(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159215
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ソレノイドおよびその組立方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/06 20060101AFI20241031BHJP
H01F 7/127 20060101ALI20241031BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20241031BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01F7/06 E
H01F7/16 Q
H01F7/16 E
H01F7/16 N
F16K31/06 305A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075062
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】古川 健太
(72)【発明者】
【氏名】西村 直己
(72)【発明者】
【氏名】川本 慎治
(72)【発明者】
【氏名】星 政輝
(72)【発明者】
【氏名】上村 純
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直樹
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA05
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC09
3H106DD04
3H106EE16
3H106GA01
3H106GC23
3H106JJ02
3H106KK03
3H106KK17
5E048AA08
5E048AB01
5E048AD02
5E048CA07
(57)【要約】
【課題】可動鉄心を高い推力で駆動させることができるソレノイドおよびその組立方法を提供する。
【解決手段】磁気吸引力を発生させるコイル39と、磁気吸引力によって可動する可動鉄心4と、コイル39及び可動鉄心4とを内側に有するケース30と、ケース30の内側に設けられ磁路を形成する磁性部材33と、を備えたソレノイド1であって、ケース30と、コイル39と、ケース30内に配置される磁性部材33と、固定鉄心32と、可動鉄心4と、を備えたソレノイド1であって、ケース30は、磁性部材33に向けて内径側に突出する凸部30dを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を発生させるコイルと、磁気吸引力によって可動する可動鉄心と、前記コイル及び可動鉄心を内側に有するケースと、前記ケースの内側に設けられ磁路を形成する磁性部材と、を備えたソレノイドであって、
前記ケースは、前記磁性部材に向けて内側に突出する凸部を有しているソレノイド。
【請求項2】
前記ケースは、前記凸部が設けられる部位において内径方向に向けて外周が凹み内周が突出している請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記ケースは、前記凸部が設けられる部位が他の部位よりも肉厚である請求項1に記載のソレノイド。
【請求項4】
前記凸部は、環状をなしている請求項1に記載のソレノイド。
【請求項5】
前記凸部は、前記ケースの周方向に複数配置されている請求項1に記載のソレノイド。
【請求項6】
前記凸部は、前記磁性部材と直接接触している請求項1に記載のソレノイド。
【請求項7】
前記固定鉄心と前記磁性部材は軸方向に接触している請求項1に記載のソレノイド。
【請求項8】
前記ケースは、前記磁性部材に向けて他の部位よりも小径となる小径部を有しており、前記凸部は前記小径部により形成されている請求項1に記載のソレノイド。
【請求項9】
前記小径部は前記ケースの軸方向における一の端部と連続する請求項8に記載のソレノイド。
【請求項10】
磁気吸引力を発生させるコイルと、磁気吸引力によって可動する可動鉄心と、前記コイル及び可動鉄心とを内側に有するケースと、前記ケースの内側に設けられ磁路を形成する磁性部材と、を備えたソレノイドの組立方法であって、
