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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159165
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】製造方法およびセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01D5/347 110X
G01D5/347 110S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074991
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 慎之輔
(72)【発明者】
【氏名】米谷 友宏
(72)【発明者】
【氏名】小杉 明史
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA43
2F103CA01
2F103CA03
2F103CA04
2F103DA12
2F103EA15
2F103EA23
2F103EB01
2F103EB11
2F103EB28
(57)【要約】
【課題】公差を発生させる要素の数を少なくして、精度良く変位量を検出する。
【解決手段】センサ装置は、第1筐体と、スケールホルダと、スケール板と、検出基板とを備える。スケールホルダは、第1下側孔および第2下側孔が形成され、スケール板は、第1中間孔および第2中間孔が形成され、検出基板は、第1上側孔および第2上側孔が形成される。実施形態に係るセンサ装置の製造方法は、検出基板を第1筐体に固定する基板固定工程において、位置固定治具における第1規制ピンを第1上側孔、第1中間孔および第1下側孔に検出基板の側から挿入し、第2規制ピンを第2上側孔、第2中間孔および第2下側孔に検出基板の側から挿入することにより、検出基板とスケールホルダとの位置関係を固定した状態において、検出基板を第1筐体に取り付ける。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置を製造する製造方法であって、
前記センサ装置は、
第1筐体と、
前記第1筐体に対して第1方向に相対移動可能なスケールホルダと、
前記第1方向における相対変位を非接触で検出させるためのスケールが形成され、前記スケールホルダに載せ置かれて固定されるスケール板と、
前記第1筐体に固定される検出基板と、
前記検出基板に固定され、前記スケールを非接触で検出して前記スケール板との前記第1方向における変位量を表す検出信号を出力する検出器と、
を備え、
前記スケールホルダは、前記スケール板が固定される位置を規制する規制部を有し、
前記スケールホルダは、前記第1方向に対して垂直な第2方向に窪んだ、第1下側孔および第2下側孔が形成され、
前記スケール板は、前記第2方向に貫通する第1中間孔および第2中間孔が形成され、
前記検出基板は、前記第2方向に貫通する第1上側孔および第2上側孔が形成され、
前記検出基板を前記第1筐体に固定する基板固定工程において、
直線状の第1規制ピンおよび第2規制ピンを有する位置固定治具における前記第1規制ピンを前記第1上側孔、前記第1中間孔および前記第1下側孔に前記検出基板の側から挿入し、前記第2規制ピンを前記第2上側孔、前記第2中間孔および前記第2下側孔に前記検出基板の側から挿入することにより、前記検出基板と前記スケールホルダとの位置関係を固定した状態において、前記検出基板を前記第1筐体に取り付ける
製造方法。
【請求項2】
前記第1下側孔および前記第2下側孔は、前記第2方向に垂直な平面において、前記スケール板が載せ置かれる領域内における、前記スケール板が載せ置かれる側に形成され、
前記第1中間孔は、前記スケール板が前記スケールホルダに載せ置かれて固定された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第1下側孔と同一の位置に形成され、
前記第2中間孔は、前記スケール板が前記スケールホルダに載せ置かれて固定された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第2下側孔と同一の位置に形成され、
前記第1上側孔は、前記スケールホルダが前記第1筐体に対して予め定められた第1位置に配置され、且つ、前記検出基板が前記第1筐体に対して予め定められた第2位置に配置された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第1下側孔と同一の位置に形成され、
