IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-機械学習装置 図1
  • 特開-機械学習装置 図2
  • 特開-機械学習装置 図3
  • 特開-機械学習装置 図4
  • 特開-機械学習装置 図5
  • 特開-機械学習装置 図6
  • 特開-機械学習装置 図7
  • 特開-機械学習装置 図8
  • 特開-機械学習装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159226
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】機械学習装置
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20241031BHJP
   G06F 18/2321 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
G06N20/00
G06F18/2321
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075077
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金堀 凌也
(57)【要約】
【課題】車両の適合定数の設定のために必要な工数を削減する。
【解決手段】機械学習装置は、1つまたは複数のプロセッサと、プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を備え、プロセッサは、メモリに含まれるプログラムと協働し、車両を走行させた際の複数種類の加速度波形を取得することと、複数種類の加速度波形のそれぞれを評価した評点である複数種類の教師データを取得することと、複数種類の加速度波形を、当該加速度波形の形状に基づいてグループ化することと、グループ化された加速度波形の評点を補正規則に基づいて補正することと、を含む処理を実行する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、
車両を走行させた際の複数種類の加速度波形を取得することと、
前記複数種類の加速度波形のそれぞれを評価した評点である複数種類の教師データを取得することと、
前記複数種類の前記加速度波形を、当該加速度波形の形状に基づいてグループ化することと、
前記グループ化された前記加速度波形の前記評点を補正規則に基づいて補正することと、
を含む処理を実行する、
機械学習装置。
【請求項2】
前記補正規則は、前記グループ化された前記加速度波形のうち、同じ前記評点に評価された加速度波形の数が最も多い前記加速度波形の前記評点を基準とすることである、
請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記補正規則は、前記グループ化された前記加速度波形の最大振幅の大きさに応じて予め定められた評点に補正することである、
請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記複数種類の前記加速度波形をグループ化する処理は、
前記複数種類の前記加速度波形をK-Shape法を用いてグループ化する、
請求項1~3のいずれかに記載の機械学習装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記補正された前記評点の教師データに基づいてAIモデルを学習させること、
前記学習されたAIモデルに前記車両を走行させた際の加速度波形を入力することで予測された評点を取得すること、
を含む処理をさらに実行する、
請求項1~3のいずれかに記載の機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の制御プログラムにおいて、車種ごとの車両特性差を補償するために適合定数の設定が行われている。この適合定数は、例えば、ベテランドライバが車両を走行させ、官能評価を行うことで、車両走行時において不快な加速とならないように設定される。この適合定数の設定に、数か月程度の工数が必要となる。
【0003】
