IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-二次電池 図1
  • 特開-二次電池 図2
  • 特開-二次電池 図3
  • 特開-二次電池 図4
  • 特開-二次電池 図5
  • 特開-二次電池 図6
  • 特開-二次電池 図7
  • 特開-二次電池 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015927
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240130BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/56 20210101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/107
H01M50/152
H01M50/169
H01M50/188
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118316
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】影山 雅之
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011KK01
5H028AA07
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC12
5H028HH05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ14
5H029DJ02
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043DA01
5H043EA39
5H043GA24
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】より高い信頼性を有する二次電池を提供する。
【解決手段】この二次電池は、芯材と、電池素子と、外装部材と、外部端子とを備える。芯材は、第1方向に延びる。電池素子は、第1電極と第2電極とを含む積層体が芯材の周囲に巻回されてなるものである。外装部材は、第1方向に貫通する貫通口が設けられた蓋部と、第1方向に電池素子を挟んで蓋部と対向する底部と、蓋部と底部とを繋ぐと共に電池素子を取り囲む側壁部とを有し、電池素子を収容する。外部端子は、蓋部から見て底部と反対側であって第1方向に貫通口と重なる位置に設けられている。ここで、芯材は、外部端子に固定されており、蓋部の外縁は、側壁部のうち底部と反対側の端部と溶接されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる芯材と、
第1電極と第2電極とを含む積層体が前記芯材の周囲に巻回されてなる電池素子と、
前記第1方向に貫通する貫通口が設けられた蓋部と、前記第1方向に前記電池素子を挟んで前記蓋部と対向する底部と、前記蓋部と前記底部とを繋ぐと共に前記電池素子を取り囲む側壁部とを有し、前記電池素子を収容する外装部材と、
前記蓋部から見て前記底部と反対側であって前記第1方向に前記貫通口と重なる位置に設けられた外部端子と
を備え、
前記芯材は、前記外部端子に固定されており、
前記蓋部の外縁は、前記側壁部のうち前記底部と反対側の端部と溶接されている
二次電池。
【請求項2】
第1方向に延びる芯材と、
第1電極と第2電極とを含む積層体が前記芯材の周囲に巻回されてなる電池素子と、
前記第1方向に貫通する貫通口が設けられた蓋部と、前記第1方向に前記電池素子を挟んで前記蓋部と対向する底部と、前記蓋部と前記底部とを繋ぐと共に前記電池素子を取り囲む側壁部とを有し、前記電池素子を収容する外装部材と、
前記蓋部から見て前記底部と反対側であって前記第1方向に前記貫通口と重なる位置に設けられた外部端子と
を備え、
前記芯材は、前記底部に固定されており、
前記底部の外縁は、前記側壁部のうち前記蓋部と反対側の端部と溶接されている
二次電池。
【請求項3】
前記芯材は導電性を有し、前記芯材は前記外部端子および前記第1電極の各々と電気的に接続されると共に前記底部と絶縁されており、
前記底部は前記第2電極と電気的に接続されている
請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記芯材は導電性を有し、前記芯材は前記底部および前記第2電極の各々と電気的に接続されると共に前記外部端子と絶縁されており、
前記外部端子は前記第1電極と電気的に接続されている
請求項2記載の二次電池。
【請求項5】
前記底部と前記側壁部とが一体化して収容部を構成している
請求項1または請求項2記載の二次電池。
【請求項6】
前記蓋部と前記外部端子との間に設けられた絶縁体をさらに備える
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項7】
前記蓋部と前記電池素子との間に設けられた第1絶縁部材をさらに備え、
前記第1絶縁部材は、前記第1方向に前記貫通口と対応する位置に設けられた第1開口を有し、
前記芯材は、前記貫通口および前記第1開口に挿通されている
請求項1記載の二次電池。
【請求項8】
前記底部と前記電池素子との間に設けられた第2絶縁部材をさらに備え、
前記第2絶縁部材は、前記第1方向に前記貫通口と対応する位置に設けられた第2開口を有し、
前記芯材は、前記第2開口に挿通されている
請求項2記載の二次電池。
【請求項9】
前記外装部材の前記第1方向の高さよりも、前記外装部材の前記第1方向と直交する第2方向の外径が大きい
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項10】
前記外装部材の前記蓋部は、前記第1方向に沿って前記電池素子に向けて窪んだ窪み部を有し、
前記貫通口は、前記窪み部に設けられている
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として、二次電池の開発が進められている。この二次電池は、外装部材の内部に収納された正極、負極および電解質を備えており、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えば特許文献1には、正極体と負極体とがセパレータを介して積層または捲回されてなる電極体と、その電極体を収納する外装ケースとを備える密閉型蓄電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-46639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池の性能を改善するために様々な検討がなされている。しかしながら、二次電池の性能には改善の余地がある。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、より高い信頼性を有する二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態の第1の二次電池は、芯材と、電池素子と、外装部材と、外部端子とを備える。芯材は、第1方向に延びる。電池素子は、第1電極と第2電極とを含む積層体が芯材の周囲に巻回されてなるものである。外装部材は、第1方向に貫通する貫通口が設けられた蓋部と、第1方向に電池素子を挟んで蓋部と対向する底部と、蓋部と底部とを繋ぐと共に電池素子を取り囲む側壁部とを有し、電池素子を収容する。外部端子は、蓋部から見て底部と反対側であって第1方向に貫通口と重なる位置に設けられている。ここで、芯材は、外部端子に固定されており、蓋部の外縁は、側壁部のうち底部と反対側の端部と溶接されている。
【0008】