前記磁性部材を前記ケースに挿入した後、該ケースを外周から前記磁性部材に向けて変形させ、前記磁性部材と前記ケースを近接させるソレノイドの組立方法。
【請求項11】
磁気吸引力を発生させるコイルと、磁気吸引力によって可動する可動鉄心と、前記コイル及び可動鉄心とを内側に有するケースと、前記ケースの内側に設けられ磁路を形成する磁性部材と、を備えたソレノイドの組立方法であって、
前記ケースを変形させて内径側に突出する凸部を形成した後、前記磁性部材を前記ケースに挿入し、前記凸部と前記磁性部材とを近接させるソレノイドの組立方法。
【請求項12】
前記磁性部材の貫通孔に、前記貫通孔よりも小径の前記固定鉄心の小径部を挿入する請求項8または9に記載のソレノイドの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドおよびその組立方法、例えばコイルに通電したときの磁気作用によって可動鉄心を駆動させるソレノイドおよびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において弁や機械などの各種装置を作動させる手段として、ソレノイドが利用されている。ソレノイドは、コイルに通電されることで往復動可能に収容された可動鉄心を電磁的に移動させることにより、各種装置を作動させるようになっている。
【0003】
一般的にソレノイドは、磁性体から構成されるソレノイドケースと、ソレノイドケースの内方に収容されたコイルと、固定鉄心と、可動鉄心と、を具備し、コイルへの通電により固定鉄心と可動鉄心との間に磁力を発生させ、可動鉄心を固定鉄心側に移動させるものであり、可動鉄心には各種装置に当接または接続されるロッドが軸方向一端側に配置されている。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるソレノイドは、コイルと環状のロアプレートが一体的にモールド成形されている。ロアプレートは、モールド成形体の前端側で、その中央孔に固定鉄心の先端が挿入されるとともに、ソレノイドケースに挿入されており、ソレノイドケースと固定鉄心との間の磁路を形成している。また、固定鉄心の後端側には、後端にフランジ部を有するサイドリングが配置されている。フランジ部は、モールド成形体の後端側でソレノイドケースに挿入されており、ソレノイドケースと固定鉄心との間の磁路を形成している。通電時には、ソレノイドケース、サイドリング、固定鉄心、ロアプレート、ソレノイドケースに磁束が流れ、プランジャを先端側に駆動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5347165号(第7頁、第4A図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなソレノイドにあっては、ケースがモールド成形体よりも若干大径に形成され、モールド成形体とケースとの間に隙間が形成されるため、モールド成形体をケースの後端から軸方向に簡便に挿入組立できるようになっているものの、モールド成形体におけるロアプレートとケースとが離間することから、ロアプレートとケースとの間を通過する磁束が弱まり、可動鉄心の推力が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、可動鉄心を高い推力で駆動させることができるソレノイドおよびその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のソレノイドは、
磁束を発生させるコイルと、磁気吸引力によって可動する可動鉄心と、前記コイル及び可動鉄心とを内側に有するケースと、前記ケースの内側に設けられ磁路を形成する磁性部材と、を備えたソレノイドであって、
前記ケースは、前記磁性部材に向けて内径側に突出する凸部を有している。
これによれば、ケースと磁性部材との径方向の距離を近付けることができるため、磁束を安定して通過させ可動鉄心を高い推力で駆動させることができる。
【0009】
前記ケースは、前記凸部が設けられる部位において内径方向に向けて外周が凹み内周が突出していてもよい。
これによれば、ケースと磁性部材との径方向の距離を確実に近付けることができる。
【0010】
前記ケースは、前記凸部が設けられる部位が他の部位よりも肉厚であってもよい。
