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特開2024-1592塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法
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  • 特開-塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法 図1
  • 特開-塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法 図2A
  • 特開-塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法 図2B
  • 特開-塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法 図3A
  • 特開-塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001592
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20231227BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231227BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20231227BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231227BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20231227BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D7/14 L
B05D7/00 K
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100338
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 康弘
(72)【発明者】
【氏名】上原 義貴
(72)【発明者】
【氏名】小瀬村 透
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 和弘
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC84
4D075AC88
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB37
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC13
4D075EA05
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA02
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA34
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA12
4F042CB02
4F042CB03
4F042CB10
(57)【要約】
【課題】塗料室から塗料が液漏れするのを抑制する。
【解決手段】ハウジング114に、塗料2の導入部111、塗料室112及び塗料2の吐出部113が形成されたノズル11と、ハウジング114の壁面部115に形成された通孔116と、基端部142が、塗料室112の内部において、通孔116を囲んで壁面部115と一体的に形成され、本体141が、塗料室112の内部において、壁面部115から吐出部113に向かって膨出して形成されるとともに、壁面部115から吐出部113に向かう方向に伸縮可能に形成された蛇腹部14と、塗料室112の外部から通孔116を通過して蛇腹部14の先端部143まで延在し、蛇腹部14の先端部143を吐出部113に向かって押圧しながら軸方向Yに移動可能に設けられたニードル12と、ニードル12を軸方向Yに進退移動させるアクチュエータ13と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに、塗料の導入部、塗料室及び塗料の吐出部が形成されたノズルと、
前記ハウジングの、前記吐出部に対向する壁面部に形成された通孔と、
本体と基端部と先端部とを有する蛇腹部であって、
前記基端部が、前記塗料室の内部において、前記通孔を囲んで前記壁面部と一体的に形成され、
前記本体が、前記塗料室の内部において、前記壁面部から前記吐出部に向かって膨出して形成されるとともに、前記壁面部から前記吐出部に向かう方向に伸縮可能に形成された蛇腹部と、
前記塗料室の外部から前記通孔を通過して前記蛇腹部の先端部まで延在し、前記蛇腹部の先端部を前記吐出部に向かって押圧しながら軸方向に移動可能に設けられたニードルと、
前記ニードルの前進時に前記蛇腹部の先端部が前記吐出部に接近し、前記ニードルの後退時に前記蛇腹部の先端部が前記吐出部から離反するように、前記ニードルを前記軸方向に進退移動させるアクチュエータと、を備える塗料吐出装置。
【請求項2】
前記蛇腹部の本体の外面と、当該本体の外面に対面する前記ハウジングの壁面部の形状が、
前記ニードルが前進移動して前記蛇腹部が伸長した場合において、前記蛇腹部の本体と、当該本体の外面に対面する前記ハウジングの壁面部とが面接触するか又は互いの面が平行になるように形成されている請求項1に記載の塗料吐出装置。
【請求項3】
前記蛇腹部の本体の外面と、当該本体の外面に対面する前記ハウジングの壁面部の形状が、