前記第2上側孔は、前記スケールホルダが前記第1筐体に対して前記第1位置に配置され、且つ、前記検出基板が前記第1筐体に対して前記第2位置に配置された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第2下側孔と同一の位置に形成される
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記規制部は、前記スケール板が載せ置かれる領域に設けられ、前記スケール板が載せ置かせる側に突出する第1突出部および第2突出部を含み、
前記スケール板は、前記スケールホルダに載せ置かれた状態において、前記第1突出部が嵌め込まれる第1規制孔と、前記第2突出部が嵌め込まれる第2規制孔とが形成される
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2下側孔は、前記第2突出部の領域に形成され、
前記第2中間孔は、前記第2規制孔と共通である
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1下側孔および前記第2下側孔は、
前記第1方向における異なる位置に形成され、
前記スケールを挟んで対向する2つの領域のうちの互いに異なる領域に形成される
請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
ガイドレールと、ブロックとを含むリニアベアリングをさらに備え、
前記ガイドレールは、前記第1筐体に固定され、
前記第1方向に移動自在に前記ガイドレールに取り付けられ、
前記スケールホルダは、前記ブロックに固定される
をさらに備える請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記スケールは、反射回折格子であり、
前記検出器は、前記反射回折格子に光を出射し、前記反射回折格子から反射された光を検出することにより、前記検出信号を生成する
請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記検出基板は、前記第1筐体に対して複数の基板固定ボルトにより固定される
請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
第1筐体と、
前記第1筐体に対して第1方向に相対移動可能なスケールホルダと、
前記第1方向における相対変位を非接触で検出させるためのスケールが形成され、前記スケールホルダに載せ置かれて固定されるスケール板と、
前記第1筐体に固定される検出基板と、
前記検出基板に固定され、前記スケールを非接触で検出して前記スケール板との前記第1方向における変位量を表す検出信号を出力する検出器と、
を備え、
前記スケールホルダは、前記スケール板が固定される位置を規制する規制部を有し、
前記スケールホルダは、前記第1方向に対して垂直な第2方向に窪んだ、第1下側孔および第2下側孔が形成され、
前記スケール板は、前記第2方向に貫通する第1中間孔および第2中間孔が形成され、
前記検出基板は、前記第2方向に貫通する第1上側孔および第2上側孔が形成される
センサ装置。
【請求項10】
前記第1下側孔および前記第2下側孔は、前記第2方向に垂直な平面において、前記スケール板が載せ置かれる領域内における、前記スケール板が載せ置かれる側に形成され、
前記第1中間孔は、前記スケール板が前記スケールホルダに載せ置かれて固定された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第1下側孔と同一の位置に形成され、
前記第2中間孔は、前記スケール板が前記スケールホルダに載せ置かれて固定された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第2下側孔と同一の位置に形成され、
前記第1上側孔は、前記スケールホルダが前記第1筐体に対して予め定められた第1位置に配置され、且つ、前記検出基板が前記第1筐体に対して予め定められた第2位置に配置された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第1下側孔と同一の位置に形成され、
前記第2上側孔は、前記スケールホルダが前記第1筐体に対して前記第1位置に配置され、且つ、前記検出基板が前記第1筐体に対して前記第2位置に配置された状態において、前記第2方向に垂直な平面における前記第2下側孔と同一の位置に形成される
