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特開2024-159194ボロメータ、及びボロメータ製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159194
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ボロメータ、及びボロメータ製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20241031BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20241031BHJP
   H01C 1/142 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01J1/02 C
H01C7/04
H01C1/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075033
(22)【出願日】2023-04-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小坂 眞由美
【テーマコード(参考)】
2G065
5E028
5E034
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA12
2G065BA40
5E028BA03
5E028BB10
5E028JC11
5E034BA09
5E034BC09
5E034DB01
(57)【要約】
【課題】検出感度の低下を抑制することができるボロメータ、及びボロメータ製造方法を提供する。
【解決手段】ボロメータは、複数の第一延伸部を備え、複数の第一延伸部が並列方向に並ぶ複数の第一内側面を有し、各第一内側面が並列方向と交差する延伸方向に延びている第一電極と、第一電極に対し、延伸方向に離れて対向している第二電極と、センサ膜と接続部とを備えるセンサ部と、を備え、第一電極と、センサ膜と、第二電極とが、順に延伸方向に並び、接続部が、複数の第一内側面の間を延伸方向に延びて複数の第一内側面とセンサ膜とを繋ぎ、センサ部が、カーボンナノチューブを含む。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一延伸部を備え、前記複数の第一延伸部が並列方向に並ぶ複数の第一内側面を有し、各第一内側面が前記並列方向と交差する延伸方向に延びている第一電極と、
前記第一電極に対し、延伸方向に離れて対向している第二電極と、
センサ膜と接続部とを備えるセンサ部と、
を備え、
前記第一電極と、前記センサ膜と、前記第二電極とが、順に前記延伸方向に並び、
前記接続部が、前記複数の第一内側面の間を前記延伸方向に延びて前記複数の第一内側面と前記センサ膜とを繋ぎ、
前記センサ部が、カーボンナノチューブを含むボロメータ。
【請求項2】
前記第二電極が、複数の第二延伸部を備え、前記複数の第二延伸部が前記並列方向に並ぶ複数の第二内側面を有し、各第二内側面が前記延伸方向に延びている
請求項1に記載のボロメータ。
【請求項3】
前記接続部において、前記カーボンナノチューブは、前記延伸方向に配向している又は前記延伸方向に並んだ束状になっている
請求項1又は2に記載のボロメータ。
【請求項4】
前記複数の第一延伸部を前記並列方向に繋ぐ下地電極をさらに備える
請求項1又は2に記載のボロメータ。
【請求項5】
前記第一電極が、三角波形状又は矩形波形状を有する
請求項1又は2に記載のボロメータ。
【請求項6】
前記接続部の厚さが、前記センサ膜の厚さより大きい
請求項1又は2に記載のボロメータ。
【請求項7】
前記複数の第一延伸部の間隔が、前記第一電極と前記第二電極との間隔より小さい
請求項1又は2に記載のボロメータ。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが半導体型カーボンナノチューブを含む
請求項1又は2に記載のボロメータ。
【請求項9】
複数の第一延伸部を備え、前記複数の第一延伸部が並列方向に並ぶ複数の第一内側面を有し、各第一内側面が前記並列方向と交差する延伸方向に延びている第一電極と、前記第一電極に対し、延伸方向に離れて対向している第二電極とを形成し、
センサ膜と接続部とを備えるセンサ部を形成し、
前記第一電極と、前記センサ膜と、前記第二電極とが、順に前記延伸方向に並び、
前記接続部が、前記複数の第一内側面の間を前記延伸方向に延びて前記複数の第一内側面と前記センサ膜とを繋ぎ、
前記センサ部が、カーボンナノチューブを含む
ボロメータ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボロメータ、及びボロメータ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を検出するために、ボロメータが用いられることは広く知られている。
例えば、特許文献1には、電極と、電極に電気的に接続されたカーボンナノチューブ層とを備えるボロメータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/235636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電極がカーボンナノチューブ層に重ねて形成されていることにより、電極とカーボンナノチューブ層とが接続されている。
しかし、特許文献1に開示されたボロメータの構成では、カーボンナノチューブ層が電極の一部にしか繋がらないことがある。
このため、カーボンナノチューブ層と電極との間の接触抵抗が大きくなり、検出感度が低下することがある。
【0005】
