(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159196
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】超音波センサ駆動制御装置及び超音波センサ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/524 20060101AFI20241031BHJP
G01S 15/931 20200101ALN20241031BHJP
【FI】
G01S7/524 R
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075035
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】磯部 直希
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB12
5J083AC18
5J083AD04
5J083AF05
5J083BA01
5J083CA01
5J083CA02
5J083CA10
(57)【要約】
【課題】製造上のバラつきや経時変化を吸収し、規定された遠距離の検出を維持することができる超音波センサ駆動制御装置及び超音波センサ駆動制御方法を得る。
【解決手段】超音波センサ駆動制御装置10は、所定の周波数で振動体を振動させることにより超音波40Aを送信し、物体OBで反射された超音波40Aの反射波50Aを受信する超音波センサ20を駆動制御する。超音波センサ駆動制御装置10は、超音波センサ20に単発のパルス波を入力することにより振動体42Aを振動させ、振動体42Aの振動により送信された超音波40Aが物体OBで反射された反射波50Aに基づいて振動体42Aの共振周波数Fを検出し、検出した共振周波数Fで連続して波形を入力することにより振動体42Aを駆動させる駆動制御部32を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で振動体を振動させることにより超音波を送信し、物体で反射された前記超音波の反射波を受信する超音波センサを駆動制御する駆動制御装置であって、
前記超音波センサに単発のパルス波を入力することにより前記振動体を振動させ、当該振動体の振動により送信された超音波が物体で反射された反射波に基づいて前記振動体の共振周波数を検出し、検出した共振周波数で連続して波形を入力することにより前記振動体を駆動させる駆動制御部を含む超音波センサ駆動制御装置。
【請求項2】
前記パルス波は、矩形波又は正弦波である請求項1に記載の超音波センサ駆動制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記共振周波数で矩形波又は正弦波を連続して入力する請求項1に記載の超音波センサ駆動制御装置。
【請求項4】
前記超音波を送信してから前記反射波を受信するまでの時間に基づいて前記物体までの距離を検出する距離検出部を備え、
該距離検出部は、前記パルス波を入力してから当該パルス波の前記反射波を受信するまでに要する時間に基づいて前記距離よりも近い近距離を検出する請求項1に記載の超音波センサ駆動制御装置。
【請求項5】
前記距離検出部は、前記駆動制御部による前記共振周波数の検出と並行して前記近距離を検出する請求項4に記載の超音波センサ駆動制御装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、入力した前記パルス波の前記反射波における自由振動を検出することにより前記共振周波数を検出する請求項1に記載の超音波センサ駆動制御装置。
【請求項7】
所定の周波数で振動体を振動させることにより超音波を送信し、物体で反射された前記超音波の反射波を受信する超音波センサを駆動制御する駆動制御方法であって、
前記超音波センサに単発のパルス波を入力することにより前記振動体を振動させ、当該振動体の振動により送信された超音波が物体で反射された反射波に基づいて前記振動体の共振周波数を検出し、検出した共振周波数で連続して波形を入力することにより前記振動体を駆動させる超音波センサ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサ駆動制御装置及び超音波センサ駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、障害物を検出できる範囲が温度と湿度に応じて変動するため、温度センサと湿度センサを用いることなく、温度と湿度による検出範囲の変動を抑制できる障害物検出装置が開示されている。