請求項9に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造方法およびセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、反射光学式リニアエンコーダを用いたセンサ装置が知られている(特許文献1、2、3および4)。反射光学式リニアエンコーダは、反射回折格子が形成されたスケール板と、スケール板に光を出射し、スケール板から反射された光を検出する検出器とを備える。反射光学式リニアエンコーダは、反射回折格子により形成される縞を横断する方向に、スケール板と検出器とが相対移動する。検出器は、スケール板から反射された光の強度を表す信号を出力する。そして、センサ装置は、このような反射光学式リニアエンコーダから出力された信号に基づき、スケール板と検出器との相対移動量を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-213455号公報
【特許文献2】特開平7-049247号公報
【特許文献3】特開2019-215209号公報
【特許文献4】特開平8-178701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような反射光学式リニアエンコーダは、スケール板と検出器との相対移動量を精度良く検出させるために、スケール板および検出器を精度良く組み立てなければならない。例えば、一般的な反射光学式リニアエンコーダにおいて、検出器は、基板に取り付けられる。基板は、筐体に取り付けられる。また、スケール板は、スケールホルダに載せ置かれて取り付けられる。そして、スケールホルダは、リニアベアリングを介して筐体に取り付けられる。
【0005】
一般的な製造方法により製造された反射光学式リニアエンコーダは、筐体とリニアベアリングとの間の位置のずれに対する公差、リニアベアリング内でのずれに対する公差、リニアベアリングとスケールホルダとの間の位置のずれに対する公差、スケールホルダとスケール板との間の位置のずれに対する公差、および、基板と筐体との間の位置のずれに対する公差が発生する。このように、一般的な製造方法により製造された反射光学式リニアエンコーダは、多数の公差が発生する。反射光学式リニアエンコーダの精度は、このような公差の積算値に影響される。すなわち、反射光学式リニアエンコーダは、公差を発生させる要素が多いほど、精度が悪くなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、公差を発生させる要素の数を少なくして、精度良く変位量を検出することができるセンサ装置を製造する製造方法およびセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るセンサ装置を製造する製造方法であって、前記センサ装置は、第1筐体と、前記第1筐体に対して第1方向に相対移動可能なスケールホルダと、前記第1方向における相対変位を非接触で検出させるためのスケールが形成され、前記スケールホルダに載せ置かれて固定されるスケール板と、前記第1筐体に固定される検出基板と、前記検出基板に固定され、前記スケールを非接触で検出して前記スケール板との前記第1方向における変位量を表す検出信号を出力する検出器と、を備え、前記スケールホルダは、前記スケール板が固定される位置を規制する規制部を有し、前記スケールホルダは、前記第1方向に対して垂直な第2方向に窪んだ、第1下側孔および第2下側孔が形成され、前記スケール板は、前記第2方向に貫通する第1中間孔および第2中間孔が形成され、前記検出基板は、前記第2方向に貫通する第1上側孔および第2上側孔が形成され、前記検出基板を前記第1筐体に固定する基板固定工程において、直線状の第1規制ピンおよび第2規制ピンを有する位置固定治具における前記第1規制ピンを前記第1上側孔、前記第1中間孔および前記第1下側孔に前記検出基板の側から挿入し、前記第2規制ピンを前記第2上側孔、前記第2中間孔および前記第2下側孔に前記検出基板の側から挿入することにより、前記検出基板と前記スケールホルダとの位置関係を固定した状態において、前記検出基板を前記第1筐体に取り付ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、公差を発生させる要素の数を少なくして、精度良く変位量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、構造物が縮んだ状態のセンサ装置をy方向から見た図である。
図2図2は、構造物が縮んだ状態のセンサ装置をz方向から見た図である。
図3図3は、構造物が伸びた状態のセンサ装置をy方向から見た図である。
