(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159195
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075034
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA11
2F063BB03
2F063CA02
2F063DA01
2F063DA05
2F063DB07
2F063DC08
2F063DD02
2F063GA52
(57)【要約】
【課題】シフト体のシフト位置が誤検出されるのを抑制して大型化するのを抑制する。
【解決手段】シフト装置の磁気センサ装置50では、磁気抵抗素子が用いられた磁気センサ56が回転体に配置されたマグネットの磁場の回転に応じた出力電圧Va、Vbを出力する。出力電圧Va、Vbは、一周期の1/8の位相差とされており、角度検出部60が出力電圧Va、Vbを用いて回転体の回転角を検出する。また、故障検出部62は、出力電圧Va、Vbの二乗和の平方根を用いて磁気センサ56の故障検出を行う。これにより、磁気センサ装置50は、磁気センサ56の故障検出をできて、シフト位置の誤検出を抑制できると共に、シフト装置の大型化を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されることで移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、
半回転以内で回転可能とされ、シフト体が移動されることで回転されて前記シフト位置に対応される回転位置に配置される回転体と、
前記回転体に配置されて該回転体と一体で回転されることで磁場が回転される被検出体と、
磁気抵抗素子が用いられて前記被検出体に対向されて前記磁場内に配置され、前記磁場の回転に応じた出力値を出力する際、前記回転体の半回転で一周期となる正弦波状に変化すると共に、互いの間の位相差が前記一周期の1/4の位相差となる第1出力値と第2出力値とを出力する磁気検出手段が用いられた磁場検出部と、
前記第1出力値及び前記第2出力値から前記シフト体の前記シフト位置に対応する前記回転体の回転位置を検出する角度検出部と、
前記磁気検出手段の前記第1出力値と前記第2出力値の二乗和の平方根値を用いて前記磁気検出手段に故障が生じているか否かを検出する故障検出部と、
を含むシフト装置。
【請求項2】
前記故障検出部は、前記二乗和の平方根値が予め設定されている許容範囲を外れることで前記磁気検出手段に故障が生じていることを検出する、請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記磁場検出部は、前記磁気検出手段の環境温度を検出する温度検出手段を含み、
前記故障検出部における前記許容範囲が前記環境温度に応じて補正される、請求項2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記磁場検出部は、2つの前記磁気検出手段を含み、
前記角度検出部は、2つの前記磁気検出手段の各々に基づき前記回転体の回転位置を検出し、
前記故障検出部は、2つの前記磁気検出手段の各々について故障が生じているか否かを検出する、
ことを含む請求項1に記載のシフト装置。
【請求項5】
前記磁気検出手段の故障が検出されている場合、該磁気検出手段の前記第1出力値及び前記第2出力値が用いられて検出された前記回転体の回転位置に対応する前記シフト体のシフト位置に変速機のシフトポジションを変更するための出力信号の出力を停止する出力手段、を含む請求項1に記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト体のシフト位置が検出されるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたシフトレバー装置には、シフトレバーの操作に連動して旋回する玉軸の回転中心を挟んで2つの磁石が設けられていると共に、玉軸の回転中心を通る平面に沿って配置された基板にホールセンサ等を用いた2つの検出素子が配置されている。検出素子は、基板の上下に1個ずつ実装されてシフトレバーの操作ポジションの検出に用いられており、シフトレバー装置では、一方の検出素子が故障した場合に他方の検出素子を用いることができることで冗長性を確保できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2つのセンサが設けられていても、センサに故障が生じているかを判定できなければ、必ずしも冗長性を確保できるとは言えなく、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、シフト体のシフト位置が誤検出されるのを抑制して大型化するのを抑制できるシフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のシフト装置は、操作されることで移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、半回転以内で回転可能とされ、シフト体が移動されることで回転されて前記シフト位置に対応される回転位置に配置される回転体と、前記回転体に配置されて該回転体と一体で回転されることで磁場が回転される被検出体と、磁気抵抗素子が用いられて前記被検出体に対向されて前記磁場内に配置され、前記磁場の回転に応じた出力値を出力する際、前記回転体の半回転で一周期となる正弦波状に変化すると共に、互いの間の位相差が前記一周期の1/4の位相差となる第1出力値と第2出力値とを出力する磁気検出手段が用いられた磁場検出部と、前記第1出力値及び前記第2出力値から前記シフト体の前記シフト位置に対応する前記回転体の回転位置を検出する角度検出部と、前記磁気検出手段の前記第1出力値と前記第2出力値の二乗和の平方根値を用いて前記磁気検出手段に故障が生じているか否かを検出する故障検出部と、を含む。
