(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159212
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダの異常検出方法及びロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20241031BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20241031BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01D5/244 K
G01D5/12 K
G01D5/347 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075057
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 智晴
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛之
【テーマコード(参考)】
2F077
2F103
【Fターム(参考)】
2F077AA04
2F077AA27
2F077CC02
2F077CC09
2F077CC10
2F077JJ01
2F077JJ07
2F077JJ23
2F077NN02
2F077NN27
2F077PP19
2F077QQ15
2F103BA18
2F103DA05
2F103DA11
2F103DA13
2F103EA12
2F103EB01
2F103EB11
2F103EB32
(57)【要約】
【課題】位置検出の異常を検出するロータリエンコーダの異常検出方法及びロータリエンコーダを提供する。
【解決手段】回転軸とともに回転し、アブソリュートパターン及びインクリメンタルパターンを有する円板と、前記回転軸とともに回転する磁石と、前記インクリメンタルパターンを検出して前記回転軸の相対位置を示す信号を出力し、前記アブソリュートパターンを検出して前記回転軸の絶対位置を示す信号を出力する光センサと、前記磁石の磁界の向きを示す信号を出力する磁気センサと、を備え、前記回転軸の回転を検出するロータリエンコーダの異常検出方法であって、初期一回転位置及び前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号に基づいて算出された一回転位置と、前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きを示す信号と、に基づいて、前記ロータリエンコーダの異常を検出する、ロータリエンコーダの異常検出方法。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸とともに回転し、アブソリュートパターン及びインクリメンタルパターンを有する円板と、
前記回転軸とともに回転する磁石と、
前記インクリメンタルパターンを検出して前記回転軸の相対位置を示す信号を出力し、前記アブソリュートパターンを検出して前記回転軸の絶対位置を示す信号を出力する光センサと、
前記磁石の磁界の向きを示す信号を出力する磁気センサと、を備え、
前記回転軸の回転を検出するロータリエンコーダの異常検出方法であって、
初期一回転位置及び前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号に基づいて算出された一回転位置と、前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きを示す信号と、に基づいて、前記ロータリエンコーダの異常を検出する、
ロータリエンコーダの異常検出方法。
【請求項2】
前記回転軸の前記相対位置を示す信号に基づいて、前記回転軸の回転速度を検出し、
前記回転軸の回転速度が閾値よりも高速で回転する場合、
初期一回転位置及び前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号に基づいて算出された一回転位置と、前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きを示す信号と、に基づいて、前記ロータリエンコーダの異常を検出する、
請求項1に記載のロータリエンコーダの異常検出方法。
【請求項3】
前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きが切り替わる際、前記一回転位置が所定の範囲内であるか否かを判定し、
所定の範囲外である場合、前記ロータリエンコーダの異常と判定する、
請求項1または請求項2に記載のロータリエンコーダの異常検出方法。
【請求項4】
オフセット値を格納する不揮発メモリを備え、
前記回転軸の回転速度が閾値よりも高速で回転する場合、
前記一回転位置を前記オフセット値で補正した補正後一回転位置と、前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きを示す信号と、に基づいて、前記ロータリエンコーダの異常を検出する、