特許文献1には、車両の加速度情報を入力させ、運転者の運転挙動を推定する機械学習モデル(以下、AIモデルという)を備えた情報処理装置について開示がある。このようなAIモデルを用いて、AIモデルがベテランドライバの代わりに車両走行時の官能評価を行うことができれば、適合定数の設定のために必要な工数を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/035996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、AIモデルの学習においては、教師データが必要である。AIモデルがベテランドライバの代わりに官能評価を行うためには、教師データとして、車両のさまざまな加速度波形と、それを評価して数値化したさまざまな評点のデータが必要となる。しかし、この教師データにばらつきがあると、AIモデルを正しく学習させることができず、結果、車両の適合定数の設定のために必要な工数を削減することができないという問題が発生していた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、車両の適合定数の設定のために必要な工数を削減することが可能な機械学習装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の機械学習装置は、1つまたは複数のプロセッサと、プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を備え、プロセッサは、メモリに含まれるプログラムと協働し、車両を走行させた際の複数種類の加速度波形を取得することと、複数種類の加速度波形のそれぞれを評価した評点である複数種類の教師データを取得することと、複数種類の加速度波形を、当該加速度波形の形状に基づいてグループ化することと、グループ化された加速度波形の評点を補正規則に基づいて補正することと、を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の適合定数の設定のために必要な工数を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る機械学習システムの構成を示す概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る機械学習装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、入力データである加速度波形と、当該加速度波形を評価した評点である教師データの一例を示すグラフである。
図4図4は、グループAに分類された加速度波形を示すグラフである。
図5図5は、グループBに分類された加速度波形を示すグラフである。
図6図6は、グループCに分類された加速度波形を示すグラフである。
図7図7は、補正部が図3に示される教師データを補正した後の状態を示すグラフである。
図8図8は、グループ化部により分類されたグループA、B,Cとは別のグループDの加速度波形を示すグラフである。
図9図9は、本実施形態に係る機械学習装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る機械学習システム100の構成を示す概略構成図である。機械学習システム100は、車両200と、機械学習装置300とを含む。車両200は、例えば、走行用の駆動源としてエンジンが設けられたエンジン車両である。なお、車両200は、走行用の駆動源としてエンジンとモータとが駆動源として設けられたハイブリッド車両であってもよいし、走行用の駆動源としてモータが設けられた電気車両であってもよい。
【0012】
また、本実施形態では、主に、車両200が四輪の自家用自動車である例について説明する。しかし、かかる例に限定されず、車両200は、バス、トラックもしくはタクシー等の商業用車両、または、パトカー、消防車、救急車、レッカー車、除雪車もしくは工事用車両等の特殊車両、または、自動二輪車など、各種の自動車であってもよい。
【0013】
本実施形態の車両200は、加速度センサ210を備える。加速度センサ210は、車両200の加速度を計測する。加速度センサ210は、計測した車両200の加速度を示す加速度データを機械学習装置300に送信する。
【0014】
機械学習装置300は、加速度センサ210から取得した車両200の加速度データを基に、車両200の加速時あるいは減速時における乗り心地である快適度の官能評価を行う装置である。機械学習装置300には、大別して学習フェーズと予測フェーズの2つのフェーズが設けられている。
【0015】
学習フェーズは、機械学習装置300に学習データが入力され、当該学習データを基にAIモデルを構築するフェーズである。以下、学習フェーズで構築されたAIモデルを、学習済みモデルという。
【0016】
学習データには、入力データとしての車両200の加速度データと、正解データとしての教師データとが含まれる。教師データは、車両200の加速度データの加速度波形を評価し、数値化した評点である。例えば、教師データは、ベテランドライバが車両200を走行させた際の車両200の加速度波形を評価して、その快適度を評点として整数で表したものである。
【0017】
本実施形態では、学習データには、車両200を複数回走行させた際の複数種類の加速度波形を有する複数種類の加速度データが含まれる。また、教師データは、複数種類の加速度波形のそれぞれを評価し、数値化した評点を有する。なお、教師データは、加速度データに紐付けられ、各加速度波形に対応する評点が紐付けられている。そのため、学習データには、複数種類の加速度波形に紐付けられた複数種類の教師データが含まれる。