上記障害物検出装置では、具体的に、超音波の残響波形に対応する閾値を予め記憶された閾値から選択することによりキャリブレーションを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、超音波センサ等、特許文献1に記載されたような障害物検出装置においては、振幅が大きくなるように共振周波数で駆動する必要があるが、製造上のバラつきや経時変化により、常に共振周波数で駆動することは困難である。共振周波数以外の周波数で超音波センサを駆動すると、規定された遠距離の検出の維持は困難である。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、超音波センサにおいて製造上のバラつきや経時変化を吸収し、規定された遠距離の検出を維持することができる超音波センサ駆動制御装置及び超音波センサ駆動制御方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の超音波センサ駆動制御装置は、所定の周波数で振動体を振動させることにより超音波を送信し、物体で反射された前記超音波の反射波を受信する超音波センサを駆動制御する駆動制御装置であって、前記超音波センサに単発のパルス波を入力することにより前記振動体を振動させ、当該振動体の振動により送信された超音波が物体で反射された反射波に基づいて前記振動体の共振周波数を検出し、検出した共振周波数で連続して波形を入力することにより前記振動体を駆動させる駆動制御部を含む。
【0007】
本発明の第1の態様の超音波センサ駆動制御装置によれば、所定の周波数で振動体を振動させることにより超音波を送信し、物体で反射された超音波の反射波を受信する超音波センサにおいて、単発のパルス波を入力することにより振動体を振動させ、当該振動体の振動により送信された超音波が物体で反射された反射波に基づいて振動体の共振周波数を検出している。そのため、超音波センサにおいて、製造上のバラつきや経時変化により共振周波数にずれが生じていたとしても、超音波センサ固有の共振周波数を検出することができるので、共振周波数を補正することができる。また、検出した共振周波数で連続して波形を入力することにより振動体を駆動させているので、補正された共振周波数、すなわち音波を大きくすることができる共振周波数で振動体を駆動することができる。これにより、超音波センサにおいて製造上のバラつきや経時変化を吸収し、規定された遠距離の検出を維持することができる。
【0008】
本発明の第2の態様の超音波センサ駆動制御装置は、第1の態様において、前記パルス波は、矩形波又は正弦波である。
【0009】
本発明の第2の態様の超音波センサ駆動制御装置によれば、パルス波が、矩形波である場合には、より容易に超音波センサを駆動させることができる。また、パルス波が正弦波である場合には、矩形波に比べて、効率よく、かつ低振動及び低騒音で超音波センサを駆動させることができる。
【0010】
本発明の第3の態様の超音波センサ駆動制御装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記駆動制御部は、前記共振周波数で矩形波又は正弦波を連続して入力する。
【0011】
本発明の第3の態様の超音波センサ駆動制御装置によれば、駆動制御部は、検出された共振周波数で矩形波又は正弦波を連続して入力するので、矩形波を連続して入力する場合には、より容易に超音波センサを駆動させることができる。また、正弦波を連続して入力する場合には、矩形波に比べて、効率よく、かつ低振動及び低騒音で超音波センサを駆動させることができる。
【0012】
本発明の第4の態様の超音波センサ駆動制御装置は、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様において、前記超音波を送信してから前記反射波を受信するまでの時間に基づいて前記物体までの距離を検出する距離検出部を備え、該距離検出部は、前記パルス波を入力してから当該パルス波の前記反射波を受信するまでに要する時間に基づいて前記距離よりも近い近距離を検出する。
【0013】
本発明の第4の態様の超音波センサ駆動制御装置によれば、距離検出部が、パルス波を入力してから当該パルス波の反射波を受信するまでに要する時間に基づいて前記距離よりも近い近距離を検出している。そのため、単発のパルス波の入力によって、近距離に位置する物体までの距離を取得することができる。
【0014】
本発明の第5の態様の超音波センサ駆動制御装置は、第4の態様において、前記距離検出部は、前記駆動制御部による前記共振周波数の検出と並行して前記近距離を検出する。
【0015】
本発明の第5の態様の超音波センサ駆動制御装置によれば、距離検出部が、駆動制御部による共振周波数の検出と並行して近距離を検出しているので、共振周波数と近距離に位置する物体までの距離とを効率的に取得することができる。
【0016】
本発明の第6の態様の超音波センサ駆動制御装置は、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様において、前記駆動制御部は、入力した前記パルス波の前記反射波における自由振動を検出することにより前記共振周波数を検出する。
