(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159213
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
B61L 27/00 20220101AFI20241031BHJP
B61L 25/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B61L27/00
B61L25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075058
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
(72)【発明者】
【氏名】平尾 雄也
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ11
5H161JJ29
(57)【要約】
【課題】制御装置と複数の車両との間の通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査を適切に行うことができる車両制御システムを実現する。
【解決手段】制御装置5は、設備側通信部6と複数の車両30のそれぞれの車両側通信部36との通信状態の良否を判定する通信状態判定部3と、記録部4とを備える。通信状態判定部3が、設備側通信部6と何れかの車両側通信部36との間で通信状態が不良である通信不良と判定した場合には、制御装置5は、通信不良が生じた車両を対象車両30Tとして、通信不良の発生時点及び解消時点の少なくとも一方を含む対象期間における少なくとも1つのデータ取得点での対象車両30Tの状態を示す車両状態情報を取得して、記録部4に車両状態情報を記録する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた走行経路に沿って走行する複数の車両と、複数の前記車両のそれぞれに対する走行指令を生成して前記車両の走行を制御する制御装置と、複数の前記車両と前記制御装置との間の通信を行う通信システムと、を備えた車両制御システムであって、
前記通信システムは、前記車両との間で無線による通信を行う設備側通信部を備え、
前記車両は、前記設備側通信部との無線による通信を行う車両側通信部を備え、
前記制御装置は、前記設備側通信部と複数の前記車両のそれぞれの前記車両側通信部との通信状態の良否を判定する通信状態判定部と、記録部と、を備え、
前記通信状態判定部が、前記設備側通信部と何れかの前記車両側通信部との間で前記通信状態が不良である通信不良と判定した場合には、
前記制御装置は、当該通信不良が生じた前記車両を対象車両として、当該通信不良の発生時点及び解消時点の少なくとも一方を含む対象期間における少なくとも1つのデータ取得点での前記対象車両の状態を示す車両状態情報を取得して、前記記録部に前記車両状態情報を記録する、車両制御システム。
【請求項2】
前記車両は、自車の位置を検出する自車位置検出部を備え、
前記車両側通信部は、前記自車位置検出部が検出した自車位置を示す自車位置情報を定期的に前記制御装置へ送信し、
前記通信状態判定部が、前記通信状態が不良であると判定した場合には、
前記制御装置は、前記発生時点より前の時点から前記解消時点より後の時点までを前記対象期間として、前記設備側通信部が受信した前記対象期間内の前記データ取得点における前記対象車両の前記自車位置情報を、前記車両状態情報として取得する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記設備側通信部は、前記対象車両との間での前記通信状態の不良が解消した後、前記対象車両と通信を行い、
前記制御装置は、前記発生時点から前記解消時点までの間の前記データ取得点における前記対象車両の位置の情報を、前記対象車両から前記車両状態情報として取得する、請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記発生時点より前の前記データ取得点における前記対象車両の前記自車位置情報と、前記解消時点より後の前記データ取得点における前記対象車両の前記自車位置情報とに基づいて、前記発生時点から前記解消時点までの間の前記データ取得点における前記対象車両の位置を推定し、前記車両状態情報として取得する、請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記車両状態情報は、前記対象車両が備えるセンサにより検出された前記車両の挙動を示す情報、前記車両側通信部により検出された前記設備側通信部からの電波の強度を示す情報、前記設備側通信部が受信した前記対象車両の前記車両側通信部からの電波の強度を示す情報、及び、前記対象車両の属性を示す情報、の少なくとも1つをさらに含む、請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項6】
情報を表示する表示部を備え、
前記制御装置は、前記記録部に記録された複数の前記対象車両についての前記車両状態情報を、前記走行経路を示すマップ情報と重ね合わせて前記表示部に表示する、請求項2から5の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記記録部に記録された複数の前記対象車両についての前記車両状態情報に基づいて、前記走行経路における前記通信不良が生じた位置を示す不良発生情報を、前記マップ情報と重ね合わせて前記表示部に表示し、