本開示の一実施形態の第2の二次電池は、芯材と、電池素子と、外装部材と、外部端子とを備える。芯材は、第1方向に延びる。電池素子は、第1電極と第2電極とを含む積層体が芯材の周囲に巻回されてなるものである。外装部材は、第1方向に貫通する貫通口が設けられた蓋部と、第1方向に電池素子を挟んで蓋部と対向する底部と、蓋部と底部とを繋ぐと共に電池素子を取り囲む側壁部とを有し、電池素子を収容する。外部端子は、蓋部から見て底部と反対側であって第1方向に貫通口と重なる位置に設けられている。芯材は、底部に固定されており、底部の外縁は、側壁部のうち蓋部と反対側の端部と溶接されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態の第1の二次電池によれば、芯材が外部端子に固定されているので、芯材の周囲に巻回される電池素子の巻き崩れが生じにくい。よって、高い信頼性を有する。また、この二次電池は、蓋部の外縁が側壁部のうち底部と反対側の端部と溶接された構造を有するので、容易に製造可能である。
【0010】
本開示の一実施形態の第2の二次電池によれば、芯材が外装部材の底部に固定されているので、芯材の周囲に巻回される電池素子の巻き崩れが生じにくい。よって、高い信頼性を有する。また、この二次電池は、蓋部の外縁が側壁部のうち蓋部と反対側の端部と溶接されてた構造を有するので、容易に製造可能である。
【0011】
なお、本開示の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1の実施形態としての二次電池の構成を表す斜視図である。
図2図1に示した二次電池の構成を表す断面図である。
図3図2に示した電池素子の構成を表す断面図である。
図4図1に示した二次電池の製造工程に用いられる外装缶の構成を表す斜視図である。
図5図1に示した二次電池の製造方法の一工程を表す説明図である。
図6】本開示の第2の実施形態としての二次電池の構成を表す断面図である。
図7】変形例1の二次電池の構成を表す断面図である。
図8】実施例としての二次電池の巻きずれ量を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.第1の実施の形態の二次電池
1-1.構成
1-2.動作
1-3.製造方法
1-4.作用および効果
2.第2の実施の形態の二次電池
2-1.構成
2-2.動作
2-3.製造方法
2-4.作用および効果
3.変形例
4.実施例
【0014】
<1.第1の実施の形態の二次電池>
まず、本開示の第1の実施の形態の二次電池に関して説明する。
【0015】
ここで説明する二次電池は、扁平かつ柱状の立体的形状を有しており、いわゆるコイン型およびボタン型などと呼称されている。この二次電池は、後述するように、互いに対向する一対の底部と、それら一対の底部の間に位置する側壁部とを有している。この二次電池では、外径よりも高さが小さくなっている。ここでいう「外径」とは、底部の最大直径(最大外径)である。この二次電池では、対向する一対の底部の各々の最大直径は互いに実質的に等しい。また、ここでいう「高さ」とは、一方の底部の上面から他方の底部の下面までの最大の距離である。なお、本実施の形態では、一対の底部が対向する方向を高さ方向Zとしている。
【0016】
二次電池の充放電原理は、特に限定されないが、以下では、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる場合に関して説明する。この二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えている。この二次電池では、充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するために、その負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。
【0017】
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0018】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0019】
<1-1.構成>
図1は、二次電池の斜視構成を表している。図2は、図1に示した二次電池の断面構成を表している。図3は、図2に示した電池素子40の断面構成を表している。ただし、図3では、電池素子40の断面構成のうちの一部だけを拡大している。
【0020】
以下では、便宜上、図1および図2のそれぞれにおける上側を二次電池の上側として説明すると共に、図1および図2のそれぞれにおける下側を二次電池の下側として説明する。
【0021】
ここで説明する二次電池は、図1に示したように、外径Dよりも高さHが小さい立体的形状、すなわち扁平かつ柱状の立体的形状を有している。ここでは、二次電池の立体的形状は、扁平かつ円筒(円柱)状である。なお、本実施の形態では、図1および図2のそれぞれにおける紙面上下方向を高さ方向Zとしている。したがって、高さHは、本実施の形態の二次電池における高さ方向Zの寸法を意味する。また、外径Dは、本実施の形態の二次電池における高さ方向Zと直交する方向の寸法を意味する。
【0022】
二次電池の寸法は、特に限定されないが、一例を挙げると、外径D=3mm~30mmであると共に、高さH=0.5mm~70mmである。ただし、高さHに対する外径Dの比(D/H)は、1よりも大きくなっている。すなわち、外径Dのほうが高さHよりも大きい。この比(D/H)の上限は、特に限定されないが、25以下であることが好ましい。
【0023】
この二次電池は、図1図3に示したように、外装缶10と、外部端子20と、電池素子40とを備えている。ここでは、二次電池は、さらに、ガスケット30と、負極リード52と、絶縁フィルム62,64と、芯材13とを備えている。
【0024】
[外装缶]
外装缶10は、図1および図2に示したように、電池素子40などを収納する中空の外装部材である。外装缶10は導電性材料により構成されている。
【0025】
ここでは、外装缶10は、扁平かつ円柱状である二次電池の立体的形状に応じて、扁平かつ円柱状の立体的形状を有している。このため、外装缶10は、互いに対向する一対の底部M1,M2と、その底部M1,M2の間に位置する側壁部M3とを有している。すなわち、側壁部M3は、底部M1と底部M2とを繋ぐと共に電池素子40を取り囲んでいる。側壁部M3の上端部は底部M1に連結されている。側壁部M3の下端部は底部M2に連結されている。上記したように、外装缶10は略円柱状であるため、底部M1,M2のそれぞれの平面形状は略円形であると共に、側壁部M3の表面は凸型の湾曲面である。
【0026】
また、外装缶10は、互いに溶接された収納部11および蓋部12を含んでいる。すなわち、収容部11に蓋部12が溶接されることにより、外装缶10の内部空間は封止されている。なお、本実施の形態では、底部M1が蓋部12を構成し、底部M2および側壁部M3が一体となって収容部11を構成している。よって、蓋部12の外縁は、側壁部M3の上端部と溶接されている。
【0027】
収納部11は、電池素子40などを内部に収納する扁平かつ円柱状の収納部材である。収納部11は、上端部が開放されていると共に下端部が閉塞されている中空の構造を有している。すなわち、収納部11は、電池素子40が高さ方向Zに挿通可能な挿通口として、上端部に開口部11K(図2)を有している。
【0028】
図2に示したように、蓋部12は、収納部11の開口部11Kを閉塞する略円盤状の蓋部材であり、貫通口12Kを有している。貫通口12Kは内径φ12Kを有している。貫通口12Kは、電池素子40と外部端子20とを互いに接続させるための接続経路として利用される。蓋部12の外縁は、上記したように、収納部11の開口部11Kに溶接されている。蓋部12には、ガスケット30を介して外部端子20が取り付けられている。すなわち、蓋部12は、ガスケット30を介して外部端子20を支持している。外部端子20は、貫通口12Kを塞ぐように、ガスケット30を介して蓋部12に取り付けられている。外部端子20は、外装缶10から電気的に絶縁されている。
【0029】