【0017】
本発明の第6の態様の超音波センサ駆動制御装置によれば、駆動制御部が、入力したパルス波の反射波における自由振動を検出することにより共振周波数を検出するので、他の装置を使用することなく容易に共振周波数を検出することができる。
【0018】
本発明の第7の態様の超音波センサ駆動制御方法は、所定の周波数で振動体を振動させることにより超音波を送信し、物体で反射された前記超音波の反射波を受信する超音波センサを駆動制御する駆動制御方法であって、前記超音波センサに単発のパルス波を入力することにより前記振動体を振動させ、当該振動体の振動により送信された超音波が物体で反射された反射波に基づいて前記振動体の共振周波数を検出し、検出した共振周波数で連続して波形を入力することにより前記振動体を駆動させる。
【0019】
本発明の第7の態様の超音波センサ駆動制御方法によれば、所定の周波数で振動体を振動させることにより超音波を送信し、物体で反射された超音波の反射波を受信する超音波センサにおいて、単発のパルス波を入力することにより振動体を振動させ、当該振動体の振動により送信された超音波が物体で反射された反射波に基づいて振動体の共振周波数を検出している。そのため、超音波センサにおいて、製造上のバラつきや経時変化により共振周波数にずれが生じていたとしても、超音波センサ固有の共振周波数を検出することができるので、共振周波数を補正することができる。また、検出した共振周波数で連続して波形を入力することにより振動体を駆動させているので、補正された共振周波数、すなわち音波を大きくすることができる共振周波数で振動体を駆動することができる。これにより、製造上のバラつきや経時変化を吸収し、規定された遠距離の検出を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の超音波センサ駆動制御装置及び超音波センサ駆動制御方法によれば、超音波センサにおいて製造上のバラつきや経時変化を吸収し、規定された遠距離の検出を維持することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る駆動制御装置を含む超音波センサシステムの構成を模式的に示す構成図である。
【
図3】自由振動数の検出方法を説明するための説明図である。
【
図4】駆動制御装置の駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る駆動制御装置の駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】超音波センサの変形例を含む超音波センサシステムの構成を模式的に示す構成図である。
【
図7】超音波センサの他の変形例を含む超音波センサシステムの構成を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~
図4を用いて本発明の第1実施形態に係る超音波センサ駆動制御装置としての駆動制御装置30を含む超音波センサシステム10について説明する。本実施形態の超音波センサシステム10は、超音波からなる送信波と、送信波が物体に反射して返ってくる反射波との時間間隔に基づいて音速から距離を測距するToF(Time of Flight)の技術を利用している。本実施形態の超音波センサシステム10の超音波センサ20は、一例として、シリコン等を加工して微細な素子を形成する微細加工技術(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)を使用して形成される。
【0023】
図1は本発明の第1実施形態に係る駆動制御装置30を含む超音波センサシステム10の構成を模式的に示す構成図である。
図1に示されるように、本実施形態の超音波センサシステム10は、超音波センサ20と駆動制御装置30とを備えている。超音波センサ20は、超音波40Aを送信するアクチュエータ40と、物体OBで反射された超音波40Aの反射波50Aを受信するセンサ50とを備えている。
【0024】
アクチュエータ40は、超音波40Aを送信する超音波スピーカ42と、後述する駆動制御部32から出力される制御信号に基づいて超音波スピーカ42を駆動する超音波駆動部44とを備えている。超音波スピーカ42は、振動体42Aを備えており、振動体42Aは配線46により超音波駆動部44と接続されている。なお、
図1において、振動体42Aは、模式的に示されており、実際には後述する複数の部材により構成されている。
【0025】
振動体42Aは、一例として基板(図示省略)、ダイアフラム(図示省略)、及び圧電膜(図示省略)等を含んで構成されており、圧電膜に電圧が印加されることにより圧電膜が伸縮され、この伸縮に伴ってダイアフラムが振動されることにより振動体42Aが振動される。この振動体42Aの振動により超音波40Aが発生される。