本開示の目的は、上述した課題を解決するボロメータ、及びボロメータ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るボロメータは、複数の第一延伸部を備え、前記複数の第一延伸部が並列方向に並ぶ複数の第一内側面を有し、各第一内側面が前記並列方向と交差する延伸方向に延びている第一電極と、前記第一電極に対し、延伸方向に離れて対向している第二電極と、センサ膜と接続部とを備えるセンサ部と、を備え、前記第一電極と、前記センサ膜と、前記第二電極とが、順に前記延伸方向に並び、前記接続部が、前記複数の第一内側面の間を前記延伸方向に延びて前記複数の第一内側面と前記センサ膜とを繋ぎ、前記センサ部が、カーボンナノチューブを含む。
【0007】
本開示の一態様に係るボロメータ製造方法は、複数の第一延伸部を備え、前記複数の第一延伸部が並列方向に並ぶ複数の第一内側面を有し、各第一内側面が前記並列方向と交差する延伸方向に延びている第一電極と、前記第一電極に対し、延伸方向に離れて対向している第二電極とを形成し、センサ膜と接続部とを備えるセンサ部を形成し、前記第一電極と、前記センサ膜と、前記第二電極とが、順に前記延伸方向に並び、前記接続部が、前記複数の第一内側面の間を前記延伸方向に延びて前記複数の第一内側面と前記センサ膜とを繋ぎ、前記センサ部が、カーボンナノチューブを含む。
【発明の効果】
【0008】
上記一態様によれば、検出感度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係るボロメータの平面図である。
図2図1のII-II線における切断部端面図である。
図3図1のIII-III線における断面図である。
図4図1のIV-IV線における断面図である。
図5図1のV-V線における切断部端面図である。
図6】本開示の第一実施形態に係るセンサ膜の走査電子顕微鏡像の一例を示す図である。
図7】本開示の第一実施形態に係る接続部の走査電子顕微鏡像の一例を示す図である。
図8】本開示の第一実施形態に係るボロメータ製造方法を示すフローチャートである。
図9】本開示の第一実施形態に係るボロメータの動作を説明する平面図である。
図10】本開示の第一実施形態の第一変形例に係るボロメータの断面図である。
図11】本開示の第一実施形態の第三変形例に係るボロメータの平面図である。
図12】本開示の第一実施形態の第四変形例に係るボロメータの平面図である。
図13】本開示の第一実施形態の第五変形例に係るボロメータの平面図である。
図14】本開示の第一実施形態の第六変形例に係るボロメータの平面図である。
図15図14のXV-XV線における切断部端面図である。
図16】本開示の第一実施形態の第七変形例に係るボロメータの平面図である。
図17図16のXVII-XVII線における切断部端面図である。
図18】本開示の第一実施形態の第六変形例又は第七変形例に係るボロメータの一例のAA-AA線における断面図である。
図19】本開示の第一実施形態の第六変形例又は第七変形例に係るボロメータの他の例のAA-AA線における断面図である。
図20】本開示の第二実施形態に係るボロメータの平面図である。
図21】本開示のボロメータの最小構成の実施形態に係るボロメータの平面図である。
図22図21のXXII-XXII線における切断部端面図である。
図23】本開示のボロメータ製造方法の最小構成の実施形態に係るボロメータ製造方法のフローチャートである。
図24】本開示の実施例に係る電極の平面図である。
図25】本開示の実施例で観察された溝におけるカーボンナノチューブ膜の走査電子顕微鏡像である。
図26】本開示の実施例において調べられた電極溝幅(電極周囲長さ)と抵抗値との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
<第一実施形態>
以下、本開示に係る第一実施形態について図1から図19を用いて説明する。
【0012】
(ボロメータの構成)
図1に示すように、ボロメータ1は、第一電極2と、第二電極3と、センサ部4とを備える。
図2から図5に示すように、ボロメータ1は、基板5と、絶縁層6と、をさらに備える。
ボロメータ1は、例えば、非冷却型赤外線センサに用いられる。
基板5は、例えば、シリコン基板である。
絶縁層6は、例えば、二酸化シリコン層である。
絶縁層6は、基板5上に積層されている。
第一電極2と、第二電極3と、センサ部4とは、絶縁層6上に積層されている。
【0013】
(第一電極の構成)
第一電極2は、第一基部21と複数の第一延伸部22とを備える。
第一電極2は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、全体として第一基部21である長方形領域の-X側の長辺から、複数の第一延伸部22である櫛歯が、-X方向に延びている櫛型形状を有する。
複数の第一延伸部22の間隔は、以下に示す第一電極2と第二電極3との間隔より小さい。
例えば、複数の第一延伸部22の間隔は、20μm以下であって、第一電極2と第二電極3との間隔は、20μmより大きい。
【0014】
第一基部21及び複数の第一延伸部22の各々は、絶縁層6上に積層されている層構造であって、絶縁層6から順にチタン層2Tiと金層2Auとが積層されている層構造を有する。
第一基部21は、ボロメータ1の延伸方向DE両端のうちの一端(+X方向側の一端)において、並列方向DPに延びている。
各第一延伸部22は、第一基部21から第二電極3に向かって、延伸方向DEに延びている。
例えば、第一電極2が有する櫛型形状の櫛歯に相当する複数の第一延伸部22は、第一電極2と第二電極3との間に流れる電流の方向と平行に延びていてもよい。
【0015】
図2及び図4に示すように、複数の第一延伸部22は、並列方向DPに並ぶ複数の第一内側面22Sを有する。
各第一内側面22Sは、第一基部21から第二電極3に向かって、延伸方向DEに延びている。
各第一延伸部22の第一内側面22Sの一つは、隣の第一延伸部22の第一内側面22Sの一つと第一溝G1を挟んで対向している。これにより、第一溝G1は、延伸方向DEに延び、複数の第一延伸部22の間を積層方向DSに凹んでいる。
【0016】
なお、本実施形態において、延伸方向DEは、並列方向DPと交差している。