【0007】
第2の態様のシフト装置は、第1の態様において、前記故障検出部は、前記二乗和の平方根値が予め設定されている許容範囲を外れることで前記磁気検出手段に故障が生じていることを検出する。
【0008】
第3の態様のシフト装置は、第2の態様において、前記磁場検出部は、前記磁気検出手段の環境温度を検出する温度検出手段を含み、前記故障検出部における前記許容範囲が前記環境温度に応じて補正される。
【0009】
第4の態様のシフト装置は、第1から第3の何れか1の態様において、前記磁場検出部は、2つの前記磁気検出手段を含み、前記角度検出部は、2つの前記磁気検出手段の各々に基づき前記回転体の回転位置を検出し、前記故障検出部は、2つの前記磁気検出手段の各々について故障が生じているか否かを検出する。
【0010】
第5の態様のシフト装置は、第1から第4の何れか1の態様において、前記磁気検出手段の故障が検出されている場合、該磁気検出手段の前記第1出力値及び前記第2出力値が用いられて検出された前記回転体の回転位置に対応する前記シフト体のシフト位置に変速機のシフトポジションを変更するための出力信号の出力を停止する出力手段、を含む。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様のシフト装置では、シフト体が操作されることで移動されてシフト位置が変更される。回転体はシフト体が移動されると半回転以内で回転され、シフト体のシフト位置に対応される回転位置に配置される。また、回転体には、被検出体が配置されており、被検知体が一体で回転されることで磁場が回転される。
【0012】
また、被検出体には磁場検出部が対向されて被検知体の磁場内に配置されており、磁場検出部には、磁気検出手段が配置されている。磁気検出手段には磁気抵抗素子が用いられて磁場の回転に応じた出力値を出力する際、回転体の半回転で一周期となる正弦波状に変化すると共に、互いの間の位相差が一周期の1/4の位相差となる第1出力値と第2出力値とを出力する。
【0013】
ここで、角度検出部は、第1出力値及び第2出力値からシフト体のシフト位置に対応する回転体の回転位置を検出する。また、故障検出部は、磁気検出手段の第1出力値と第2出力値の二乗和の平方根値を用いて磁気検出手段に故障が生じているか否かを検出する。
【0014】
これにより、磁気検出手段の出力する第1出力値及び第2出力値を用いて磁気検出手段に故障が生じているか否かを検出するので、故障している磁気検出手段によりシフト体のシフト位置が誤検出されるのを抑制できる。また、磁気検出手段自体の故障を検出できるので、複数の磁気検出手段を用いて故障検出を行う場合に比して装置を小型化できる。
【0015】
第2の態様のシフト装置では、故障検出部が二乗和の平方根値に対して予め許容範囲が設定され、二乗和の平方根値が許容範囲を外れた磁気検出手段に対して故障が生じていると検出する。これにより、故障が生じているとはいえない磁気検出手段に対して故障が検出されるのを抑制できる。
【0016】
第3の態様のシフト装置では、磁場検出部に磁気検出手段の環境温度を検出する温度検出手段が含まれ、故障検出部は、二乗和の平方根値の許容範囲を磁気検出手段の環境温度に応じて補正する。これにより、環境温度の変化が起因して磁気検出手段の第1出力値及び第2出力値が変化しても、故障と誤判定されるのを抑制できる。
【0017】
第4の態様のシフト装置では、磁場検出部に2つの磁気検出手段が含まれる。角度検出部は、2つの磁気検出手段について回転体の回転位置を検出し、故障検出部は、2つの磁気検出手段の各々について故障が生じているか否かを検出する。これにより、角度検出手段の一方に故障が検出されても、シフト体のシフト位置に対応する回転体の回転位置を検出できる。
【0018】
第5の態様のシフト装置では、出力手段が、磁気検出手段の第1出力値及び第2出力値が用いられて検出された回転体の回転位置に対応するシフト体のシフト位置に変速機のシフトポジションを変更するための出力信号を出力する。また、出力手段は、磁気検出手段に故障が検出されていると、その磁気検出手段の第1出力値及び第2出力値に基づいた出力信号の出力を停止する。これにより、変速機のシフトレンジが誤検出されたシフト位置に変更されてしまうのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る磁気センサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るシフト装置の外観を示す右斜め後方視の斜視図である。
【
図3】シフト装置内の主要部を示す右斜め後方視の斜視図である。
【
図4】シフト装置の主要部を示す右斜め下方視の斜視図である。
【
図5】(A)及び(B)は、回転角に対する出力電圧の変化の概略を示す線図である。
【
図6】磁気センサの出力電圧と回転角の関係の概略を示す線図である。
【
図7】磁気センサ装置に設定されている出力電圧と回転角の概略を示す線図である。
【
図8】変形例に係る磁気センサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図9】変形例に係る磁気センサ装置に設定されている出力電圧と回転角の概略を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図2には、本発明の実施形態に係るシフト装置10が右斜め後方から見た斜視図にて示され、
図3には、シフト装置10の内部が右斜め後方から見た斜視図にて示されている。また、
