(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159167
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】インダクタ及びインダクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241031BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241031BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20241031BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01F27/29 Q
H01F17/04 F
H01F41/04 B
H01F27/28 152
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074994
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】須藤 将太朗
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 敦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 昂平
【テーマコード(参考)】
5E043
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB02
5E043EA01
5E043EA06
5E062FG11
5E070AB03
5E070BB03
5E070DA13
5E070EA01
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】電気抵抗を低くすることができるインダクタを提供する。
【解決手段】インダクタ1は、磁性成形体10ならびにコイル部20を有する素体5と、素体5の表面に形成された第1外部電極31及び第2外部電極32と、を備える。素体5は、底面18と天面19と第1端面11及び第2端面12と一方側面13及び他方側面14と、を有する。コイル部20は、金属線w1と金属線w1を覆う絶縁皮膜w2とを有する平角導線wによって形成されており、巻回部21と、巻回部21から引き出されて第1外部電極31に接続される第1引き出し部26と、巻回部21から引き出されて第2外部電極32に接続される第2引き出し部27と、を有する。第1引き出し部26は、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体粉及び樹脂を含む磁性成形体、ならびに、前記磁性成形体に内包されたコイル部を有する素体と、
前記素体の表面に形成された第1外部電極及び第2外部電極と、
を備え、
前記素体は、底面と、前記底面に背向する天面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する第1端面及び第2端面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する一方側面及び他方側面と、を有し、
前記コイル部は、金属線と前記金属線を覆う絶縁皮膜とを有する平角導線によって形成されており、前記平角導線が巻回された巻回部と、前記巻回部の一端から引き出されて前記素体の表面にて前記第1外部電極に接続される第1引き出し部と、前記巻回部の他端から引き出されて前記素体の表面にて前記第2外部電極に接続される第2引き出し部と、を有し、
前記第1引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記第1端面の少なくとも一部、及び、前記一方側面の少なくとも一部に沿って配置され、前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第1外部電極は、前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
インダクタ。
【請求項2】
さらに、
前記素体は、前記第1端面と前記一方側面とをつなぐ一方の第1角曲面を有し、
前記第1引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記一方の第1角曲面に沿って配置され、前記一方の第1角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第1外部電極は、前記一方の第1角曲面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
さらに、
前記第1引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記他方側面に沿って配置され、前記他方側面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第1外部電極は、前記他方側面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
請求項1に記載のインダクタ。
【請求項4】
さらに、
前記素体は、前記第1端面と前記他方側面とをつなぐ他方の第1角曲面を有し、
前記第1引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記他方の第1角曲面に沿って配置され、前記他方の第1角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第1外部電極は、前記他方の第1角曲面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
請求項3に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記第2引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記第2端面の少なくとも一部、及び、前記一方側面の少なくとも一部に沿って配置され、前記第2端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第2外部電極は、前記第2端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
請求項1に記載のインダクタ。
【請求項6】
さらに、
前記素体は、前記第2端面と前記一方側面とをつなぐ一方の第2角曲面を有し、
前記第2引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記一方の第2角曲面に沿って配置され、前記一方の第2角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第2外部電極は、前記一方の第2角曲面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
請求項5に記載のインダクタ。
【請求項7】
さらに、
前記第2引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記他方側面に沿って配置され、前記他方側面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第2外部電極は、前記他方側面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
請求項5に記載のインダクタ。
【請求項8】
さらに、
前記素体は、前記第2端面と前記他方側面とをつなぐ他方の第2角曲面を有し、
前記第2引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記他方の第2角曲面に沿って配置され、前記他方の第2角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、
前記第2外部電極は、前記他方の第2角曲面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている
請求項7に記載のインダクタ。
【請求項9】
磁性体粉及び熱硬化性樹脂を含む複合磁性材料によって形成される磁性成形体、ならびに、前記磁性成形体に内包されたコイル部を有する素体と、
前記素体の表面に形成された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
前記素体は、底面と、前記底面に背向する天面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する第1端面及び第2端面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する一方側面及び他方側面と、を有し、
前記コイル部は、金属線と前記金属線を覆う絶縁皮膜とを有する平角導線によって形成されており、前記平角導線が巻回された巻回部と、前記巻回部の一端から引き出されて前記素体の表面にて前記第1外部電極に接続される第1引き出し部と、前記巻回部の他端から引き出されて前記素体の表面にて前記第2外部電極に接続される第2引き出し部と、
を有するインダクタの製造方法であって、
前記平角導線の幅広面が巻き軸と平行となるように巻回して、前記巻回部、前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部を形成し、さらに、前記第1引き出し部の前記平角導線の幅広面が前記第1端面の少なくとも一部及び前記一方側面の少なくとも一部に沿うように前記第1引き出し部を曲げ加工し、前記第2引き出し部の前記平角導線の幅広面が前記第2端面の少なくとも一部及び前記一方側面の少なくとも一部に沿うように前記第2引き出し部を曲げ加工することで、前記コイル部を形成するコイル部形成工程と、
本成形金型のキャビティに前記コイル部及び前記複合磁性材料を装填して加圧成形することにより、前記素体を形成する素体形成工程と、
前記第1引き出し部のうち前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記平角導線の幅広面にて、及び、前記第2引き出し部のうち前記第2端面及び前記一方側面に沿う前記平角導線の幅広面にて、前記金属線を露出させる金属線露出工程と、
前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて露出する金属線に導電性ペーストを塗布して硬化することで当該金属線に接続する前記第1外部電極を形成し、前記第2端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて露出する金属線に導電性ペーストを塗布して硬化することで当該金属線に接続する前記第2外部電極を形成する外部電極形成工程と、
を含むインダクタの製造方法。
【請求項10】
さらに、
前記コイル部形成工程において、前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部のそれぞれに含まれる前記平角導線の幅広面が、前記素体形成工程にて形成される前記素体の前記他方側面に沿う位置に配置されるように、前記コイル部を予め形成し、
