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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159259
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】積層体および包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241031BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20241031BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B65D33/00 Z
B65D33/00 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075128
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】村山 達彦
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA26
3E064BA36
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA01
3E064GA04
3E064HA06
3E064HB02
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB55
3E086BB58
3E086BB62
3E086BB63
3E086CA27
3E086CA28
3E086CA31
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK03D
4F100AK04C
4F100AK04E
4F100AK21A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK69A
4F100AK80A
4F100AK80E
4F100AL06D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00E
4F100EH17D
4F100EH20E
4F100GB16
4F100HB31B
4F100JA13C
4F100JA13E
4F100JK06
4F100JL11
4F100JL12C
4F100JL12E
4F100JL14A
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】クリーン環境内で使用される物品を包装できる包装材料として好適で、リサイクル性に優れ、印刷層を備える積層体を提供する。
【解決手段】剥離部と、本体部と、を少なくとも備える積層体であって、剥離部は、本体部から剥離できるように設けられており、剥離部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、剥離部におけるポリオレフィンの含有割合は、剥離部の質量を基準として、80質量%以上であり、剥離部は、印刷層を備え、本体部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、本体部におけるポリオレフィンの含有割合は、本体部の質量を基準として、80質量%以上であり、本体部は、積層体の一方の表面層として、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を少なくとも備える、積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離部と、本体部と、を少なくとも備える積層体であって、
前記剥離部は、前記本体部から剥離できるように設けられており、
前記剥離部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記剥離部における前記ポリオレフィンの含有割合は、前記剥離部の質量を基準として、80質量%以上であり、
前記剥離部は、印刷層を備え、
前記本体部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記本体部における前記ポリオレフィンの含有割合は、前記本体部の質量を基準として、80質量%以上であり、前記本体部は、前記積層体の一方の表面層として、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を少なくとも備える、
積層体。
【請求項2】
前記剥離部が、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィンフィルムと、該フィルム上に設けられた前記印刷層と、を含む印刷フィルムを備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記剥離部が、前記本体部に接する、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記ヘテロ原子含有樹脂が、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記剥離部が、前記印刷層と前記ヘテロ原子含有樹脂層との間に、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層をさらに備える、請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
前記ポリオレフィン層が、前記ポリオレフィンに加えて、変性ポリオレフィンをさらに含有する、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記剥離部が、
印刷フィルムと、
ポリオレフィンを主成分として含有する押出樹脂層と、
ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層と、
を備え、
前記印刷フィルムは、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィンフィルムと、該フィルム上に設けられた前記印刷層と、を備え、
前記ヘテロ原子含有樹脂層は、前記本体部に接する、
請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記本体部が、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、前記積層体の一方の表面層として、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層とを備え、前記本体部における前記ポリエチレン層が、前記剥離部における前記ヘテロ原子含有樹脂層と接している、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記積層体が、
印刷フィルムと、
接着層と、
基材と、
を少なくとも備え、
前記印刷フィルムは、ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレンフィルムと、該フィルム上に設けられた前記印刷層と、を備え、
前記基材は、
ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層と、
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、
ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層と、
をこの順に少なくとも備える、
請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記基材が、共押出多層フィルムである、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記積層体におけるポリオレフィンの含有割合が、前記積層体の質量を基準として、80質量%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記剥離部と前記本体部との剥離強度が、1.0N/15mm幅以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層体を備える包装袋。
【請求項14】
前記積層体における前記熱融着性樹脂層同士が融着して形成されたシール部を有する、請求項13に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品は、埃および塵等の異物が該製品に付着すると品質が低下しえることから、清浄度の高いクリーンルーム等のクリーン環境下で製造または使用されている。このような環境内に物品を持ち込む際には、プラスチックフィルム製の袋内に物品を収容した包装体を、クリーン環境内に持ち込む場合が多い。したがって、半導体製品等の高いクリーン度が要求される物品を収容する包装袋に対しても、高いクリーン性が求められている。
【0003】
包装体は、従来、内袋および外袋を少なくとも備える2重袋を用いて以下のようにして製造されている(例えば、特許文献1参照)。まず内袋の内側に物品を入れ、真空脱気し、内袋の開口部を密封する。次に外袋の内側に該内袋を入れ、真空脱気し、外袋の開口部を密封する。このような2重包装、または必要に応じて3重包装により、物品は包装されている。物品を使用する際には、クリーンルームの前室で外袋を開封し、クリーンな状態の内袋をクリーンルーム内で開封して、物品は取り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-126437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2重脱気包装または3重脱気包装により物品を包装する際、脱気包装が複数回行われる。このため、物品包装の作業効率が高くない場合がある。また、包装袋の開封時には、複数回行われる袋の開封が手間である場合がある。また、近年、プラスチック海洋汚染および地球温暖化など、環境問題に対する取り組みが重要視されている。したがって、包装材料などには、高いリサイクル性が求められている。また、このような包装袋は、例えば包装袋中の物品の表示等のため、印刷層を備えることが望まれる。
【0006】
本開示の課題は、クリーン環境内で使用される物品を包装できる包装材料として好適で、リサイクル性に優れ、印刷層を備える積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、剥離部と本体部とを備える積層体により包装袋を作製すること、また、該剥離部に印刷層を設けることを検討した。クリーンルームの前室で包装袋の剥離部を剥離することで、クリーンな状態の包装袋をクリーンルーム内に持ち込むことができる。このような知見のもと、本発明者らは、以下の構成を備える積層体により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本開示の一実施形態の積層体は、剥離部と、本体部と、を少なくとも備え、剥離部は、本体部から剥離できるように設けられており、剥離部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、剥離部におけるポリオレフィンの含有割合は、剥離部の質量を基準として、80質量%以上であり、剥離部は、印刷層を備え、本体部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、本体部におけるポリオレフィンの含有割合は、本体部の質量を基準として、80質量%以上であり、本体部は、積層体の一方の表面層として、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を少なくとも備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、クリーン環境内で使用される物品を包装できる包装材料として好適で、リサイクル性に優れ、印刷層を備える積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の積層体の一実施形態の模式断面図である。
図2図2は、本開示の積層体の一実施形態の模式断面図である。
図3図3は、本開示の積層体の一実施形態の模式断面図である。
図4図4は、本開示の積層体の一実施形態の模式断面図である。
図5図5は、本開示の積層体の一実施形態の模式断面図である。
図6図6は、本開示の包装袋の一実施形態の模式断面図である。
