(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015922
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】植物性タンパク質を含有する粒状物、該粒状物を用いた畜肉加工食品または畜肉様加工食品の食感の改善方法、および該粒状物を含有する畜肉加工食品または畜肉様加工食品
(51)【国際特許分類】
A23J 3/14 20060101AFI20240130BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240130BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20240130BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20240130BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240130BHJP
【FI】
A23J3/14
A23L13/00 A
A23L13/60 Z
A23J3/16
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118306
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】河東 華均
(72)【発明者】
【氏名】堀 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】薄衣 広悌
【テーマコード(参考)】
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B036LF13
4B036LH15
4B036LH25
4B036LH26
4B042AC05
4B042AD20
4B042AD21
4B042AD36
4B042AK10
4B042AK13
(57)【要約】
【課題】畜肉原料が低減された畜肉加工食品や、畜肉原料が植物性原料で代替された畜肉様加工食品において、食感を改善して、コストの低減と食感の改善との両立を可能とし得る植物性の食品原料を提供する。
【解決手段】植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である、粒状物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である、粒状物。
【請求項2】
植物性タンパク質が大豆タンパク質およびエンドウ豆タンパク質からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の粒状物。
【請求項3】
植物性タンパク質を含有する粒状物が、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体を含有する、請求項1に記載の粒状物。
【請求項4】
20℃の水の室温における保持率が90%~98%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒状物。
【請求項5】
畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料の代わりに添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合に、畜肉原料または畜肉代替原料100質量部に対し、乾燥重量にして0.2質量部~10質量部添加される、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒状物。
【請求項6】
植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物を、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品に添加することを含む、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品の食感の改善方法。
【請求項7】
植物性タンパク質が大豆タンパク質およびエンドウ豆タンパク質からなる群より選択される1種以上である、請求項6に記載の改善方法。
【請求項8】
植物性タンパク質を含有する粒状物が、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体とから調製される、請求項6に記載の改善方法。
【請求項9】
植物性タンパク質を含有する粒状物の20℃の水の室温における保持率が90%~98%である、請求項6~8のいずれか1項に記載の改善方法。
【請求項10】
植物性タンパク質を含有する粒状物の添加量が、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料の代わりに添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合に、畜肉原料または畜肉代替原料100質量部に対し、乾燥重量にして0.2質量部~10質量部である、請求項6~8のいずれか1項に記載の改善方法。
【請求項11】
植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物を含有する、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
【請求項12】
植物性タンパク質が大豆タンパク質およびエンドウ豆タンパク質からなる群より選択される1種以上である、請求項11に記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
【請求項13】
植物性タンパク質を含有する粒状物が、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体を含有する、請求項11に記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
【請求項14】
植物性タンパク質を含有する粒状物の20℃の水の室温における保持率が90%~98%である、請求項11~13のいずれか1項に記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
【請求項15】
畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料に代えて添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合に、植物性タンパク質を含有する粒状物の含有量が、畜肉原料または畜肉代替原料100gあたり、乾燥重量にして0.2g~10gである、請求項11~13のいずれか1項に記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉原料の一部が植物性原料に代替される等して畜肉原料が低減された畜肉加工食品や、畜肉原料が植物性原料で代替された畜肉様加工食品の食感の改善に有用な粒状物、該粒状物を用いることによる、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品の食感の改善方法、および該粒状物を含有し食感が改善された、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグやミートボール、餃子等の畜肉加工食品において、近年、地球温暖化等の環境問題や、畜肉原料の価格が不安定であること、または高騰したこと、あるいは健康志向等から動物性原料が敬遠されたこと等を背景に、畜肉加工食品における畜肉原料の低減や、畜肉原料を植物性原料に置き換えた畜肉様加工食品の需要が高まり、これらにおいてコストの低減を図るとともに、食感の改善を図ろうとする試みがなされている。
【0003】
たとえば、畜肉加工品の生地物性を損ねることなく、ソフトでジューシー感が付与された畜肉加工品を得るために、ネイティブジェランガム等の特定の植物性多糖類をゲル化剤として含有し、融点が50℃~85℃であるゲル状物を添加して、不均一に分散させて畜肉加工品用生地を調製し、次いで前記生地を加熱して畜肉加工品を製造する技術(特許文献1)、食品や飼料に配合された際に吸水率が適度に高く、吸水後もドリップや澱粉特有の糊っぽさが抑制される素材として、澱粉を45重量%以上含む粒状物であって、前記澱粉として、アミロース含有量が5重量%以上の澱粉を酸処理、酸化処理または酵素処理した澱粉を当該粒状物中7重量%以上含み、特定の吸水率と圧縮離水率を有し、目開き0.5mmの篩を通過しない粒子の含有量が40重量%以上100重量%以下である、粒状物(特許文献2)が提案されている。
また、畜肉加工食品の食感の改善に、大豆タンパク質を利用することも検討されている。たとえば、肉の繊維のような適度な歯応えのある食感と、見た目における肉とのなじみの両方を満足させ得る大豆タンパク質素材として、膨潤・加熱後の硬さが4.0kg~6.5kgであり、吸水率が380%~500%である、粒状大豆タンパク質素材が提案されている(特許文献3)。
さらに、食感およびジューシー感が改善された挽肉または挽肉様の加工食品を提供するために、粉末状植物性タンパク質を含有し、かつ目開き4mmの篩を通過する粒度の多孔質素材を含有するエマルションを、加工食品生地に用いること(特許文献4)、組織状大豆タンパク質の一部または全部を、水や調味液で膨潤させることなく、水分が10質量%以下の状態でそのまま加えて、加工食品生地を調製すること(特許文献5)が提案されている。
【0004】
しかし、畜肉加工食品の製造に際し、澱粉等の植物性多糖類を用いると、それらに特有のぬめりのある食感を生じることがあり、植物性タンパク質を用いた場合には、それに起因する異風味を生じて、良好な呈味や食感が得られないという問題があった。
それゆえ、畜肉原料の一部が植物性原料で代替され、畜肉原料が低減された畜肉加工食品や、畜肉原料が植物性原料に代替された畜肉様加工食品において、コストの低減と食感の改善との両立が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-028003号公報
【特許文献2】特開2014-121272号公報
【特許文献3】特開2018-126094号公報
【特許文献4】特開2021-048807号公報
【特許文献5】特開2021-048808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品や、畜肉原料が植物性原料で代替された畜肉様加工食品において、コストの低減と食感の改善との両立を可能とし得る植物性の食品原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物が、畜肉原料が低減された畜肉加工食品および畜肉様加工食品の食感を改善し得ることを見出し、さらに検討して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である、粒状物。
[2]植物性タンパク質が大豆タンパク質およびエンドウ豆タンパク質からなる群より選択される1種以上である、[1]に記載の粒状物。
[3]植物性タンパク質を含有する粒状物が、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体を含有する、[1]に記載の粒状物。
[4]20℃の水の室温における保持率が90%~98%である、[1]~[3]のいずれかに記載の粒状物。
[5]畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料の代わりに添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合に、畜肉原料または畜肉代替原料100質量部に対し、乾燥重量にして0.2質量部~10質量部添加される、[1]~[4]のいずれかに記載の粒状物。
[6]植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物を、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品に添加することを含む、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品の食感の改善方法。
[7]植物性タンパク質が大豆タンパク質およびエンドウ豆タンパク質からなる群より選択される1種以上である、[6]に記載の改善方法。
[8]植物性タンパク質を含有する粒状物が、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体とから調製される、[6]に記載の改善方法。
[9]植物性タンパク質を含有する粒状物の20℃の水の室温における保持率が90%~98%である、[6]~[8]のいずれかに記載の改善方法。
[10]植物性タンパク質を含有する粒状物の添加量が、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料の代わりに添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合に、畜肉原料または畜肉代替原料100質量部に対し、乾燥重量にして0.2質量部~10質量部である、[6]~[9]のいずれかに記載の改善方法。
[11]植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物を含有する、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
