(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159163
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】まくらぎ
(51)【国際特許分類】
E01B 3/46 20060101AFI20241031BHJP
E01B 3/32 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E01B3/46
E01B3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074984
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591036893
【氏名又は名称】鉄道機器株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591121111
【氏名又は名称】株式会社安部日鋼工業
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】山室 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 剛一
(72)【発明者】
【氏名】束原 実
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雄太
(72)【発明者】
【氏名】北原 崇吉
(57)【要約】
【課題】簡単な構造によってコンクリートまくらぎ部に作用する応力を緩和することができるまくらぎを提供する。
【解決手段】まくらぎ2は、コンクリートまくらぎ部3に合成まくらぎ部4を重ね合わせたまくらぎである。ひび割れ誘発部5は、コンクリートまくらぎ部3が荷重を受けたときに、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCを誘発する。ひび割れ誘発部5は、コンクリートまくらぎ部3の長さ方向に間隔をあけて、コンクリートまくらぎ部3の外周部に形成された切欠溝6を備えている。熱応力緩和部9は、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の温度が変化したときに、コンクリートまくらぎ部3に作用する熱応力を緩和する。熱応力緩和部9は、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間に挟み込まれて、熱応力を緩和する緩衝材10を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートまくらぎ部に合成まくらぎ部を重ね合わせたまくらぎであって、
前記コンクリートまくらぎ部及び前記合成まくらぎ部の温度が変化したときに、このコンクリートまくらぎ部に作用する熱応力を緩和する熱応力緩和部を備えること、
を特徴とするまくらぎ。
【請求項2】
コンクリートまくらぎ部に合成まくらぎ部を重ね合わせたまくらぎであって、
前記コンクリートまくらぎ部と前記合成まくらぎ部との間に挟み込まれて、前記熱応力を緩和する緩衝材を備えること、
を特徴とするまくらぎ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートまくらぎ部に合成まくらぎ部を重ね合わせたまくらぎに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、レールを固定し軌間を正確に保持するとともに、レールから伝達される列車荷重を広く道床に分散させるために、レールと道床との間に設置される軌道の重要な構成部材としてまくらぎが使用されている。まくらぎには、木製の木まくらぎ、プレストレストコンクリートを使用したPCまくらぎ、鉄製又は鋳鉄製の鉄まくらぎ、及びガラス長繊維によって強化された発泡ウレタン樹脂を成形した合成まくらぎなどが使用されている。鉄道では、PCまくらぎが広く使用されているが、分岐器類に使用される分岐まくらぎには、合成まくらぎが使用されている。合成まくらぎは比較的軽いため、通過する列車本数が多い箇所で合成まくらぎを使用すると、列車が通過する毎に合成まくらぎに列車荷重が繰り返し載荷されて、合成まくらぎが移動することがある。このため、比較的に重いPCまくらぎと比較的軽い合成まくらぎとを組み合わせたまくらぎが提案されている。
【0003】
従来のまくらぎは、合成まくらぎを使用したまくらぎ本体を金型に収容し、まくらぎ本体と金型との間の隙間にコンクリートを流し込み、合成まくらぎを使用したまくらぎ本体と、コンクリートから製造されたカバーとを、長さ方向の溝によって嵌合させている(例えば、特許文献1参照)。この従来のまくらぎは、合成まくらぎのまくらぎ本体の表面を露出させており、コンクリートのカバーによってこのまくらぎ本体を被覆することによってこのまくらぎ本体を道床バラストから保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のまくらぎは、まくらぎ本体と金型との間の隙間に流し込まれたコンクリートを硬化させるために加熱したときに、まくらぎ本体及びコンクリートの熱膨張率の相違によって、まくらぎ本体が膨張しコンクリートが収縮する。このため、従来のまくらぎは、まくらぎ本体側が膨張することによってコンクリートの収縮が妨げられて、コンクリート製のカバーに熱応力によるき裂が発生する問題点がある。
【0006】
