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  • 特開-熱交換器の搭載構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159257
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱交換器の搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20241031BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241031BHJP
【FI】
B60K11/04
B60L58/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075125
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茨木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直龍
(72)【発明者】
【氏名】アマラシンフ スーウイン インヅューラ
【テーマコード(参考)】
3D038
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB03
3D038AC03
3D038AC13
5H125AA03
5H125AB01
5H125AC12
5H125FF22
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】モータを駆動源とする車両において、熱交換器をモータ及びバッテリに近い位置に搭載する。
【解決手段】熱交換器20は、サイドフレーム12を具備する車両1に搭載された駆動用のバッテリ13と後輪駆動用のモータ16とに対し、流体を介して熱交換する。この熱交換器20の搭載構造は、熱交換器20とバッテリ13とを繋ぐ第一回路と、熱交換器20とモータ16とを繋ぐ第二回路とを備える。第一回路では、熱交換器20とバッテリ13との間で流体が循環し、第二回路では、熱交換器20とモータ16との間で流体が循環する。また、本搭載構造では、熱交換器20がサイドフレーム12の車幅方向外側に搭載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドフレームを具備する車両に搭載された駆動用のバッテリと前記車両の後輪駆動用のモータとに対し、流体を介して熱交換する熱交換器の搭載構造であって、
前記熱交換器と前記バッテリとを繋ぎ、前記流体を前記熱交換器と前記バッテリとの間で循環させる第一回路と、
前記熱交換器と前記モータとを繋ぎ、前記流体を前記熱交換器と前記モータとの間で循環させる第二回路と、を備え、
前記熱交換器は、前記サイドフレームの車幅方向外側に搭載される、ことを特徴とする熱交換器の搭載構造。
【請求項2】
前記バッテリは、車長方向において前記モータよりも前方に配置され、
前記熱交換器は、車長方向において前記車両の前輪及び後輪の間であって前記後輪寄りに配置される、ことを特徴とする熱交換器の搭載構造。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記第一回路と繋がるバッテリ熱交換部と、前記第二回路と繋がるモータ熱交換部とを有し、
前記バッテリ熱交換部は、車長方向において前記モータ熱交換部よりも前記バッテリに近接配置される、ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器の搭載構造。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記第一回路と繋がるバッテリ熱交換部と、前記第二回路と繋がるモータ熱交換部とを有し、
前記モータ熱交換部は、車長方向において前記バッテリ熱交換部よりも前記モータに近接配置される、ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器の搭載構造。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記第一回路と繋がるバッテリ熱交換部と、前記第二回路と繋がるモータ熱交換部とを有し、
前記バッテリ熱交換部及び前記モータ熱交換部はいずれも、車長方向において前記バッテリと前記モータとの間に配置される、ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器の搭載構造。