前記不良発生情報は、予め規定された設定期間内での各位置における当該通信不良の発生回数に応じて異なる態様で表示される、請求項6に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5446055号公報には、複数の車両(台車)と、複数の車両のそれぞれに対して走行指令を送信する制御装置(地上側のコントローラ)とを備えた車両制御システム(台車システム)が開示されている。この車両制御システムでは、車両と制御装置との間でワイヤレス通信を行っている。それぞれの車両は、自車両の位置を含む情報を周期的に制御装置に報告している。制御装置は、それぞれの車両から報告された位置情報に基づいて、複数の車両が互いに干渉しないようにそれぞれの車両に走行指令を送信している。制御装置は、当該制御装置と何れかの車両との間で通信ができなかったことを検出した場合、即ち、報告を受けとらなくなった場合、当該車両に対して停止指令を送信する。また、それぞれの車両は、制御装置と自車両との間で通信ができなかったことを検出した場合、自車両を停止させる。制御装置と車両との間の通信が不調であっても、制御装置並びにそれぞれの車両が、車両を停止させるように制御するため、複数の車両が干渉することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信などのワイヤレス通信では、通信対象との間に電波の遮蔽物が存在する場合や、多くの端末との間での通信が行われて、いわゆるトラフィックが混雑するような場合などに、通信不良が発生することがある。当該通信不良は、車両が移動することによって回復することも多いが、上記の文献では、通信不良の発生が複数回の通信周期において連続した場合には車両を停止させている。このような車両の停止が多くなると、車両制御システムにおける車両の走行効率が低下し易い。通信不良の発生箇所や発生時刻等には再現性が高いものもある。そのような再現性の高い通信不良の原因を明らかにできれば、それを対策することによって車両制御システムにおける車両の走行効率を向上させることができるが上記の文献には通信環境自体の改善については言及されていない。
【0005】
上記背景に鑑みて、制御装置と複数の車両との間の通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査を適切に行うことができる車両制御システムの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた車両制御システムは、予め定められた走行経路に沿って走行する複数の車両と、複数の前記車両のそれぞれに対する走行指令を生成して前記車両の走行を制御する制御装置と、複数の前記車両と前記制御装置との間の通信を行う通信システムと、を備えた車両制御システムであって、前記通信システムは、前記車両との間で無線による通信を行う設備側通信部を備え、前記車両は、前記設備側通信部との無線による通信を行う車両側通信部を備え、前記制御装置は、前記設備側通信部と複数の前記車両のそれぞれの前記車両側通信部との通信状態の良否を判定する通信状態判定部と、記録部と、を備え、前記通信状態判定部が、前記設備側通信部と何れかの前記車両側通信部との間で前記通信状態が不良である通信不良と判定した場合には、前記制御装置は、当該通信不良が生じた前記車両を対象車両として、当該通信不良の発生時点及び解消時点の少なくとも一方を含む対象期間における少なくとも1つのデータ取得点での前記対象車両の状態を示す車両状態情報を取得して、前記記録部に前記車両状態情報を記録する。
【0007】
この構成によれば、複数の車両の何れかと通信システムとの通信不良が発生した場合に、通信不良が解消した後、制御装置が対象期間における車両状態情報を取得して記録部に記録する。これにより、通信不良が発生した場合に、その発生状況や原因等の分析を行うために用いられる車両状態情報を自動的に収集して記録することができる。従って、記録部に記録された車両状態情報に基づいて、制御装置と複数の車両との間の通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査を適切に行うことができる車両制御システムを実現することができる。
【0008】
車両制御システムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】車両制御システムの構成を示す模式的なブロック図
【
図3】設備制御装置のシステム構成の一例を模式的に示す概念図
【
図7】通信不良の発生及び解消に応じたデータ取得点と車両状態情報との関係の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、物品搬送設備に用いられる形態を例として、図面も参照して車両制御システムの実施形態を説明する。
図1は、車両制御システムが適用される物品搬送設備100の一例を示している。物品搬送設備100は、物品を搬送する物品搬送車としての車両30の走行経路10に沿って配置された一対の走行レール(不図示)を備えている。物品搬送設備100は、複数の車両30を備え、それぞれの車両30は、走行レールに案内されて規定の走行経路10に沿って走行する。車両30による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。物品搬送設備100には、半導体基板を収容する収容庫(不図示)や、半導体基板に回路等を形成するための種々の処理を施す物品処理部Pも備えられている。
図1には、走行経路10の内、1つの環状の主経路10aと複数の物品処理部Pを経由する環状の副経路10bと、これら主経路10aと副経路10bとを接続する接続経路10cとを備えている部分を例示している。また、本実施形態では、車両30は、矢印で示す方向に一方通行で走行経路10を走行する。
【0011】
図示は省略するが、例えば、車両30は、走行部と本体部とを備えた天井搬送車である。走行部には、電動式の駆動モータにて回転駆動される一対の走行輪が備えられている。走行レールは、天井に吊り下げ支持されており、走行レールの上面は走行輪が転動する走行面である。走行部は、走行輪が走行面を転動することで走行経路10に沿って走行する。本体部は、走行レールの下方に位置して走行部に吊り下げ支持されている。また、本体部には、本体部に対して昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する物品支持部、物品を把持する把持部等も備えられている。車両30は、把持部により物品を把持し、物品支持部を上昇させた状態で走行して物品を搬送する。