この発明の課題は、簡単な構造によってコンクリートまくらぎ部に作用する応力を緩和することができるまくらぎを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
【0008】
請求項1の発明は、
図2~
図4、
図6、
図7及び
図9に示すように、コンクリートまくらぎ部(3)に合成まくらぎ部(4)を重ね合わせたまくらぎであって、前記コンクリートまくらぎ部及び前記合成まくらぎ部の温度が変化したときに、このコンクリートまくらぎ部に作用する熱応力を緩和する熱応力緩和部(9)を備えることを特徴とするまくらぎ(2)である。
【0009】
請求項2の発明は、
図2~
図4、
図6、
図7及び
図9に示すように、コンクリートまくらぎ部(3)に合成まくらぎ部(4)を重ね合わせたまくらぎであって、前記コンクリートまくらぎ部と前記合成まくらぎ部との間に挟み込まれて、前記熱応力を緩和する緩衝材(10)を備えることを特徴とするまくらぎである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、簡単な構造によって重量まくらぎ部に作用する応力を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施形態に係るまくらぎの全体図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は正面図である。
【
図2】
図1(A)のII-II線で切断した断面図である。
【
図3】
図1(A)のIII-III線で切断した断面図である。
【
図4】
図1(A)のIV-IV線で切断した断面図である。
【
図5】
図1(B)のV部分の拡大図であり、(A)はひび割れ発生前の状態を示す拡大図であり、(B)はひび割れ発生後の状態を模式的に示す拡大図である。
【
図7】
図1(A)のVII-VII線で切断した断面図である。
【
図8】この発明の実施形態に係るまくらぎのひび割れ誘発部の作用を説明するための模式図であり、(A)はひび割れ誘発部を備えている場合の模式図であり、(B)はひび割れ誘発部を備えていない場合の模式図である。
【
図9】この発明の実施形態に係るまくらぎの熱応力緩和部の作用を説明するための模式図であり、(A)は熱応力緩和部を備えている場合の温度変化前後の模式図であり、(B)は熱応力緩和部を備えていない場合の温度変化前後の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1に示すレール1は、列車の車輪を支持し案内して、この列車を走行させる部材である。レール1は、列車の車輪と接触するレール頭部1aと、まくらぎ2に取り付けられるレール底部(フランジ部)1bと、レール頭部1aとレール底部1bとを繋ぐレール腹部(ウェブ部)1cなどを備えている。レール1は、レール締結装置によってまくらぎ2に締結されている。
【0013】
図1~
図7に示すまくらぎ2は、レール1を支持する支承体(支持体)である。まくらぎ2は、レール1を固定し軌間を正確に保持するとともに、レール1から伝達される列車荷重を広く道床に分散させるために、レール1と道床との間に設置される。
図1~
図7に示すまくらぎ2は、分岐器類に使用され分岐器類を支持する分岐まくらぎである。まくらぎ2は、レール1の長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール1を離散的に支持している。まくらぎ2は、
図1~
図7に示すコンクリートまくらぎ部3と、
図1~
図4、
図6及び
図7に示す合成まくらぎ部4と、
図1、
図2及び
図4~
図6に示すひび割れ誘発部5と、
図3、
図4及び
図7に示す抜け止め部7と、
図1、
図2、
図6及び
図7に示す抜け止め部8と、
図2~
図4、
図6及び
図7に示す熱応力緩和部9とを備えている。まくらぎ2は、
図1~
図4、
図6及び
図7に示すように、コンクリートまくらぎ部3に合成まくらぎ部4を重ね合わせた複合構造のまくらぎであり、軽量で高耐久性を有するまくらぎである。まくらぎ2は、列車通過時の繰り返し荷重によるまくらぎ2の移動をコンクリートまくらぎ部3によって阻止するとともに、合成まくらぎ部4が道床バラストと接触する部分の表面をコンクリートまくらぎ部3によって覆い保護する。まくらぎ2は、合成まくらぎ部4によってまくらぎ2の軽量化を図り施工性を向上させる。まくらぎ2は、例えば、従来の分岐まくらぎと略同一の長さ、幅及び高さになるように各部の寸法が設定されている。
【0014】
図1~
図7に示すコンクリートまくらぎ部3は、まくらぎ2の下部を構成するコンクリート製の部材である。コンクリートまくらぎ部3は、比較的重い材料によって構成された重量まくらぎ部である。コンクリートまくらぎ部3は、例えば、セメント、シリカフュームなどの反応性粉体、細骨材、高性能減水剤及び繊維から構成された無機系複合材であり、超高強度,高靭性,高流動性,高耐久性を有するダクタルコンクリート(登録商標)のような超高強度繊維補強コンクリート(Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete(UFC))などである。コンクリートまくらぎ部3は、
図1~
図4、
図6及び
図7に示すように、まくらぎ2の下側まくらぎ部を構成しており、
図3、
図4及び
図7に示すように断面形状が凹状(略U字状)の板状部材である。コンクリートまくらぎ部3は、例えば、超高強度繊維補強コンクリートを型枠内に流し込み、合成まくらぎ部4と一体硬化させて工場内で製造される。コンクリートまくらぎ部3は、
