(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015923
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240130BHJP
G16H 10/20 20180101ALI20240130BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118307
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】515099908
【氏名又は名称】株式会社サイキンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢井 悠
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 諭史
(72)【発明者】
【氏名】福島 崇芳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 侑相
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】腸内細菌叢のタイプと生活習慣を元に花粉症の改善策を提案できる。
【解決手段】情報提供方法は、コンピュータに、花粉症の症状を有するユーザについて、腸内細菌叢の検査データを取得し、検査データを腸内細菌叢のタイプに分類した分類結果を取得し、分類結果を入力として、予めタイプに対して花粉症の重症度と所定の生活習慣に関する質問に対する回答結果とを関連付けて分析した相関関係に基づいて、ユーザに対する、相関関係に基づく花粉症の改善提案と分類結果とを出力する、処理を実行させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
花粉症の症状を有するユーザについて、腸内細菌叢の検査データを取得し、
前記検査データを腸内細菌叢のタイプに分類した分類結果を取得し、
前記分類結果を入力として、予め前記タイプに対して前記花粉症の重症度と所定の生活習慣に関する質問に対する回答結果とを関連付けて分析した相関関係に基づいて、前記ユーザに対する、前記相関関係に基づく花粉症の改善提案と前記分類結果とを出力する、
処理を実行させる情報提供方法。
【請求項2】
前記相関関係は、分析対象のユーザから、前記分類結果と、花粉症の症状に関する質問に対する第1回答結果と、生活習慣に関する質問に対する第2回答結果とを用いて、予め学習されており、
前記花粉症の症状に関する質問項目は、花粉症の有無及び重症度を少なくとも含み、前記生活習慣に関する質問項目は、食事の摂取習慣及び前記所定の食事の種類ごとの摂取頻度を含み、
前記相関関係により、前記ユーザの前記分類結果に応じて、前記生活習慣に関する前記花粉症の改善提案を出力する、
請求項1に記載の情報提供方法。
【請求項3】
前記タイプの型は、Bacteroides優勢型と、Ruminococcus優勢型と、Prevotella優勢型とし、
前記相関関係は、前記花粉症の重症度及び前記生活習慣の回答結果の相関関係の分析により、前記型のそれぞれに対する花粉症を改善するための前記生活習慣の対策として、前記Bacteroides優勢型の一部には食事の摂取習慣の改善、前記Ruminococcus優勢型には前記所定の食事の種類のうちの特定の食事の摂取頻度の増加、前記Prevotella優勢型の一部には食事における前記所定の食事の種類のうちの特定の食事の摂取頻度の増加、がそれぞれ花粉症の改善に有効であることが学習されており、
前記ユーザの前記分類結果に応じて前記対策を前記花粉症の改善提案として出力する、
請求項2に記載の情報提供方法。
【請求項4】
前記生活習慣に関する質問は食事習慣に関する質問項目を含み、前記食事習慣に関する質問項目には、朝食の摂取の有無、及び食事の種類ごとの摂取頻度を少なくとも含んでおり、
前記相関関係は、分析のために予め収集された前記腸内細菌叢の検査データから得られた前記タイプの型に対する、前記収集された前記第1回答結果及び前記第1回答結果における、前記花粉症の重症度と、前記生活習慣に関する質問の回答結果とのクラスタリングにより学習されている、
請求項3に記載の情報提供方法。
【請求項5】
前記生活習慣に関する質問において、更に、運動習慣に関する質問項目、及び便通状況に関する質問項目、飲酒習慣に関する質問項目、喫煙習慣に関する質問項目、睡眠習慣に関する質問項目、及び既往歴に関する質問項目の少なくとも一つを含むようにして、前記相関関係がクラスタリングにより学習されている請求項4に記載の情報提供方法。
【請求項6】
コンピュータに、
花粉症の症状を有するユーザについて、腸内細菌叢の検査データを取得し、
前記検査データを腸内細菌叢のタイプに分類した分類結果を取得し、