図4図4は、構造物が伸びた状態のセンサ装置をz方向から見た図である。
図5図5は、センサ装置の斜視図である。
図6図6は、第1筐体の内部をy方向から見た図である。
図7図7は、第1筐体の内部をz方向から見た図である。
図8図8は、スケール板に対する検出基板の位置および姿勢のずれの要素を示す図である。
図9図9は、センサ装置を一般的な製造方法により製造した場合における公差の要素を示す図である。
図10図10は、スケールホルダ、スケール板、検出基板、および、位置固定治具の外観を示す図である。
図11図11は、スケール板が取り付けられた状態におけるスケールホルダ、検出基板、および、位置固定治具を示す図である。
図12図12は、実施形態に係る製造方法においてセンサ装置を製造した場合に生じる公差の要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図4は、実施形態に係るセンサ装置10の概略構成を構造物12とともに模式的に示す図である。なお、図1は、構造物12が縮んだ状態のセンサ装置10をy方向から見た図である。図2は、構造物12が縮んだ状態のセンサ装置10をz方向から見た図である。図3は、構造物12が伸びた状態のセンサ装置10をy方向から見た図である。図4は、構造物12が伸びた状態のセンサ装置10をz方向から見た図である。
【0011】
センサ装置10は、構造物12に取り付けられる。センサ装置10は、構造物12の伸縮量を表す検出信号を出力する。構造物12は、例えば、橋梁の床版における下側のコンクリート面である。センサ装置10は、例えば、橋梁における、センサ装置10が設けられた対象部分の走行方向の伸縮量を検出する。伸縮量は、例えば、数10センチメートル程度の距離の2点間における、数ナノメートルから数100ナノメートル程度の距離の変化である。
【0012】
ここで、x方向は、センサ装置10による伸縮量の検知方向である。センサ装置10が構造物12に取り付けられた場合、x方向は、センサ装置10より検出される構造物12の伸縮方向となる。なお、x方向を第1方向とも呼ぶ。y方向は、x方向に対して垂直な方向であって、センサ装置10が取り付けられる面に平行な方向である。z方向は、x方向に対して垂直な方向であって、センサ装置10が取り付けられる面に垂直な方向である。なお、z方向を第2方向とも呼ぶ。
【0013】
センサ装置10は、第1筐体22と、第2筐体24とを備える。第1筐体22と第2筐体24とは、別体であり、物理的に分離している。第1筐体22および第2筐体24は、x方向に並んで配置された状態で、例えばボルト等により構造物12に固定される。
【0014】
第1筐体22と第2筐体24とは、構造物12におけるx方向の伸縮に応じて、x方向に離れたり、x方向に近づいたりする。例えば、センサ装置10は、構造物12がx方向に縮んだ場合、図1および図2に示すような状態となる。また、センサ装置10は、構造物12がx方向に伸びた場合、図3および図4に示すような状態となる。
【0015】
センサ装置10は、さらに、剛性を有する長い棒状のロッド26を備える。ロッド26は、一方の端部が第2筐体24に固定される。ロッド26は、第2筐体24に固定されていない側の端部である自由端部26aが、第1筐体22の内部に挿入される。自由端部26aは、第1筐体22に対してx方向に対して相対移動可能となっている。
【0016】
センサ装置10は、さらに、スケール板30を備える。スケール板30は、ロッド26における自由端部26aの側に固定される。スケール板30は、x方向における相対変位を非接触で検出させるためのスケールが形成される。本実施形態において、スケールは、光の反射率が高い領域と光の反射率が低い領域とがx方向に所定間隔毎に交互に並んだ反射回折格子である。
【0017】
センサ装置10は、さらに、検出基板32を備える。検出基板32には、検出器40と、信号処理回路42と、通信部44とが設けられる。
【0018】
検出基板32は、配線が形成される。また、検出基板32は、半導体装置、抵抗およびキャパシタ等の電子デバイスが設けられる。
【0019】
検出基板32は、第1筐体22に固定される。検出基板32は、スケール板30に形成されたスケールに対して、z方向に対向する位置に配置される。
【0020】
検出器40は、検出基板32におけるスケール板30に対向する側の面に固定される。検出器40は、スケール板30に形成されたスケールを非接触で検出して、スケール板30とのx方向における変位量を表す検出信号を出力する。本実施形態において、検出器40は、スケール板30に形成された反射回折格子であるスケールに対して光を出射し、スケールに光を出射することにより反射された光を検出することにより、検出信号を生成する。