図3、
図4、
図6及び
図7に示す収容部3aと、
図1~
図4、
図6及び
図7に示す上面3bと、
図1~
図7に示す側面(外側側面)3cと、
図1、
図2及び
図6に示す端面3dと、
図1~
図7に示す底面(外側底面)3eとを備えている。コンクリートまくらぎ部3は、例えば、このコンクリートまくらぎ部3の長さが2260mm、厚さが45mm、幅が300mm程度に形成されており、収容部3aの長さが2200±5mm、深さが95±2mm、幅が240±3mm程度に形成されており、重量が115.8kg程度である。
【0015】
図3、
図4、
図6及び
図7に示す収容部3aは、合成まくらぎ部4を収容する部分である。収容部3aは、コンクリートまくらぎ部3から合成まくらぎ部4の上部が突出するように、合成まくらぎ部4の下部をコンクリートまくらぎ部3に収容するために形成された凹部である。収容部3aは、合成まくらぎ部4の上部がこの収容部3aから露出するように、合成まくらぎ部4の高さよりもこの収容部3aの深さが浅く形成されている。収容部3aは、
図2~
図4、
図6及び
図7に示す合成まくらぎ部4の底面4dと接する平坦な内側底面3fと、
図3、
図4及び
図7に示す内側底面3fに対して垂直に形成され、合成まくらぎ部4の側面4bと隙間をあけて対向する平坦な内側側面(内側壁面)3gと、
図2及び
図6に示す内側底面3fに対して垂直に形成され、合成まくらぎ部4の端面4cと隙間をあけて対向する平坦な内側端面(内側壁面)3hとを備えている。
【0016】
図1~
図4、
図6及び
図7に示す上面3bは、コンクリートまくらぎ部3の上部を構成する部分である。上面3bは、底面3eに対して平行に形成された平坦面である。
図1、
図3~
図5及び
図7に示す側面3cは、コンクリートまくらぎ部3の側部を構成する部分である。側面3cは、底面3eに対して垂直に形成された平坦面である。
図1、
図2及び
図6に示す端面3dは、コンクリートまくらぎ部3の端部を構成する部分である。端面3dは、底面3eに対して垂直に形成された平坦面である。
図1~
図7に示す底面3eは、コンクリートまくらぎ部3の底部を構成する部分である。底面3eは、道床によって支持される平坦面である。
【0017】
図1~
図4、
図6及び
図7に示す合成まくらぎ部4は、まくらぎ2の上部を構成する合成樹脂製の部材である。合成まくらぎ部4は、比較的軽い材料によって構成された軽量まくらぎ部である。合成まくらぎ部4は、ガラス長繊維によって強化された発泡ウレタン樹脂の成型によって製造される。合成まくらぎ部4は、例えば、ガラス長繊維及び硬質発砲ポリウレタンによって構成されたシートを複数枚積層して形成されている。合成まくらぎ部4は、まくらぎ2の上側まくらぎ部を構成しており、コンクリートまくらぎ部3とは異なり、
図1~
図4、
図6及び
図7に示すように断面形状が略四角形の1枚の板状部材によって形成されている。合成まくらぎ部4は、
図1に示すように、コンクリートまくらぎ部3から突出するこの合成まくらぎ部4の上部を除き、この合成まくらぎ部4の略全面がコンクリートまくらぎ部3に被覆され保護されている。合成まくらぎ部4は、
図1~
図4、
図6及び
図7に示す上面4aと、
図1、
図3、
図4及び
図7に示す側面4bと、
図1、
図2及び
図6に示す端面4cと、
図2~
図4、
図6及び
図7に示す底面4dとを備えている。合成まくらぎ部4は、
図2~
図4、
図6及び
図7に示すように、この合成まくらぎ部4の側面4b及び端面4cがコンクリートまくらぎ部3の内側側面3g及び内側端面3hとの間で隙間をあけて配置されている。合成まくらぎ部4は、例えば、長さが2200±5mm mm、厚さが135±2mm、幅が240±3mm程度に形成されており、重量が51.3kg程度である。
【0018】
図1~
図4、
図6及び
図7に示す上面4aは、合成まくらぎ部4のまくらぎ上部を構成する部分である。上面4aは、底面4dに対して平行に形成された平坦面であり、レール1をまくらぎ2に締結するレール締結装置が取り付けられる。
図1、
図3、
図4及び
図7に示す側面4bは、合成まくらぎ部4の側部を構成する部分である。側面4bは、上面4a及び底面4dに対して垂直に形成された平坦面である。
図1、
図2及び
図6に示す端面4cは、合成まくらぎ部4の端部を構成する部分である。端面4cは、上面4a及び底面4dに対して垂直に形成された平坦面である。
図2~
図4、
図6及び
図7に示す底面4dは、合成まくらぎ部4の底部を構成する部分である。底面4dは、コンクリートまくらぎ部3の収容部3aの内側底面3fと接する平坦面である。
【0019】
図1、
図2及び
図4~
図6に示すひび割れ誘発部5は、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCを誘発する部分である。ひび割れ誘発部5は、
図5(B)に示すように、コンクリートまくらぎ部3が荷重を受けたときに、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCの発生を誘発する。ひび割れ誘発部5は、例えば、
図8(A)に示すように、列車の通過によってまくらぎ2に作用する荷重によって、まくらぎ2に曲げ応力が作用したときに、コンクリートまくらぎ部3の所定の箇所にひび割れCを誘発させる。ここで、曲げ応力とは、荷重が作用したときにコンクリートまくらぎ部3の内部に生じる曲げモーメントであり、コンクリートまくらぎ部3の横断面に生ずる垂直応力である。ひび割れ誘発部5は、