図4には、シフト装置の主要部が右斜め下方視の斜視図にて示されている。なお、図面では、シフト装置10の前方、左方、及び上方を各々矢印FR、矢印LH、及び矢印UPにて示している。
【0021】
シフト装置10は、車両(自動車)のコンソール(図示省略)に設置されており、シフト装置10の前方、左方及び上方は、それぞれ車両の前方、左方及び上方に向けられている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、シフト装置10には、支持体としての略直方体形箱状のプレート12が設けられており、プレート12は、コンソール内に固定されている。プレート12には、左側に左プレート12Aが設けられていると共に、右側に右プレート12Bが設けられており、プレート12は、左プレート12Aと右プレート12Bとが左右方向において組付けられている。なお、
図3では、右プレート12Bが外されている。
【0023】
プレート12内の後端部には、付勢機構14(節度機構)を構成する被付勢部としての付勢面16(節度面)が設置されており、付勢面16は、後側に凹状に形成されている。付勢面16の上下方向中央部は、保持面16Aとされており、付勢面16は、保持面16Aから上下方向両外側に向かうにしたがい前方に向かう方向に傾斜されている。
【0024】
プレート12内の後部(付勢面16の前方)には、シフト体としての略矩形柱状のレバー20が設けられており、レバー20は、上下方向に長尺にされている。レバー20の下端部には、略円柱状の中心軸20Aが貫通かつ嵌合されており、中心軸20Aは、軸方向が左右方向にされて左プレート12Aと右プレート12Bとに回転可能に支持されている。レバー20は、中心軸20Aを中心に前後方向に所定範囲で回動(移動)可能にされてプレート12に支持されている。
【0025】
レバー20の上部は、プレート12の上壁(図示省略)及びコンソールに回動可能に貫通されており、レバー20は、上部において、車両の乗員(特に運転者)によって回動操作可能にされている。レバー20は、モーメンタリ式とされており、レバー20は、シフト位置(所定シフト位置)としてのH位置(ホーム位置)に配置されている。レバー20は、H位置から前側(前方、矢印A方向)に操作されて、シフト位置としてのNr位置(ニュートラル位置)及びR位置(リバース位置)にこの順で配置される。また、レバー20は、H位置から後側(後方、矢印B方向)に操作されて、シフト位置としてのNd位置(ニュートラル位置)及びD位置(ドライブ位置)にこの順で配置される。
【0026】
レバー20の下端部には、略有底円筒状の付勢筒22が一体に設けられており、付勢筒22は、後方に突出されると共に、内部が後方に開放されている。付勢筒22内には、付勢機構14を構成する付勢部材としての略円柱状の付勢ピン24(節度ピン)が嵌入されており、付勢ピン24は、付勢筒22に沿って前後方向に移動可能にされると共に、後面(付勢面16側の先端面)が球面状に突出されている。付勢筒22内には、付勢部としてのスプリング(圧縮コイルスプリング、図示省略)が収容されており、スプリングは、付勢ピン24を後側に付勢している。レバー20は、スプリングの付勢力により付勢ピン24の後面が付勢面16の保持面16Aに接触されてH位置に保持(付勢)される。
【0027】
レバー20は、H位置から前側及び後側に操作される際、スプリングの付勢力に抗して付勢ピン24の後面が付勢面16の保持面16Aから上下方向外側に移動される。また、レバー20は、H位置から操作された状態で、操作力の作用が解除された際に、スプリングの付勢力により付勢ピン24の後面が付勢面16に沿って保持面16Aに移動されることでH位置に回動(復帰)される。
【0028】
レバー20の下端部には、略矩形板状の第1ギア26が一体に設けられており、第1ギア26は、前方に突出されると共に、左右方向に垂直に配置されている。第1ギア26の前端には、複数の第1ギア歯26Aが形成されており、複数の第1ギア歯26Aは、中心軸20A回りの所要角度範囲において周方向に沿って等間隔に並べられている。
【0029】
プレート12内には、レバー20の前側において、移動体(回転体)としての樹脂製略円筒状の回転体30が設けられている。プレート12の左壁(左プレート12Aの左壁)には、前後方向中間部において、略円柱状の支持軸(図示省略)が一体に設けられており、支持軸はプレート12の左壁から右方に延出されている。回転体30内には、左方からプレート12の支持軸が同軸上に嵌入されており、回転体30は、支持軸を中心として回転(移動)可能とされてプレート12内に支持されている。
【0030】
プレート12の左壁(左プレート12A)には、支持軸の上方及び下方において、組付部としての略長尺矩形板状の組付爪32が一体に設けられており、組付爪32は、右方に延出されている。上側及び下側の組付爪32は、回転体30の上側及び下側に配置されている。各組付爪32の先端部(右端部)には、台形柱状の組付突起32Aが一体に設けられており、各組付突起32Aは、互いに向き合う側(支持軸側)に突出されている。
【0031】
回転体30の左右方向中間部(軸方向中間部)には、被組付部としての円環板状の組付板30Aが一体に配置されており、組付板30Aは、回転体30と同軸上に形成されている。回転体30内に支持軸が嵌入される際には、組付板30Aが上下の組付爪32の間に配置され、組付板30Aの右側面に組付突起32Aが当接(面接触)されると共に、回転体30がプレート12の左壁に当接(面接触)される。このため、回転体30は、組付板30Aの右方への移動が組付突起32Aによって規制され、左方への移動がプレート12の左壁によって規制されることで左右方向への移動が係止されて、プレート12に回転可能に組付けられる。
【0032】