【0018】
予測フェーズは、学習済みモデルに教師データが紐付けられていない、例えば、ベテランドライバではないドライバが乗車したときの加速度データを入力させ、当該加速度データに含まれる加速度波形を評価した評点を予測するフェーズである。このように、予測フェーズで入力される入力データは、学習フェーズで入力される学習データと異なっている。
【0019】
機械学習装置300は、I/F部310と、データ保持部320と、システムバス330と、1つまたは複数のプロセッサ340と、1つまたは複数のメモリ350とを含む。I/F部310は、車両200から送信された加速度データを取得するためのインターフェースである。
【0020】
データ保持部320は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、以下に示すプロセッサ340の処理に必要な様々な情報を保持する。例えば、データ保持部320には、学習フェーズで使用される学習データが保持されている。システムバス330は、I/F部310、データ保持部320、プロセッサ340、メモリ350を電気的に接続し、これらの間でデータを伝送する伝送路である。
【0021】
プロセッサ340は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ350は、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0022】
本実施形態の機械学習装置300によれば、学習フェーズにおいて入力データと教師データとをAIモデルに入力させることで、入力データから予測した評点が教師データに近づくように機械学習が行われ、学習済みモデルが構築される。これにより、予測フェーズにおいて、入力データとして加速度波形を学習済みモデルに入力させることで、学習済みモデルにより適切に予測された評点を出力させることができる。その結果、学習済みモデルがベテランドライバの代わりに車両走行時の官能評価を行うことができ、適合定数の設定のために必要な工数を削減することができる。
【0023】
ところで、AIモデルの学習において、教師データにばらつきがあると、AIモデルを正しく学習させることができなくなるという問題が発生する場合がある。教師データのばらつきは、類似した形状を有する加速度波形群において、ベテランドライバが評価し、数値化した評点のうち最も信頼性の高い真値としての評点からのずれである。教師データのばらつきは、例えば、類似する加速度データに対して異なるベテランドライバが異なる評点を付けたときに生じ得る。そこで、本実施形態の機械学習装置300は、学習フェーズにおいて教師データのばらつきを補正する補正処理を行う。以下、本実施形態の機械学習装置300における教師データの補正処理について詳細に説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る機械学習装置300の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、図2に示されるように、機械学習装置300は、加速度波形取得部300a、教師データ取得部300b、グループ化部300c、補正部300d、学習部300e、予測評点取得部300fを含む。
【0025】
プロセッサ340は、メモリ350に含まれるプログラムと協働し、メモリ350に含まれるプログラムを実行することで、上記の加速度波形取得部300a、教師データ取得部300b、グループ化部300c、補正部300d、学習部300e、予測評点取得部300fにより行われる以下で説明する処理を含む各種処理を実現する。
【0026】
加速度波形取得部300aは、加速度センサ210から取得した車両200の加速度データを基に、車両200を走行させた際の加速度波形を取得する。教師データ取得部300bは、加速度波形取得部300aで取得された加速度波形を評価した評点である教師データを取得する。
【0027】
なお、本実施形態では、加速度波形取得部300aは、1または複数のベテランドライバが車両200を複数回走行した際の複数種類の加速度波形を取得し、教師データ取得部300bは、当該複数種類の加速度波形のそれぞれをベテランドライバが評価した複数種類の教師データを取得する。
【0028】
グループ化部300cは、加速度波形取得部300aで取得された複数種類の加速度波形を、当該加速度波形の形状に基づいてグループ化する。グループ化部300cの詳細な内容については後述する。補正部300dは、グループ化部300cによりグループ化された加速度波形の評点を補正規則に基づいて補正する。補正部300dの詳細な内容については後述する。
【0029】