【0026】
超音波駆動部44は、昇圧回路、アンプ等を備えた駆動回路(図示省略)を有しており、後述する駆動制御部32から出力される制御信号に基づいて振動体42Aに電圧を印加する。
【0027】
センサ50は、反射波50Aを受信し、電気信号に変換して出力する超音波マイクロフォン52と、超音波マイクロフォン52により出力された電気信号を増幅するアンプ54と、アンプ54により増幅された電気信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換器56とを備えている。超音波マイクロフォン52とアンプ54、及びアンプ54とA/D変換器56は、それぞれ配線58により接続されている。
【0028】
超音波マイクロフォン52は、上述した超音波スピーカ42の振動体42Aと略同様の構成とされた振動体52Aを備えており、振動体52Aは配線58によりアンプ54と接続されている。振動体52Aは、反射波50Aを受信する際に、反射波50Aによってダイアフラムが振動し、この振動によって圧電膜が変形して電圧が発生される。
【0029】
アンプ54は、反射波50Aによって振動体52Aの圧電膜が変形することにより発生される電圧の出力信号を増幅してA/D変換器56に出力する。なお、本実施形態においては、一例として、アンプ54はサンプリングやダウンサンプリングでエイリアシング、すなわち折り返し雑音が起きないようにするための処理を行うアンチエイリアス機能を備えている。なお、アンチエイリアス機能は、具体的には、特定の周波数以外の信号を遮断する機能を持つフィルタのうち、低域周波数のみを通過させるLPF(Low Pass Filter)を備えることにより実現される。
【0030】
A/D変換器56は、アンプ54により増幅された上記出力信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。A/D変換器56は、公知のものを使用することができる。
【0031】
駆動制御装置30は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリと、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性のストレージ、と通信インタフェース(通信I/F)と、入出力インタフェース(入出力I/F)とを含んで構成されている。各構成は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、入出力I/Fには、アクチュエータ40の超音波駆動部44と、センサ50のA/D変換器56とが、配線60を介して接続されている。
【0032】
駆動制御装置30は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。具体的には、駆動制御装置30は、機能構成として、駆動制御部32と距離検出部34とを含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0033】
駆動制御部32は、共振周波数で連続して波形を超音波駆動部44に入力することにより超音波スピーカ42の振動体42Aを駆動させる。具体的には、駆動制御部32は、一例として、共振周波数で連続して矩形波を入力する。
【0034】
また、本実施形態においては、超音波駆動部44に共振周波数で連続して波形を入力する前に、単発のパルス波を超音波駆動部44に入力することにより超音波スピーカ42の振動体42Aを駆動させる。そして、振動体42Aの振動により送信された超音波40Aが物体OBで反射された反射波50Aに基づいて振動体42Aの実際の共振周波数Fを検出する。
【0035】
図2は超音波波形を示すグラフである。
図2において横軸は時間を示している。
図2の上図のグラフは、アクチュエータ40に印加される単発のパルス波40Bの波形を示しており、下図のグラフは、センサ50により受信される受信波形であって、アンプ54に入力される前の受信波形50Bを示している。
【0036】
図2の上図に示されるように、駆動制御部32は超音波駆動部44に単発のパルス波として単発の矩形波の波形信号を制御信号として入力する。超音波駆動部44は、この入力された制御信号に基づいて、振動体42Aに電圧を印加する。振動体42Aは、印加された電圧によって振動され、この振動により超音波スピーカ42から超音波40Aが発生される。
【0037】
超音波スピーカ42から発生された単発のパルス波40Bによる超音波40Aは、物体OBで反射されて反射波50Aとなる。センサ50は、この反射波50Aを受信し、反射波50Aを受信する際に、反射波50Aによって振動体52Aが振動して電圧が発生される。超音波マイクロフォン52は、発生された電圧に基づいて、一例として
図2の下図に示される受信波形50Bを受信する。なお、空気中には空気の音響インピーダンスが存在するため、検出される検出音は鈍る。すなわち検出される受信波形50Bは減衰する。