図7図7は、本開示の包装袋の一実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本開示において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。上記パラメータとしては、例えば、物性値、成分の含有割合および層の厚さが挙げられる。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上である。パラメータBは、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0013】
本明細書の以下の説明において、登場する各成分(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、α-オレフィン、ヘテロ原子含有樹脂などの樹脂材料、ならびに添加剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0014】
本明細書においてポリエチレンとは、全繰返し構成単位中、エチレン由来の構成単位の含有割合が50モル%超の重合体をいう。この重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。上記含有割合は、NMR法により測定される。
【0015】
本明細書において、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと、エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体でもよい。エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテン等の炭素数3以上20以下のα-オレフィン、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルモノマー、ならびに(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0016】
本明細書において、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレン、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0017】
本明細書においてポリエチレンの密度は、以下のとおりである。
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3を超える。高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.965g/cm3以下である。中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.932g/cm3を超えて0.945g/cm3以下である。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.932g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.932g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.932g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.932g/cm3以下である。ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0018】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いた重合法によりエチレンおよび少量のα-オレフィンを重合して得られるポリエチレンである。
【0019】
密度または分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得られる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0020】
本明細書において、ポリエチレンとしては、バイオマス由来のポリエチレン(以下「バイオマスポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。すなわち、ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレン等に代えて、バイオマス由来のエチレン等を用いてもよい。バイオマスポリエチレンは、カーボンニュートラルな材料であることから、積層体または包装袋による環境負荷を低減できる。バイオマスポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されている方法により製造できる。市販されているバイオマスポリエチレンを用いてもよい。
【0021】
ポリエチレンとしては、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレンを用いてもよい。これにより、積層体または包装袋による環境負荷を低減できる。メカニカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、フィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。ケミカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどをモノマーレベルまで分解し、当該モノマーを再度重合してポリエチレンを得る方法である。
【0022】
本明細書において、ある層またはフィルムにおける「主成分」とは、当該層またはフィルム中の含有割合が50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0023】
[積層体]
本開示の積層体は、剥離部と、本体部と、を少なくとも備える。
本体部は、第1面と、該第1面に対向する第2面と、を有する。剥離部は、本体部の第1面上に設けられている。剥離部は、本体部に接しており、具体的には、本体部の第1面に接している。したがって、通常、本体部の第1面は、剥離部を剥離する際の剥離面である。
【0024】
<剥離部>
剥離部は、詳細は後述するポリオレフィンを主成分として含有する。
剥離部は、本体部から剥離できるように設けられている。
本明細書において、本開示の積層体の本体部から剥離部を剥離して得られる、剥離部からなるフィルムを「剥離フィルム」ともいう。該剥離後の本体部からなるフィルムを「包装フィルム」ともいう。
【0025】
剥離部は、印刷層を備える。
剥離部は、一実施形態において、印刷フィルムを備える。印刷フィルムは、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィンフィルムと、該フィルム上に設けられた印刷層と、を備える。
【0026】
剥離部は、一実施形態において、本体部に接する、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を備える。ヘテロ原子含有樹脂層を備える剥離部は、例えば、本体部からの剥離性に優れる。
【0027】
剥離部は、一実施形態において、印刷層または印刷フィルムとヘテロ原子含有樹脂層との間に、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層を備える。これにより、例えば、積層体のポリオレフィンの含有割合を向上でき、したがってリサイクル性を向上できる。
【0028】
剥離部は、例えば、ヘテロ原子含有樹脂層と、所望によりアンカーコート層と、所望により接着層と、印刷フィルムと、をこの順に備える積層フィルムでもよく、ヘテロ原子含有樹脂層と、ポリオレフィン層と、所望により接着層と、印刷フィルムと、をこの順に備える積層フィルムでもよい。ここで印刷層は、その保護を目的として、ポリオレフィンフィルムにおけるヘテロ原子含有樹脂層に向かう面上に設けられていることが好ましい。
【0029】
剥離部の厚さは、剥離性、強度および耐熱性という観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上である。剥離部の厚さは、加工適性という観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0030】
剥離部におけるポリオレフィンの含有割合は、剥離部の質量を基準として、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。このような剥離部を備える積層体は、リサイクル性に優れる。具体的には、上記積層体から剥離部を剥離して得られる剥離フィルムのリサイクル性に優れる。
【0031】
一実施形態において、上記「剥離部におけるポリオレフィンの含有割合」を、例えば、「剥離部におけるポリエチレンの含有割合」または「剥離部におけるポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0032】
(印刷層、印刷フィルム)
剥離部は、印刷層を備える。
剥離部は、一実施形態において、印刷フィルムを備える。印刷フィルムは、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィンフィルムと、該フィルム上に設けられた印刷層と、を備える。
【0033】
印刷層は、画像を有する。画像としては、例えば、文字、図形、模様、記号およびこれらの組合せが挙げられる。画像は、商品名、包装袋中の物品の名称、製造者および原材料名等の文字情報を含んでもよい。画像は、単色無地(いわゆるベタ画像)でもよい。
【0034】
印刷層は、一実施形態において、着色剤を含有する。
着色剤としては、例えば、無機顔料および有機顔料等の顔料、ならびに、酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料および昇華性色素等の染料が挙げられる。また、着色剤としては、紫外線を吸収することにより蛍光を発する紫外線発光材料、および赤外線を吸収することにより蛍光を発する赤外線発光材料等の蛍光発光材料も挙げられる。
【0035】
印刷層における着色剤の含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。印刷層における着色剤の含有割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0036】
印刷層は、樹脂材料を含有してもよい。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
印刷層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、顔料および染料が挙げられる。
印刷層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。印刷層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0037】
印刷層は、例えば、上述した成分および必要に応じて溶媒を含有するインキ組成物を用いて形成できる。印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、活版印刷法および転写印刷法が挙げられる。一実施形態において、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法でもよい。
【0038】
印刷層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。印刷層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0039】
印刷フィルムを構成するポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィンを主成分として含有する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられ、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。ポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレンフィルム、およびポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレンフィルムが好ましく、ポリエチレンフィルムがより好ましい。
【0040】
印刷フィルムが備えるポリオレフィンフィルムを、剥離部のポリオレフィン層や、本体部の熱融着性樹脂層と同種の樹脂材料により構成することにより、積層体全体および剥離部のリサイクル性を向上することができる。
【0041】
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。ポリエチレンフィルムの強度および耐熱性という観点から、高密度ポリエチレンおよび/または中密度ポリエチレンが好ましい。