【0012】
尚、物品搬送車は天井搬送車に限らず、床面(地上)を走行する形態であってもよい。この際、車両30は予め定められた走行経路に沿って走行するものであれば、レール等の有軌道上を走行する有軌道車に限らず、例えば床面に敷設された誘導線を検出して当該誘導線に沿って走行するような無軌道車であってもよい。
【0013】
図示は省略するが、本実施形態の物品搬送設備100は、床面側に設置されて物品が載置される載置台を備えている。車両30は、物品保持部を下降させた状態で載置台との間で物品を移載する。載置台は、物品搬送設備100の複数箇所に配置されている。例えば、載置台は、
図1に示すそれぞれの物品処理部Pや、
図1における図外の物品保管庫に配置されている。
【0014】
また、走行部は、走行輪の駆動力源である駆動モータやその駆動回路を備え、本体部は、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等の各種アクチュエータ、及び、各種アクチュエータの駆動回路等も備えられている。駆動モータや各種アクチュエータ、及び駆動モータや各種アクチュエータを駆動する駆動回路等は、
図2に示す「駆動機構35」に相当する。
【0015】
走行レールには、不図示の給電線が走行レールに沿って配置されている。車両30は、給電線から非接触で駆動用電力を受電する受電装置(不図示)を備えており、例えば、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、車両30に駆動用電力が供給される。駆動モータや、各種アクチュエータ、駆動回路等への電力は、給電線から非接触で車両30の受電装置に供給される。
【0016】
図2に示すように、物品搬送設備100は、少なくともそれぞれの車両30を目的地に向けて走行させるための走行指令を生成してそれぞれの車両30の走行を制御する制御装置を備えている。この制御装置は、例えば、物品搬送設備100の全体を管理する設備制御装置5である。設備制御装置5は、例えばMCP(Material Control Processor)と称される。
【0017】
設備制御装置5の中核となる機能部は演算部2であり、演算部2は、複数の車両30のそれぞれに対する搬送指令を生成して車両30を制御する。それぞれの車両30は、設備制御装置5からの搬送指令に基づいて、物品を異なる載置台間で搬送する。搬送指令には、物品を受け取りに行く引き当て指令、受け取った物品を搬送先に搬送する搬送指令が含まれる。また、設備制御装置5は、搬送指令以外にも、搬送を伴わずに車両30を走行させる移動指令も車両30に送信する。移動指令には、例えば、他の車両30との干渉を回避するために車両30を移動させる指令や、後述するような通信を確保するために車両30を移動させる指令を含む。設備制御装置5は、搬送指令、移動指令の何れにおいても、車両30に行き先を指定する。即ち、搬送指令には、車両を行き先に向かって走行させる走行指令が含まれ、設備制御装置5は、複数の車両30のそれぞれに対する走行指令を生成して車両の走行を制御する。
【0018】
図2に示すように、それぞれの車両30には、車両側通信部36が備えられており、設備制御装置5とそれぞれの車両30とは、ワイヤレス通信(例えば電波を用いた無線通信)によって通信可能に構成されている。演算部2は、設備側通信部6と車両側通信部36とを介してそれぞれの車両30の車両制御装置31との間で相互に情報の授受を行う。詳細は後述するが、設備側通信部6には少なくとも1つのアクセスポイントAPが含まれる。また、ここでは演算部2が通信制御も行う形態を例示しているが設備制御装置5は演算部2とは別に通信制御部を備えていてもよい。
【0019】
即ち、車両制御システム50は、複数の車両30と設備制御装置5との間の通信を行う通信システム1を備え、通信システム1は、車両30との間で無線による通信を行う設備側通信部6を備えている。また、それぞれの車両30は、設備側通信部6との無線による通信を行う車両側通信部36を備えている。車両側通信部36は、通信システム1に含まれると考えてもよいし、通信システム1とは独立していると考えてもよい。前者の場合、通信システム1は、設備側通信部6及び車両側通信部36を備えるということができ、後者の場合、通信システム1は、少なくとも設備側通信部6を備えるということができる。
【0020】
何れにしても、設備側通信部6は、通信システム1において車両側通信部36を除く全てのものが含まれる。本実施形態では、
図2に示すように、設備側通信部6は、複数のアクセスポイントAPを備えている。複数のアクセスポイントAPは、ハブHUBやマスタアクセスポイントに有線又は無線で接続されている。この他、不図示のLANケーブル等も設備側通信部6に含まれる。尚、ここでは複数のアクセスポイントAPを備える形態を例示しているが、設備の広さ及びアクセスポイントAPの電波の強度等に応じて、アクセスポイントAPが1つのみで通信システム1が構成されている形態を妨げるものではない。
【0021】
また、それぞれの車両30には、自車位置検出部32が備えられており、車両30の位置(自車位置)の情報(自車位置情報)が自車位置検出部32によって取得される。この自車位置情報は、通信によって設備制御装置5に提供され、設備制御装置5は、物品搬送設備100における全ての車両30の位置を把握することができる。設備制御装置5は、それぞれの車両30の自車位置情報に基づき、移動距離や走行経路10の混み具合等も考慮して、物品を搬送する車両30を決定し、通信によって当該車両30に搬送指令を送る。それぞれの車両30は、車両制御装置31を備えており、搬送指令に基づいて自律制御により車両30を走行させ、指定された載置台の上方で停止して、物品保持部を昇降させることによって物品を移載する。