前記分類結果を入力として、予め前記タイプに対して前記花粉症の重症度と所定の生活習慣に関する質問に対する回答結果とを関連付けて分析した相関関係に基づいて、前記ユーザに対する、前記相関関係に基づく花粉症の改善提案と前記分類結果とを出力する、
処理を実行させる情報提供プログラム。
【請求項7】
花粉症の症状を有するユーザについて、腸内細菌叢の検査データを取得する取得部と、
前記検査データを腸内細菌叢のタイプに分類した分類結果を取得する分類部と、
前記分類結果を入力として、予め前記タイプに対して前記花粉症の重症度と所定の生活習慣に関する質問に対する回答結果とを関連付けて分析した相関関係に基づいて、前記ユーザに対する、前記相関関係に基づく花粉症の改善提案と前記分類結果とを出力する分析出力部と、
を含む情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体内の菌叢状態の検査に関する技術がある。また、花粉症の改善のための研究及び技術がある。
【0003】
例えば、腸内細菌に関する複数の指標を用いて腸内フローラスコアを算出する技術がある(特許文献1参照)。この技術では、ユーザのヒト腸内細菌に関する情報を検査機関からネットワークを介して取得することが記載されている。
【0004】
また、花粉症改善に関する技術として、花粉症の処方探索に関する技術がある(特許文献2参照)。この技術では、各症状と、3段階以上の第1連関度を参照し、入力ステップにおいて入力された症状に基づき、1以上の処方を探索する探索ステップを有している。また、改善症状の入力により、以前の処方に基づき、新たな処方を探索することを行っている。
【0005】
また、花粉症改善に関する研究として、腸内細菌と花粉症を含むアレルギーとの関わりに関する研究がある(非特許文献1参照)。この研究では、花粉症患者の腸内細菌叢の多様化を促し、細菌叢の構成を変動させることで一部のアレルギー症状を緩和させることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-078273号公報
【特許文献2】特開2018-197972号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】タカナシ乳業株式会社商品研究所,"プロバイオティクスとアレルギー: 腸内細菌との関わり",アレルギー 67 (3), 197-201, 2018, 一般社団法人 日本アレルギー学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術では、花粉症の処方探索が行われている。もっとも、従来技術では、腸内細菌叢の状態に対して、ユーザにどのような花粉症の処方や改善策を提供するのが望ましいかは見出されていない。そのため、ユーザ個々で異なる腸内細菌叢に応じた花粉症の改善策を提供することが求められる。
【0009】
本開示は上記事情を鑑みてなされたものであり、腸内細菌叢のタイプと生活習慣を元に花粉症の改善策を提案できる情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の情報提供方法は、コンピュータに、花粉症の症状を有するユーザ について、腸内細菌叢の検査データを取得し、前記検査データを腸内細菌叢の タイプに分類した分類結果を取得し、前記分類結果を入力として、予め前記タイプに対して前記花粉症の重症度と所定の生活習慣に関する質問に対する回答結果とを関連付けて分析した相関関係に基づいて、前記ユーザに対する、前記相関関係に基づく花粉症の改善提案と前記分類結果とを出力する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置によれば、腸内細菌叢のタイプと生活習慣を元に花粉症の改善策を提案できる、という効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、学習装置及び情報提供装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の学習装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、腸内細菌叢のタイプのクラスタリングの一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、対策の有無による花粉症の症状の重症度合いの改善状況を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の情報提供装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、学習装置による学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、情報提供装置による情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、クラスタリングによるタイプごとのロジスティクス回帰分析の検証結果である。