前記金属線露出工程において、前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部のそれぞれの前記他方側面に沿う前記幅広面にて前記金属線を露出する
請求項9に記載のインダクタの製造方法。
【請求項11】
さらに、前記素体形成工程と前記金属線露出工程との間に、前記素体に形成されたバリを除去するバレル研磨工程を含む
請求項9に記載のインダクタの製造方法。
【請求項12】
さらに、
前記コイル部形成工程において、前記第1引き出し部の前記幅広面が、前記素体形成工程にて形成される前記素体の前記第1端面と前記一方側面とをつなぐ一方の第1角曲面に沿う位置に配置されるように、及び、前記第2引き出し部の前記幅広面が、前記素体の前記第2端面と前記一方側面とをつなぐ一方の第2角曲面に沿う位置に配置されるように、前記コイル部を予め形成し、
前記金属線露出工程において、前記一方の第1角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線を露出する、及び、前記一方の第2角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線を露出する
請求項11に記載のインダクタの製造方法。
【請求項13】
さらに、
前記コイル部形成工程において、前記第1引き出し部の前記幅広面が、前記素体形成工程にて形成される前記素体の前記第1端面と前記他方側面とをつなぐ他方の第1角曲面に沿う位置に配置されるように、及び、前記第2引き出し部の前記幅広面が、前記素体の前記第2端面と前記他方側面とをつなぐ他方の第2角曲面に沿う位置に配置されるように、前記コイル部を予め形成し、
前記金属線露出工程において、前記他方の第1角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線を露出する、及び、前記他方の第2角曲面に沿う前記幅広面にて前記金属線を露出する
請求項11に記載のインダクタの製造方法。
【請求項14】
さらに、
前記複合磁性材料を上部用の予備成形金型で予備成形することにより、板形状を有する上部予備成形体を得る上部予備成形体形成工程と、
前記複合磁性材料を下部用の予備成形金型で予備成形することにより、直方体状の底板と、前記底板上に立設した壁部と、を有する下部予備成形体を得る下部予備成形体形成工程と、
を含み、
前記下部予備成形体形成工程において、前記壁部は、前記素体形成工程にて形成される前記素体の前記一方側面側において前記第1引き出し部の端部と前記第2引き出し部の端部との間に位置するように形成され、
前記素体形成工程において、前記キャビティ内に前記下部予備成形体を入れた後、前記曲げ加工によって形成された前記第1引き出し部の端部の先端面が前記壁部の前記第1端面側の壁面に向き合うように、前記コイル部を前記下部予備成形体の上に載せ、さらに、前記上部予備成形体を前記コイル部の上に載せた後に加圧成形する
請求項9に記載のインダクタの製造方法。
【請求項15】
前記コイル部形成工程において、前記平角導線の幅広面が巻き軸と平行になるように上下2段に巻回することで前記巻回部を形成するとともに、前記巻回部の上段側から引き出された前記第1引き出し部、及び、前記巻回部の下段側から引き出された前記第2引き出し部を形成し、
前記下部予備成形体形成工程において、前記底板上に前記壁部よりも高さの低い棚部を形成し、
前記素体形成工程の加圧成形前において、前記棚部は、前記巻回部の上段側から引き出された前記第1引き出し部の端部の下に配置される
請求項14に記載のインダクタの製造方法。
【請求項16】
前記下部予備成形体形成工程において、前記壁部のうち前記底板の中央側の面を曲面状に形成し、
前記素体形成工程の加圧成形前において、前記壁部は、前記曲面状の面が前記巻回部の外周に沿うように配置される
請求項14に記載のインダクタの製造方法。
【請求項17】
前記下部予備成形体形成工程において、前記素体の前記一方側面とは反対側の前記他方側面側にて前記底板上の角部に立設する柱状部を形成し、
前記素体形成工程の加圧成形前において、前記柱状部は、前記巻回部の外周に沿うように配置される
請求項14に記載のインダクタの製造方法。
【請求項18】
前記下部予備成形体形成工程において、前記底板の中央に柱状のコア部を形成し、
前記素体形成工程の加圧成形前において、前記コア部は、前記巻回部の内側に挿入される
請求項14に記載のインダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ及びインダクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チップ状の素体の表面に外部電極を形成した面実装インダクタが用いられている。
【0003】
特許文献1には、磁性粉及び樹脂を含む磁性体、ならびに、磁性体に埋設されており、導線を巻回した巻回部及び巻回部から引き出される一対の引き出し部を有するコイル部を備えた素体と、素体上に形成された一対の外部電極と、を備えるインダクタが開示されている。磁性体は、互いに対向する主面と主面に隣接する複数の側面とを有し、引き出し部の一部は、磁性体の1つの側面に露出して、外部電極と接続されている。外部電極は、上記磁性体の1つの側面を含む部分に導電性ペーストを塗布することで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたインダクタでは、引き出し部を介して互いに接続されたコイル部と外部電極との間の電気抵抗が高くなるという問題がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みて、コイル部と外部電極との間の電気抵抗を低くすることができるインダクタ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るインダクタは、磁性体粉及び樹脂を含む磁性成形体、ならびに、前記磁性成形体に内包されたコイル部を有する素体と、前記素体の表面に形成された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、前記素体は、底面と、前記底面に背向する天面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する第1端面及び第2端面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する一方側面及び他方側面と、を有し、前記コイル部は、金属線と前記金属線を覆う絶縁皮膜とを有する平角導線によって形成されており、前記平角導線が巻回された巻回部と、前記巻回部の一端から引き出されて前記素体の表面にて前記第1外部電極に接続される第1引き出し部と、前記巻回部の他端から引き出されて前記素体の表面にて前記第2外部電極に接続される第2引き出し部と、を有し、前記第1引き出し部は、前記平角導線の幅広面が前記第1端面の少なくとも一部、及び、前記一方側面の少なくとも一部に沿って配置され、前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて前記金属線が露出しており、前記第1外部電極は、前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて露出した前記金属線に接続されている。
【0008】
本開示の一態様に係るインダクタの製造方法は、磁性体粉及び熱硬化性樹脂を含む複合磁性材料によって形成される磁性成形体、ならびに、前記磁性成形体に内包されたコイル部を有する素体と、前記素体の表面に形成された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、前記素体は、底面と、前記底面に背向する天面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する第1端面及び第2端面と、前記底面及び前記天面につながり互いに背向する一方側面及び他方側面と、を有し、前記コイル部は、金属線と前記金属線を覆う絶縁皮
膜とを有する平角導線によって形成されており、前記平角導線が巻回された巻回部と、前記巻回部の一端から引き出されて前記素体の表面にて前記第1外部電極に接続される第1引き出し部と、前記巻回部の他端から引き出されて前記素体の表面にて前記第2外部電極に接続される第2引き出し部と、を有するインダクタの製造方法であって、前記平角導線の幅広面が巻き軸と平行となるように巻回して、前記巻回部、前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部を形成し、さらに、前記第1引き出し部の前記平角導線の幅広面が前記第1端面の少なくとも一部及び前記一方側面の少なくとも一部に沿うように前記第1引き出し部を曲げ加工し、前記第2引き出し部の前記平角導線の幅広面が前記第2端面の少なくとも一部及び前記一方側面の少なくとも一部に沿うように前記第2引き出し部を曲げ加工することで、前記コイル部を形成するコイル部形成工程と、本成形金型のキャビティに前記コイル部及び前記複合磁性材料を装填して加圧成形することにより、前記素体を形成する素体形成工程と、前記第1引き出し部のうち前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記平角導線の幅広面にて、及び、前記第2引き出し部のうち前記第2端面及び前記一方側面に沿う前記平角導線の幅広面にて、前記金属線を露出させる金属線露出工程と、前記第1端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて露出する金属線に導電性ペーストを塗布して硬化することで当該金属線に接続する前記第1外部電極を形成し、前記第2端面及び前記一方側面に沿う前記幅広面にて露出する金属線に導電性ペーストを塗布して硬化することで当該金属線に接続する前記第2外部電極を形成する外部電極形成工程と、
を含むインダクタの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示のインダクタ等によれば、コイル部と外部電極との間の電気抵抗を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るインダクタの斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るインダクタの素体の斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るインダクタのコイル部の斜視図である。
【
図4A】実施の形態に係るインダクタのコイル部の上面図である。
【
図4B】
図1のIVB-IVB線における断面を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係るインダクタの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】コイル部形成工程におけるコイル部の形成過程の一例を示す図である。
【
図7】上部予備成形体形成工程によって形成される上部予備成形体の一例を示す斜視図である。
【
図8A】下部予備成形体形成工程によって形成される下部予備成形体の一例を示す斜視図である。
【
図8B】下部予備成形体の上にコイル部を載置した状態を示す斜視図である。
【
図9】バレル研磨工程及び金属線露出工程が実行された後のそれぞれの素体を示す図である。
【