なお、完成後の二次電池では、上記したように、蓋部12が収納部11に溶接された状態となっている。上述したように、開口部11Kは蓋部12により閉塞されている。したがって、二次電池の外観を見ても、収納部11が開口部11Kを有していたかどうかを確認することができないとも考えられる。
【0030】
しかしながら、蓋部12が収納部11に溶接されていると、外装缶10の表面、より具体的には収納部11と蓋部12との境界部に溶接痕が残っている。その溶接痕の有無に基づいて、収納部11が開口部11Kを有していたかどうかを事後的に確認することができる。
【0031】
すなわち、外装缶10の表面に溶接痕が残っている場合には、収納部11が開口部11Kを有していたということである。一方、外装缶10の表面に溶接痕が残っていない場合には、収納部11が開口部11Kを有していなかったということである。
【0032】
蓋部12は、収納部11の内部に向かって高さ方向Zに沿って部分的に突出するように折れ曲がっており、窪み部12Hを形成している。すなわち、外装缶10の外部から眺めた場合、蓋部12は、外装缶10の内部に収容された電池素子40に向けて高さ方向Zに部分的に窪んだ形状を有している。窪み部12Hは、高さ方向Zに貫通する貫通口12Kと、高さ方向Zと直交する水平面に沿って貫通口12Kを取り囲む底部12HBと、その底部12HBの外縁に沿って立設する壁部12HWとを含んでいる。また、蓋部12のうちの窪み部12H以外の部分は、周辺部12Rとなっている。周辺部12Rは、二次電池の高さ方向Zと直交する水平面内において窪み部12Hを取り囲むように設けられた円環状をなしている。周辺部12Rは、窪み部12Hの周囲を取り囲んで高さ方向Zに沿って電池素子40から遠ざかるように突出する部分である。したがって、高さ方向Zにおいて、窪み部12Hの底部12HBの表面12HSは、周辺部12Rの表面12RSよりも、収納部11の内部に向かって低い位置にある。すなわち、高さ方向Zにおいて、窪み部12Hの底部12HBの表面12HSと電池素子40との距離は、周辺部12Rの表面12RSと電池素子40との距離よりも短い。
【0033】
窪み部12Hの平面視形状、すなわち二次電池を上方から見た場合の窪み部12Hの外縁により画定される形状は、特に限定されない。ここでは、窪み部12Hの平面視形状は、略円形である。なお、窪み部12Hの内径および深さは、特に限定されるものではなく、任意に設定可能である。但し、窪み部12Hにガスケット30を介して外部端子20を取り付けた状態において、外部端子20の表面20Sの高さ位置が周辺部12Rの表面12RSの高さ位置よりも低くなるように、窪み部12Hの深さは設定される。
【0034】
上記したように、外装缶10は、互いに物理的に分離されていた収納部11および蓋部12が互いに溶接されている缶であり、いわゆる溶接缶である。これにより、溶接後の外装缶10は、全体として物理的に一体化された1個の部材であるため、事後的に収納部11と蓋部12とに分離できない状態である。
【0035】
溶接缶である外装缶10は、加締め加工を用いて形成されたクリンプ缶とは異なる缶であり、いわゆるクリンプレス缶である。外装缶10の内部において素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加するからである。この「素子空間体積」とは、電池素子40を収納するために利用可能である外装缶10の内部空間の体積(有効体積)である。
【0036】
また、溶接缶である外装缶10は、互いに折り重なった部分を有していないと共に、2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない。
【0037】
「互いに折り重なった部分を有していない」とは、外装缶10の一部が互いに折り重なるように加工(折り曲げ加工)されていないことを意味している。また、「2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない」とは、二次電池の完成後において外装缶10が物理的に1個の部材であるため、その外装缶10が事後的に2個以上の部材に分離できないことを意味している。すなわち、完成後の二次電池における外装缶10の状態は、事後的に分離できるように2個以上の部材が互いに重なりながら組み合わされている状態でない。
【0038】
ここで、外装缶10は導電性を有している。詳細には、収納部11および蓋部12のそれぞれが導電性を有している。外装缶10は、負極リード52を介して電池素子40の負極42と電気的に接続されている。このため、外装缶10は、負極42の外部接続用端子でもある。本実施の形態の二次電池は、外装缶10とは別個に負極42の外部接続用端子を備えていなくてもよいことから、負極42の外部接続用端子の存在に起因する素子空間体積の減少が抑制される。これにより、素子空間体積が増加するので、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0039】
具体的には、外装缶10は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む金属缶である。その金属缶を構成する導電性材料は、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、鉄合金、銅合金およびニッケル合金などである。ステンレスの種類は、特に限定されないが、具体的には、SUS304およびSUS316などである。ただし、収納部11の形成材料と蓋部12の形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0040】
蓋部12は、正極41の外部接続用端子としての外部端子20からガスケット30を介して絶縁されている。負極42の外部接続用端子である外装缶10と、正極41の外部接続用端子である外部端子20との接触、すなわち短絡を防止するためである。
【0041】
[外部端子]
外部端子20は、図1および図2に示したように、二次電池が電子機器に搭載される際に、その電子機器に接続される接続用の端子である。外部端子20は、上記したように、外装缶10のうちの蓋部12に取り付けられて支持されている。外部端子20は、蓋部12から見て底部M2と反対側であって高さ方向Zに貫通口12Kと重なる位置に設けられている。
【0042】
ここでは、外部端子20は、芯材13を介して電池素子40の正極41に接続されている。このため、外部端子20は、正極41の外部接続用端子でもある。これにより、二次電池の使用時には、正極41の外部接続用端子としての外部端子20および負極42の外部接続用端子としての外装缶10を介して二次電池が電子機器に接続される。よって、その電子機器は、二次電池を電源として用いて動作可能になる。
【0043】
外部端子20は、二次電池の高さ方向Zと直交する水平面に沿って広がる平坦な略板状の部材であり、ガスケット30を介して窪み部12Hの内部に配置されている。外部端子20は、ガスケット30を介して蓋部12から絶縁されている。ここでは、図2に示したように、高さ方向Zにおいて、外部端子20の表面20Sの位置は、外装缶10の周辺部12Rの表面12RSの位置よりも電池素子40に向けて低くなっている。すなわち、外部端子20は、その上端である表面20Sが表面12RSよりも電池素子40に向けて凹むように、窪み部12Hの内部に収納されている。本実施の形態の二次電池では、外部端子20が蓋部12よりも上方に突出している場合と比較して、二次電池の高さが小さくなる。このため、二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。また、他の導電部材を介して外装缶10と外部端子20との短絡が生じるのを防ぐことができる。また、本実施の形態では、外部端子20の周辺部分が、窪み部12Hの底部12HBと高さ方向Zにおいて重なり合っている。外部端子20と蓋部12との重なり部分を有することにより、二次電池全体としての機械的強度を向上させることができる。ここで、外部端子20と周辺部分との重なり部分における高さ方向Zと直交する水平面に沿った長さは、外部端子20の厚さよりも大きく、底部12HBの厚さよりも大きいとよい。