これによれば、磁束が曲がる箇所においてケースが他の箇所よりも肉厚となっているから、磁性部材とケースとの間に磁束を通しやすい。
【0011】
前記凸部は、環状をなしていてもよい。
これによれば、ケースと磁性部材との間において周方向でバランスよく磁束を通すことができる。
【0012】
前記凸部は、前記ケースの周方向に複数配置されていてもよい。
これによれば、ケースと磁性部材との間において周方向でバランスよく磁束を通すことができる。
【0013】
前記凸部は、前記磁性部材と直接接触していてもよい。
これによれば、ケースと磁性部材との間を通過する磁束の低下を効果的に防止できる。
【0014】
前記固定鉄心と前記磁性部材は軸方向に接触していてもよい。
これによれば、固定鉄心と磁性部材は軸方向に接触しているため、固定鉄心と磁性部材との間に磁束が確実に通過する。
【0015】
前記ケースは、前記磁性部材に向けて他の部位よりも小径となる小径部を有しており、前記凸部は前記小径部により形成されていてもよい。
これによれば、小径部によりケースと磁性部材との径方向の距離を近付けることができる。
【0016】
前記凸部は前記ケースの軸方向における一の端部と連続していてもよい。
これによれば、軸方向に広い範囲でケースと磁性部材との間に磁束を通すことができる。
【0017】
本発明のソレノイドの組立方法は、
磁気吸引力を発生させるコイルと、磁気吸引力によって可動する可動鉄心と、前記コイル及び可動鉄心とを内側に有するケースと、前記ケースの内側に設けられ磁路を形成する磁性部材と、を備えたソレノイドの組立方法であって、
前記磁性部材を前記ケースに挿入した後、該ケースを外周から前記磁性部材に向けて変形させ、前記磁性部材と前記ケースを近接させる。
これによれば、ケースに磁性部材を挿入した後、外周からケースを変形させるため、ソレノイドの組立が簡便であるとともに、ケースと磁性部材との径方向の距離を近付けることができるため、磁束を安定して通過させ可動鉄心を高い推力で駆動させることができる。
【0018】
本発明のソレノイドの組立方法は、
磁気吸引力を発生させるコイルと、磁気吸引力によって可動する可動鉄心と、前記コイル及び可動鉄心とを内側に有するケースと、前記ケースの内側に設けられ磁路を形成する磁性部材と、を備えたソレノイドの組立方法であって、
前記ケースを変形させて内径側に突出する凸部を形成した後、前記磁性部材を前記ケースに挿入し、前記凸部と前記磁性部材とを近接させる。
これによれば、ケースと磁性部材との径方向の距離を近付けることができるため、磁束を安定して通過させ可動鉄心を高い推力で駆動させることができる。
【0019】
前記磁性部材の貫通孔に、前記貫通孔よりも小径の前記固定鉄心の小径部を挿入してもよい。
これによれば、磁性部材と固定鉄心とに相対的な傾きが生じても貫通孔と小径部とが接触することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1におけるソレノイドバルブの一部断面図である。
【
図3】(a)はソレノイドケースにスリーブを組み付けた状態を示す概略図、(b)はソレノイドケースにソレノイド成形体を挿入した状態を示す概略図である。
【
図4】(a)はソレノイド成形体に固定鉄心を挿入した状態を示す概略図、(b)はソレノイドを組み上げた後カシメ固定部を形成した状態を示す概略図である。
【
図5】(a)は本発明の実施例2におけるソレノイドケースを示す概略図、(b)は(a)のソレノイドケースにソレノイド成形体を挿入した状態を示す概略図である。
【
図6】(a)は本発明の実施例3におけるソレノイドケースに凸部を形成した状態を示す概略図、(b)は(a)のソレノイドケースにソレノイド成形体を挿入した状態を示す概略図である。
【
図7】本発明の実施例4におけるソレノイドの断面を軸方向から見た図である。
【
図8】本発明の実施例5におけるソレノイドの一部断面図である。
【
図9】本発明の実施例6におけるソレノイドの一部断面図である。
【
図10】本発明の実施例7におけるソレノイドの一部断面図である。
【
図11】本発明の実施例8におけるソレノイドの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るソレノイドを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0022】
実施例1に係るソレノイドおよびその組立方法につき、
