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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159177
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】貫通部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20241031BHJP
   B60K 37/00 20240101ALI20241031BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02G3/22
B60K37/00 Z
F16L5/02 A
F16L5/02 N
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075008
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】小倉 広幸
【テーマコード(参考)】
3D344
5G363
【Fターム(参考)】
3D344AA12
3D344AC04
3D344AC07
3D344AD13
5G363AA01
5G363AA16
5G363BA02
5G363CA14
5G363CB20
(57)【要約】
【課題】貫通部材の取付作業の短縮を図った貫通部材の取付構造を提供する。
【解決手段】貫通部材としてのワイヤハーネス3は、車体10内を仕切る樹脂パネル2を貫通するように取り付けられる。樹脂パネル2の外縁部には切り欠き22が設けられる。ワイヤハーネス3が、切り欠き22に挿入され、車体10と樹脂パネル2に挟まれて取り付けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体内を仕切るパネルを貫通するように取り付けられる貫通部材の取付構造であって、
前記パネルの外縁部または前記パネルの外縁部が重ねられて前記パネルが取り付けられる前記車体の取付部に切り欠きが設けられ、
前記貫通部材が、前記切り欠きに挿入され、前記車体と前記パネルに挟まれて取り付けられる、
貫通部材の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の貫通部材の取付構造において、
前記貫通部材は、電線、電気接続箱、コネクタの少なくとも1つである、
貫通部材の取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載の貫通部材の取付構造において、
前記貫通部材と前記車体及び前記パネルとの間の隙間を塞ぐ防水構造または防音構造の少なくとも1つを備えた、
貫通部材の取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載の貫通部材の取付構造において、
前記パネルは、車室と前記車室よりも前側に設けられたフロントコンパートメントとを仕切るパネルである、
貫通部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通部材の取付構造、に関する。
【背景技術】
【0002】
車体内はパネルによって仕切られていることがある。従来、パネルに貫通孔を設け、この貫通孔にワイヤハーネス、電気接続箱、コネクタなどの貫通部材を挿入して取り付けることが提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-69640号公報
【特許文献2】特開2002-2414号公報
【特許文献3】特開平7-29638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術によれば、パネルに設けた貫通孔に貫通部材(ワイヤハーネス、電気接続箱、コネクタ)を挿入する作業が必要となり、貫通部材の取付作業に時間がかかる、という課題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、貫通部材の取付作業の短縮を図った貫通部材の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る貫通部材の取付構造は、下記を特徴としている。
車体内を仕切るパネルを貫通するように取り付けられる貫通部材の取付構造であって、
前記パネルの外縁部または前記パネルの外縁部が重ねられて前記パネルが取り付けられる前記車体の取付部に切り欠きが設けられ、
前記貫通部材が、前記切り欠きに挿入され、前記車体と前記パネルに挟まれて取り付けられる、
貫通部材の取付構造であること。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、貫通部材の取付作業の短縮を図った貫通部材の取付構造を提供することができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態における本発明の貫通部材としてのワイヤハーネスの取付構造を示す正面図である。
図2図2は、図1に示すワイヤハーネスの取付構造の分解図である。
図3図3は、図1のA-A線断面図である。