【0022】
例えば、走行レールには、走行経路10に沿って物品搬送設備100内における絶対位置である位置情報を示す複数の標章が備えられている。この標章は、一次元又は二次元バーコードにより、物品搬送設備100における走行経路10の絶対座標を示している。自車位置検出部32は、例えばこのようなバーコードを読み取るコードリーダを備えて構成されている。自車位置検出部32は、コードリーダによってこの標章を読み取ることによって、位置情報を取得する。さらに、車両30には、走行輪の回転量を検出するエンコーダが備えられていてもよい。位置情報を示す標章と標章との間においては、エンコーダによって検出された回転量に基づいて車両30の移動量を検出し、標章の配置間隔よりも高い分解能で走行経路10における車両30の位置(自車位置)を特定することができる。従って、このようなエンコーダが備えられている場合、このエンコーダも自車位置検出部32に含まれる。コードリーダやエンコーダに限らず、例えば走行レールにRFタグを設置し、車両30にRF受信機を設置して、近距離無線通信によるRFIDシステムを用いて自車位置が検出されてもよい。
【0023】
また、車両30には、車両30の走行速度を検出する速度センサ、加速度を検出する加速度センサ、車両30の振動を検出するセンサ、前方を走行する他の車両30との距離を検出するセンサ、温度センサ、障害物センサ、受電装置から車両30の各部に供給される電力の電圧や電流を検出するセンサ等、車両30の状態や挙動を検出する各種のセンサが備えられている。
図2には、これらを一般化してセンサ33として示している。
【0024】
上述したように、それぞれの車両30は、自車位置情報を通信によって設備制御装置5に提供する。また、それぞれの車両30が様々なセンサ33により検出した情報も、通信によって設備制御装置5に提供することが可能である。ここで、自車位置情報やセンサ33が検出した情報を「車両情報」と称する。尚、
図3に示す「車両状態情報」は、後述するように特定の期間(後述する「対象期間」)における「車両情報」である。
【0025】
それぞれの車両30は、定期的に設備制御装置5に対して車両情報を送信する。従って、設備制御装置5は定期的にそれぞれの車両30の車両情報を取得する。車両制御装置31は車両側通信部36を介して、プログラムに設定された周期ごとに車両情報を設備制御装置5に送信し、設備制御装置5は周期的に当該車両情報を取得する。換言すれば、設備制御装置5は、プログラム等により設定されたデータ取得点SP(ストローブポイント)において車両情報を取得する(
図7参照)。取得された車両情報は、設備制御装置5に少なくとも一時的に記憶される。車両情報は、後述する記録部4を用いて記憶されてもよいし、別の記憶媒体(ディスク装置やメモリ等)に記憶されてもよい。
【0026】
尚、データ取得点の間隔は厳密に等間隔でなくてもよい。例えば、設備制御装置5と、それぞれの車両制御装置31とは、時刻合わせされており、共通の時刻情報を有していると好適である。そして、車両30から送信される車両情報は、時刻情報を含んで設備制御装置5に提供されると好適である。データ取得点SPが等間隔でなくても、車両情報が共通の時刻を示す時刻情報を含むことにより、時間の経過に適切に対応した車両情報が記録部4に記録される。尚、自車位置情報と時刻情報とがリンクされていれば、自車位置情報と時刻情報とに基づいて車両30の走行速度を演算により検出することも可能である。
【0027】
無線通信などのワイヤレス通信では、通信対象との間に電波の遮蔽物が存在する場合や、多くの端末との間での通信が行われて、いわゆるトラフィックが混雑するような場合などに、通信不良が発生することがある。ここで、通信不良とは、通信の遮断に限らず、送信側からの送信に対して予め規定された時間を過ぎても受信側からの応答がない場合(いわゆるタイムアウト)や、タイムアウト後の再送信や再々送信に対しては応答があったものの1回目の送信では応答がなかった場合なども含む。尚、再送信の繰り返し回数についても予め設定されていると好適である。
【0028】
車両制御システム50では、このような通信不良が生じた場合に安全性を考慮して、車両制御装置31が自車両を停止させたり、設備制御装置5が通信不良を生じた車両30の近くを走行している他の車両30を停止させる走行指令を送信したりすることも考えられる。しかし、上記のような通信不良は、車両30が移動することによって回復することも多い。車両30の停止が多くなると、車両制御システム50における車両30の走行効率が低下し易く、本実施形態のように車両制御システム50が物品搬送設備100に利用されている場合には、物品搬送車の稼働率の低下や、物品搬送設備100の搬送効率の低下につながる。通信不良の発生箇所や発生時刻等には再現性が高いものもある。従って、そのような再現性の高い通信不良の原因を明らかにできれば、それを対策することによって車両制御システム50の通信システム1の通信品質を向上させることができる。本実施形態の車両制御システム50は、通信システム1の通信品質の向上に繋がるように、設備制御装置5と複数の車両30との間の通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査を適切に行うことができるように構成されている。
【0029】
具体的には、設備制御装置5は、設備側通信部6と複数の車両30のそれぞれの車両側通信部36との通信状態の良否を判定する通信状態判定部3を備えている。そして、通信状態判定部3が、設備側通信部6と何れかの車両側通信部36との間で通信状態が不良であると判定した場合には、設備制御装置5は、当該通信不良が生じた車両30を対象車両30Tに設定する。また、設備制御装置5は、当該通信不良の発生時点Q1及び解消時点Q2の少なくとも一方を含む対象期間を設定する(
図7参照)。
