長手方向において金属積層部70mを挟んで設けられている。長手方向において、第1接触部70fおよび第2接触部70sと重なる領域では、第1金属化テープ70aおよび第2金属化テープ70bのベーステープ71同士が接触している。
これにより、遮蔽層6と遮水層8とは、一対の金属化テープ70pの金属箔72を介して電気的に接続可能な状態にできる。例えば、
図4の矢印Eで示すように、遮水層8から、一対の金属化テープ70pの第1接触部70f、金属積層部70m、および第2接触部70sを介して遮蔽層6へ電気を流すことが可能となる。これにより、耐水性高圧耐火ケーブル100において遮蔽層6を接地した場合には、金属化テープ層7を介して遮水層8も接地した状態にすることができる。
【0028】
なお、金属化テープ層7に替えて、遮蔽層6を径方向外側から覆う半導電テープ層(不図示)を遮蔽層6と遮水層8との間に設けてもよい。これにより、金属化テープ層7を配置した時と同様、遮蔽層6と遮水層8とは、半導電テープ層を介して電気的に接続可能な状態にできる。
【0029】
遮水層8は、金属化テープ層7を径方向外側から覆っている。
図4に示すように、遮水層8は、金属層81と接着剤層82とを有する金属テープ80を、金属化テープ層7の外周面に縦添えすることで形成されている。なお、遮水層8は、金属テープ80を、金属化テープ層7の外周面にラップ巻きすることで形成されていてもよい。金属層81の材質としては、アルミ、及び銅などが挙げられる。接着剤層82としては、例えば熱硬化型やホットメルト型の接着剤等が挙げられる。
遮水層8において、金属テープ80は、金属層81が径方向内側を向き、接着剤層82が径方向外側を向くように配置されている。これにより、遮水層8は接着剤層82によってシース9と接着される。
【0030】
金属テープ80の厚さは、0.175mm以上0.25mm以下が好ましい。ここで、金属テープ80の厚さとは、金属層81と接着剤層82との合計の厚さである。
金属テープ80の厚さは、耐水性高圧耐火ケーブル100に求められる各種特性を満たすように調整されてもよい。例えば、難燃剤を添加したシース9では、添加した難燃剤により内部に水分が浸透しやすくなる場合があるが、金属テープ80の厚さを適切な厚さすることで所望の防水性能を付与することができる。また、金属テープ80の厚さを適切な厚さとすることで、ケーブル製造時等に金属層81に裂け目が生じることや接着剤層82とシース9との接着不良を防ぎ、耐水性高圧耐火ケーブル100の全長に亘って安定した耐水性を付与することができる。
その他にも、耐水性高圧耐火ケーブル100の曲げに対する強度や、遮蔽層6と金属化テープ層7と遮水層8とを含む構成の合成抵抗を所望の範囲にするため、金属テープ80の厚さを調整してもよい。
また、詳細は後述するが、金属テープ80の厚さを0.25mm以下とすることで、耐火試験における絶縁性の低下を防ぐことができる。
【0031】
シース9は、遮水層8を径方向外側から覆っている。シース9は、円筒状に形成された樹脂である。シース9の材質として、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂に難燃剤を添加した難燃性樹脂が挙げられる。なお、シース9の材質は、絶縁体4に用いられる樹脂と同様の樹脂であってもよい。
【0032】
ここで、耐火試験における絶縁性の低下が起こる原因を説明する。
耐火試験では、火炎が耐水性高圧耐火ケーブル100に当てられる。金属テープ80が過度に厚いと、火炎による遮水層8の崩壊が起こりにくく、遮水層8により覆われた内部の各層が、いわゆる「蒸し焼き状態」にされる。蒸し焼き状態とは、遮水層8によって遮水層8の内部と外部との間で気体等の流通が遮られており、火炎の熱によって遮水層8よりも内部の構成が変化して生じた生成物が外部に放出されず、また遮水層8の外部の空気等が遮水層8の内部に流入しにくくなる状態を呼ぶ。
例えば、遮水層8よりも内部の構成において火炎の熱によりガスが発生するが、遮水層8が崩壊しない場合には、このガスが遮水層8の内部に滞留し続け、かつ、遮水層8の外側からの酸素の供給もされにくくなる。この場合、遮水層8よりも内部に設けられる有機物が不完全燃焼し、導電性を有するカーボンが生じる。粉末状となったカーボンが導体2の近傍に侵入すると、絶縁性能が低下する可能性がある。また、火炎により遮水層8よりも内部で発生したガスが可燃性のガスである場合には、ケーブルの燃焼を継続させる要因ともなる。
