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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159160
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ゲートドライブ回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/26 20060101AFI20241031BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20241031BHJP
   H04L 25/03 20060101ALI20241031BHJP
   H03K 17/691 20060101ALI20241031BHJP
   H03K 19/0175 20060101ALI20241031BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H03F3/26
H04L25/02 303B
H04L25/02 V
H04L25/03 Z
H03K17/691
H03K19/0175 280
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074978
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100206184
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 敦司
(74)【代理人】
【識別番号】100114834
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 慶司
(72)【発明者】
【氏名】深井 真志
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
5J056
5J500
5K029
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB05
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK03
5J055AX23
5J055BX16
5J055CX24
5J055DX09
5J055DX13
5J055DX14
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY07
5J055EY17
5J055EY21
5J055EZ25
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J056AA05
5J056BB21
5J056DD53
5J056FF08
5J056KK01
5J500AA01
5J500AA15
5J500AA49
5J500AC53
5J500AF07
5J500AF08
5J500AF16
5J500AH02
5J500AH17
5J500AH25
5J500AH37
5J500AK02
5J500AK36
5J500AK59
5J500AK66
5J500AQ04
5J500AS16
5J500AT01
5J500WU09
5K029AA04
5K029DD24
5K029JJ03
(57)【要約】
【課題】出力側及び入力側に重畳したコモンモードノイズを除去する。
【解決手段】ゲートドライブ回路100は、ゲート制御信号11を、ポジティブ信号21Aとネガティブ信号21Bとからなる差動信号21に変換する信号変換回路2と、それぞれ中性点を有する一次巻線及び二次巻線を有し、一次巻線の中性点が第1グランドの電位とされるとともに一次巻線の両端にポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bがそれぞれ入力される第1パルストランス3と、第1パルストランス3の二次巻線の両端電圧に基づいて一対の抵抗素子の両端に一対の入力差電圧22A,22Bを生成する入力差電圧生成回路6と、一対の入力差電圧22A,22Bを差動増幅して一対の出力差電圧23A,23Bを出力する差動増幅回路7と、一対の出力差電圧23A,23Bに基づいて、ゲート駆動信号25Aを生成するゲート駆動信号生成回路9と、を備える。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1グランドの電位を基準電位として動作し、シングルエンド信号であるゲート制御信号を、互いの信号レベル差が前記ゲート制御信号に対応するポジティブ信号及びネガティブ信号とからなる差動信号に変換する信号変換回路と、
互いに電気的に絶縁され且つそれぞれ中性点を有する一次巻線及び二次巻線を有し、前記一次巻線の前記中性点が前記第1グランドの電位とされるとともに前記一次巻線の両端に前記差動信号のポジティブ信号及びネガティブ信号がそれぞれ入力される第1パルストランスと、
互いに直列に接続された一対の抵抗素子を有し、当該一対の抵抗素子の両端及び接続点が、直接電気的に又は伝送ケーブル及び第2パルストランスを介して、前記第1パルストランスの前記二次巻線の両端及び前記中性点にそれぞれ接続され、前記一対の抵抗素子の両端に前記接続点の電位を基準とする一対の入力差電圧を生成する入力差電圧生成回路と、
前記入力差電圧生成回路に電気的に接続され、前記一対の入力差電圧を差動増幅して一対の出力差電圧を出力する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路に電気的に接続され、前記一対の出力差電圧に基づいて、所定電位を基準とするシングルエンド信号であるゲート駆動信号を生成し、当該ゲート駆動信号を、第2グランドの電位を基準として動作するスイッチング素子に出力するゲート駆動信号生成回路と、を備える、ゲートドライブ回路。
【請求項2】
前記第2パルストランスは、互いに電気的に絶縁され且つそれぞれ中性点を有する一次巻線及び二次巻線を有し、前記一次巻線の両端及び中性点が前記伝送ケーブルを介してそれぞれ前記第1パルストランスの前記二次巻線の両端及び前記中性点に電気的に接続され、
前記入力差電圧生成回路は、前記一対の抵抗素子の両端及び前記接続点が、前記第2パルストランスの前記二次巻線の両端及び前記中性点にそれぞれ接続されている、請求項1に記載のゲートドライブ回路。
【請求項3】