【0021】
信号処理回路42は、検出器40から取得した検出信号を送信用の信号に変換したり、検出器40を制御したり、外部装置から取得した制御信号に応じて各種の処理を実行したりする。通信部44は、送信用の信号に変換された検出信号を外部装置へと送信する。例えば、通信部44は、LAN(Local Area Network)ケーブルが接続される。また、通信部44は、外部装置と無線通信をしてもよい。
【0022】
図5は、センサ装置10の斜視図である。なお、図5は、第1筐体22の内部が見える状態でセンサ装置10を示している。図6は、第1筐体22の内部をy方向から見た図である。図7は、第1筐体22の内部をz方向から見た図である。
【0023】
センサ装置10は、さらに、スケールホルダ52を備える。
【0024】
スケールホルダ52は、ロッド26における第1筐体22側の端部、すなわち、第2筐体24に固定されていない側の端部である自由端部26aに取り付けられる。例えば、スケールホルダ52は、複数のホルダ固定ボルト52aにより、ロッド26に固定される。これにより、スケールホルダ52は、ロッド26とともに、第1筐体22に対してx方向に相対移動可能となる。
【0025】
スケール板30は、スケールホルダ52に載せ置かれて固定される。スケール板30は、例えば接着されることにより、スケールホルダ52に固定される。
【0026】
センサ装置10は、さらに、リニアベアリング54を備える。リニアベアリング54は、ガイドレール56と、ブロック58とを含む。
【0027】
ガイドレール56は、第1筐体22に固定される。例えば、ガイドレール56は、第1筐体22の内部の底面に、複数のレール固定ボルト56aにより固定される。
【0028】
ブロック58は、x方向に移動自在にガイドレール56に取り付けられる。ブロック58は、ガイドレール56に取り付けられることにより、x方向以外の移動が規制される。
【0029】
そして、スケールホルダ52は、ブロック58に固定される。従って、リニアベアリング54は、ブロック58に固定されたスケールホルダ52を、x方向に移動自在とし、x方向以外の移動を規制するように、スケールホルダ52をガイドする。
【0030】
検出基板32は、例えば、複数の基板固定ボルト32aにより、第1筐体22に固定される。
【0031】
このような構成のセンサ装置10は、第1筐体22の内部において、第1筐体22の底面側から、ガイドレール56、ブロック58、スケールホルダ52、スケール板30、検出器40、検出基板32の順で配置される。
【0032】
図8は、スケール板30に対する検出基板32の位置および姿勢のずれの要素を示す図である。
【0033】
スケール板30には、スケールである反射回折格子の縞模様がx方向に並んで形成される。検出基板32は、スケール板30に対するy方向の位置ずれである中心ズレが発生する。また、検出基板32は、x方向を中心軸とした回転方向の姿勢のずれであるロールズレが発生する。また、検出基板32は、y方向を中心軸とした回転方向の姿勢のずれであるピッチズレが発生する。また、検出基板32は、z方向を中心軸とした回転方向の姿勢のずれであるヨーズレが発生する。本実施形態において、センサ装置10は、このような各ズレが予め定められた許容範囲内となるように製造される必要がある。
【0034】
図9は、センサ装置10を一般的な製造方法で製造した場合における公差の要素を示す図である。センサ装置10は、一般的な製造方法により製造された場合、次のような公差の要素が存在する。
【0035】
第1に、センサ装置10は、第1筐体22とガイドレール56との間の位置ずれに対する公差である筐体-ガイドレール間公差が生じる。第2に、センサ装置10は、ガイドレール56とブロック58との間の位置ずれに対する公差であるガイドレール-ブロック間公差が生じる。第3に、センサ装置10は、ブロック58とスケールホルダ52との間の位置ずれに対する公差であるブロック-スケールホルダ間公差が生じる。第4に、センサ装置10は、スケールホルダ52とスケール板30との間の位置のずれに対する公差であるスケールホルダ-スケール板間公差が生じる。第5に、センサ装置10は、検出基板32と第1筐体22との間の位置のずれに対する公差が生じる。
【0036】
一般的な製造方法により製造されたセンサ装置10は、このような公差の積算値が変位の検出精度に影響を与える。従って、センサ装置10は、公差を発生させる要素の数を少なくするように製造されることにより、変位の検出精度を向上させることができる。