前記ニードルが後退移動して前記蛇腹部が収縮した場合において、前記蛇腹部の本体と、当該本体の外面に対面する前記ハウジングの壁面部とが面接触するか又は互いの面が平行になるように形成されている請求項2に記載の塗料吐出装置。
【請求項4】
前記蛇腹部は、耐水性及び前記塗料に対する耐薬品性を有する合成樹脂材料、金属材料又はこれらの複合材料で構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の塗料吐出装置。
【請求項5】
前記蛇腹部は、複数の山折部を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の塗料吐出装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の塗料吐出装置を用い、自動車ボディ又は自動車部品に前記塗料を塗布する自動車の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端が吐出口を構成する吐出路と、プランジャーと、プランジャーが挿通される液室と、プランジャーを進退動させるプランジャー駆動機構とを備え、プランジャーの外周と液室の側面が常に非接触の状態でプランジャーを前進移動することで液材に慣性力を与えて液滴の状態に吐出する液滴吐出装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6177281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の液滴吐出装置では、前進移動するプランジャーが液室を貫通して設けられているため、その貫通部分を通って液室から液漏れが生じるおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、塗料室から塗料が液漏れするのを抑制できる塗料吐出装置及びこれを用いた自動車の塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吐出部に対向するハウジングの壁面部に形成された通孔を囲んで、前記壁面部と一体的に蛇腹部を形成し、アクチュエータにより軸方向に進退移動するニードルを、塗料室の外部から前記通孔を通過して前記蛇腹部の先端部まで延在させることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ニードルはハウジングを貫通していないので、塗料室から塗料が液漏れするのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る塗料吐出装置の一実施の形態を示す構成図である。
図2A図1のニードルの進退移動及び蛇腹部の伸縮動作を説明するための要部断面図(ニードル前進時及び蛇腹部伸長時)である。
図2B図1のニードルの進退移動及び蛇腹部の伸縮動作を説明するための要部断面図(ニードル後退時及び蛇腹部収縮時)である。
図3A】本発明に係る塗料吐出装置の他の実施の形態であり、ニードルの進退移動及び蛇腹部の伸縮動作を説明するための要部断面図(ニードル前進時及び蛇腹部伸長時)である。
図3B図3Aのニードルの進退移動及び蛇腹部の伸縮動作を説明するための要部断面図(ニードル後退時及び蛇腹部収縮時)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態例を説明する。図1は、本発明に係る塗料吐出装置1の一実施の形態を示す構成図である。本実施形態の塗料吐出装置1は、特に限定はされないが、たとえば自動車用塗料(アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などを基体樹脂とする熱硬化型塗料であり、水系塗料又は有機溶剤系塗料のいずれであってもよい。必要に応じて着色顔料や光輝性顔料を含んでよい。)を用いて自動車ボディの外板/内板やバンパなどの自動車部品を塗装する工程に適用することができる。自動車ボディの外板/内板やバンパなどの自動車部品を塗装する場合、サイドドアやフェンダなどの被塗装面がほぼ鉛直面になるため、比較的高粘度の塗料を使用する必要がある。その意味で、紙媒体への印刷に用いられるインクジェット記録装置の記録ヘッドなどは、低粘度のインクを使用することが前提であるため、自動車ボディの塗装用途には適していない。
【0010】
本実施形態の塗料吐出装置1は、図1に示すように、ノズル11と、ニードル12と、アクチュエータ13と、蛇腹部14と、制御部15とを備える。以下、これらの各構成について説明する。
【0011】
ノズル11は、ハウジング114に、塗料2の導入部111、塗料室112及び塗料2の吐出部113が形成されたものであり、ハウジング114は、金属材料、樹脂材料又はセラミックス材料からなる。ハウジング114の一側面には塗料2の導入部111が形成され、先端には塗料2の吐出部113が形成され、内部には塗料室112が形成されている。塗料2は、導入部111から塗料室112へ導入され、蛇腹部14を介してニードル12によって押されることで、吐出部113から外部へ吐出(滴下)する。
【0012】
なお、本実施形態のハウジング114は、組立製造上、上面が開口した凹状部材と、この上面を閉塞する蓋体に二分割されている。本実施形態のハウジング114は、導入部111、塗料室112及び吐出部113が形成された凹状部材の上面に、後述する蛇腹部14が一体成形された壁面部115が液密に取り付けられ、塗料室112の内部の液密状態が保たれている。
【0013】