【0044】
なお、外部端子20の外径は、窪み部12Hの内径よりも小さいため、その外部端子20は、周囲において蓋部12から離隔されている。これにより、ガスケット30は、外部端子20と蓋部12(窪み部12H)との間の領域のうちの一部だけに配置されており、より具体的には、ガスケット30が存在しなければ外部端子20と蓋部12とが互いに接触し得る場所だけに配置されている。但し、ガスケット30は、窪み部12Hの壁部12HWの内壁面と外部端子20の外縁20Tとの間にも設けられているとよい。また、蓋部12と外部端子20とがガスケット30により固着されているとよい。
【0045】
また、外部端子20は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などである。ただし、外部端子20は、クラッド材料により形成されていてもよい。このクラッド材料は、ガスケット30に近い側から順にアルミニウム層およびニッケル層を含んでおり、そのクラッド材料では、アルミニウム層とニッケル層とが互いに圧延接合されている。
【0046】
[ガスケット]
ガスケット30は、図2に示したように、外装缶10(蓋部12)と外部端子20との間に配置された絶縁部材である。外部端子20は、ガスケット30を介して蓋部12に固定されている。ガスケット30は、貫通口12Kに対応する箇所に貫通口を有するリング状の平面形状を有している。また、ガスケット30は、絶縁性の高分子化合物などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性材料は、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどの樹脂である。
【0047】
ガスケット30の設置範囲は、特に限定されず、任意に設定可能である。ここでは、ガスケット30は、窪み部12Hの内部において蓋部12の上面と外部端子20の下面との間の隙間に配置されている。但し、上述したように、ガスケット30は、窪み部12Hの壁部12HWの内壁面と外部端子20の外縁20Tとの間にも設けられているとよい。また、蓋部12Hと外部端子20とがガスケット30により固着されているとよい。
【0048】
[電池素子]
電池素子40は、図2および図3に示したように、充放電反応を進行させる発電素子であり、外装缶10の内部に収納されている。電池素子40は、正極41および負極42を含んでいる。ここでは、電池素子40は、さらに、セパレータ43と、液状の電解質である電解液(図示せず)とを含んでいる。
【0049】
図2に示した中心線PCは、二次電池(外装缶10)の外径Dに沿った方向における電池素子40の中心に対応する線分である。すなわち、中心線PCの位置Pは、電池素子40の中心の位置に対応している。
【0050】
電池素子40は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、電池素子40では、正極41および負極42がセパレータ43を介して互いに積層されている。さらに、積層された正極41、負極42およびセパレータ43が、位置Pに配置された芯材13の周囲に巻回されている。正極41および負極42は、セパレータ43を介して互いに対向した状態を維持しつつ芯材13に巻き付けられている。すなわち、電池素子40の中心に、高さ方向Zに延びる芯材13が存在する。
【0051】
ここでは、正極41、負極42およびセパレータ43は、セパレータ43が巻回電極体の最外周および巻回電極体の最内周のそれぞれに配置されるように巻回されている。正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれの巻回数は、特に限定されず、任意に設定可能である。
【0052】
電池素子40は、外装缶10の立体的形状に即した立体的形状を有している。具体的には、電池素子40は、扁平かつ円柱状の立体的形状を有している。電池素子40が外装缶10の立体的形状とは異なる立体的形状を有している場合と比較して、その外装缶10の内部に電池素子40が収納された際に、いわゆるデッドスペース、具体的には外装缶10と電池素子40との間の空隙が発生しにくくなる。このため、外装缶10の内部空間が有効に利用される。その結果、素子空間体積が増加し、二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0053】
(正極)
正極41は、充放電反応を進行させるために用いられる第1電極であり、図3に示したように、正極集電体41Aおよび正極活物質層41Bを含んでいる。
【0054】
正極集電体41Aは、正極活物質層41Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体41Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、アルミニウムなどである。
【0055】
正極活物質層41Bは、正極集電体41Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層41Bは、正極集電体41Aの片面だけに設けられていてもよい。また、正極活物質層41Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などを含んでいてもよい。正極活物質層41Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などである。
【0056】
正極活物質は、リチウム化合物を含んでいる。このリチウム化合物は、リチウムを構成元素として含む化合物の総称であり、より具体的には、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物である。高いエネルギー密度が得られるからである。ただし、リチウム化合物は、さらに、他の元素(リチウムおよび遷移金属元素を除く。)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。リチウム化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 およびLiMn2 4 などであると共に、リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 およびLiMnPO4 などである。
【0057】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴムなどであると共に、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどである。正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0058】
(負極)
負極42は、充放電反応を進行させるために用いられる第2電極であり、図3に示したように、負極集電体42Aおよび負極活物質層42Bを含んでいる。
【0059】
負極集電体42Aは、負極活物質層42Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体42Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、銅などである。
【0060】
負極活物質層42Bは、負極集電体42Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層42Bは、負極集電体42Aの片面だけに設けられていてもよい。また、負極活物質層42Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。負極活物質層42Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0061】