【0037】
図10は、スケールホルダ52、スケール板30、検出基板32、および、位置固定治具70の外観を示す図である。図11は、スケール板30が取り付けられた状態におけるスケールホルダ52、検出基板32、および、位置固定治具70を示す図である。
【0038】
スケールホルダ52は、規制部80を有する。規制部80は、スケールホルダ52に対する、スケール板30が固定される位置を規制する。このような規制部80は、スケール板30をスケールホルダ52における予め定められた位置に、予め定められた姿勢で固定させることができる。
【0039】
例えば、規制部80は、第1突出部82と、第2突出部84とを含む。第1突出部82および第2突出部84のそれぞれは、スケール板30が載せ置かれる領域に設けられる。そして、第1突出部82および第2突出部84のそれぞれは、スケール板30が載せ置かせる側に周囲から突出する。
【0040】
また、スケール板30は、スケールホルダ52に載せ置かれた状態において、第1突出部82が嵌め込まれる第1規制孔86と、第2突出部84が嵌め込まれる第2規制孔88とが形成される。第1突出部82は、円柱状である。また、第1規制孔86は、第1突出部82の円柱が挿入される貫通孔である。第2突出部84は、中空の筒状である。第2規制孔88は、第2突出部84の円柱が挿入される貫通孔である。
【0041】
さらに、スケールホルダ52は、z方向に窪んだ第1下側孔90および第2下側孔92が形成される。第1下側孔90および第2下側孔92は、z方向に貫通していてもよい。
【0042】
第1下側孔90および第2下側孔92のそれぞれは、z方向に垂直な平面において、スケール板30が載せ置かれる領域内における、スケール板30が載せ置かれる側に形成される。例えば、第2下側孔92は、第2突出部84の領域に形成される。これにより、第2突出部84は、中心に第2下側孔92が形成された中空の筒状となる。
【0043】
スケール板30は、z方向に貫通する第1中間孔94および第2中間孔96が形成される。第1中間孔94は、スケール板30がスケールホルダ52に載せ置かれて固定された状態において、z方向に垂直な平面における第1下側孔90と同一の位置に形成される。第2中間孔96は、スケール板30がスケールホルダ52に載せ置かれて固定された状態において、z方向に垂直な平面における第2下側孔92と同一の位置に形成される。
【0044】
なお、第2下側孔92は、第2突出部84の領域に形成される。従って、第2中間孔96は、第2突出部84が挿入される第2規制孔88と共通である。
【0045】
検出基板32は、z方向に貫通する第1上側孔98および第2上側孔100が形成される。
【0046】
第1上側孔98は、スケールホルダ52が第1筐体22に対して予め定められた第1位置に配置され、且つ、検出基板32が第1筐体22に対して予め定められた第2位置に配置された状態において、z方向に垂直な平面における第1下側孔90と同一の位置に形成される。
【0047】
第2上側孔100は、スケールホルダ52が第1筐体22に対して第1位置に配置され、且つ、検出基板32が第1筐体22に対して第2位置に配置された状態において、z方向に垂直な平面における第2下側孔92と同一の位置に形成される。
【0048】
ここで、センサ装置10を製造する製造方法は、スケール板30をスケールホルダ52に固定するスケール固定工程と、検出基板32を第1筐体22に固定する基板固定工程とを含む。
【0049】
スケール固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、スケールホルダ52が有する規制部80により位置が規制された状態で、スケールホルダ52に載せ置いて接着することにより、スケール板30をスケールホルダ52に固定する。例えば、スケール固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、第1突出部82を第1規制孔86に嵌め込み、第2突出部84を第2規制孔88に嵌め込む位置にスケール板30をスケールホルダ52に載せ置いて、スケールホルダ52にスケール板30を接着する。
【0050】
センサ装置10を製造する製造方法は、このようにスケール板30をスケールホルダ52に固定することにより、センサ装置10における、スケールホルダ52とスケール板30との間の位置のずれを小さくすることができる。
【0051】