2つの前記スイッチング素子が、互いにプッシュプル接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を構成しており、
前記差動増幅回路として、第1差動増幅回路及び第2差動増幅回路を備え、
前記ゲート駆動信号生成回路として、第1及び第2ゲート駆動信号生成回路を備え、
前記第1差動増幅回路は、前記入力差電圧生成回路に電気的に接続され、前記一対の入力差電圧を差動増幅して、高電位の一対の第1出力差電圧を出力する回路であり、
前記第2差動増幅回路は、前記入力差電圧生成回路に電気的に接続され、前記一対の入力差電圧を差動増幅して、前記一対の第1出力差電圧より低い低電位の一対の第2出力差電圧を出力する回路であり、
前記第1ゲート駆動信号生成回路は、前記第1差動増幅回路に電気的に接続され、前記一対の第1出力差電圧に基づいて、正電位を基準とする前記ゲート駆動信号である第1ゲート駆動信号を生成し、当該第1ゲート駆動信号を前記第1スイッチング素子に出力する回路であり、
前記第2ゲート駆動信号生成回路は、前記第2差動増幅回路に電気的に接続され、前記一対の第2出力差電圧に基づいて、負電位を基準とする前記ゲート駆動信号である第2ゲート駆動信号を生成し、当該第2ゲート駆動信号を前記第2スイッチング素子に出力する回路である、請求項1又は2に記載のゲートドライブ回路。
【請求項4】
前記ゲート駆動信号生成回路は、前記一対の出力差電圧が入力され且つ所定電位を基準とするシングルエンド信号を出力するフリップフロップを含み、当該シングルエンド信号を前記ゲート駆動信号として出力する回路である、請求項1乃至3に記載のゲートドライブ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートドライブ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フローティング状態で動作するスイッチング素子を駆動するゲート駆動回路において、入力側と出力側とを絶縁することが知られている。そのような場合、スイッチング素子のスイッチング等に起因して、コモンモードノイズが発生する場合がある。このコモンモードノイズ対策として種々の提案がなされている。例えば、特許文献1のゲート駆動回路では、パルストランスによって入力側と出力側とが絶縁され、入力側が第1の接地電位点に接地されるとともに出力側が第2の接地電位点に接地される。そして、パルストランスの一次巻線に一次側ゲート駆動信号が入力され、パルストランスの二次側の出力が比較器によって差動増幅されて、二次側ゲート駆動信号として出力される。さらに、パルストランスの一次巻線と二次巻線との間に、第2の接地電位点に接地された静電シールド板が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-074079公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のゲート駆動回路は、出力側に重畳したコモンモードノイズを除去することができるが、入力側に重畳したコモンモードノイズを除去することができない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、出力側及び入力側に重畳したコモンモードノイズを除去することが可能なゲートドライブ回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のある形態(aspect)に係るゲートドライブ回路は、第1グランドの電位を基準電位として動作し、シングルエンド信号であるゲート制御信号を、互いの信号レベル差が前記ゲート制御信号に対応するポジティブ信号及びネガティブ信号とからなる差動信号に変換する信号変換回路と、互いに電気的に絶縁され且つそれぞれ中性点を有する一次巻線及び二次巻線を有し、前記一次巻線の前記中性点が前記第1グランドの電位とされるとともに前記一次巻線の両端に前記差動信号のポジティブ信号及びネガティブ信号がそれぞれ入力される第1パルストランスと、互いに直列に接続された一対の抵抗素子を有し、当該一対の抵抗素子の両端及び接続点が、直接電気的に又は伝送ケーブル及び第2パルストランスを介して、前記第1パルストランスの前記二次巻線の両端及び前記中性点にそれぞれ接続され、前記一対の抵抗素子の両端に前記接続点の電位を基準とする一対の入力差電圧を生成する入力差電圧生成回路と、前記入力差電圧生成回路に電気的に接続され、前記一対の入力差電圧を差動増幅して一対の出力差電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路に電気的に接続され、前記一対の出力差電圧に基づいて、所定電位を基準とするシングルエンド信号であるゲート駆動信号を生成し、当該ゲート駆動信号を、第2グランドの電位を基準として動作するスイッチング素子に出力するゲート駆動信号生成回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、出力側及び入力側に重畳したコモンモードノイズを除去することが可能なゲートドライブ回路を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示のゲートドライブ回路が用いられるプッシュプル増幅回路の構成を示す回路図である。
図2A図2Aは、図1のゲートドライブ回路の第1構成例を示すブロック図である。
図2B図2Bは、図1のゲートドライブ回路の第2構成例を示すブロック図である。
図3図3は、図2Aのゲートドライブ回路の第1構成例の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
図4A図4Aは、コモンモードノイズが重畳した差動信号の波形を示す波形図である。
図4B図4Bは、図4Aの差動信号によって第1パルストランスに誘起された差動信号の波形を示す波形図である。
図4C図4Cは、図4Bの第1パルストランスに誘起された差動信号に由来する信号から入力差電圧生成回路によって生成された入力差電圧の波形を示す波形図である。
図5図5は、図3のプッシュプル増幅回路を用いたスイッチング電源装置の動作を示す回路図である。