図10】下部予備成形体の他の一例を示す斜視図である。
【
図11】下部予備成形体の他の一例を示す斜視図である。
【
図12】下部予備成形体の他の一例を示す斜視図である。
【
図13】下部予備成形体の他の一例を示す斜視図である。
【
図14】実施の形態の変形例1に係るインダクタの素体の斜視図である。
【
図15】実施の形態の変形例1に係るインダクタのコイル部の斜視図である。
【
図16】実施の形態の変形例2に係るインダクタの素体の斜視図である。
【
図17】実施の形態の変形例2に係るインダクタのコイル部の斜視図である。
【
図18】実施の形態の変形例2に係るインダクタのコイル部の上面図である。
【
図19】実施の形態の変形例3に係るインダクタの素体の斜視図である。
【
図20】実施の形態の変形例3に係るインダクタのコイル部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
近年、電子機器の高性能化に伴って電子機器の低消費電力が重視されるようになり、電子機器の部品として用いられるインダクタにおいて電気抵抗の低抵抗化が要求されている。
【0012】
導電性ペーストは、一般に低温で硬化できるため、磁性体内の樹脂や導線の絶縁皮膜への熱影響を軽減し、チップ状の素体に小型の外部電極を形成することができる。導電性ペーストは、エポキシ樹脂などの有機バインダー樹脂に銀や銅などの複数の導電性粒子を分散させることで形成されている。導電性ペーストで形成された外部電極は、有機バインダー樹脂が硬化する際の硬化収縮により複数の導電性粒子を他の導電部材に接触させることで導電性を確保している。しかしながら、複数の導電性粒子は接触抵抗を有するため、導電性ペーストで外部電極を形成すると、例えば、めっき処理により形成された外部電極や導電性粒子を焼結して形成された外部電極と比べて、コイル部と外部電極との間の電気抵抗が高くなりやすい。
【0013】
本開示は、上記に鑑みて、コイル部と外部電極との間の電気抵抗を低くすることができるインダクタを提供することを目的とする。
【0014】
実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、接続形態、ステップ及びステップの順序等は一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0016】
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、及び、直方体などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0017】
また、各図は、本開示を示すために適宜強調、省略、又は比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係及び比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡素化される場合がある。
【0018】
また、各図には、互いに直交する3方向を意味するX軸、Y軸及びZ軸を示し、必要に応じてこれらの軸及び当該軸に沿う軸方向を説明のために用いる。なお、各軸は、説明のために付されたものであり、インダクタが使用される方向及び姿勢を限定するものではない。
【0019】
(実施の形態)
[インダクタの構成]
実施の形態に係るインダクタの構成について、
図1~
図4Bを参照しながら説明する。インダクタは、コイル素子に流れる電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄える受動素子である。
【0020】
図1は、実施の形態に係るインダクタ1の斜視図である。
図2は、インダクタ1のコイル部20及び磁性成形体10を含む素体5の斜視図である。
図3は、インダクタ1のコイル部20の斜視図である。
図4Aは、コイル部20の上面図である。
図4Bは、
図1のI
VB-IVB線における断面を模式的に示す図である。
【0021】
図1~
図3のそれぞれの(a)及び(b)には、異なる角度から見た斜視図が示されている。
図2には、インダクタ1から第1外部電極31及び第2外部電極32を取り除いた状態の素体5が示されている。また、
図2では、素体5の中のコイル部20が破線で示されている。
図3の(c)及び(d)には、平角導線wの断面図が示されている。
図3の(c)及び(d)では、絶縁皮膜w2にハッチングを施し、金属線w1に対するハッチングを省略している。
図4Bにて示す
図1のIVB-IVB線における断面は、
図3の第1引き出し部26の導線wの軸線を含む面である。
【0022】
図1及び
図2に示すインダクタ1は、磁性成形体10及び磁性成形体10に内包されたコイル部20を含む素体5と、素体5の表面に形成された一対の外部電極と、を備えている。一対の外部電極は、第1外部電極31及び第2外部電極32によって構成されている。本実施の形態のインダクタ1は、表面実装型のインダクタである。
【0023】
コイル部20は、磁性成形体10の内部に設けられている。コイル部20は、平角導線wが巻回されることで形成された巻回部21と、一対の引き出し部と、を有している。一対の引き出し部は、第1引き出し部26及び第2引き出し部27によって構成されている。第1引き出し部26及び第2引き出し部27は、それぞれ、平角導線wの金属線w1が露出した領域である複数の露出領域(
図3の(a)又は(b)において破線で囲まれた領域)を有している。本実施の形態のインダクタ1では、第1外部電極31及び第2外部電極32のそれぞれが、引き出し部に設けられた複数の露出領域に接続されている。この構成により、コイル部と外部電極との間の電気抵抗(直流抵抗)を低くすることができる。以下、インダクタ1が備える各構成要素について説明する。
【0024】
インダクタ1は、例えば、直方体状の素体5の形状によって、およその外形が決定されている。素体5は、金型成形によって任意の形状に成形できる。素体5は、例えば、X軸方向である長さ寸法が2.5mm、Y軸方向である幅寸法が2.0mm、Z軸方向である高さ寸法が1.1mmである。素体5は、磁性成形体10と、磁性成形体10に埋設されたコイル部20と、によって構成されている。
【0025】
磁性成形体10は、磁性体材料である磁性体粉と樹脂材料である結合剤との混合物(複合磁性材料)によって形成された圧粉成形体である。なお、磁性成形体10は、磁性材料を用いて形成されていればよい。磁性材料には、フェライトが用いられてもよく、その他の磁性材料が用いられてもよい。金属磁性体粉末には、Fe-Si-Al系、Fe-Si系、Fe-Si-Cr系、又はFe-Si-Cr-B系等、所定の元素組成を有する粒子状材料が用いられる。また、結合剤は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂材料であり、金属磁性体粉末の粒子間を絶縁しつつ、金属磁性体粉末の粒子を結着することで一定の形状を保持可能な材料が選択される。
【0026】
磁性成形体10の形状は、例えば、外周面を有する直方体状の形状である。磁性成形体10は、底面18と、天面19と、底面18及び天面19をつなぐ4つの面と、を有している。4つの面は、第1端面11、第2端面12、一方側面13及び他方側面14である。底面18、天面19、第1端面11、第2端面12、一方側面13及び他方側面14は、それぞれ、平坦な平面である。底面18及び天面19は、互いに平行であり、Z軸方向に互いに背向している。第1端面11と第2端面12とは、X軸方向に互いに背向している。一方側面13と他方側面14とは、Y軸方向に互いに背向している。
【0027】
底面18及び天面19と、第1端面11、第2端面12、一方側面13及び他方側面14とは、互いに交差する方向、具体的には直交する方向に延びている。また第1端面11及び第2端面12と、一方側面13及び他方側面14とは、互いに交差する方向、具体的には直交する方向に延びている。
【0028】
第1外部電極31及び第2外部電極32のそれぞれは、素体5の表面に形成されている。
【0029】
第1外部電極31は、天面19に垂直な方向から見て、コイル部20の巻き軸ATよりも第1端面11側に設けられている。具体的には、第1外部電極31は、素体5の第1端面11の全面、及び、第1端面11に形成された第1外部電極31につながるように底面18、天面19、一方側面13及び他方側面14のそれぞれの一部に形成されている。
【0030】
第2外部電極32は、天面19に垂直な方向から見て、コイル部20の巻き軸ATよりも第2端面12側に設けられている。具体的には、第2外部電極32は、素体5の第2端面12の全面、及び、第2端面12に形成された第2外部電極32につながるように底面18、天面19、一方側面13及び他方側面14のそれぞれの一部に形成されている。
【0031】
図3及び
図4Aに示すように、コイル部20は、巻回部21、第1引き出し部26及び第2引き出し部27を有している。巻回部21、第1引き出し部26及び第2引き出し部27は、例えば、平角状の導線である平角導線wによって形成されている。
【0032】
平角導線wは、金属線w1と、金属線w1を覆う絶縁皮膜w2とによって構成されている(
図3の(c)及び(d)参照)。平角導線wの軸方向に垂直な断面すなわち平角導線wの横断面は、長方形状であり、例えば、長辺が0.4mm、短辺が0.1mmである。平角導線wは、長辺を含む面である幅広面Fw、及び、短辺を含む面である幅狭面を有している。金属線w1は、例えば、アルミニウム、銅、銀、及び金等の金属、これらの金属のうち1つ以上を含む合金、ならびに、金属又は合金と他の物質とからなる材料等から選択された金属材料で構成される。絶縁皮膜w2は、ポリイミド又はポリアミドイミドなどの樹脂材料によって形成される。本実施の形態では、金属線w1は銅材料によって形成され、絶縁皮膜w2は、ポリアミドイミドによって形成されている。絶縁皮膜w2の厚みは、例えば1μm以上6μm以下である。
【0033】
コイル部20は、1つの巻回部21と、巻回部21の一端21aから引き出される第1引き出し部26と、巻回部21の他端21bから引き出される第2引き出し部27と、によって構成されている。
【0034】
巻回部21は、平角導線wの幅広面Fwが巻き軸ATと平行となるように、巻き軸ATを中心に巻回形成されている。巻回部21は、角丸長方形状であり、巻き軸ATが底面18及び天面19に交差するように配置される。具体的には、巻回部21は、平角導線wの幅広面Fwが巻き軸ATと平行となるように上下2段に巻回することで形成されている。この例の巻回部21は、4.5ターンの上段部、4.5ターンの下段部、ならびに、最内周部で上段部及び下段部を斜めにつなぐ0.5ターンの中継部(図示省略)によって構成されている。上段部の外周端である巻回部21の一端21aには第1引き出し部26が接続され、下段部の外周端である巻回部21の他端21bには第2引き出し部27が接続されている。
【0035】
第1引き出し部26は、巻回部21の一端21aから引き出されて素体5の表面にて第1外部電極31に接続される。
【0036】
第1引き出し部26は、第1端面11に沿って配置された第1端面側引き出し部26aと、一方側面13に沿って配置された一方側面側引き出し部26bと、を有している。第