【
図9】
図9は、Bacteroides優勢型のサブクラスタである。
【
図10】
図10は、Bacteroides優勢型のサブクラスタについてのロジスティクス回帰分析の検証結果である。
【
図11】
図11は、Prevotella優勢型のサブクラスタである。
【
図12】
図12は、Prevotella優勢型のサブクラスタについてのロジスティクス回帰分析の検証結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
本開示の実施形態の概要を説明する。本実施形態では、クラスタリングによる腸内細菌叢のタイプの類型化を行うと共に、アンケートにより花粉症及び生活習慣に関する質問に対する回答結果を収集し、腸内細菌叢のタイプごとに、花粉症の改善に有効な分析した相関関係を求めた。これにより、本実施形態では、花粉症の症状を有するユーザを腸内細菌叢のタイプに分類し、タイプ別に応じた花粉症の改善提案を行う。なお、腸内細菌叢のタイプは、例えば、腸内細菌の組成比の類似度されたエンテロタイプを一例として説明する。相関関係の分析においては、ベースライン時の腸内細菌叢のタイプと生活習慣の組み合わせ(交互作用効果)が、その後の花粉症症状の重症度と関連するかを検証している。これにより、腸内細菌叢のタイプと生活習慣から花粉症の症状を説明可能とした。なお、花粉症の重症度の評価方法やスコアリングについては、例えば、参考文献1に記載の診療ガイドラインを使用すればよい。
[参考文献1]:「(旧版)鼻アレルギー診療ガイドライン -通年性鼻炎と花粉症-鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会(2005年刊改訂第5版)」URL:"https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0024/G0000062/0023"
【0015】
本開示の実施形態は、学習装置と予測装置とに分けてそれぞれについて説明する。
【0016】
図1は、学習装置100及び情報提供装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、学習装置100及び情報提供装置200は同様のハードウェア構成とすることができる。
【0017】
図1に示すように、学習装置100は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0018】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、予測プログラムが格納されている。
【0019】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0020】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0021】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能してもよい。
【0022】
通信インタフェース17は、端末等の他の機器と通信するためのインタフェースである。当該通信には、例えば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0023】
情報提供装置200についても同様に、CPU21、ROM22、RAM23、ストレージ24、入力部25、表示部26及び通信I/F27を有する。各構成は、バス29を介して相互に通信可能に接続されている。ROM22又はストレージ24には、予測プログラムが格納されている。ハードウェア構成の各部についての説明は、学習装置100と同様であるため省略する。
(学習装置)
学習装置100の各機能構成について説明する。
図2は、本実施形態の学習装置100の構成を示すブロック図である。各機能構成は、CPU11がROM12又はストレージ14に記憶された学習プログラムを読み出し、RAM13に展開して実行することにより実現される。
【0024】
図2に示すように、学習装置100は機能的には、学習データ記憶部102と、学習情報記憶部104と、取得部110と、クラスタリング部112と、相関関係学習部114とを含んで構成される。
【0025】
取得部110は、学習用データを取得し、学習データ記憶部102に格納する。学習データ記憶部102には、取得部110で取得された学習用データが格納される。学習用データは、分析対象のユーザについて収集した、腸内細菌叢の検査データ、及びアンケートによる質問の回答結果である。また、分析対象のユーザとは、花粉症の症状ありのユーザ群と花粉症の症状なしのユーザ群である。アンケートは花粉症及び生活習慣のそれぞれである。回答結果は、花粉症の症状に関する質問に対する第1回答結果、及び生活習慣に関する質問に対する第2回答結果を用いる。学習用データの取得先は、腸内細菌叢の状態を示す検査データから構築済みの既存データベース、外部のデータベース等、適宜、必要な取得先を設定できる。