図6図6は、図5のスイッチングモジュールが発生するスイッチングノイズを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のある形態(aspect)に係るゲートドライブ回路は、第1グランドの電位を基準電位として動作し、シングルエンド信号であるゲート制御信号を、互いの信号レベル差が前記ゲート制御信号に対応するポジティブ信号及びネガティブ信号とからなる差動信号に変換する信号変換回路と、互いに電気的に絶縁され且つそれぞれ中性点を有する一次巻線及び二次巻線を有し、前記一次巻線の前記中性点が前記第1グランドの電位とされるとともに前記一次巻線の両端に前記差動信号のポジティブ信号及びネガティブ信号がそれぞれ入力される第1パルストランスと、互いに直列に接続された一対の抵抗素子を有し、当該一対の抵抗素子の両端及び接続点が、直接電気的に又は伝送ケーブル及び第2パルストランスを介して、前記第1パルストランスの前記二次巻線の両端及び前記中性点にそれぞれ接続され、前記一対の抵抗素子の両端に前記接続点の電位を基準とする一対の入力差電圧を生成する入力差電圧生成回路と、前記入力差電圧生成回路に電気的に接続され、前記一対の入力差電圧を差動増幅して一対の出力差電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路に電気的に接続され、前記一対の出力差電圧に基づいて、所定電位を基準とするシングルエンド信号であるゲート駆動信号を生成し、当該ゲート駆動信号を、第2グランドの電位を基準として動作するスイッチング素子に出力するゲート駆動信号生成回路と、を備える。
【0010】
この構成によれば、ゲートドライブ回路の入力側と出力側とが第1パルストランスによって互いに絶縁され、第1グランドの電位を基準とする入力側に対し、出力側がスイッチング素子に繋がっていて第2グランドの電位を基準とするフローティング状態になる。この状態において、シングルエンド信号であるゲート制御信号が信号変換回路によって、互いの信号レベル差がゲート制御信号に対応するポジティブ信号及びネガティブ信号とからなる差動信号に変換され、且つ、第1パルストランスの1次巻線の中性点が第1グランドの電位とされるとともに一次巻線の両端に当該差動信号が入力される。これにより、ポジティブ信号及びネガティブ信号は、同じトランスの巻線にその両端電圧として誘起される、それぞれ2倍の振幅を有し且つ互いに逆位相(正負が逆)の一対のシングルエンド電圧信号に変換される。従って、入力側において、これらのポジティブ信号及びネガティブ信号にそれぞれコモンモードノイズが重畳した場合、ポジティブ信号のコモンモードノイズとネガティブ信号のコモンモードノイズとは互いに正負(プラスマイナス)が逆になるので、第1パルストランスにおいて相殺されて除去される。
【0011】
また、出力側においては、入力差電圧生成回路の一対の抵抗素子の両端及び接続点が、直接電気的に又は伝送ケーブル及び第2パルストランスを介して、第1パルストランスの二次巻線の両端及び中性点にそれぞれ接続されていて、当該一対の抵抗素子の両端に前記接続点の電位を基準とする一対の入力差電圧が成され、この一対の入力差電圧が差動増幅回路によって差動増幅される。従って、出力側において、第1パルストランスの二次巻線の両端に直接又は間接に接続された一対の配線にコモンモードノイズが重畳した場合、当該一対の配線のコモンモードノイズは、入力差電圧生成回路により生成される一対の入力差電圧において互いに正負が逆になり、差動増幅回路によって除去される。また、入力差電圧生成回路の一対の抵抗素子に第1パルストランスの負荷電流が流れるので、差動信号の伝送経路のインピーダンスが低くなり、コモンモードノイズの除去能力が向上する。
【0012】
その結果、出力側及び入力側に重畳したコモンモードノイズを除去することが可能なゲートドライブ回路を提供できる。
【0013】
前記第2パルストランスは、互いに電気的に絶縁され且つそれぞれ中性点を有する一次巻線及び二次巻線を有し、前記一次巻線の両端及び中性点が前記伝送ケーブルを介してそれぞれ前記第1パルストランスの前記二次巻線の両端及び前記中性点に電気的に接続され、前記入力差電圧生成回路は、前記一対の抵抗素子の両端及び前記接続点が、前記第2パルストランスの前記二次巻線の両端及び前記中性点にそれぞれ接続されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1パルストランスの二次巻線及び伝送ケーブルにコモンモードノイズが重畳した場合、第1パルストランスと同様に、第2パルストランスによって当該コモンモードノイズを除去することができる。その結果、伝送ケーブルを長くすることによって、ゲート制御信号を生成する制御装置をスイッチング素子から離して配置することができ、制御装置を構成するコンピュータを、スイッチング素子のスイッチング動作によって発生するノイズから好適に保護することができる。
【0015】
2つの前記スイッチング素子が、互いにプッシュプル接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を構成しており、前記差動増幅回路として、第1差動増幅回路及び第2差動増幅回路を備え、前記ゲート駆動信号生成回路として、第1及び第2ゲート駆動信号生成回路を備え、前記第1差動増幅回路は、前記入力差電圧生成回路に電気的に接続され、前記一対の入力差電圧を差動増幅して、高電位の一対の第1出力差電圧を出力する回路であり、前記第2差動増幅回路は、前記入力差電圧生成回路に電気的に接続され、前記一対の入力差電圧を差動増幅して、前記一対の第1出力差電圧より低い低電位の一対の第2出力差電圧を出力する回路であり、前記第1ゲート駆動信号生成回路は、前記第1差動増幅回路に電気的に接続され、前記一対の第1出力差電圧に基づいて、正電位を基準とする前記ゲート駆動信号である第1ゲート駆動信号を生成し、当該第1ゲート駆動信号を前記第1スイッチング素子に出力する回路であり、前記第2ゲート駆動信号生成回路は、前記第2差動増幅回路に電気的に接続され、前記一対の第2出力差電圧に基づいて、負電位を基準とする前記ゲート駆動信号である第2ゲート駆動信号を生成し、当該第2ゲート駆動信号を前記第2スイッチング素子に出力する回路であってもよい。
【0016】
この構成によれば、互いにプッシュプル接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を、出力側及び入力側に重畳したコモンモードノイズを除去しながら駆動することができる。
【0017】
前記ゲート駆動信号生成回路は、前記一対の出力差電圧が入力され且つ所定電位を基準とするシングルエンド信号を出力するフリップフロップを含み、当該シングルエンド信号を前記ゲート駆動信号として出力する回路であってもよい。