【0042】
ポリオレフィンフィルムにおけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。一実施形態において、上記「ポリオレフィンフィルムにおけるポリオレフィンの含有割合」を、例えば、「ポリエチレンフィルムにおけるポリエチレンの含有割合」または「ポリプロピレンフィルムにおけるポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0043】
ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィン以外の樹脂材料を含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
ポリオレフィンフィルムは、上記添加剤を含有してもよい。
【0044】
ポリオレフィンフィルムは、一実施形態において、延伸処理が施されたフィルム、すなわち延伸フィルムである。このようなフィルムは、例えば、強度、耐熱性および透明性に優れる。延伸処理は、1軸延伸でもよく、2軸延伸でもよい。機械方向(基材の流れ方向、MD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。幅方向(MD方向に対して垂直な方向、TD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。延伸倍率を2倍以上とすることにより、例えば、フィルムの強度、耐熱性および透明性を向上でき、また、フィルムへの印刷適性を向上できる。フィルムの破断限界という観点からは、延伸倍率は10倍以下であることが好ましい。
【0045】
ポリオレフィンフィルムは、例えば、ポリオレフィンまたはその樹脂組成物をTダイ法またはインフレーション法等により製膜してフィルムを作製した後、所望により該フィルムを延伸することにより作製できる。インフレーション法によれば、製膜と延伸とを同時に行うことができる。
【0046】
ポリオレフィンフィルムには、一実施形態において、コロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、ポリオレフィンフィルムと他の層との密着性を向上できる。ポリオレフィンフィルムの表面に、易接着層を設けてもよい。
【0047】
ポリオレフィンフィルムは、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
ポリオレフィンフィルムの厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。厚さが下限値以上のポリオレフィンフィルムを備える積層体は、例えば、強度および耐熱性に優れる。厚さが上限値以下のポリオレフィンフィルムを備える積層体は、例えば、加工適性に優れる。
【0048】
(ヘテロ原子含有樹脂層)
ヘテロ原子含有樹脂層は、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有する。
ヘテロ原子含有樹脂層を備える剥離部は、例えばヤング率が高く、本体部からの剥離性に優れる。また、ヘテロ原子含有樹脂層を備える積層体は、例えば、耐突刺し性に優れる。したがって、このような積層体を備える包装袋は、硬い物品の包装性に優れる。ヘテロ原子含有樹脂層を備える積層体は、例えば、酸素バリア性および水蒸気バリア性等のガスバリア性、耐熱性ならびに剛性にも優れる。
【0049】
ヘテロ原子含有樹脂におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子および塩素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有樹脂は、例えば、ヒドロキシ基、アミド結合、エステル結合およびエーテル結合などのヘテロ原子含有基を有する。ヘテロ原子含有樹脂としては、例えば、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、剛性および耐突刺し性という観点から、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールが好ましく、ポリアミドおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体がより好ましい。
【0050】
ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドが好ましく、結晶性脂肪族ポリアミドがより好ましい。
【0051】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ホモポリアミドおよび脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。以下の例示において、ポリアミドを「PA」とも記載する。
【0052】
脂肪族ホモポリアミドとしては、具体的には、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリエナントラクタム(PA7)、ポリウンデカンラクタム(PA11)、ポリラウリルラクタム(PA12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ポリテトラメチレンドデカミド(PA412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(PA59)、ポリペンタメチレンセバカミド(PA510)、ポリペンタメチレンドデカミド(PA512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(PA69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(PA612)、ポリノナメチレンアジパミド(PA96)、ポリノナメチレンアゼラミド(PA99)、ポリノナメチレンセバカミド(PA910)、ポリノナメチレンドデカミド(PA912)、ポリデカメチレンアジパミド(PA106)、ポリデカメチレンアゼラミド(PA109)、ポリデカメチレンデカミド(PA1010)、ポリデカメチレンドデカミド(PA1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(PA126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(PA129)、ポリドデカメチレンセバカミド(PA1210)およびポリドデカメチレンドデカミド(PA1212)が挙げられる。
【0053】
脂肪族共重合ポリアミドとしては、具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(PA6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(PA6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(PA6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(PA6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(PA6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(PA6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(PA6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(PA6/66/612)が挙げられる。
【0054】
脂肪族ポリアミドの相対粘度は、好ましくは1.5以上、より好ましく2.0以上、さらに好ましくは2.5以上である。脂肪族ポリアミドの相対粘度は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下である。脂肪族ポリアミドの相対粘度は、JIS K6920-2:2009に準拠して、ポリアミド1gを96%濃硫酸100mLに溶解させ、25℃で測定される。
【0055】
半芳香族ポリアミドとは、芳香族ジアミンに由来する構成単位と、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミド、または、脂肪族ジアミンに由来する構成単位と、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミドである。例えば、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから構成されるポリアミド、および脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから構成されるポリアミドが挙げられる。
【0056】
半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(PA6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(PA9T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6T/6)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカミド共重合体(PA6T/12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA6I/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)共重合体(PA6T/M5T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6/6I)およびポリメタキシリレンアジパミド(PAMXD6)が挙げられる。
【0057】
半芳香族ポリアミドのメルトボリュームレート(MVR)は、好ましくは5cm3/10分以上、より好ましくは10cm3/10分以上である。半芳香族ポリアミドのMVRは、好ましくは200cm3/10分以下、より好ましくは100cm3/10分以下である。MVRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度275℃、荷重5.00kgで測定される。
【0058】
ポリアミドとしては、結晶性脂肪族ポリアミドが好ましい。結晶性脂肪族ポリアミドとしては、例えば、PA6、PA11、PA12、PA66、PA610、PA612、PA6/66およびPA6/66/12が挙げられる。
【0059】
結晶性脂肪族ポリアミドの融点(Tm)は、好ましくは180℃以上である。結晶性脂肪族ポリアミドのTmは、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。結晶性脂肪族ポリアミドのTmは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0060】
ポリアミドのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリアミドのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリアミドのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度235℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。測定温度は、ポリアミドの融点に応じて変更できる。
【0061】
ヘテロ原子含有樹脂層におけるヘテロ原子含有樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。これにより、例えば、包装袋の耐熱性などの上述した物性を向上できる。
【0062】
ヘテロ原子含有樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0063】
ヘテロ原子含有樹脂層の厚さは、積層体の耐熱性という観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上である。ヘテロ原子含有樹脂層の厚さは、積層体のリサイクル性という観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。ヘテロ原子含有樹脂層の厚さは、積層体のリサイクル性という観点から、剥離部のポリオレフィン層の厚さ、および本体部の熱融着性樹脂層の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0064】