学習部300eは、補正部300dにより補正された評点の教師データに基づいて、上述した学習フェーズにおいてAIモデルを学習させる。学習部300eによるAIモデルの学習が行われることで、学習済みモデルが構築される。
【0030】
予測評点取得部300fは、上述した予測フェーズにおいて、加速度波形取得部300aで取得された加速度波形を、学習部300eにより構築された学習済みモデルに入力させることで当該加速度波形の評点を予測させる。そして、予測評点取得部300fは、学習済みモデルにより予測され、出力された評点を取得する。
【0031】
図3は、入力データである加速度波形と、当該加速度波形を評価した評点である教師データの一例を示すグラフである。図3では、加速度波形の一例として、9種類の加速度波形L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9が示されている。また、図3中、一点鎖線は評点2、実線は評点3、破線は評点4を表している。
【0032】
図3に示す例では、加速度波形L1は、評点2と評価され、加速度波形L2は、評点3と評価され、加速度波形L3は、評点2と評価されている。また、加速度波形L4は、評点4と評価され、加速度波形L5は、評点4と評価され、加速度波形L6は、評点3と評価されている。また、加速度波形L7は、評点3と評価され、加速度波形L8は、評点3と評価され、加速度波形L9は、評点3と評価されている。
【0033】
学習フェーズにおいて、加速度波形取得部300aは、加速度波形L1~L9を取得する。また、教師データ取得部300bは、加速度波形L1、L3に紐付けられた評点2、加速度波形L2、L6、L7、L8、L9に紐付けられた評点3、加速度波形L4、L5に紐付けられた評点4を取得する。
【0034】
学習フェーズにおいて、グループ化部300cは、加速度波形取得部300aで取得された複数種類の加速度波形を、当該加速度波形の形状に基づいてグループ化する。本実施形態では、グループ化部300cは、複数種類の加速度波形をK-Shape法を用いてグループ化する。K-Shape法は、時系列データを対象とした形状ベースのクラスタリング手法であり、類似形状を自動的にグループ化する手法である。なお、本実施形態では、グループ化部300cは、複数種類の加速度波形をグループ化するためにK-Shape法を使用しているが、加速度波形の形状に基づいてグループ化できれば他の手法でもよくこれに限定されない。
【0035】
図3に示される9種類の加速度波形L1~L9は、K-Shape法により、類似形状ごとに例えば3つのグループA、グループB、グループCに分類される。このK-Shape法により分類されるグループの数は、評点の種類の数に応じて決定される。具体的に、評点の種類の数が多いほど、分類されるグループの数が多くなる。図3に示される例では、評点が3種類であるため、K-Shape法により分類されるグループの数は、3つに決定される。ただし、これに限定されず、K-Shape法により分類されるグループの数は、評点の種類の数によらず、類似形状の数だけ分類されるようにしてもよい。
【0036】
図4は、グループAに分類された加速度波形L1~L3を示すグラフである。図5は、グループBに分類された加速度波形L4~L6を示すグラフである。図6は、グループCに分類された加速度波形L7~L9を示すグラフである。
【0037】
図4に示すように、加速度波形L1~L9のうち第1の類似形状を有する加速度波形L1~L3がグループAに分類される。また、図5に示すように、加速度波形L1~L9のうち第2の類似形状を有する加速度波形L4~L6がグループBに分類される。また、図6に示すように、加速度波形L1~L9のうち第3の類似形状を有する加速度波形L6~L9がグループCに分類される。
【0038】
図4に示されるように、グループAにおいて、加速度波形L1は、評点2と評価され、加速度波形L2は、評点3と評価され、加速度波形L3は、評点2と評価されており、第1の類似形状を有する加速度波形L1~L3の教師データにばらつきが生じている。
【0039】
図5に示されるように、グループBにおいて、加速度波形L4は、評点4と評価され、加速度波形L5は、評点4と評価され、加速度波形L6は、評点3と評価されており、第2の類似形状を有する加速度波形L4~L6の教師データにばらつきが生じている。
【0040】
そこで、補正部300dは、ばらつきが生じている教師データを補正すべく、グループ化部300cによりグループ化された加速度波形の評点を補正規則に基づいて補正する。ここで、補正規則は、第1の補正規則と、第2の補正規則とを含む。第1の補正規則は、グループ化された加速度波形のうち、同じ評点に評価された加速度波形の数が最も多い加速度波形の評点を基準とすることである。なお、加速度波形の評点が整数ではなく実数である場合、補正部300dは、グループ内の加速度波形の評点を四捨五入して整数に補正するようにしてもよい。例えば、グループ内のある加速度波形の評点が2.312である場合、補正部300dは、その加速度波形の評点を2に補正するようにしてもよい。