回転体30には、組付板30Aの左側部分に第2ギア34が一体に設けられている。第2ギア34には、複数の第2ギア歯34Aが設けられており、複数の第2ギア歯34Aは、回転体30周りの所要の角度範囲において周方向に沿って等間隔に並べられている。回転体30は、第2ギア34が後側とされており、第2ギア34の第2ギア歯34A間には、レバー20の第1ギア26の第1ギア歯26Aが挿入されている(第1ギア歯26A間に第2ギア歯34Aが挿入されてもよい)。
【0033】
これにより、第2ギア歯34Aが第1ギア歯26Aと噛合されて回転体30とレバー20とが連絡されており、回転体30は、レバー20のH位置において、H回転位置(規定位置)に配置される。また、回転体30は、レバー20がH位置からNr位置を介してR位置(矢印A方向)に回動されることで矢印C方向に回転されて、Nr回転位置を経てR回転位置に回転される。また、回転体30は、レバー20がH位置からNd位置を介してD位置(矢印A方向)に回動されることで矢印D方向に回転されて、Nd回転位置を経てD回転位置に回転される。なお、シフト装置10では、回転体30のR回転位置からD回転位置までの角度範囲が後述する磁気センサ装置50に対応される角度範囲(回転体30の半回転以内)となるように第1ギア26及び第2ギア34が設定されている。
【0034】
一方、回転体30には、規制部としての略有底円筒状の規制筒36が右端部に同軸上に形成されている。規制筒36は、回転体30の左側部分に対し拡径されると共に、内部が右方に開放されている。規制筒36の周壁は、前側かつ上下方向中央側の前周壁36Aと、後側かつ上側の上周壁36Bと、後側かつ下側の下周壁36Cと、に分割されている。
【0035】
回転体30の右部には、上部及び下部において、取付部としての略長尺矩形板状の取付爪38(
図4に一方を図示)が一体に設けられており、取付爪38は、規制筒36より左側から右方に延出されている。取付爪38は、規制筒36の前周壁36Aと上周壁36Bとの間、及び規制筒36の前周壁36Aと上周壁36Bとの間の各々に配置されており、取付爪38は、上下方向に垂直(左右方向)に配置されている。取付爪38の先端部(右端部)には、台形柱状の取付突起38Aが一体に設けられており、取付突起38Aは、回転体30の中心軸線側に突出されている。
【0036】
この回転体30には、被検出体としての略円板状のマグネット40が規制筒36内に配置される。マグネット40は、略円板形状とされており、マグネット40の左端部の上側及び下側には、被取付部としての略矩形柱状の取付柱40Aが一体に設けられている(
図4に一方を図示)。取付柱40Aは、前後方向に延在されており、取付柱40Aの左面は、マグネット40の左面と面一にされている。上側及び下側の取付柱40Aは、マグネット40の中心軸線を中心とした点対称に形成されている。
【0037】
マグネット40は、取付柱40Aが規制筒36の前周壁36Aと上周壁36Bとの間、及び前周壁36Aと下周壁36Cとの間に配置されて規制筒36内に嵌合されて回転体30に配置される。これにより、マグネット40は、前周壁36A、上周壁36B、及び下周壁36Cに囲われることで径方向への移動が規制される。また、マグネット40は、右面が取付突起38Aに当接(面接触)されると共に、左面が規制筒36内の左面(底面)に当接(面接触)されることで、回転体30の軸方向(左右方向)への移動が規制される。さらに、マグネット40は、上側の取付柱40Aの後面及び下側の取付柱40Aの後面が、それぞれ規制筒36における上周壁36Bの前端面及び下周壁36Cの前端面に面接触されることで、回転体30の周方向への移動(回転)が規制される。
【0038】
マグネット40は、回転体30に対するマグネット40径方向、周方向及び軸方向への移動が規制されることで回転体30に位置決めされ、回転体30が回転される際には、発生する磁場の方向(磁束方向、磁力線の方向)が回転体30と一体回転される。
【0039】
シフト装置10には、マグネット40の磁場の回転角θを検出するための磁気センサ装置50が設けられている。
図1には、磁気センサ装置50の概略構成がブロック図にて示されている。
【0040】
磁気センサ装置50は、レバー20が回動されることにより回転されるマグネット40の磁場の回転位置(回転角)を検出することでレバー20のシフト位置を検出する。また
図1に示すように、磁気センサ装置50には、車両の変速機46(自動変速機)の変速を制御するための変速制御ECU48が電気的に接続されており、磁気センサ装置50は、マグネット40の回転角によって定まるレバー20のシフト位置を示す出力信号としてのシフト信号Osを変速制御ECU48に出力する。これにより、車両では、レバー20のシフト位置に応じて変速機46のシフトポジションが変更される。
【0041】
磁気センサ装置50は、磁場検出部としてのセンサIC52、及び検出回路部54を備えている。
図3及び
図4に示すように、センサIC52は、回転体30のマグネット40の左右方向(軸方向)の右側にマグネット40に対向されて配置されており、センサIC52は、プレート12内において右プレート12Bに取付けられている(図示省略)。
【0042】
マグネット40は、直径方向の一側がN極とされ、直径方向の他側がS極とされており、マグネット40は、軸方向の両側の空間に磁場が生じる。センサIC52は、マグネット40に近接され、かつマグネット40が生じさせる磁場の強さに変化が生じない領域内に配置されている。すなわち、センサIC52は、マグネット40のN極とS極との間に生じる磁力線(磁束)が略平行となっている領域内において磁力線が交差するように配置されている。
【0043】
これにより、回転体30が回転されてマグネット40が回転されることで、マグネット40の磁場が回転体30の回転角に応じてセンサIC52に対して相対回転される。また、センサIC52に対してマグネット40の磁場が相対回転された際、センサICに交差する磁力線の角度が変化される。なお、以下では、磁力線の方向をマグネット40により生じる磁場の方向(磁束方向)としている。