【0038】
図2の下図に示されるように、受信波形50Bは、範囲FVにおいて自由振動が発生している。ここで、この自由振動における自由振動数の検出方法について説明する。
図3は自由振動数の検出方法を説明するための説明図である。なお、
図3において、(A)は受信波形、(B)はビット列を2進数の値とみなしたときの最も大きい位を表すビット、すなわち最上位ビット(MSB;Most Significant Bit)を示している。また、(C)はデジタルカウンタによるカウンタ、(D)はカウンタを示している。
【0039】
図3(A)に示される受信波形に対して、アナログからデジタルに変換するA/D変換を行い、
図3(B)に示されるようにデジタル値、すなわち2の補数で表す。なお、A/D変換器56のサンプリング周期が高い程、周波数分解能が高くなる。
図3(A)において一例として矢印D1で示す頂点のデジタル値は「01011」、矢印D2で示す頂点のデジタル値は「10110」となる。デジタル値のMSBは符号を示すので、「0」から「1」の変化と「1」から「0」の変化がゼロクロスポイントとなり、MSBは
図3(B)で示される。このゼロクロスポイントを起点にして、時間を計測することにより周波数を測定する。ここで、「0」から「1」の変化のゼロクロスポイントを中央に含む1つの周期を周期P(s)とする。
【0040】
この周期Pにおいて、デジタルカウンタによって時間を計測する。なお、デジタルカウンタに使用されるクロックは、A/D変換器56のサンプリング周波数以上のサンプリング周波数のクロックを使用する。また、クロックは、ハードウェアクロック(図示省略)を使用してもよいし、駆動制御装置30に予め内蔵されたソフトウェアで構成されたクロックを使用してもよい。
【0041】
図3(c)に示されるように、カウンタクロックのサンプリング周期を周期T、カウント数をカウント数Nとすると、自由振動数F0は下記式(1)で示される。
F0=1/(T×N)・・・(1)
【0042】
このようにして自由振動数F0を検出する。本実施形態においては、この自由振動数F0を振動体42Aの実際の共振周波数Fとする。駆動制御部32は、超音波駆動部44に実際の共振周波数Fで連続して波形を入力する。
【0043】
距離検出部34は、超音波40Aを送信してから反射波50Aを受信するまでの時間TRに基づいて物体OBまでの距離Lを検出する。超音波は音であるため、空気中を音速Cで伝播する。従って、物体OBまでの距離Lは下記式(2)で導出することができる。
L=1/2×TR×C・・・(2)
【0044】
次に本実施形態の駆動制御装置30による超音波センサ20の駆動制御方法について説明する。本実施形態においては、一例として超音波センサ20は車両(図示省略)に搭載されているものとする。
図4は駆動制御装置30の駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0045】
図4に示されるように、ステップS11にて、駆動制御部32は、超音波駆動部44に単発のパルス波として単発の矩形波の波形信号を入力する。ステップS12にて、駆動制御部32は、上述したようにして振動体42Aの共振周波数Fを検出する。ステップS13にて、駆動制御部32は、検出した共振周波数Fを一例としてストレージ等に記憶することにより共振周波数Fを保持する。
【0046】
次にステップS14にて、駆動制御部32は、共振周波数Fを設定し、かつ連続して波形を入力するためのパルス数を設定する。ステップS15にて、駆動制御部32は、設定した共振周波数F及びパルス数に基づいて、連続してパルス波の波形信号を超音波駆動部44に入力する。
【0047】
ステップS16にて、駆動制御装置30は、反射波50Aが検出されたか否かを判断する。ステップS16にて反射波50Aが検出されていない場合(ステップS16;NO)、ステップS15に処理を移行して、駆動制御部32は引き続き連続してパルス波の波形信号を超音波駆動部44に入力する。一方、ステップS16にて、反射波50Aが検出された場合(ステップS16;YES)、距離検出部34は上述したようにして、超音波40Aを送信してから反射波50Aを受信するまでの時間TRに基づいて物体OBまでの距離Lを検出する。
【0048】
次に、ステップS18にて、駆動制御装置30は、車両の走行を制御するECU(Electronic Control Unit)(図示省略)に対して物体OBまでの距離Lを出力し、衝突回避処理を行なわせる。なお、ECUは公知の技術を使用することができ、衝突回避処理も公知の技術を使用することができる。
【0049】
次に、ステップS19にて、駆動制御装置30は、超音波センサ20による物体OBの検出を終了するか否かを判断する。具体的には、駆動制御装置30は、一例として、車両がパーキングモードにされた場合及び車両のエンジンが停止した場合等に検出を終了すると判断する。