請求項1または請求項2に記載のロータリエンコーダの異常検出方法。
【請求項5】
前記回転軸の回転速度が閾値よりも低速で回転する場合、
初期一回転位置及び前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号に基づいて算出された一回転位置と、前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号と、に基づいて、前記ロータリエンコーダの異常を検出する、
請求項1または請求項2に記載のロータリエンコーダの異常検出方法。
【請求項6】
前記回転軸の回転速度が閾値よりも低速で回転する場合、
初期一回転位置及び前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号に基づいて算出された一回転位置と、前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きを示す信号と、に基づいて、前記ロータリエンコーダの異常を検出する、
請求項1または請求項2に記載のロータリエンコーダの異常検出方法。
【請求項7】
回転軸とともに回転し、アブソリュートパターン及びインクリメンタルパターンを有する円板と、
前記回転軸とともに回転する磁石と、
前記インクリメンタルパターンを検出して前記回転軸の相対位置を示す信号を出力し、前記アブソリュートパターンを検出して前記回転軸の絶対位置を示す信号を出力する光センサと、
前記磁石の磁界の向きを示す信号を出力する磁気センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
初期一回転位置及び前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号に基づいて算出された一回転位置と、前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きを示す信号と、に基づいて、異常を検出する異常検出部と、を有する、
ロータリエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンコーダの回転体1回転で1周期となるような2値乱数信号(以下、M系列信号という)を出力するM系列信号出力手段と、エンコーダの回転体1回転で任意の分解能の数だけ出力され、かつ、デューティが50%のAパルス信号およびこのAパルス信号に対し1周期の1/4だけずれたBパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、前記M系列信号を位置データに変換する変換手段と、前記Aパルス信号およびBパルス信号を計数する計数手段とを備え、電源投入時に前記変換手段を用いて初期位置検出を行ない、その後、この初期位置検出値に前記計数手段からの出力を加算することにより、位置検出を常時可能にしたエンコーダにおいて、1回転で1パルスだけ同じ位置で発生するZパルス信号を出力するZパルス信号出力手段と、このZパルス信号から位置を検出する位置検出手段とを設け、エンコーダの回転体が停止時を含む低速で回転中の場合は、前記M系列信号を用いて初期位置検出を行ない、エンコーダの回転体が高速で回転中の場合は、前記Zパルス信号を用いて初期位置検出を行なうことを特徴とするエンコーダの初期位置検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたエンコーダにおいて、回転角度の高分解能を実現する場合、M系列信号1個あたりの受光素子の面積が小さくなる。このため、回路の浮遊容量(寄生容量)等の影響によって、受光素子で検出した信号に遅れが生じるおそれがある。よって、高速回転時の回転角度の検出が困難であり、高速回転時の位置ずれの異常を検出できないおそれがある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、位置検出の異常を好適に検出するロータリエンコーダの異常検出方法及びロータリエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、回転軸とともに回転し、アブソリュートパターン及びインクリメンタルパターンを有する円板と、前記回転軸とともに回転する磁石と、前記インクリメンタルパターンを検出して前記回転軸の相対位置を示す信号を出力し、前記アブソリュートパターンを検出して前記回転軸の絶対位置を示す信号を出力する光センサと、前記磁石の磁界の向きを示す信号を出力する磁気センサと、を備え、前記回転軸の回転を検出するロータリエンコーダの異常検出方法であって、初期一回転位置及び前記光センサから出力された前記回転軸の絶対位置を示す信号に基づいて算出された一回転位置と、前記磁気センサから出力された前記磁石の磁界の向きを示す信号と、に基づいて、前記ロータリエンコーダの異常を検出する、ロータリエンコーダの異常検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、位置検出の異常を好適に検出するロータリエンコーダの異常検出方法及びロータリエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ロータリエンコーダの回転体を上面からみた図である。