【0018】
この構成によれば、フリップフロップによって、所定電位を基準とするシングルエンド信号であるゲート駆動信号を生成できる。また、差動増幅回路の一対の出力差電圧の波形を整形することができ、それによって、さらに、コモンモードノイズを除去することができる。
【0019】
以下、本開示の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本開示を説明するための図であるので、本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0020】
(実施形態)
最初に本開示のゲートドライブ回路の使用環境を説明する。
【0021】
[使用環境]
図1は、本開示のゲートドライブ回路100が用いられるプッシュプル増幅回路500の構成を示す回路図である。図1を参照すると、プッシュプル増幅回路500は、プッシュプル接続された一対のスイッチング素子60と、ゲートドライブ回路100と、を含む。一対のスイッチング素子60は、例えばPMOSFETで構成されるハイサイドの第1スイッチング素子61と、例えばNMOSFETで構成されるローサイドの第2スイッチング素子62とが正電源VDDと第2グランドGND2との間に直列に接続されて構成されており、それらの接続点から出力が取り出される。ゲートドライブ回路100は、入力側と出力側とが絶縁されていて、入力側が第1グランドGND1に接続され、且つ、出力側が一対のスイッチング素子60に電気的に接続されている。従って、出力側は入力側の第1グランドGND1に対し、フローティング状態となっている。ゲートドライブ回路100は、制御基板1から入力されるゲート制御信号11からゲート駆動信号を生成し、当該ゲート駆動信号によって、一対のスイッチング素子60を駆動する。次に、ゲートドライブ回路100の構成を説明する。
【0022】
[ゲートドライブ回路100の構成]
まず、ゲートドライブ回路100の構成の概要を説明する。ゲートドライブ回路100は第1乃至第3構成例を含む。
【0023】
{概要}
図2Aは、図1のゲートドライブ回路100の第1構成例を示すブロック図である。
【0024】
まず、第1構成例を説明する。第1構成例は、伝送ケーブル4及び第2パルストランスを備える場合のゲートドライブ回路100の構成例である。図2Aを参照すると、ゲートドライブ回路100は、信号変換回路2と、第1パルストランス3と、伝送ケーブル4と、第2パルストランス5と、入力差電圧生成回路6と、第1差動増幅回路7と、第2差動増幅回路8と、第1ゲート駆動信号生成回路9と、第2ゲート駆動信号生成回路10とを含む。
【0025】
信号変換回路2は、第1グランドGND1の電位を基準電位として動作し、制御基板1からのシングルエンド信号であるゲート制御信号11を、互いの信号レベル差がゲート制御信号11に対応するポジティブ信号21Aとネガティブ信号21Bとからなる差動信号21に変換する。
【0026】
第1パルストランス3は、この差動信号21を、伝送ケーブル4及び第2パルストランス5を介して、入力差電圧生成回路6に伝送する。これにより、ゲートドライブ回路100の入力側と出力側とが第1パルストランス3及び第2パルストランス5によって絶縁される。
【0027】
入力差電圧生成回路6は、この伝送された差動信号21に基づいて一対の入力差電圧22A,22Bを生成する。第1差動増幅回路7は、この一対の入力差電圧22A,22Bを差動増幅して高電位の一対の第1出力差電圧23A,23Bを出力する。第1ゲート駆動信号生成回路9は、この一対の第1出力差電圧23A,23Bに基づいて所定の正電位を基準とする第1ゲート駆動信号25Aを生成し、当該第1ゲート駆動信号25Aを第1スイッチング素子61(図1参照)に出力する。一方、第2差動増幅回路8は、この一対の入力差電圧22A,22Bを差動増幅して、一対の第1出力差電圧23A,23Bより低電位の一対の第2出力差電圧24A,24Bを出力する。第2ゲート駆動信号生成回路10は、この一対の第2出力差電圧24A,24Bに基づいて所定の負電位を基準とする第2ゲート駆動信号25Bを生成し、当該第2ゲート駆動信号25Bを第2スイッチング素子62(図1参照)に出力する。
【0028】
このような第1構成例は、コモンモードノイズの発生源から制御基板(制御装置)1を構成するコンピュータをできるだけ遠ざけて保護したい場合に適用される。
【0029】
次に、第2構成例を説明する。図2Bは、図1のゲートドライブ回路100の第2構成例を示すブロック図である。図2Bを参照すると、第2構成例では、伝送ケーブル4及び第2パルストランス5が省略されている。従って、第2構成例では、ゲートドライブ回路100の入力側と出力側とは、第1パルストランス3によって絶縁されている。また、入力差電圧生成回路6は、第1パルストランス3の二次巻線に出力された差動信号21に基づいて一対の入力差電圧22A,22Bを生成する。これ以外の構成は第1構成例と同じであるので、その説明を省略する。このような第2構成例は、コモンモードノイズの発生源から制御基板1を遠ざける必要がない場合に適用される。
【0030】
次に、第3構成例を説明する。第3構成例では、ゲートドライブ回路100は1組のみの差動増幅回路及びゲート駆動信号生成回路(例えば、第1差動増幅回路7及び第1ゲート駆動信号生成回路9又は第2差動増幅回路8及び第2ゲート駆動信号生成回路10)を備える。これ以外の構成は、第1構成例又は第2構成例と同じであるので、その説明を省略する。このような第3構成例は、単独のスイッチング素子(例えば図1の第1スイッチング素子61又は第2スイッチング素子62)を駆動する場合に適用される。
【0031】
次に、図2Aの第1構成例のゲートドライブ回路100の詳細な構成及び動作を説明する。なお、第2構成例及び第3構成例は、第1構成例の要素が省略されているだけであるので、それらの詳細な構成及び動作の説明を省略する。
【0032】
{詳細な構成}
図3は、図2Aのゲートドライブ回路100の第1構成例の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【0033】
図3を参照すると、図3に示された回路は、図2Aのゲートドライブ回路100と図1のプッシュプル接続された一対のスイッチング素子60とを含んでいて、プッシュプル増幅回路500として構成されている。