図1から
図4を参照して説明する。以下、
図1の紙面左側をソレノイドの軸方向一端側、紙面右側をソレノイドの軸方向他端側として説明する。尚、実際には、ソレノイド成形体とソレノイドケースとの間、磁性部材と固定鉄心との間には隙間が形成されるが小さいため、
図1では、隙間の図示を省略している。
【0023】
本実施例1のソレノイド1は、ソレノイドバルブVに用いられるソレノイドとして説明する。尚、ソレノイド1は、ソレノイドバルブVに限られず、任意の負荷を作動させるソレノイドアクチュエータに用いられてもよい。
【0024】
図1に示されるように、ソレノイドバルブVは、スプールタイプのソレノイドバルブであって、例えば車両の自動変速機等の油圧により制御される装置に用いられるものである。尚、ソレノイドバルブVは、図示しないバルブハウジング等の被取付部材に水平方向に取付けられ、バルブハウジング内の作動油に浸漬される、いわゆる油浸形のソレノイドバルブとして使用される。
【0025】
ソレノイドバルブVは、ソレノイド1と流体の流量を調整するバルブ2とが一体に取付けられて構成されている。尚、
図1は、コイル39に通電されていないソレノイドバルブVのオフ状態を示すものである。
【0026】
バルブ2は、外周に図示しないバルブハウジング内に設けられた流路と接続される図示しない入力ポートや出力ポート等の開口が設けられたスリーブ21と、スリーブ21の貫通孔21aに液密に収容され図示しない複数のランドを有するスプール22と、スプール22を軸方向一端側に付勢する図示しないコイル状のスプリングと、スプリングを保持するリテーナ23と、から構成されている。この構成はスプールバルブとして良く知られた構成であるため詳細な説明は省略する。尚、スリーブ21、スプール22、リテーナ23は、アルミ、鉄、ステンレス、樹脂等の材料により形成されている。尚、スリーブ21、スプール22については非磁性材によって形成される。
【0027】
ソレノイド1は、ソレノイドケース30と、ソレノイド成形体31と、固定鉄心としての固定鉄心32と、可動鉄心としてのプランジャ4と、から主に構成されている。
【0028】
ソレノイドケース30は、鉄等の磁性を有する金属材料から形成されている。ソレノイドケース30は、円筒部30aと、底部30bと、から主に構成される。円筒部30aは、ソレノイド成形体31の外周を覆っている。底部30bは、円筒部30aの軸方向他端側に設けられ、その中央に貫通孔30cが形成されている。この底部30bにおける貫通孔30cの周縁部は、スリーブ21の軸方向一端側に設けられた環状凹溝21bに嵌合している。
【0029】
ソレノイド成形体31は、コイル39と磁性部材33とを樹脂35によりモールド成形することにより筒状に形成されている。ソレノイド成形体31のコイル39には、ソレノイドケース30の径方向下方側に設けられる開口部30jを通じて外部から電力が供給されるようになっている。
【0030】
磁性部材33は環状かつ平板状の磁性材であり例えば鉄等の磁性を有する金属材料から形成されており、固定鉄心32とソレノイドケース30との間の磁路を形成するようになっている。
【0031】
磁性部材33は、コイル39の軸方向他端側に配置されており、その外周面33aは外径方向に露出している。すなわち、磁性部材33の外周面33aは、樹脂35により被覆されていない。尚、磁性部材33には図示しない切り欠きや貫通孔が設けられており、磁性部材33の軸方向両端面に樹脂35が配置されている。また、磁性部材33の軸方向他端面は、スリーブ21の軸方向一端面に当接している。そのため樹脂35と底部30bは離間している。また、軸方向において磁性部材33と底部30bとの間は樹脂35によって磁路を形成してない。
【0032】
尚、後述する凸部30d形成前のソレノイド成形体31における、磁性部材33の外周面33aと、コイル39の外径側に位置する樹脂35の外周面とは、同径に形成されており、軸方向に略面一となっている。
【0033】
また、磁性部材33の内周面33bは、コイル39の内径側に位置する樹脂35の内周面よりも小径に形成されており、磁性部材33の内周面33bと樹脂35の内周面との間には段差が形成されている。
【0034】