【0033】
対して、金属テープ80の厚さが0.25mm以下であると、耐火試験の火炎により遮水層8の崩壊が起こりやすくなり、火炎の熱により発生するガスを遮水層8よりも外側に放出させることができる。また、遮水層8の崩壊した隙間から酸素がケーブルの内部に侵入するため、不完全燃焼を防ぎカーボンの生成が起こりにくくなる。このため、絶縁性能の低下を防ぐことができる。さらに、遮水層8が火炎により崩壊すると、遮水層8と一緒にシース9等の可燃物もケーブルから脱落するため、可燃物がケーブルの周囲に残ることによるケーブルの燃焼の継続を防ぐことができる。
このように、金属テープ80の厚さを調整することで、耐火試験における絶縁性能の低下を防ぐとともに、難燃性能も向上することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の耐水性高圧耐火ケーブル100は、導体2と、導体2の外側にある耐火層3と、耐火層3の外側にある絶縁体4と、絶縁体4の外側にある半導電層5と、半導電層5の外側にある遮蔽層6と、遮蔽層6の外側にある遮水層8と、遮水層8の外側にあるシース9と、を備え、耐火層3は導体2に巻き付けられた複数の重ねられたマイカテープ30を有し、マイカテープ30はそれぞれ、基材31と、マイカ層32と、基材31およびマイカ層32を接着する接着層33と、を有し、接着層33は、基材31とマイカ層32との間にある。
【0035】
本実施形態の耐水性高圧耐火ケーブル100は、遮水層8を有するため、耐水性を向上させることができる。例えば、シース9に難燃剤を添加した場合であっても、所望の耐水性を有する耐水性高圧耐火ケーブル100とすることができる。
加えて、マイカテープ30の接着層33が基材31とマイカ層32との間にあることで、耐火層3のマイカ層32におけるマイカの剥離を防ぎ、耐火性能を向上させるが可能となる。なお、遮水層8を設けたことにより耐火試験時にケーブルの蒸し焼きが生じた際には耐火試験における絶縁性の低下を招く場合があるが、この場合においても耐火層3により耐火性能が向上したことにより、絶縁性能の規格を満たすことができる。
このように、本実施形態の耐水性高圧耐火ケーブル100では、基材31の第2表面31bに接着剤が露出していないマイカテープ30を備える耐火層3と、遮水層8と、により、耐火層3のマイカ層32におけるマイカの剥離を防ぎ耐火性能の向上させること、および遮水層8による絶縁性能の低下を防ぐことが可能となる。
【0036】
また、遮蔽層6と遮水層8との間に、金属化テープ層7をさらに備え、金属化テープ層7は、ベーステープ71と金属箔72とをそれぞれ有する一対の金属化テープ70pを含み、一対の金属化テープ70pは、金属箔72同士を向き合わせ、かつ一部重ねた状態で遮蔽層6の外側にラップ巻きされている。
【0037】
これにより、遮蔽層6と遮水層8とは、一対の金属化テープ70pの金属箔72同士を介して電気的に接続可能な状態にできる。
【0038】
なお、金属化テープ層7に替えて、遮蔽層6と遮水層8との間に、半導電テープを備えていてもよい。この場合、遮蔽層6と遮水層8とは、半導電テープを介して電気的に接続可能な状態にできる。
【0039】
また、遮水層8は、金属層81と金属層81の径方向外側に設けられた接着剤層82とを有する金属テープ80を備え、金属テープ80の厚さは0.175mm以上0.25mm以下である。
【0040】
これにより、耐水性高圧耐火ケーブル100に適切な防水性能を付与することが可能となり、かつ耐火試験における絶縁性の低下を防ぐことができる。
【実施例0041】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0042】
遮水層の有無、遮水層の金属テープの厚さ、および耐火層のマイカテープの種類を異ならせた高圧耐火ケーブルにおいて、耐火試験を行い、耐火試験における加熱後の最小絶縁抵抗値、および最大燃焼長を比較した結果を、表1を用いて説明する。なお、耐火試験は、消防法告示第10号に準拠して行った。
【0043】
【0044】
実施例1および実施例2のケーブルは