[12]植物性タンパク質が大豆タンパク質およびエンドウ豆タンパク質からなる群より選択される1種以上である、[11]に記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
[13]植物性タンパク質を含有する粒状物が、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体を含有する、[11]に記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
[14]植物性タンパク質を含有する粒状物の20℃の水の室温における保持率が90%~98%である、[11]~[13]のいずれかに記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
[15]畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料に代えて添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合に、植物性タンパク質を含有する粒状物の含有量が、畜肉原料または畜肉代替原料100gあたり、乾燥重量にして0.2g~10gである、[11]~[14]のいずれかに記載の畜肉加工食品または畜肉様加工食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、植物性タンパク質を含有する粒状物を提供することができ、該粒状物は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品や畜肉様加工食品において、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感を改善することができ、製造コストの低減と食感の改善との両立を可能とし得る植物性の食品原料として有用である。
また、本発明により、畜肉原料が低減された畜肉加工食品や畜肉様加工食品において、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感を改善し得る食感の改善方法を提供することができる。
さらに、本発明により、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品であって、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感が改善された食品を提供することができ、コストの低減と食感の改善との両立を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、植物性の食品原料として含有され得る粒状物(以下、本明細書にて「本発明の粒状物」ということがある)を提供する。
本発明の粒状物は、植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である。
【0011】
本発明において、「植物性タンパク質を含有する粒状物」とは、タンパク質を含有する植物体から、抽出もしくは分離され、または濃縮された植物性タンパク質、あるいは前記植物性タンパク質を含有する分画物を、押出し成形等により造粒し、乾燥した後粉砕し、篩分して調製される粒状物をいう。
タンパク質を含有する植物体としては、タンパク質を含有する植物の器官もしくは部位であって、可食性のものであれば、特に制限されることなく用いることができ、大豆、エンドウ豆、ソラ豆、リョクトウ、ヒヨコマメ等の豆類の種子、小麦、ライ麦等の種子、アスパラガスの茎、ブロッコリーの花序および茎、枝豆(大豆の未成熟な種子)、芽キャベツ、トウモロコシ、ソバ、アボカド、バナナ等の果実等が挙げられる。
畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみがよく、良好な肉粒感を付与し得る植物性タンパク質を含有する粒状物の調製が可能であることから、タンパク質を含有する植物体として、小麦の種子や豆類の種子が好ましく用いられ、豆類の種子がより好ましく用いられる。豆類の種子としては、エンドウ豆および大豆が好ましく用いられ、大豆がより好ましく用いられる。
タンパク質を含有する植物体からタンパク質を抽出または分離あるいは濃縮する方法としては、食品の分野で一般的な方法を採用することができ、たとえば、アルカリ性水溶液にて抽出した後、酸で中和する等の方法が挙げられる。
【0012】
本発明においては、植物性タンパク質を含有する粒状物として、好ましくは大豆タンパク質およびエンドウ豆タンパク質からなる群より選択される1種以上を含有する粒状物が挙げられ、より好ましくは大豆タンパク質を含有する粒状物が挙げられる。また、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体とから調製される粒状物がより好ましいものとして挙げられる。
大豆タンパク質を含有する粒状物は、大豆(Glycine max)の種子から種皮を除去し、油脂を除去した脱脂大豆、または前記脱脂大豆をアルコールまたは酸で洗浄して糖類および灰分を除去した濃縮大豆タンパク質を、押出し成形により造粒し、乾燥した後、粉砕し、篩分して調製される。
また、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体とから調製される粒状物は、脱脂大豆からアルコールまたは酸で洗浄して糖類および灰分を除去した濃縮タンパク質、脱脂大豆から水またはアルカリにより抽出されたタンパク質、もしくは脱脂大豆から水またはアルカリによる抽出、酸による沈殿処理により分離されたタンパク質と、タンパク質を含有する植物体とを混合し、押出し成形により造粒し、乾燥した後、粉砕し、篩分して調製される。脱脂大豆から濃縮、抽出または分離されたタンパク質と混合される、タンパク質を含有する植物体としては、上記した植物体が挙げられる。
本発明の目的には、植物性タンパク質を含有する粒状物として、大豆タンパク質およびタンパク質を含有する植物体とから調製される粒状物が好ましく用いられ、脱脂大豆より分離された大豆タンパク質と、タンパク質を含有する植物体として、大豆全粒粉、発芽エンドウ豆および発芽大豆を用い、これらを混合してエクストルーダーにより押出し成形し、乾燥した後、粉砕し、篩分して調製される粒状物がより好ましく用いられる。
【0013】
本発明において、植物性タンパク質を含有する粒状物としては、タンパク質含有量が50質量%以上であるものが好ましく、55質量%~75質量%であるものがより好ましい。
【0014】