【請求項6】
前記熱交換器は、車長方向に対して車幅方向外側に傾斜するように前記車両に搭載される、ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器の搭載構造。
【請求項7】
前記熱交換器は、前記車両の上下方向に対して車幅方向外側に傾斜するように前記車両に搭載される、ことを特徴とする請求項1又は6記載の熱交換器の搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、電動車両に搭載される熱交換器の搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、駆動源の温度を調整するための熱交換器が搭載される。例えば、エンジンを駆動源とする車両には、エンジンの温度を正常範囲に保つために、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器が搭載される。また、走行用のモータを駆動源とする電動車両においても、モータの温度とモータの動力源であるバッテリの温度とをそれぞれ正常範囲に保つために、熱交換器が搭載される。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャブの前端部の下方に熱交換器が配置されたキャブオーバ型のトラック車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-65516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータを駆動源とした電動車両では、モータ及びバッテリの搭載位置が様々な理由から設定される。例えば、モータは、駆動輪(前輪駆動,後輪駆動)に応じてその車長方向位置が設定される。また、例えば、バッテリはサイズも重量も大きいため、車両重心を考慮して車長方向の中間部の下部に配置されうる。このため、特許文献1のように、熱交換器をキャブの前端部の下方に搭載した場合、熱交換器とモータ及びバッテリとが離れてしまい、不都合が発生する場合が考えられる。
【0006】
本件の熱交換器の搭載構造は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、モータを駆動源とする車両において、熱交換器をモータ及びバッテリに近い位置に搭載できる熱交換器の搭載構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本適用例に係る熱交換器の搭載構造は、サイドフレームを具備する車両に搭載された駆動用のバッテリと前記車両の後輪駆動用のモータとに対し、流体を介して熱交換する熱交換器の搭載構造であって、前記熱交換器と前記バッテリとを繋ぎ、前記流体を前記熱交換器と前記バッテリとの間で循環させる第一回路と、前記熱交換器と前記モータとを繋ぎ、前記流体を前記熱交換器と前記モータとの間で循環させる第二回路と、を備え、前記熱交換器は、前記サイドフレームの車幅方向外側に搭載される、ことを特徴とする。
【0008】
(2)上記の(1)において、前記バッテリは、車長方向において前記モータよりも前方に配置され、前記熱交換器は、車長方向において前記車両の前輪及び後輪の間であって前記後輪寄りに配置されてもよい。
【0009】
(3)上記の(1)又は(2)において、前記熱交換器は、前記第一回路と繋がるバッテリ熱交換部と、前記第二回路と繋がるモータ熱交換部とを有し、前記バッテリ熱交換部は、車長方向において前記モータ熱交換部よりも前記バッテリに近接配置されてもよい。
【0010】
(4)上記の(1)~(3)のいずれかにおいて、前記熱交換器は、前記第一回路と繋がるバッテリ熱交換部と、前記第二回路と繋がるモータ熱交換部とを有し、前記モータ熱交換部は、車長方向において前記バッテリ熱交換部よりも前記モータに近接配置されてもよい。
【0011】
(5)上記の(1)~(4)のいずれかにおいて、前記熱交換器は、前記第一回路と繋がるバッテリ熱交換部と、前記第二回路と繋がるモータ熱交換部とを有し、前記バッテリ熱交換部及び前記モータ熱交換部はいずれも、車長方向において前記バッテリと前記モータとの間に配置されてもよい。
【0012】
(6)上記の(1)~(5)のいずれかにおいて、前記熱交換器は、車長方向に対して車幅方向外側に傾斜するように前記車両に搭載されてもよい。
【0013】