(ポリオレフィン層)
剥離部におけるポリオレフィン層は、ポリオレフィンを主成分として含有する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられ、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。ポリオレフィン層としては、ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン層、およびポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層が好ましく、ポリエチレン層がより好ましい。
【0065】
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。積層体の耐熱性という観点から、高密度ポリエチレンが好ましい。
【0066】
ポリオレフィン層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは140℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0067】
ポリオレフィン層におけるポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、ポリエチレンの場合は190℃であり、ポリプロピレンの場合は230℃である。
【0068】
ポリオレフィン層におけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。一実施形態において、上記「ポリオレフィン層におけるポリオレフィンの含有割合」を、例えば、「ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有割合」または「ポリプロピレン層におけるポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0069】
剥離部におけるポリオレフィン層は、ヘテロ原子含有樹脂層に対する密着性という観点から、さらに変性ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンなどの変性ポリオレフィンを含有してもよい。変性ポリオレフィンとしては、例えば、マレイン酸およびフマル酸等の不飽和カルボン酸、またはその酸無水物、エステルもしくは金属塩による、ポリオレフィンの変性物、特にポリオレフィンのグラフト変性物が挙げられ、ポリエチレンの変性物、特にポリエチレンのグラフト変性物が挙げられる。変性ポリエチレンとしては、変性高密度ポリエチレンでもよく、無水マレイン酸グラフト変性高密度ポリエチレンでもよい。
【0070】
変性ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。変性ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。変性ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、変性ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、変性ポリエチレンの場合は190℃であり、変性ポリプロピレンの場合は230℃である。
【0071】
ポリオレフィン層における変性ポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。ポリオレフィン層における変性ポリオレフィンの含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。一実施形態において、上記「ポリオレフィン層における変性ポリオレフィンの含有割合」を、例えば、「ポリエチレン層における変性ポリエチレンの含有割合」または「ポリプロピレン層における変性ポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0072】
ポリオレフィン層は、ポリオレフィンおよび変性ポリオレフィン以外の樹脂材料を含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0073】
ポリオレフィン層の厚さは、積層体の強度、耐熱性およびリサイクル性という観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。ポリオレフィン層の厚さは、積層体の加工適性という観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0074】
(接着層)
剥離部における接着層は、一実施形態において、ポリオレフィンを主成分として含有する押出樹脂層である。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられ、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。押出樹脂層を構成するポリエチレンとしては、接着性という観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0075】
押出樹脂層におけるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは3g/10分以上であり、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは25g/10分以下、さらに好ましくは20g/10分以下である。ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0076】
押出樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性および接着性のバランスという観点から、好ましくは100℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0077】
押出樹脂層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%である。このような押出樹脂層を備える積層体は、リサイクル性に優れる。
【0078】
押出樹脂層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。押出樹脂層の厚さは、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。このような押出樹脂層を備える積層体は、層間接着性およびリサイクル性に優れる。
【0079】
押出樹脂層は、例えば、ポリエチレンまたはポリエチレン樹脂組成物を溶融させ、フィルム上に押し出すことにより形成できる。このときの溶融温度は、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上であり、好ましくは340℃以下、より好ましくは335℃以下である。
【0080】
押出樹脂層は、一実施形態において、印刷フィルムと後述する基材との接着層として機能する。このような押出樹脂層を備える積層体は、ポリエチレンなどのポリオレフィンの含有割合を高くすることができ、リサイクル性に優れるとともに、剥離部と本体部との適度な剥離強度を有し、剥離部の剥離性に優れる。
【0081】
後述する基材におけるヘテロ原子含有樹脂層上に押出樹脂層を形成する場合は、ヘテロ原子含有樹脂層上にアンカーコート層を形成した後に、アンカーコート層上に押出樹脂層を形成してもよい。これにより、層間密着性を向上できる。アンカーコート層は、アンカーコート剤により形成される。アンカーコート剤としては、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリオレフィン系またはエポキシ樹脂系のアンカーコート剤が挙げられる。アンカーコート層は、上記添加剤を含有してもよい。アンカーコート層の厚さは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0082】
剥離部における接着層は、一実施形態において、接着剤により構成される接着剤層である。接着剤層は、一実施形態において、印刷フィルムと後述する基材との接着層として機能する。接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、および非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤でもよく、溶剤型の接着剤でもよい。
【0083】
無溶剤型の接着剤、すなわちノンソルベントラミネート接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
【0084】
接着剤層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。接着剤層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましく6μm以下である。
【0085】
<本体部>
本体部は、ポリオレフィンを主成分として含有する。これにより、上記積層体から剥離部を分離除去して得られる包装袋のモノマテリアル化を図ることができる。本開示の積層体を用いて包装袋を作製した場合に、本体部は、包装袋の収容空間に面する層である。
【0086】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられ、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0087】
本体部におけるポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、ポリオレフィンの融点等に応じて設定される。MFRの測定温度は、ポリエチレンの場合は190℃であり、ポリプロピレンの場合は230℃である。
【0088】
本体部におけるポリオレフィンの含有割合は、本体部の質量を基準として、80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。このような本体部を備える積層体は、リサイクル性に優れる。具体的には、上記積層体から剥離部を剥離除去した後の本体部に相当する包装フィルムは、リサイクル性に優れる。
【0089】
一実施形態において、上記「本体部におけるポリオレフィンの含有割合」を、例えば、「本体部におけるポリエチレンの含有割合」または「本体部におけるポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0090】
本体部は、一実施形態において、ポリエチレンを主成分として含有する。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられ、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0091】
本体部におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性およびヒートシール性のバランスという観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0092】
本体部は、ポリオレフィン以外の上記樹脂材料を含有してもよい。
本体部は、上記添加剤を含有してもよい。
【0093】
本体部の厚さは、強度およびヒートシール性という観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上である。本体部の厚さは、加工適性という観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0094】
本体部は、積層体の一方の表面層として、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を少なくとも備える。本体部における熱融着性樹脂層は、一実施形態において、剥離部と接している。
【0095】
本体部は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層を少なくとも備える。本体部における上記ポリエチレン層は、一実施形態において、剥離部と接している。
【0096】
本体部は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、積層体の一方の表面層として、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層と、を備える。本体部における上記ポリエチレン層は、一実施形態において、剥離部と接している。本体部は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層とポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する中間層(以下「ポリエチレン中間層」ともいう)をさらに備える。