負極活物質は、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方を含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素は、ケイ素およびスズのうちの一方または双方などである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2、または0.2<x<1.4)などである。
【0062】
ここでは、負極42の高さは、正極41の高さよりも大きくなっている。すなわち、負極42は、正極41よりも上方に突出していると共に、その正極41よりも下方に突出している。正極41から放出されたリチウムが析出することを防止するためである。この「高さ」とは、上記した二次電池の高さHに対応する寸法であり、すなわち図1および図2のそれぞれにおける上下方向の寸法である。ここで説明した高さの定義は、以降においても同様である。
【0063】
(セパレータ)
セパレータ43は、図2および図3に示したように、正極41と負極42との間に配置された絶縁性の多孔質膜である。セパレータ43は、正極41と負極42との短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。セパレータ43は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0064】
ここでは、セパレータ43の高さは、負極42の高さよりも大きくなっている。すなわち、セパレータ43は、負極42よりも上方に突出していると共に、負極42よりも下方に突出しているとよい。
【0065】
(電解液)
電解液は、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などの非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0066】
また、蓋部12と電池素子40との間には、絶縁フィルム62が配置されている。これにより、蓋部12と電池素子40とが絶縁フィルム62を介して互いに絶縁され、蓋部12と電池素子40の正極41との短絡が防止される。
【0067】
[負極リード]
負極リード52は、図2に示したように、外装缶10の内部に収納されている。負極リード52は、負極42および外装缶10(収納部11)のそれぞれに電気的に接続されている。したがって、収容部11(底部M2)は、負極リード52を介して負極42と電気的に接続されている。ここでは、二次電池は、1つの負極リード52を備えている。ただし、二次電池は、2以上の負極リード52を備えていてもよい。
【0068】
負極リード52は、負極42の下端部に接続されており、より具体的には、負極集電体42Aの下端部に接続されている。また、負極リード52は、収納部11の底面に接続されている。負極リード52の接続方法は、特に限定されないが、具体的には、抵抗溶接法およびレーザー溶接法などの溶接法のうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0069】
負極リード52の形成材料に関する詳細は、負極集電体42Aの形成材料に関する詳細と同様である。ただし、負極リード52の形成材料と負極集電体42Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0070】
負極42に対する負極リード52の接続位置は、特に限定されず、任意に設定可能である。ここでは、負極リード52は、巻回電極体を構成する負極42の最外周部分に接続されている。
【0071】
なお、負極リード52は、負極集電体42Aとは別体として設けられている。ただし、負極リード52は、負極集電体42Aと物理的に連続していることから、負極集電体42Aと一体化されていてもよい。
【0072】
[絶縁フィルム]
絶縁フィルム62は、図2に示したように、高さ方向Zにおいて蓋部12と電池素子40との間に配置されている第1絶縁部材である。ここでは、絶縁フィルム62は、高さ方向Zにおいて貫通口12Kに対応する箇所に開口62Kを有するリング状の平面形状を有している。開口62Kは、内径φ62Kを有している。貫通口12Kの内径φ12Kおよび開口62Kの内径φ62Kは、後述する芯材13の外径φ13よりも大きい。
【0073】
ここでは、絶縁フィルム62は、接着層を介して蓋部12に接着されていてもよい。
【0074】
また、絶縁フィルム62は、絶縁性の高分子化合物などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。絶縁フィルム62に含まれる絶縁性材料は、ポリイミドなどである。
【0075】
絶縁フィルム64は、図2に示したように、高さ方向Zにおいて底部M2と電池素子40との間に設けられた第2絶縁部材である。絶縁フィルム64は、芯材13と、負極リード52および底部M2とを電気的に絶縁している。
【0076】
絶縁フィルム64の形成材料に関する詳細は、絶縁フィルム62の形成材料に関する詳細と同様である。ただし、絶縁フィルム64の形成材料と絶縁フィルム62の形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0077】
[芯材]
芯材13は、例えば中心線PCを中心軸とする円柱状もしくは円筒状の外観を有する部材である。芯材13は、外径φ13Kを有している。外径φ13は、電池素子40の内径に実質的に等しい。芯材13は、貫通口12Kおよび絶縁フィルム62の開口62Kに挿通されて外部端子20に固定されている。本実施の形態の二次電池では、芯材13は導電性を有し、外部端子20および正極41とそれぞれ電気的に接続されている。例えば、電池素子40における正極41の最内周側の端部が芯材13に電気的に接続されている。したがって、芯材13を介して外部端子20と正極41とが電気的に接続されている。先に述べたように芯材13と底部M2および負極リード52との間には絶縁フィルム64が設けられていることから、芯材13は底部M2および負極リード52と物理的に離間しており、電気的に絶縁されている。
【0078】
[その他]
なお、この二次電池は、さらに、1種類または2種類以上の他の構成要素を備えていてもよい。
【0079】
具体的には、二次電池は、安全弁機構を備えている。この安全弁機構は、外装缶10の内圧が一定以上に到達すると、外装缶10と電池素子40との電気的接続を切断するようになっている。外装缶10の内圧が一定以上に到達する原因は、二次電池の内部において短絡が発生すること、二次電池が外部から加熱されることなどである。安全弁機構の設置場所は、特に限定されないが、中でも、その安全弁機構は、底部M1,M2のうちのいずれかに設けられていることが好ましく、外部端子20が取り付けられていない底部M2に設けられていることがより好ましい。
【0080】
また、二次電池は、外装缶10と電池素子40との間に絶縁フィルム62,64以外の絶縁体を備えていてもよい。この絶縁体は、絶縁フィルムおよび絶縁シートなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、外装缶10と電池素子40との短絡を防止する。絶縁体の設置範囲は、特に限定されず任意に設定可能である。
【0081】
なお、外装缶10には、開列弁が設けられている。この開列弁は、外装缶10の内圧が一定以上に到達した際に開裂するため、その内圧を開放する。開列弁の設置場所は、特に限定されないが、中でも、上記した安全弁機構の設置場所と同様に、底部M1,M2のうちのいずれかが好ましく、特に底部M2がより好ましい。
【0082】
<1-2.動作>
二次電池の充電時には、電池素子40において、正極41からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極42に吸蔵される。一方、二次電池の放電時には、電池素子40において、負極42からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極41に吸蔵される。これらの充放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0083】