1端面側引き出し部26a及び一方側面側引き出し部26bは、底面18に対してほぼ平行に配置されている。第1端面側引き出し部26aは、巻回部21の一端21aから第1端面11に沿って一方側面13に向かって延びるように配置されている。一方側面側引き出し部26bは、第1端面側引き出し部26aの端部を根元にして第2端面12側に向かって延びるように直角に屈曲され、一方側面13に沿って配置されている。一方側面側引き出し部26bは、第1引き出し部26の端部に相当する。例えば、第1端面側引き出し部26aの長さは、素体5の幅寸法の半分以下であり、一方側面側引き出し部26bの長さは、素体5の長さ寸法の1/3以下である。
【0037】
巻回部21から引き出された第1引き出し部26は、平角導線wの幅広面Fwが第1端面11の少なくとも一部、及び、一方側面13の少なくとも一部に沿って配置されている。第1引き出し部26は、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて平角導線wの金属線w1が露出している。
【0038】
第1引き出し部26は、平角導線wの金属線w1が露出した露出領域T1a及びT1bを有している(
図4B参照)。この例では、第1端面側引き出し部26aの幅広面Fwに露出領域T1aが形成され、一方側面側引き出し部26bの幅広面Fwに露出領域T1bが形成されている。露出領域T1a及びT1bを合計した面積は、金属線w1の横断面の面積よりも大きい。なお、露出領域T1a、T1bは、第1端面側引き出し部26a及び一方側面側引き出し部26bにおける平角導線wの幅広面Fwの全てに形成されている必要は無い。例えば、各露出領域T1a、T1bの高さ方向(平角導線wの長辺方向)の寸法は、平角導線wの長辺より短くてもよい。
【0039】
第1引き出し部26の露出領域T1a、T1bは、例えばレーザ加工又はサンドブラスト加工によって平角導線wの絶縁皮膜w2が除去されることで形成される。
【0040】
具体的には、露出領域T1aは、第1端面側引き出し部26aと第1端面11との間に位置する磁性成形体10の材料、及び、平角導線wの絶縁皮膜w2の両方が除去されることで形成される。なお、第1端面側引き出し部26aが第1端面11と同一面上に配置されている場合、絶縁皮膜w2のみが除去されることで露出領域T1aが形成される。この除去加工によって第1端面11に窪みが形成され、第1端面11よりも内側の窪みの底面にて金属線w1が露出する。第1端面11から露出領域T1aまでの深さ(窪みの深さ)は、例えば、絶縁皮膜w2の厚み以上である。金属線w1が露出した露出領域T1aは、素体5の表面の一部である。
【0041】
露出領域T1bは、一方側面側引き出し部26bと一方側面13との間に位置する磁性成形体10の材料、及び、平角導線wの絶縁皮膜w2の両方が除去されることで形成される。なお、一方側面側引き出し部26bが一方側面13と同一面上に配置されている場合、絶縁皮膜w2のみが除去されることで露出領域T1bが形成される。この除去加工によって一方側面13に窪みが形成され、一方側面13よりも内側の窪みの底面にて金属線w1が露出する。一方側面13から露出領域T1bまでの深さ(窪みの深さ)は、例えば、絶縁皮膜w2の厚み以上である。金属線w1が露出した露出領域T1bは、素体5の表面の一部である。
【0042】
第1引き出し部26は、これらの露出領域T1a及びT1bを介して第1外部電極31に接続される。
【0043】
図1に示す第1外部電極31は、素体5の表面に導電性ペーストを塗布することで形成される。導電性ペーストは、エポキシ樹脂などの有機バインダー樹脂に銀や銅などの複数の導電性粒子を分散させたペースト材料である。導電性ペーストを素体5の表面に塗布す
ることで、導電性ペーストが窪みに入り込んで露出領域T1a及びT1bに接触し、導電性ペーストを硬化することで、第1外部電極31が露出領域T1a、T1bに接続される。つまり第1外部電極31は、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続され、第1端面11及び一方側面13という2箇所において第1引き出し部26に接続される。
【0044】
このように、第1外部電極31を、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26とが複数の箇所で接続されることとなる。そのため、第1外部電極31と第1引き出し部26との接触面積を増やすことができる。これにより、コイル部20と第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。また、第1外部電極31を、第1端面11及び一方側面13に沿う金属線w1に接続することで、異なる2つの方向に沿って接続領域を設けることができる。これにより、第1外部電極31と第1引き出し部26との接続強度を上げ、コイル部20と第1外部電極31との接続信頼性を向上することができる。
【0045】
本実施の形態のインダクタ1は、第2引き出し部27及び第2外部電極32についても上記と同様の構成を有している。
【0046】
第2引き出し部27は、巻回部21の他端21bから引き出されて素体5の表面にて第2外部電極32に接続される。
【0047】
第2引き出し部27は、第2端面12に沿って配置された第2端面側引き出し部27aと、一方側面13に沿って配置された一方側面側引き出し部27bと、を有している。第2端面側引き出し部27a及び一方側面側引き出し部27bは、底面18に対してほぼ平行に配置されている。第2端面側引き出し部27aは、巻回部21の他端21bから第2端面12に沿って一方側面13に向かって延びるように配置されている。一方側面側引き出し部27bは、第2端面側引き出し部27aの端部を根元にして第1端面11側に向かって延びるように直角に屈曲され、一方側面13に沿って配置されている。一方側面側引き出し部27bは、第2引き出し部27の端部に相当する。例えば、第2端面側引き出し部27aの長さは、素体5の幅寸法の半分以下であり、一方側面側引き出し部27bの長さは、素体5の長さ寸法の1/3以下である。
【0048】
巻回部21から引き出された第2引き出し部27は、平角導線wの幅広面Fwが第2端面12の少なくとも一部、及び、一方側面13の少なくとも一部に沿って配置されている。第2引き出し部27は、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて平角導線wの金属線w1が露出している。
【0049】
第2引き出し部27は、平角導線wの金属線w1が露出した露出領域T2a及びT2bを有している。この例では、第2端面側引き出し部27aの幅広面Fwに露出領域T2aが形成され、一方側面側引き出し部27bの幅広面Fwに露出領域T2bが形成されている。露出領域T2a及びT2bを合計した面積は、金属線w1の横断面の面積よりも大きい。なお、露出領域T2a、T2bは、第2端面側引き出し部27a及び一方側面側引き出し部27bにおける平角導線wの幅広面Fwの全てに形成されている必要は無い。例えば、各露出領域T2a、T2bの高さ方向(平角導線wの長辺方向)の寸法は、平角導線wの長辺より短くてもよい。
【0050】
第2引き出し部27の露出領域T2a、T2bは、例えばレーザ加工又はサンドブラスト加工によって平角導線wの絶縁皮膜w2が除去されることで形成される。
【0051】
具体的には、露出領域T2aは、第2端面側引き出し部27aと第2端面12との間に
位置する磁性成形体10の材料、及び、平角導線wの絶縁皮膜w2の両方が除去されることで形成される。なお、第2端面側引き出し部27aが第2端面12と同一面上に配置されている場合、絶縁皮膜w2のみが除去されることで露出領域T2aが形成される。この除去加工によって第2端面12に窪みが形成され、第2端面12よりも内側の窪みの底面にて金属線w1が露出する。第2端面12から露出領域T2aまでの深さ(窪みの深さ)は、例えば、絶縁皮膜w2の厚み以上である。金属線w1が露出した露出領域T2aは、素体5の表面の一部である。
【0052】
露出領域T2bは、一方側面側引き出し部27bと一方側面13との間に位置する磁性成形体10の材料、及び、平角導線wの絶縁皮膜w2の両方が除去されることで形成される。なお、一方側面側引き出し部27bが一方側面13と同一面上に配置されている場合、絶縁皮膜w2のみが除去されることで露出領域T2bが形成される。この除去加工によって一方側面13に窪みが形成され、一方側面13よりも内側の窪みの底面にて金属線w1が露出する。一方側面13から露出領域T2bまでの深さ(窪みの深さ)は、例えば、絶縁皮膜w2の厚み以上である。金属線w1が露出した露出領域T2bは、素体5の表面の一部である。
【0053】
第2引き出し部27は、これらの露出領域T2a及びT2bを介して第2外部電極32に接続される。
【0054】
第2外部電極32は、素体5の表面に導電性ペーストを塗布することで形成される。導電性ペーストは、エポキシ樹脂などの有機バインダー樹脂に銀や銅などの複数の導電性粒子を分散させたペースト材料である。導電性ペーストを素体5の表面に塗布することで、導電性ペーストが窪みに入り込んで露出領域T2a及びT2bに接触し、導電性ペーストを硬化することで、第2外部電極32が露出領域T2a、T2bに接続される。つまり第2外部電極32は、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続され、第2端面12及び一方側面13という2箇所において第2引き出し部27に接続される。
【0055】
このように、第2外部電極32を、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27とが複数の箇所で接続されることとなる。そのため、第2外部電極32と第2引き出し部27との接触面積を増やすことができる。これにより、コイル部20と第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。また、第2外部電極32を、第2端面12及び一方側面13に沿う金属線w1に接続することで、異なる2つの方向に沿って接続領域を設けることができる。これにより、第2外部電極32と第2引き出し部27との接続強度を上げ、コイル部20と第2外部電極32との接続信頼性を向上することができる。
【0056】
[インダクタの製造方法]
実施の形態に係るインダクタ1の製造方法について説明する。この例では、実施の形態のインダクタ1の製造方法を代表例に挙げて説明する。
【0057】
図5は、実施の形態のインダクタ1の製造方法を示すフローチャートである。
【0058】
図5に示すように、インダクタ1の製造方法は、コイル部形成工程S110と、上部予備成形体形成工程S120と、下部予備成形体形成工程S130と、素体形成工程S140と、バレル研磨工程S150と、金属線露出工程S160と、外部電極形成工程S170と、を含む。なお、上部予備成形体形成工程S120及び下部予備成形体形成工程S130は、コイル部形成工程S110よりも前に実行されてもよい。
【0059】
図6は、コイル部形成工程S110におけるコイル部20の形成過程の一例を示す図である。
【0060】
コイル部形成工程S110では、まず、平角導線wの幅広面Fwを巻き軸ATと平行となるように巻回して、巻回部21、第1引き出し部26及び第2引き出し部27を形成する。
【0061】
具体的には、平角導線wの幅広面Fwが巻き軸ATと平行になるように上下2段に巻回することで巻回部21を形成するとともに、巻回部21の上段側から引き出された第1引き出し部26、及び、巻回部21の下段側から引き出された第2引き出し部27を形成する(