【
図3】アブソリュートエンコーダにおける機能ブロック図の一例である。
【
図4】インクリメンタルエンコーダにおける機能ブロック図の一例である。
【
図5】ロータリエンコーダの制御の一例を示すフローチャートである。
【
図7】一回転位置検出値及びZパルスの一例を示すグラフである。
【
図8】異常検出部の機能ブロック図の他の一例である。
【
図9】一回転位置検出値及びZパルスの他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
ロータリエンコーダについて、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、ロータリエンコーダの断面図である。
図2は、ロータリエンコーダの回転体を上面からみた図である。
【0011】
ここで、ロータリエンコーダの測定対象(例えば、サーボモータ等)は、筐体9と、回転軸10(例えば、モータシャフト)と、を有する。回転軸10の一端は、筐体9を貫通して筐体9外まで突出している。なお、測定対象がサーボモータである場合、回転軸10の他端は、サーボモータによって駆動される装置(負荷装置)に接続される。
【0012】
ロータリエンコーダは、回転軸10の一端に取り付けられ、回転軸10の回転を検出する。例えば、ロータリエンコーダは、アブソリュートエンコーダ(後述する
図3参照)であって、回転軸10の一回転中の回転位置(以下、「一回転位置」ともいう。)(回転角度)、回転軸10の多回転量(回転数)を検出する。また、ロータリエンコーダは、インクリメンタルエンコーダ(後述する
図4参照)であって、回転軸10の一回転位置を検出する。
【0013】
ロータリエンコーダは、基板1と、磁石2と、スリット円板3と、ハブ4と、皿ネジ5と、ケース6と、光センサ7と、磁気センサ8と、を有する。
【0014】
基板1には、光センサ7、磁気センサ8が実装される。また、基板1には、回転軸10の一回転位置、回転軸10の多回転量、異常等を検出するための制御部を構成する電子部品等が実装される。
【0015】
回転軸10の一端には、ロータリエンコーダの回転体が取り付けられる。ロータリエンコーダの回転体は、磁石2と、スリット円板3と、ハブ4と、皿ネジ5と、を含み、回転軸10とともに回転する。
【0016】
ハブ4は、皿ネジ5によって回転軸10に固定される。スリット円板3は、接着剤35を用いてハブ4に取り付けられる。また、磁石2は、接着剤25を用いて皿ネジ5の頭部に取り付けられる。これにより、回転軸10が回転することで、ロータリエンコーダの回転体(磁石2、スリット円板3、ハブ4、皿ネジ5)も供に回転する。
【0017】
ケース6は、筐体9に固定され、基板1を支持する。
【0018】
磁石2は、回転軸10の回転中心10AXに対して直交する方向に磁極(N極部21及びS極部22)を有するように配置される。即ち、回転中心10AXの方向(
図2参照)からみて、磁石2は、一方の180°の範囲にN極部21を有し、他方の180°の範囲にS極部22を有する。
【0019】
磁気センサ8は、ホール素子等で構成され、磁石2によって形成される磁場(磁界の向き)を検出する。なお、磁気センサ8は、例えば、後述する
図7に示すように、回転軸10の一回転位置が0°から180°の間の範囲において、Highの信号を出力し、180°から360°の間の範囲において、Lowの信号を出力する。即ち、回転軸10が1回転するごとに、2回の磁界の向きの変化(立ち下がり及び立ち上がり)を検出する。
【0020】
スリット円板3には、アブソリュートパターン31及びインクリメンタルパターン32が設けられている。また、
図2において、アブソリュートパターン31における回転軸10の一回転位置がゼロとなるスリット基準位置33を太線で模式的に示す。
【0021】
アブソリュートパターン31は、スリット円板3の回転位置に応じて、光センサ7からの照射光を、一回転中の回転角度の絶対位置を表す所定のパターンで反射する。アブソリュートパターン31は、例えば、スリット円板3の角度位置に応じて、所定のビット数(例えば、9ビット)のM系列コードを表す複数の反射部が周方向に配置される。このとき、アブソリュートパターン31の周方向における反射部同士の間には、非反射部或いは低反射率部が配置される。
【0022】
インクリメンタルパターン32は、スリット円板3の回転位置に応じて、光センサ7からの照射光を、任意の角度位置からの回転角度(つまり、相対角度)を表す所定のパターンで反射する。インクリメンタルパターン32は、例えば、スリット円板3の角度位置に応じて、所定のビット数(例えば、9ビット)の位相の異なるA相コード及びB相コードを表す複数の反射部が周方向に配置される。このとき、インクリメンタルパターン32の周方向における反射部同士の間には、非反射部或いは低反射率部が配置される。
【0023】