また、延伸方向DE方向の一方向を+X方向ともいい、延伸方向DE方向の他方向を-X方向ともいう。また、並列方向DP方向の一方向を+Y方向ともいい、並列方向DPの他方向を-Y方向ともいう。また、積層方向DSの一方向を+Z方向ともいい、積層方向DSの他方向を-Z方向ともいう。
例えば、延伸方向DEと、並列方向DPと、積層方向DSとは、互いに直交していてもよい。
【0017】
(第二電極の構成)
第二電極3は、第一電極2に対し延伸方向DEに離れて、第一電極2と対向している。
第二電極3は、第二基部31と複数の第二延伸部32とを備える。
第二電極3は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、全体として第二基部31である長方形領域の+X側の長辺から、複数の第二延伸部32である櫛歯が、+X方向に延びている櫛型形状を有する。
複数の第二延伸部32の間隔は、以下に示す第一電極2と第二電極3との間隔より小さい。
例えば、複数の第二延伸部32の間隔は、20μm以下であって、第一電極2と第二電極3との間隔は、20μmより大きい。
【0018】
第一電極2と第二電極3との間隔とは、第一電極2の最も-X側の端と、第二電極3の最も+X側の端との延伸方向DEにおける距離である。
特に本実施形態の場合、第一電極2と第二電極3との間隔とは、複数の第一延伸部22の-X側の最先端と、複数の第二延伸部32の+X側の最先端との延伸方向DEにおける距離である。
【0019】
第二基部31及び複数の第二延伸部32の各々は、絶縁層6上に積層されている層構造であって、絶縁層6から順にチタン層3Tiと金層3Auとが積層されている層構造を有する。
第二基部31は、ボロメータ1の延伸方向DE両端のうちの他端(+X方向側の一端)において、並列方向DPに延びている。
各第二延伸部32は、第二基部31から第一電極2に向かって、延伸方向DEに延びている。
例えば、第二電極3が有する櫛型形状の櫛歯に相当する複数の第二延伸部32は、第一電極2と第二電極3との間に流れる電流の方向と平行に延びていてもよい。
【0020】
図4及び図5に示すように、複数の第二延伸部32は、並列方向DPに並ぶ複数の第二内側面32Sを有する。
各第二内側面32Sは、第二基部31から第一電極2に向かって、延伸方向DEに延びている。
各第二延伸部32の第二内側面32Sの一つは、隣の第二延伸部32の第二内側面32Sの一つと第二溝G2を挟んで対向している。これにより、第二溝G2は、延伸方向DEに延び、複数の第二延伸部32の間を積層方向DSに凹んでいる。
【0021】
(センサ部の構成)
センサ部4は、ボロメータ1が吸収した赤外線による温度変化を、電気抵抗値の変化として検出する。
例えば、センサ部4は、センサ部4が吸収した赤外線による温度変化を、電気抵抗値の変化として検出してもよい。
センサ部4は、センサ膜41と接続部42とを備える。
接続部42の厚さは、センサ膜41の厚さより大きい。
【0022】
センサ膜41は、カーボンナノチューブとして、半導体型カーボンナノチューブを含む。
センサ膜41は、第一電極2と第二電極3との間の領域に拡がる膜である。
センサ膜41は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、一辺が延伸方向DEに延びていて、他辺が並列方向DPに延びている長方形形状を有する。
センサ膜41と接続部42とは、電気的に繋がっていて、一体に形成されている。
第一電極2と、センサ膜41と、第二電極3とは、順に延伸方向DEに並んでいる。
図3及び図4に示すように、センサ膜41は、絶縁層6に接触する層であって、絶縁層6上に直接積層されている。
【0023】
センサ膜41は、図6に示すような、複数のカーボンナノチューブがランダムに配向し、互いにネットワークを形成しているカーボンナノチューブネットワーク膜である。
例えば、各カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブである。
例えば、センサ膜41の厚さは、1nm以上10nm以下の厚さを有する。
【0024】
接続部42は、複数の第一接続パターン43と、複数の第二接続パターン44とを備える。
例えば、各第一接続パターン43及び各第二接続パターン44は、1nm以上10nm以下の厚さを有してもよい。その際、各第一接続パターン43及び各第二接続パターン44は、センサ膜41の厚さより大きい。
図4に示すように、各第一接続パターン43及び各第二接続パターン44は、センサ膜41から続いて絶縁層6に接触する層であって、センサ膜41と同様に絶縁層6上に直接積層されている。
【0025】
各第一接続パターン43は、対応する第一内側面22Sの間を延伸方向DEに延びている。具体的には、各第一接続パターン43は、センサ膜41の延伸方向DE両端のうちの第一基部21側にある一端(+X方向側の一端)から第一基部21に向かって、対応する第一溝G1の底G1bに沿って+X方向に延びている。
各第一接続パターン43は、複数の第一内側面22Sと接触することにより、複数の第一内側面22Sとセンサ膜41とを電気的に繋いでいる。
各第一接続パターン43は、カーボンナノチューブとして、半導体型カーボンナノチューブを含む。
【0026】
同様に、各第二接続パターン44は、対応する第二内側面32Sの間を延伸方向DEに延びている。具体的には、各第二接続パターン44は、センサ膜41の延伸方向DE両端のうちの第二基部31側にある他端(-X方向側の一端)から第二基部31に向かって、対応する第二溝G2の底G2bに沿って-X方向に延びている。
各第二接続パターン44は、複数の第二内側面32Sと接触することにより、複数の第二内側面32Sとセンサ膜41とを電気的に繋いでいる。
各第二接続パターン44は、カーボンナノチューブとして、半導体型カーボンナノチューブを含む。
【0027】
複数の第一接続パターン43と複数の第二接続パターン44との各々において、カーボンナノチューブは、図6に示すような、複数のカーボンナノチューブがランダムに配向し、互いにネットワークを形成しているカーボンナノチューブネットワーク膜である場合もあるが、図7に示すように、延伸方向DEに配向している又は延伸方向DEに並んだ束状になっている場合もある。本開示の効果の点では、延伸方向DEに配向している又は延伸方向DEに並んだ束状の方が望ましい。