【0044】
図1に示すように、センサIC52には、磁気検出手段としての磁気センサが形成されたセンサチップ(図示省略)が収容されている。本実施形態に係る磁気センサ装置50のセンサIC52には、磁気センサ56として二組の磁気センサ56A、56Bがセンサチップ上に形成されており、センサIC52は、センサチップが磁力線と平行となるようにマグネット40に対向されている。なお、磁気センサ56A、56Bは基本的構成が同様であり、同様の構成については磁気センサ56として説明する。
【0045】
磁気センサ56(56A、56B)は、2組の磁気エレメント58により構成されている。磁気エレメント58には、磁気抵抗効果によって電気抵抗率(電気抵抗値)が変化する磁気抵抗素子(MR:Magneto Resistive)が用いられており、磁気センサ56は、いわゆるMRセンサとされている。なお、本実施形態では、磁気抵抗素子の一例として異方性磁気抵抗素子(AMR:Anisotropic Magneto Resistive)が適用できる。また、磁気抵抗素子は、半導体薄膜を用いる半導体磁気抵抗素子(SMR:Semiconductor Magneto Resistive)、又は強磁性体-非磁性体金属-強磁性体の積層膜を用いる巨大磁気抵抗素子(GMR:Giant Magneto Resistive)などが適用されてもよい。
【0046】
磁気抵抗素子は、強磁性体膜(薄膜)により形成され、強磁性体膜の磁化の向き(磁束方向)が電流の方向に平行な場合と、磁化の向きが電流の方向に対して垂直な場合とで、電子の散乱度合いが変化して電気抵抗率(電気抵抗値)が変化する。磁気抵抗素子(異方性磁気抵抗素子)には、ニッケル(Ni)や鉄(Fe)などの強磁性材料又はこれらの強磁性材料を主成分とする合金を用いることができる。これにより、磁気抵抗素子を用いたエレメントを形成でき、このエレメントでは、電流の方向に対する磁化の向きに応じた抵抗値が得られる。以下の説明において、エレメントは、電流の方向と磁化の向きとが重なる方向において感度を有する(感度が高い)ものとする。
【0047】
磁気エレメント58は、各々が磁気抵抗素子を用いて形成されたエレメントがブリッジ接続されて形成されている。エレメントは、例えば、薄肉帯状に形成された磁気抵抗素子が互いの長手方向が平行とされ、幅方向に所定間隔で複数が所定のパターンで配列され、磁気抵抗素子の長手方向の一端が配列方向内側に隣接する磁気抵抗素子に接続され、磁気抵抗素子の長手方向の他端が配列方向外側に隣接する磁気抵抗素子に接続されている。これにより、エレメントは一方向に感度を有するように形成される。
【0048】
磁気エレメントは、隣接するエレメントの間で感度を有する方向が交差(直交)するように形成された4つのエレメントがブリッジ状に接続されている。また、磁気センサ56は、互いのエレメントの間で感度を有する方向がπ/8だけずらされた2つの磁気エレメント58A、58Bにより構成されている。
【0049】
これにより、磁気センサ56は、マグネット40の半回転(π)が1周期となる正弦波状に変化する信号が出力される。
図5(A)及び
図5(B)には、マグネット40の回転角θに対する磁気センサ56の磁気エレメント58A、58Bの出力電圧の概略が線図にて示されている。
【0050】
以下の説明では、磁気エレメント58A、58Bの一方の出力信号を第1出力値としての出力電圧Vaとし、他方の出力信号を第2出力値としての出力電圧Vbとする。
図5(A)及び
図5(B)では、横軸がマグネット40の回転角θとされ、縦軸が電圧(電圧値v)とされている。
【0051】
磁気センサ56は、電圧VDDが供給されることで動作し、出力電圧Va、Vbを出力し、出力電圧Va、Vbは各々0(v)~VDD(v)とされている。中心電圧Vxc、Vycは各々出力電圧Vaの中心電圧、出力電圧Vbの中心電圧としており、中心電圧Vxcと中心電圧Vycとは異なる電圧であってもよいが、磁気センサ56では、Vxc=Vycとしている。また、
図5(B)では、回転角θ=0を基準とし、この基準に合わせて磁気センサ56(磁気エレメント58A、58B)を配置した場合が示され、
図5(B)では、マグネット40のH回転位置を基準として磁気センサ56(磁気エレメント58A、58B)を配置した場合が示されている。
【0052】
なお、以下の説明においては、出力電圧Vaの振幅と出力電圧Vbの振幅とを同様にしているが、出力電圧Vaと出力電圧Vbとは相違していてもよい。また、出力電圧Vaの電圧xは、原点における中心電圧Vxcとの電位差を示し、出力電圧Vbの電圧yは、原点における中心電圧Vycとの電位差を示すものとする。
【0053】
図5(B)に示すように、磁気センサ56では、2つの磁気エレメント58A、58Bの間で、各エレメントにおいて感度を有する方向がπ/8だけずらされていることで、回転角θが0≦θ≦πの範囲では、出力電圧Va、Vbの一周期となっている。このため、出力電圧Vaは回転角θに対して正弦波形状に変化し、出力電圧Vbは余弦波形状に変化する。
【0054】
図5(A)に示すように、磁気センサ装置50では、回転角θの検出可能範囲においてマグネット40のH回転位置に対応する回転角θ(例えば、回転角θ≒0となる位置)が設定される。また、磁気センサ装置50では、H回転位置を中心に磁場角度レンジ内においてR回転位置、Nr回転位置、Nd回転位置及びD回転位置が設定されて、各々回転位置に対応する回転角θが設定されている(
図5(A)では図示省略)。また、磁気センサ装置50では、R回転位置からD回転位置までの範囲が磁場の角度の変化範囲(磁場角度レンジ)となっている。なお、回転角θの検出可能範囲はπの範囲とされている。