図4図4は、第2実施形態における本発明の貫通部材としての電気接続箱の取付構造を示す正面図である。
図5図5は、図4のB-B線断面図である。
図6図6は、第3実施形態における本発明の貫通部材としての中継コネクタの取付構造を示す正面図である。
図7図7は、図6のC-C線断面図である。
図8図8は、第4実施形態における本発明の貫通部材としてのワイヤハーネスの取付構造を示す正面図である。
図9図9は、図8に示すワイヤハーネスの取付構造の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の貫通部材としてのワイヤハーネスの取付構造について図1図3を参照して説明する。同図に示すワイヤハーネスの取付構造1は、金属製の車体10に取り付けられ、車体10において車室と車室よりも前側に設けられたフロントコンパートメントとを仕切るパネル2を貫通するようにワイヤハーネス3を取り付けるための構造である。
【0012】
次に、上述したパネル2が取り付けられる車体10について説明する。本実施形態のパネル2が取り付けられる車体10は、大きな金型で鋳造されて形成されている。
【0013】
大きな金型で鋳造されて形成された車体10は、強度が高い。このため、車室とフロントコンパートメントとの隔壁に車体形状を保持するほどの強度が必要とされない。これにより、車体10と隔壁が一体形成される必要がなく、別体の隔壁を採用することが可能となる。
【0014】
加えて、エンジンが搭載されていない電気自動車の場合、内燃機関がなく、高温になりにくく、騒音も小さい。この理由から、車体10には、隔壁として金属のみならず樹脂も採用することができる。
【0015】
上述の理由から本実施形態では、エンジンが搭載されてない電気自動車の車体10で、かつ、鋳造により形成され、隔壁として樹脂パネル2が採用されたワイヤハーネスの取付構造1を例示する。
【0016】
車体10は、運転席、助手席、後部座席が配置される車室と、車室の前側に設けられたフロントコンパートメントと、が形成されている。図2に示すように、車体10には、車室とフロントコンパートメントとの間に仕切壁はなく、開口11が設けられている。樹脂パネル2は、この車室とフロントコンパートメントとの間の開口11を塞ぐ形状に設けられている。車体10において開口11の内縁部(取付部)には、樹脂パネル2を取り付けるためのボルト4(図1)を通すボルト通し穴12(図2)が複数設けられている。
【0017】
樹脂パネル2には、車体10に樹脂パネル2を取り付けるためのボルト4(図1)を通すボルト通し穴21(図2)が設けられている。ボルト通し穴21は、樹脂パネル2の外縁部に沿って複数設けられている。
【0018】
本実施形態において、樹脂パネル2の外縁部には、切り欠き22が設けられている。そして、図1に示すように、ワイヤハーネス3が切り欠き22に挿入され、車体10と樹脂パネル2との間に挟まれて取り付けられる。本実施形態では切り欠き22は、樹脂パネル2の上側の外縁部を下側に向かって切り欠いて設けられている。切り欠き22の下端は、ワイヤハーネス3の円形の外周に沿って曲線状に設けられている。切り欠き22は上部が開口され、この上部の開口からワイヤハーネス3を切り欠き22内に挿入することができる。
【0019】
ワイヤハーネス3は、複数の電線がテープ巻などにより1本に束ねられ、車室からフロントコンパートメントに亘って配索される。図3に示すように、ワイヤハーネス3は、ゴムなどの弾性部材から構成された円筒状のグロメット5が外挿されている。このワイヤハーネス3のグロメット5が外挿されている部分を切り欠き22内に挿入することにより、ワイヤハーネス3と車体10及び樹脂パネル2の隙間をグロメット5により塞ぐことができ、防水・防音を図ることができる。
【0020】
本実施形態では、グロメット5には、ワイヤハーネス3の貫通方向両端(図3の左右方向両端)から外側に向かって突出するフランジ部51が設けられ、このフランジ部51が樹脂パネル2及び車体10にそれぞれ重ねられる。
【0021】
次に、上述したワイヤハーネス3及び樹脂パネル2の車体10への取付手順について説明する。まず、ワイヤハーネス3のグロメット5が外挿されている部分を樹脂パネル2の切り欠き22内に挿入する。このとき、切り欠き22の上部開口からワイヤハーネス3を挿入する。切り欠き22にワイヤハーネス3を挿入した状態で、車体10に設けた開口11の内縁部に、樹脂パネル2の外縁部を重ね、車体10に設けたボルト通し穴12と樹脂パネル2に設けたボルト通し穴21とを重ねる。なお、本実施形態では、車室側から樹脂パネル2の外縁部を車体10の内縁部に重ねている。そして、ボルト4を樹脂パネル2、車体10に設けたボルト通し穴12、21に通し、ナット(図示せず)を用いて締結する。これにより、ワイヤハーネス3は、樹脂パネル2と車体10との間に挟まれて取り付けられる。
【0022】
上述した実施形態によれば、ワイヤハーネス3を貫通方向に動かして樹脂パネル2に設けた貫通孔に貫通する作業が必要なくなり、ワイヤハーネス3の取付作業の短縮を図ることができる。
【0023】