(7)上記の(1)~(6)のいずれかにおいて、前記熱交換器は、前記車両の上下方向に対して車幅方向外側に傾斜するように前記車両に搭載されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
開示の熱交換器の搭載構造によれば、熱交換器をモータ及びバッテリに近い位置に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る熱交換器の搭載構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0017】
[1.構成]
<車両>
図1に示すように、本実施形態に係る熱交換器20は車両1に適用されている。車両1は、例えば電動トラックであり、キャブ11及びサイドフレーム12を備える。なお、図面では、キャブ11を二点鎖線で示し、架装物の図示は省略する。
【0018】
以下、車両1の前進方向を前方とし、この反対方向(車両の後退方向)を後方とする。また、車両1の前方を向いた状態を基準にして左右を定め、左右方向D2を車幅方向D2ともいう。さらに、車長方向(前後方向)D1と車幅方向D2とのいずれにも直交する方向を上下方向という。なお、車幅方向D2について、車両1の上面視で車体中心線よりも左側の部分においては、左が車幅方向外側で右が車幅方向内側となり、同様に、車体中心線よりも右側の部分においては、右が車幅方向外側で左が車幅方向内側となる。
【0019】
左右一対のサイドフレーム12は、車長方向D1に延びるとともに車幅方向D2に互いに離隔されて配置される。一対のサイドフレーム12は、車幅方向D2に延びる複数のクロスメンバ(不図示)によって互いに接続され、クロスメンバとともにキャブ11やキャブ11の後方に配置される架装物を下方から支持する。
【0020】
本実施形態の車両1では、一対のサイドフレーム12の車幅方向内側(サイドフレーム間)には、駆動用のバッテリ13と、DC/DCコンバータ14と、バッテリ13用のヒータ(不図示)と、走行用のモータ16と、アクスルのギヤボックス17とが配置される。なお、モータ16には、インバータ(不図示)が含まれるものとする。以下、バッテリ13及びモータ16を「駆動装置」と総称してもよい。
【0021】
バッテリ13は、車両1を駆動するモータ16の電力源であり、高電圧バッテリとも呼ばれる。バッテリ13は、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池であり、比較的高電圧(一般に200V以上)な直流電流を供給しうる二次電池である。バッテリ13は、車長方向D1において前寄りの位置に配置される。本実施形態のバッテリ13は、車長方向D1において、前輪18及びキャブ11と部分的に重なり、且つ、これらよりも後方まで位置する大きさ(配置)となっている。すなわち、本実施形態では、バッテリ13の前端部がキャブ11の下方に入り込んでいるが、バッテリ13の後端部はキャブ11の後端部よりも後方に位置している。
【0022】
バッテリ13の近傍(ここでは後方)には、DC/DCコンバータ14が配置される。DC/DCコンバータ14は、直流電圧の変換装置である。DC/DCコンバータ14は、例えば、車載充電器(OBC;On Board Charger)からの電圧を昇圧してバッテリ13に充電したり、バッテリ13の電圧を降圧して車載の補機類(図示しない補機バッテリやファン22A,22B等)に出力したりする。
【0023】
バッテリ13の後方(ここではDC/DCコンバータ14の後方)には、モータ16及びアクスルのギヤボックス17が配置される。言い換えると、バッテリ13は、車長方向D1において、モータ16よりも前方に配置される。モータ16は、車両1を駆動するための電動機であり、バッテリ13の電圧に応じた規格を持つ。モータ16は、一対の後輪19に接続され、アクスル(不図示)を介して後輪19に動力を伝達して駆動する。モータ16は、バッテリ13から供給された電力によって作動する。アクスル(リヤアクスル)は、車両1の荷重分担機能や駆動力の伝達機能を持つ装置であり、ギヤボックス17にはこれらの機能を発揮するギヤが含まれる。
【0024】
<温度調整システム>
次に、車両1に適用される熱交換器20の搭載構造を説明する。車両1は、駆動装置の温度を調整するためのモジュール化された温度調整システム2を有する。温度調整システム2は、駆動装置を加温する機能及び冷却する機能の少なくとも一方を持つ。本実施形態では、温度調整システム2が駆動装置を冷却する機能を持つ場合を説明する。本実施形態の温度調整システム2は、流体が循環する回路と、熱交換器20と、冷却対象物とで構成される独立した二つのモジュール2A,2Bを有する。モジュール2A,2Bの違いは冷却対象物である。以下、二つのモジュール2A,2Bを区別する場合は「第一モジュール2A」,「第二モジュール2B」という。二つのモジュール2A,2Bについて、まずは共通する構成要素について説明し、次に、各回路について説明する。
