(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159233
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20241031BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20241031BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20241031BHJP
F24F 120/00 20180101ALN20241031BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/61
F24F11/80
F24F120:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075086
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 栄作
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA01
3L260BA25
3L260CA04
3L260CA12
3L260EA08
3L260FA03
(57)【要約】
【課題】対象者の皮膚温度情報を使用して温度制御による快適性を向上する技術を提供する。
【解決手段】空気調和機100は、制御部120、取得部122、及び温調部150を含む。温調部150は、対象空間の温度を制御する。取得部122は、対象空間内に存在する対象者の皮膚温度情報を取得する。制御部120は、取得部122において取得した皮膚温度情報をもとに対象者の末梢部と体幹部の皮膚温度差を算出する。制御部120は、皮膚温度差が上限値と、上限値よりも小さい下限値との間の値となるように温調部150の動作を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の温度を制御する温調部と、
前記対象空間内に存在する対象者の皮膚温度情報を取得する取得部と、
前記取得部において取得した前記皮膚温度情報をもとに前記対象者の末梢部と体幹部の皮膚温度差を算出し、前記皮膚温度差が上限値と、前記上限値よりも小さい下限値との間の値となるように前記温調部の動作を制御する制御部と、
を備える、空気調和機。
【請求項2】
前記皮膚温度差は、前記末梢部の皮膚温度から前記体幹部の皮膚温度を差し引いた値であり、
前記制御部は、前記皮膚温度差が前記上限値より大きい場合、前記温調部の設定温度を第1変更幅で下げ、
前記制御部は、前記皮膚温度差が前記下限値より小さい場合、前記温調部の設定温度を第2変更幅で上げる、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記上限値は第1上限値と定義され、前記下限値は第1下限値と定義され、
前記制御部は、前記第1上限値よりも大きい第2上限値と、前記第1下限値よりも小さい第2下限値とを備え、
前記制御部は、前記皮膚温度差が前記第2上限値より大きい場合、前記第1変更幅より大きい第3変更幅で前記温調部の設定温度を下げ、
前記制御部は、前記皮膚温度差が前記第2下限値より小さい場合、前記第2変更幅より大きい第4変更幅で前記温調部の設定温度を上げる、請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、前記対象者が前記温調部の温度を設定してから所定の期間経過した後に前記取得部が取得した前記皮膚温度情報を使用して前記温調部の動作を制御する、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記末梢部の皮膚温度として、指先または鼻頭の少なくとも1つの皮膚温度が使用され、
前記体幹部の皮膚温度として、額の皮膚温度が使用される、請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和技術に関し、特に皮膚温度情報をもとに運転される空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被空調者の皮膚温度を用いて空調制御がなされる。例えば、特許文献1では、被空調者の上肢末梢部または下肢末梢部の皮膚温度を測定し、皮膚温度の計時変化による皮膚温度差を基準値と比較することによって被空調者の温冷感が推定され、温冷感に応じて快適な空調制御がなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、温冷感を推定するために経時的な皮膚温度の変化を測定している。これは、上肢末梢部または下肢末梢部の血流量変化による急激な皮膚温度変化を利用するためである。皮膚温度変化を利用するためには、被空調者が皮膚温度変化の起こる不快な環境下に一定期間暴露される必要がある。また、被空調者が暑いまたは寒いと感じているときの皮膚温度が基準値として採用された場合、快適な空調制御がなされなくなる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、対象者の皮膚温度情報を使用して温度制御による快適性を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の空気調和機は、対象空間の温度を制御する温調部と、対象空間内に存在する対象者の皮膚温度情報を取得する取得部と、取得部において取得した皮膚温度情報をもとに対象者の末梢部と体幹部の皮膚温度差を算出し、皮膚温度差が上限値と、上限値よりも小さい下限値との間の値となるように温調部の動作を制御する制御部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、又はコンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、対象者の皮膚温度情報を使用して温度制御による快適性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施例に係る空気調和機の設置状況を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の対象者の皮膚温度差と室温との関係を示す図である。