【0026】
クラスタリング部112は、分析対象のユーザの腸内細菌叢の検査データを用いて、腸内細菌叢のタイプのクラスタリングを行い、分類を生成する。クラスタリングには、非階層型クラスタリングk―means法を用い、指標にはCHインデックス(Calinski-Harabasz index)を用いた。この指標は、クラスタ間距離がクラスタ内距離より大幅に大きい場合に、クラスタリングがより適切であるという仮説を統計量として計算している。CHインデックスが最大となるクラスタ数kを選択する。腸内細菌叢のタイプの分類に関する情報は学習情報記憶部104に保存する。なお、ここでのクラスタリングでは、花粉症や生活習慣に関する情報は用いていない。
【0027】
図3は、腸内細菌叢のタイプのクラスタリングの一例を示すグラフである。本実施形態では、腸内細菌叢のタイプは、小分類のグループでは凡例の6つに分類され、大分類において、3タイプに分類される。腸内細菌叢のタイプは、A1:Bacteroides優勢型と、A2:Ruminococcus優勢型と、A3:Prevotella優勢型とに分類される。横軸は1に近いほどPrevotella優勢であることを示し、縦軸は1に近いほどBacteroides優勢、-1に近いほどRuminococcus優勢であることを示す。
図3のグラフでは、分析対象のユーザがプロットされており、クラスタリング及び主成分分析による分類を行った。また、Bacteroides優勢型はB1型とB2型、Prevotella優勢型はP1型とP2型に分けられる。このうち、本実施形態では後述する検証の結果から、Bacteroides優勢型はB2型、Prevotella優勢型はP1型に着目する。なお、タイプは大分類、型は中分類である。ただし、R型の場合はタイプ及び型は区別しない。また、型のB1型、B2型、P1型、及びP2型のサブクラスタの分類の例については後述する。
【0028】
相関関係学習部114は、花粉症の回答結果における重症度及び生活習慣の回答結果の分析により、花粉症の改善に有効な対策を示すための相関関係を学習する。相関関係は、菌叢状態のタイプに対して花粉症の重症度と所定の生活習慣に関する質問に対する回答結果とを関連付けて分析される。そのため、学習された相関関係からは、菌叢状態のタイプの型のそれぞれに対する花粉症を改善に有効な生活習慣の対策が求められる。
【0029】
ここで、花粉症の症状に関する質問項目、及び生活習慣に関する質問項目の例を挙げる。花粉症の症状に関する質問項目は、例えば、症状の時期の周期性の有無、目のかゆみの有無、症状があるときのくしゃみの回数、症状があるときの鼻をかむ回数、鼻づまりの程度である。これらは一例であり、上述した参考文献1の評価手法に応じた花粉症の重症度が把握可能な質問であればよい。生活習慣に関する質問項目には、少なくとも、食事の摂取習慣、及び所定の食事の種類ごとの摂取頻度を用い、また、睡眠習慣に関する質問項目を加えてもよい。食事の摂取習慣は、例えば、3食食べる頻度、朝食を抜く頻度、外食の頻度、中食の頻度である。所定の食事の種類は、例えば、緑黄色野菜、淡色野菜、牛乳・チーズ等の乳製品、及び動物性タンパク質類、等が特定の食事として挙げられる。摂取頻度は、例えば、毎日2回以上、1日一回以上、週4~6回、週1~3回、及び摂取なし等である。睡眠の質の質問は、例えば、就寝時間、寝床についてから就寝できるまでの時間、起床時間、睡眠時間、目覚めの良さ、睡眠の質の自覚度合い、診断の有無等である。睡眠習慣に関する質問項目により、睡眠の質の良し悪しを判定できる。
【0030】
なお、生活習慣に関する質問項目には、この他にも、運動習慣に関する質問項目、及び便通状況に関する質問項目、飲酒習慣に関する質問項目、喫煙習慣に関する質問項目、及び既往歴に関する質問項目を含めてもよい。相関関係学習部114は、これらの質問項目の回答結果も含めて、クラスタリングにより相関関係を学習してもよい。
【0031】
相関関係学習部114の学習では、花粉症症状の有病率及び重症度スコアを目的変数、菌叢状態のタイプ及び生活習慣の交互作用項を説明変数に設定した多変量解析(本実施形態ではロジスティクス回帰分析及びポアソン回帰分析、以下同様)で検証を行った。検証の結果、生活習慣についての、花粉症の症状を改善するための対策が、菌叢状態のタイプ別に分析した。Bacteroides優勢型のB2型では、食事の摂取習慣として朝食欠食の改善が、花粉症の改善に有効であった。また、Ruminococcus優勢型(R型)には所定の食事の種類のうちの特定の食事として納豆類の摂取頻度の増加が、Prevotella優勢型のP1型には食事における所定の食事の種類のうちの特定の食事として牛乳・チーズの摂取頻度の増加が花粉症の改善に有効であった。なお、相関関係学習部114は、ロジスティック回帰モデル及びポアソン回帰モデルを相関関係として学習情報記憶部104に格納する。