また、ワイヤハーネス3を貫通孔に挿入する従来の場合、グロメット5の外径が大きすぎると、ワイヤハーネス3を貫通孔に通すことが難しくなるため、グロメット5の外径には大きな制限があった。本実施形態によれば、ワイヤハーネス3を貫通孔に貫通させる必要がないため、グロメット5の外径の制限は従来よりも緩くでき、グロメット5の設計自由度が向上する。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の貫通部材として電気接続箱3Bの取付構造について図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5において、上述した第1実施形態で説明した図1図3と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と第2実施形態とで異なる点は、貫通部材としてワイヤハーネス3に代えて電気接続箱3Bを採用している点である。同図に示す電気接続箱の取付構造1Bは、車体10において車室と車室よりも前側に設けられたフロントコンパートメントとを仕切る樹脂パネル2Bを貫通するように電気接続箱3Bを取り付けるための構造である。
【0025】
車体10は、第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0026】
第1実施形態の樹脂パネル2と第2実施形態の樹脂パネル2Bとで異なる点は、切り欠き22Bの形状と、切り欠き22Bの縁部にボルト通し穴23Bが設けられている点である。
【0027】
本実施形態において、樹脂パネル2Bの外縁部には、切り欠き22Bが設けられている。そして、図4に示すように、電気接続箱3Bが切り欠き22Bに挿入され、車体10と樹脂パネル2Bとの間に挟まれて取り付けられる。切り欠き22Bは、樹脂パネル2Bの上部の外縁部を下側に向かって切り欠いて設けられている。切り欠き22Bは、電気接続箱の外径に沿って矩形状に設けられている。切り欠き22Bは上部が開口され、この上部の開口から電気接続箱3Bを切り欠き22B内に挿入することができる。
【0028】
電気接続箱3Bは、樹脂ケース内にヒューズなどの電気部品が収容された周知の電気接続箱である。本実施形態では、電気接続箱3Bは、樹脂ケースが立方体状に形成されている。また、本実施形態では、図5に示すように、電気接続箱3Bは、車室側及びフロントコンパートメント側の面にそれぞれコネクタ部31Bが設けられている。コネクタ部31Bは、ワイヤハーネス100の端末に設けたコネクタ101にコネクタ接続される。これにより、コネクタ101を介して、車室内に配置される電子機器、フロントコンパートメント内に配置される電子機器の双方を電気接続箱3Bに接続することができる。
【0029】
本実施形態では、電気接続箱3Bには、貫通方向一端側から外側に向かって突出するフランジ部32Bが設けられている。このフランジ部32Bは、図4に示すように樹脂パネル2Bの切り欠き22Bの縁部に重ねられる。図5に示すようにフランジ部32Bにはボルト9を通すボルト通し穴33Bが設けられている。樹脂パネル2Bの切り欠き22Bの縁部にもボルト9を通すボルト通し穴23Bが設けられている。切り欠き22B内に電気接続箱3Bを挿入すると、フランジ部32Bのボルト通し穴33Bと樹脂パネル2Bのボルト通し穴23Bとが重ねられる。このボルト通し穴33B,23Bにボルト9を通した後、ナット(図示せず)を用いて締結すると、電気接続箱3Bを樹脂パネル2Bに固定することができる。
【0030】
電気接続箱3Bには、ゴムなどの弾性部材から構成された四角筒状のグロメット5Bが外挿されている。このグロメット5Bにより、電気接続箱3Bと車体10及び樹脂パネル2Bの隙間を塞いで、防水・防音を図ることができる。
【0031】
次に、上述した電気接続箱3B及び樹脂パネル2Bの車体10への取付手順について説明する。まず、グロメット5Bが外挿された電気接続箱3Bを樹脂パネル2Bの切り欠き22B内に挿入する。このとき、切り欠き22Bの上部開口から電気接続箱3Bを挿入する。その後、ボルト9を用いて、電気接続箱3Bを樹脂パネル2Bに固定する。次に、第1実施形態の樹脂パネル2の車体10への取付手順と同様に、電気接続箱3Bが固定された樹脂パネル2Bを車体10に取り付ける。
【0032】
上述した実施形態によれば、第1実施形態と同様に、電気接続箱3Bの取付作業の短縮を図ることができ、グロメット5Bの設計自由度も向上する。
【0033】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の貫通部材としての中継コネクタ3Cの取付構造について図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7において、上述した第1、第2実施形態で説明した図1図5と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第3実施形態と第2、第3実施形態とで異なる点は、貫通部材としてワイヤハーネス3や電気接続箱3Bに代えて中継コネクタ3C(コネクタ)を採用した点である。同図に示す中継コネクタの取付構造1Cは、車体10において車室と車室よりも前側に設けられたフロントコンパートメントとを仕切る樹脂パネル2Cを貫通するように中継コネクタ3Cを取り付けるための構造である。
【0034】