図7に示す例では、例えば、発生時点Q1に対応する時刻t2から、解消時点Q2に対応する時刻t3までを対象期間とすることができる。対象期間が発生時点Q1のみを含む形態、及び対象期間が解消時点Q2のみを含む形態も妨げるものではない。
【0030】
尚、発生時点Q1及び解消時点Q2は、通信不良が発生した瞬間、及び通信不良が解消した瞬間に限らず、上述したデータ取得点SPにおいて特定されると好適である。つまり、周期的にデータ取得点SPにおいて車両情報が取得できている状態から、データ取得点SPにおいて適切に車両情報が取得できなくなった場合、情報が取得できなかった当該データ取得点SPの時点が通信不良の発生時点Q1として特定される。同様に、データ取得点SPにおいて適切に車両情報が取得できない状態から、データ取得点SPにおいて適切に車両情報が取得できた場合、情報が取得できた当該データ取得点SPの時点が通信不良の解消時点Q2として特定される。
【0031】
当然ながら、設備制御装置5は、車両30に対して搬送指令(走行指令)を送信し、当該指令に対して車両30から応答がない場合に、応答がないと判定した時点(タイムアウト判定を行った時点)を通信不良の発生時点Q1としてもよい。また、設備制御装置5は、当該指令を送信した時点を、発生時点Q1としてもよい。
【0032】
上述したように、データ取得点SPにおいて発生時点Q1及び解消時点Q2を特定する場合、対象期間にはデータ取得点SPが少なくとも1つ含まれる。設備制御装置5は、対象期間における少なくとも1つのデータ取得点SPでの対象車両30Tの状態を示す車両情報を取得して、これを記録部4に車両状態情報として記録する。記録部4は、後述する分析プログラム55(
図4から
図6参照)を用いて通信不良について分析する際のデータベースであり、ハードディスク装置(HDD)、ソリッドステートディスク装置(SSD)、不揮発性メモリ等、不揮発性の記憶媒体を中核として構成されている。
【0033】
設備制御装置5は、
図3に示すように、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、グラフィックプロセッサ等のハードウェアを中核として構成されたパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータによって構成されている。
図3は、コンピュータシステム8を用いて構成された設備制御装置5の一例を示している。コンピュータシステム8の本体装置8aは、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、グラフィックプロセッサ、記憶媒体(HDD、SSD、メモリ)等のハードウェアを中核として構成されており、演算部2、記録部4に相当する。車両状態情報7を記録する記録部4は、本体装置8aにおいて不揮発性の記憶媒体(HDD、SSD等)により実現される。尚、本体装置8aの記憶媒体には、走行経路10を示すマップ情報Mなど、物品搬送設備100の構造を示す設備情報も記憶されている。キーボード8bや不図示のマウスは入力装置、ディスプレイ8cは表示部80を備えた出力装置である。
【0034】
上述したように、車両制御システム50は、それぞれの車両30が、自車の位置を検出する自車位置検出部32を備えている。車両側通信部36は、自車位置検出部32が検出した自車位置を示す自車位置情報を定期的に設備制御装置5へ送信する。この自車位置情報は「車両情報」であり、設備制御装置5は、この自車位置情報を一時的に記憶する。この一時的な記憶先は、本体装置8aのDRAMなど、揮発性の記憶媒体であってもよいし、SRAMなどの不揮発性の記憶媒体であってもよい。また、このように設備制御装置5の側で記憶された車両情報は、設備側ログ情報(MC LOG)ということができる。
【0035】
ここで、通信状態判定部3が、通信状態が不良であると判定した場合には、設備制御装置5は、例えば、発生時点Q1より前の時点から解消時点Q2より後の時点までを対象期間として設定する。
図7に示す例では、発生時点Q1に相当する時刻t2よりも前の時刻から、解消時点Q2に相当する時刻t3よりも後の時刻までを対象期間として設定する。例えば、設備制御装置5は、設備側通信部6が受信した対象期間内のデータ取得点SPにおける対象車両30Tの自車位置情報を、車両状態情報として取得すると好適である。自車位置情報は、対象車両30Tから直接取得した情報に限らず、設備側ログ情報として設備制御装置5の記憶部に一時的に記憶された自車位置情報であってもよい。
【0036】
通信不良が発生する前には設備制御装置5は車両情報を受信できているため、設備制御装置5は、例えば設備側ログ情報から通信不良が発生する前の対象車両30Tの自車位置情報を取得することができる。また、通信不良が解消すれば設備制御装置5は車両情報を受信できるため、設備制御装置5は、対象車両30Tから通信不良が解消した直後の対象車両30Tの自車位置情報を取得することができる。即ち、設備制御装置5は、通信不良の発生時点Q1の直前の自車位置情報と、解消時点Q2の直後の自車位置情報とを、車両状態情報として取得することができる。
【0037】
設備制御装置5は、それぞれの車両30に対して走行指令を含む搬送指令を与えているから、車両30のおおよその経路については既知ということができる。従って、通信不良が生じている期間が長く、自律走行する車両30が複数の経路を選択可能な場合でなければ、設備制御装置5は、ほぼ車両30が通過した経路を推定することができる。即ち、設備制御装置5は、通信不良の発生時点Q1から解消時点Q2までの間の自車位置情報が不明であっても、通信不良の発生時点Q1の直前及び解消時点Q2の直後の自車位置情報と、走行指令とに基づいて、当該通信不良の間の対象車両30Tの走行経路を比較的高い精度で推定することができる。
【0038】
また、設備制御装置5は、このように時系列に取得した、通信不良が発生する前の対象車両30Tの自車位置情報と、通信不良が解消した後の自車位置情報とに基づいて、通信不良が生じていた経路を特定することができる。例えば、
図4から