【0055】
一方、検出回路部54には、センサIC52が電気的に接続されており、検出回路部54には、磁気センサ56(56A、56B)の出力電圧Va、Vbの各々が入力される。検出回路部54は、磁気センサ56の出力電圧Va、Vbからマグネット40の回転角θを検出してレバー20のシフト位置に対応する回転体30の回転位置を検出する。また、検出回路部54は、レバー20のシフト位置を示すシフト信号Osを変速制御ECU48に出力する。
【0056】
検出回路部54には、マイクロコンピュータ(図示省略)を含むIC(集積回路)を用いることができる。マイクロコンピュータは、CPU、RAM、ROM、及び不揮発性メモリとしてのストレージがバスによって接続され、CPUがROM及びストレージに記憶されたプログラムを読出してRAMに展開しながら実行して、プログラムに応じた機能を実現する。
【0057】
検出回路部54のマイクロコンピュータには、ROM及びストレージに角度検出プログラム、故障検出プログラム及び判定出力プログラムが記憶されている。これにより、検出回路部54では、角度検出部60、故障検出部62、及び判定出力部64の機能が実現される。また、検出回路部54は、磁気センサ56A、56Bの各々に対応して角度検出部60、故障検出部62及び判定出力部64が形成されている。
【0058】
角度検出部60は、磁気センサ56から出力される出力電圧Va、Vbから回転角θを検出する。また、故障検出部62は、磁気センサ56から出力される出力電圧Va、Vbから磁気センサ56の故障を検出する(故障が生じているか否かを検出する)。
【0059】
図6には、回転角θ、出力電圧Va及び出力電圧Vbの関係が線図にて示されている。なお、
図6では、出力電圧Vaを横軸、出力電圧Vbを縦軸として示されており、原点は中心電圧Vxcと中心電圧Vycの交点とされ、原点に対する出力電圧Vaの電圧(電圧値)xと出力電圧Vbの電圧(電圧値)yとを示している。また、
図6では、回転角θの一周分がπ(π/2から-π/2)とされている。
【0060】
図6に示すように、磁気センサ56に故障が生じていなければ、回転角θを変化させた際の出力電圧Va=xと出力電圧Vb=yとの交点Q(x、y)の軌跡は、出力電圧Vaの振幅と出力電圧Vbの振幅とが同様(略等しい)ことで円形となる。この際、半径rと電圧v、yとは、r
2=x
2+y
2となることから、軌跡の半径rは、xとyの二乗和の平方根となる。なお、出力電圧Vaの振幅と出力電圧Vbの振幅とが異なっている場合、電圧xと電圧yとの交点の軌跡は楕円形状となる。
【0061】
ここで、回転角θを2πが一周期とする角度φに置き換えた場合、φ=2θ(θ=φ/2)であり、回転角φ(=2θ)、出力電圧Va及び出力電圧Vbの間では三角関数に規定される関係が成立する。これにより、例えば、角度φはtan‐1φ=y/xとなることで、出力電圧Va、Vbから回転角θを取得できる。角度検出部60は、出力電圧Va、Vbから回転角θを検出する。
【0062】
また、磁気センサ56に故障等の不良が生じていると、出力電圧Va及び出力電圧Vbの少なくとも一方が変化する(正常状態とは値が異なる)。これにより、出力電圧Va(=x)と出力電圧Vb(=y)との交点Qsは、半径rの円上(軌跡上)から外れる。すなわち、仮に出力電圧Vaの電圧xs及び出力電圧Vbの電圧ysから回転角θを検出できたとしても、半径rの円(基準円)Tを基準とした場合、電圧xsと電圧ysとの二乗和の平方根の値sがs≠rとなる。
【0063】
ここから、故障検出部62では、故障が生じていない磁気センサ56を基準として予め基準円Tが設定されている。故障検出部62は、出力電圧Va(電圧x)及び出力電圧Vb(電圧y)の二乗和の平方根から得られる値が、基準円T上となる(基準円T状とみなせることを含む)か、又は基準円Tから外れるかを検出して、磁気センサ56に故障が生じているか否かを検出する。
【0064】
また、磁気センサ56の出力電圧Va、Vbは、マグネット40が形成する磁場がノイズ(外乱)の影響を受けた場合や、磁気センサ56自体がノイズの影響を受けた場合などでは、出力電圧Va、Vbの少なくとも一方に変化が生じる場合がある。ここから、磁気センサ装置50(故障検出部62)では、故障検出について基準円Tを中心とした所定幅で許容範囲66が設定されており、許容範囲66は、マップとされて故障検出部62に記憶されている。
【0065】
判定出力部64は、対応する磁気センサ56について故障検出部62が故障を検出していない場合、角度検出部60によって検出された回転角θから定まるレバー20のシフト位置を示すシフト信号Osを出力する。また、判定出力部64は、磁気センサ56について故障検出部62が故障を検出すると、対応する磁気センサ56によって検出されている回転角θに応じたシフト信号Osの出力を停止する。
【0066】
判定出力部64は、2つの磁気センサ56(56A、56B)の一方(例えば、磁気センサ56A)の検出結果に基づいたシフト信号Osを出力し、この磁気センサ56に故障が検出された場合に、他方の磁気センサ56(故障が検出されていない方の磁気センサ56)によって検出された回転角θに基づいたシフト信号Osを出力する。
【0067】
このように構成されているシフト装置10では、付勢機構14において、レバー20に配置している付勢ピン24がスプリングの付勢力によりプレート12内の付勢面16の保持面16Aに接触されて保持されることで、レバー20がH位置に保持されている。また、シフト装置10では、レバー20を前側又は後側に操作することで、付勢ピン24がスプリングの付勢力に抗して付勢面16に沿って保持面16Aから上側又は下側に移動される。これにより、レバー20が回動されてシフト位置がH位置からNr位置、Nr位置を介してR位置に移動されてNr位置、R位置に配置されるか、又はH位置からNd位置、Nd位置を介してD位置に移動されてNd位置、D位置に配置される。