【
図3】
図3(a)-(c)は、
図1の空気調和機における温度制御の概要を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の記憶部に記憶されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図6】
図6は、
図4の空気調和機による制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の概要を説明する。本実施例は、対象者の皮膚温度情報を使用して温度制御を実行する空気調和機に関する。皮膚温度情報として、対象者の末梢部の皮膚温度と、対象者の体幹部の皮膚温度が使用される。末梢部とは、血管収縮によって皮膚温度が低下する部位であり、例えば、四肢または鼻部などである。体幹部とは、皮膚温度が一定に保たれる部位であり、例えば、頭部または胴体などである。対象者が存在する空間の室内温度が対象者にとって快適であれば、末梢部の皮膚温度と体幹部の皮膚温度との差が小さくなる。室内温度が対象者にとって寒ければ、末梢部の皮膚温度は体幹部の皮膚温度に比較して低下する。室内温度が対象者にとって暑ければ、対象者は発汗するので、体幹部の皮膚温度は末梢部の皮膚温度に比較して低下する。そのため、末梢部と体幹部の皮膚温度差を監視すれば、対象者が快適なのか、寒いのか、暑いのか判定可能である。本実施例に係る空気調和機は、末梢部と体幹部の皮膚温度差から快適な温度を判定して空調制御を実行する。
【0011】
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、並びに、ステップ(工程)およびステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
図1は、空気調和機100の設置状況を示す。対象空間10は、空調制御の対象となる部屋である。対象空間10には空気調和機100が設置される。空気調和機100は、皮膚温度センサ110、制御部120、温調部150、及び送風部152を含む。温調部150は、冷房または暖房を実行することによって、対象空間10の温度を制御する。送風部152は、温調部150により温度制御がなされた空気を対象空間10に送風する。温調部150と送風部152の動作は、制御部120により制御される。
【0013】
対象者20は、対象空間10に存在する人である。空気調和機100の皮膚温度センサ110は、対象者20の皮膚温度、例えば末梢部と体幹部の皮膚温度を計測する。制御部120は、計測結果をもとに温調部150または送風部152の動作を制御する。
【0014】
図2は、対象者20の皮膚温度差と室温との関係を示す。横軸は、対象空間10の室温を示し、縦軸は、対象者20の皮膚温度差を示す。皮膚温度差は、対象者20の末梢部の皮膚温度から対象者20の体幹部の皮膚温度を差し引いた値である。皮膚温度差と室温との対応関係は、A領域、B領域、及びC領域を含む。B領域では、室温が変化しても皮膚温度差がほぼ一定、例えば0℃である。また、B領域における室温の低温部分では、室温が低下すると皮膚温度差が0℃から減少し、B領域における室温の高温部分では、室温が上昇すると皮膚温度差が0℃から増加する。このB領域は、心拍変動による放熱量調節可能な領域であり、血管の収縮と発汗が生じない領域である。そのため、B領域は「快適温度域」とも呼ばれる。ここでは、快適温度域においてほぼ一定になる皮膚温度差を「0℃」としたが、この温度は個人差によって「0℃」からずれてもよい。快適温度域においてほぼ一定になる皮膚温度差は「基準温度」とも呼ばれる。本実施例においては、説明を明瞭にするために基準温度を「0℃」とする。
【0015】
A領域は、B領域よりも室温の低温側に配置される。A領域では、室温が低下すると皮膚温度差が減少する。このA領域は、血管収縮により末梢部の皮膚温度が低下する領域である。一方、A領域において、体幹部の皮膚温度の変化は、末梢部の皮膚温度の変化よりも小さい。C領域は、B領域よりも室温の高温側に配置される。C領域では、室温が上昇すると皮膚温度差が増加する。このC領域は、発汗により体幹部の皮膚温度が低下する領域である。一方、C領域において、末梢部の皮膚温度の変化は、体幹部の皮膚温度の変化よりも小さい。本実施例に係る空気調和機100は、
図2に示された皮膚温度差と室温との対応関係を利用して温度制御を実行する。
【0016】
図3(a)-(c)は、空気調和機100における温度制御の概要を示す。
図3(a)-(c)は、
図2と同様に示される。
図3(a)-(c)において、快適温度域における室温の最高温に対する皮膚温度差は「上限値」として定義され、快適温度域における室温の最低温に対する皮膚温度差は「下限値」として定義される。そのため、快適温度域は、皮膚温度差が上限値と下限値の間である範囲として定義される。例えば、上限値は基準温度+2℃とされ、下限値は基準温度-2℃とされる。