【0097】
(熱融着性樹脂層)
本体部は、積層体の一方の表面層として、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を備える。このような熱融着性樹脂層は、積層体を備える包装袋におけるシール層として機能する。本開示の積層体を用いて包装袋を作製した場合に、熱融着性樹脂層は、包装袋の収容空間に面する層である。
【0098】
一実施形態において、本体部は、熱融着性樹脂層からなる。
一実施形態において、0.909g/cm3以下の密度を有する上記ポリエチレン層が、本体部の一方の表面層であり、熱融着性樹脂層が、本体部の他方の表面層である。
【0099】
ポリオレフィンの中でも、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられ、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0100】
熱融着性樹脂層におけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。このような熱融着性樹脂層を備える積層体は、例えば、リサイクル適性に優れる。一実施形態において、上記「熱融着性樹脂層におけるポリオレフィンの含有割合」を、例えば、「熱融着性樹脂層におけるポリエチレンの含有割合」または「熱融着性樹脂層におけるポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0101】
熱融着性樹脂層は、ヒートシール性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種のポリエチレンを主成分として含有することが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPEおよびC8-LLDPEが挙げられる。
【0102】
熱融着性樹脂層における、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの合計含有量は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0103】
熱融着性樹脂層は、一実施形態において、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有する。このような熱融着性樹脂層は、ヒートシール性に優れる。熱融着性樹脂層における直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)との含有量比(LLDPE:LDPE)は、質量基準で、好ましくは5:95~95:5、より好ましくは10:90~90:10、さらに好ましくは20:80~80:20である。
【0104】
熱融着性樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、ヒートシール性という観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは125℃以下であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0105】
熱融着性樹脂層は、上記樹脂材料を含有してもよい。
熱融着性樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0106】
熱融着性樹脂層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。熱融着性樹脂層の厚さは、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは60μm以下、よりさらに好ましくは40μm以下である。
【0107】
(ポリエチレン層)
本体部は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層を備える。本体部における密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層は、一実施形態において、剥離部におけるヘテロ原子含有樹脂層と接している。このようなポリエチレン層を備える積層体は、積層体の製造時において、本体部からの剥離部の浮きを抑制でき、剥離部と本体部との良好な剥離強度を有する。具体的には、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層は、ヘテロ原子含有樹脂層との密着性および剥離性のバランスに優れる。
【0108】
ポリエチレン層の密度は、好ましくは0.908g/cm3以下、より好ましくは0.907g/cm3以下、さらに好ましくは0.906g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.905g/cm3以下、特に好ましくは0.904g/cm3以下である。ポリエチレン層の密度は、好ましくは0.860g/cm3以上、より好ましくは0.870g/cm3以上、さらに好ましくは0.880g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.890g/cm3以上、特に好ましくは0.895g/cm3以上である。ポリエチレン層の密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0109】
ポリエチレン層は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンを主成分として含有し、好ましくは密度が0.909g/cm3以下の直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPEおよびC8-LLDPEが挙げられる。
【0110】
直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレンの密度は、好ましくは0.908g/cm3以下、より好ましくは0.907g/cm3以下、さらに好ましくは0.906g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.905g/cm3以下、特に好ましくは0.904g/cm3以下である。上記ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上、より好ましくは0.870g/cm3以上、さらに好ましくは0.880g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.890g/cm3以上、特に好ましくは0.895g/cm3以上である。
【0111】
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンは、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンでもよい。メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンとは、メタロセン系エチレン・α-オレフィン共重合体、すなわちメタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体であり、分子構造が概ね直鎖状である。
【0112】
エチレンと共重合されるα-オレフィンとしては、例えば、炭素数3以上12以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセンおよび1-ドデセンが挙げられる。これらの中でも、炭素数3以上8以下のα-オレフィンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPEおよびC8-LLDPEが挙げられる。
【0113】
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの融点(Tm)は、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、さらに好ましくは100℃以下、特に好ましくは95℃以下である。メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの融点(Tm)は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、さらに好ましくは88℃以上である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0114】
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの中でも、メタロセン系エチレンプラストマーと称される樹脂が好ましい。メタロセン系エチレンプラストマーは、具体的には、メタロセン触媒によって得られる、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(エチレン・α-オレフィン共重合体)の一種である。メタロセン系エチレンプラストマーは、低密度の中でも比較的低い超低密度と呼ばれる領域の密度と、均一な触媒活性点を有する触媒であるメタロセン触媒による重合方法に由来する、狭い分子量分布(Mw/Mn)で指標される均一なポリマー分布と、プラストマー的性質と、を有する。
【0115】
メタロセン系エチレンプラストマーとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン製「カーネル(登録商標)」シリーズから選択することができる。例えば、「KF260T」、「KF360T」および「KS340T」が挙げられる。
【0116】
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンにおける重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下、さらに好ましくは3.0以下である。比(Mw/Mn)は、1.0以上であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上、さらに好ましくは2.1以上である。
【0117】
Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義される。MwおよびMnは、以下の方法で測定される。
装置:ウオーターズ社製GPC
150C型検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本
[カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似する。試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算する。ポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンは、α=0.707、logK=-3.407である。]
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
【0118】
ポリエチレン層における密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0119】
ポリエチレン層は、ポリエチレン以外の上記樹脂材料を含有してもよい。
ポリエチレン層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0120】
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層の厚さは、剥離強度という観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上である。密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層の厚さは、フィルム製膜の加工性という観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0121】
(ポリエチレン中間層)
本体部は、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と熱融着性樹脂層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する中間層をさらに備えてもよい。ポリエチレン中間層は、積層体の耐突刺し性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有することがより好ましい。