図6参照)。
【0062】
そして、第1引き出し部26の平角導線wの幅広面Fwが、後工程の素体形成工程S140において、第1端面11の少なくとも一部及び一方側面13の少なくとも一部に沿って配置されるように、第1引き出し部26を予め曲げ加工する。また、第2引き出し部27の平角導線wの幅広面Fwが、素体形成工程S140において、第2端面12の少なくとも一部及び一方側面13の少なくとも一部に沿って配置されるように、第2引き出し部27を予め曲げ加工する(
図3参照)。これらの曲げ加工によって、第1引き出し部26の端部(一方側面側引き出し部26b)、及び、第2引き出し部27の端部(一方側面側引き出し部27b)が形成される。
【0063】
上部予備成形体形成工程S120では、磁性体粉と結合剤との混合物である複合磁性材料を上部用の予備成形金型で予備成形することにより、板形状を有する上部予備成形体50を得る。
【0064】
図7は、上部予備成形体形成工程S120によって形成される上部予備成形体50の一例を示す斜視図である。
【0065】
上部予備成形体50は、本成形金型のキャビティよりも外形が小さい直方体状の形状を有している。上部予備成形体50は、例えば常温で加圧成形により形成される。
【0066】
下部予備成形体形成工程S130では、複合磁性材料を下部用の予備成形金型で予備成形することにより、下部予備成形体60を得る。
【0067】
図8Aは、下部予備成形体形成工程S130によって形成される下部予備成形体60の一例を示す斜視図である。
図8Aには、下部予備成形体60の上にコイル部20が載置される前の状態が示されている。
【0068】
図8Bは、下部予備成形体60の上にコイル部20を載置した状態を示す斜視図である。なお、
図8Bでは、素体形成工程S140における下部予備成形体60及びコイル部20の配置関係を示している。また同図では、下部予備成形体60のコア部65の図示を省略し、コア部65の上面のみを破線で示している。
【0069】
下部予備成形体60は、板形状を有する底板61と、底板61上に設けられた壁部62、棚部63、柱状部64及びコア部65と、を有している。下部予備成形体60は、例えば常温よりも高い温度で加熱加圧成形される。成形された下部予備成形体60は、半硬化状態であってもよいし、完全硬化状態であってもよい。
【0070】
底板61は、本成形金型のキャビティよりも外形が小さい直方体状の形状を有している。つまり底板61は、加圧成形方向から見た場合、長方形状の形状を有している。以下では、後工程で形成される素体5の外形形状を基準として、下部予備成形体60の形状を説明する場合がある。
【0071】
壁部62は、底板61の外周の一部に立設される。壁部62は、底板61の2つの長辺のうちの一方の長辺の外周上に形成される。一方の長辺とは、素体形成工程S140において素体5の一方側面13となる側の辺である。底板61の長辺方向における壁部62の長さは、素体5の長さ寸法よりも短い。壁部62は、素体形成工程S140にて形成される素体5の一方側面13側において、第1引き出し部26の端部と第2引き出し部27の端部との間に位置するように予め形成される。この例における壁部62は、底板61の長辺に沿う方向において2つの部位に分かれて形成されている。
【0072】
壁部62の高さは、平角導線wの長辺の2倍以上である。壁部62は、素体5の第1端面11と対向する壁面62a及び第2端面12と対向する壁面を有している。また、壁部62は、底板61の中央側の面が凹曲面状となるように形成される。壁部62は、素体形成工程S140の加圧成形前において、この凹曲面状の面が巻回部21の外周に沿って配置されるように予め形成される。
【0073】
棚部63は、底板61の2つの長辺のうちの一方の長辺の外周上に立設される。棚部63は、壁部62の壁面62aと底板61の一方の短辺との間に形成される。底板61の一方の短辺とは、素体形成工程S140において素体5の第1端面11となる側の辺である。棚部63の高さは、壁部62よりも低く、平角導線wの長辺以下の寸法である。つまり、壁部62と棚部63とでは段差がある。
【0074】
棚部63は、素体形成工程S140の加圧成形前において、巻回部21の上段側から引き出された第1引き出し部26の端部の下に配置される高さ寸法となるように、予め形成される。棚部63は、壁部62の壁面62aに接触していてもよいし、壁面62aとの間に隙間が設けられていてもよい。棚部63は、壁部62と一体化されていてもよい。
【0075】
柱状部64は、底板61の2つの長辺のうちの他方の長辺の外周上であって、他方の長辺側の両角に立設される。他方の長辺とは、素体形成工程S140における素体5の他方側面14となる側の辺である。柱状部64は、底板61の中央側の面が凹曲面状となるように形成される。柱状部64は、素体形成工程S140の加圧成形前において、巻回部21の外周に沿って配置されるように予め形成される。
【0076】
コア部65は、底板61の中央に立設される。コア部65は、素体形成工程S140の加圧成形前において、巻回部21の内側に挿入されるように予め形成される。
【0077】
素体形成工程S140では、本成形金型のキャビティにコイル部20及び複合磁性材料を装填して加圧成形することにより、素体5を形成する。複合磁性材料とは、前述した下部予備成形体60及び上部予備成形体50である。
【0078】
素体形成工程S140では、まず、キャビティ内に下部予備成形体60を入れる。その後、コイル部20を下部予備成形体60の上に載せる。
【0079】
加圧成形前においてコイル部20は、第1引き出し部26の端部の先端面が、壁部62の第1端面11側の壁面62aに向き合うように配置される。第1引き出し部26の端部は、棚部63の上に位置するように配置される。また、第2引き出し部27の端部の先端面が、壁部62の第2端面12側の壁面に向き合うように配置される。第1引き出し部26の端部は、棚部63の上に位置するように配置され、巻回部21及び第2引き出し部27は、底板61上に配置される。巻回部21は、コア部65の外側であって、かつ、壁部62と柱状部64との間に位置するように配置される。
【0080】
下部予備成形体60から見て言い換えると、棚部63は、巻回部21の上段側から引き出された第1引き出し部26の端部の下に配置される。底板61は、巻回部21及び第2引き出し部27の下に配置される。壁部62は、凹曲面状の面が巻回部21の外周に沿って配置される。柱状部64は、凹曲面状の面が巻回部21の外周に沿って配置される。コア部65は、巻回部21の内側に挿入されるように配置される。
【0081】
素体形成工程S140では、さらにコイル部20の上に上部予備成形体50を載せた後、加圧成形する。これにより、コイル部20と、コイル部20を内包する磁性成形体10とを含む素体5が形成される。
【0082】
次工程では、本成形金型のキャビティから素体5を取り出して、素体5に対する各処理を行う。
【0083】
図9は、バレル研磨工程S150及び金属線露出工程S160が実行された後のそれぞれの素体5を示す図である。
図9の(a)には、バレル研磨工程S150が実行された後の素体5が示され、(b)には、金属線露出工程S160が実行された後の素体5が示されている。
【0084】
バレル研磨工程S150では、素体5をドラム状の容器に入れてバレル研磨することで、素体形成工程S140にて素体5に形成されたバリを除去する。また、バレル研磨することで、素体5の角部が除去され、素体5の角にR形状となる丸みが形成される。後述する一方の第1角曲面r1、他方の第1角曲面r1、一方の第2角曲面r2及び他方の第2角曲面r2は、バレル研磨工程S150によって素体5に形成される。なお、バレル研磨工程S150の後に、素体5を樹脂でコーティングする工程が設けられてもよい。
【0085】
金属線露出工程S160では、第1引き出し部26及び第2引き出し部27の平角導線wに形成された絶縁皮膜w2を除去加工することで露出領域T1a、T1b、T2a、T2bを形成する。露出領域T1a、T1b、T2a、T2bは、ポリアミドイミド樹脂からなる絶縁皮膜w2にグリーンレーザ又はUVレーザを照射することで除去形成される。これにより、第1引き出し部26のうち第1端面11及び一方側面13に沿う平角導線wの幅広面Fwにて金属線w1を露出させる。また、第2引き出し部27のうち第2端面12及び一方側面13に沿う平角導線wの幅広面Fwにて、金属線w1を露出させる。
【0086】
外部電極形成工程S170では、素体5の表面に導電性ペーストを塗布する。より詳細には、素体5の表面に導電性ペーストを塗布することで、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出する金属線w1に導電性ペーストを塗布し、その後、導電性ペーストを硬化することで当該金属線w1に接続する第1外部電極31を形成する。また、素体5の表面に導電性ペーストを塗布することで、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出する金属線w1に導電性ペーストを塗布し、その後、導電性ペーストを硬化することで当該金属線w1に接続する第2外部電極32を形成する。なお、外部電極形成工程S170には、導電性ペーストを塗布及び硬化することで形成した外部電極に、Niめっき及びSnめっきなどのめっき処理を施す工程が含まれていてもよい。
【0087】
これらの工程S110~S170が実行されることでインダクタ1が製造される。
【0088】
なお、
図8Aでは下部予備成形体60の一例を示したが、下部予備成形体60の形状はこれに限られない。
【0089】
【0090】
図10に示すように、下部予備成形体60の壁部62は、2つの部位でなく1つの部位で構成されていてもよい。
図11に示すように、壁部62は、複数の平板状の板によって構成されていてもよい。
図12に示すように、壁部62は、凹曲面状を有するのでなく、1つの平板状の板に形成されていてもよい。
【0091】
図13に示すように、柱状部64は、底板61上に形成されていなくてもよい。
図13に示す下部予備成形体60は、例えば、後述する変形例2及び3のインダクタ1B及び1Cを製造する場合に用いられてもよい。
【0092】
また、下部予備成形体60は、必ずしも壁部62を備えている必要はない。下部予備成形体60は、必ずしも棚部63を備えている必要はない。下部予備成形体60は、必ずしも柱状部64を備えている必要はない。下部予備成形体60は、必ずしもコア部65を備えている必要はない。
【0093】
[実施の形態の変形例1]
実施の形態の変形例1に係るインダクタ1Aについて説明する。変形例1では、外部電極が、素体5Aの角部にて露出した金属線w1に接続されている例について説明する。
【0094】
変形例1のインダクタ1Aは、磁性成形体10及び磁性成形体10に内包されたコイル部20を含む素体5Aと、素体5Aの表面に形成された第1外部電極31及び第2外部電極32と、を備えている。インダクタ1Aの外観は、
図1に示す通りである。
【0095】
図14は、実施の形態の変形例1に係るインダクタ1Aの素体5Aの斜視図である。
図15は、インダクタ1Aのコイル部20Aの斜視図である。
【0096】
変形例1のインダクタ1Aは、実施の形態1のインダクタ1を基本構成とし、さらに以下に示す構成を有している。
【0097】