<1-3.製造方法>
図4は、二次電池の製造工程に用いられる外装缶10の斜視構成を表しており、図1に対応している。
【0084】
図4は、収納部11に蓋部12が溶接される前の、蓋部12が収納部11から分離されている状態を示している。
【0085】
以下の説明では、図4と共に、随時、既に説明した図1図3を参照する。
【0086】
ここでは、外装缶10を形成するために、図4に示したように、互いに物理的に分離されている収納部11および蓋部12を用意する。収納部11は、底部M2と側壁部M3とが互いに一体化された略器状の部材であり、開口部11Kを有している。蓋部12は、底部M1に該当する略板状の部材であり、蓋部12に設けられた窪み部12Hには、ガスケット30を介して外部端子20をあらかじめ取り付けておく。
【0087】
ただし、互いに物理的に分離されている底部M2と側壁部M3とをそれぞれ用意し、底部M2に側壁部M3を溶接することにより収納部11を形成してもよい。
【0088】
[正極の作製]
最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤などを混合することにより正極合剤を作製する。次に、作製した正極合剤を有機溶剤などに投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。続いて、正極集電体41Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層41Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて正極活物質層41Bを圧縮成型する。この場合には、正極活物質層41Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極41が作製される。
【0089】
[負極の作製]
正極41の作製手順と同様の手順により、負極42を作製する。具体的には、負極活物質、負極結着剤および負極導電剤などを混合してなる負極合剤を有機溶剤に投入してペースト状の負極合剤スラリーを調製したのち、負極集電体42Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層42Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて負極活物質層42Bを圧縮成型する。これにより、負極42が作製される。
【0090】
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
【0091】
[二次電池の組み立て]
最初に、抵抗溶接法などの溶接法を用いて、負極リード52の第1端部を負極42(負極集電体42A)に接続させる。次に、芯材13を、外部端子20がガスケット30を介して取り付けられている蓋部12の中央部に取り付ける。さらに、絶縁フィルム62を、開口62Kに芯材13を挿通させるようにして蓋部12に重ね合わせる。その際、絶縁フィルム62を、蓋部12の底部12HBに接着等により固定するようにしてもよい。
【0092】
続いて、正極41と負極42とをセパレータ43を介して積層させたのち、図5に示したように、正極41、負極42およびセパレータ43を含む積層体40Sを芯材13の周囲に巻回させることにより、巻回体40Z(図4参照)を作製する。巻回体40Zは、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子40の構成と同様の構成を有している。巻回体40Zを作製する際には、正極41の端部を溶接等により芯材13に接続したのち、正極41、負極42およびセパレータ43を含む積層体40Sを芯材13に巻き付けるようにする。なお、図4では負極リード52の図示を省略している。また、図4では外部端子20と芯材13とが離間して描かれているが、実際には外部端子20と芯材13とが接続されている。
【0093】
続いて、開口部11Kから収納部11の内部に電解液を注入する。そののち、収容部11の底部M2に負極リード52の第2端部を抵抗溶接法などの溶接法により接続したのち、巻回体40Zが開口部11Kから収納部11の内部に収納されるように、蓋部12と収容部11とを重ね合わせる。その際、蓋部12が開口部11Kを塞ぐようにする。また、底部M2および負極リード52と電池素子40との間に絶縁フィルム64を載置する。これにより、正極41、負極42およびセパレータ43を含む巻回体40Zに電解液が含浸され、巻回電極体である電池素子40が作製される。なお、巻回体40Zを収容部11に収容する前に、あらかじめ巻回体40Zに電解液を含浸させておいてもよい。
【0094】
最後に、レーザー溶接法などの溶接法を用いて収納部11に蓋部12を溶接する。これにより、外装缶10が形成されると共に、外装缶10の内部に電池素子40などが収納され、二次電池の組み立てが完了する。
【0095】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、負極42などの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、二次電池が完成する。
【0096】
<1-4.作用および効果>
このように、本実施の形態の二次電池によれば、電池素子40を構成する積層体が、外部端子20に固定された芯材13の周囲に巻回されている。このため、電池素子40の巻回状態が安定化され、電池素子40の巻き緩みや巻きずれが生じにくい。よって、この二次電池は高い信頼性を得ることができる。そのうえ、外装缶10の内部空間を占める電池素子40の体積比率が向上する。
【0097】
また、本実施の形態の二次電池では、芯材13が導電性を有し、芯材13が外部端子20および正極41とそれぞれ電気的に接続されると共に負極42と導通する底部M2と絶縁されている。そのため、芯材13を、外部端子20と正極41とを繋ぐ正極リードとして利用することができるので、正極リードを別途設けなくて済む。このため、外装缶10の内部空間を占める電池素子40の体積比率が向上する。よって、この二次電池は高容量化に適する。また、正極リードを電池素子40および外部端子20の各々と接続する工程が省略でき、製造容易性が向上する。また、この二次電池では、正極リードを用いる場合と比較して、電池素子40と外部端子20との電気的接続をより安定して維持することができる。
【0098】
また、本実施の形態の二次電池では、外部端子20に固定された芯材13が挿通する貫通口12Kを含む蓋部12の外縁は、側壁部M3のうち底部M2と反対側の端部である上端部と溶接されるようにしている。このため、電池素子40が芯材13に巻き付けられた状態で、すなわち、外部端子20、芯材13、電池素子40、および蓋部12が一体化された状態で収容部11に収容し、蓋部12の外縁を収容部11の開口部11Kに容易に溶接し、電池素子40を外装缶10の内部に密封することができる。
【0099】
また、窪み部12Hは、高さ方向Zに貫通する貫通口12Kと、高さ方向Zと直交する水平面に沿って貫通口12Kを取り囲む底部12HBとを含み、外部端子20の一部が、窪み部12Hの底部12HBと高さ方向Zにおいて重なり合っている。このように、本実施の形態の二次電池は、外部端子20と蓋部12との重なり部分を有することにより、二次電池全体としての機械的強度を向上させることができる。特に、外部端子20と底部12HBとの重なり部分の、高さ方向Zと直交する水平面に沿った長さが、外部端子20の厚さよりも大きく、かつ、底部12HBの厚さよりも大きい。このため、よりいっそう機械的強度が向上する。
【0100】
また、本実施の形態の二次電池では、蓋部12と外部端子20とが絶縁性樹脂であるガスケット30により固着されている。このため、振動に対する機械的強度を高くすることができる。窪み部12と外部端子20との隙間に異物が進入することによる短絡発生を防止できる。
【0101】
また、本実施の形態の二次電池では、蓋部12に窪み部12Hを設け、外部端子20を窪み部12Hに配置するようにしている。このため、電池容量を確保しつつ、二次電池の高さ寸法を低減することができる。