【0050】
ステップS19にて、検出を終了しないと判断した場合(ステップS19;NO)、ステップS15に処理を移行して、駆動制御部32は引き続き連続してパルス波の波形信号を超音波駆動部44に入力する。一方、ステップS19にて、検出を終了すると判断した場合(ステップS19;YES)、駆動制御装置30は超音波センサ20による物体OBの検出を終了させる。
【0051】
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
本実施形態の駆動制御装置30及び超音波センサ20の駆動制御方法によれば、超音波センサ20において、単発のパルス波を入力することにより振動体42Aを振動させ、振動体42Aの振動により送信された超音波40Aが物体OBで反射された反射波50Aに基づいて振動体42Aの共振周波数Fを検出している。そのため、超音波センサ20において、製造上のバラつきや経時変化により共振周波数にずれが生じていたとしても、超音波センサ20固有の共振周波数Fを検出することができるので、共振周波数を補正することができる。また、検出した共振周波数Fで連続して波形を入力することにより振動体42Aを駆動させているので、補正された共振周波数F、すなわち音波を大きくすることができる共振周波数Fで振動体42Aを駆動することができる。これにより、超音波センサ20において製造上のバラつきや経時変化を吸収し、規定された遠距離の検出を維持することができる。
【0053】
また、本実施形態の駆動制御装置30及び超音波センサ20の駆動制御方法によれば、超音波センサ20に入力するパルス波を矩形波としているので、より容易に超音波センサ20を駆動させることができる。
【0054】
また、本実施形態の駆動制御装置30及び超音波センサ20の駆動制御方法によれば、駆動制御部32は、検出した共振周波数Fで矩形波を連続して入力するので、より容易に超音波センサ20を駆動させることができる。
【0055】
また、本実施形態の駆動制御装置30及び超音波センサ20の駆動制御方法によれば、駆動制御部32が、入力したパルス波の受信波形(反射波)50Bにおける自由振動FVを検出することにより共振周波数Fを検出するので、他の装置を使用することなく容易に共振周波数Fを検出することができる。
【0056】
次に本発明の第2実施形態に係る駆動制御装置30Aについて説明する。なお、第2実施形態の駆動制御装置30Aは、上述した第1実施形態の駆動制御装置30と略同様の構成であるため、同様の構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。第2実施形態の駆動制御装置30Aは、距離検出部34が単発のパルス波40Bを超音波センサ20に入力してからこの単発のパルス波40Bの受信波形(反射波)50Bを受信するまでに要する時間に基づいて距離を検出する。こお、ここで検出される距離は、連続してパルス波を入力する際に検出される距離よりも近い近距離となる。
【0057】
次に本実施形態の駆動制御装置30Aによる超音波センサ20の駆動制御方法について説明する。本実施形態においては、一例として超音波センサ20は車両(図示省略)に搭載されているものとする。
図5は駆動制御装置30Aの駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図5において、
図4で示される第1実施形態の駆動制御装置30のステップS11~ステップS19と同様の処理については、同ステップ番号で示してここでの説明は省略し、追加された処理についてのみ詳細に説明する。
【0058】
図5に示されるように、第2実施形態の駆動制御装置30Aの駆動制御部32は、ステップS11にて単発のパルス波を超音波センサ20に入力した後で、ステップS12の振動体42Aの共振周波数を検出する処理と並行して、ステップS20にて距離検出部34が近距離の検出を行う。具体的には、上述したように、距離検出部34が単発のパルス波40Bを超音波センサ20に入力してからこの単発のパルス波40Bの受信波形(反射波)50Bを受信するまでに要する時間に基づいて近距離を検出する。
【0059】
次に、ステップS21にて、駆動制御装置30AはステップS14の処理、すなわち共振周波数Fの設定、及びバルス数の設定が完了しているか否かを判断する。ステップS14の処理が完了していない場合(ステップS21;NO)、ステップS22にて、駆動制御部32は、新たに単発のパルス波を超音波センサ20に入力し、駆動制御装置30AはステップS20へ処理を移行する。一方、ステップS21にて、ステップS14の処理が完了している場合(ステップS21;YES)、駆動制御装置30Aは、ステップS15へ処理を移行して、以降の処理を行う。
【0060】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0061】