図1に示す耐水性高圧耐火ケーブル100であり、それぞれ、耐火層にはガラスクロスとマイカ層との間に接着層が配置されたマイカテープを用いている。実施例1と実施例2とでは、遮水層の金属テープの厚さが異なっている。
比較例1のケーブルは、従来の高圧耐火ケーブルであり、遮水層が設けられていない。比較例1および比較例2のケーブルは、それぞれ、耐火層に従来のガラスマイカテープを用いている。従来のガラスマイカテープとは、毛管力によりガラスクロスの第2表面から第1表面側へ接着剤を吸い上げ、第1表面上に配置されたマイカ層とガラスクロスとを接着させたテープである。すなわち、比較例で使用したガラスマイカテープでは、ガラスクロスの表面に露出した接着剤がある。
【0045】
実施例1および実施例2では、最小絶縁抵抗値および最大燃焼長の結果が規定に適合しており、耐火試験の結果はいずれも合格となっている。すなわち、消防法告示第10号に要求される耐火性能を有する。
これは、耐火層のマイカの剥離を防ぎ耐火性能の向上させることが可能であり、かつ遮水層の崩壊が好適に起こったことでケーブルの蒸し焼き状態を防ぎ、絶縁性能の低下を防ぐことが可能であったためであると考えられる。実施例1と実施例2との耐火試験結果を比較すると遮水層の金属テープの厚さがより薄い実施例2の方が、最小絶縁抵抗値が大きく、また最大燃焼長が短いため、より好ましい条件であることがわかる。これは、実施例2において、遮水層の崩壊がより起こりやすく、カーボンの発生が抑えられ、かつ可燃物の脱落が適度に起こったためであると考えられる。
【0046】
高圧耐火ケーブルでは、ケーブル製造時、保管時、および運搬時等に必然的にケーブルに曲げが加わるため、耐火試験を行うケーブルはこのように必然的な曲げが加えられた後のケーブルが用いられることになる。さらに、耐火試験ではケーブルを規定の曲げ回数屈曲した後に試験が行われる。実施例1および実施例2では、ケーブルにこのような曲げが加わった後でも好適な耐火性能を有することがわかる。
【0047】
対して、ガラスクロスの表面に接着剤の露出がある比較例1および比較例2では、必然的にケーブルに加わった曲げや耐火試験時のケーブル屈曲により、耐火層のマイカに剥離が生じたと考えられる。これにより、耐火性能に一定の影響があったと考えられる。特に、比較例2では、耐火層のマイカに剥離に加えて、遮水層が配置されたことにより燃焼試験時にケーブルが蒸し焼き状態となり、著しい絶縁性能の低下による地絡が生じた。比較例1では、遮水層が設けられていないためケーブルは蒸し焼き状態にはならず耐火試験は合格となっているが、遮水層がないため、耐水性を確保することができない可能性がある。
【0048】
以上の結果のように、実施例1および実施例2のケーブルでは、遮水層が設けられていることにより耐水性を向上させつつ、耐火性能および絶縁特性も好適に確保することが可能であった。
また、実施例のケーブルは、JIS C3521(JCS 7508)に適合し、消防法告示第10号に要求される難燃性能を有する。
【0049】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態または実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、
図1に示す耐水性高圧耐火ケーブル100は、3本撚り合せられたトリプレックス型となっていてもよい。
また、導体2を中心として配置される、耐火層3と、絶縁体4と、半導電層5と、遮蔽層6と、金属化テープ層7と、遮水層8と、の配置の順番が入れ替わっていてもよい。
導体2とシース9との間の各層の数は、それぞれ1層ずつに限定されない。例えば、耐水性高圧耐火ケーブル100は、耐火層3を2層有し、第1の耐火層3は導体2と絶縁体4との間に配置され、第2の耐火層3は絶縁体4と半導電層5との間に配置されていてもよい。
耐水性高圧耐火ケーブル100は、遮蔽層6と、半導電テープ層との両方を備えていてもよい。
【0051】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
2…導体、3…耐火層、4…絶縁体、5…半導電層、6…遮蔽層、7…金属化テープ層、8…遮水層、9…シース、30…マイカテープ、31…基材、32…マイカ層、33…接着層、70p…一対の金属化テープ、71…ベーステープ、72…金属箔、80…金属テープ、81…金属層、82…接着剤層、100…耐水性高圧耐火ケーブル