【0025】
各回路は、流体(例えば冷媒)が流通して循環する流路23A,23Bと、流路23A,23B上に設けられたポンプ24A,24Bとで構成される。以下、二つの流路23A,23Bを区別する場合は「第一流路23A」,「第二流路23B」といい、二つのポンプ24A,24Bを区別する場合は「第一ポンプ24A」,「第二ポンプ24B」という。また、第一モジュール2Aに設けられる第一流路23Aと第一ポンプ24Aとで構成される回路を「第一回路」ともいい、第二モジュール2Bに設けられる第二流路23Bと第二ポンプ24Bとで構成される回路を「第二回路」ともいう。各流路23A,23Bは、例えばパイプ(配管)やホース等によって構成される。流路23A,23B内を流通する冷媒としては、冷却水や冷却オイル等を用いることができる。第一回路及び第二回路の構成は後述する。
【0026】
各ポンプ24A,24Bは、例えば、循環する冷媒を所定の流速で圧送する機能や、流速を変化させる機能を備え、第一回路の第一流路23A及び第二回路の第二流路23Bのそれぞれに流す冷媒の流量や流速を制御する。各ポンプ24A,24Bは、例えばサイドフレーム12に取り付けられてよい。
【0027】
熱交換器20は、冷却対象物に対し流体を介して熱交換する装置であり、サイドフレーム12の車幅方向外側に搭載される。本実施形態の熱交換器20は、車長方向D1において前輪18及び後輪19の間であって後輪19寄りに配置される。本実施形態では、モジュール2A,2Bごとに熱交換器20が設けられる。第一モジュール2Aの熱交換器20は、第一ラジエータ21A及び第一ファン22Aで構成され、第二モジュール2Bの熱交換器20は、第二ラジエータ21B及び第二ファン22Bで構成される。車長方向D1において、第一モジュール2Aは第二モジュール2Bよりも前方に配置される。
【0028】
各ラジエータ21A,21Bは、内部に冷媒が流通し、外気と熱交換することで冷媒を冷却する熱交換部ともいえる。各ラジエータ21A,21Bは、温度上昇した冷媒を冷却して再びそれぞれの回路へ戻す機能を有している。本実施形態では、第一ラジエータ21Aは、バッテリ13に対して流体を介して熱交換する。このため、第一ラジエータ21Aを「バッテリ熱交換部21A」ともいう。また、第二ラジエータ21Bは、モータ16に対して流体を介して熱交換する。このため、第二ラジエータ21Bを「モータ熱交換部21B」ともいう。
【0029】
各ラジエータ21A,21Bには、熱交換器20に外気を取り込むファン22A,22Bがそれぞれ併設されており、ファン22A,22Bを駆動させることでラジエータ21A,21Bに積極的に外気を送る。外気が流れる方向(導入,排出)は、各ファン22A,22Bの設定に応じて、適宜切り替えることができる。例えば、各ファン22A,22Bにより負圧を発生させて、各ラジエータ21A,21Bへの外気の導入を促進してもよい。本実施形態では、各ファン22A,22Bが各ラジエータ21A,21Bよりも車幅方向外側に配置されている。なお、各ファン22A,22Bは補機バッテリの電力により作動する。以下、二つのファン22A,22Bを区別する場合は「第一ファン22A」,「第二ファン22B」という。
【0030】
本実施形態のラジエータ21A,21Bは、各々に併設されたファン22A,22Bと一体的にサイドフレーム12に固定される。詳述すると、第一ラジエータ21A及び第一ファン22Aと第二ラジエータ21B及び第二ファン22Bとが一体化され、第一ラジエータ21Aの前面と第二ラジエータ21Bの後面とのそれぞれにL字形状のブラケット25の一端が取り付けられ、二つのブラケット25の各他端がサイドフレーム12に締結されることで固定される。本実施形態のラジエータ21A,21Bは、サイドフレーム12と平行な姿勢で設けられている。すなわち、ラジエータ21A,21Bの空気を受ける面(面積が最も大きい面)の法線が車幅方向D2と一致する姿勢で搭載される。
【0031】
なお、空気の流れを考慮して、各ラジエータ21A,21Bとサイドフレーム12との間に隙間が設けられてもよい。また、各ラジエータ21A,21Bは、その上端面がサイドフレーム12の上面とほぼ同等の高さ位置になり、且つ、その下端面が最低地上高の要件を満足する位置になるような上下寸法であることが好ましい。なお、各ラジエータ21A,21Bは、例えばアルミ製であり、軽量化が図られる。