本発明においては、植物性タンパク質を含有する粒状物として、原料として使用されるタンパク質を含有する植物体の種類、植物性タンパク質の調製方法等の相違、押出し成形、乾燥等の条件の相違、篩分の方法、条件の相違等により、タンパク質含有量、粒度分布等の異なる植物性タンパク質の粒状物から、1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択して併用してもよい。
【0015】
本発明の粒状物は、本発明の特徴を損なわない範囲で、上記した植物性タンパク質やタンパク質を含有する植物体に加えて、食塩、砂糖、醤油、アミノ酸塩、核酸塩、酵母エキス、畜肉エキス等の調味料;卵白、ゼラチン、カゼイン等の動物性タンパク質;前記動物性タンパク質の加水分解物および部分分解物;有機酸塩(フマル酸塩等)等のpH調整剤;重合リン酸塩等のキレート剤;色素;酸味料;コショウ、ナツメグ等の香辛料;香料等の一般的な食品添加物を含有し得る。
【0016】
本発明の粒状物は、目開きが2mmの篩を通過する粒状物、すなわち、粒子径が2.0mm以下の粒状物である。
本発明の粒状物は、篩い分け法により測定される粒子径が2.0mm以下であれば、その粒度分布による影響はさほど大きくはないが、2.0mm~1.0mmの粒子径を有するものを含むことが好ましい。本発明の好ましい実施態様として、たとえば、2.0mm以下1.7mm超であるものが7%程度、1.7mm以下1.4mm超であるものが13%程度、1.4mm以下1.0mm超であるものが30%程度、1.0mm以下であるものが50%程度である粒度分布を示すものが挙げられる。
【0017】
本発明の粒状物においては、20℃の水による膨潤時の圧縮応力、すなわち、20℃の水で膨潤させた際に、テクスチャーアナライザーで後述する条件下に測定される圧縮応力が、1kg~3.5kgであり、好ましくは1.5kg~3.2kgである。
上記の圧縮応力は、本発明の粒状物について、奥歯で噛み潰す際の硬さを示す物性値である。
【0018】
また、本発明の粒状物においては、後述する方法で測定される室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%であり、好ましくは300%~380%である。
さらに、本発明の粒状物においては、後述される方法で測定される20℃の水の室温における保持率が、好ましくは90%~98%であり、より好ましくは93%~97%である。
なお、「室温」とは、第十八改正日本薬局方通則にて定義される室温、すなわち1℃~30℃をいう。
【0019】
本発明の粒状物は、上記したように、脱脂大豆、または前記脱脂大豆から調製される濃縮大豆タンパク質に、必要に応じて上記食品添加物を加えて、エクストルーダー等により押出し成形して造粒し、乾燥して調製される造粒物や、脱脂大豆から調製される濃縮タンパク質、脱脂大豆から抽出されるタンパク質、もしくは脱脂大豆から分離されたタンパク質と、タンパク質を含有する植物体とを混合し、必要に応じて上記食品添加物を加えて、エクストルーダー等により押出し成形して造粒し、乾燥して調製される造粒物を、コミトロールプロセッサー(アーシェルジャパン株式会社)等の食品用カッターを用いて粉砕し、篩い分けして製造することができる。
なお、本発明の粒状物の製造に用いる上記脱脂大豆や、脱脂大豆から濃縮、抽出または分離される大豆タンパク質は、一般的な大豆タンパク質の抽出、分離、精製方法により調製して用いることができるが、各社より提供されている市販の製品を利用することもできる。
【0020】
本発明の最も好ましい態様の粒状物としては、粉末状の分離大豆タンパク質に、大豆全粒粉、発芽大豆および発芽エンドウ豆を加えて混合し、必要に応じて上記食品添加物を加えて、二軸エクストルーダーを用いて押出し成形し、乾燥して得られる造粒物をコミトロールプロセッサー(アーシェルジャパン株式会社)により粉砕し、篩い分けを行って得られた粒状物を挙げることができる。
上記粒状物の製造に用いられる粉末状の分離大豆タンパク質は、脱脂大豆から、水またはアルカリ抽出、酸による沈殿、アルカリによる中和を経て分離されたタンパク質を、噴霧乾燥等により乾燥して粉末化して調製したものを用いることができるが、粉末状分離大豆タンパク質として、各社より提供されている市販の製品を利用することもできる。
また、大豆全粒粉は、種皮を除去した大豆を粉砕し、調製して用いることもできるが、大豆全粒粉として、各社より提供されている市販の製品を利用することもできる。発芽大豆および発芽エンドウ豆としては、大豆やエンドウ豆を通常の発芽条件にて発芽させて用いることができる。
【0021】
本発明の粒状物は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品に添加して使用される。
本発明において、「畜肉加工食品」とは、畜肉、すなわち、牛、豚、馬、羊、山羊、兎等の家畜の肉や、鶏、合鴨、鴨、七面鳥、家鴨、鶉、ホロホロチョウ、ガチョウ等の家禽の肉を、細切、細断、粉砕、混練、成形、乾燥、塩漬け、味噌漬け、醤油漬け、加熱(水煮、蒸す、焼く、揚げる、燻煙等)、発酵等の加工に供して調製される食品をいう。
本発明の目的には、畜肉加工食品として、ハム、ベーコン、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボール、シュウマイ、餃子、つくね、メンチカツ等、上記した家畜や家禽の食肉(畜肉)を細断して挽肉とし、塩、香辛料等を加えて混練した後、成形し、上記した加熱処理を行って得られる畜肉練り製品が好ましい例として例示される。
従って、本発明において、「畜肉原料が低減された畜肉加工食品」とは、上記した畜肉加工食品の原料となる畜肉、すなわち畜肉原料の一部を植物性の原料等に代替する等して、畜肉原料の含有量が低減された畜肉加工食品をいう。また、本発明において、「畜肉様加工食品」とは、上記した畜肉加工食品において、畜肉原料を、肉感を有する植物性原料等の畜肉代替原料に代替して調製された加工食品をいう。
本発明の粒状物は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料の代わりに添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合、畜肉原料または畜肉代替原料100質量部に対し、乾燥重量にして、好ましくは0.2質量部~10質量部添加され、より好ましくは0.4質量部~7質量部添加される。
【0022】
本発明の粒状物は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感を良好に改善することができる。それゆえ、本発明の粒状物は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品の食感を改善するための植物性の食品原料として有用である。
【0023】
本発明はまた、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品の食感の改善方法(以下、本明細書にて「本発明の改善方法」ともいう)を提供する。