図3(a)-(c)では、例えば上限値が「+2℃」とされ、下限値が「-2℃」とされる。
【0017】
図3(a)では、対象者20の皮膚温度差がP1である。P1は下限値よりも低い温度差である。その際、室温は快適温度域よりも低い。このような状況で空気調和機100は、設定温度を現在の値よりも高くして動作する。その結果、室温は快適温度域に向かって上昇する。
図3(b)では、対象者20の皮膚温度差がP2である。P2は上限値と下限値の間の温度差である。その際、室温は快適温度域内である。このような状況で空気調和機100は設定温度を現在の値のまま動作する。その結果、室温は快適温度域内を維持する。
図3(c)では、対象者20の皮膚温度差がP3である。P3は上限値よりも高い温度差である。その際、室温は快適温度域よりも高い。このような状況で空気調和機100は、設定温度を現在の値よりも低くして動作する。その結果、室温は快適温度域に向かって低下する。以下では、このように動作する空気調和機100の構成を説明する。
【0018】
図4は、空気調和機100の構成を示す。空気調和機100は、皮膚温度センサ110、制御部120、取得部122、記憶部140、温調部150、及び送風部152を含む。制御部120は、演算部124、判定部126、出力部128、及び計時部130を含む。
【0019】
皮膚温度センサ110は、対象空間10内を撮像可能なサーマルカメラであり、対象空間10内を撮像する。対象空間10内に対象者20が存在する場合、皮膚温度センサ110は、対象者20を撮像する。皮膚温度センサ110は、撮像した映像を、対象空間10内に存在する対象者20の皮膚温度情報として取得部122に出力する。
【0020】
取得部122は、皮膚温度センサ110から皮膚温度情報を受けつける。取得部122は、皮膚温度情報に対して画像認識処理を実行することによって、映像内の対象者20の指先または鼻頭の少なくとも1つと、対象者20の額とを特定する。取得部122は、皮膚温度情報から、特定した対象者20の指先または鼻頭の少なくとも1つの皮膚温度を末梢部の皮膚温度として取得する。また、取得部122は、皮膚温度情報から、特定した対象者20の額の皮膚温度を体幹部の皮膚温度として取得する。取得部122は、末梢部の皮膚温度と、体幹部の皮膚温度とを演算部124に出力する。
【0021】
計時部130は、時間を計測し所定の期間毎、例えば20分毎にトリガを演算部124に出力する。これは、制御部120による温度制御を所定の期間毎に実行するためである。特に、空気調和機100の動作が開始された場合、制御部120は、対象者20が温調部150の温度を設定してから所定の期間経過した後に取得部122が取得した皮膚温度情報を使用して温調部150の動作を制御する。
【0022】
演算部124は、計時部130からのトリガを受けつけたタイミングで、取得部122から受けつけた末梢部の皮膚温度から体幹部の皮膚温度を差し引くことによって、対象者20の皮膚温度差を算出する。つまり、演算部124は、取得部122において取得した皮膚温度情報をもとに対象者20の末梢部と体幹部の皮膚温度差を算出する。演算部124は、算出した皮膚温度差を判定部126に出力する。
【0023】
記憶部140は、皮膚温度差と比較するためのテーブルを記憶する。
図5は、記憶部140に記憶されるテーブルのデータ構造を示す。第1上限値と第1下限値は、
図3(a)-(c)の上限値と下限値にそれぞれ対応する。さらに、第1上限値よりも大きい第2上限値と、第1下限値よりも小さい第2下限値とが規定される。皮膚温度差が第2上限値より大きい場合、温調部150の設定温度を第3変更幅で下げることが規定される。また、皮膚温度差が第2上限値以下であり、かつ第1上限値より大きい場合、温調部150の設定温度を第1変更幅で下げることが規定される。さらに、皮膚温度差が第2下限値以上であり、かつ第1下限値より小さい場合、温調部150の設定温度を第2変更幅で上げることが規定される。さらに、皮膚温度差が第2下限値より小さい場合、温調部150の設定温度を第4変更幅で上げることが規定される。ここで、第3変化幅は第1変化幅よりも大きく、第4変化幅は第3変化幅よりも大きい。例えば、第1変化幅と第2変化幅は「1℃」であり、第3変化幅と第4変化幅は「2℃」である。第1変化幅から第4変化幅はこれらに限定されない。
図4に戻る。
【0024】
判定部126は、対象者20の皮膚温度差を演算部124から受けつける。判定部126は、皮膚温度差をもとにテーブルを参照し、皮膚温度差が条件に合致する場合に、対応した制御を決定する。その結果、設定温度が変更される。一方、判定部126は、皮膚温度差がすべて条件に合致しない場合に設定温度を維持することを決定する。これは、皮膚温度差が第1上限値と第1下限値との間の値となるように温調部150の動作を制御することに相当する。出力部128は、判定部126において決定した制御にしたがって温調部150の動作を制御する。送風部152が制御されてもよい。
【0025】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、またはハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0026】
以上の構成による空気調和機100の動作を説明する。