【0032】
(第一モジュール)
第一モジュール2Aの第一回路は、冷却対象物であるバッテリ13と熱交換器20とを繋ぎ、流体を熱交換器20とバッテリ13との間で循環させる回路である。第一モジュール2Aは、冷媒が流通する第一流路23A及び第一ポンプ24Aからなる第一回路と、上記の第一ラジエータ21A(バッテリ熱交換部21A)と、冷媒で冷却(熱交換)されるバッテリ13とを含んで構成される。バッテリ熱交換部21A及びバッテリ13はいずれも第一流路23A上に設けられる。なお、本実施形態では、DC/DCコンバータ14も第一モジュール2Aに含まれる。すなわち、DC/DCコンバータ14も第一流路23A上に介装され、冷却対象物に含まれる。
【0033】
バッテリ熱交換部21Aは、一方(図1では右側)のサイドフレーム12の車幅方向外側、且つ、車長方向D1において前輪18と後輪19との間のサイドフレーム12の側面に取り付けられている。バッテリ熱交換部21Aは、上記の第二ラジエータ21B(モータ熱交換部21B)よりも前輪18側に配置される。別言すれば、バッテリ熱交換部21Aは、車長方向D1においてモータ16よりもバッテリ13に近接配置されている。本実施形態では、バッテリ熱交換部21Aと冷却対象物(バッテリ13,DC/DCコンバータ14)とが右側のサイドフレーム12を挟んで隣接して配置されている。本実施形態の搭載構造では、車長方向D1において、バッテリ熱交換部21Aがバッテリ13とモータ16との間に配置される。
【0034】
第一流路23Aは、バッテリ熱交換部21Aと冷却対象物(バッテリ13,DC/DCコンバータ14)とを繋いで流体が循環する構成であれば、その配索の仕方は特に限られない。一例としての第一流路23Aは、バッテリ熱交換部21Aから車幅方向内側に位置するバッテリ13へ延びる第一部分と、バッテリ13からDC/DCコンバータ14へ延びる第二部分とを有する。第一ポンプ24Aは、第一部分に介装される。
【0035】
第一モジュール2Aにおける冷媒の流通を説明する。バッテリ熱交換部21Aで冷却された冷媒は、第一流路23A内を第一ポンプ24Aによって、所定の流量で一方向に流通し、バッテリ13へ流入する。冷媒は、バッテリ13内にある冷却流路(不図示)を流通してバッテリ13を冷却し、第一流路23Aを通ってDC/DCコンバータ14の周囲やこの内部にある冷却流路(いずれも不図示)を流通してこれも冷却したのち、熱交換により温度上昇した状態でバッテリ熱交換部21Aへ戻る。バッテリ熱交換部21Aに戻った冷媒は、外気と熱交換して冷却されて、再度、バッテリ熱交換部21Aから流出して第一ポンプ24Aに流入する。このように、第一モジュール2Aにおいて、おもに、バッテリ13の冷却サイクルが繰り返される。
【0036】
(第二モジュール)
第二モジュール2Bの第二回路は、冷却対象であるモータ16と熱交換器20とを繋ぎ、流体を熱交換器20とモータ16との間で循環させる回路である。第二モジュール2Bは、冷媒が流通する第二流路23Bと第二ポンプ24Bとからなる第二回路と、上記の第二ラジエータ21B(モータ熱交換部21B)と、冷媒で冷却(熱交換)されるモータ16とを含んで構成される。モータ熱交換部21B及びモータ16はいずれも第二流路23B上に設けられる。なお、本実施形態では、ギヤボックス17も第二モジュール2Bに含まれるが、ギヤボックス17は第二流路23B上に設けられておらず、モータ16の後方に、例えば一体的に搭載される。
【0037】
モータ熱交換部21Bは、一方(図1では右側)のサイドフレーム12の車幅方向外側、且つ、車長方向D1において前輪18と後輪19との間のサイドフレーム12の側面に取り付けられている。モータ熱交換部21Bは、上記の第一ラジエータ21A(バッテリ熱交換部21A)よりも後輪19側に配置される。別言すれば、モータ熱交換部21Bは、車長方向D1においてバッテリ13よりもモータ16に近接配置されている。本実施形態では、モータ熱交換部21Bと冷却対象物(モータ16)とが右側のサイドフレーム12を挟んで隣接して配置されている。本実施形態の搭載構造では、車長方向D1において、モータ熱交換部21Bがバッテリ13とモータ16との間に配置される。
【0038】
第二流路23Bは、モータ熱交換部21Bと冷却対象物(モータ16)とを繋いで流体が循環する構成であれば、その配索の仕方は特に限られない。一例としての第二流路23Bは、モータ熱交換部21Bから車幅方向内側に位置するモータ16へ延びる第一部分と、モータ16からモータ熱交換部21Bへ延びる第二部分とを有する。第二ポンプ24Bは、第一部分に介装される。