変形例1の素体5Aは、第1端面11と一方側面13とをつなぐ一方の第1角曲面r1を有している。第1引き出し部26Aは、平角導線wの幅広面Fwが一方の第1角曲面r1に沿って配置され、一方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、一方の第1角曲面に沿う幅広面FWにて露出した金属線w1に接続される。
【0098】
また、変形例1の素体5Aは、第2端面12と一方側面13とをつなぐ一方の第2角曲面r2を有している。第2引き出し部27Aは、平角導線wの幅広面Fwが一方の第2角曲面r2に沿って配置され、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第2外部電極32は、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続される。
【0099】
このように、第1外部電極31を、一方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26Aとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Aと第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。また、第2外部電極32を、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27Aとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Aと第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。
【0100】
また、第1角曲面r1と第1引き出し部26Aとの距離が所定以上離れている場合(例えば、平角導線wの短辺寸法以上離れている場合)、素体5Aに対する第1外部電極31の食い込み量が多くなり、素体5Aに対する第1外部電極31の剥離強度を大きくすることができる。また、第2角曲面r2と第2引き出し部27Aとの距離が所定以上離れている場合(例えば、平角導線wの短辺寸法以上離れている場合)、素体5Aに対する第2外部電極32の食い込み量が多くなり、素体5Aに対する第2外部電極32の剥離強度を大きくすることができる。
【0101】
なお、変形例1のインダクタ1Aは、実施の形態のインダクタ1と同様の製造方法で製造される。一方の第1角曲面r1及び一方の第2角曲面r2にて金属線w1を露出する場合、まず、コイル部形成工程において、第1引き出し部26Aの幅広面Fwが、素体形成工程にて形成される素体5Aの第1端面11と一方側面13とをつなぐ一方の第1角曲面r1に沿う位置に配置されるように、及び、第2引き出し部27Aの幅広面Fwが、素体5Aの第2端面12と一方側面13とをつなぐ一方の第2角曲面r2に沿う位置に配置されるように、コイル部20Aを予め形成する。そして、金属線露出工程において、一方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出し、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出すればよい。
【0102】
[実施の形態の変形例2]
実施の形態の変形例2に係るインダクタ1Bについて説明する。変形例2では、外部電極が、素体5Bの他方側面14にて露出した金属線w1にも接続されている例について説明する。
【0103】
変形例2のインダクタ1Bは、磁性成形体10及び磁性成形体10に内包されたコイル部20Bを含む素体5Bと、素体5Bの表面に形成された第1外部電極31及び第2外部電極32と、を備えている。インダクタ1Bの外観は、
図1に示す通りである。
【0104】
図16は、実施の形態の変形例2に係るインダクタ1Bの素体5Bの斜視図である。
図17は、インダクタ1Bのコイル部20Bの斜視図である。
図18は、インダクタ1Bのコイル部20Bの上面図である。
図16及び
図17のそれぞれの(a)及び(b)には、異なる角度から見た斜視図が示されている。
【0105】
変形例2では、巻回部21が、4.25ターンの上段部、4.25ターンの下段部、ならびに、最内周部で上段部及び下段部を斜めにつなぐ0.5ターンの中継部(図示省略)によって構成されている。上段部の外周端である巻回部21の一端21aには第1引き出し部26Bが接続され、下段部の外周端である巻回部21の他端21bには第2引き出し部27Bが接続されている。
【0106】
第1引き出し部26Bは、他方側面14に沿って配置された他方側面側引き出し部26cと、第1端面11に沿って配置された第1端面側引き出し部26aと、一方側面13に沿って配置された一方側面側引き出し部26bと、を有している。他方側面側引き出し部26cは、巻回部21の一端21aから他方側面14に沿って第1端面11に向かって延びるように配置されている。第1端面側引き出し部26aは、他方側面側引き出し部26cの端部を根元にして一方側面13側に向かって延びるように直角に屈曲され、第1端面11に沿って配置されている。一方側面側引き出し部26bは、第1端面側引き出し部26aの端部を根元にして第2端面12側に向かって延びるように直角に屈曲され、一方側面13に沿って配置されている。
【0107】
第2引き出し部27Bは、他方側面14に沿って配置された他方側面側引き出し部27
cと、第2端面12に沿って配置された第2端面側引き出し部27aと、一方側面13に沿って配置された一方側面側引き出し部27bと、を有している。他方側面側引き出し部27cは、巻回部21の他端21bから他方側面14に沿って第2端面12に向かって延びるように配置されている。第2端面側引き出し部27aは、他方側面側引き出し部27cの端部を根元にして一方側面13側に向かって延びるように直角に屈曲され、第2端面12に沿って配置されている。一方側面側引き出し部27bは、第2端面側引き出し部27aの端部を根元にして第1端面11側に向かって延びるように直角に屈曲され、一方側面13に沿って配置されている。
【0108】
つまり、変形例2の第1引き出し部26Bは、他方側面14、第1端面11及び一方側面13に沿って配置され、第2引き出し部27Bは、他方側面14、第2端面12及び一方側面13に沿って配置されている。
【0109】
変形例2のインダクタ1Bは、実施の形態のインダクタ1を基本構成とし、さらに以下に示す構成を有している。
【0110】
変形例2の第1引き出し部26Bは、平角導線wの金属線w1が露出した露出領域T1c、T1a及びT1bを有している。この例では、他方側面側引き出し部27cの幅広面Fwに露出領域T1cが形成され、第1端面側引き出し部26aの幅広面Fwに露出領域T1aが形成され、一方側面側引き出し部26bの幅広面Fwに露出領域T1bが形成されている。つまり、変形例2の第1引き出し部26Bは、平角導線wの幅広面Fwが他方側面14に沿って配置され、他方側面14に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続される。
【0111】
変形例2の第2引き出し部27Bは、平角導線wの金属線w1が露出した露出領域T2c、T2a及びT2bを有している。この例では、他方側面側引き出し部27cの幅広面Fwに露出領域T2cが形成され、第2端面側引き出し部27aの幅広面Fwに露出領域T2aが形成され、一方側面側引き出し部27bの幅広面Fwに露出領域T2bが形成されている。つまり、変形例2の第2引き出し部27Bは、平角導線wの幅広面Fwが他方側面14に沿って配置され、他方側面14に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第2外部電極32は、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続される。
【0112】
このように、第1外部電極31を、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26Bとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Bと第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。
【0113】
また、第2外部電極32を、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27Bとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Bと第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。
【0114】
なお、変形例2のインダクタ1Bは、実施の形態のインダクタ1と同様の製造方法で製造される。他方側面14にて金属線w1を露出する場合、まず、コイル部形成工程において、第1引き出し部26B及び第2引き出し部27Bのそれぞれに含まれる平角導線wの幅広面Fwが、素体形成工程にて形成される素体5Bの他方側面14に沿う位置に配置されるように、コイル部20を予め形成する。そして、金属線露出工程において、第1引き出し部26B及び第2引き出し部27Bのそれぞれの他方側面14に沿う幅広面Fwにて
金属線w1を露出すればよい。
【0115】
[実施の形態の変形例3]
実施の形態の変形例3に係るインダクタ1Cについて説明する。変形例3では、外部電極が、素体5Cの他方の第1角曲面r1及び他方の第2角曲面r2にて露出した金属線w1に接続されている例について説明する。
【0116】
変形例3のインダクタ1Cは、磁性成形体10及び磁性成形体10に内包されたコイル部20Cを含む素体5Cと、素体5Cの表面に形成された第1外部電極31及び第2外部電極32と、を備えている。インダクタ1Cの外観は、
図1に示す通りである。
【0117】
図19は、実施の形態の変形例3に係るインダクタ1Cの素体5Cの斜視図である。
図20は、インダクタ1Cのコイル部20Cの斜視図である。
図19及び
図20のそれぞれの(a)及び(b)には、異なる角度から見た斜視図が示されている。
【0118】
変形例3では、巻回部21が、4.25ターンの上段部、4.25ターンの下段部、ならびに、最内周部で上段部及び下段部を斜めにつなぐ0.5ターンの中継部(図示省略)によって構成されている。上段部の外周端である巻回部21の一端21aには第1引き出し部26Cが接続され、下段部の外周端である巻回部21の他端21bには第2引き出し部27Cが接続されている。
【0119】
変形例3のコイル部20Cに含まれる第1引き出し部26C及び第2引き出し部27Cの外形形状は、変形例2と同様の構成を有している。変形例3の第1引き出し部26Cも、他方側面14、第1端面11及び一方側面13に沿って配置され、第2引き出し部27Cは、他方側面14、第2端面12及び一方側面13に沿って配置されている。
【0120】
変形例3のインダクタ1Cは、変形例2のインダクタ1Bを基本構成として変形例1のインダクタ1Aの特徴を付加し、さらに以下に示す構成を有している。
【0121】
変形例3の素体5Cは、第1端面11と他方側面14とをつなぐ他方の第1角曲面r1を有している。第1引き出し部26Cは、平角導線wの幅広面Fwが他方の第1角曲面r1に沿って配置され、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0122】