図8(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3の所定の箇所にひび割れCを誘発することによって、コンクリートまくらぎ部3に作用する応力を緩和して、コンクリートまくらぎ部3の大規模な破損を抑制する。ひび割れ誘発部5は、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCの発生を予定するひび割れ予定部として機能する。ひび割れ誘発部5は、
図8(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3が長さ方向に分割されるように、コンクリートまくらぎ部3の底面3eから上方に向かってひび割れCを積極的に進展させる。ひび割れ誘発部5は、
図1、
図2及び
図4~
図6に示す切欠溝6を備えている。
【0020】
図1、
図2及び
図4~
図6に示す切欠溝6は、コンクリートまくらぎ部3の外周部に形成された溝である。切欠溝6は、
図1及び
図2に示すように、コンクリートまくらぎ部3の長さ方向に間隔をあけて形成されている。切欠溝6は、外観が目地状のスリットである。切欠溝6は、コンクリートまくらぎ部3の両端部寄りでは作用する曲げ応力が比較的小さくなるため、コンクリートまくらぎ部3の両端部から中央部に向かって所定長さの部分については形成されていない。切欠溝6は、
図4に示すように、コンクリートまくらぎ部3の上面3b、側面3c及び底面3eに連続して直線状に形成されている。切欠溝6は、コンクリートまくらぎ部3の形状を変化させることによって、コンクリートまくらぎ部3に局所的に応力を集中させる応力集中部として機能する。切欠溝6は、
図5に示すように、コンクリートまくらぎ部3の表面側に形成された開口部6aと、コンクリートまくらぎ部3の内側に形成された平坦な底部6bと、開口部6aから底部6bに向かって傾斜する平坦な傾斜面6cとを備えている。切欠溝6は、
図5及び
図6に示すように、断面形状が台形の楔状に形成されており、開口部6a側の幅が広く、底部6b側の幅が狭く形成されている。
図1、
図2及び
図4~
図6に示す切欠溝6は、例えば、開口部6aの幅が15mm、底部6bの幅が5mm、深さが25mm程度の深さで、70mm程度の等間隔で合計28個形成されている。切欠溝6は、
図5に示すように、底部6bが起点となってひび割れCが進展するように、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCを導入させる。
【0021】
図3、
図4及び
図7に示す抜け止め部7は、コンクリートまくらぎ部3が合成まくらぎ部4から抜け出すのを防止する部分である。抜け止め部7は、コンクリートまくらぎ部3が荷重を受けてコンクリートまくらぎ部3が分割したときに、合成まくらぎ部4の下方向にコンクリートまくらぎ部3が抜け出すのを防止する。抜け止め部7は、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とが分離するのを防止する分離防止部として機能するとともに、これらが下方向にずれるのを防止するずれ防止部としても機能する。抜け止め部7は、
図8(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の長さ方向に連続して、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とを嵌合させる。抜け止め部7は、
図3、
図4及び
図7に示すように、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間に熱応力緩和部9を挟み込んだ状態で、これらが一体となるようにこれらを結合させる。抜け止め部7は、
図3、
図4及び
図7に示すように、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の中心線を中心として左右対称に配置されている。抜け止め部7は、凸部7aと凹部7bを備えており、凸部7aと凹部7bとを嵌合させることによって、コンクリートまくらぎ部3が合成まくらぎ部4から下方向に抜け出すのを防止する。
【0022】
図3、
図4及び
図7に示す凸部7aは、凹部7bが嵌合する部分である。凸部7aは、コンクリートまくらぎ部3の内側側面3gに形成されており、コンクリートまくらぎ部3の内側側面3gと同じ長さで長さ方向に連続して直線状に形成されている。凸部7aは、断面形状が台形の突出部であり、コンクリートまくらぎ部3の収容部3aの左右の内側側面3gの上縁部寄りに形成されている。凸部7aは、合成まくらぎ部4と型枠との間にコンクリートを打設してコンクリートまくらぎ部3を製造するときに、合成まくらぎ部4側の凹部7bにコンクリートが流れ込むことで形成される。
【0023】
凹部7bは、凸部7aが嵌合する部分である。凹部7bは、合成まくらぎ4の側面4bに形成されており、合成まくらぎ部4の側面4bと同じ長さで長さ方向に連続して直線状に形成されている。凹部7bは、断面形状が台形の溝部であり、合成まくらぎ部4の左右の側面4bの上縁部寄りに形成されている。凹部7bは、凸部7aと対向する位置に形成されている。凹部7bは、合成まくらぎ部4を製造するときに一体成型したり、合成まくらぎ4を製造後に合成まくらぎ部4を機械加工したりして形成される。
【0024】
図1、
図2、
図6及び