【0039】
第二モジュール2Bにおける冷媒の流通を説明する。モータ熱交換部21Bで冷却された冷媒は、第二流路23B内を第二ポンプ24Bによって、所定の流量で一方向に流通し、モータ16へ流入する。冷媒は、モータ16内にある冷却流路(不図示)を流通してモータ16を冷却し、第二流路23Bを通って、熱交換により温度上昇した状態でモータ熱交換部21Bへ戻る。モータ熱交換部21Bに戻った冷媒は、外気と熱交換して冷却されて、再度、モータ熱交換部21Bから流出して第二ポンプ24Bに流入する。このように、第二モジュール2Bにおいて、モータ16の冷却サイクルが繰り返される。
【0040】
[2.作用,効果]
上述した搭載構造は、サイドフレーム12を具備する車両1に搭載された駆動用のバッテリ13と後輪駆動用のモータ16とに対し、流体を介して熱交換する熱交換器20の搭載構造である。本搭載構造では、熱交換器20とバッテリ13とを繋ぐ第一回路と、熱交換器20とモータ16とを繋ぐ第二回路とが設けられる。第一回路では、熱交換器20とバッテリ13との間で流体が循環し、第二回路では、熱交換器20とモータ16との間で流体が循環する。また、本搭載構造では、熱交換器20がサイドフレーム12の車幅方向外側に搭載される。
【0041】
このため、従来のように、車両の前側(例えばキャブの前端部下方)に熱交換器20が搭載される構成と比較して、熱交換器20の搭載位置の自由度が高まり、熱交換器20をバッテリ13及びモータ16に近接配置することが可能となる。このため、熱交換器20とバッテリ13及びモータ16とが離れてしまうことによる不都合を解消し得る。具体例としては、熱交換器20とバッテリ13とを繋ぐ第一回路、及び、熱交換器20とモータ16とを繋ぐ第二回路の一方あるいは双方を短くすることが可能となる。これにより、第一回路及び第二回路を配置するためのスペースの削減,重量低減,コスト低減などを実現できる。また、第一回路と第二回路とをそれぞれ別設することにより、回路を配索する自由度が高まる。すなわち、第一回路及び第二回路のそれぞれをどのように配索するのかを個別に設定できるため、この点からも、第一回路及び第二回路を短くすることができる。
【0042】
第一回路及び第二回路が短くなることにより、回路内の流体に含まれる気体(空気)を抜く作業である、いわゆるエア抜きを早期に完了させることができる。また、バッテリ13側の第一回路と、モータ16側の第二回路とを別設することで、それぞれをモジュール化することができる。このため、様々な車種のバリエーションに対し、回路(あるいは回路を含むモジュール)を変更するだけで対応することができる。さらに、車両1の前側に熱交換器20を配置しない構成であるため、車両1の前側のスペースに別の機器(例えばバッテリ13)を配置することもできる。
【0043】
また、上述した搭載構造では、車長方向において、バッテリ13がモータ16よりも前方に配置されており、熱交換器20が前輪18及び後輪19の間であって後輪19寄りに配置されている。このような配置により、熱交換器20及びバッテリ13を互いに近接配置でき、且つ、熱交換器20及びモータ16も互いに近接配置できるため、第一回路及び第二回路の双方を短くすることができる。
【0044】
上述した搭載構造では、熱交換器20が第一回路と繋がるバッテリ熱交換部21Aと、第二回路と繋がるモータ熱交換部21Bとを有しており、車長方向において、バッテリ熱交換部21Aがモータ熱交換部21Bよりもバッテリ13に近接配置される。このため、第一回路をより短い構成とすることができる。
また、車長方向において、モータ熱交換部21Bがバッテリ熱交換部21Aよりもモータ16に近接配置される。このため、第二回路をより短い構成とすることができる。
【0045】
上述した搭載構造では、車長方向において、バッテリ熱交換部21A及びモータ熱交換部21Bがいずれもバッテリ13とモータ16との間に配置される。このため、バッテリ熱交換部21Aをバッテリ13に近接配置し、且つ、モータ熱交換部21Bをモータ16に近接配置することができる。これにより、第一回路及び第二回路の双方をより短い構成とすることができる。
【0046】
[3.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0047】