本実施形態の駆動制御装置30A及び超音波センサ20の駆動制御方法によれば、距離検出部34が、パルス波を入力してからこのパルス波40Bの受信波形(反射波)50Bを受信するまでに要する時間に基づいて連続してパルス波を入力する際に検出される距離よりも近い近距離を検出している。そのため、単発のパルス波の入力によって、近距離に位置する物体OBまでの距離を取得することができる。
【0062】
また、本実施形態の駆動制御装置30A及び超音波センサ20の駆動制御方法によれば、距離検出部34が、駆動制御部32による共振周波数Fの検出と並行して近距離を検出しているので、共振周波数Fと近距離に位置する物体OBまでの距離とを効率的に取得することができる。
【0063】
[実施形態の補足説明]
上述した実施形態においては、超音波センサ20はアクチュエータ40の超音波スピーカ42とセンサ50の超音波マイクロフォン52とが、同じ方向を向いているが本発明はこれに限られない。例えば
図6に示されるように、超音波センサ20はアクチュエータ40の超音波スピーカ42とセンサ50の超音波マイクロフォン52とが対向して設けられていてもよい。この場合、
図4及び
図5におけるステップS11及びステップS12の処理、すなわち振動体42Aの共振周波数Fを検出する処理は、アクチュエータ40の超音波スピーカ42とセンサ50の超音波マイクロフォン52との間に、物体OBが存在していない状態で行われる。また、例えば
図7に示されるように、超音波センサ20はアクチュエータ40の超音波スピーカ42とセンサ50の超音波マイクロフォン52とを同一のものとしてもよい。この場合、1つの超音波スピーカ42(超音波マイクロフォン52)により超音波40Aの送信と反射波50Aの受信が行われる。
【0064】
また、上述した実施形態においては、駆動制御部32により超音波センサ20に入力される単発のパルス波を矩形波としたが、本発明はこれに限られない。単発のパルス波は正弦波であってもよい。パルス波が正弦波である場合には、矩形波に比べて、効率よく、かつ低振動及び低騒音で超音波センサ20を駆動させることができる。なお、単発のパルス波は、正弦波及び矩形波以外に、三角波、台形波、ガウスパルス波、及び階段状正弦波等、何れの波形であってもよい。
【0065】
また、上述した実施形態においては、駆動制御部32は超音波センサ20に共振周波数で矩形波を連続して入力しているが、本発明はこれに限られない。連続して入力する波形は、正弦波であってもよい。正弦波を連続して入力する場合には、矩形波に比べて、効率よく、かつ低振動及び低騒音で超音波センサを駆動させることができる。なお、共振周波数で連続して入力される波形は、正弦波及び矩形波以外に、三角波、台形波、ガウスパルス波、及び階段状正弦波等、何れの波形であってもよい。
【0066】
また、上述した実施形態においては、駆動制御部32が
図3で示したようにして自由振動数F0を検出したが本発明はこれに限られない。例えば、自由振動数F0を検出可能な装置を別に設けてもよいし、公知の技術を使用して自由振動数F0を検出することができる。
【0067】
また、上述した実施形態においては、駆動制御部32は、連続してパルス波を超音波センサ20に入力した後で、反射波50Aが検出された場合、超音波40Aを送信してから反射波50Aを受信するまでの時間TRに基づいて物体OBまでの距離Lを検出しているが、本発明はこれに限られない。距離Lを検出しなくても、反射波50Aが検出されたか否かによって予め規定された遠距離内に物体OBが存在するか否かを検出すればよい。すなわちステップS17の処理は実行されなくてもよい。この場合、
図4において、ステップS11~ステップS13の処理によって、遠距離よりも近い近距離内に物体OBが存在することが検出される。
【0068】
また、上記第2実施形態では、
図5に示されるように、ステップS21の処理の後で、駆動制御部32は、再度単発のパルス波を超音波センサ20に入力しているが、本発明はこれに限られず、入力しなくてもよい。すなわち、ステップS21及びステップS22の処理は実行しなくてもよい。
【0069】
また、上記第2実施形態では、
図5に示されるように、距離検出部34が、駆動制御部32による共振周波数Fの検出(ステップS12の処理)と並行してステップS20にて近距離を検出しているが本発明はこれに限られない。例えば、ステップS12の処理の前に近距離を検出するステップS20の処理を行ってもよい。
【0070】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・超音波センサシステム、20・・・超音波センサ、
30,30A・・・駆動制御装置、32・・・駆動制御部、34・・・距離検出部、
40・・・アクチュエータ、40A・・・超音波、42A・・・振動体、50・・・センサ、50A・・・反射波、OB・・・物体