本発明の改善方法は、植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物を、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品に添加することを含む。
【0024】
本発明の改善方法において、「畜肉原料が低減された畜肉加工食品」、「畜肉様加工食品」およびこれらに添加される「植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物」については、本発明の粒状物において上記した通りである。
「畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品に添加する」とは、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品の製造工程のいずれかの工程において、上記植物性タンパク質を含有する粒状物を添加することをいう。
畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品の食感の改善効果の観点からは、畜肉原料または畜肉代替原料およびその他の原料に、上記した植物性タンパク質を含有する粒状物を添加して、混合することが好ましい。
畜肉原料または畜肉代替原料に対する上記した植物性タンパク質を含有する粒状物の添加量については、本発明の粒状物において上記した通りである。
【0025】
本発明の改善方法により、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感が良好に改善され得る。
【0026】
さらに、本発明は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品であって、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感が改善された食品(以下、本明細書にて「本発明の食品」ともいう)を提供する。
本発明の食品は、植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物を含有する。
【0027】
本発明の食品において、「畜肉原料が低減された畜肉加工食品」、「畜肉様加工食品」および「植物性タンパク質を含有する粒状物であって、目開きが2mmの篩を通過し、20℃の水による膨潤時の圧縮応力が1kg~3.5kgで、室温における20分間の20℃の水の吸水率が280%~400%である粒状物」については、本発明の粒状物において上記した通りである。
本発明の食品における上記粒状物の含有量は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品において、これら食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料の代わりに添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合、畜肉原料または畜肉代替原料100gあたり、乾燥重量にして、好ましくは0.2g~10gであり、より好ましくは0.4g~7gである。また、本発明の食品において、本発明の食品の原料として畜肉原料または畜肉代替原料に加えて添加される水、および低減された畜肉原料の代わりに添加される水の合計の添加量が10質量%以下である場合、本発明の食品の全量に対する本発明の粒状物の含有量は、乾燥重量にして、好ましくは0.01質量%~9質量%であり、より好ましくは0.04質量%~6質量%である。
【0028】
本発明の食品は、畜肉原料または、肉感を有する植物性原料等の畜肉代替原料、上記粒状物に加えて、牛脂、豚脂、サラダ油等の動植物性油脂;全卵、卵白、卵黄等の卵類;チーズ、牛乳等の乳製品;米粉、小麦粉、片栗粉等の穀粉;パン粉;キャベツ、白菜、タマネギ等の野菜;精製水、水道水等の食品製造用水等、畜肉加工食品や畜肉様加工食品の製造に一般的に用いられる原材料や、食塩、砂糖、醤油、アミノ酸塩、核酸塩、酵母エキス、畜肉エキス等の調味料;有機酸塩(フマル酸塩等)等のpH調整剤;重合リン酸塩等のキレート剤;色素;酸味料;コショウ、ナツメグ等の香辛料;香料等の一般的な食品添加物を含有し得る。
【0029】
本発明の食品は、畜肉原料または畜肉代替原料、およびその他畜肉加工食品や畜肉様加工食品の製造に一般的に用いられる原材料に、上記粒状物を加え、必要に応じて上記した一般的な添加物を加えて混合し、必要に応じて、食品の製造に際して通常採用される方法および条件にて、混練、小分け、成形、加熱調理(炊く、煮る、焼く、蒸す、揚げる等)、殺菌等して製造することができる。
本発明の食品は、さらに通常採用される方法および条件にて、包装、容器への充填等を行うこともできる。
また、本発明の食品は、小分け、成形等された状態で、または包装され容器に充填等された状態で、冷蔵または冷凍下に保存することもできる。冷蔵および冷凍の条件および手段についても、一般的に食品の分野で採用されている条件および手段を採用することができる。
【0030】
本発明の食品においては、製造コストが低減されるとともに、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感が良好に改善され得る。
【実施例0031】
さらに、本発明について、実施例により詳細に説明する。
【0032】
[実施例1~8]大豆タンパク質を含有する粒状物
表1に示す組成にて、各成分をリボンミキサーにて混合し、二軸エクストルーダーにて押出し成形して造粒し、乾燥した後、コミトロールプロセッサー(アーシェルジャパン株式会社)にて粉砕した。次いで、粉砕物を目開き=2.0mmの篩にて篩分し、前記篩を通過する粒状物を回収して、表2に示す粒度分布となるように調整し、実施例1および実施例4~8の各大豆タンパク質を含有する粒状物とした。また、目開き=2.0mmの篩を通過する粒状物を、目開き=1.0mmの篩を用いて篩分し、該篩上に残る粒状物(粒度=2.0mm~1.0mm)を実施例2の大豆タンパク質を含有する粒状物、該篩を通過する粒状物(粒度=1.0mm以下)を実施例3の大豆タンパク質を含有する粒状物とした。以下、これらはそれぞれ「実施例1の粒状物」のように表記した。実施例1~8の粒状物のタンパク質含有量は、燃焼法(改良デュマ法)により定量したとき、66質量%であった。
なお、表1に示す各成分としては、下記のものを用いた。
(1)粉末状分離大豆タンパク質:脱脂大豆よりアルカリ抽出し、酸を加えて沈殿させて分離したタンパク質をアルカリで中和し、噴霧乾燥して調製したもの(タンパク質含有量=90質量%)を用いた。
(2)大豆全粒粉:種皮を除去した大豆を粉末化したものを用いた。