図7に示す抜け止め部8は、コンクリートまくらぎ部3が合成まくらぎ部4から抜け出すのを防止する部分である。抜け止め部8は、
図8(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3が荷重を受けてコンクリートまくらぎ部3が分割したときに、合成まくらぎ部4の長さ方向にコンクリートまくらぎ部3が抜け出すのを防止する。抜け止め部8は、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とが分離するのを防止する分離防止部として機能するとともに、これらが長さ方向にずれるのを防止するずれ防止部としても機能する。抜け止め部8は、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とを嵌合させることによって、コンクリートまくらぎ部3が合成まくらぎ部4から抜け出すのを防止する。抜け止め部8は、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間に熱応力緩和部9を挟み込んだ状態で、これらが一体となるようにこれらを結合させる。抜け止め部8は、
図1、
図2及び
図8(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の一方の端部と他方の端部とに配置されており、これらの中央部から等距離に配置されている。抜け止め部8は、
図8(A)に示すように、分割後のコンクリート片3A,3Bが合成まくらぎ部4から脱落しないように、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の端部と、この端部に最も近いひび割れ誘発部5の切欠溝6との間に配置されている。抜け止め部8は、
図2、
図6、
図7及び
図8(A)に示すように、凸部8aと凹部8bとを備えており、凸部8aと凹部8bとを嵌合させることによって、コンクリートまくらぎ部3が合成まくらぎ部4から抜け出すのを防止する。
【0025】
図2、
図6、
図7及び
図8(A)に示す凸部8aは、凹部8bが嵌合する部分である。凸部8aは、コンクリートまくらぎ部3の内側底面3fに形成されている。凸部8aは、
図2、
図6及び
図7に示すように、コンクリートまくらぎ部3の中心線に対して直交する幅方向に、コンクリートまくらぎ部3の幅と同じ長さで内側底面3fに連続して形成されている。凸部8aは、
図2及び
図6に示すように、平面形状及び断面形状が四角形状の突出部であり、所定の幅及び高さで内側底面3fに形成されている。凸部8aは、コンクリートまくらぎ部3の内側底面3fに対して平行に形成された平坦面である突出面8cと、内側底面3fに対して垂直に形成され互いに平行な平坦面である側面8d,8eとを備えている。凸部8aは、合成まくらぎ部4と型枠との間にコンクリートを打設してコンクリートまくらぎ部3を製造するときに、合成まくらぎ部4側の凹部8bにコンクリートが流れ込むことで形成される。
【0026】
図2、
図6、
図7及び
図8(A)に示す凹部8bは、凸部8aが嵌合する部分である。凹部8bは、合成まくらぎ4の底面4dに形成されている。凹部8bは、
図2、
図6及び
図7に示すように、合成まくらぎ部4の中心線に対して直交する幅方向に、合成まくらぎ部4の幅と同じ長さで底面4dに連続して形成されている。凹部8bは、
図2及び
図6に示すように、断面形状が略U字状の溝部であり、所定の幅及び深さで底面4dに形成されている。凹部8bは、合成まくらぎ部4の底面4dに対して平行に形成され底面4dと接する平坦面である底面8fと、底面8fに対して垂直に形成され互いに平行な平坦面である側面8g,8hとを備えている。凹部8bは、凸部8aと対向する位置に形成されている。凹部8bは、この凹部8bの側面8g側と凸部8a側の側面8dとの間に僅かに隙間をあけて対向するとともに、この凹部8bの側面8h側と凸部8a側の側面8eとの間に僅かに隙間をあけて対向する。凹部8bは、合成まくらぎ部4を製造するときに一体成型したり、合成まくらぎ4を製造後に合成まくらぎ部4を機械加工したりして形成される。
【0027】
図2~
図4、
図6及び
図7に示す熱応力緩和部9は、コンクリートまくらぎ部3に作用する熱応力を緩和する部分である。熱応力緩和部9は、
図9(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の熱膨張率が異なるため、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の温度が変化したときに、コンクリートまくらぎ部3に作用する熱応力を緩和する。ここで、熱応力とは、温度の変化又は不同によってコンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の内部に生じる応力であり、熱膨張又は熱収縮が妨げられたときに生じる圧縮応力又は引張応力である。熱膨張率(熱膨張係数)とは、温度の上昇によってコンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の長さ及び体積が膨張(熱膨張)する割合である。熱応力緩和部9は、例えば、まくらぎ2を製造するときに生ずる温度変化によって、コンクリートまくらぎ部3の長さ及び体積が収縮する熱収縮と、合成まくらぎ部4の長さ及び体積が膨張する熱膨張とが生じたときに、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCが発生するのを抑制する。熱応力緩和部9は、