光センサ7は、発光素子70と、受光素子71と、を有する。発光素子70は、スリット円板3に光を照射する。受光素子71は、アブソリュートパターン31及びインクリメンタルパターン32で反射した光を検出する。
【0024】
このように、ロータリエンコーダがアブソリュートエンコーダ(後述する
図3参照)である場合、光センサ7で回転軸10の一回転位置を検出し、磁気センサ8で回転軸10の多回転量を検出する。また、ロータリエンコーダがインクリメンタルエンコーダ(後述する
図4参照)である場合、光センサ7で回転軸10の一回転位置を検出する。
【0025】
次に、ロータリエンコーダにおける機能ブロックの一例について、
図3から
図4を用いて説明する。
図3は、アブソリュートエンコーダにおける機能ブロック図の一例である。
図4は、インクリメンタルエンコーダにおける機能ブロック図の一例である。
【0026】
まず、
図3を用いてアブソリュートエンコーダにおける機能ブロック図について説明する。
【0027】
光センサ7の受光素子71は、M系列信号検出部711と、AB相信号検出部712と、を有する。M系列信号検出部711は、スリット円板3のアブソリュートパターン31を検出することにより、M系列信号を出力する。M系列信号は、絶対位置を示す信号である。AB相信号検出部712は、スリット円板3のインクリメンタルパターン32を検出することにより、AB相信号を出力する。AB相信号は、相対位置を示す信号である。
【0028】
初期一回転絶対位置演算部1110は、M系列信号検出部711からM系列信号が入力され、回転軸10の初期一回転絶対位置を算出する。ここで、初期一回転絶対位置は、回転軸10の一回転位置の初期位置である。具体的には、初期一回転絶対位置は、例えばロータリエンコーダの電源投入時における回転軸10の一回転位置である。
【0029】
相対位置演算部1120は、AB相信号検出部712からAB相信号が入力され、回転軸10の一回転相対位置を算出する。ここで、回転軸10の一回転相対位置は、回転軸10の初期一回転絶対位置に対する回転軸10の一回転中の相対位置(回転角度)である。
【0030】
一回転位置検出演算部1130は、初期一回転絶対位置演算部1110の初期一回転絶対位置と相対位置演算部1120の一回転相対位置に基づいて、回転軸10の一回転位置を算出する。
【0031】
磁気センサ8は、Zパルス用検出部81と、多回転信号用検出部82と、を有する。Zパルス用検出部81は、磁界の向きを検出して、Zパルスを出力する。Zパルスは、磁界の向きを示す信号である。多回転信号用検出部82は、回転軸10が1回転するごとに信号を出力する。
【0032】
多回転量検出演算部1200は、多回転信号用検出部82からの信号をカウントすることにより、回転軸10の多回転量を算出する。
【0033】
つなぎ処理部1300は、一回転位置検出演算部1130の回転軸10の一回転位置及び多回転量検出演算部1200の回転軸10の多回転量を位置検出値として出力する。
【0034】
高速/低速判断部1400(速度判断部)は、回転軸10の回転速度が高速であるか低速であるかを判定する。高速/低速判断部1400は、単位時間当たりの一回転相対位置の変化に基づいて、回転軸10の回転速度を算出する。そして、回転速度が閾値以上の場合「高速」と判定し、異常検出部1500に高速判断信号を出力する。一方、回転速度が閾値未満の場合「低速」と判定し、異常検出部1500に低速判断信号を出力する。
【0035】
異常検出部1500は、回転軸10の回転速度が高速であるか低速であるかを判定する。なお、異常検出部1500については、
図6等を用いて後述する。
【0036】
このように、アブソリュートエンコーダは、回転軸10の一回転位置及び回転軸10の多回転量を検出して出力する。また、アブソリュートエンコーダは、異常を検出した場合、異常検出信号を出力する。
【0037】
次に、
図4を用いてインクリメンタルエンコーダにおける機能ブロック図について説明する。インクリメンタルエンコーダにおける機能ブロック図(
図4参照)では、アブソリュートエンコーダにおける機能ブロック図(
図3参照)と比較して、多回転信号用検出部82、多回転量検出演算部1200、つなぎ処理部1300が省略されている点で異なっている。その他の構成は同様であり、重複する説明を省略する。
【0038】
このように、インクリメンタルエンコーダは、回転軸10の一回転位置を検出して出力する。また、インクリメンタルエンコーダは、異常を検出した場合、異常検出信号を出力する。
【0039】
次に、ロータリエンコーダの制御の一例について、
図5を用いて説明する。
図5は、ロータリエンコーダの制御の一例を示すフローチャートである。
【0040】
ロータリエンコーダの電源が投入されると、制御部はステップS101の処理を開始する。
【0041】
ステップS101において、制御部は、M系列信号を用いて初期一回転絶対位置を検出する。ここでは、光センサ7でスリット円板3のアブソリュートパターン31を検出し、検出したM系列信号が初期一回転絶対位置演算部1110に入力される。初期一回転絶対位置演算部1110は、M系列信号に基づいて、初期一回転絶対位置を検出する。
【0042】
次に、測定対象の電源が投入され、以降、回転軸10が回転可能となる。