変形例3の素体5Cは、第2端面12と他方側面14とをつなぐ他方の第2角曲面r2を有している。第2引き出し部27Cは、平角導線wの幅広面Fwが他方の第2角曲面r2に沿って配置され、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第2外部電極32は、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0123】
このように、第1外部電極31を、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26Cとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Cと第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。
【0124】
また、第2外部電極32を、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27Cとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Cと第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。
【0125】
なお、変形例3のインダクタ1Cは、実施の形態のインダクタ1と同様の製造方法で製造される。他方の第1角曲面r1及び他方の第2角曲面r2にて金属線w1を露出する場合、まず、コイル部形成工程において、第1引き出し部26Cの幅広面Fwが、素体形成工程にて形成される素体5Cの第1端面11と他方側面14とをつなぐ他方の第1角曲面r1に沿う位置に配置されるように、及び、第2引き出し部27Cの幅広面Fwが、素体5Cの第2端面12と他方側面14とをつなぐ他方の第2角曲面r2に沿う位置に配置されるように、コイル部20Cを予め形成する。そして、金属線露出工程において、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出し、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出すればよい。
【0126】
(まとめ)
実施の形態に係るインダクタ等の各構成を以下に例示する。
【0127】
[例1]本実施の形態に係るインダクタ1は、磁性体粉及び樹脂を含む磁性成形体10、ならびに、磁性成形体10に内包されたコイル部20を有する素体5と、素体5の表面に形成された第1外部電極31及び第2外部電極32と、を備える。素体5は、底面18と、底面18に背向する天面19と、底面18及び天面19につながり互いに背向する第1端面11及び第2端面12と、底面18及び天面19につながり互いに背向する一方側面13及び他方側面14と、を有する。コイル部20は、金属線w1と金属線w1を覆う絶縁皮膜w2とを有する平角導線wによって形成されており、平角導線wが巻回された巻回部21と、巻回部21の一端21aから引き出されて素体5の表面にて第1外部電極31に接続される第1引き出し部26と、巻回部21の他端21bから引き出されて素体5の表面にて第2外部電極32に接続される第2引き出し部27と、を有する。第1引き出し部26は、平角導線wの幅広面Fwが第1端面11の少なくとも一部、及び、一方側面13の少なくとも一部に沿って配置され、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0128】
このように、第1外部電極31を、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26とが複数の箇所で接続されることとなる。そのため、第1外部電極31と第1引き出し部26との接触面積を増やすことができる。これにより、コイル部20と第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。また、第1外部電極31を、第1端面11及び一方側面13に沿う金属線w1に接続することで、異なる2つの方向に沿って接続領域を設けることができる。これにより、第1外部電極31と第1引き出し部26との接続強度を上げ、コイル部20と第1外部電極31との接続信頼性を向上することができる。
【0129】
[例2]インダクタ1Aにおいて、素体5Aは、第1端面11と一方側面13とをつなぐ一方の第1角曲面r1を有する。第1引き出し部26Aは、平角導線wの幅広面Fwが一方の第1角曲面r1に沿って配置され、一方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、一方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0130】
このように、第1外部電極31を、一方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26Aとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Aと第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。例2の構成は、例1に適用可能である。
【0131】
[例3]インダクタ1Bにおいて、第1引き出し部26Bは、平角導線wの幅広面Fw
が他方側面14に沿って配置され、他方側面14に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0132】
このように、第1外部電極31を、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26Bとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Bと第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。例3の構成は、例1又は例2に適用可能である。
【0133】
[例4]インダクタ1Cにおいて、素体5Cは、第1端面11と他方側面14とをつなぐ他方の第1角曲面r1を有する。第1引き出し部26Cは、平角導線wの幅広面Fwが他方の第1角曲面r1に沿って配置され、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第1外部電極31は、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0134】
このように、第1外部電極31を、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第1外部電極31と第1引き出し部26Cとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Cと第1外部電極31との間の電気抵抗を低くすることができる。例4の構成は、例3に適用可能である。
【0135】
[例5]インダクタ1において、第2引き出し部27は、平角導線wの幅広面Fwが第2端面12の少なくとも一部、及び、一方側面13の少なくとも一部に沿って配置され、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第2外部電極32は、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0136】
このように、第2外部電極32を、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27とが複数の箇所で接続されることとなる。そのため、第2外部電極32と第2引き出し部27との接触面積を増やすことができる。これにより、コイル部20と第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。また、第2外部電極32を、第2端面12及び一方側面13に沿う金属線w1に接続することで、異なる2つの方向に沿って接続領域を設けることができる。これにより、第2外部電極32と第2引き出し部27との接続強度を上げ、コイル部20と第2外部電極32との接続信頼性を向上することができる。例5の構成は、例1~例4のいずれかに適用可能である。
【0137】
[例6]インダクタ1Aにおいて、素体5Aは、第2端面12と一方側面13とをつなぐ一方の第2角曲面r2を有する。第2引き出し部27Aは、平角導線wの幅広面Fwが一方の第2角曲面r2に沿って配置され、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第2外部電極32は、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0138】
このように、第2外部電極32を、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27Aとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Aと第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。例6の構成は、例1~例5のいずれかに適用可能である。
【0139】
[例7]インダクタ1Bにおいて、第2引き出し部27Bは、平角導線wの幅広面Fwが他方側面14に沿って配置され、他方側面14に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出
している。第2外部電極32は、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0140】
このように、第2外部電極32を、他方側面14に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27Bとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Bと第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。例7の構成は、例1~例6のいずれかに適用可能である。
【0141】
[例8]インダクタ1Cにおいて、素体5Cは、第2端面12と他方側面14とをつなぐ他方の第2角曲面r2を有する。第2引き出し部27Cは、平角導線wの幅広面Fwが他方の第2角曲面r2に沿って配置され、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1が露出している。第2外部電極32は、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続されている。
【0142】
このように、第2外部電極32を、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて露出した金属線w1に接続することで、第2外部電極32と第2引き出し部27Cとの接触面積をさらに増やすことができる。これにより、コイル部20Cと第2外部電極32との間の電気抵抗を低くすることができる。例8の構成は、例7に適用可能である。
【0143】