【0034】
信号変換回路2は、ロジック回路31と、ポジティブ信号生成回路32と、ネガティブ信号生成回路33と、を含む。
【0035】
ロジック回路31は、論理回路を用いて、制御基板1からのゲート制御信号11からその同位相信号12A及び逆位相信号12Bを生成する。
【0036】
ポジティブ信号生成回路32は、プッシュプル接続された一対のトランジスタQ1,Q2が、それぞれ、抵抗素子R3,R4を介して、5Vの正電源及び第1グランドGND1に接続されて構成されている。なお、一対のトランジスタQ1,Q2に逆方向を向いたダイオードが並列に接続されている。トランジスタQ1及びトランジスタQ2は、例えば、PMOSFET及びNMOSFETで構成されていて、それらのゲートにロジック回路31からの同位相信号12Aが抵抗素子R1を介して入力される。これにより、ポジティブ信号生成回路32は、トランジスタQ1とトランジスタQ2との接続点から、同位相信号12Aを増幅したポジティブ信号を出力する。
【0037】
ネガティブ信号生成回路33は、プッシュプル接続された一対のトランジスタQ3,Q4が、それぞれ、抵抗素子R5,R6を介して、5Vの正電源及び第1グランドGND1に接続されて構成されている。一対のトランジスタQ3,Q4には逆方向を向いたダイオードが並列に接続されている。トランジスタQ3及びトランジスタQ4は、例えば、PMOSFET及びNMOSFETで構成されていて、それらのゲートにロジック回路31からの逆位相信号12Bが抵抗素子R2を介して入力される。これにより、ネガティブ信号生成回路33は、トランジスタQ3とトランジスタQ4との接続点から、逆位相信号12Bを増幅したネガティブ信号21Bを出力する。
【0038】
第1パルストランス3は、互いに電気的に絶縁され且つそれぞれ中性点MP1,MP2を有する一次巻線及び二次巻線を有する。一次巻線の中性点MP1は第1グランドGND1に接続されている。一次巻線の第1端EP1は、ポジティブ信号生成回路32のトランジスタQ1とトランジスタQ2との接続点に接続されていて、第1端EP1にポジティブ信号21Aが入力される。一次巻線の第2端EP2は、ネガティブ信号生成回路33のトランジスタQ3とトランジスタQ4との接続点に接続されていて、第2端EP2にネガティブ信号21Bが入力される。
【0039】
第2パルストランス5は、互いに電気的に絶縁され且つそれぞれ中性点MP3,MP4を有する一次巻線及び二次巻線を有する。一次巻線の第1端EP5、第2端EP6、及び中性点MP3が、伝送ケーブル4を介して、それぞれ、第1パルストランス3の二次巻線の第1端EP3、第2端EP4、及び中性点MP2に接続されていている。
【0040】
入力差電圧生成回路6は、互いに直列に接続された一対の抵抗素子R9,R10を有する。一対の抵抗素子R9,R10は、互いに等しい適宜な抵抗値を有する。なお、一対の抵抗素子R9,R10の抵抗値は、コモンモードノイズを完全に相殺する観点から互いに等しいことが好ましい。しかし、一対の抵抗素子R9,R10の抵抗値は、互いに等しくなくてもよい。この場合においても、コモンモードノイズを、不完全ではあるが、低減できる。一対の抵抗素子R9,R10の高電位側の端、低電位側の端、及び互いの接続点N1は、それぞれ、第2パルストランス5の二次巻線の第1端EP7、第2端EP8、及び中性点MP4に接続されている。これにより、一対の抵抗素子R9,R10の両端に接続点N1の電位を基準とする一対の入力差電圧22A,22Bを生成する。
【0041】
第1差動増幅回路7は、増幅素子として、一対のトランジスタQ5,Q6を含む。一方のトランジスタQ5は、トランジスタQ7及び抵抗素子R19を介して正電源VCCに接続されるとともに共通の抵抗素子R21を介して負電源VEEに接続されている。他方のトランジスタQ6は、トランジスタQ8及び抵抗素子R20を介して正電源VCCに接続されるとともに共通の抵抗素子R21を介して負電源VEEに接続されている。一対のトランジスタQ5,Q6は、例えば、npn形バイポーラトランジスタで構成されている。トランジスタQ5のベースは、ベース抵抗素子R17を介して、一対の抵抗素子R9,R10の高電位側の端に接続されていて、トランジスタQ5のベースに入力差電圧22A(高電位側差電圧)が入力される。トランジスタQ6のベースは、ベース抵抗素子R18を介して、一対の抵抗素子R9,R10の低電位側の端に接続されていて、トランジスタQ6のベースに入力差電圧22B(低電位側差電圧)が入力される。
【0042】
また、ゲートドライブ回路100には、正電源VCCと負電源VEEとの間の電圧を抵抗分圧する回路が形成されている。この回路では、正電源VCCと負電源VEEとの間に、例えば、4つの抵抗素子R11~R14が直列に接続されていて、抵抗素子R11と抵抗素子14とが互いに等しい抵抗値を有するとともに抵抗素子R12と抵抗素子R13とが互いに等しい抵抗値を有する。これにより、抵抗素子R12と抵抗素子R13との接続点N2が正電源VCCと負電源VEEとの中間の電位を有しており、この接続点N2が入力差電圧生成回路6の接続点N1に接続されている。これにより、接続点N1の電位が正電源VCC及び負電源VEEによって固定されるが、この構成は省略されてもよい。
【0043】
トランジスタQ7,Q8のベースは、抵抗素子R11と抵抗素子R12との接続点に接続されていて、トランジスタQ7,Q8が所定の高抵抗値を有するように、これらの抵抗素子R11,R12の抵抗値が適宜選択されている。
【0044】
以上の構成により、第1差動増幅回路7は、一対の入力差電圧22A,22Bを差動増幅して、接続点N3及び接続点N4に、それぞれ、一対の第1出力差電圧23A,23Bを出力する。
【0045】
第2差動増幅回路8は、増幅素子として、一対のトランジスタQ9,Q10を含む。一方のトランジスタQ9は、共通の抵抗素子R22を介して正電源VCCに接続されるとともにトランジスタQ11及び抵抗素子R23を介して負電源VEEに接続されている。他方のトランジスタQ10は、共通の抵抗素子R22を介して正電源VCCに接続されるとともにトランジスタQ12及び抵抗素子R24を介して負電源VEEに接続されている。一対のトランジスタQ9,Q10は、例えば、pnp形バイポーラトランジスタで構成されている。トランジスタQ9のベースは、ベース抵抗素子R16を介して、一対の抵抗素子R9,R10の高電位側の端に接続されていて、トランジスタQ9のベースに入力差電圧22A(高電位側差電圧)が入力される。トランジスタQ10のベースは、ベース抵抗素子R15を介して、一対の抵抗素子R9,R10の低電位側の端に接続されていて、トランジスタQ9のベースに入力差電圧22B(低電位側差電圧)が入力される。