【0043】
ステップS102において、制御部は、初期一回転絶対位置に一回転相対位置を加算して、回転軸10の一回転位置を算出する。ここでは、初期一回転絶対位置演算部1110で演算された初期一回転絶対位置と相対位置演算部1120で演算された一回転相対位置を一回転位置検出演算部1130に入力する。そして、一回転位置検出演算部1130は、初期一回転絶対位置に一回転相対位置を加算して、回転軸10の一回転位置を算出する。
【0044】
ステップS103において、制御部は、単位時間当たりの一回転相対位置の変化より回転軸10の回転速度を検出する。ここでは、高速/低速判断部1400は、単位時間当たりの一回転相対位置の変化より回転軸10の回転速度を検出する。
【0045】
ステップS104において、制御部は、回転軸10の回転速度が高速であるか、または、低速であるかを判定する。ここでは、高速/低速判断部1400は、ステップS103で検出した回転軸10の回転速度が閾値以上の場合に高速と判定し、閾値未満の場合に低速と判定する。低速と判定した場合、制御部の処理はステップS105に進む。高速と判定した場合、制御部の処理はステップS106に進む。
【0046】
ステップS105において、制御部は、M系列信号を用いたロータリエンコーダの異常検出を行う。ここでは、異常検出部1500は、M系列信号を用いた異常検出を行う。なお、M系列信号を用いた異常検出については、
図6等を用いて後述する。そして、制御部の処理は、ステップS102に戻る。
【0047】
ステップS106において、制御部は、Zパルスを用いたロータリエンコーダの異常検出を行う。ここでは、異常検出部1500は、Zパルスを用いた異常検出を行う。なお、Zパルスを用いた異常検出については、
図6等を用いて後述する。そして、制御部の処理は、ステップS102に戻る。
【0048】
次に、異常検出部1500の一例について、
図6を用いて説明する。
図6は、異常検出部1500の機能ブロック図の一例である。ここでは、磁石2の磁界の向きがスリット基準位置33に併せて取り付けられた場合を例に説明する。即ち、一回転位置が180°及び360°(0°)において、磁界の向きが反転する、換言すればZパルスが立ち上がるまたは立ち下がるように、磁石2が取り付けられている。
【0049】
M系列信号を用いた異常検出部1510は、M系列信号検出部711からM系列信号が入力され、一回転位置検出演算部1130から一回転位置検出値が入力される。異常検出部1510は、一回転位置をM系列信号に変換するテーブル1511を有している。異常検出部1510の判定部1512は、M系列信号と、テーブル1511で変換されたM系列信号と、が一致しない(所定の閾値以上離れている)場合、エラー信号を出力する。
【0050】
Zパルスを用いた異常検出部1520は、Zパルス用検出部81からZパルスが入力され、一回転位置検出演算部1130から一回転位置検出値が入力される。
図7は、異常検出部1520に入力される一回転位置検出値及びZパルスの一例を示すグラフである。ここでは、回転軸10は一定速度で正回転(一回転位置が増加する方向)している場合を例に説明する。
【0051】
異常検出部1520は、磁界の向きが切り替わる際において、即ち、Zパルスが立ち下がる、または、立ち下がる際において、一回転位置が所定範囲θ1,θ2,θ3の範囲内に収まっているか否かを判定する。所定範囲θ1,θ2,θ3の範囲外となった場合、異常と判定し、異常検出部1520は、エラー信号を出力する。
【0052】
また、異常検出部1520は、Zパルスが立ち下がる前後の時間T1において、一回転位置が角度180°を含む所定範囲θ1の範囲内に収まっているか否かを判定する。所定範囲θ1の範囲外となった場合、異常と判定し、異常検出部1520は、エラー信号を出力する。
【0053】
また、異常検出部1520は、Zパルスが立ち上がる前後の時間T2において、一回転位置が角度360°を含む所定範囲θ2の範囲内及び角度0°を含む所定範囲θ3の範囲内に収まっているか否かを判定する。所定範囲θ2,θ3の範囲外となった場合、異常と判定し、異常検出部1520は、エラー信号を出力する。
【0054】
切替部1530は、高速/低速判断部1400から低速判断信号が入力された場合、異常検出部1510の信号をOR演算部1550に出力する。また、切替部1530は、高速/低速判断部1400から高速判断信号が入力された場合、異常検出部1510とOR演算部1550とを遮断する。
【0055】
切替部1540は、高速/低速判断部1400から高速判断信号が入力された場合、異常検出部1520の信号をOR演算部1550に出力する。また、切替部1540は、高速/低速判断部1400から低速判断信号が入力された場合、異常検出部1520とOR演算部1550とを遮断する。
【0056】
OR演算部1550は、切替部1530,1540の少なくとも一方からエラー信号が入力されると、エラー信号を出力する。
【0057】
このように、切替部1530,1540及びOR演算部1550によって、低速時はM系列信号を用いた異常検出部1510によって異常検出が行われ(S105参照)、高速時はZパルスを用いた異常検出部1520によって異常検出が行われる(S106参照)。