【0102】
また、二次電池が扁平かつ柱状であり、すなわち二次電池がコイン型およびボタン型などと呼称される二次電池であれば、サイズの観点において制約が大きい小型の二次電池においても正極リード51が破損しにくくなるため、物理的耐久性の観点においてより高い効果を得ることができる。
【0103】
また、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られる。
【0104】
<2.第2の実施の形態の二次電池>
続いて、図6を参照して本開示の第2の実施の形態としての二次電池に関して説明する。図6は、第2の実施の形態としての二次電池の断面構成を表しており、上記第1の実施の形態の二次電池を表す図2に対応している。
【0105】
<2-1.構成>
上記第1の実施の形態の二次電池では、芯材13を外部端子20に固定すると共に収容部11の底部M2と離間させるようにしている。これに対し、図6に示した本実施の形態の二次電池では、芯材13を底部M2に固定すると共に外部端子20と離間させるようにしている。そのため、図6の二次電池では、芯材13は、貫通口12Kおよび絶縁フィルム62の開口62Kに挿通されずに絶縁フィルム64に設けられた開口64Kに挿通されている。なお、開口64Kは、内径φ64Kを有している。開口64Kの内径φ64Kは、芯材13の外径φ13よりも大きい。また、図6に示した本実施の形態の二次電池では、負極リード52を有しない代わりに、正極リード51を有するようにしている。本実施の形態の二次電池では、芯材13は導電性を有し、底部M2および負極42とそれぞれ電気的に接続されている。例えば、電池素子40における負極42の最内周側の端部が芯材13に電気的に接続されている。したがって、芯材13を介して底部M2と負極42とが電気的に接続されている。なお、外部端子20と正極41とは正極リード51により互いに電気的に接続されている。さらに、本実施の形態の二次電池では、外装缶10が、収容部11と蓋部12との代わりに、底部M1と側壁部M3とが一体化された収容部14と、側壁部M3の下端部と溶接された外縁を有する蓋部15とを備えている。本実施の形態の二次電池は、上記の点を除き、上記第1の実施の形態の二次電池の構成と実質的に同じ構成を有する。
【0106】
<2-2.動作>
本実施の形態の二次電池の動作は上記第1の実施の形態の二次電池と同じである。
【0107】
<2-3.製造方法>
まず、外装缶10を形成するために、互いに物理的に分離されている収納部14および蓋部15を用意する。収納部14は、底部M1と側壁部M3とが互いに一体化された略器状の部材であり、下方に開口部14Kを有している。蓋部15は、底部M2に該当する略板状の部材であり、底部M1に設けられた窪み部12Hには、ガスケット30を介して外部端子20をあらかじめ取り付けておく。
【0108】
次に、正極41の作製、負極42の作製、および電解液の調製についてはいずれも上記第1の実施の形態の二次電池の製造方法と同様に行うことができる。
【0109】
続いて二次電池の組み立てを行う。まず、抵抗溶接法などの溶接法を用いて、正極リード51の第1端部を正極41(正極集電体41A)に接続させる。次に、芯材13を、蓋部15の中央部に取り付ける。さらに、絶縁フィルム64を、開口64Kに芯材13を挿通させるようにして蓋部15に重ね合わせる。その際、絶縁フィルム62を、蓋部15に接着等により固定するようにしてもよい。
【0110】
続いて、正極41と負極42とをセパレータ43を介して積層させたのち、図5に示したように、正極41、負極42およびセパレータ43を含む積層体40Sを芯材13の周囲に巻回させることにより、巻回体40Z(図4参照)を作製する。巻回体40Zを作製する際には、負極42の端部を溶接等により芯材13に接続したのち、正極41、負極42およびセパレータ43を含む積層体40Sを芯材13に巻き付けるようにする。
【0111】
続いて、開口部14Kから収納部14の内部に電解液を注入する。そののち、収容部14の底部M1に正極リード51の第2端部を抵抗溶接法などの溶接法により接続したのち、巻回体40Zが開口部14Kから収納部14の内部に収納されるように、蓋部15と収容部14とを重ね合わせる。その際、蓋部15が開口部14Kを塞ぐようにする。また、底部M1および正極リード51と電池素子40との間に絶縁フィルム62を載置する。これにより、正極41、負極42およびセパレータ43を含む巻回体40Zに電解液が含浸され、巻回電極体である電池素子40が作製される。なお、巻回体40Zを収容部14に収容する前に、あらかじめ巻回体40Zに電解液を含浸させておいてもよい。
【0112】
最後に、レーザー溶接法などの溶接法を用いて収納部14に蓋部15を溶接する。これにより、外装缶10が形成されると共に、外装缶10の内部に電池素子40などが収納され、二次電池の組み立てが完了する。こののち、上記第1の実施の形態の二次電池と同様にして充放電を行い、電気化学的に安定化させる。
【0113】
<2-4.作用および効果>
このように、本実施の形態の二次電池によれば、電池素子40を構成する積層体が、蓋部15に固定された芯材13の周囲に巻回されている。このため、電池素子40の巻回状態が安定化され、電池素子40の巻き緩みや巻き崩れが生じにくい。よって、この二次電池は高い信頼性を得ることができる。
【0114】
また、本実施の形態の二次電池では、芯材13が導電性を有し、芯材13が外装缶10(蓋部15)および負極42とそれぞれ電気的に接続されると共に正極41と導通する外部端子20と絶縁されている。そのため、芯材13を、外装缶10と負極42とを繋ぐ負極リードとして利用することができるので、負極リードを別途設けなくて済む。このため、外装缶10の内部空間を占める電池素子40の体積比率が向上する。よって、この二次電池は高容量化に適する。また、負極リードを電池素子40および外装缶10の各々と接続する工程が省略でき、製造容易性が向上する。また、この二次電池では、負極リードを用いる場合と比較して、電池素子40と外装缶10との電気的接続をより安定して維持することができる。
【0115】
また、本実施の形態の二次電池では、芯材13が固定された蓋部15の外縁は、側壁部M3のうち底部M1と反対側の端部である下端部と溶接されるようにしている。このため、電池素子40が芯材13に巻き付けられた状態で、すなわち、芯材13、電池素子40、および蓋部15が一体化された状態で収容部14に収容し、蓋部15の外縁を収容部14の開口部14Kに容易に溶接し、電池素子40を外装缶10の内部に密封することができる。
【0116】
<3.変形例>
上記した二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。
【0117】
[変形例1]
図7は、上記第1の実施の形態の変形例1としての二次電池の断面構成を表している。図2の二次電池では、蓋部12が窪み部12Hを有している。しかしながら、図7に示した変形例1の二次電池のように、本開示の二次電池では、蓋部12が窪み部12Hを有していなくてもよい。同様に、図6に示した第2の実施の形態の二次電池においても底部M1が窪み部12Hを有するようにしたが、本開示では底部M1が窪み部12Hを有しない態様であってもよい。
【0118】
<4.実施例>
本開示の実施例に関して説明する。
【0119】
(実施例1-1~1-3)
図6に示した二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製したのち、その二次電池の体積損失割合を評価した。その結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1に示した「外径D[mm]」および「高さH[mm]」は、図6に図示した通り、外装缶10の外径Dおよび高さHである。また、表1に示した「外径D40[mm]」および「高さH40[mm]」は、図6に図示した通り、電池素子40の外径D40および高さH40である。また、表1の「D/H[-]」は、高さHに対する外径Dの比である。また、表1の「巻きずれ量h[mm]」は、例えば図8の説明図で示したように、巻回された電池素子40の最内周部分の高さH40と電池素子40の最外周部分の高さH40との差分である。また、表1の「h/H40[%]」は、高さH40に対する巻きずれ量hの比である。