ハウジング114の上面に液密に取り付けられた壁面部115は、ハウジング114と同様、金属材料、樹脂材料又はセラミックス材料からなる。本実施形態では、壁面部115の中央にニードル12が挿通可能な径の通孔116が形成されている。また、壁面部115の塗料室112側には、本体141と基端部142と先端部143とを有する蛇腹部14が設けられている。蛇腹部14とは、筒状部材の側面を山折と谷折の繰り返し構造に形成したものであり、原形から変形させると材料の自己弾性により原形に戻ろうとする復元力が作用する。
【0014】
本実施形態の蛇腹部14は、その基端部142が、塗料室112の内部において、通孔116を囲んで壁面部115と一体的に形成され、この基端部142に続く本体141が、塗料室112の内部において、壁面部115から吐出部113に向かって膨出して形成されている。そして、蛇腹部14が、本体141に続く先端部143が、吐出部113に接近・離反するように、壁面部115から吐出部113に向かう方向に伸縮可能に形成されている。本実施形態の蛇腹部14は一つの山折部(山折とされた部分)を含んでいる。
【0015】
なお、蛇腹部14は、常に塗料2に接触しながら伸縮動作を繰り返す部材であることから、材料を選定する場合には、使用する塗料の樹脂及び溶剤に対して耐薬品性と耐水性に優れた材料とすることが望ましい。
【0016】
ニードル12は、金属材料、樹脂材料又はセラミックス材料からなる針状の棒体(ロッド)であり、先端部121が、塗料室112の外部から通孔116を通過して蛇腹部14の先端部143まで延在し、基端部122がアクチュエータ室117に配置されている。また、ニードル12の基端部122には、アクチュエータ13が固定されている。ニードル12の先端部121は、蛇腹部14の先端部143を吐出部113に向かって押圧しながら軸方向に移動可能に設けられている。
【0017】
アクチュエータ13は、たとえば複数の圧電素子を積層したものであり、電極に印加する電圧に応じて軸方向Yに伸長及び収縮する特性を有する。アクチュエータ13への電圧の印加は、制御部15により実行され、制御部15からの指令信号によりアクチュエータ13に電圧を印加することで、ニードル12を軸方向Yに進退移動させることができる。
【0018】
本実施形態の塗料2は、塗料タンク21に収容され、塗料配管22を介して塗料ポンプ23により供給される。本実施形態の塗料吐出装置1を自動車ボディやバンパなどの自動車部品の塗装用途に用いる場合には、自動車用塗料として、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などを基体樹脂とし、必要に応じて着色顔料や光輝性顔料を含む熱硬化型塗料を用いることができる。本実施形態の塗料吐出装置1で用いられる塗料2は、水系塗料又は有機溶剤系塗料のいずれであってもよく、溶剤により所望の粘度に調製して用いることができる。なお、ノズル11の塗料室112に導入した塗料2を塗料タンク21に戻す塗料配管を設け、塗料2を循環しながら供給してもよい。
【0019】
図2A及び図2Bは、ノズル11の吐出部113に対するニードル12の進退移動と、これに伴う蛇腹部14の伸縮動作を説明するための要部断面図である。図2Aは、ニードル12が前進して蛇腹部14が伸長した下死点の状態を示し、図2Bは、ニードル12が後退して蛇腹部14が収縮した上死点の状態を示す。なお、蛇腹部14は、ニードル12など外力が作用しない無負荷の状態では、自己弾性により図2Bに示すように収縮状態に戻り、ニードル12から押圧力が作用すると、自己弾性に抗して図2Aに示すように伸長状態に変形する。
【0020】
本実施形態の制御部15は、アクチュエータ13を制御することにより所定の周波数でニードル12を軸方向Yに進退移動させる。ニードル12の1ストロークの行程は、図2Bに示す、ニードル12の先端部121が吐出部113から最も離反するストローク開始位置X1(上死点)から、図2Aに示す、ニードル12の先端部121が吐出部113に最も接近する前進限位置X2(下死点)まで前進したのち、再び図2Bに示すストローク開始位置X1(上死点)まで戻る行程である。制御部15は、アクチュエータ13を制御することにより、図2Bに示すニードル12のストローク開始位置X1,ニードル12のストローク量ΔL,ニードル12の移動速度Vを設定することができる。
【0021】
なお、図2Bに示すように、ニードル12やアクチュエータ13の仕様により、ニードル12のストローク開始位置X1の最大後退位置が定まるが、制御部15でアクチュエータ13を制御することにより、図2Bに示すように、最大後退位置を限度にしてニードルのストローク開始位置X1を所望の位置に設定することができる。また、ニードル12の前進限位置X2において、蛇腹部14の先端部143は、ノズル11の吐出部113に接触する必要はなく、接近すればよい。すなわち、ニードル12が前進することにより、蛇腹部14の先端部143と吐出部113との間にある塗料2が吐出部113に押され、これにより塗料2が吐出部113から吐出(滴下)するからである。
【0022】
本実施形態の塗料吐出装置1では、蛇腹部14は、その基端部142が、塗料室112の内部において、通孔116を囲んで壁面部115と一体的に形成される一方、ニードル12は、塗料室112の外部から通孔116を通過して蛇腹部14の先端部143まで延在して設けられている。そのため、ニードル12はハウジング114を貫通することなく塗料室112の塗料2を吐出部113から滴下させることができる。高周波数で進退移動するニードル12がハウジング114を貫通していないことから、ニードル12が原因で塗料室112から塗料2が液漏れすることはない。
【0023】
ところで、自動車用塗料のような液体ポリマーは、高分子粘弾性のチキソトロピー特性により、剪断応力を受け続けると粘度が低下する一方、静止状態になると粘度が上昇することが知られている。本発明者らが模擬実験を行い、本実施形態の塗料吐出装置1のノズル11の容積に相当するシリンジ(注射筒)に自動車用塗料を収容し、注射口を塞いだ状態でプランジャ(押し子)にて10kPaの圧力を6時間印加したところ、その粘度が初期の粘度に対し2~3倍に上昇することが確認された。