【0068】
シフト装置10では、レバー20の第1ギア26が回転体30の第2ギア34に歯合されて、マグネット40が配置された回転体30とレバー20とが連絡されており、シフト装置10では、レバー20が操作されることで回転体30が回転されてマグネット40が回転される。これにより、シフト装置10では、レバー20のシフト位置がNr位置、R位置、Nd位置又はD位置とされることで、マグネット40がNr回転位置、R回転位置、Nd回転位置又はD回転位置に配置される。
【0069】
一方、シフト装置10には、磁気センサ装置50が配置されており、磁気センサ装置50では、磁気センサ56が形成されているセンサIC52がマグネット40に対向されている。このため、磁気センサ装置50では、回転体30と共にマグネット40が回転されることで磁場の方向が回転されると、磁気センサ56が磁場の回転角を検出して、回転体30の回転位置がNr回転位置、R回転位置、Nd回転位置又はD回転位置の何れかを検出する。
【0070】
ここで、
図7には、磁気センサ装置50において設定されている磁気センサ56の出力電圧Va、Vbと回転角θとの概略が線図にて示されている。なお、
図7では、横軸が出力電圧Vaとされ、縦軸が出力電圧Vbとされている。また、
図7では、回転角θの1周分(1周期分)がπとされており、原点回りの全周が検出可能範囲とされている。
【0071】
図7に示すように、磁気センサ装置50には、回転体30のH回転位置、Nr回転位置、R回転位置、Nd回転位置、及びD回転位置に対応する回転角θh、θnr、θr、θnd及びθdが設定されている。また、磁気センサ装置50では、正常な磁気センサ56が用いられて基準円Tが設定されていると共に、基準円Tを中心とした所定幅(基準円Tの径方向に沿う幅)の範囲が許容範囲66として設定されている。
【0072】
磁気センサ装置50では、磁気センサ56が用いられている。磁気センサ56は、磁気エレメント58A、58Bによって構成されており、磁気センサ56は、位相がπ/8だけずれた出力電圧Vaと出力電圧Vbとを出力する。角度検出部60は、磁気センサ56の出力電圧Va、Vbに基づいて回転体30の回転角θを検出する。
【0073】
また、故障検出部62は、磁気センサ56の出力電圧Va、Vbに基づき、出力電圧Va、Vbを出力した磁気センサ56の故障検出を行う。この際、故障検出部62では、出力電圧Vaと出力電圧Vbとの交点Pが許容範囲66内であれば、出力電圧Va、Vbを出力した磁気センサ56に故障がないと検出する。
【0074】
これに対して、故障検出部62では、出力電圧Vaと出力電圧Vbとの交点P1が許容範囲66の外側(径方向の外側)であったり、交点P2が径方向の内側であったりすると、出力電圧Va、Vbを出力した磁気センサ56の故障を検出する。すなわち、磁気センサ56では、磁気エレメント58A及び磁気エレメント58Bの少なくとも一方を構成するエレメントに断線や短絡等の故障が生じると電気抵抗値が変化し、出力電圧Va及び出力電圧Vbの少なくとも一方が変化する。このため、出力電圧Vaの電圧xと出力電圧Vbの電圧yの二乗和の平方根の値が許容範囲66を外れる。故障検出部62は、出力電圧Va、Vbの二乗和の平方根の値が許容範囲66内か否かから出力電圧Va、Vbを出力した磁気センサ56の故障を検出できる。
【0075】
判定出力部64は、故障が検出されていない磁気センサ56の出力電圧Va、Vbから検出された回転角θに対応するレバー20のシフト位置を示すシフト信号Osを変速制御ECU48に出力する。変速制御ECU48は、レバー20のシフト位置に応じて変速機のシフトレンジを変更する。これにより。変速機は、レバー20がNr位置、Nd位置、R位置又はN位置に配置されることで、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Rレンジ(リバースレンジ)又はDレンジ(ドライブレンジ)に変更される。
【0076】
このように、磁気センサ装置50では、磁気抵抗素子が用いられた磁気センサ56が一周期の1/8だけ位相がずれされた出力電圧Va、Vbを用い、出力電圧Vaの電圧xと出力電圧Vbの電圧yの二乗和の平方根の値が許容範囲66内となっているか否かから磁気センサ56の故障を検出する。
【0077】
磁気センサ56等の故障を検出する場合、2つの磁気センサ56を用いると少なくとも一方の磁気センサ56に故障が生じたことを検出できても、故障した磁気センサ56を特定できずに車両の適正な走行が不能となってしまう可能性がある。
【0078】
また、3個以上の磁気センサ56を用いて各々の出力信号を比較することで、故障が生じた磁気センサ56を特定できるが、この場合、磁気センサ56の配置スペースが広くなり、各磁気センサ56に同様の磁場を形成できるようにマグネット40も大きくする必要があり、シフト装置が大型化してしまう。
【0079】
これに対して、磁気センサ装置10では、磁気センサ56の出力電圧Va、Vbを用いて、その磁気センサ56の故障の有無を検出できる。これにより、磁気センサ56の故障を検出するためにシフト装置10が大型化してしまうのを抑制できる(シフト装置10の小型化が可能になる)。
【0080】
また、磁気センサ装置50では、センサIC52に2つの磁気センサ56を配置しているので、何れか一方に故障が検出されても、故障が検出されていない磁気センサ56を用いることができるので、冗長性が向上される。
【0081】