【0032】
また、上記の改善の対策を実施しない場合と、改善の対策を実施した場合とで、追跡調査を行った。
図4は、対策の有無による花粉症の症状の重症度合いの改善状況を示す図である。因果推論モデルの差分の差(DID)検定の結果であり、縦軸は花粉症重症度、横軸は実施した年を示す。2020年(q2020-1)は対策なし、2021年は対策の実施前後を実施前(q2021-1)、実施後(q2021-2)で示している。追跡調査によれば、何れのタイプでも有意に重症度が低下していることが確認できている。なお、本出願人が上述した多変量解析の検証において、B1型については、睡眠の質の改善が有効とされたが、追跡調査において有意でなく、P2型については、動物性タンパク質類の摂取が有効とされたが、追跡調査において有意でないとの結果となった。
【0033】
(情報提供装置)
情報提供装置200の各機能構成について説明する。
図5は、本実施形態の情報提供装置200の構成を示すブロック図である。各機能構成は、CPU21がROM22又はストレージ24に記憶された情報提供プログラムを読み出し、RAM23に展開して実行することにより実現される。
【0034】
図5に示すように、情報提供装置200は機能的には、記憶部202と、取得部210と、分類部212と、分析出力部214とを含んで構成される。
【0035】
記憶部202には、予め学習装置100で得られた、腸内細菌叢のタイプの分類に関する情報、及び腸内細菌叢のタイプの型に対しての相関関係が格納されている。
【0036】
取得部210は、花粉症の症状を有するユーザについて、腸内細菌叢の検査データを取得する。花粉症の症状を有するかは検査データと併せたアンケート等により取得すればよく、上述した参考文献1の評価手法を用いればよい。
【0037】
分類部212は、記憶部202の分類に関する情報を参照して、ユーザの検査データを腸内細菌叢のタイプに分類した分類結果を取得する。
【0038】
分析出力部214は、分類部212の分類結果を入力として、記憶部202の相関関係を参照して、ユーザに対する、相関関係に基づく花粉症の改善提案と分類結果とを出力する。ユーザの腸内細菌叢のタイプの分類結果が、Bacteroides優勢型のB2型である場合は、食事の摂取習慣として朝食欠食の改善を花粉症の改善提案として出力する。また、ユーザの分類結果が、Ruminococcus優勢型(R型)である場合には、所定の食事の種類のうちの特定の食事として納豆類の摂取頻度の増加を、花粉症の改善提案として出力する。また、ユーザの分類結果が、Prevotella優勢型のP1型である場合には、所定の食事の種類のうちの特定の食事として牛乳・チーズの摂取頻度の増加を、花粉症の改善提案として出力する。改善提案としては、Bacteroides優勢型のB2型には「朝食を毎日採ることで花粉症の症状が改善する見込みがあります」等の説明である。Ruminococcus優勢型(R型)には「納豆類を毎日食べると花粉症の症状が改善する見込みがあります」等の説明である。Prevotella優勢型のP1型「牛乳・チーズを毎日採ると花粉症の症状が改善する見込みがあります」等の説明である。
【0039】
なお、分析出力部214は、分類結果が、B1型及びP2型であった場合には、例えば、所定の食事の種類のうちの特定の食事として納豆類の摂取頻度の増加を、花粉症の改善提案として出力するようにしてもよい。
【0040】
(処理の流れ)
次に、学習装置100及び情報提供装置200の作用について説明する。
【0041】
図6は、学習装置100による学習処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から学習プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、学習処理が行なわれる。CPU11が学習装置100の各部として機能することにより、以下の処理を実行させる。
【0042】
ステップS100において、CPU11は、学習用データを取得し、学習データ記憶部102に格納する。学習用データは、分析対象のユーザについて収集した、腸内細菌叢の検査データ、及びアンケートによる質問の回答結果である。回答結果は、花粉症の症状に関する質問に対する第1回答結果、及び生活習慣に関する質問に対する第2回答結果を用いる。
【0043】
ステップS102において、CPU11は、分析対象のユーザの腸内細菌叢の検査データを用いて、腸内細菌叢のタイプのクラスタリングを行い、分類を生成する。腸内細菌叢のタイプの分類に関する情報は学習情報記憶部104に保存する。
【0044】
花粉症の回答結果における重症度及び生活習慣の回答結果の分析により、花粉症の改善に有効な対策を示すための相関関係を学習する。ロジスティック回帰モデル及びポアソン回帰モデルを相関関係として学習情報記憶部104に格納する。
【0045】