図2~
図4、
図6、
図7及び
図9(A)に示す緩衝材10を備えている。
【0028】
図2~
図4、
図6、
図7及び
図9(A)に示す緩衝材10は、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間に挟み込まれて、熱応力を緩和する部材である。緩衝材10は、
図9(A)に示すように、まくらぎ2の製造時にはコンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の熱収縮及び熱膨張に追従してこの緩衝材10の厚さが変化し、まくらぎ2の完成後にはコンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間の隙間が可能な限り狭くなるようにこの緩衝材10の厚さが薄くなる。緩衝材10は、例えば、厚さが2mm程度であり、緩衝性、断熱性、柔軟性及び軽量性に優れ、内部が独立気泡構造である発泡ポリエチレンシートである。緩衝材10は、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とが対向する部分の隙間に配置されており、これらの間で作用する熱応力を緩和する。緩衝材10は、例えば、
図3、
図4及び
図7に示す内側側面3gと側面4bとの間の隙間と、
図6に示す内側端面3hと端面4cとの間の隙間と、
図3、
図4及び
図7に示す凸部7aと凹部7bとの間の隙間と、
図6に示す凸部8aの側面8d,8eと凹部8bの側面8g,8hとの間の隙間を埋めるように、これらの間に挟み込まれている。緩衝材10は、
図9(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ4の温度変化によって、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ4との間の隙間が変化したときに、この隙間の変化に応じて厚さが変化する。緩衝材10は、例えば、合成まくらぎ部4側が熱膨張することによってコンクリートまくらぎ部3側の熱収縮が妨げられて、コンクリートまくらぎ部3に引張力が生じたときに、この緩衝材10が圧縮されることで、コンクリートまくらぎ部3に作用する熱応力を緩和する。
【0029】
次に、この発明の実施形態に係るまくらぎの作用を説明する。
例えば、合成まくらぎ部4と型枠との間にコンクリートを打設してまくらぎ2を製造するときに、熱養生によりコンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4に温度変化が生ずる。このため、
図9に示すように、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の熱膨張率の相違に起因して、コンクリートまくらぎ部3が熱収縮し、合成まくらぎ部4が熱膨張することがある。
【0030】
図9(B)に示すように、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間に熱応力緩和部9が挟み込まれていない場合には、
図9(B)に示すようにコンクリートまくらぎ部3に引張力が作用する。このため、コンクリートまくらぎ部3に熱応力が作用して、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCが発生する。例えば、
図3、
図4及び
図7に示す内側底面3fと内側側面3gとが交わる角部や、
図6に示す内側底面3fと内側端面3hとが交わる角部などにひび割れCが発生する。
【0031】
一方、
図9(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間に熱応力緩和部9が挟み込まれている場合には、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間の温度収縮に追従して熱応力緩和部9の厚さが薄くなり、熱応力による影響を熱応力緩和部9が吸収する。このため、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間の隙間が狭くなって、コンクリートまくらぎ部3に引張力が作用し、合成まくらぎ部4に圧縮力が作用しても、これらの間で熱応力緩和部9が圧縮される。その結果、コンクリートまくらぎ部3に作用する熱応力を熱応力緩和部9が緩和して、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCが発生するのを熱応力緩和部9が抑制する。
【0032】
図1に示すレール1上を列車が通過して、列車荷重がまくらぎ2に作用すると、
図8に示すようにまくらぎ2が上側に撓むような曲げモーメントM
1が作用したり、まくらぎ2が下側に撓むような曲げモーメントM
2が作用したりする。まくらぎ2に曲げモーメントM
1,M
2が作用すると、合成まくらぎ部4に比べてコンクリートまくらぎ部3のほうが曲げ剛性が高いため、コンクリートまくらぎ部3に過大な曲げ応力が作用する。
【0033】
図8(B)に示すように、コンクリートまくらぎ部3がひび割れ誘発部5を備えていない場合には、コンクリートまくらぎ部3の底面3eに引張力が作用して底面3eの複数箇所にひび割れCが発生し、底面3eからひび割れCが進展する。その結果、コンクリートまくらぎ部3に発生したひび割れCによって、コンクリートまくらぎ部3が複数のコンクリート片3A~3Dに分割されたり、コンクリートまくらぎ部3の一部がはく落したりして、コンクリートまくらぎ部3が大規模に破損するおそれがある。