また、磁気センサ装置50では、出力電圧Vaの電圧xと出力電圧Vbの電圧yの二乗和の平方根を用いるので容易に磁気センサ56の故障を検出できる。しかも、磁気センサ装置50では、磁気センサ56の故障検出に、回転角θを検出するための出力電圧Va、Vbを用いるので、磁気センサ56に対して出力電圧Va、Vbを出力する以上の機能が要求されない。
【0082】
〔変形例〕
次に本実施形態の変形例を説明する。
図8には、変形例に係る磁気センサ装置70の概略構成がブロック図にて示されている。なお、変形例における磁気センサ装置70の基本的構成は、磁気センサ装置50と同様であり、磁気センサ装置70において磁気センサ装置50と同様の構成には、磁気センサ装置50と同様の符号を付与してその説明を省略している。
【0083】
図8に示すように、磁気センサ装置70は、センサIC72及び検出回路部74を備えている。センサIC72には、温度検出手段としての温度センサ76がセンサチップ上に形成されており、センサIC72は、温度センサ76が形成されている点で磁気センサ装置50のセンサIC52と相違する。また、検出回路部74には、補正部としての温度補正部78が配置されており、検出回路部74は、温度補正部78を備える点で磁気センサ装置50の検出回路部54と相違する。
【0084】
温度センサ76には、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタ等を用いることができる。また、温度センサ76は、2つの磁気センサ56A、56Bに対して一つであってもよいが、センサIC72には、2つの温度センサ76A、76Bが設けられている。温度センサ76Aは磁気センサ56Aに近接配置されて磁気センサ56Aの環境温度を検出し、温度センサ76Bは磁気センサ56Bに近接配置されて磁気センサ56Bの環境温度を検出する。
【0085】
検出回路部74には、温度補正部78として、温度センサ76Aが電気的に接続された温度補正部78A、及び温度センサ76Bが電気的に接続された温度補正部78Bが配置されている。
【0086】
図9には、磁気センサ装置70において設定されている磁気センサ56の出力電圧Va、Vbと回転角θとの概略が線図にて示されている。なお、
図9では、横軸が出力電圧Vaとされ、縦軸が出力電圧Vbとされている。また、
図9では、回転角θの1周分(1周期分)がπとされており、原点回りの全周が検出可能範囲とされている。
【0087】
図9に示すように、磁気センサ装置70では、許容範囲66が設定されていると共に、許容範囲66の径方向の内側に所定幅の許容範囲66Aが設定され、許容範囲66の径方向の外側に所定幅の許容範囲66Bが設定されている。温度補正部78A、78Bには、許容範囲66、66A、66Bの各々に対応するマップが記憶されている。
【0088】
温度補正部78(78A、78B)では、温度センサ76(76A、76B)によって検出される温度に基づいて許容範囲66、66A、66Bを選択し、選択した許容範囲が故障検出部62において適用されるようにしている。この際、温度補正部78では、温度センサ76により検出される温度が標準温度であると許容範囲66を選択する。また、温度補正部78では、温度センサ76により検出される温度が標準温度より所定温度だけ高い温度であると許容範囲66Aを選択し、温度センサ76により検出される温度が標準温度より所定温度だけ低い温度であると許容範囲66Bを選択する。すなわち、温度補正部78は、温度センサ76の検出温度に応じて許容範囲66をシフトさせる。
【0089】
このように構成された磁気センサ装置70は、磁気センサ装置50と同様の効果を奏することができる。
【0090】
一方、磁気センサ56を形成する磁気抵抗素子は、環境温度に応じて抵抗値が変化するものがある。このため、磁気センサ56では、温度が低くなることで感度が高くなり、温度が低くなることで感度が低下する。
【0091】
ここで、磁気センサ装置70では、温度センサ76により検出される温度が高くなると、温度補正部78が許容範囲66Aを選択し、選択した許容範囲66Aを適用し、磁気センサ56の出力電圧Va、Vbを用いた故障検出を行う。このため、磁気センサ装置70では、磁気センサ56の周囲の温度が高くなって磁気センサ56の感度が低下しても的確に磁気センサ56の故障検出を行うことができる。
【0092】
磁気センサ装置70では、温度センサ76により検出される温度が低くなると、温度補正部78が許容範囲66Bを選択し、選択した許容範囲66Bを適用し、磁気センサ56の出力電圧Va、Vbを用いた故障検出を行う。このため、磁気センサ装置70では、磁気センサ56の周囲の温度が低くなって磁気センサ56の感度が高くなっても的確に磁気センサ56の故障検出を行うことができる。
【0093】
また、磁気センサ装置70では、磁気センサ56A、56Bの各々に温度センサ76A、76Bを配置しているので、磁気センサ56A、56Bの温度変化において的確に許容範囲を設定できるので、磁気センサ56A、56Bの各々の故障検出を的確に行うことができる。
【0094】
なお、以上説明した本実施形態及び変形例は、本発明の構成を限定するものではない。本発明は、シフト装置10に限らず、乗員により操作されることで移動されてシフト位置が変更されると共に、シフト体が移動されることで、被検知体が設けられた回転体が回転されるシフト装置に適用できる。
【符号の説明】
【0095】
10・・・シフト装置、20・・・レバー(シフト体)、30・・・回転体、40・・・マグネット(被検出体)、48・・・変速制御ECU、50、70・・・磁気センサ装置、52、72・・・センサIC(磁場検出部)、56(56A、56B)・・・磁気センサ(磁気検出手段)、60・・・角度検出部、62・・・故障検出部、64・・・判定出力部(出力部)、66、66A、66B・・・許容範囲、76(76A、76B)・・・温度センサ(温度検出手段)、78(78A、78B)・・・温度補正部。