また、第1突出部82と第2突出部84とは、外周円の直径が異なっている。例えば、第2突出部84は、第1突出部82より外周円の直径が大きい。スケール板30に形成された第1規制孔86は、円周の大きさが、第1突出部82の外周より大きいが、第2突出部84の外周より小さい。従って、第1規制孔86は、第1突出部82を挿入可能であるが、第2突出部84を挿入することができない。これにより、スケール固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、第1突出部82を第2規制孔88に挿入し、第2突出部84を第1規制孔86に挿入した状態で、スケール板30をスケールホルダ52に接着させてしまうような、取り付け誤りを無くすことができる。
【0052】
また、第1突出部82と第2突出部84とは、突出する高さ異なっている。例えば、第2突出部84は、第1突出部82より突出する高さが高い。これにより、スケール固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、第1突出部82および第2突出部84のうちの高い方の一方に対応する孔を引っ掛けてから、高さの低い他方に対応する孔に嵌め込ませることができる。これにより、スケール固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、スケール板30を正しい位置に容易にスケールホルダ52に固定させることができる。
【0053】
また、スケール板30は、y方向における2つの側部の形状、すなわち、反射回折格子が並んでいる方向における一方の端部の側面形状と、他方の端部の側面形状とが異なっていてもよい。また、スケール板30は、x方向における2つの側部の形状、すなわち、反射回折格子が並んでいる方向に直行する方向における一方の端部の側面形状と、他方の端部の側面形状とが異なっていてもよい。これにより、スケール固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、スケール板30を容易に正しい方向に固定させることができる。
【0054】
また、スケール板30は、第1規制孔86および第2規制孔88が、x方向の2つの端部のうちの一方側の端部に形成されていてもよい。これにより、スケール固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、x方向に対する取り付け方向を誤ることなく、スケール板30を容易に正しい方向に固定させることができる。
【0055】
続いて、センサ装置10を製造する製造方法は、スケール固定工程より後に、基板固定工程を実行する。基板固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、位置固定治具70を用いて、検出基板32を第1筐体22に固定する。
【0056】
位置固定治具70は、ベース部112と、第1規制ピン114と、第2規制ピン116とを含む。
【0057】
ベース部112は、第1規制ピン114および第2規制ピン116を支持する。
【0058】
第1規制ピン114および第2規制ピン116のそれぞれは、棒状、すなわち、直線状である。第1規制ピン114および第2規制ピン116は、平行に設けられる。
【0059】
第1規制ピン114は、軸に垂直の断面の外径形状が、検出基板32に形成された第1上側孔98の内径と略同一である。第1規制ピン114は、軸に垂直の断面の外径形状が、第1中間孔94の内径より小さい。第1規制ピン114は、軸に垂直の断面の外径形状が、スケールホルダ52に形成された第1下側孔90内径と略同一である。従って、第1規制ピン114は、第1上側孔98、第1中間孔94および第1下側孔90に挿入可能である。
【0060】
第2規制ピン116は、軸に垂直の断面の外径形状が、検出基板32に形成された第2上側孔100の内径と略同一である。第2規制ピン116は、軸に垂直の断面の外径形状が、第2中間孔96の内径より小さい。第2規制ピン116は、軸に垂直の断面の外径形状が、スケールホルダ52に形成された第2下側孔92内径と略同一である。従って、第2規制ピン116は、第2上側孔100、第2中間孔96および第2下側孔92に挿入可能である。
【0061】
第1規制ピン114の中心軸と第2規制ピン116の中心軸の間の距離は、第1上側孔98と第2上側孔100との間の距離と一致する。従って、位置固定治具70は、検出基板32に近接することにより、第1規制ピン114が第1上側孔98に挿入されるとともに、第2規制ピン116が第2上側孔100に挿入される状態とすることができる。
【0062】