図6等に示すように、設備制御装置5は、分析プログラム55も備えており、記録部4に記録された車両状態情報に基づいて、当該分析プログラム55により、対象車両30Tの走行経路10上の走行位置に起因した通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査を行うことができる。設備制御装置5は、記録部4に記録された複数の対象車両30Tについての車両状態情報を、走行経路10を示すマップ情報Mと重ね合わせて表示部80に表示することができる。
【0039】
上述したように、コンピュータシステム8は表示部80を備えたディスプレイ8cを備えている。即ち、車両制御システム50は、情報を表示する表示部80を備えている。例えば、設備制御装置5は、
図4に示すように、記録部4に記録された複数の対象車両30Tについての車両状態情報を、走行経路10を示すマップ情報Mと重ね合わせて表示部80に表示する。
図4には、分析プログラム55を用いた第1の分析結果91を例示している。第1の分析結果91は、走行経路10において通信不良が生じた場所を丸印で示している。第1の分析結果91を表示部80に表示することで、作業者は通信不良の発生箇所を視認し易く、メンテナンスを行い易くなる。
【0040】
第1の分析結果91において丸印で示される情報は、記録部4に記録された複数の対象車両30Tについての車両状態情報に基づく情報、具体的には、走行経路10における通信不良が生じた位置を示す不良発生情報ということができる。つまり、設備制御装置5は、不良発生情報を、マップ情報Mと重ね合わせて表示部80に表示する。この際、設備制御装置5は、不良発生情報を、予め規定された設定期間内での各位置における通信不良の発生回数に応じて異なる態様で表示すると好適である。例えば、設備制御装置5は、最も発生頻度が高い位置を赤、次に発生頻度高い位置を黄、最も発生頻度が低い位置を緑で表示するなど、異なる色により表示することができる。ここでは、3段階の異なる色で表示する形態を例示したが、2段階でもよいし、4段階以上であってもよい。また、点滅や点灯、点灯の場合の輝度の違いによって、頻度の違いを表してもよい。また、丸印の大きさを異ならせる、丸印、三角印、四角印など、マークの形状を異ならせてもよい。
【0041】
また、車両状態情報7には、対象車両30Tが備えるセンサ33により検出された車両30の挙動を示す情報、車両側通信部36により検出された設備側通信部6(例えばアクセスポイントAP)からの電波の強度を示す情報、設備側通信部6(例えばアクセスポイントAP)が受信した対象車両30Tの車両側通信部36からの電波の強度を示す情報、及び、対象車両30Tの属性を示す属性情報、の少なくとも1つをさらに含むと好適である。ここで、挙動を示す情報には、走行速度、加速、減速、物品支持部の動作状態(昇降動作中か否か)等が含まれる。また、属性情報には、車両制御装置31や車両側通信部36ハードウェアのバージョン情報、製造時期の情報、ソフトウェアのバージョン情報、稼働時間、等が含まれる。
【0042】
このような車両状態情報7に基づき、設備制御装置5は、項目別に分類して通信不良の状態を分析することができる。
図5はそのような分析結果の一例である第2の分析結果92を例示している。例えば、設備制御装置5は、表示部80に、通信不良が生じた車両制御装置31や車両側通信部36のハードウェアやソフトウェアのバージョンと、通信不良の発生頻度との関係をグラフや表により表示する。作業者は、そのようなグラフや表に基づいて通信不良の原因を把握し易く、対策を講じやすい。
【0043】
上述したように、それぞれの車両30は、自車位置検出部32を備えている。ここで、自車位置検出部32が検出した自車位置情報は時刻情報とリンクされてそれぞれの車両30の記憶部(メモリ等)に記憶されていると好適である。記憶部は、不揮発の記憶媒体でも揮発性の記憶媒体でもよい。車両制御システム50が、通信不良の発生時点Q1より前の時点から通信不良の解消時点Q2より後の時点までを対象期間とする場合、設備制御装置5は、通信不良が解消した後に、対象車両30Tから対象期間における自車位置情報を取得することができる。即ち、設備側通信部6は、対象車両30Tとの間での通信状態の不良が解消した後、対象車両30Tと通信を行い、設備制御装置5は、通信不良の発生時点Q1から解消時点Q2までの間のデータ取得点SPにおける対象車両30Tの位置の情報を車両状態情報として取得することができる。
【0044】
これにより、設備制御装置5は、通信状態が不良であった期間、対象車両30Tの位置の情報を取得できなくても、通信不良が解消した後に、当該期間における対象車両30Tの位置の情報を補完することができる。走行指令は設備制御装置5が対象車両30Tに与えているため、設備制御装置5は、対象車両30Tのおおよその経路を推定することができる。しかし、このように対象車両30Tの位置情報が補完されることで、通信不良が生じていた期間に対象車両30Tが実際に走行していた経路を正確に特定することができる。このように経路が特定されることによって、例えば
図6の第3の分析結果93に例示するように、通信不良の発生時点Q1から解消時点Q2までの経路である通信不良経路10eをマップ情報Mと重ね合わせて表示部80に表示させることもできる。作業者は、そのような通信不良経路10eの表示に基づいて通信不良の原因を把握し易く、対策を講じやすい。
【0045】
尚、設備制御装置5は、通信不良の発生時点Q1から解消時点Q2までの間の、少なくとも1つのデータ取得点SPにおける対象車両30Tの位置の情報を車両状態情報として取得してもよいし、全てのデータ取得点SPにおける当該情報を車両状態情報として取得してもよい。例えば、
図7に示すように、通信不良の発生時点Q1から解消時点Q2までのデータ取得点SP、つまり、時刻t2から時刻t3までの全てのデータ取得点SPにおける車両状態情報を対象車両30Tの記憶部に記録された情報である車両側ログ情報(VC LOG)から取得してもよい。