【0046】
トランジスタQ11,Q12のベースは、抵抗素子R13と抵抗素子R14との接続点に接続されていて、トランジスタQ11,Q12が所定の高抵抗値を有するように、これらの抵抗素子R13,R14の抵抗値が適宜選択されている。
【0047】
以上の構成により、第2差動増幅回路8は、一対の入力差電圧22A,22Bを差動増幅して、接続点N5及び接続点N6に、それぞれ、一対の第2出力差電圧24A,24Bを出力する。
【0048】
第1ゲート駆動信号生成回路9は、矩形波の波形整形回路で構成される。この波形整形回路として、例えば、論理回路であるRSフリップフロップが用いられる。このRSフリップフロップは、所定の高電位を基準として動作する。このRSフリップフロップでは、例えば、セット入力端子が抵抗素子R25を介して接続点N3に接続され、リセット入力端子が抵抗素子R26を介して接続点N4に接続され、且つ、セット出力端子が第1スイッチング素子61のゲートに接続されている。セット入力端子及びリセット入力端子には、互いに逆位相のシングルエンド信号からなる一対の第1出力差電圧23A,23Bが入力されるので、セット出力端子には、第1出力差電圧23Aと同位相のシングルエンド信号が出力される。第1ゲート駆動信号生成回路9は、このシングルエンド信号を第1ゲート駆動信号25Aとして、第1スイッチング素子61に出力する。
【0049】
第2ゲート駆動信号生成回路10は、矩形波の波形整形回路で構成される。この波形整形回路として、例えば、論理回路であるRSフリップフロップが用いられる。このRSフリップフロップは、所定の低電位を基準として動作する。このRSフリップフロップでは、例えば、セット入力端子が抵抗素子R28を介して接続点N5に接続され、リセット入力端子が抵抗素子R27を介して接続点N6に接続され、且つ、セット出力端子が第2スイッチング素子62のゲートに接続されている。セット入力端子及びリセット入力端子には、互いに逆位相のシングルエンド信号からなる一対の第2出力差電圧24A,24Bが入力されるので、セット出力端子には、第2出力差電圧24Aと同位相のシングルエンド信号が出力される。第2ゲート駆動信号生成回路10は、このシングルエンド信号を第2ゲート駆動信号25Bとして、第2スイッチング素子62に出力する。
【0050】
なお、上記波形整形回路として、他の矩形波整形回路を用いてもよい。
【0051】
[ゲートドライブ回路100の動作]
次に、以上のように構成されたゲートドライブ回路100の動作を、図3及び図4A乃至図4Cを参照しながら説明する。図4Aは、コモンモードノイズが重畳した差動信号21の波形を示す波形図である。図4Aの上段の波形図は、ポジティブ信号21Aの波形を示し、図4Aの下段の波形図は、ネガティブ信号21Bの波形を示す。図4Bは、図4Aの差動信号21によって第1パルストランス3に誘起された差動信号21の波形を示す波形図である。図4Cは、図4Bの第1パルストランス3に誘起された差動信号21に由来する信号から入力差電圧生成回路6によって生成された入力差電圧22A,22Bの波形を示す波形図である。
【0052】
図3を参照すると、ロジック回路31が、制御基板1からのゲート制御信号11から同位相信号12A及び逆位相信号12Bを生成する。ポジティブ信号生成回路32は、同位相信号12Aを増幅したポジティブ信号21Aを出力する。ネガティブ信号生成回路33は、逆位相信号12Bを増幅したネガティブ信号21Bを出力する。ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bは、それぞれ、第1パルストランス3の一次巻線の第1端EP1及び第2端EP2に入力される。
【0053】
図4Aを参照すると、ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bは、ここでは、共に、正電圧(5V)のハイレベルと零電圧(第1グランドGND1の電位0V)のローレベルとの二値を取るシングルエンド信号であり、互いに逆の位相を有する。時刻t0において、一次巻線の第1端EP1及び第2端EP2に、それぞれ、ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bが入力される。
【0054】
ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bの最初の半サイクルでは、時刻t0になると、第1パルストランスの一次巻線において、第1端EP1にポジティブ信号21Aの正電圧が印加され、第2端EP2にネガティブ信号21Bの零電圧が印加されるので、第1端EP1から中性点MP1に向かって励磁電流が流れる。図4Bを参照すると、これにより、第1パルストランス3の一次巻線に第2端EP2から第1端EP1に向かう電圧が誘起される。この場合、一次巻線の中性点MP1の電位が0Vであるので、第1端EP1の電圧V1は正電圧となる。一方、第2端EP2は、この時刻t0において、抵抗素子R8を介して第1グランドGND1と接続されているので、第2端EP2の電圧V2は負電圧となり、中性点MP1から第2端EP2に向けて電流が流れる。また、この時、上記励磁電流により、第1パルストランス3の二次巻線及び第2パルストランス5の一次巻線及び二次巻線には、第1パルストランス3及び第2パルストランス5の巻数比に応じた電圧が誘起される。
【0055】
ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bの次の半サイクルでは、時刻t1になると、上記と逆に、第1パルストランス3の一次巻線において、第1端EP1にポジティブ信号21Aの零電圧が印加され、第2端EP2にネガティブ信号21Bの正電圧が印加されるので、第2端EP2から中性点MP1に向かって励磁電流が流れる。これにより、第1パルストランス3の一次巻線に第1端EP1から第2端EP2に向かう電圧が誘起される。この場合、一次巻線の中性点MP1の電位が0Vであるので、第2端EP2の電圧V2は正電圧となる。一方、第1端EP1は、この時刻t1において、抵抗素子R7を介して第1グランドGND1と接続されているので、第1端EP1の電圧V1は負電圧となり、中性点MP1から第1端EP1に向けて電流が流れる。また、この時、上記励磁電流により、第1パルストランス3の二次巻線及び第2パルストランス5の一次巻線及び二次巻線には、第1パルストランス3及び第2パルストランス5の巻数比に応じた電圧が誘起される。以降(t2、t3、・・・)、上記の1サイクルが繰り返される。