図6は、空気調和機100による制御手順を示すフローチャートである。空気調和機100の制御部120には、対象者20から初期温度が入力される(ステップS10)。温調部150は、初期温度を設定温度として動作する(ステップS12)。計時部130による計時により20分経過しなければ(ステップS14のN)、待機する。計時部130による計時により20分経過した場合(ステップS14のY)、制御部120は快適温度の判定を開始する(ステップS16)。皮膚温度センサ110は、対象者20の皮膚温度情報を取得し(ステップS18)、取得部122は、末梢-体幹の皮膚温度差を算出する(ステップS20)。-2℃≦皮膚温度差≦+2℃であれば(ステップS22のY)、制御部120は設定温度を維持し(ステップS24)、ステップS14に戻る。
【0027】
-2℃≦皮膚温度差≦+2℃でなく(ステップS22のN)、+2℃<皮膚温度差≦+4℃であれば(ステップS26のY)、判定部126は設定温度を「-1℃」することを決定する(ステップS28)。+2℃<皮膚温度差≦+4℃でなく(ステップS26のN)、-4℃≦皮膚温度差<-2℃であれば(ステップS30のY)、判定部126は設定温度を「+1℃」することを決定する(ステップS32)。-4℃≦皮膚温度差<-2℃でなく(ステップS30のN)、+4℃<皮膚温度差であれば(ステップS34のY)、判定部126は設定温度を「-2℃」することを決定する(ステップS36)。+4℃<皮膚温度差でなければ(ステップS34のN)、判定部126は設定温度を「+2℃」することを決定する(ステップS38)。制御部120は設定温度の変更を完了し(ステップS42)、ステップS14に戻る。
【0028】
本実施例によれば、皮膚温度差をもとに温調部の動作を制御するので、対象者20の皮膚温度情報を使用して温度制御による快適性を向上できる。また、皮膚温度差によって快不快の判定を行うことによって、個人差を加味した温度制御を実行できる。また、個人差を加味した温度制御が実行されるので、より快適性を高めることができる。また、皮膚温度差をもとに設定温度を変更するので、対象者に合わせた快適な温度を提供できる。また、皮膚温度差の絶対値が大きくなるほど設定温度の変更幅を大きくするので、より短時間で快適な温度を提供できる。また、皮膚温度の馴化時間を考慮するので、制御の精度を向上できる。また、低温環境下で血管収縮により皮膚温度が低下し、かつ露出している指先と、高温環境下で発汗により皮膚温度が低下し、かつ露出している額との皮膚温度差を用いることにより、精度よく温冷感を推定できる。また、指先の皮膚温度が測定できなかった場合でも、額に近い鼻頭の皮膚温度で代用できる。
【0029】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。
(項目1)
対象空間(10)の温度を制御する温調部(150)と、
前記対象空間(10)内に存在する対象者(20)の皮膚温度情報を取得する取得部(122)と、
前記取得部(122)において取得した前記皮膚温度情報をもとに前記対象者(20)の末梢部と体幹部の皮膚温度差を算出し、前記皮膚温度差が上限値と、前記上限値よりも小さい下限値との間の値となるように前記温調部(150)の動作を制御する制御部(120)と、
を備える、空気調和機(100)。
【0030】
(項目2)
前記皮膚温度差は、前記末梢部の皮膚温度から前記体幹部の皮膚温度を差し引いた値であり、
前記制御部(120)は、前記皮膚温度差が前記上限値より大きい場合、前記温調部(150)の設定温度を第1変更幅で下げ、
前記制御部(120)は、前記皮膚温度差が前記下限値より小さい場合、前記温調部(150)の設定温度を第2変更幅で上げる、項目1に記載の空気調和機(100)。
【0031】
(項目3)
前記上限値は第1上限値と定義され、前記下限値は第1下限値と定義され、
前記制御部(120)は、前記第1上限値よりも大きい第2上限値と、前記第1下限値よりも小さい第2下限値とを備え、
前記制御部(120)は、前記皮膚温度差が前記第2上限値より大きい場合、前記第1変更幅より大きい第3変更幅で前記温調部(150)の設定温度を下げ、
前記制御部(120)は、前記皮膚温度差が前記第2下限値より小さい場合、前記第2変更幅より大きい第4変更幅で前記温調部(150)の設定温度を上げる、項目2に記載の空気調和機(100)。
【0032】
(項目4)
前記制御部(120)は、前記対象者(20)が前記温調部(150)の温度を設定してから所定の期間経過した後に前記取得部(122)が取得した前記皮膚温度情報を使用して前記温調部(150)の動作を制御する、項目1から項目3のいずれかに記載の空気調和機(100)。
【0033】
(項目5)
前記末梢部の皮膚温度として、指先または鼻頭の少なくとも1つの皮膚温度が使用され、
前記体幹部の皮膚温度として、額の皮膚温度が使用される、項目1から4のいずれかに記載の空気調和機(100)。
【0034】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0035】
本実施例における皮膚温度センサ110は空気調和機100に備えられる。しかしながらこれに限らず例えば、皮膚温度センサ110は対象者20の皮膚に装着されて、皮膚温度情報を測定してもよい。皮膚温度センサ110と空気調和機100は無線通信機能を備え、皮膚温度センサ110は皮膚温度情報を無線通信により空気調和機100に送信する。空気調和機100の取得部122は、皮膚温度センサ110からの皮膚温度情報を取得する。本変形例によれば構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0036】
10 対象空間、 20 対象者、 100 空気調和機、 110 皮膚温度センサ、 120 制御部、 122 取得部、 124 演算部、 126 判定部、 128 出力部、 130 計時部、 140 記憶部、 150 温調部、 152 送風部。