【0122】
ポリエチレンとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンが挙げられ、ヒートシール性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPEおよびC8-LLDPEが挙げられる。
【0123】
ポリエチレン中間層におけるポリエチレンの密度は、好ましくは0.925g/cm3以上、より好ましくは0.928g/cm3以上、さらに好ましくは0.930g/cm3以上である。このようなポリエチレン中間層を備える積層体は、耐突刺し性に優れる。ポリエチレン中間層におけるポリエチレンの密度は、好ましくは0.932g/cm3以下である。
【0124】
ポリエチレン中間層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは140℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0125】
ポリエチレン中間層におけるポリエチレンの含有割合は、積層体の耐突刺し性およびリサイクル適性という観点から、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0126】
ポリエチレン中間層は、ポリエチレン以外の上記樹脂材料を含有してもよい。
ポリエチレン中間層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0127】
ポリエチレン中間層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上である。ポリエチレン中間層の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下である。
【0128】
<剥離強度>
剥離部と本体部との剥離強度は、好ましくは1.0N/15mm幅以下、より好ましくは0.9N/15mm幅以下、さらに好ましくは0.8N/15mm幅以下、よりさらに好ましくは0.7N/15mm幅以下、特に好ましくは0.6N/15mm幅以下である。このような剥離強度を有する積層体の場合、剥離部を本体部から、本体部を破損することなく適度な力で容易に剥離できる。上記剥離強度は、例えば0.01N/15mm幅、0.05N/15mm幅または0.1N/15mm幅以上、好ましくは0.15N/15mm幅以上、より好ましくは0.2N/15mm幅以上である。このような剥離強度を有する積層体の場合、本体部からの剥離部の浮きを抑制でき、積層体の外観に優れるとともに、剥離部が意図しない時期に本体部から剥離されることを抑制できる。また、ヒートシールしてもシール部における上記剥離強度の上昇は、手で剥離できる範囲に抑えることができる。
【0129】
上記剥離強度は、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される。具体的には、積層体をカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出す。試験片における長さ方向の一方の端部の剥離部を剥離して折り返して、部分的に剥離された剥離部(剥離フィルム)の端部を、引張試験機の一方のつかみ具に取り付け、上記部分的に剥離後の本体部(包装フィルム)の端部を、引張試験機の他方のつかみ具に取り付ける。初期チャック間距離は100mmとする。次いで、剥離部の端部を取り付けたつかみ具を、試験片の表面に対して180度の方向に、該角度が維持されるように試験片の姿勢を保持しながら50mm/minの速度で引っ張り、最大強度(N)を測定する。15mm幅の試験片に対して測定された最大強度(N)を、剥離強度(N/15mm幅)とする。
【0130】
<積層体の構成および製造方法>
図1図5に、本開示の積層体の一実施形態に係る模式断面図を示す。
図1の積層体1は、剥離部2と本体部4とを厚さ方向にこの順に備える。
図2の積層体1は、印刷フィルム10と、接着層20と、基材30と、をこの順に備える。図2の積層体1において、基材30は、熱融着性樹脂層32と、ヘテロ原子含有樹脂層36と、を備える。図3の積層体1において、基材30は、熱融着性樹脂層32と、ヘテロ原子含有樹脂層36と、ポリオレフィン層38と、をこの順に備える。図4の積層体1において、基材30は、熱融着性樹脂層32と、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層34と、ヘテロ原子含有樹脂層36と、ポリオレフィン層38と、をこの順に備える。図5の積層体1において、基材30は、熱融着性樹脂層32と、ポリエチレン中間層33と、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層34と、ヘテロ原子含有樹脂層36と、ポリオレフィン層38と、をこの順に備える。
【0131】
本開示の積層体の総厚さは、積層体の強度および耐熱性という観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは60μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上、特に好ましくは100μm以上である。本開示の積層体の総厚さは、積層体の加工適性という観点から、好ましくは350μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下、よりさらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下である。
【0132】
本開示の積層体は、例えば、印刷フィルムと基材とを、接着層を介して貼り合わせることにより製造できる。印刷フィルムおよび接着層の詳細は、それぞれ上述したとおりである。具体的には、印刷フィルムと基材とを、溶融押出ラミネート法、特にサンドラミネート法、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法、または無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法を用いてラミネートすることにより、積層体を製造できる。
【0133】
基材は、一実施形態において、熱融着性樹脂層と、ヘテロ原子含有樹脂層と、所望によりポリオレフィン層と、をこの順に備え、熱融着性樹脂層と、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、ヘテロ原子含有樹脂層と、所望によりポリオレフィン層と、をこの順に備えてもよく、熱融着性樹脂層と、ポリエチレン中間層と、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、ヘテロ原子含有樹脂層と、所望によりポリオレフィン層と、をこの順に備えてもよい。熱融着性樹脂層がシール層に相当し、ヘテロ原子含有樹脂層またはポリオレフィン層がラミネート層に相当する。熱融着性樹脂層と、所望によりポリエチレン中間層と、所望により密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層とが、上述した本体部を構成し、ヘテロ原子含有樹脂層と、所望によりポリオレフィン層とが、上述した剥離部の一部を構成する。基材には、一実施形態において、コロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0134】
基材は、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸フィルムである。未延伸フィルムとは、延伸処理を受けていないフィルムであり、例えば、押出成形されたフィルムであって、延伸処理を受けていないフィルムである。「未延伸フィルム」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、インフレーション法等による製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
【0135】
未延伸フィルムに対しては、印刷が困難であることや、印刷時の乾燥の熱でフィルムが収縮することがある。また、印刷時の熱によって、基材における剥離部に相当する層が、基材における本体部に相当する層から剥離してしまうことがある。この点に関しては、上述したように印刷フィルムと基材とを、上記接着層を介して貼り合わせることにより、積層体に印刷層を導入することができ、また印刷時の熱による上記剥離を抑制できる。
【0136】
基材は、従来公知の方法により製造できる。基材は、好ましくは共押出多層フィルムであり、例えば共押出成膜法に製造でき、より好ましくはTダイ法またはインフレーション法により製造できる。基材は、例えば、各層を形成する樹脂または樹脂組成物を溶融状態で押出機から押し出すことにより、形成できる。
【0137】
上記方法によれば、積層体の製造時および製造後のいずれにおいても、本体部における剥離部と接する第1面が直接外気に触れることはない。したがって、積層体の製造時から剥離部を剥離除去するまでの間に、本体部の第1面に埃および塵等の異物が付着することを抑制できる。包装袋の使用時において、積層体の本体部から剥離部を剥離除去することにより、本体部の第1面が露出する。この第1面は、異物の付着が抑制されており、清浄な面である。
【0138】
本開示の積層体におけるポリオレフィンの含有割合は、積層体の質量を基準として、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。このような積層体は、リサイクル性に優れる。上記「積層体におけるポリオレフィンの含有割合」を、例えば、「積層体におけるポリエチレンの含有割合」または「積層体におけるポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0139】
[用途]
本開示の積層体は、包装袋を構成する包装材料として好適に使用できる。上記積層体における本体部の第2面が、包装袋内の収容空間に面する内表面(包装袋内の物品が接触する面)を構成する。
【0140】
クリーンルーム等のクリーン環境内で使用される物品には、高い清浄度が必要とされる。上記物品を収容した包装袋は、クリーン環境内に持ち込まれ、開封される。したがって、包装袋にも、高い清浄度が必要とされる。すなわち、上記物品を収容した包装袋をクリーン環境内に持ち込む場合、包装袋の表面に埃および塵等の異物が付着して、クリーン環境内に包装袋とともに異物が侵入することを抑制する必要がある。本開示の積層体を備える包装袋を用いることにより、例えば、以下のようにしてこのような異物の侵入を抑制できる。
【0141】
まず、本開示の包装袋内に物品を収容し、必要に応じて真空脱気等により脱気し、包装袋の開口部を密封し、包装袋内に物品が収容された包装体を得る。脱気は、包装袋内の気体を除去できれば真空脱気に限られない。例えば、押圧部材を用いて包装袋を外側から押圧することにより脱気を行ってもよい。クリーン環境の前室に包装体を持ち込む。ここで、包装袋を構成する積層体における剥離部(剥離フィルム)を剥離除去する。これにより、包装袋を構成する積層体における本体部(包装フィルム)の第1面が露出する。本体部の第1面は、上述したように異物の付着が抑制されており、清浄な面である。剥離部を剥離除去してなる包装袋は、その表面における異物の付着量が少ない。このような包装袋をクリーン環境内に持ち込む。クリーン環境内において、包装袋を開封して物品を取り出し、使用する。このようにして、包装袋とともに異物がクリーン環境内に侵入することが抑制される。
【0142】
以上の構成によれば、本開示の包装袋を、内袋および外袋を少なくとも備える2重袋、または3重以上の袋として構成する必要はない。しかしながら、本開示の包装袋を、2重袋または3重以上の袋における外袋等として使用することは何ら制限されない。
【0143】
包装袋内に収容される物品としては、例えば、ICおよびLSIなどの半導体製品、半導体装置用バルブおよび半導体製造用フィルタなどの半導体関連部品、精密機械、磁気ディスク、シリコンウェハ、Oリング、ベローズ、医薬品製品、再生医療向け製品、ならびに血球検査装置用希釈液および人工透析液などの薬液製品が挙げられる。物品としては、クリーン環境内で使用される、防塵用衣服、防塵用手袋および器具なども挙げられる。
【0144】
本開示の包装袋は、本開示の積層体を備える。
本開示の包装袋は、一実施形態において、表面を構成する表面シートおよび裏面を構成する裏面シートを備える。表面シートは、1枚の本開示の積層体により構成されていてもよく、裏面シートは、もう1枚の本開示の積層体により構成されていてもよい。表面シートおよび裏面シートは、一体となっていてもよく、1枚の本開示の積層体により構成されていてもよい。