【0041】
図4に示す例では、グループ化された加速度波形L1~L3のうち、加速度波形L1、L3は、評点2に評価され、加速度波形L2は、評点3に評価されている。補正部300dは、第1の補正規則に従って、グループ化された加速度波形L1~L3のうち、同じ評点に評価された加速度波形の数が最も多い加速度波形L1、L3の評点2を基準とし、加速度波形L2の評点3を評点2に補正する。これにより、グループAの加速度波形L1~L3の評点は、全て同じ評点2に補正される。
【0042】
図5に示す例では、グループ化された加速度波形L4~L6のうち、加速度波形L4、L5は、評点4に評価され、加速度波形L6は、評点3に評価されている。補正部300dは、第1の補正規則に従って、グループ化された加速度波形L4~L6のうち、同じ評点に評価された加速度波形の数が最も多い加速度波形L4、L5の評点4を基準とし、加速度波形L6の評点3を評点4に補正する。これにより、グループBの加速度波形L4~L6の評点は、全て同じ評点4に補正される。
【0043】
なお、図6に示す例では、グループ化された加速度波形L7~L9のうち、加速度波形L7~L9は、全て同じ評点3に評価されている。グループ内の全ての加速度波形の評点が同じである場合、補正部300dによる評点の補正が行われずに、評点が維持される。したがって、グループCの加速度波形L7~L9の評点は全て評点3に維持される。
【0044】
図7は、補正部300dが図3に示される教師データを補正した後の状態を示すグラフである。図7に示されるように、グループAに属する加速度波形L1~L3の評点は、補正部300dにより全て同じ評点2に補正されている。また、グループBに属する加速度波形L4~L6の評点は、補正部300dにより全て同じ評点4に補正されている。その結果、各グループに属する加速度波形の評点は全て同じ評点に統一されるように補正され、各グループにおいて評点のばらつきが解消されている。
【0045】
このように、補正部300dは、グループ内でばらつきが生じている教師データを補正することができ、グループ内の教師データを全て同じ評点に統一させることができる。なお、補正部300dは、第1の補正規則に従って加速度波形L1~L9の評点を補正できなかった場合、第2の補正規則に従って加速度波形L1~L9の評点を補正する。
【0046】
例えば、補正部300dは、グループ化された加速度波形のうち、同じ評点に評価された加速度波形の最大の数が同数となる場合、第2の補正規則に従って加速度波形L1~L9の評点を補正する。第2の補正規則は、グループ化された加速度波形の最大振幅の大きさに応じて予め定められた評点に補正することである。
【0047】
図8は、グループ化部300cにより分類されたグループA、B,Cとは別のグループDの加速度波形L10~L13を示すグラフである。加速度波形L10~L13は、グループ化部300cにより互いに類似形状を有する加速度波形としてグループDに分類された加速度波形である。
【0048】
図8に示す例では、グループ化された加速度波形L10~L13のうち、加速度波形L10、L11は、評点2に評価され、加速度波形L12、L13は、評点3に評価されている。このように、グループDでは、グループ化された加速度波形L10~L13のうち、同じ評点に評価された加速度波形の最大の数が同数となる。
【0049】
この場合、補正部300dは、第1の補正規則に従って加速度波形L10~L13の評点である教師データを補正できないとして、第2の補正規則に従って加速度波形L10~L13の評点である教師データを補正する。
【0050】
図8に示す例では、補正部300dは、第2の補正規則に従って、グループ化された加速度波形L10~L13の最大振幅が第1の閾値以上であるか否かの判定を行う。最大振幅が第1の閾値以上である場合、補正部300dは、グループDの加速度波形L10~L13の評点を全て評点2に統一するように補正する。
【0051】
一方、最大振幅が第1の閾値未満である場合、補正部300dは、グループ化された加速度波形L10~L13の最大振幅が第2の閾値以上であるか否かの判定を行う。ここで、第2の閾値は、第1の閾値より小さい値である。なお、第1の閾値および第2の閾値は、予め実験や官能評価により設定される値である。
【0052】
最大振幅が第1の閾値未満かつ第2の閾値以上である場合、補正部300dは、グループDの加速度波形L10~L13の評点を全て評点3に統一するように補正する。一方、最大振幅が第2の閾値未満である場合、補正部300dは、グループDの加速度波形L10~L13の評点を全て評点4に統一するように補正する。
【0053】