【0024】
自動車ボディや自動車部品に塗装する場合、塗膜の塗り肌、平滑性、鮮映性を高めるために、塗料2の微粒化を促進することが重要であるが、粘度が上昇すると微粒化が阻害される。そのため、粘度を低下させるためには塗料2を撹拌することが好ましいが、蛇腹部14は、塗料室112の内部において高周波数で伸縮動作を繰り返すことから、塗料2の撹拌にも寄与することができる。このことを以下に説明する。
【0025】
図2Aに示すように、ニードル12が前進して蛇腹部14が伸長すると、蛇腹部14の本体141のうち、山折部の先端側Z1(図2Aに一点鎖線の円で示す。)が塗料室112の壁面部に接近するので、同図に矢印で示すようにこの間にあった塗料2が流動することになる。一方、図2Bに示すように、ニードル12が後退して蛇腹部14が収縮すると、蛇腹部14の本体141のうち、山折部の基端側Z2(図2Bに一点鎖線の円で示す。)が塗料室112の壁面部115に接近するので、同図に矢印で示すようにこの間にあった塗料2が流動することになる。このような動作を高周波数で繰り返すことにより、塗料室112の塗料2が撹拌される。
【0026】
そのため、本実施形態の塗料吐出装置1では、蛇腹部14の本体141の外面と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部の形状が、図2Aに示すようにニードル12が前進移動して蛇腹部14が伸長した場合において、蛇腹部14の本体141の山折部の先端側Z1と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部とが、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成されている。点接触ではなく、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成することで、その間に存在する塗料2の撹拌に寄与する面積が大きくなるので、撹拌効果が高まる。
【0027】
また同様に、本実施形態の塗料吐出装置1では、蛇腹部14の本体141の外面と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部の形状が、図2Bに示すようにニードル12が後退移動して蛇腹部14が収縮した場合において、蛇腹部14の本体141の山折部の基端側Z2と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部115とが、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成されている。点接触ではなく、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成することで、その間に存在する塗料2の撹拌に寄与する面積が大きくなるので、撹拌効果が高まる。
【0028】
図3Aは、本発明に係る塗料吐出装置の他の実施の形態を示す要部断面図である。上述した図1図2Bに示す実施形態では、蛇腹部14の山折部は一つであったが、本発明に係る蛇腹部は、二つ以上の山折部を有する蛇腹部14であってもよい。図3Aは、二つの山折部を有する蛇腹部14とした他の実施形態において、ニードル12の進退移動及び蛇腹部14の伸縮動作を説明するための要部断面図(ニードル前進時及び蛇腹部伸長時)、図3Bは、ニードル12の進退移動及び蛇腹部14の伸縮動作を説明するための要部断面図(ニードル後退時及び蛇腹部収縮時)である。
【0029】
本実施形態に係る塗料吐出装置1においても、蛇腹部14は、その基端部142が、塗料室112の内部において、通孔116を囲んで壁面部115と一体的に形成される一方、ニードル12は、塗料室112の外部から通孔116を通過して蛇腹部14の先端部143まで延在して設けられている。そのため、ニードル12はハウジング114を貫通することなく塗料室112の塗料2を吐出部113から滴下させることができる。高周波数で進退移動するニードル12がハウジング114を貫通していないことから、ニードル12が原因で塗料室112から塗料2が液漏れすることはない。
【0030】
また、本実施形態に係る塗料吐出装置1においても、蛇腹部14の本体141の外面と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部の形状が、図3Aに示すようにニードル12が前進移動して蛇腹部14が伸長した場合において、蛇腹部14の本体141の山折部の先端側Z1と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部とが、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成されている。これにより、図3Aに示すように、ニードル12が前進して蛇腹部14が伸長すると、蛇腹部14の本体141のうち、山折部の先端側Z1(図3Aに一点鎖線の円で示す。)が塗料室112の壁面部に接近するので、同図に矢印で示すようにこの間にあった塗料2が流動することになる。
【0031】