【0145】
包装袋は、通常、ヒートシールされた箇所(ヒートシール部、以下「シール部」ともいう)を有する。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールが挙げられる。
【0146】
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型およびガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。包装袋の平面形状は、例えば、矩形でもよく、矩形以外の円形等の形状でもよい。
【0147】
本開示の積層体を用いて包装袋を作製する一例を説明する。積層体を2枚準備する。2枚の積層体の本体部を対向させて積層体を重ね合わせる。次いで、積層体の外周周縁部である左右および下部の三方にヒートシール部を形成する。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が得られる。
【0148】
本開示の積層体を2枚用いる代わりに、本開示の積層体を1枚準備し、該積層体の本体部の第2面が対向するように折って重ね合わせ、次いで、その左右の外周周縁部の二方にヒートシール部を形成して、包装袋を作製してもよい。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が得られる。この場合、折り返された下部にもヒートシール部を形成してもよく、さらに下部のヒートシール部の下側部分を切断除去してもよい。これにより、包装袋の表面シートおよび裏面シートそれぞれにおいて、剥離部を剥離除去できる。
【0149】
上記で製造した包装袋の未ヒートシール部の開口部から、物品を装入する。次いで、包装袋の開口部をヒ-トシールしてヒートシール部を形成して、包装袋中に物品が収容された包装体を得ることができる。
【0150】
図6aは、本開示の包装袋の一実施形態を示す断面図である。包装袋50のシール部は、剥離部2および本体部4を備える積層体1を重ね合わせヒートシールすることにより形成されている。図6bは、本開示の包装袋の使用形態の一実施形態を示す断面図である。例えば、剥離部2,2は、クリーンルーム内に持ち込まれる直前に、包装袋50の本体部4,4からそれぞれ剥離される。
【0151】
包装袋は、易開封部を備えてもよい。易開封部としては、例えば、包装袋の引き裂きの起点となるノッチ部や、包装袋を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成された易開封線が挙げられる。
【0152】
図7は、本開示の包装袋の一実施形態を示す正面図である。以下、図7を参照して、包装袋の一例を説明する。図7の包装袋50は、物品を収容する収容部50aを備える。包装袋50は、上部51、下部52および側部53,53を含み、正面図において略矩形状の輪郭を有する。なお、「上部」、「下部」および「側部」等の名称、ならびに、「上方」および「下方」等の用語は、包装袋50やその構成要素の位置や方向を相対的に表したものに過ぎない。包装袋50の輸送時や使用時の姿勢等は、本明細書における名称や用語によっては限定されない。
【0153】
図7に示すように、包装袋50は、表面を構成する表面シート54および裏面を構成する裏面シート55を備える。図7に示す包装袋50において、表面シート54および裏面シート55は、それぞれ、1枚の積層体により形成されている。図示はしないが、包装袋50において、表面シート54および裏面シート55は、一体となっていてもよく、1枚の積層体により形成されていてもよい。このとき、積層体は、本体部が包装袋50の内表面を構成するように下部52で折り返されている。この場合、包装袋50は、包装袋50の3辺に沿って延びるシール部を有する。
【0154】
表面シート54および裏面シート55は、内面同士がシール部によって接合されている。図7に示す包装袋50の正面図においては、シール部にハッチングが施されている。シール部は、積層体の熱融着性樹脂層同士が接合されている部分である。
【0155】
図7に示すように、包装袋50は、包装袋50の4辺に沿って延びるヒートシール部を有する。シール部は、上部51に沿って延びる上部シール部51aと、一対の側部53,53に沿って延びる一対の側部シール部53a,53aと、下部52に沿って延びる下部シール部52aと、を含む。物品が収容される前の状態(物品が収容されていない状態)の包装袋50においては、包装袋50の上部51には開口部(図示せず)が形成されている。そして、包装袋50中に物品を収容した後、表面シート54の内面と裏面シート55の内面とを上部51において接合することにより、上部シール部51aが形成されて包装袋50が封止される。
【0156】
上部シール部51a、側部シール部53a,53aおよび下部シール部52aは、表面シート54の内面と裏面シート55の内面とを接合することによって構成されるシール部である。
【0157】
対向するシート54,55同士を接合して包装袋50を封止することができる限りにおいて、シール部を形成するための方法が特に限られることはない。例えば、加熱等によってシートの内面を溶融させ、内面同士を融着させることによって、すなわちヒートシールによって、シール部を形成する。
【0158】
包装袋を構成する積層体は、一実施形態において、ハーフカット線を有する。ハーフカット線とは、積層体を構成する剥離部の表面から、剥離部と本体部との界面にまで達しているが、積層体は貫通していない切れ込み線をいう。ハーフカット線を起点として、積層体における剥離部を容易に手で剥離除去できる。
【0159】
ハーフカット線が形成される位置は、特に限定されない。例えば、矩形状の平面形状を有する包装袋の場合は、包装袋の少なくとも1つの隅部にハーフカット線を設けることが好ましい。ハーフカット線は、包装袋の表面シートおよび裏面シートのいずれにも形成されていることが好ましい。ハーフカット線は、一実施形態において、表面シートおよび裏面シートの隅部において、該シートの側部外縁から下部外縁に延びている。
【0160】
ハーフカット線は、例えば、カッター等を用いて機械的に積層体の厚さ方向に切れ目を入れることにより、または積層体にレーザーを照射することにより、形成できる。図7に示すように、包装袋50のシール部の一つの隅部に、ハーフカット線60が形成されている。
【0161】
本開示は、例えば以下の[1]~[14]に関する。
[1]剥離部と、本体部と、を少なくとも備える積層体であって、前記剥離部は、前記本体部から剥離できるように設けられており、前記剥離部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記剥離部における前記ポリオレフィンの含有割合は、前記剥離部の質量を基準として、80質量%以上であり、前記剥離部は、印刷層を備え、前記本体部は、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記本体部における前記ポリオレフィンの含有割合は、前記本体部の質量を基準として、80質量%以上であり、前記本体部は、前記積層体の一方の表面層として、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を少なくとも備える、積層体。
[2]前記剥離部が、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィンフィルムと、該フィルム上に設けられた前記印刷層と、を含む印刷フィルムを備える、前記[1]に記載の積層体。
[3]前記剥離部が、前記本体部に接する、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を備える、前記[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記ヘテロ原子含有樹脂が、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、前記[3]に記載の積層体。
[5]前記剥離部が、前記印刷層と前記ヘテロ原子含有樹脂層との間に、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層をさらに備える、前記[3]または[4]に記載の積層体。
[6]前記ポリオレフィン層が、前記ポリオレフィンに加えて、変性ポリオレフィンをさらに含有する、前記[5]に記載の積層体。
[7]前記剥離部が、印刷フィルムと、ポリオレフィンを主成分として含有する押出樹脂層と、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層と、を備え、前記印刷フィルムは、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィンフィルムと、該フィルム上に設けられた前記印刷層と、を備え、前記ヘテロ原子含有樹脂層は、前記本体部に接する、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の積層体。
[8]前記本体部が、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、前記積層体の一方の表面層として、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層とを備え、前記本体部における前記ポリエチレン層が、前記剥離部における前記ヘテロ原子含有樹脂層と接している、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の積層体。
[9]前記積層体が、印刷フィルムと、接着層と、基材と、を少なくとも備え、前記印刷フィルムは、ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレンフィルムと、該フィルム上に設けられた前記印刷層と、を備え、前記基材は、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層と、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層と、をこの順に少なくとも備える、前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の積層体。
[10]前記基材が、共押出多層フィルムである、前記[9]に記載の積層体。
[11]前記積層体におけるポリオレフィンの含有割合が、前記積層体の質量を基準として、80質量%以上である、前記[1]~[10]のいずれか一項に記載の積層体。
[12]剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記剥離部と前記本体部との剥離強度が、1.0N/15mm幅以下である、前記[1]~[11]のいずれか一項に記載の積層体。
[13]前記[1]~[12]のいずれか一項に記載の積層体を備える包装袋。
[14]前記積層体における前記熱融着性樹脂層同士が融着して形成されたシール部を有する、前記[13]に記載の包装袋。
【実施例0162】
本開示の積層体について実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本開示の積層体は実施例によって何ら限定されない。
【0163】
[材料]
以下の実施例および比較例で用いた材料を示す。
・ポリアミド(PA)
UBE製、5033B、ポリアミド6/66共重合体、
融点:197℃、密度:1.14g/cm3
MFR:4.0g/10分(温度235℃、荷重2.16kg)
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
日本ポリエチレン製、KF260T、C6-LLDPE、
融点:93℃、密度:0.901g/cm3、MFR:2.0g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
プライムポリマー製、UZ2021L、C6-LLDPE、
融点:120℃、密度:0.919g/cm3、MFR:2.0g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
プライムポリマー製、UZ3520L、C6-LLDPE、
融点:124℃、密度:0.931g/cm3、MFR:2.1g/10分
・低密度ポリエチレン(LDPE)
宇部丸善ポリエチレン製、B128、
融点:114℃、密度:0.928g/cm3、MFR:1.0g/10分
・中密度ポリエチレン(MDPE)
ダウ・ケミカル製、Elite5538G、
融点:129℃、密度:0.941g/cm3、MFR:1.3g/10分
・高密度ポリエチレン(HDPE)
プライムポリマー製、HZ3300F、
融点:130℃、密度:0.949g/cm3、MFR:1.1g/10分