基板固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、位置固定治具70における第1規制ピン114を第1上側孔98、第1中間孔94および第1下側孔90に検出基板32の側から挿入する。これと同時に、基板固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、位置固定治具70における第2規制ピン116を第2上側孔100、第2中間孔96および第2下側孔92に検出基板32の側から挿入する。
【0063】
基板固定工程において、センサ装置10を製造する製造方法は、このように位置固定治具70により検出基板32とスケールホルダ52との位置関係を固定した状態において、検出基板32を第1筐体22に取り付ける。例えば、センサ装置10を製造する製造方法は、位置固定治具70により検出基板32とスケールホルダ52との位置関係を固定した状態で、検出基板32を第1筐体22に対して複数の基板固定ボルト32aにより固定する。そして、センサ装置10を製造する製造方法は、基板固定工程において、検出基板32を第1筐体22に対して複数の基板固定ボルト32aにより固定した後に、位置固定治具70を第1筐体22から取り外す。
【0064】
センサ装置10を製造する製造方法は、基板固定工程において、以上のように検出基板32を第1筐体22に取り付けることにより、スケールホルダ52を第1筐体22に対して予め定められた第1位置に配置した状態において、検出基板32を第1筐体22に対して予め定められた第2位置に固定することができる。
【0065】
これにより、本実施形態に係るセンサ装置10を製造する製造方法は、スケール板30に対する検出基板32の位置を、容易に精度良く固定することができる。例えば、センサ装置10を製造する製造方法は、スケール板30に対する検出基板32の中心ずれおよびヨーズレを小さくすることができる。
【0066】
なお、第1下側孔90および第2下側孔92は、x方向における異なる位置に形成される。これにより、センサ装置10を製造する製造方法は、スケール板30に対する検出基板32のヨーズレを、より小さくすることができる。
【0067】
また、第1下側孔90および第2下側孔92は、スケール板30に形成されたスケールを挟んで対向する2つの領域のうちの互いに異なる領域に形成される。これにより、センサ装置10を製造する製造方法は、スケール板30に対する検出基板32の中心ズレおよびヨーズレを、より小さくすることができる。
【0068】
図12は、実施形態に係る製造方法においてセンサ装置10を製造した場合に生じる公差の要素を示す図である。本実施形態に係る製造方法により製造されたセンサ装置10は、次のような公差の要素が存在する。
【0069】
第1に、本実施形態に係る製造方法により製造されたセンサ装置10は、スケールホルダ52とスケール板30との間の位置のずれに対する公差であるスケールホルダ-スケール板間公差が生じる。第2に、本実施形態に係る製造方法により製造されたセンサ装置10は、検出基板32と、第1規制ピン114および第2規制ピン116との間の位置ずれに対する公差である基板-ピン間公差が生じる。第3に、本実施形態に係る製造方法により製造されたセンサ装置10は、スケールホルダ52と、第1規制ピン114および第2規制ピン116との間の位置ずれに対する公差であるスケールホルダ-ピン間公差が生じる。
【0070】
すなわち、本実施形態に係る製造方法により製造されたセンサ装置10は、公差を発生させる要素数が3個となっている。従って、本実施形態に係る製造方法により製造されたセンサ装置10は、一般的な製造方法により製造された場合と比較して、公差を発生させる要素の数が少なくなる。このため、本実施形態に係る製造方法によれば、公差を発生させる要素の数を少なくして、精度良く変位量を検出することができるセンサ装置10を製造することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
10 センサ装置、12 構造物、22 第1筐体、24 第2筐体、26 ロッド、30 スケール板、32 検出基板、40 検出器、42 信号処理回路、44 通信部、52 スケールホルダ、54 リニアベアリング、56 ガイドレール、58 ブロック、70 位置固定治具、80 規制部、82 第1突出部、84 第2突出部、86 第1規制孔、88 第2規制孔、90 第1下側孔、92 第2下側孔、94 第1中間孔、96 第2中間孔、98 第1上側孔、100 第2上側孔、112 ベース部、114 第1規制ピン、116 第2規制ピン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12