【0056】
このようにして、ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bは、第1パルストランス3で、それぞれ、2倍の振幅を有する電圧V1及び電圧V2を有し、互いに逆位相(正負が逆)の一対のシングルエンド電圧信号に変換され、伝送ケーブル4を介して、第2パルストランス5の二次巻線に伝送される。
【0057】
ここで、ゲートドライブ回路100の入力側におけるコモンモードノイズの除去作用を説明する。図4Aを参照すると、例えば、時刻t0と時刻t1との間において、コモンモードノイズが、それぞれ、ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bに重畳したと仮定する。図3を参照すると、ポジティブ信号21Aに重畳したコモンモードノイズは、第1パルストランス3の一次巻線の第1端EP1と中性点MP1との間に励磁電流を流し、ネガティブ信号21Bに重畳したコモンモードノイズは、第1パルストランス3の一次巻線の第2端EP2と中性点MP1との間に励磁電流を流す。しかし、図4Bに示すように、双方の励磁電流は互いに逆方向の電流であるため、一次巻線には互いに正負が逆の電圧が誘起され、両者は互いに相殺される。このようにして、ポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bに重畳したコモンモードノイズは、第1パルストランス3でポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bから変換された一対のシングルエンド電圧信号から除去される。なお、伝送ケーブル4に重畳したコモンモードノイズも、第2パルストランス5において、上記と同様の作用によって、一対のシングルエンド電圧信号から除去される。
【0058】
図3を参照すると、入力差電圧生成回路6において、第2パルストランス5の二次巻線に伝送され一対のシングルエンド電圧信号から以下のようにして、入力差電圧22A及び22Bが生成される。図4Cを参照すると、抵抗素子R9の高電位側の端には、図4Bの電圧V1に対応するシングルエンド電圧信号が現れるが、このシングルエンド電圧信号は、接続点N2を基準にすると、その振幅の中間の電圧がローレベルの零電圧になるので、図4Cの上段に示すような波形を有するシングルエンド電圧信号になる。一方、抵抗素子R10の低電位側の端には、図4Bの電圧V2に対応するシングルエンド電圧信号が現れるが、このシングルエンド電圧信号は、接続点N2を基準にすると、その振幅の中間の電圧がローレベルの零電圧になるので、図4Cの下段に示すような波形を有するシングルエンド電圧信号になる。従って、一対の入力差電圧22A,22Bは、それぞれ、図4Aのポジティブ信号21A及びネガティブ信号21Bに対応する波形を有する。
【0059】
また、入力差電圧生成回路6では、一対の抵抗素子R9,R10が、第2パルストランス5の負荷電流を流すので、第1パルストランス3にもこれに対応する負荷電流が流れる。図3には、ポジティブ信号21Aがハイレベルである場合における差動信号21の伝送経路の電流が示されている。これにより、第1パルストランス3及び第2パルストランス5のインピーダンスが低くなって、第1パルストランス3、伝送ケーブル4、及び第2パルストランス5を含む差動信号21の伝送経路に大きい電流を流すことができるので、ゲートドライブ回路100の入力側におけるコモンモードノイズの除去能力を向上させることができる。
【0060】
図3を参照すると、第2パルストランス5の二次巻線から第1及び第2差動増幅回路7,8に至る一対の配線にコモンモードノイズが重畳した場合、当該一対の配線のコモンモードノイズは、入力差電圧生成回路6により生成される一対の入力差電圧22A,22Bにおいて互いに正負が逆になる。第1及び第2差動増幅回路7,8は、この一対の入力差電圧22A,22Bを差動増幅するので、それにより、当該重畳したコモンモードノイズが除去される。
【0061】
また、第2パルストランス5の二次巻線から第1及び第2差動増幅回路7,8に至る配線の態様に起因して、第1及び第2差動増幅回路7,8に一対の入力差電圧22A,22Bがそれぞれ入力されるタイミングが互いにわずかにずれる場合があり、第1及び第2差動増幅回路7,8が高速動作する場合には、そのタイミングのわずかなずれによって、コモンモードノイズが完全に除去されない場合がある。しかしながら、第1及び第2ゲート駆動信号生成回路9,10が波形整形回路で構成されているので、第1及び第2差動増幅回路7,8からそれぞれ出力される一対の第1出力差電圧23A,23B及び一対の第2出力差電圧24A,24Bの波形が整形され、それによって、当該一対の第1出力差電圧23A,23B及び一対の第2出力差電圧24A,24Bからコモンモードノイズの残存成分が除去される。特に、波形整形回路がフリップフロップであると、コモンモードノイズが前段の回路中でノーマルモードに変換されたノイズが、好適に除去される。このようにして、ゲートドライブ回路100の出力側においてコモンモードノイズが除去される。
【0062】
[基板への実装]
図3を参照すると、プッシュプル増幅回路500では、信号変換回路2及び第1パルストランス3が第1基板81に実装されており、第2パルストランス5、入力差電圧生成回路6、第1差動増幅回路7、第2差動増幅回路8、第1ゲート駆動信号生成回路9、第2ゲート駆動信号生成回路10、及び一対のスイッチング素子60が第2基板82に実装されている。そして、第1基板81の第1パルストランス3の二次巻線と第2基板82の第2パルストランス5の一次巻線とが伝送ケーブル4によって接続されている。
【0063】
従って、第2基板82を、例えば、一対のスイッチング素子60によって駆動されるスイッチングモジュール800(図5参照)の近傍に配置し、伝送ケーブル4を延ばして、第1基板81をスイッチングモジュール800から遠ざけて制御基板1の近傍に配置することによって、制御基板1を構成するコンピュータを、スイッチングモジュール800のスイッチング動作によって発生するコモンモードノイズから好適に保護することができる。