固定鉄心32は、鉄等の磁性を有する金属材料から形成されており、軸方向一端側の大径部32aと、軸方向他端側の小径部32bと、を備えている。固定鉄心32の中央部には軸方向に延びる貫通孔32cが形成されている。また、大径部32aの軸方向一端には、軸方向他端側に凹む凹部32dが形成されており、貫通孔32cに連通している。
【0035】
小径部32bは、磁性部材33に挿入されている。また、大径部32aの軸方向他端面32sは磁性部材33の軸方向一端面に当接している。すなわち、磁性部材33は、固定鉄心32とスリーブ21とで軸方向に挟持されている。
【0036】
凹部32dの底部には、樹脂やゴムなどの非磁性体から構成されるリング状のダンパ部材36が固着されている。また、固定鉄心32の他方側端部にはスプール22の一方側端部が接触しており、スプール22は軸方向一端側への移動が規制されている。
【0037】
固定鉄心32の軸方向一端側には、非磁性体からなる第1筒状体7が配置されている。また、第1筒状体7の軸方向一端側には、磁性体からなる第2筒状体8が配置されている。
【0038】
第2筒状体8は、筒状部8aの軸方向一端側から外径側に張り出すフランジ部8bを有している。筒状部8a、プランジャ4、固定鉄心32はこれらの順で磁路を形成している。フランジ部8bは、コイル39の軸方向一端側に配置されており、筒状部8aとソレノイドケース30との間の磁路を形成するようになっている。
【0039】
また、第1筒状体7および第2筒状体8の内側には、摺動性が良好な非磁性体からなるブッシュ9が第1筒状体7および第2筒状体8に亘って配置されている。
【0040】
プランジャ4は、鉄等の磁性を有する金属材料により円筒状に形成されており、ブッシュ9の内周面に摺接可能に配置されている。
【0041】
プランジャ4の中心には、軸方向に貫通する貫通孔4aが形成されている。この貫通孔4aには、軸方向他端側に延びるロッド5が嵌合されている。ロッド5の軸方向他端面は、スプール22の軸方向一端面に当接している。
【0042】
プランジャ4の軸方向一方側には、一方の空間としての空間S1が形成され、プランジャ4の軸方向他方側には、他方の空間としての空間S2が形成されている。ロッド5には、空間S1と空間S2とを連通する図示しない連通路が形成されている。
【0043】
第2筒状体8およびプランジャ4の軸方向一方側には、蓋部材10が配置されている。蓋部材10は、ソレノイドケース30の軸方向一端側にカシメ固定されている。これにより、ソレノイドケース30の軸方向一端側の開口が閉塞されている。
【0044】
図1および
図2に示されるように、ソレノイドケース30と磁性部材33は、ソレノイドケース30の外周からカシメ固定されている。すなわち、ソレノイドケース30は、磁性部材33と径方向に重畳する位置において、内径側に突出する凸部30dを備えている。凸部30dはソレノイドケース30の小径部ともいえる。
【0045】
ソレノイドケース30は、凸部30dが設けられる部位において、内径方向に向けて外周が凹み、内周が突出している。この凸部30dは、環状に形成されている。すなわち、凸部30dは、磁性部材33の外周面33aの全周に亘って食い込んでいる。
【0046】
次いで、ソレノイドバルブVの動作について説明する。
図1に示されるソレノイドバルブVのオフ状態において、プランジャ4は軸方向一端側に移動している。
【0047】
コイル39に通電、すなわちソレノイドバルブVをオン状態とすることによりソレノイドケース30、第2筒状体8、固定鉄心32、磁性部材33、プランジャ4により磁気回路が形成される。これにより、固定鉄心32とプランジャ4との間に磁力が発生し、プランジャ4が軸方向他端側へ移動する(図示略)。
【0048】
次に、ソレノイドバルブVの組立手順について説明する。
図3(a)に示されるように、先ず、ソレノイドケース30の軸方向他端にスリーブ21およびスプール22を取付ける。
【0049】
次いで、
図3(b)に示されるように、ソレノイド成形体31をソレノイドケース30の軸方向一端の開口から挿入する。ソレノイドケース30の内径は、ソレノイド成形体31の外径よりも大径に形成されている。具体的には、ソレノイドケース30の円筒部30aとソレノイド成形体31との間には微小な径方向隙間L1が形成されており、径方向隙間L1によりソレノイド成形体31をソレノイドケース30に簡便に挿入できるようになっている。
【0050】
次いで、