(3)発芽大豆および発芽エンドウ豆:食品の大豆およびエンドウ豆を発芽タンクにて、15℃以上にて1日以上静置し、発芽させたものを用いた。
(4)調味料:食肉および豆用の市販の製品を用いた。
【0033】
【0034】
【0035】
実施例1~8の各粒状物について、下記の通り、室温における20分間の20℃の水の吸水率、および20℃の水による膨潤時の圧縮応力を測定した。また、実施例1および実施例4~8の粒状物について、下記の通り、20℃の水の室温における保持率を測定した。その際、市販の粒状大豆タンパク質(「アペックス350」(不二製油株式会社))、粒状加工澱粉(「ネオトラストW-120」(株式会社J-オイルミルズ))および繊維感のある顆粒状澱粉(「テクスデザイン フィブレA-120」(株式会社J-オイルミルズ))をそれぞれ比較例1~3として、同様に測定を行った。
(1)室温における20分間の20℃の水の吸水率
実施例の各粒状物および比較例の各試料30gをそれぞれ500mLのビーカーに入れ、20℃の水を加えて、室温下にて20分間静置した。次いで、目開き=850μmの篩に通し、5分間前記篩上にて水切りを行った後、篩上の試料の重量を測定し、該重量を、水を添加する前の試料の重量(30g)で除して吸水率を求めた。
(2)20℃の水による膨潤時の圧縮応力
上記(1)にて吸水率の測定を行った試料を、それぞれディスポーザブルプラスチックカップ(直径=50mm)に下底から30mmの高さまで充填し、テクスチャーアナライザー(「テクスチャーアナライザー TA.XTplus」(ステイブルマイクロシステムズ(Stable Micro Systems)社))を用いて、円柱型プランジャー(底面の直径=20mm)で20mm押し込んだ際の応力を25℃にて測定した。
(3)20℃の水の室温における保持率
上記(2)で圧縮応力を測定した後、室温にて各試料を目開き=850μmの篩に通し、5分間前記篩上にて水切りを行った後、篩上の試料の重量を測定し、水を添加する前の試料の重量(30g)を引いて水分保持量を求め、上記(1)で測定された吸水量とから、20℃の水の室温における保持率を算出した。
(4)結果
上記(1)~(3)の測定結果を、表3に示した。
【0036】
【0037】
表3に示されるように、実施例1~8の粒状物では、室温における20分間の20℃の水の吸水率は300%~376%であり、20℃の水を吸水した後の圧縮応力、すなわち20℃の水による膨潤時の圧縮応力は、1.58kg~3.04kgであった。また、実施例1および実施例4~8の粒状物は、20℃の水に対し、室温にて93.7%~96.6%の保持率を示した。
これに対し、比較例1の粒状大豆タンパク質、比較例2の粒状加工澱粉および比較例3の顆粒状澱粉では、いずれも室温における20分間の20℃の水の吸水率は560%を超えており、20℃の水を吸水した後の圧縮応力、すなわち20℃の水による膨潤時の圧縮応力は、1.5kgに満たなかった。
【0038】
[試験例1]大豆タンパク質を含有する粒状物の粒度がミートボールの食感に及ぼす影響の検討
(1)試料の調製
上記実施例2の粒状物をさらに篩分して、2.0mm~1.7mm、1.7mm~1.4mm、1.4mm~1.0mmの粒度を有する粒状物を調製した。また、上記実施例の粒状物を調製する際、目開き=2.0mmの篩を通過しない粒状物をさらに篩分して、粒度が2.8mm~2.4mmおよび2.4mm~2.0mmである粒状物を調製し、これらの各粒度分布を示す粒状物と、実施例3の粒状物(粒度=1.0mm以下)をそれぞれ試料とした。
(2)ミートボールの調製
表4に示す原料を、ホバートミキサー(株式会社エフ・エム・アイ)を用いて1速で1分間混合し、1個あたり30gずつ成形して、ジェットオーブン(インピンジャー)(株式会社フジマック)にて250℃で2分間焼成し、次いでスチームコンベクションオーブン(株式会社フジマック)で200℃、相対湿度=50%にて5分間加熱して調製したミートボールを、急速冷凍機を用いて-40℃で30分間急冷して冷凍し、対照および、畜肉の2質量%を水に代えた畜肉原料低減品とした。
畜肉原料低減品の調製に際し、上記で調製した各試料をそれぞれ0.5質量%添加して、同様にミートボールを調製した。
調製したミートボールは、真空包装して-20℃で冷凍保存した。
【0039】
【0040】
(3)肉粒感および肉とのなじみの官能評価
上記の各試料を添加して調製したミートボールならびに対照および畜肉原料低減品を、湯煎にて15分間加熱した後、それぞれ3名のパネリストに喫食させて、肉粒感、すなわち肉粒の存在感(ゴリゴリした感覚、弾力のある感覚)および肉とのなじみについて、下記評価基準に従い0.5点刻みで評価させ、3名の平均値を算出した。
評価結果は、パネリストから得られたコメントとともに、表5に示した。それぞれ評価点が3.0点以上で、肉粒感がある、または肉とのなじみがあり、違和感は許容できる範囲内であると判断した。
<評価基準>
(i)肉粒感
非常に肉粒感がある;5点
かなり肉粒感がある;4点
やや肉粒感がある;3点
わずかに肉粒感がある;2点
肉粒感がない;1点
(ii)肉とのなじみ
試料の歯ごたえが強過ぎず、畜肉と試料とのなじみが非常によく、食感に違和感がない;5点
試料の歯ごたえが強過ぎず、畜肉と試料とのなじみがよく、食感にほぼ違和感がない;4点
試料の歯ごたえがやや強いが、畜肉と試料とのなじみはかなりよく、食感にやや違和感はあるが、許容できる範囲内である;3点
試料の歯ごたえが強く、畜肉と試料とのなじみがあまりよくなく、違和感がある;2点
試料の歯ごたえが強過ぎて、畜肉と試料とのなじみが悪く、違和感が強い;1点
【0041】
【0042】
表5に示されるように、対照では肉粒感の評価が十分ではなく、畜肉原料を2質量%減量した畜肉原料低減品では、さらに肉粒感が低下することが認められた。
畜肉原料低減品に実施例2の粒状物をさらに篩分して調製した試料を0.5質量%添加した場合には、肉粒感が向上し、肉とのなじみも良好であると評価され、畜肉原料低減品に、粒度が1.0mm以下である実施例3の粒状物を添加した場合にも、肉粒感が認められ、肉とのなじみについても、違和感は許容できる範囲内であると評価された。
一方、粒度が2.8mm~2.4mmである粒状物を添加した畜肉原料低減品では、十分な肉粒感および肉とのなじみは認められなかった。粒度が2.4mm~2.0mmである粒状物を添加した畜肉原料低減品については、肉粒感は認められたが、肉とのなじみについて、違和感が許容できる範囲内であるとの評価は得られなかった。
【0043】
試験例1の上記結果から、畜肉原料を低減した畜肉加工食品において、十分な食感の改善効果を奏するには、植物性タンパク質を含有する粒状物は、見開きが2.0mmの篩を通過するものであることを要することが確認された。
【0044】