またこれに加え、本実施形態の塗料吐出装置1では、蛇腹部14の本体141の外面と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部の形状が、図3Bに示すようにニードル12が後退移動して蛇腹部14が収縮した場合において、蛇腹部14の本体141の山折部の基端側Z2と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部115とが、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成されている。これにより、図3Bに示すように、ニードル12が後退して蛇腹部14が収縮すると、蛇腹部14の本体141のうち、山折部の基端側Z2(図3Bに一点鎖線の円で示す。)が塗料室112の壁面部115に接近するので、同図に矢印で示すようにこの間にあった塗料2が流動することになる。これに加え、本実施形態の蛇腹部14は、山折部が二つあるので、蛇腹部14が収縮したときに、同図に矢印で示すように二つの山折部の間にある塗料2も押し出されるので、これによっても塗料2の撹拌が促進される。
【0032】
以上のとおり、本実施形態の塗料吐出装置1は、ハウジング114に、塗料2の導入部111、塗料室112及び塗料2の吐出部113が形成されたノズル11と、ハウジング114の、吐出部113に対向する壁面部115に形成された通孔116と、本体141と基端部142と先端部143とを有する蛇腹部14であって、基端部142が、塗料室112の内部において、通孔116を囲んで壁面部115と一体的に形成され、本体141が、塗料室112の内部において、壁面部115から吐出部113に向かって膨出して形成されるとともに、壁面部115から吐出部113に向かう方向に伸縮可能に形成された蛇腹部14と、塗料室112の外部から通孔116を通過して蛇腹部14の先端部143まで延在し、蛇腹部14の先端部143を吐出部113に向かって押圧しながら軸方向Yに移動可能に設けられたニードル12と、ニードル12の前進時に蛇腹部14の先端部143が吐出部113に接近し、ニードル12の後退時に蛇腹部14の先端部143が吐出部113から離反するように、ニードル12を軸方向Yに進退移動させるアクチュエータ13と、を備える。
【0033】
これにより、ニードル12はハウジング114を貫通することなく塗料室112の塗料2を吐出部113から滴下させることができる。高周波数で進退移動するニードル12がハウジング114を貫通していないことから、ニードル12が原因で塗料室112から塗料2が液漏れすることはない。またこれに加え、蛇腹部14は、塗料室112の内部において高周波数で伸縮動作を繰り返すことから、塗料2の撹拌にも寄与する。
【0034】
また、本実施形態の塗料吐出装置1によれば、蛇腹部14の本体141の外面と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部の形状が、図2A又は図3Aに示すようにニードル12が前進移動して蛇腹部14が伸長した場合において、蛇腹部14の本体141の山折部の先端側Z1と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部とが、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成されている。このように、点接触ではなく、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成することで、その間に存在する塗料2の撹拌に寄与する面積が大きくなるので、塗料2の撹拌効果が高まる。
【0035】
また、本実施形態の塗料吐出装置1によれば、蛇腹部14の本体141の外面と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部の形状が、図2B又は図3Bに示すようにニードル12が後退移動して蛇腹部14が収縮した場合において、蛇腹部14の本体141の山折部の基端側Z2と、当該本体141の外面に対面するハウジング114の壁面部115とが、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成されている。このように、点接触ではなく、面接触するか又は互いの面がなるべく平行になるように形成することで、その間に存在する塗料2の撹拌に寄与する面積が大きくなるので、塗料2の撹拌効果が高まる。
【0036】
また、本実施形態の塗料吐出装置1によれば、蛇腹部14は、耐水性及び塗料2に対する耐薬品性を有する合成樹脂材料、金属材料又はこれらの複合材料で構成されているので、高周波数で伸縮動作しても、延命効果が期待できる。
【0037】
また、本実施形態の塗料吐出装置1によれば、蛇腹部14は、複数の山折部を含むので、蛇腹部14が収縮したときに、図3Bに矢印で示すように二つの山折部の間にある塗料2も押し出される。これによっても塗料2の撹拌効果が促進される。
【0038】
また、本実施形態の塗料吐出装置1によれば、自動車ボディ又は自動車部品に塗料を塗布する自動車塗装用とするので、従来のベル型静電塗装装置に比べ、塗着効率が格段に向上し、静電塗装に必要なアース処理が不要となり、ツートーンなどの塗り分けもマスキングレスで行うことができる。また、塗着効率が100%に近いので、塗装設備としての塗料回収装置が不要となり、塗装ブースの数量も削減することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…塗料吐出装置
11…ノズル
111…導入部
112…塗料室
113…吐出部
114…ハウジング
115…壁面部
116…通孔
117…アクチュエータ室
12…ニードル
121…先端部
122…基端部
13…アクチュエータ
14…蛇腹部
141…本体
142…基端部
143…先端部
15…制御部
2…塗料
21…塗料タンク
22…塗料配管
23…塗料ポンプ
X1…ストローク開始位置(上死点)
X2…先進限位置(下死点)
L…ニードルのストローク量
Y…ニードルの軸方向
Z1…山折部の先端側
Z2…山折部の基端側
図1
図2A
図2B
図3A
図3B