【0028】
(ボロメータ製造方法)
本実施形態のボロメータ1の製造方法について説明する。
【0029】
図8に示すように、まず、作業者は、基板5の上に積層されている絶縁層6の上に、第一電極2と第二電極3とを形成する(ST01:電極形成ステップ)。
例えば、ST01では、作業者は、スパッタリング法等により、チタンと金とを順に製膜し、エッチング法等により成膜された層構造をパターニングして、第一電極2と第二電極3とを形成する。
【0030】
ST01の実施に続いて、作業者は、絶縁層6の上にセンサ部4を形成する(ST02:センサ部形成ステップ)。
例えば、ST02では、作業者は、第一電極2と第二電極3との間で露出している絶縁層6の表面と、第一溝G1及び第二溝G2で露出している絶縁層6の表面とに、カーボンナノチューブとして、半導体型カーボンナノチューブが分散している分散液を塗布し(ST021:塗布ステップ)、塗布した分散液を乾燥させる(ST022:乾燥ステップ)。
これにより、第一電極2と第二電極3との間において、センサ膜41が形成されるだけではなく、第一溝G1及び第二溝G2において、複数の第一接続パターン43と、複数の第二接続パターン44とが形成される。
【0031】
第一溝G1及び第二溝G2の狭い領域では、塗布された分散液が溜まりやすい傾向にあるため、ST02により形成されたセンサ部4において、各第一接続パターン43及び各第二接続パターン44の厚さは、センサ膜41の厚さより大きくなる傾向にある。
【0032】
ST02の実施において配されるカーボンナノチューブは、切り立った壁で画成される領域であって、狭い領域である第一溝G1及び第二溝G2に配される。
ここで、複数の第一内側面22S及び複数の第二内側面32Sのような切り立った壁の付近では、分散液の塗布及び乾燥により配されたカーボンナノチューブは、壁に沿って並びやすい傾向にある。
このため、複数の第一接続パターン43及び複数の第二接続パターン44が含むカーボンナノチューブは、延伸方向DEに配向しやすい又は延伸方向DEに並んだ束状になる傾向がある。
【0033】
(ボロメータの動作)
本実施形態のボロメータ1の動作について説明する。
ボロメータ1に赤外線が入射し吸収されると、熱が発生する。例えば、センサ部4が赤外線を吸収すると、センサ部4において熱が発生する。
センサ部4は発生した熱により温められ、センサ部4の電気抵抗値が変化する。
ボロメータ1は、第一電極2と第二電極3との間において、図9に示すような電流を電流方向DIに流すことにより、センサ部4における電気抵抗値の変化を電気的に検出し、赤外線を検出する。
【0034】
(作用及び効果)
本実施形態のボロメータ1では、センサ部4が、複数の第一内側面22Sの間を延伸方向DEに延びている。
このような構成によれば、接続部42が、複数の第一内側面22Sの間を延伸方向DEに延びているため、センサ部4と第一電極2との接触面積が大きくなる。
加えて、このような構成によれば、複数の第一内側面22Sの間において、センサ部4に含まれるカーボンナノチューブの軸が、延伸方向DEに向きやすい。これにより、センサ部4に含まれるカーボンナノチューブの周壁と、複数の第一内側面22Sとの接触面積が増大する。
このため、センサ部4と第一電極2との間の接触抵抗が小さくなり、センサ部4における熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
したがって、本実施形態のボロメータ1によれば、検出感度の低下を抑制することができる。
【0035】
同様に、本実施形態のボロメータ1では、センサ部4が、複数の第二内側面32Sの間を延伸方向DEに延びている。
このような構成によれば、接続部42が、複数の第二内側面32Sの間を延伸方向DEに延びているため、センサ部4と第二電極3との接触面積が大きくなる。
加えて、このような構成によれば、複数の第二内側面32Sの間において、センサ部4に含まれるカーボンナノチューブの軸が、延伸方向DEを向きやすい。これにより、センサ部4に含まれるカーボンナノチューブの周壁と、複数の第二内側面32Sとの接触面積が増大する。
このため、センサ部4と第二電極3との間の接触抵抗が小さくなり、センサ部4における熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
したがって、本実施形態のボロメータ1によれば、検出感度の低下を抑制することができる。
【0036】
カーボンナノチューブによる非冷却型赤外線センサのボロメータの実用化には、TCR(Temperature Coefficient of Resistance:抵抗温度係数)の向上だけでなく、低抵抗化などの特性向上も必要である。低抵抗化のためには、カーボンナノチューブが電極とどのように接合するかが課題である。
ここでボロメータのTCRが大きい程、温度に対する抵抗変化が大きい。このため、TCRの向上としてボロメータのTCRを大きくすることにより、赤外線の検出感度は向上する。
他方、ボロメータの抵抗が小さい程、温度に対する抵抗変化を検出しやすい。このため、ボロメータの低抵抗化により、赤外線の検出感度は向上する。
【0037】
比較例として、分散液を用いたドロップキャスト法でのカーボンナノチューブ膜作製工程で、一対の長方形形状の電極間に、長方形形状のカーボンナノチューブ膜が形成されたボロメータについて検討する。
このような比較例の場合、カーボンナノチューブは各電極上にまたがらずに、一対の電極間のカーボンナノチューブの端のみが、各電極の電極壁下部に接続する構造になる。加えて、ドロップキャスト法で作製されたカーボンナノチューブ膜は、ほぼ一層の隙間の多いカーボンナノチューブネットワーク層によって形成されるので、各電極の電極壁下部面積の一部にしかカーボンナノチューブが接続しない。このため、ボロメータの低抵抗化が難しい。