上記の実施形態の熱交換器20は、サイドフレーム12と平行な姿勢で設けられているが、車長方向D1に対して車幅方向外側に傾斜する姿勢で(上から見て斜めに)サイドフレーム12に設けられてもよい。すなわち、第一ラジエータ21A及び第一ファン22Aと第二ラジエータ21B及び第二ファン22Bとが一体化された状態で、後端が前端よりも車幅方向外側に位置するように、サイドフレーム12の外側面に対して斜めに搭載されてもよい。言い換えると、ラジエータ21A,21Bの空気を受ける面(面積が最も大きい面)の車幅方向外側に向く法線が車幅方向D2に対して斜め前方に傾斜する姿勢で搭載されてもよい。この場合、熱交換器20は、第二ラジエータ21Bの後面に向かってサイドフレーム12との間の隙間が大きくなるので、後方のブラケットには、前方のブラケットよりも車幅方向寸法を大きくしたものを採用すればよい。熱交換器20をこのように傾斜させることで、車長方向D1に流れる空気(外気)をファン22A,22Bで取り込みやすくなるため、熱交換効率を向上させることができる。
【0048】
上記の実施形態の熱交換器20は、サイドフレーム12と平行な姿勢で設けられているが、車両1の上下方向に対して車幅方向外側に傾斜する姿勢で(前から見て斜めに)サイドフレーム12に設けられてもよい。すなわち、上記と同様、一体化された状態で、下端が上端よりも車幅方向外側に位置するように、あるいは、上端が下端よりも車幅方向外側に位置するように、サイドフレーム12の外側面に対して斜めに搭載されてもよい。言い換えると、ラジエータ21A,21Bの空気を受ける面(面積が最も大きい面)の法線が水平方向に対して傾斜する姿勢で搭載される。この場合も、ブラケットの取り付け位置を工夫することで、熱交換器20をサイドフレーム12に締結することができる。熱交換器20をこのように傾斜させることで、車長方向D1、特に車両1の下部を流れる空気(外気)をファン22A,22Bで取り込みやすくなるため、熱交換効率を向上させることができる。特に、熱交換器20の下端が上端よりも車幅方向外側に位置することで、ファン22A,22Bの外方に位置する物体にファン22A,22Bから吹き出される風が当たらないようにできるため、当該物体への影響を低減できる。
【0049】
上記の実施形態では、一方のサイドフレーム12の車幅方向外側の面に、ラジエータ21A,21Bが一体的に固定されているが、第一ラジエータ21A及び第二ラジエータ21Bが互いに分離して固定されてもよい。この場合、サイドフレーム12に第一ラジエータ21A及び第二ラジエータ21Bを離間して取り付けることができ、第一ラジエータ21A及び第二ラジエータ21Bの間に、ツールボックス,リヤボデー用のポンプ,冷凍車用のコンプレッサ等の搭載が可能となり、サイドフレーム12の外側面を有効に活用することができる。
【0050】
上述した実施形態では、一方のサイドフレーム12の側面に、ラジエータ21A,21Bが設けられているが、一方(図1の右側)のサイドフレーム12にラジエータ21Aを設け、他方(図1の左側)のサイドフレーム12にラジエータ21Bを設けてもよい。これにより、各サイドフレーム12の外側面を有効に活用することができる。また、前輪18と後輪19との間の長さ(ホイールベース)が短い車両1に対しても、本搭載構造を容易に適用できる。
【0051】
上述した実施形態では、バッテリ13の前端部がキャブ11の下方に延びているが、少なくともバッテリ13の後端部がキャブ11の後方にあればよい。車両の用途に応じて、より小さい寸法の駆動用のバッテリを備えてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、ファン22A,22Bが各々、ラジエータ21A,21Bよりも車幅方向外側に配置されているが、ファン22A,22Bをラジエータ21A,21Bよりも車幅方向内側に配置してもよい。外気の導入及び排出は、ファン22A,22Bの羽の形状,角度,回転方向によって自在に設定可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 温度調整システム
2A 第一モジュール
2B 第二モジュール
11 キャブ
12 サイドフレーム
13 バッテリ
14 DC/DCコンバータ
16 モータ
17 ギヤボックス
18 前輪
19 後輪
20 熱交換器
21A 第一ラジエータ(バッテリ熱交換部;熱交換器)
22A 第一ファン(熱交換器)
23A 第一流路(第一回路)
24A 第一ポンプ(第一回路)
21B 第二ラジエータ(モータ熱交換部;熱交換器)
22B 第二ファン(熱交換器)
23B 第二流路(第二回路)
24B 第二ポンプ(第二回路)
25 ブラケット
図1