[例9]本実施の形態に係るインダクタの製造方法は、磁性体粉及び熱硬化性樹脂を含む複合磁性材料によって形成される磁性成形体10、ならびに、磁性成形体10に内包されたコイル部20を有する素体5と、素体5の表面に形成された第1外部電極31及び第2外部電極32と、を備え、素体5は、底面18と、底面18に背向する天面19と、底面18及び天面19につながり互いに背向する第1端面11及び第2端面12と、底面18及び天面19につながり互いに背向する一方側面13及び他方側面14と、を有し、コイル部20は、金属線w1と金属線w1を覆う絶縁皮膜w2とを有する平角導線wによって形成されており、平角導線wが巻回された巻回部21と、巻回部21の一端21aから引き出されて素体5の表面にて第1外部電極31に接続される第1引き出し部26と、巻回部21の他端21bから引き出されて素体5の表面にて第2外部電極32に接続される第2引き出し部27と、を有するインダクタの製造方法である。このインダクタの製造方法は、平角導線wの幅広面Fwが巻き軸ATと平行となるように巻回して、巻回部21、第1引き出し部26及び第2引き出し部27を形成し、さらに、第1引き出し部26の平角導線wの幅広面Fwが第1端面11の少なくとも一部及び一方側面13の少なくとも一部に沿うように第1引き出し部26を曲げ加工し、第2引き出し部27の平角導線wの幅広面Fwが第2端面12の少なくとも一部及び一方側面13の少なくとも一部に沿うように第2引き出し部27を曲げ加工することで、コイル部20を形成するコイル部形成工程と、本成形金型のキャビティにコイル部20及び複合磁性材料を装填して加圧成形することにより、素体5を形成する素体形成工程と、第1引き出し部26のうち第1端面11及び一方側面13に沿う平角導線wの幅広面Fwにて、及び、第2引き出し部27のうち第2端面12及び一方側面13に沿う平角導線wの幅広面Fwにて、金属線w1を露出させる金属線露出工程と、第1端面11及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出する金属線w1に導電性ペーストを塗布して硬化することで当該金属線w1に接続する第1外部電極31を形成し、第2端面12及び一方側面13に沿う幅広面Fwにて露出する金属線w1に導電性ペーストを塗布して硬化することで当該金属線w1に接続する第2外部電極32を形成する外部電極形成工程と、を含む。
【0144】
上記の製造方法により、第1端面11と一方側面13で第1引き出し部26と第1外部電極31が接続された、及び、第2端面12と一方側面13で第2引き出し部27と第2外部電極32が接続された、低抵抗のインダクタ1を提供することができる。
【0145】
[例10]インダクタの製造方法は、さらに、コイル部形成工程において、第1引き出し部26B及び第2引き出し部27Bのそれぞれに含まれる平角導線wの幅広面Fwが、素体形成工程にて形成される素体5Bの他方側面14に沿う位置に配置されるように、コイル部20を予め形成し、金属線露出工程において、第1引き出し部26B及び第2引き出し部27Bのそれぞれの他方側面14に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出する。
【0146】
これによれば、他方側面14においても外部電極と引き出し部とが接続されることになり、さらに接触面積を広くして接触抵抗を小さくして、インダクタ1Bを低抵抗化することができる。例10の構成は、例9に適用可能である。
【0147】
[例11]インダクタの製造方法は、さらに、素体形成工程と金属線露出工程との間に、素体5に形成されたバリを除去するバレル研磨工程を含む。
【0148】
このバレル研磨工程によれば、素体形成工程にて素体5に形成されたバリを除去することができる。また、素体5の角部を覆う複合磁性材料の厚みを薄くしたり除去したりすることができ、後工程の金属線露出工程において、平角導線wの金属線w1を簡易に露出することが可能となる。例11の構成は、例9又は例10に適用可能である。
【0149】
[例12]インダクタの製造方法は、さらに、コイル部形成工程において、第1引き出し部26Aの幅広面Fwが、素体形成工程にて形成される素体5Aの第1端面11と一方側面13とをつなぐ一方の第1角曲面r1に沿う位置に配置されるように、及び、第2引き出し部27Aの幅広面Fwが、素体5Aの第2端面12と一方側面13とをつなぐ一方の第2角曲面r2に沿う位置に配置されるように、コイル部20Aを予め形成し、金属線露出工程において、一方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出する、及び、一方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出する。
【0150】
これによれば、一方の第1角曲面r1及び一方の第2角曲面r2においても外部電極と引き出し部とが接続されることになり、さらに接触面積を広くして接触抵抗を小さくして、インダクタ1Aを低抵抗化することができる。例12の構成は、例9~例11のいずれかに適用可能である。
【0151】
[例13]インダクタの製造方法は、さらに、コイル部形成工程において、第1引き出し部26Cの幅広面Fwが、素体形成工程にて形成される素体5Cの第1端面11と他方側面14とをつなぐ他方の第1角曲面r1に沿う位置に配置されるように、及び、第2引き出し部27Cの幅広面Fwが、素体5Cの第2端面12と他方側面14とをつなぐ他方の第2角曲面r2に沿う位置に配置されるように、コイル部20Cを予め形成し、金属線露出工程において、他方の第1角曲面r1に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出する、及び、他方の第2角曲面r2に沿う幅広面Fwにて金属線w1を露出する。
【0152】
これによれば、他方の第1角曲面r1及び他方の第2角曲面r2においても外部電極と引き出し部とが接続されることになり、さらに接触面積を広くして接触抵抗を小さくして、インダクタ1Cを低抵抗化することができる。例13の構成は、例12に適用可能である。
【0153】
[例14]インダクタの製造方法は、さらに、複合磁性材料を上部用の予備成形金型で予備成形することにより、板形状を有する上部予備成形体50を得る上部予備成形体形成工程と、複合磁性材料を下部用の予備成形金型で予備成形することにより、直方体状の底板61と、底板61上に立設した壁部62と、を有する下部予備成形体60を得る下部予備成形体形成工程と、を含む。下部予備成形体形成工程において、壁部62は、素体形成工程にて形成される素体5の一方側面13側において第1引き出し部26の端部と第2引
き出し部27の端部との間に位置するように形成され、素体形成工程において、キャビティ内に下部予備成形体60を入れた後、曲げ加工によって形成された第1引き出し部26の端部の先端面が壁部62の第1端面11側の壁面62aに向き合うように、コイル部20を下部予備成形体60の上に載せ、さらに、上部予備成形体50をコイル部20の上に載せた後に加圧成形する。
【0154】
これによれば、下部予備成形体60上にコイル部20を載置する際に、第1引き出し部26の先端面を壁部62に当接又は近接させ、コイル部20の位置決めを行うことができる。これにより、成形時においてコイル部20が回転し、コイル部20の位置がずれることを抑制できる。例14の構成は、例9~例13に適用可能である。
【0155】
[例15]コイル部形成工程において、平角導線wの幅広面Fwが巻き軸ATと平行になるように上下2段に巻回することで巻回部21を形成するとともに、巻回部21の上段側から引き出された第1引き出し部26、及び、巻回部21の下段側から引き出された第2引き出し部27を形成し、下部予備成形体形成工程において、底板61上に壁部62よりも高さの低い棚部63を形成し、素体形成工程の加圧成形前において、棚部63は、巻回部21の上段側から引き出された第1引き出し部26の端部の下に配置される。
【0156】
これによれば、巻回部21の上段から引き出される第1引き出し部26の端部の上下位置の位置決めを簡易に行うことができる。また、位置決めした後、第1引き出し部26の端部が棚部63によって支えられるので、第1引き出し部26の端部が下方向にずれてコイル部20が斜めに傾くことを抑制できる。例15の構成は、例9~14に適用可能である。
【0157】
[例16]下部予備成形体形成工程において、壁部62のうち底板61の中央側の面を曲面状に形成し、素体形成工程の加圧成形前において、壁部62は、曲面状の面が巻回部21の外周に沿うように配置される。
【0158】
これによれば、下部予備成形体60の上にコイル部20を載置するときに、巻回部21の位置決めを簡易に行うことができる。例16の構成は、例9~例15のいずれかに適用可能である。
【0159】
[例17]下部予備成形体形成工程において、素体5の一方側面13とは反対側の他方側面14側にて底板61上の角部に立設する柱状部64を形成し、素体形成工程の加圧成形前において、柱状部64は、巻回部21の外周に沿うように配置される。
【0160】
これによれば、下部予備成形体60の上にコイル部20を載置するときに、コイル部20の巻回部21の位置決めを簡易に行うことができる。例17の構成は、例9~例16のいずれかに適用可能である。
【0161】
[例18]下部予備成形体形成工程において、底板61の中央に柱状のコア部65を形成し、素体形成工程の加圧成形前において、コア部65は、巻回部21の内側に挿入される。
【0162】
これによれば、下部予備成形体60の上にコイル部20を載置するときに、巻回部21の位置決めを簡易に行うことができる。例18の構成は、例9~例17のいずれかに適用可能である。
【0163】
(その他の実施の形態等)
以上、本開示の実施の形態及び変形例に係るインダクタ等について説明したが、本開示
は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態及び変形例に施したもの、ならびに、実施の形態及び変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0164】
例えば、上記したインダクタを用いた電気製品又は電気回路についても、本開示に含まれる。電気製品としては、上述したインダクタを備えた電源装置や、当該電源装置を備える各種機器等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本開示に係るインダクタは、各種装置及び機器等に用いられるインダクタとして有用である。
【符号の説明】
【0166】
1、1A、1B、1C インダクタ
5、5A、5B、5C 素体
10 磁性成形体
11 第1端面
12 第2端面
13 一方側面
14 他方側面
18 底面
19 天面
20、20A、20B、20C コイル部
21 巻回部
21a 一端
21b 他端
26、26A、26B、26C 第1引き出し部
26a 第1端面側引き出し部
26b 一方側面側引き出し部
26c 他方側面側引き出し部
27、27A、27B、27C 第2引き出し部
27a 第2端面側引き出し部
27b 一方側面側引き出し部
27c 他方側面側引き出し部
31 第1外部電極
32 第2外部電極
50 上部予備成形体
60 下部予備成形体
61 底板
62 壁部
62a 壁面
63 棚部
64 柱状部
65 コア部
AT 巻き軸
w 平角導線
w1 金属線
w2 絶縁皮膜
Fw 幅広面
r1 第1角曲面
r2 第2角曲面
T1a、T1b、T1c、T2a、T2b、T2c 露出領域