これに対し、本実施形態によれば、上記のとおり、センサ部4と第二電極3との接触面積が大きくなることに加えて、センサ部4に含まれるカーボンナノチューブの周壁と、複数の第二内側面32Sとの接触面積が増大する。このため、ボロメータの低抵抗化が可能となる。
したがって、本実施形態のボロメータ1によれば、上記比較例に比べて、検出感度の低下を抑制することができる。
【0038】
他の比較例として、各々が櫛型形状であって、互いに延伸方向に離れず、くし歯でかみ合わせ状態になっている一対の電極の間に、上記ドロップキャスト法でカーボンナノチューブ膜が形成されたボロメータについて検討する。
このような他の比較例の場合、櫛歯間を流れる電流の方向に対して、くし歯が延びる方向が交差しているため、一対の電極間のカーボンナノチューブの軸の配向方向が、櫛歯間を流れる電流の方向と交差してしまう。加えて、一対の電極間距離が小さくなることで、金属カーボンナノチューブが電極間に配される場合、TCRが低下しやすい。
これに対し、本実施形態によれば、第一電極2に対し、第二電極3が延伸方向DEに離れて対向しているため、複数の第一内側面22Sの間と複数の第二内側面32Sの間において、カーボンナノチューブの軸の配向方向が、流れる電流の方向を向いている。このため、ボロメータの低抵抗化が可能となる。
加えて、第一電極2と第二電極3との間の距離が大きいので、たとえ、第一電極2と第二電極3との間に金属カーボンナノチューブが配されても、TCRが低下しにくい。
したがって、本実施形態のボロメータ1によれば、上記他の比較例に比べて、検出感度の低下を抑制することができる。
【0039】
本実施形態のボロメータ1では、櫛型形状の電極の櫛歯の間の溝構造により、例えば溝の底面が二酸化シリコンであって、電極が金属の場合には、図7に示すように、櫛歯の間において、櫛歯が延びる方向にカーボンナノチューブを配向させることができる。カーボンナノチューブが、櫛歯が延びる方向に配向することにより、カーボンナノチューブと電極壁面の接触面積を増加させることができる。
【0040】
本実施形態のボロメータ1では、接続部42において、カーボンナノチューブは、延伸方向DEに配向している又は延伸方向DEに並んだ束状になっている。
このような構成によれば、接続部42において、カーボンナノチューブの周壁が、組織的に複数の第一内側面22S及び複数の第二内側面32Sを向く。
これにより、接続部42と、複数の第一内側面22S及び複数の第二内側面32Sとの接触面積が増大する。
【0041】
本実施形態のボロメータ1では、接続部42の厚さが、センサ膜41の厚さより大きい。
これにより、接続部42と、複数の第一内側面22S及び複数の第二内側面32Sとの接触面積が増大する。
【0042】
本実施形態のボロメータ1では、複数の第一延伸部22の間隔が、第一電極2と第二電極3との間隔より小さい。
また、本実施形態のボロメータ1では、複数の第二延伸部32の間隔が、第一電極2と第二電極3との間隔より小さい。
これにより、複数の第一延伸部22の間及び複数の第二延伸部32の間において、センサ部4に含まれるカーボンナノチューブの軸が、延伸方向DEと交差しやすくできる一方で、第一電極2と第二電極3との間に大きな領域を設けることができる。
このため、ボロメータ1は、センサ部4と第一電極2との間の接触抵抗とセンサ部4と第二電極3との間の接触抵抗とを小さくできる一方で、センサ膜41における検出感度を大きくできる。
【0043】
本実施形態のボロメータ1では、センサ部4が、カーボンナノチューブとして、半導体型カーボンナノチューブを含む。
これにより、センサ部4のTCRが大きくなる。
このため、センサ部4における検出感度を大きくすることができる。
【0044】
(第一変形例)
上述の実施形態では、センサ部4が赤外線を吸収しているが、センサ部4の電気抵抗値が変化すれば、ボロメータにおいて、赤外線はどのように吸収されてもよい。
変形例として、図10に示すように、ボロメータ1Aは、センサ部4とは別にセンサ部4の上方を覆う吸収体7を備えてもよい。その際、センサ部4は、吸収体7において赤外線を吸収し、吸収体7において発生した熱による温度変化を、センサ部4における電気抵抗値の変化として検出してもよい。
【0045】
(第二変形例)
上述の実施形態では、接続部42の厚さがセンサ膜41の厚さより大きいが、接続部42が、複数の第一内側面22S及び複数の第二内側面32Sと、センサ膜41と繋いでいるなら、接続部42はどのように構成されてもよい。
変形例として、接続部42の厚さは、センサ膜41の厚さと同じ又はセンサ膜41の厚さより小さくてもよい。
【0046】
(第三変形例)
上述の実施形態では、第一電極2は、第一基部21と複数の第一延伸部22とを備え、第二電極3は、第二基部31と複数の第二延伸部32とを備えるが、第一電極2に対し、延伸方向DEに離れて対向していれば、第二電極3はどのように構成されてもよい。
変形例として、図11に示すように、ボロメータ1Bは、上記実施形態のボロメータ1と同様な第一電極2と、センサ部4とを備える一方、ボロメータ1の第二電極3に代えて、-Z方向に向かって見た時の平面視において、全体として長方形形状の第二電極3Bを備えてもよい。
このような変形例によれば、センサ部4と第一電極2との間の接触抵抗が小さくなり、センサ部4における熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
【0047】
(第四変形例)
上述の実施形態では、センサ膜41は、カーボンナノチューブネットワーク膜であるが、発生した熱により、センサ膜41の電気抵抗値が変化するなら、どのような膜で構成されてもよい。
変形例として、図12に示すように、ボロメータ1Cは、上記実施形態のボロメータ1と同様な第一電極2と、第二電極3とを備える一方、ボロメータ1のセンサ部4に代えて、センサ部4Cを備えてもよい。
ここで、センサ部4Cは、センサ膜41Cと接続部42とを備える。
センサ膜41Cは、接続部42と電気的に繋がっている。
センサ膜41Cは、カーボンナノチューブが延伸方向DEに配向しているカーボンナノチューブ膜である。