【0034】
図8(B)に示すように、コンクリートまくらぎ部3が抜け止め部7,8を備えていない場合には、分割後のコンクリート片3A~3Dが合成まくらぎ部4から下方に抜け出したり、分割後のコンクリート片3A~3Dが合成まくらぎ4から長さ方向に抜け出したりする。その結果、まくらぎ2からコンクリート片3A~3Dが脱落して、合成まくらぎ部4の下面がコンクリートまくらぎ部3によって保護されず、合成まくらぎ部4が道床バラストと接触して損傷するおそれがある。また、まくらぎ2の全体の重量が低下するため、列車荷重を繰り返し受けたときにまくらぎ2が移動してしまうおそれがある。
【0035】
一方、この実施形態では、
図8(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3がひび割れ誘発部5を備えている。このため、まくらぎ2に曲げモーメントM
1,M
2が作用して、コンクリートまくらぎ部3の底面3eに引張力が作用すると、切欠溝6に曲げ応力が集中して切欠溝6を起点としてコンクリートまくらぎ部3にひび割れCが進展する。切欠溝6によってひび割れCがコンクリートまくらぎ部3の上方に向って進展して、コンクリートまくらぎ部3が長さ方向において複数のコンクリート片3A,3Bに分割されると、コンクリートまくらぎ部3に作用する曲げ応力が緩和される。その結果、コンクリートまくらぎ部3に過大な曲げ応力が作用するのが抑制されて、
図8(B)に示すような多数のひび割れCがコンクリートまくらぎ部3に発生したり、コンクリートまくらぎ部3がはく落したりして、コンクリートまくらぎ部3が大規模に破損するのが抑制される。
【0036】
この実施形態では、
図8(A)に示すように、コンクリートまくらぎ部3が抜け止め部7,8を備えている。このため、分割後のコンクリート片3A,3Bが合成まくらぎ部4から下方に抜け出すのを抜け止め部7が阻止するとともに、分割後のコンクリート片3A,3Bが合成まくらぎ4から長さ方向に抜け出すのを抜け止め部8が阻止する。その結果、分割後のコンクリート片3A,3Bが合成まくらぎ部4から脱落するのが防止されて、分割後のコンクリート片3A,3Bによって合成まくらぎ部4の下面が保護されて、道床バラストと接触することによって合成まくらぎ部4が損傷するのが防止される。また、まくらぎ2の全体の重量が維持されるため、列車荷重を繰り返し受けてまくらぎ2が移動するのが防止される。
【0037】
次に、この発明の実施形態に係るまくらぎの製造方法について説明する。
合成まくらぎ部4に緩衝材10を接着した状態で、合成まくらぎ部4の上面4aを下向きにして、合成まくらぎ部4を型枠内に設置し、合成まくらぎ部4と型枠との間に超高強度繊維補強コンクリートを打設する。コンクリートまくらぎ部3の硬化作用を十分に発揮させるために、打設後の超高強度繊維補強コンクリートに熱養生(例えば、約90℃の蒸気養生)を実施する。ひび割れ誘発部5の切欠溝6と対応する位置に、切欠溝6と同一の断面形状である台形の楔状の突出部が型枠の内面に形成されている。このため、熱養生後に型枠を取り外すと、切欠溝6が形成されたコンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とが一体成型されたまくらぎ2が製造される。
【0038】
この発明の実施形態に係るまくらぎには、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の温度が変化したときに、コンクリートまくらぎ部3に作用する熱応力を熱応力緩和部9が緩和する。このため、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の温度変化によって生じるこれらの伸縮を熱応力緩和部9によって吸収することができる。その結果、コンクリートまくらぎ部3に作用する熱応力によって、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCが生じてコンクリートまくらぎ部3が損傷するのを防ぐことができる。
【0039】
(2) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間に緩衝材10が挟み込まれて、緩衝材10が熱応力を緩和する。このため、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4との間で緩衝材10の厚さが変化することによって、これらの熱収縮による影響を緩和することができる。
【0040】
(3) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3が荷重を受けたときに、コンクリートまくらぎ部3にひび割れ誘発部5がひび割れCを誘発する。コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とを重ね合わせた複合構造のまくらぎ2では、従来のまくらぎと同じ厚さに近づけるために、コンクリートまくらぎ部3の厚さを薄くすると、コンクリートまくらぎ部3の内部に鉄筋を配筋することができない。このため、列車通過時の荷重がまくらぎ2に作用すると、コンクリートまくらぎ部3に作用する引張力を鉄筋が受け持つことができず、コンクリートまくらぎ部3にひび割れCが発生しコンクリートまくらぎ部3の全体が破壊する可能性がある。この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3に積極的にひび割れCを誘発させることによって、コンクリートまくらぎ部3に作用する過大な応力を緩和することができる。その結果、コンクリートまくらぎ部3の全体の破壊を防ぐことによって、まくらぎ2としての機能が失われるのを防ぐことができる。