【0046】
設備制御装置5が、通信不良の発生時点Q1よりも前の時点、例えば
図7に示すように、通信不良の発生時点Q1に対応する時刻t2よりも遡り期間Tだけ前の時刻t1から対象期間を設定する場合には、時刻t1から時刻t2までのデータ取得点SPにおける車両状態情報を、車両側ログ情報(VC LOG)から取得してもよい。時刻t1から時刻t2までは通信不良の状態ではないため、データ取得点SPにおいて取得された車両情報が、設備制御装置5の記憶部に記憶されている。つまり、時刻t1から時刻t2までの対象車両30Tの車両状態情報は、車両情報として既に取得されて設備側ログ情報(MC LOG)として設備制御装置5に存在している。しかし、改めてこの期間の情報も、車両側ログ情報(VC LOG)から取得することで、通信不良が生じる前に正確な情報が送信されていたか否かも含めて検証することができる。
図7には、通信不良の発生時点Q1よりも前において情報を重複させる形態を例示しているが、通信不良の解消時点Q2よりも後においても同様に情報を重複させてもよい。
【0047】
尚、上記においては、設備制御装置5が、対象期間における車両状態情報として位置の情報を取得する形態を代表例として説明したが、設備制御装置5は、車両状態情報として位置の情報に限らず、通信状態が良好な場合に、設備制御装置5に送信される車両情報の全てを含んだ車両状態情報を取得してもよい。
【0048】
尚、上述したように、走行指令は設備制御装置5が対象車両30Tに与えているため、設備制御装置5は、通信不良が生じている期間における対象車両30Tの経路を推定することができる。即ち、設備制御装置5は、通信不良の発生時点Q1より前のデータ取得点SPにおける対象車両30Tの自車位置情報と、解消時点Q2より後のデータ取得点SPにおける対象車両30Tの自車位置情報とに基づいて、発生時点Q1から解消時点Q2までの間のデータ取得点SPにおける対象車両30Tの位置を推定し、車両状態情報として取得すると好適である。この場合には、通信不良が解消した後に過去の情報を対象車両30Tから設備制御装置5に送信する必要がない。例えば、通信不良が解消していても通信の安定度が低いような場合には、過去の情報を送信することによって通信のトラフィックを混雑させることは好ましくなく、対象期間における対象車両30Tの位置が推定されると好適である。
【0049】
また、車両30の側の一時的な記憶部が十分な記憶容量を備えている場合、例えば、設備の1日の稼働時間における情報を記録しておくような容量を備えている場合には、物品搬送設備100における対象車両30Tの稼働(走行)が終了した後に、対象車両30Tの記憶部から設備制御装置5に対象期間における情報が提供されると好適である。
【0050】
ところで、上述したように設備制御装置5の記録部4に記録される車両状態情報には様々なものがある。例えば、情報には、通信不良が発生した発生時点Q1の日時の情報、通信不良の発生場所の情報(自車位置情報に基づく情報)、通信不良が発生した車両30である対象車両30Tの情報(車両30を特定する号機情報)、対象車両30Tの車両側通信部36のハードウェア情報(型式、バージョン情報など)、当該車両側通信部36のソフトウェア(ファームウェア)のバージョン情報、通信不良の発生時点Q1から解消時点Q2までの経過時間、対象車両30Tが認識しているアクセスポイントAPの数、電波の強度、等が含まれる。
【0051】
記録部4には、様々な種類の情報がログとして記録される。そして、分析プログラム55は、このログに基づいて項目ごとの集計や解析を行うことができる。また、これらの情報に、通信不良からの回復方法(自然復旧、自動復旧(リトライやソフトウェアリセット等)、作業者による手動復旧(ハードウェアリセット等)等)や、作業者が行った対処の内容をリンクさせることにより、通信不良の発生の影響度を分析することもできる。
【0052】
また、単純に、ログをテキストデータの状態で、表示部80に表示させてもよい。この際、項目別にテキストの表示色を異ならせたり、背景色を付けてハイライト表示させたりするなど、作業者の視認性を高める表示形態で表示させると好適である。
【0053】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、上記において説明した車両制御システムの実施形態について簡単にまとめる。
【0054】
本実施形態の車両制御システムは、予め定められた走行経路に沿って走行する複数の車両と、複数の前記車両のそれぞれに対する走行指令を生成して前記車両の走行を制御する制御装置と、複数の前記車両と前記制御装置との間の通信を行う通信システムと、備えた車両制御システムであって、前記通信システムは、前記車両との間で無線による通信を行う設備側通信部を備え、前記車両は、前記設備側通信部との無線による通信を行う車両側通信部を備え、前記制御装置は、前記設備側通信部と複数の前記車両のそれぞれの前記車両側通信部との通信状態の良否を判定する通信状態判定部と、記録部と、を備え、前記通信状態判定部が、前記設備側通信部と何れかの前記車両側通信部との間で前記通信状態が不良である通信不良と判定した場合には、前記制御装置は、当該通信不良が生じた前記車両を対象車両として、当該通信不良の発生時点及び解消時点の少なくとも一方を含む対象期間における少なくとも1つのデータ取得点での前記対象車両の状態を示す車両状態情報を取得して、前記記録部に前記車両状態情報を記録する。
【0055】
この構成によれば、複数の車両の何れかと通信システムとの通信不良が発生した場合に、通信不良が解消した後、制御装置が対象期間における車両状態情報を取得して記録部に記録する。これにより、通信不良が発生した場合に、その発生状況や原因等の分析を行うために用いられる車両状態情報を自動的に収集して記録することができる。従って、記録部に記録された車両状態情報に基づいて、制御装置と複数の車両との間の通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査を適切に行うことができる車両制御システムを実現することができる。