・無水マレイン酸グラフト変性高密度ポリエチレン
ダウ・ケミカル製、BYNEL 40E 1053、接着性樹脂、
融点:130℃、密度:0.960g/cm3、MFR:2.0g/10分
【0164】
[1軸延伸ポリエチレンフィルム(1)]
MDPE(Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜して、厚さ125μmのポリエチレンフィルムを得た。このポリエチレンフィルムを機械方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸し、一方の面にコロナ処理を施し、濡れ指数が52dynとなるように調整して、厚さ25μmの1軸延伸ポリエチレンフィルム(1)(MDOPEフィルム(1))を得た。
【0165】
[1軸延伸ポリエチレンフィルム(2)]
MDPE(Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。このポリエチレンフィルムを機械方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸し、一方の面にコロナ処理を施し、濡れ指数が52dynとなるように調整して、厚さ20μmの1軸延伸ポリエチレンフィルム(2)(MDOPEフィルム(2))を得た。
【0166】
[基材(A)]
80質量%のHDPE(HZ3300F)および20質量%の接着性樹脂(BYNEL 40E 1053)の混合物と、ポリアミド(5033B)と、LLDPE(KF260T)と、LLDPE(UZ3520L)と、80質量%のLLDPE(UZ2021L)および20質量%のLDPE(B128)の混合物とを、インフレーション法により共押出製膜した。このようにして、厚さ15μmのHDPE層(ラミネート層)と、厚さ5μmのポリアミド層と、厚さ20μmのLLDPE層と、厚さ15μmのLLDPE層と、厚さ20μmのポリエチレンブレンド層(シール層)とを備える、総厚さ75μmのフィルムを得た。ラミネート層にコロナ処理を施し、濡れ指数が42dynとなるように調整した。このフィルムを基材(A)とした。
混合物における質量%の表記は、混合物中の各成分の含有割合を示す。
【0167】
[基材(B)]
ポリアミド(5033B)と、LLDPE(KF260T)と、LLDPE(UZ3520L)と、80質量%のLLDPE(UZ2021L)および20質量%のLDPE(B128)の混合物とを、インフレーション法により共押出製膜した。このようにして、厚さ5μmのポリアミド層(ラミネート層)と、厚さ20μmのLLDPE層と、厚さ15μmのLLDPE層と、厚さ20μmのポリエチレンブレンド層(シール層)とを備える、総厚さ60μmのフィルムを得た。ラミネート層にコロナ処理を施し、濡れ指数が42dynとなるように調整した。このフィルムを基材(B)とした。
【0168】
[基材(C)]
ポリアミド層の厚さを10μmに変更したこと以外は基材(A)と同様に製膜して、厚さ15μmのHDPE層(ラミネート層)と、厚さ10μmのポリアミド層と、厚さ20μmのLLDPE層と、厚さ15μmのLLDPE層と、厚さ20μmのポリエチレンブレンド層(シール層)とを備える、総厚さ80μmのフィルムを得た。ラミネート層にコロナ処理を施し、濡れ指数が42dynとなるように調整した。このフィルムを基材(C)とした。
【0169】
[基材(D)]
ポリアミド層の厚さを10μmに変更したこと以外は基材(B)と同様に製膜して、厚さ10μmのポリアミド層(ラミネート層)と、厚さ20μmのLLDPE層と、厚さ15μmのLLDPE層と、厚さ20μmのポリエチレンブレンド層(シール層)とを備える、総厚さ65μmのフィルムを得た。ラミネート層にコロナ処理を施し、濡れ指数が42dynとなるように調整した。このフィルムを基材(D)とした。
【0170】
[実施例1]
1軸延伸ポリエチレンフィルム(1)と基材(A)とを準備した。1軸延伸ポリエチレンフィルム(1)のコロナ処理面にグラビアインキ(DICグラフィックス製、フィナート)を用いてグラビア印刷して、厚さ1μmの印刷層を形成した。当該印刷層の表面に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製、LC600A、融点:106℃、密度:0.918g/cm3、MFR:7.0g/10分)を厚さ20μmで溶融押出しながら基材(A)のラミネート層とサンドラミネートにより貼り合わせて、積層体を得た。この積層体のシール層同士を合わせて、高速三方シール自動製袋機(BH-60D トタニ技研工業製)を用いて、温度120℃、圧着時間1秒、圧力1kgf/cm2の条件でヒートシールして、3方パウチを作成した。
【0171】
[実施例2]
溶融押出した低密度ポリエチレンの厚さを30μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0172】
[実施例3]
溶融押出した低密度ポリエチレンの厚さを10μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0173】
[実施例4]
基材(A)を基材(B)に変更し、基材(B)のコロナ処理面にアンカーコート剤として2液硬化型ポリウレタン接着剤(三井化学製、A-3210/A-3075)を厚さ0.3μmでコートしてアンカーコート層(AC層)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0174】
[実施例5]
基材(A)を基材(C)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0175】
[実施例6]
基材(A)を基材(D)に変更し、基材(D)のコロナ処理面にアンカーコート剤として2液硬化型ポリウレタン接着剤(三井化学製、A-3210/A-3075)を厚さ0.3μmでコートしてアンカーコート層(AC層)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0176】
[実施例7]
1軸延伸ポリエチレンフィルム(1)を1軸延伸ポリエチレンフィルム(2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0177】
[実施例8]
基材(A)を基材(B)に変更し、基材(B)のコロナ処理面にアンカーコート剤として2液硬化型ポリウレタン接着剤(三井化学製、A-3210/A-3075)を厚さ0.3μmでコートしてアンカーコート層(AC層)を形成したこと以外は実施例7と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0178】
[実施例9]
溶融押出した低密度ポリエチレンの厚さを10μmに変更したこと以外は実施例4と同様にして、積層体および3方パウチを作成した。
【0179】
[実施例10]
1軸延伸ポリエチレンフィルム(1)と基材(A)とを準備した。1軸延伸ポリエチレンフィルム(1)のコロナ処理面にグラビアインキ(DICグラフィックス製、フィナート)を用いてグラビア印刷して、厚さ1μmの印刷層を形成した。当該印刷層の表面と基材(A)のラミネート層とを乾燥厚さ3μmの2液硬化型ポリウレタン接着剤(ロックペイント製、RU-77T/H-7)とを介して貼り合わせて、積層体を得た。この積層体のシール層同士を合わせてヒートシールして、3方パウチを作成した。
【0180】
[比較例1]
基材(A)のみを準備した。基材(A)のラミネート層に他のフィルムを貼り合わせず、基材(A)のシール層同士を合わせてヒートシールして、3方パウチを作成した。
【0181】
[比較例2]
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、E5102、PETフィルム)と基材(A)とを準備した。PETフィルムのコロナ処理面にグラビアインキ(DICグラフィックス製、フィナート)を用いてグラビア印刷して、厚さ1μmの印刷層を形成した。当該印刷層にアンカーコート剤として2液硬化型ポリウレタン接着剤(三井化学製、A-3210/A-3075)を厚さ0.3μmでコートしてアンカーコート層(AC層)を形成し、次に当該AC層の表面に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製、LC600A、融点:106℃、密度:0.918g/cm3、MFR:7.0g/10分)を厚さ20μmで溶融押出しながら基材(A)のラミネート層とサンドラミネートにより貼り合わせて、積層体を得た。この積層体のシール層同士を合わせてヒートシールして、3方パウチを作成した。
【0182】
[物性評価]
積層体の物性の評価方法を以下に記載する。
特に言及しない限り、各物性の測定時の環境は、温度23℃および湿度50%RHである。各物性についてそれぞれ3個の試験片について測定を行い、得られた3個の値の算術平均値をそれぞれの物性値として記載した。
【0183】
<剥離強度>
積層体をカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出した。上記試験片と、測定器として卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)とを用いて、JIS Z1707:2019に準拠して、初期チャック間距離:100mm、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて、積層体における剥離部と本体部との剥離強度(N/15mm幅)を測定した。3方パウチのヒートシール部から、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出した。この試験片を用いて、上記と同様にして積層体における剥離部と本体部との剥離強度(N/15mm幅)を測定した。ヒートシール温度が130℃の場合も、ヒートシール温度が120℃の場合と剥離強度は同程度であった。
【0184】
<突刺し強度>
JIS Z1707:2019に準拠して、積層体の突刺し強度を測定した。積層体をカットして、幅:5cm、長さ:5cmのサイズを有する試験片を得た。測定器として、卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)を用いた。直径:1.0mm、先端形状半径:0.5mmの半円形の針を、試験速度:50mm/minで試験片に突き刺し、針が試験片を貫通するまでの最大強度(N)を測定した。上記針を積層体のシール層面(内層から)および印刷フィルム面(外層から)に突き刺し、それぞれの突刺し強度(N)を測定した。
【0185】
<シール強度>
積層体をカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出した。2枚の試験片をそのシール層同士が接するように重ね合わせ、温度130℃(片面加熱)、圧着時間1秒および圧力1kgf/cm2の条件で試験片の一端15mm×15mmの部分をヒートシールして、シール部を形成し、試験体を得た。以下のとおり試験条件を変更したこと以外はJIS Z1707:2019に準拠して、測定器として卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)を用いて、チャック間距離:100mm、試験速度:300mm/minの条件にて、シール強度(N/15mm幅)を測定した。具体的には、試験体のシール部が上記試験機の2つのつかみ具の中央になるように、試験体を180度に開いて、試験体の両端を上記試験機の2つのつかみ具にそれぞれ取り付け、300mm/minの速度でシール部が破壊するまで引っ張り、最大強度(N)を求めた。15mm幅の試験体に対して測定された最大強度(N)を、ヒートシール強度(N/15mm幅)とした。
【0186】
<モノマテリアル率>
積層体および剥離部について、含有量が最も大きい樹脂材料の含有割合(モノマテリアル率、質量%)を算出した。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【符号の説明】
【0189】
1 …積層体
2 …剥離部
4 …本体部
10…印刷フィルム
20…接着層(押出樹脂層または接着剤層)
30…基材
32…熱融着性樹脂層
33…ポリエチレン中間層
34…密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層
36…ヘテロ原子含有樹脂層
38…ポリオレフィン層
40…物品
50…包装袋
50a…収容部
51…上部
51a…上部シール部
52…下部
52a…下部シール部
53…側部
53a…側部シール部
54…表面シート
55…裏面シート
60…ハーフカット線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7