以上説明したように本実施形態の学習装置100によれば、腸内細菌叢のタイプと生活習慣を元に花粉症の改善策を提案できる相関関係を学習できる。
【0046】
次に、情報提供装置200の作用について説明する。
図7は、情報提供装置200による情報提供処理の流れを示すフローチャートである。CPU21がROM22又はストレージ24から情報提供プログラムを読み出して、RAM23に展開して実行することにより、情報提供処理が行なわれる。CPU11が情報提供装置200の各部として機能することにより、以下の処理を実行させる。
【0047】
ステップS200において、CPU21は、花粉症の症状を有するユーザについて、腸内細菌叢の検査データを取得する。
【0048】
ステップS202において、CPU21は、記憶部202の分類に関する情報を参照して、ユーザの検査データを腸内細菌叢のタイプに分類した分類結果を取得する。
【0049】
ステップS204において、CPU21は、分類結果を入力として、記憶部202の相関関係を参照して、ユーザに対する、相関関係に基づく花粉症の改善提案と分類結果とを出力する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る情報提供装置200は、腸内細菌叢のタイプと生活習慣を元に花粉症の改善策を提案できる。
【0051】
なお、菌叢状態のタイプの型について補足的に説明する。
図8は、クラスタリングによるタイプごとの多変量解析の検証結果である。なお、各質問項目は一部を抜粋したものである。Bacteroides優勢型と、Ruminococcus優勢型と、Prevotella優勢型それぞれについて、花粉症の重症度と各質問項目の回答結果の相関を示している。ロジスティック回帰分析により、オッズ比が高い又は低い場合を有意な傾向を示す部分として太字で示している。高い値の場合に花粉症の有症状率が高い傾向、低い値の場合に花粉症の有症状率が低い傾向を示している。Ruminococcus優勢型(R型)には所定の食事の種類のうちの特定の食事として納豆類の摂取が直近で1日1回以上である場合に、花粉症の有症状率が低い傾向にあることがわかった。もっとも、この相関からは、Bacteroides優勢型、及びPrevotella優勢型について、特徴づけが難しかったため、サブクラスタリングによる再特徴づけを行った。また、質問項目としても他の情報も用いている。
【0052】
図9は、Bacteroides優勢型のサブクラスタである。B1型は酪酸菌優勢型である。B2(M)はMegamonas優勢型、B2(F)はFusobacterium優勢型であり、共にB2型を示す。B2(M)及びB2(F)の傾向についてはここでは省略する。
図10は、Bacteroides優勢型のサブクラスタについての多変量解析の検証結果である。B2型では、朝食を抜くこと、つまり毎日3食食べる習慣がない場合に、花粉症の有症状率が高い傾向にあることが示されている。なお、B1型では睡眠の質が悪い場合に、花粉症の有症状率が高い傾向が示されているが前述した通り追跡調査では有意な結果ではなかった。
【0053】
図11は、Prevotella優勢型のサブクラスタである。P1型はRumino_Faelcali優勢型、P2型はFuso_Megamonas優勢型である。
図12は、Prevotella優勢型のサブクラスタについての多変量解析の検証結果である。P1型では、直近で牛乳・チーズの摂取頻度が高い場合に、花粉症の有症状率が低い傾向にあることが示されている。なお、P2型では動物性タンパク質類の摂取頻度が高い場合に、花粉症の有症状率が低い傾向が示されているが前述した通り追跡調査では有意な結果ではなかった。
【0054】
なお、本実施形態の技術は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0055】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した情報提供処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、並びに、GPU(Graphics Processing Unit)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、情報提供処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、複数のGPU、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0056】
また、上記実施形態では、情報提供プログラムがストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 学習装置
102 記憶部
110 取得部
112 クラスタリング部
114 相関関係学習部
200 情報提供装置
202 記憶部
210 取得部
212 分類部
214 分析出力部