[試験例2]畜肉原料を低減したミートボールに対する本発明の粒状物の添加量の影響の検討
上記表4に示すミートボールの畜肉原料低減品の調製に際し、実施例1の粒状物を、表6に示す通り0.1質量%~10質量%添加して、試験例1と同様にミートボールを調製した。また、比較例1および2の各粒状物と、比較例1の粒状物の粒度分布を、4.0mm~2.8mmのものが25%、2.8mm~1.18mmのものが50%、1.18mm以下のものが25%以下となるように調整した粒度調整品を添加して、同様にミートボールを調製した。
上記で調製した各ミートボールについて、試験例1の場合と同様に、肉粒感および肉とのなじみについて官能評価を行い、評価結果をパネリストから得られたコメントとともに表6に示した。
【0045】
【0046】
表6に示されるように、畜肉原料を2.0質量%低減したミートボールに対し、実施例1の粒状物を0.3質量%~5.0質量%(畜肉原料100質量部に対し0.42質量部~7.0質量部)添加した場合には、肉粒感が認められ、肉とのなじみについても非常によいまたはよいとの評価が得られた。しかしながら、実施例1の粒状物の添加量が0.1質量%(畜肉原料100質量部に対し0.14質量部)である場合には、肉粒感が不十分であると評価され、実施例1の粒状物の添加量が10.0質量%(畜肉原料100質量部に対し14質量部)である場合には、肉とのなじみがやや悪いと評価された。
一方、市販の粒状大豆タンパク質である比較例1の粒状物を0.5質量%添加した場合には、そのまま添加した場合および粒度調整品を添加した場合のいずれにおいても、肉粒感が不十分であると評価された。
また、市販の粒状加工澱粉である比較例2の粒状物を0.3質量%添加した場合には、肉粒感が不十分であると評価され、5.0質量%添加した場合には、肉粒感があまり感じられず、肉とのなじみも悪いと評価され、良好な食感は認められなかった。
【0047】
試験例2の上記結果から、大豆タンパク質を含有し、粒度が2.0mm以下の粒状物である実施例1の粒状物を畜肉原料低減品に添加した場合には、良好な肉粒感が付与され、また、肉とのなじみも良好であることが確認された。また、かかる効果は、畜肉原料100質量部に対し、0.4質量部~7質量部の添加量にて良好に認められることが示唆された。
一方、大豆タンパク質を含有する粒状物ではあっても、粒子径が2.0mmを超える粒状物を含有し、室温における20℃の水の吸水率が550%を超える粒状物や、植物性タンパク質ではない澱粉の粒状物であり、前記吸水率が550%を超える粒状物には、畜肉原料が低減された畜肉加工食品に対する食感の改善効果は見られないことが確認された。
【0048】
[試験例3]畜肉原料の低減に対する実施例1の粒状物の添加の影響の検討
上記表4に示すミートボールにおいて、さらに畜肉原料の5質量%、10質量%および20質量%をそれぞれ水に代えて、畜肉原料が低減されたミートボールを調製する際に、実施例1の粒状物を0.5質量%、または低減された畜肉の量に相当する水の1/4量を添加して、上記試験例1と同様にミートボールを調製し、試験例1の場合と同様に肉粒感および肉とのなじみについて官能評価を行い、評価結果を表7に示した。
【0049】
【0050】
表7に示されるように、畜肉原料の5質量%を水に代えた畜肉原料低減品(水の添加量の合計=7質量%)では、実施例1の粒状物を0.5質量%および1.25質量%添加することにより、肉粒感および肉とのなじみがともに改善された。畜肉原料の10質量%および20質量%をそれぞれ水に代えて低減した場合(水の添加量の合計はそれぞれ12質量%および22質量%)には、実施例1の粒状物を0.5質量%添加しても十分な肉粒感は得られず、畜肉原料に代えて加えた水の1/4量に相当する2.5質量%および5.0質量%の添加で、肉粒感の改善が認められた。
試験例3の上記結果から、畜肉原料の一部を水に代えることにより畜肉原料を低減した畜肉加工食品において、畜肉加工食品の原料として畜肉原料に加えて添加された水と、低減された畜肉原料に代えて添加された水の合計の添加量が10質量%を超えると、本発明の粒状物を畜肉原料100質量部に対し、0.79質量部または0.94質量部添加しても、十分な肉粒感は得られなかった。かかる場合において、本発明の粒状物を、畜肉原料に代えて加えた水の添加量に対し、1/4量添加することにより、畜肉原料を低減した畜肉加工食品における食感を改善し得ることが示唆された。
【0051】
[実施例9、10]大豆タンパク質を含有する粒状物およびエンドウ豆タンパク質を含有する粒状物
粉末状分離大豆タンパク質(脱脂大豆よりアルカリ抽出し、酸を加えて沈殿させて分離したタンパク質をアルカリで中和し、噴霧乾燥して調製したもの(タンパク質含有量=90質量%))、脱脂大豆、澱粉、調味料および香料を混合後、エクストルーダーを用いて押出成形し、乾燥して得た粒状物を篩分し、実施例1の粒状物と同様の粒度分布となるように調製して、実施例9とした。
また、粉末状分離大豆タンパク質の代わりにエンドウ豆タンパク質粉末を用いた他は、上記実施例9と同様に粒状物を調製して、実施例10とした。
さらに、粉末状分離大豆タンパク質の代わりにそら豆タンパク質および小麦タンパク質を用いた他は、上記実施例9と同様に粒状物を調製し、参考例1および2とした。
燃焼法(改良デュマ)法により定量したタンパク質含有量は、実施例9および10の粒状物についてはいずれも70質量%であり、参考例1および2の粒状物については、いずれも60質量%であった。
【0052】
[試験例4]植物性タンパク質の基原植物の相違の影響の検討
上記表4に示した畜肉原料低減品の調製に際し、実施例9および10ならびに参考例1および2の各粒状物をそれぞれ0.5質量%添加して、試験例1の場合と同様にミートボールを調製した。
上記で調製した各ミートボールについて、試験例1の場合と同様に肉粒感および肉とのなじみの官能評価を行い、評価結果を表8に示した。
【0053】
【0054】
表8に示されるように、実施例9および10の各粒状物を添加した場合、これらは肉とのなじみが良好で、畜肉原料が低減されたミートボールに十分な肉粒感を付与することが認められた。
また、参考例1および2の粒状物は、肉とのなじみがよく、畜肉原料が低減されたミートボールに添加した場合、不十分ではあるものの、肉粒感を向上させる傾向が認められた。
試験例4の上記結果から、大豆タンパク質を含有する粒状物およびエンドウ豆タンパク質を含有する粒状物は、実施例1の粒状物と同様に、肉とのなじみがよく、良好な肉粒感を付与する効果を発揮し得ることが示唆された。
【0055】
[試験例5]畜肉原料が低減されたミートボールの食感に及ぼす実施例4~8の粒状物の影響の検討