車体10は、第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0035】
第2実施形態の樹脂パネル2Bと第3実施形態の樹脂パネル2Cとで異なる点は、切り欠き22Cの形状と、切り欠き22Cの縁部にボルト通し穴23Cが設けられている点である。
【0036】
本実施形態において、樹脂パネル2Cの外縁部には、切り欠き22Cが設けられている。そして、図6に示すように、中継コネクタ3Cが切り欠き22Cに挿入され、車体10と樹脂パネル2Cの間に挟まれて取り付けられる。切り欠き22Cは、樹脂パネル2Cの上部の外縁部を下側に向かって切り欠いて設けられている。樹脂パネル2Cは、中継コネクタ3Cの外径に沿って矩形状に設けられている。切り欠き22Cは上部が開口され、この上部の開口から中継コネクタ3Cを切り欠き22C内に挿入することができる。
【0037】
中継コネクタ3Cは、四角筒状のハウジング内に端子金具が収容された周知の中継コネクタである。本実施形態では、図7に示すように、中継コネクタ3Cは、車室側及びフロントコンパートメント側にそれぞれコネクタ部31Cが設けられている。コネクタ部31Cは、ワイヤハーネス100の端末に設けたコネクタ101にコネクタ接続される。これにより、中継コネクタ3C,ワイヤハーネス100を介して、車室内に配置される電子機器と、フロントコンパートメント内に配置される電子機器と、を接続することができる。
【0038】
本実施形態では、中継コネクタ3Cには、貫通方向一端側から外側に向かって突出するフランジ部32Cが設けられている。このフランジ部32Cは、図7に示すように樹脂パネル2Cの切り欠き22Cの縁部に重ねられる。図7に示すようにフランジ部32Cにはボルト9を通すボルト通し穴33Cが設けられている。樹脂パネル2Cの切り欠き22Cの縁部にもボルト9を通すボルト通し穴23Cが設けられている。切り欠き22C内に中継コネクタ3Cを挿入すると、フランジ部32Cのボルト通し穴33Cと樹脂パネル2Cのボルト通し穴23Cとが重ねられる。このボルト通し穴33C,23Cにボルト9を通した後、ナット(図示せず)を用いて締結すると、中継コネクタ3Cを樹脂パネル2Cに固定することができる。
【0039】
中継コネクタ3Cには、ゴムなどの弾性部材から構成された四角筒状のグロメット5Cが外挿されている。このグロメット5Cにより、電気接続箱と車体10及び樹脂パネル2Cの隙間を塞いで、防水・防音を図ることができる。
【0040】
中継コネクタ3Cの樹脂パネル2Cへの取り付け、樹脂パネル2Cの車体への取り付けは、第2実施形態の電気接続箱3Bの樹脂パネル2Bへの取り付け、樹脂パネル2Bの車体10への取り付けと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0041】
上述した実施形態によれば、第1実施形態と同様に、中継コネクタ3Cの取付作業の短縮を図ることができ、グロメット5Cの設計自由度も向上する。
【0042】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のワイヤハーネスの取付構造1Dについて図8及び図9を参照して説明する。図8及び図9において、上述した第1実施形態で説明した図1図3と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
第1実施形態の車体10と第4実施形態の車体10Dとで異なる点は、第4実施形態の車体10Dの開口11の内縁部に、ワイヤハーネス3を挿入する切り欠き13が設けられている点である。ワイヤハーネス3が切り欠き13に挿入され、車体10Dと樹脂パネル2Dとの間に挟まれて取り付けられている。本実施形態では、切り欠き13は、車体10Dの左側の内縁部から左下に向かって切り欠いて設けられ、右側に開口が設けられている。この右側の開口からワイヤハーネス3を切り欠き13内に挿入することができる。
【0044】
第4実施形態の樹脂パネル2Dには切り欠きが設けられていない。ワイヤハーネス3は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0045】
次に、上述したワイヤハーネス3及び樹脂パネル2Dの車体10Dへの取付手順について説明する。まず、ワイヤハーネス3のグロメット5が外挿されている部分を車体10Dの切り欠き13内に挿入する。このとき、切り欠き13の右側開口からワイヤハーネス3を挿入する。次に、樹脂パネル2Dを車体10Dに取り付ける。これにより、ワイヤハーネス3は、樹脂パネル2Dと車体10Dとの間に挟まれて取り付けられる。
【0046】
上述した実施形態によれば、第1実施形態と同様に、ワイヤハーネス3の取付作業の短縮を図ることができ、グロメット5の設計自由度も向上する。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
上述した第4実施形態によれば、ワイヤハーネス3を貫通部材としていたが、これに限ったものではない。車体10D側に切り欠き13に、第2及び第3実施形態のように、電気接続箱3Bや中継コネクタ3Cを挿入してもよい。電気接続箱3Bや中継コネクタ3Cを車体10Dにボルト締結できるようにしてもよい。