カーボンナノチューブが一方向に配向しているカーボンナノチューブ膜は、例えば、絶縁層6にカーボンナノチューブが分散している分散液を一方向に流して塗布することによって製作できる。
このような変形例によれば、センサ部4Cにおける電気抵抗値をさらに小さくできるため、センサ部4Cにおける熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
【0048】
(第五変形例)
上述の実施形態では、第一電極2及び第二電極3は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、矩形波形状を有しているが、センサ部4が、複数の第一内側面22Sの間及び複数の第二内側面32Sの間を延伸方向DEに延びるように構成されるなら、第一電極2及び第二電極3はどのように構成されてもよい。
変形例として、図13に示すように、ボロメータ1Dは、ボロメータ1の第一電極2及び第二電極3に代えて、第一電極2D及び第二電極3Dを備えてもよい。
第一電極2Dは、-Z方向に向かって見た時の平面視において、-X側に三角波形状を有する。
第二電極3Dは、-Z方向に向かって見た時の平面視において、+X側に三角波形状を有する。
【0049】
(第六変形例)
上述の実施形態では、センサ部4は、絶縁層6上に直接積層されているが、接続部42が、複数の第一内側面22S及び複数の第二内側面32Sと、センサ膜41とを繋ぐなら、接続部42は、絶縁層6上にどのように積層されてもよい。
変形例として、図14に示すように、ボロメータ1Eは、ボロメータ1の第一電極2及び第二電極3に代えて、第一電極2E及び第二電極3Eを備えてもよい。その際、図14に示すように、第一電極2Eは、複数の第一延伸部22Eを備える一方、第一基部を備えなくてもよい。同様に、第二電極3Eは、複数の第二延伸部32Eを備える一方、第二基部を備えなくてもよい。
図15に示すように、第一電極2Eの各第一延伸部22Eは、金層2Auで構成されている。
ボロメータ1Eは、下地電極として、複数の第一延伸部22Eを並列方向DPに繋ぐ第一下地電極8Eを備える。
第一下地電極8Eは、チタン層2ETiである。
第一下地電極8Eは、複数の第一延伸部22Eの下及びそれらの間の接続部42の下を並列方向DPに延びている。
第一下地電極8Eは、複数の第一延伸部22Eの下面及びそれらの間の接続部42の下面に亘り、各第一延伸部22Eの下面及びそれらの間の接続部42の下面と接触しながら、絶縁層6上を並列方向DPに連続して延びている。
第二電極3Eの複数の第二延伸部32E及びその下地電極は、第一電極2Eの複数の第一延伸部22E及び第一下地電極8Eと同様に構成されている。
このような変形例によれば、接続部42の側面だけではなく、接続部42の下面も、下地電極を介して、第一電極2E及び第二電極3Eに電気的に接続される。
このため、センサ部4と第一電極2E及び第二電極3Eとの間の接触抵抗がさらに小さくなり、センサ部4における熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
【0050】
(第七変形例)
上述の実施形態では、センサ部4は、絶縁層6上に直接積層されているが、接続部42が、複数の第一内側面22S及び複数の第二内側面32Sと、センサ膜41とを繋ぐなら、接続部42は、絶縁層6上にどのように積層されてもよい。
変形例として、図16に示すように、ボロメータ1Fは、ボロメータ1の第一電極2及び第二電極3に代えて、第一電極2F及び第二電極3Fを備えてもよい。その際、図16に示すように、第一電極2Fは、複数の第一延伸部22Fを備える一方、第一基部を備えなくてもよい。同様に、第二電極3Fは、複数の第二延伸部32Fを備える一方、第二基部を備えなくてもよい。
図17に示すように、第一電極2Fの各第一延伸部22Fは、金層2Auで構成されている。
ボロメータ1Fは、下地電極として、複数の第一延伸部22Fを並列方向DPに繋ぐ第一下地電極8Fを備える。
第一下地電極8Fは、金である中間層2FAu及びチタン層2FTiの積層構造である。
第一下地電極8Fは、複数の第一延伸部22Fの下及びそれらの間の接続部42の下を並列方向DPに延びている。
第一下地電極8Fは、複数の第一延伸部22Fの下面及びそれらの間の接続部42の下面に亘り、各第一延伸部22Fの下面及びそれらの間の接続部42の下面と接触しながら、絶縁層6上を並列方向DPに連続して延びている。その際、各第一延伸部22Fの下面には、中間層2FAuが接触している。
第二電極3Fの複数の第二延伸部32F及びその下地電極は、第一電極2Fの複数の第一延伸部22F及び第一下地電極8Fと同様に構成されている。
このような変形例によれば、第六変形例に比べて、チタンと金との接触面積が大きくなるため、チタン層に積層されている中間層及び金層が剥がれにくい。
したがって、構造的に強いボロメータ1Fを提供できる。
なお、上述の第六変形例及び第七変形例において、下地電極は、一例として、図18に示すように、第一電極及び第二電極下の延伸方向DE全体にあってもよいし、他の例として、図19に示すように、第一電極及び第二電極下の延伸方向DEの端や中央の一部にだけにあってもよい。
【0051】
<第二実施形態>
以下、本開示に係る第二実施形態について、図20を用いて説明する。
本実施形態のボロメータ101は、以下に示す点以外は第一実施形態のボロメータ1と同様な構成を備え、同様に動作し、同様な作用効果を奏する。
【0052】
図20に示すように、ボロメータ101は、第一電極102と、第二電極103と、センサ部104とを備える。
【0053】
第一電極102は、第一基部121と複数の第一延伸部122とを備える。
第一電極102は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、全体として櫛歯が、+X方向及び-X方向に延びている櫛型形状を有する。
第一基部121は、ボロメータ101の延伸方向DEの中央において、並列方向DPに延びている。