表4に示す畜肉原料低減品の調製に際し、実施例4~8の各粒状物をそれぞれ0.5質量%添加して、試験例1の場合と同様にミートボールを調製し、畜肉原料が2質量%低減されたミートボールにおける肉粒感および、各粒状物の肉とのなじみについて、試験例1の場合と同様に官能評価を行った。なお、同時に、実施例1の粒状物、比較例1の粒状大豆タンパク質および比較例2の粒状加工澱粉についても評価を行った。評価結果は、表9に示した。
【0056】
【0057】
表9に示されるように、本発明の実施例1および4~8の各粒状物を添加したミートボールでは、畜肉原料が低減されているにもかかわらず肉粒感が良好に感じられ、肉とのなじみも良好であると評価された。
特に、実施例1および実施例6の各粒状物をそれぞれ添加した場合には、肉とのなじみが非常に良好であり、さらに肉粒感の向上が認められ、肉とのなじみおよび肉粒感をバランスよく向上させるには、特定の粒度分布を有することが効果的である傾向が認められた。
一方、比較例1の粒状大豆タンパク質および比較例2の粒状加工澱粉を添加した場合には、いずれも肉粒感は不十分であると評価され、生地の硬さや感触についてやや悪いコメントが得られた。
【0058】
[試験例6]畜肉原料が低減されたハンバーグの食感に及ぼす実施例1および4~8の粒状物の影響の検討
(1)ハンバーグの調製
表10に示す原料を、ホバートミキサー(株式会社エフ・エム・アイ)を用いて1速で1分間混合し、1個あたり20gずつ成形して、ジェットオーブン(インピンジャー)(株式会社フジマック)にて220℃で片面2分間(計4分間)焼成し、次いでスチームコンベクションオーブン(株式会社フジマック)で200℃、相対湿度=50%にて4分間加熱して調製したハンバーグを、急速冷凍機を用いて-40℃で30分間急冷して冷凍し、対照および、畜肉の2質量%を水に代えた畜肉原料低減品とした。
畜肉原料低減品の調製に際し、実施例1および4~8の各粒状物、ならびに比較例1の粒状大豆タンパク質および比較例2の粒状加工澱粉をそれぞれ0.5質量%添加して、同様にハンバーグを調製した。
調製したハンバーグは、真空包装して-20℃で冷凍保存した。
【0059】
【0060】
(2)肉粒感および肉とのなじみの官能評価
実施例1および4~8の各粒状物を添加して調製したハンバーグ、比較例1の粒状大豆タンパク質および比較例2の粒状加工澱粉を添加して調製したハンバーグ、ならびに対照および畜肉原料低減品を、湯煎にて15分間加熱した後、上記試験例1の場合と同様に、肉粒感および肉とのなじみについて、官能評価を行った。
評価結果は、表11に示した。
【0061】
【0062】
表11に示されるように、実施例1および4~8の各粒状物を添加したハンバーグでは、畜肉原料が2.0質量%低減されているにもかかわらず、いずれにおいても、良好な肉粒感が認められ、また、いずれにおいても肉とのなじみが非常に良好であると評価された。特に、粒子径が1.0mm以下の粒状物を含有しない実施例8の粒状物を添加したハンバーグでは、肉粒感が強く感じられた。
一方、比較例1の粒状大豆タンパク質および比較例2の粒状加工澱粉を添加した場合には、肉粒感は不十分であると評価され、生地の硬さや感触についてやや悪いコメントが得られた。
【0063】
[試験例7]畜肉原料が低減された餃子の食感に及ぼす実施例1および4~8の粒状物の影響の検討
(1)餃子の調製
表12に示す原料を、ホバートミキサー(株式会社エフ・エム・アイ)を用いて1速で5分間混合し、1個あたり13gずつ成形し、市販の皮で包んだ後、スチームコンベクションオーブン(株式会社フジマック)で95℃、相対湿度=100%にて6分間加熱して調製した餃子を、急速冷凍機を用いて-40℃で30分間急冷して冷凍し、対照および、畜肉の3.5質量%を水に代えた畜肉原料低減品とした。
畜肉原料低減品の調製に際し、実施例1および4~8の各粒状物、ならびに比較例1の粒状大豆タンパク質および比較例2の粒状加工澱粉をそれぞれ1.0質量%添加して、同様に餃子を調製した。
調製した餃子は、真空包装して-20℃で冷凍保存した。
【0064】
【0065】
(2)ジューシー感および肉とのなじみの官能評価
実施例1および4~8の各粒状物を添加して調製した餃子、比較例1の粒状大豆タンパク質および比較例2の粒状加工澱粉をそれぞれ添加して調製した餃子、ならびに対照および畜肉原料低減品を、油を引いたフライパンに並べ、蓋をして中火で5分間加熱し、次いで蓋を開け3分間加熱した後、それぞれ3名のパネリストに喫食させて、ジューシー感については下記評価基準により、肉とのなじみについては試験例1と同じ評価基準により、0.5点刻みで評価させ、3名の平均値を算出した。
評価結果は、パネリストから得られたコメントとともに、表13に示した。それぞれ評価点が3.0点以上で、ジューシー感がある、および肉とのなじみがあり、違和感は許容できる範囲内であると判断した。
<ジューシー感の評価基準>
非常にジューシー感がある;5点
ジューシー感がある;4点
ややジューシー感がある;3点
わずかにジューシー感がある;2点
ジューシー感がない;1点
【0066】
【0067】
表13に示されるように、畜肉原料を低減した餃子に、実施例1および4~8の各粒状物をそれぞれ添加した場合には、いずれも肉とのなじみが良好で、ジューシー感もあると評価された。特に、実施例1、5および6の各粒状物を添加した場合には、肉とのなじみが非常に良好で、ジューシー感も明確に認められており、良好な食感の改善効果が見られた。
一方、比較例2の粒状加工澱粉を添加した場合には、肉とのなじみが不十分であると評価された。また、比較例1の粒状大豆タンパクおよび比較例2の粒状加工澱粉を添加した場合には、ジューシー感は認められたものの、水っぽいジューシー感であるとのコメントが得られた。
【0068】
試験例5~7の上記結果から、本発明の粒状物は、ミートボール、ハンバーグ、餃子等、種々の畜肉加工食品に対し、畜肉原料が低減された場合にも、肉粒感またはジューシー感を付与することができ、肉とのなじみも良好であることが示唆された。
以上詳述したように、本発明により、植物性タンパク質を含有する粒状物を提供することができ、該粒状物は、畜肉原料が低減された畜肉加工食品や畜肉様加工食品において、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感を改善することができ、製造コストの低減と食感の改善との両立を可能とし得る植物性の食品原料として有用である。
また、本発明により、畜肉原料が低減された畜肉加工食品や畜肉様加工食品において、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感を改善し得る食感の改善方法を提供することができる。
さらに、本発明により、畜肉原料が低減された畜肉加工食品または畜肉様加工食品であって、ジューシー感、肉粒感、畜肉原料または畜肉代替原料とのなじみ等の食感が改善された食品を提供することができ、コストの低減と食感の改善との両立を実現することができる。