【0049】
例えば、車室とフロントコンパートメントとを仕切るパネル2の素材は、樹脂に限定されるものではなく、金属やカーボン製であってもよい。
【0050】
上述の実施形態によれば、車体10は鋳造で形成されたものであったが、車体10としてはパネル2を採用できるものであればよく、鋳造に限定されるものではない。例えば、鍛造により形成されていても良い。
【0051】
上述した実施形態によれば、パネル2が取り付けられる車体10は電気自動車の車体であったが、これに限ったものではない。エンジンが搭載された自動車の車体10であってもよい。
【0052】
上述した実施形態によれば、樹脂パネル2は、車体10の車室とフロントコンパートメントとを仕切るものであったが、これに限ったものではない。樹脂パネル2は、車体内を仕切るものであればよく、例えば、車室とリアコンパートメントとを仕切るものであってもよい。
【0053】
上述した実施形態によれば、車体10,10Dと、樹脂パネル2,2B~2Dと、の何れか一方に切り欠き22,22B,22C,13を設けていたがこれに限ったものではない。車体10,10Dと、樹脂パネル2,2B~2Dと、双方に切り欠きを設けてもよい。
【0054】
上述した実施形態によれば、防音構造または防水構造としては、弾性体から構成されたグロメット5,5B,5Cを採用していたが、これに限ったものではない。防音構造または防水構造としては、ワイヤハーネス3,電気接続箱3B,中継コネクタ3C(貫通部材)と車体10,10D及び樹脂パネル2,2B~2Dとの隙間を防ぐことができる構造であればよく、非弾性体から構成されていてもよい。例えば、防音構造または防水構造を金属や樹脂、不織布等の非弾性体から構成してもよい。
【0055】
ここで、上述した本発明に係る貫通部材の取付構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
車体(10,10D)内を仕切るパネル(2,2B~2D)を貫通するように取り付けられる貫通部材の取付構造(1,1B~1D)であって、
前記パネル(2,2B~2D)の外縁部または前記パネル(2,2B~2D)の外縁部が重ねられて前記パネルが取り付けられる前記車体(10,10D)の取付部に切り欠き(22,22B,22C,13)が設けられ、
前記貫通部材(3,3B,3C)が、前記切り欠き(22,22B,22C,13)に挿入され、前記車体(10,10D)と前記パネル(2,2B~2D)に挟まれて取り付けられる、
貫通部材の取付構造(1,1B~1D)。
【0056】
上記[1]の構成によれば、切り欠き(22,22B,22C,13)の開口から貫通部材(3,3B,3C)を挿入し、パネル(2,2B~2D)を車体(10,10D)に取り付けると、切り欠き(22,22B,22C,13)に挿入された貫通部材(3,3B,3C)がパネル(2,2B~2D)と車体(10,10D)との間に挟まれて取り付けられる。これにより、貫通部材(3,3B,3C)をパネル(2,2B~2D)に設けた貫通孔に貫通する作業が必要なくなり、貫通部材(3,3B,3C)の取付作業の短縮を図ることができる。
【0057】
[2]
[1]に記載の貫通部材の取付構造(1,1B~1D)において、
前記貫通部材は、電線(3)、電気接続箱(3B)、コネクタ(3C)の少なくとも1つである、
貫通部材の取付構造(1,1B~1D)。
【0058】
上記[2]の構成によれば、電線(3)、電気接続箱(3B)、コネクタ(3C)の取付作業の短縮を図ることができる。
【0059】
[3]
[1]に記載の貫通部材の取付構造(1,1B~1D)において、
前記貫通部材(3,3B,3C)と前記車体(10,10D)及び前記パネル(2,2B~2D)との間の隙間を塞ぐ防水構造または防音構造(5,5B,5C)の少なくとも1つを備えた、
貫通部材の取付構造(1,1B~1D)。
【0060】
上記[3]の構成によれば、貫通部材(3,3B,3C)を貫通孔に貫通させる必要がないため、防水構造または防音構造(5,5B,5C)の少なくとも1つを容易に実現することができる。
【0061】
[4]
[1]に記載の貫通部材の取付構造(1,1B~1D)において、
前記パネル(2,2B~2D)は、車室と前記車室よりも前側に設けられたフロントコンパートメントとを仕切るパネルである、
貫通部材の取付構造(1,1B~1D)。
【0062】
上記[4]の構成によれば、車室内に配置される電子機器と、フロントコンパートメント内に配置される電子機器と、を接続することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1D ワイヤハーネスの取付構造(貫通部材の取付構造)
1B 電気接続箱の取付構造(貫通部材の取付構造)
1C 中継コネクタの取付構造(貫通部材の取付構造)
2,2B~2D 樹脂パネル(パネル)
3 ワイヤハーネス(貫通部材、電線)
3B 電気接続箱(貫通部材)
3C 中継コネクタ(貫通部材、コネクタ)
5,5B,5C グロメット(防水構造または防音構造)
10,10D 車体
22,22B,22C,13 切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9