【0064】
[スイッチング電源装置への適用]
図5は、図3のプッシュプル増幅回路500を用いたスイッチング電源装置1000の動作を示す回路図である。図3においては、図を見やすくするために、細部の要素の参照符号が省略されている。
【0065】
図5を参照すると、スイッチング電源装置1000は、スイッチングモジュール800と第1及び第2プッシュプル増幅回路500A,500Bとを含む。スイッチングモジュール800は、ハイサイドスイッチング素子SWHとローサイドスイッチング素子SWLとを含む。ハイサイドスイッチング素子SWH及びローサイドスイッチング素子SWLは、例えば、IGBTで構成されている。また、ハイサイドスイッチング素子SWH及びローサイドスイッチング素子SWLには、それぞれ、逆方向ダイオードが並列に接続されている。
【0066】
第1プッシュプル増幅回路500Aは、第1ゲートドライブ回路100A及び第1の一対のスイッチング素子60Aを含む。第2プッシュプル増幅回路500Bは、第2ゲートドライブ回路100B及び第2の一対のスイッチング素子60Bを含む。
【0067】
ハイサイドスイッチング素子SWHは、第1プッシュプル増幅回路500Aの第1の一対のスイッチング素子60Aと接続されていて、そのゲートに当該第1の一対のスイッチング素子60Aの出力が入力される。ローサイドスイッチング素子SWLは、第2プッシュプル増幅回路500Bの第2の一対のスイッチング素子60Bと接続されていて、そのゲートに当該第2の一対のスイッチング素子60Bの出力が入力される。また、制御基板1、並びに第1及び第2ゲートドライブ回路100A,100Bの信号変換回路2が接地される。また、第1の一対のスイッチング素子60Aがフレームグランドに接続され、第2の一対のスイッチング素子60Bがシグナルグランドに接続される。
【0068】
このように構成されたスイッチング電源装置1000では、制御基板1からハイサイドゲート制御信号11Aが第1ゲートドライブ回路100Aのロジック回路31に入力される。すると、第1ゲートドライブ回路100Aで第1及び第2ゲート駆動信号が生成され、それによって第1の一対のスイッチング素子60Aからハイサイドゲート駆動信号26Aがハイサイドスイッチング素子SWHのゲートに出力される。一方、制御基板1からローサイドゲート制御信号11Bが第2ゲートドライブ回路100Bのロジック回路31に入力される。すると、第2ゲートドライブ回路100Bで第1及び第2ゲート駆動信号が生成され、それによって第2の一対のスイッチング素子60Bからローサイドゲート駆動信号26Bがローサイドスイッチング素子SWLのゲートに出力される。ここで、ハイサイドゲート制御信号11Aとローサイドゲート制御信号11Bとは、図5に示すように、互いに位相がずれている。
【0069】
これにより、ハイサイドスイッチング素子SWH及びローサイドスイッチング素子SWLが互いに異なるタイミングでオンオフ動作し、ハイサイドスイッチング素子SWHとローサイドスイッチング素子SWLとの接続点Noutからスイッチングモジュール800の制御電力が出力される。
【0070】
ところで、ハイサイドスイッチング素子SWH及びローサイドスイッチング素子SWLがそれぞれオンオフすることによって、接続点Noutの電圧(電位)Vmが変動する。この接続点Noutの電圧Vmの変動により、図6に示すようなスイッチングノイズが発生する。図6は、図5のスイッチングモジュール800が発生するスイッチングノイズを示す模式図である。図6において、Vm1は、ハイサイドスイッチング素子SWHがオフしている場合にローサイドスイッチング素子SWLがオンする際の接続点Noutの電圧変動を示し、Vm2は、ハイサイドスイッチング素子SWHがオンしている場合にローサイドスイッチング素子SWLがオフする際の接続点Noutの電圧変動を示す。電圧変動Vm1と電圧変動Vm2とは異なるタイミングで発生するが、図6には、便宜上、同じタイミングで発生するように示されている。なお、図6は、実際に得られた電圧の波形画像をトレースして作成されたので、その波形は正確ではない。
【0071】
図6に示すような接続点Noutの電圧Vm(Vm1,Vm2)の変動が発生すると、接続点Noutからスイッチングノイズが輻射(放射)される。そして、このスイッチングノイズがコモンモードノイズとして、第1及び第2ゲートドライブ回路100A,100Bの配線に重畳する。しかし、第1及び第2ゲートドライブ回路100A,100Bの配線に重畳したコモンモードノイズは、上述のように、除去される。
【0072】
以上に説明したように、本開示のゲートドライブ回路100によれば、出力側及び入力側に重畳したコモンモードノイズを除去することができる。また、制御基板1を構成するコンピュータを、スイッチングモジュール800のスイッチング動作によって発生するコモンモードノイズから好適に保護することができる。
【0073】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のゲートドライブ回路は、出力側及び入力側に重畳したコモンモードノイズを除去することが可能なゲートドライブ回路として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 制御基板
2 信号変換回路
3 第1パルストランス
4 伝送ケーブル
5 第2パルストランス
6 入力差電圧生成回路
7 第1差動増幅回路
8 第2差動増幅回路
9 第1ゲート駆動信号生成回路
10 第2ゲート駆動信号生成回路
11 ゲート制御信号
12A 同位相信号
12B 逆位相信号
21 差動信号
21A ポジティブ信号
21B ネガティブ信号
22A,22B 入力差電圧
23A,23B 第1出力差電圧
24A,24B 第2出力差電圧
25A 第1ゲート駆動信号
25B 第2ゲート駆動信号
26A ハイサイドゲート駆動信号
26B ローサイドゲート駆動信号
31 ロジック回路
32 ポジティブ信号生成回路
33 ネガティブ信号生成回路
60 一対のスイッチング素子
61 第1スイッチング素子
62 第2スイッチング素子
81 第1基板
82 第2基板
100 ゲートドライブ回路
500 プッシュプル増幅回路
800 スイッチングモジュール
1000 スイッチング電源装置
GND1 第1グランド
GND2 第2グランド
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6