このように、本実施形態の補正部300dは、教師データにばらつきが生じている場合、学習フェーズにおいて教師データのばらつきを補正する補正処理を行う。この補正処理により、教師データのばらつきを無くすことができ、AIモデルを正しく学習させることができる。
【0054】
なお、他の加速度波形の形状と類似形状を有さずに、グループ化された加速度波形が単数である場合、当該単数の加速度波形の評点について、補正部300dによる補正が行われずに、その評点が維持される。ただし、これに限定されず、補正部300dは、第2の補正規則に基づいて、グループ内の単数の加速度波形の評点を補正するようにしてもよい。
【0055】
学習部300eは、補正部300dにより補正された評点の教師データに基づいて、学習フェーズにおいてAIモデルを学習させる。これにより、学習部300eにおいて、ばらつきが補正された教師データを基にAIモデルを学習させることで、AIモデルを正しく学習させることができ、正しく学習された学習済みモデルが構築される。
【0056】
予測評点取得部300fは、予測フェーズにおいて、加速度波形取得部300aで取得された加速度波形を、学習部300eにより構築された学習済みモデルに入力させることで予測された評点を取得する。
【0057】
以上、本実施形態の機械学習装置300によれば、学習フェーズにおいて入力データとばらつきが補正された教師データとをAIモデルに入力させることで、AIモデルを正しく学習させることができ、正しく学習された学習済みモデルが構築される。これにより、予測フェーズにおいて、入力データとして加速度波形を学習済みモデルに入力させることで、学習済みモデルにより適切に予測された評点を出力させることができる。その結果、学習済みモデルがベテランドライバの代わりに車両走行時の官能評価を行うことができ、適合定数の設定のために必要な工数を削減することができる。
【0058】
図9は、本実施形態に係る機械学習装置300の処理の流れを示すフローチャートである。図9に示すように、加速度波形取得部300aは、車両200を走行させた際の加速度データを基に、車両200の加速度波形を取得する(ステップS100)。
【0059】
教師データ取得部300bは、取得した加速度波形を評価した評点である教師データを取得する(ステップS200)。グループ化部300cは、取得した加速度波形を、当該加速度波形の形状に基づいてグループ化する(ステップS300)。
【0060】
補正部300dは、グループ化された加速度波形の評点を第1の補正規則あるいは第2の補正規則に基づいて補正する(ステップS400)。学習部300eは、補正された評点の教師データに基づいてAIモデルを学習させる(ステップS500)。予測評点取得部300fは、学習されたAIモデルに車両200を走行させた際の加速度波形を入力することで予測された評点を取得する(ステップS600)。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
なお、上述した本実施形態に係る機械学習装置300による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの組合せのうちいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部または外部に設けられる非一時的な記憶媒体(non-transitory media)に予め格納される。そして、プログラムは、例えば、非一時的な記憶媒体(例えば、ROM)から一時的な記憶媒体(例えば、RAM)に読み出され、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0063】
上記各装置の各機能を実現するためのプログラムを作成し、上記各装置のコンピュータにインストールすることが可能である。プロセッサが、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、上記各機能の処理が実行される。このとき、複数のプロセッサによりプログラムを分担して実行してもよいし、1つのプロセッサでプログラムを実行してもよい。また、通信ネットワークにより相互に接続された複数のコンピュータを用いるクラウドコンピューティングにより、上記各装置の各機能を実現してもよい。なお、プログラムは、外部装置から通信ネットワークを通じた配信により、各装置のコンピュータに提供されて、インストールされてもよい。
【符号の説明】
【0064】
100 機械学習システム
200 車両
210 加速度センサ
300 機械学習装置
300a 加速度波形取得部
300b 教師データ取得部
300c グループ化部
300d 補正部
300e 学習部
300f 予測評点取得部
310 I/F部
320 データ保持部
330 システムバス
340 プロセッサ
350 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9