各第一延伸部122は、第一基部121から第二電極103に向かって、延伸方向DE(+X方向及び-X方向)に延びている。
【0054】
複数の第一延伸部122は、並列方向DPに並ぶ複数の第一内側面122Sを有する。
各第一内側面122Sは、第一基部121から第二電極103に向かって、延伸方向DE(+X方向及び-X方向)に延びている。
【0055】
第二電極103は、第三電極105と第四電極106とを備える。
第三電極105は、第一電極102の-X側において、第一電極102に対し延伸方向DEに離れて、第一電極102と対向している。
第四電極106は、第一電極102の+X側において、第一電極102に対し延伸方向DEに離れて、第一電極102と対向している。
第三電極105と第四電極106とは、互いに第一電極102を挟んで対向している。
第三電極105と第四電極106との各々は、第二基部131と複数の第二延伸部132とを備える。
【0056】
第三電極105は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、全体として櫛歯が+X方向に延びている櫛型形状を有する。
第三電極105の第二基部131は、ボロメータ101の延伸方向DE両端のうちの一端(-X方向側の一端)において、並列方向DPに延びている。
第三電極105の複数の第二延伸部132は、第三電極105の第二基部131から第一電極102に向かって、延伸方向DE(+X方向)に延びている。
【0057】
第四電極106は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、全体として櫛歯が-X方向に延びている櫛型形状を有する。
第四電極106の第二基部131は、ボロメータ101の延伸方向DE両端のうちの他端(+X方向側の一端)において、並列方向DPに延びている。
第四電極106の複数の第二延伸部132は、第四電極106の第二基部131から第一電極102に向かって、延伸方向DE(―X方向)に延びている。
【0058】
複数の第二延伸部132は、並列方向DPに並ぶ複数の第二内側面132Sを有する。
第三電極105の各第二内側面132Sは、第三電極105の第二基部131から第一電極102に向かって、延伸方向DE(+X方向)に延びている。
第四電極106の各第二内側面132Sは、第四電極106の第二基部131から第一電極102に向かって、延伸方向DE(―X方向)に延びている。
【0059】
センサ部104は、センサ膜141と接続部142とを備える。
センサ膜141は、第一センサ膜145と第二センサ膜146とを備える。
【0060】
第一センサ膜145は、第一電極102と第三電極105との間の領域に拡がる膜である。
第一センサ膜145は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、一辺が延伸方向DEに延びていて、他辺が並列方向DPに延びている長方形形状を有する。
第一センサ膜145と接続部142とは、電気的に繋がっていて、一体に形成されている。
【0061】
第二センサ膜146は、第一電極102と第四電極106との間の領域に拡がる膜である。
第二センサ膜146は、-Z方向に向かって見た時の平面視において、一辺が延伸方向DEに延びていて、他辺が並列方向DPに延びている長方形形状を有する。
第二センサ膜146と接続部142とは、電気的に繋がっていて、一体に形成されている。
第三電極105と、第一センサ膜145と、第一電極102と、第二センサ膜146と、第四電極106とは、順に延伸方向DEに並んでいる。
【0062】
接続部142は、複数の第一接続パターン143と、複数の第二接続パターン144とを備える。
【0063】
各第一接続パターン143は、対応する第一内側面122Sの間を延伸方向DEに延びている。
各第一接続パターン143は、複数の第一内側面122Sと接触することにより、複数の第一内側面122Sと第一センサ膜145及び第二センサ膜146とを電気的に繋いでいる。
【0064】
同様に、各第二接続パターン144は、対応する第二内側面132Sの間を延伸方向DEに延びている。
各第二接続パターン144は、複数の第二内側面132Sと接触することにより、複数の第二内側面132Sと、第一センサ膜145及び第二センサ膜146とを電気的に繋いでいる。
【0065】
(作用及び効果)
本実施形態のボロメータ101では、センサ部104が、複数の第一内側面122Sの間を延伸方向DEに延びている。
このため、第一実施形態と同様に、センサ部104と第一電極102との間の接触抵抗が小さくなり、センサ部104における熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
したがって、本実施形態のボロメータ101によれば、検出感度の低下を抑制することができる。
【0066】
なお、第一実施形態で示した各変形例は、本実施形態においても適用できる。
【0067】
<ボロメータの最小構成の実施形態>
以下、本開示に係るボロメータの最小構成の実施形態について、図21及び図22を用いて説明する。
【0068】
(ボロメータの構成)
図21に示すように、ボロメータ901は、第一電極902と、第二電極903と、センサ部904とを備える。
第一電極902は、複数の第一延伸部922を備える。
図22に示すように、複数の第一延伸部922は、並列方向DPに並ぶ複数の第一内側面922Sを有する。
各第一内側面922Sは、並列方向DPと交差する延伸方向DEに延びている。
第二電極903は、第一電極902に対し、延伸方向DEに離れて対向している。
センサ部904は、センサ膜941と接続部942とを備える。
第一電極902と、センサ膜941と、第二電極903とが、順に延伸方向DEに並んでいる。
接続部942は、複数の第一内側面922Sの間を延伸方向DEに延びて複数の第一内側面922Sとセンサ膜941とを繋いでいる。
センサ部904は、カーボンナノチューブを含む。
【0069】
(作用及び効果)