【0041】
(4) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3の長さ方向に間隔をあけて、コンクリートまくらぎ部3の外周部に切欠溝6が形成されている。このため、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とを一体成型によってまくらぎ2を製造するときに、コンクリートまくらぎ3に切欠溝6を簡単に形成することができる。その結果、簡単な構造の切欠溝6によってコンクリートまくらぎ部3の剛性を部分的に低下させて、コンクリートまくらぎ部3に切欠溝6からひび割れCを誘導することができる。
【0042】
(5) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3が荷重を受けてコンクリートまくらぎ部3が分割したときに、合成まくらぎ部4の長さ方向にコンクリートまくらぎ部3が抜け出すのを抜け止め部8が防止する。このため、コンクリートまくらぎ3が合成まくらぎ部4からずれ出して、コンクリートまくらぎ部3と合成まくらぎ部4とが分離するのを防止することができる。その結果、合成まくらぎ部4が道床バラストと接触して合成まくらぎ部4が損傷するのを防ぐことができるとともに、まくらぎ2全体の重量が軽くなり列車荷重を受けたまくらぎ2が移動してしまうのを防ぐことができる。
【0043】
(6) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の両端部に、これらが嵌合する凸部8aと凹部8bとを抜け止め部8が備えている。このため、コンクリートまくらぎ部3又は合成まくらぎ部4の両端部に凹凸の段差部を形成することによって、ずれ防止対策用の簡単な嵌合構造を設けることができる。その結果、コンクリートまくらぎ部3又は合成まくらぎ部4の一方の凸部8aと他方の凹部8bとを嵌合させることによって、コンクリートまくらぎ部3が合成まくらぎ部4から分離するのを防止することができる。
【0044】
(7) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3及び合成まくらぎ部4の長さ方向に連続して、これらが嵌合する凸部7aと凹部7bとを抜け止め部7が備えている。このため、コンクリートまくらぎ部3の内側側面3g及び合成まくらぎ部4の側面4bとの間に凹凸の段差部を形成することによって、ずれ防止対策用の簡単な嵌合構造を設けることができる。その結果、コンクリートまくらぎ部3又は合成まくらぎ部4の一方の凸部7aと他方の凹部7bとを嵌合させることによって、コンクリートまくらぎ部3が合成まくらぎ部4から分離するのを防止することができる。
【0045】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、まくらぎ2が分岐まくらぎである場合を例に挙げて説明したが、一般区間に使用される並まくらぎ、鉄橋区間に使用される橋まくらぎ、又はレール継目部に使用される継目まくらぎなどについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、ひび割れ誘発部5の切欠溝6を長さ方向に等間隔で合計28個形成する場合を例に挙げて説明したが、切欠溝6を任意の間隔で任意の個数形成する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、切欠溝6の断面形状が台形である場合を例に挙げて説明したが、断面形状がV字形の溝又は四角形の平行溝などの台形以外の他の種々の形状である場合についても、この発明を適用することができる。
【0046】
(2) この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3に曲げ応力が作用したときにひび割れ誘発部5がひび割れCを誘発する場合を例に挙げて説明したが、コンクリートまくらぎ部3にせん断応力などの他の応力が作用したときにひび割れ誘発部5がひび割れCを誘発する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、まくらぎ2の製造時に生ずる熱応力を熱応力緩和部9が緩和する場合を例に挙げて説明したが、まくらぎ2の使用時に生ずる熱応力を熱応力緩和部9が緩和する場合についても、この発明を適用することができる。例えば、合成まくらぎ2上に融雪用ヒータを設置して使用する場合に生ずる熱応力を熱応力緩和部9によって緩和することもできる。さらに、この実施形態では、コンクリートまくらぎ部3が凸部7a,8aを備え、合成まくらぎ部4が凹部7b,8bを備える場合を例に挙げて説明したが、コンクリートまくらぎ部3が凹部を備え、合成まくらぎ部4が凸部を備える場合についても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 レール
2 まくらぎ
3 コンクリートまくらぎ部
3A~3D コンクリート片
3a 収容部
4 合成まくらぎ部
5 ひび割れ誘発部
6 切欠溝
7 抜け止め部
7a 凸部
7b 凹部
8 抜け止め部
8a 凸部
8b 凹部
9 熱応力緩和部
10 緩衝材
C ひび割れ