【0058】
なお、高速時と低速時で異常検出方法を切り替えるものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、高速時と低速時のいずれにおいても、Zパルスを用いた異常検出部1520によって異常検出を行う構成であってもよい。
【0059】
次に、異常検出部1500の他の一例について、
図8を用いて説明する。
図8は、異常検出部1500の機能ブロック図の他の一例である。ここでは、磁石2が任意の角度に取り付けられている。
【0060】
不揮発メモリ1570にオフセット値θoffsetが格納されている。演算器1580は、一回転検出値をオフセット値θoffsetで減算する。
【0061】
Zパルスを用いた異常検出部1520は、Zパルス用検出部81からZパルスが入力され、演算器1580からオフセットされた一回転位置検出値(補正後一回転位置)が入力される。
図9は、異常検出部1520に入力される一回転位置検出値及びZパルスの一例を示すグラフである。上段から、一回転位置検出演算部1130で検出された一回転位置検出値、異常検出部1500に入力されるオフセットされた一回転位置検出値、異常検出部1500に入力されるZパルスを示す。なお、ここでは、回転軸10は正回転(一回転位置が増加する方向)している場合を例に説明する。
【0062】
異常検出部1520は、磁界の向きが切り替わる際において、即ち、Zパルスが立ち下がる、または、立ち下がる際において、オフセットされた一回転位置が所定範囲θ1,θ2,θ3の範囲内に収まっているか否かを判定する。所定範囲θ1,θ2,θ3の範囲外となった場合、異常と判定し、異常検出部1520は、エラー信号を出力する。
【0063】
また、異常検出部1520は、Zパルスが立ち下がる前後の時間T1において、オフセットされた一回転位置が角度180°を含む所定範囲θ1の範囲内に収まっているか否かを判定する。所定範囲θ1の範囲外となった場合、異常と判定し、異常検出部1520は、エラー信号を出力する。
【0064】
また、異常検出部1520は、Zパルスが立ち上がる前後の時間T2において、オフセットされた一回転位置が角度360°を含む所定範囲θ2の範囲内及び角度0°を含む所定範囲θ3の範囲内に収まっているか否かを判定する。所定範囲θ2,θ3の範囲外となった場合、異常と判定し、異常検出部1520は、エラー信号を出力する。
【0065】
このように、磁石2を任意の角度と取り付けても、オフセットされた一回転位置とZパルスに基づいて異常検出を行うことにより、
図7及び
図8の場合と同様に異常検出を行うことができる。
【0066】
ここで、M系列信号を検出する受光素子71の1信号あたり受光面積は、AB相信号を検出する受光素子71の1信号あたり受光面積と比較して小さくなっている。このため、高分解能になるほどM系列信号を検出する受光素子71のS/N比が低下する。これに対し、本実施形態に係るロータリエンコーダによれば、回転軸10が高速回転する状態において、異常検出部1520に示すように、ZパルスとAB相信号を用いて異常検出を行う。これにより、光学系の信号のS/N比を確保した上で、かつ、一回転位置の出力信号が固定となるような故障においても異常検出が可能となる。
【0067】
また、アブソリュートエンコーダにおいては、多回転検出を行うための磁気センサ8や磁石2等を共用することができるので、構造を簡素化することができる。
【0068】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、アブソリュートエンコーダは、反射型であったが、透過型であってもよい。この場合、スリット円板3のインクリメンタルパターン32及びアブソリュートパターン31は、反射部、及び、非反射部或いは低反射率部の代わりに、照射光を透過する透過部、及び、照射光を透過しない非透過部により構成される。また、スリット円板3に光を照射する発光素子70は、スリット円板3から見て、受光素子71とは反対側に所定距離だけ離れた位置に設けられる。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
2 磁石
21 N極部
22 S極部
25 接着剤
3 スリット円板
31 アブソリュートパターン
32 インクリメンタルパターン
33 スリット基準位置
35 接着剤
4 ハブ
5 皿ネジ
6 ケース
7 光センサ
70 発光素子
71 受光素子
711 M系列信号検出部
712 AB相信号検出部
8 磁気センサ
81 Zパルス用検出部
82 多回転信号用検出部
9 筐体
10 回転軸
10AX 回転中心
1110 初期一回転絶対位置演算部
1120 相対位置演算部
1130 一回転位置検出演算部
1200 多回転量検出演算部
1300 つなぎ処理部
1400 高速/低速判断部
1500 異常検出部
1510 異常検出部
1511 テーブル
1512 判定部
1520 異常検出部
1530,1540 切替部
1550 OR演算部
1570 不揮発メモリ