図4(a)に示されるように、固定鉄心32をソレノイド成形体31の軸方向一端の開口から挿入する。固定鉄心32の小径部32bは、磁性部材33およびスリーブ21の内側に挿入される。磁性部材33と、固定鉄心32の小径部32bとの間には径方向隙間L2が形成されており、径方向隙間L2により固定鉄心32の小径部32bを磁性部材33に簡便に挿入できるようになっている。
【0051】
この径方向隙間L2は、前述の径方向隙間L1よりも大きく形成されている(L1<L2)。これにより、固定鉄心32の挿入時に固定鉄心32が傾いてもソレノイド成形体31が先にソレノイドケース30の内周面に接触するため、磁性部材33に接触することを防止できる。
【0052】
その後、
図4(b)に示されるように、第1筒状体7、第2筒状体8、ブッシュ9、ロッド5およびプランジャ4をソレノイド成形体31の軸方向一端の開口から挿入する。次いで、蓋部材10をソレノイドケース30の軸方向一端側にカシメ固定する。これにより、ソレノイド成形体31、固定鉄心32、第1筒状体7、第2筒状体8がスリーブ21の軸方向一端面に押し付けられ、軸方向に位置決めされる。
【0053】
次に、ソレノイドケース30における磁性部材33と径方向に重畳する位置を外周から内径側に変形させ、凸部30dを形成する。具体的には、本実施例では、ソレノイドケース30の外周から図示しないローラを磁性部材33に向けて押圧し、ソレノイドケース30と前記ローラを軸周りに相対回転させることにより、全周に亘って凸部30dを形成する。
【0054】
以上説明したように、凸部30dを形成することにより、ソレノイドケース30と磁性部材33との径方向の距離を近付けることができるため、磁束を安定して通過させプランジャ4を高い推力で駆動させることができる。
【0055】
また、凸部30dは、内径方向に向けて外周が凹み内周が突出する所謂カシメ凸部となっているため、ソレノイドケース30と磁性部材33との径方向の距離を簡便にかつ確実に近付けることができる。
【0056】
また、凸部30dは、環状に形成されているため、ソレノイドケース30と磁性部材33との間において周方向で偏りなくバランスよく磁束を通すことができる。これにより、プランジャ4の駆動が安定する。
【0057】
また、磁性部材33の外周面33aは外径方向に露出しており、凸部30dは磁性部材33の外周面33aに直接接触している。これにより、ソレノイドケース30と磁性部材33との間を通過する磁束の低下を効果的に防止できる。
【0058】
また、固定鉄心32と磁性部材33は軸方向に接触しているため、固定鉄心32と磁性部材33との間に磁束が確実に通過する。
【0059】
また、ソレノイドケース30とソレノイド成形体31との径方向隙間L1により、ソレノイドケース30にソレノイド成形体31を挿入しやすい。さらにソレノイドケース30にソレノイド成形体31を挿入した後、ソレノイドケース30の外周から凸部30dを形成するため、ソレノイド1の組立が簡便であり、かつソレノイドケース30と磁性部材33との径方向の距離を近付けることができる。
【0060】
また、固定鉄心32の小径部32bは、磁性部材33に挿入されており、磁性部材33と固定鉄心32の小径部32bとの径方向隙間L2は、ソレノイドケース30と磁性部材33との径方向隙間L1よりも大きくなっている。これによれば、固定鉄心32の挿入時に固定鉄心32が傾いても磁性部材33に接触することを防止できるため、ソレノイドケース30と磁性部材33との間において周方向で偏りなくバランスよく磁束を通すことができる。
【0061】
また、固定鉄心32が磁性部材33に接触しないため、固定鉄心32の大径部32aの軸方向他端面32sと磁性部材33の軸方向一端面とを確実に接触させることができる。
また、磁性部材133が凸部130dに接触すると、凸部130dが外径方向に若干弾性変形し、凸部130dと磁性部材133とが径方向に重畳し、凸部130dと磁性部材133の外周面133aとが接触する。
このように、ソレノイドケース130と磁性部材133との径方向の距離を近付けることができるため、磁束を安定して通過させプランジャ4を高い推力で駆動させることができる。
その後、前述のように、第1筒状体7、第2筒状体8、ブッシュ9、プランジャ4をソレノイド成形体131の軸方向一端の開口から挿入し、蓋部材10をソレノイドケース30の軸方向一端側にカシメ固定することでソレノイドの組立が完了する(図示略)。