本実施形態のボロメータ901では、センサ部904が、複数の第一内側面922Sの間を延伸方向DEに延びている。
このような構成によれば、接続部942が複数の第一内側面922Sの間を延伸方向DEに延びているため、センサ部904と第一電極902との接触面積が大きくなる。
加えて、このような構成によれば、複数の第一内側面922Sの間において、センサ部904に含まれるカーボンナノチューブの軸が、延伸方向DEを向きやすい。これにより、センサ部904に含まれるカーボンナノチューブの周壁と、複数の第一内側面922Sとの接触面積が増大する。
このため、センサ部904と第一電極902との間の接触抵抗が小さくなり、センサ部904における熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
したがって、本実施形態のボロメータ901によれば、検出感度の低下を抑制することができる。
【0070】
<ボロメータ製造方法の最小構成の実施形態>
以下、本開示に係るボロメータ製造方法の最小構成の実施形態について、図23を用いて説明する。
【0071】
(ボロメータ製造方法)
図23に示すように、ボロメータ製造方法では、第一電極と第二電極とを形成し(ST901:電極形成ステップ)、センサ部を形成する(ST902:センサ部形成ステップ)。
第一電極は、複数の第一延伸部を備える。
複数の第一延伸部は、並列方向に並ぶ複数の第一内側面を有する。
各第一内側面は、並列方向と交差する延伸方向に延びている。
第二電極は、第一電極に対し、延伸方向に離れて対向している。
センサ部は、センサ膜と接続部とを備える。
第一電極と、センサ膜と、第二電極とが、順に延伸方向に並んでいる。
接続部は、複数の第一内側面の間を延伸方向に延びて複数の第一内側面とセンサ膜とを繋いでいる。
センサ部は、カーボンナノチューブを含む。
【0072】
(作用及び効果)
本実施形態のボロメータ製造方法において製造されるボロメータでは、センサ部が、複数の第一内側面の間を延伸方向に延びている。
このような構成によれば、接続部が複数の第一内側面の間を延伸方向に延びているため、センサ部と第一電極との接触面積が大きくなる。
加えて、このような構成によれば、複数の第一内側面の間において、センサに含まれるカーボンナノチューブの軸が、延伸方向を向きやすい。これにより、センサに含まれるカーボンナノチューブの周壁と、複数の第一内側面との接触面積が増大する。
このため、センサ部と第一電極との間の接触抵抗が小さくなり、センサ部における熱による電気抵抗値の変化が検出しやすい。
したがって、本実施形態のボロメータ製造方法において製造されるボロメータによれば、検出感度の低下を抑制することができる。
【0073】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【実施例0074】
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
本実施例では、実際に図24に示すような櫛型形状の電極(櫛歯の間の溝の幅5μm)を作製し、カーボンナノチューブが分散している分散液を塗布して乾燥したカーボンナノチューブ膜を作製し、図25に示すようなSEM(Scanning Electron Microscope:;走査電子顕微鏡)像を観察した。
その結果、電極の櫛歯の間に形成されている溝において、電極と平行にカーボンナノチューブが配向している様子が観察された。この配向により、カーボンナノチューブの軸方向の断面ではなく、カーボンナノチューブの周壁が電極の内側面と接続するため、電極の内側面の接触面積が増大すると考えられる。また、カーボンナノチューブが束になっている効果や、電極の櫛歯の間に形成されている溝にカーボンナノチューブ分散液が溜まることによるカーボンナノチューブ膜の膜厚の増加もあると考えられる。
【0076】
さらに、図24のような溝構造を有する電極にカーボンナノチューブ膜を作製すると、電極壁とカーボンナノチューブの接触面積が増加するため、ボロメータの低抵抗化を実現できる。図26には、電極の溝の幅(μm)と、図24に示す領域RGにおいて見積もられた電極の溝の幅に対する電極周囲の長さ(μm)と、印加電圧3Vにおいて測定された抵抗値との関係を調べた結果を示す。各溝幅に対する抵抗値を比較すると、細い溝の場合の方が低抵抗になっていることが分かった。
【符号の説明】
【0077】
1 ボロメータ
1A ボロメータ
1B ボロメータ
1C ボロメータ
1D ボロメータ
1E ボロメータ
1F ボロメータ
2 第一電極
2Au 金層
2D 第一電極
2E 第一電極
2ETi チタン層
2F 第一電極
2FAu 中間層
2FTi チタン層
2Ti チタン層
3 第二電極
3B 第二電極
3D 第二電極
3E 第二電極
3F 第二電極
3Ti チタン層
4 センサ部
4C センサ部
5 基板
6 絶縁層
7 吸収体
8E 第一下地電極
8F 第一下地電極
21 第一基部
22 第一延伸部
22E 第一延伸部
22F 第一延伸部
22S 第一内側面
31 第二基部
32 第二延伸部
32E 第二延伸部
32F 第二延伸部
32S 第二内側面
41 センサ膜
41C センサ膜
42 接続部
43 第一接続パターン
44 第二接続パターン
101 ボロメータ
102 第一電極
103 第二電極
104 センサ部
105 第三電極
106 第四電極
121 第一基部
122 第一延伸部
122S 第一内側面
131 第二基部
132 第二延伸部
132S 第二内側面
141 センサ膜
142 接続部
143 第一接続パターン
144 第二接続パターン
145 第一センサ膜
146 第二センサ膜
901 ボロメータ
902 第一電極
903 第二電極
904 センサ部
922 第一延伸部
922S 第一内側面
941 センサ膜
942 接続部
DE 延伸方向
DI 電流方向
DP 並列方向
DS 積層方向
G1 第一溝
G1b 底
G2 第二溝
G2b 底
RG 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26