【0056】
また、車両制御システムは、前記車両が、自車の位置を検出する自車位置検出部を備え、前記車両側通信部は、前記自車位置検出部が検出した自車位置を示す自車位置情報を定期的に前記制御装置へ送信し、前記通信状態判定部が、前記通信状態が不良であると判定した場合には、前記制御装置は、前記発生時点より前の時点から前記解消時点より後の時点までを前記対象期間として、前記設備側通信部が受信した前記対象期間内の前記データ取得点における前記対象車両の前記自車位置情報を、前記車両状態情報として取得すると好適である。
【0057】
本構成によれば、制御装置は、通信不良を生じている期間を挟んで、通信不良が発生する前のデータ取得点から通信不良が解消した後のデータ取得点までの車両状態情報を時系列に取得して記録部に記録することができる。従って、対象車両の走行位置に起因した通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査が行い易くなる。
【0058】
また、車両制御システムは、前記発生時点より前の時点から前記解消時点より後の時点までを前記対象期間とする場合、前記設備側通信部が、前記対象車両との間での前記通信状態の不良が解消した後、前記対象車両と通信を行い、前記制御装置が、前記発生時点から前記解消時点までの間の前記データ取得点における前記対象車両の位置の情報を、前記対象車両から前記車両状態情報として取得すると好適である。
【0059】
本構成によれば、制御装置は、さらに、通信不良が発生中の少なくとも1つのデータ取得点における対象車両の位置の情報を取得し、記録部に記録することができる。これにより、通信不良が生じていた期間における対象車両の自車位置情報が適切に補完され、記録部に記録される。従って、対象車両の走行位置に起因した通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査がさらに行い易くなる。
【0060】
また、車両制御システムは、前記発生時点より前の時点から前記解消時点より後の時点までを前記対象期間とする場合、前記制御装置が、前記発生時点より前の前記データ取得点における前記対象車両の前記自車位置情報と、前記解消時点より後の前記データ取得点における前記対象車両の前記自車位置情報とに基づいて、前記発生時点から前記解消時点までの間の前記データ取得点における前記対象車両の位置を推定し、前記車両状態情報として取得すると好適である。
【0061】
例えば、通信不良の発生時点よりも前の少なくとも1つのデータ取得点における車両状態情報に含まれる対象車両の位置と、通信不良の解消時点よりも後の少なくとも1つのデータ取得点における車両状態情報に含まれる対象車両の位置とに基づいて、対象期間における車両の走行速度が推定できる。従って、通信不良が生じている期間のデータ取得点における対象車両の位置も推定することができ、この推定された位置の情報により、通信不良が生じていた期間における対象車両の自車位置情報が適切に補完され、記録部に記録される。従って、対象車両の走行位置に起因した通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査がさらに行い易くなる。
【0062】
また、車両制御システムは、前記車両状態情報が、前記対象車両が備えるセンサにより検出された前記車両の挙動を示す情報、前記車両側通信部により検出された前記設備側通信部からの電波の強度を示す情報、前記設備側通信部が受信した前記対象車両の前記車両側通信部からの電波の強度を示す情報、及び、前記対象車両の属性を示す属性情報、の少なくとも1つをさらに含むと好適である。
【0063】
本構成によれば、対象期間における対象車両の自車位置情報に加えて、種々の情報を取得して記録することができる。従って、対象車両に生じた通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査がさらに行い易くなる。
【0064】
また、車両制御システムは、情報を表示する表示部を備え、前記制御装置は、前記記録部に記録された複数の前記対象車両についての前記車両状態情報を、前記走行経路を示すマップ情報と重ね合わせて前記表示部に表示すると好適である。
【0065】
本構成によれば、同一の車両が異なる場所において通信不良を生じた場合も含めて、複数の対象車両が設定された場合に、これら複数の対象車両についての車両状態情報を、走行経路を示すマップ情報と重ね合わせて表示部に表示することができる。特に車両状態情報に含まれる自車位置情報を利用すれば、対象車両の走行位置に起因した通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査がさらに行い易くなる。
【0066】
ここで、車両制御システムは、前記制御装置が、前記記録部に記録された複数の前記対象車両についての前記車両状態情報に基づいて、前記走行経路における前記通信不良が生じた位置を示す不良発生情報を、前記マップ情報と重ね合わせて前記表示部に表示し、前記不良発生情報は、予め規定された設定期間内での各位置における当該通信不良の発生回数に応じて異なる態様で表示されると好適である。
【0067】
本構成によれば、走行経路の何れの位置で通信不良が生じやすいかをわかりやすく表示することができる。従って、走行経路上の位置に起因した通信不良の発生状況や発生原因等の分析や調査がさらに行い易くなる。
【符号の説明】
【0068】
1 :通信システム
3 :通信状態判定部
4 :記録部
5 :設備制御装置(制御装置)
6 :設備側通信部
7 :車両状態情報
10 :走行経路
30 :車両
30T :対象車両
32 :自車位置検出部
33 :センサ
36 :車両側通信部
50 :車両制御システム
80 :表示部
M :マップ情報
Q1 :発生時点
Q2 :解消時点
SP :データ取得点