【0122】
さらに、表1の「体積損失割合LS[%]」は、以下の式(1)により算出した値である。
LS[%]=(H+h)/H-1 ……(1)
【0123】
(比較例1-1~1-3)
芯材13を有しないことと、底部M2と負極42との接続を行う負極リードを設けるようにしたことを除き、他は実施例1-1~1-3と同様にして図6に示した二次電池と同じ構成の二次電池を作製したのち、その二次電池の体積損失割合を評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0124】
表1に示したように、実施例1-1~1-3では、比較例1-1~1-3とそれぞれ比較して巻きずれ量h[mm]が低減され、体積損失割合LS[%]を低く抑えることができた。したがって、本開示の二次電池によれば、芯材13を設けるようにしたので、芯材13の周囲に巻回される電池素子40の巻きずれが生じにくく、結果として外装缶10の内部空間を占める電池素子40の体積比率が向上することが確認できた。
【0125】
(実施例2-1~2-3)
図6に示した二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。実施例2-1~2-3では、外装缶10の外径Dを12.0mmとし、電池素子40の外径D40を11.6mmとし、正極長さを450mmとし、負極長さを500mmとしたことが実施例1-1~1-3とそれぞれ異なっている。実施例1-1~1-3と同様にして、それぞれ作製した二次電池の体積損失割合を評価した。その結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
(比較例2-1~2-3)
芯材13を有しないことと、底部M2と負極42との接続を行う負極リードを設けるようにしたことを除き、他は実施例2-1~2-3と同様にして図6に示した二次電池と同じ構成の二次電池を作製したのち、その二次電池の体積損失割合を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0128】
表2に示したように、実施例2-1~2-3では、比較例2-1~2-3とそれぞれ比較して巻きずれ量h[mm]が低減され、体積損失割合LS[%]を低く抑えることができた。したがって、本開示の二次電池によれば、芯材13を設けるようにしたので、芯材13の周囲に巻回される電池素子40の巻きずれが生じにくく、結果として外装缶10の内部空間を占める電池素子40の体積比率が向上することが確認できた。
【0129】
(実施例3-1~3-3)
図6に示した二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。実施例3-1~3-3では、外装缶10の外径Dを16.0mmとし、電池素子40の外径D40を15.6mmとし、正極長さを820mmとし、負極長さを890mmとしたことが実施例1-1~1-3とそれぞれ異なっている。実施例1-1~1-3と同様にして、それぞれ作製した二次電池の体積損失割合を評価した。その結果を表3に示す。
【0130】
【表3】
【0131】
(比較例3-1~3-3)
芯材13を有しないことと、底部M2と負極42との接続を行う負極リードを設けるようにしたことを除き、他は実施例3-1~3-3と同様にして図6に示した二次電池と同じ構成の二次電池を作製したのち、その二次電池の体積損失割合を評価した。その結果を表3に併せて示す。
【0132】
表3に示したように、実施例3-1~3-3では、比較例3-1~3-3とそれぞれ比較して巻きずれ量h[mm]が低減され、体積損失割合LS[%]を低く抑えることができた。したがって、本開示の二次電池によれば、芯材13を設けるようにしたので、芯材13の周囲に巻回される電池素子40の巻きずれが生じにくく、結果として外装缶10の内部空間を占める電池素子40の体積比率が向上することが確認できた。
【0133】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されず、種々に変形可能である。
【0134】
具体的には、外装缶が溶接缶(クリンプレス缶)である場合に関して説明したが、その外装缶の構成は、特に限定されないため、加締め加工されたクリンプ缶でもよい。このクリンプ缶では、互いに分離された収納部および蓋部がガスケットを介して互いに加締められている。
【0135】
さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。このため、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0136】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0137】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
<1>
第1方向に延びる芯材と、
第1電極と第2電極とを含む積層体が前記芯材の周囲に巻回されてなる電池素子と、
前記第1方向に貫通する貫通口が設けられた蓋部と、前記第1方向に前記電池素子を挟んで前記蓋部と対向する底部と、前記蓋部と前記底部とを繋ぐと共に前記電池素子を取り囲む側壁部とを有し、前記電池素子を収容する外装部材と、
前記蓋部から見て前記底部と反対側であって前記第1方向に前記貫通口と重なる位置に設けられた外部端子と
を備え、
前記芯材は、前記外部端子に固定されており、
前記蓋部の外縁は、前記側壁部のうち前記底部と反対側の端部と溶接されている
二次電池。
<2>
第1方向に延びる芯材と、
第1電極と第2電極とを含む積層体が前記芯材の周囲に巻回されてなる電池素子と、
前記第1方向に貫通する貫通口が設けられた蓋部と、前記第1方向に前記電池素子を挟んで前記蓋部と対向する底部と、前記蓋部と前記底部とを繋ぐと共に前記電池素子を取り囲む側壁部とを有し、前記電池素子を収容する外装部材と、
前記蓋部から見て前記底部と反対側であって前記第1方向に前記貫通口と重なる位置に設けられた外部端子と
を備え、
前記芯材は、前記底部に固定されており、
前記底部の外縁は、前記側壁部のうち前記蓋部と反対側の端部と溶接されている
二次電池。
<3>
前記芯材は導電性を有し、前記芯材は前記外部端子および前記第1電極の各々と電気的に接続されると共に前記底部と絶縁されており、
前記底部は前記第2電極と電気的に接続されている
<1>記載の二次電池。
<4>
前記芯材は導電性を有し、前記芯材は前記底部および前記第2電極の各々と電気的に接続されると共に前記外部端子と絶縁されており、
前記外部端子は前記第1電極と電気的に接続されている
<2>記載の二次電池。
<5>
前記底部と前記側壁部とが一体化して収容部を構成している
<1>から<4>のいずれか1つに記載の二次電池。
<6>
前記蓋部と前記外部端子との間に設けられた絶縁体をさらに備える
<1>から<5>のいずれか1つに記載の二次電池。
<7>
前記蓋部と前記電池素子との間に設けられた第1絶縁部材をさらに備え、
前記第1絶縁部材は、前記第1方向に前記貫通口と対応する位置に設けられた第1開口を有し、
前記芯材は、前記貫通口および前記第1開口に挿通されている
<1>,<3>,<5>または<6>に記載の二次電池。
<8>
前記底部と前記電池素子との間に設けられた第2絶縁部材をさらに備え、
前記第2絶縁部材は、前記第1方向に前記貫通口と対応する位置に設けられた第2開口を有し、
前記芯材は、前記第2開口に挿通されている
<2>,<4>,<5>または<6>に記載の二次電池。
<9>
前記外装部材の前記第1方向の高さよりも、前記外装部材の前記第1方向と直交する第2方向の外径が大きい
<1>から<8>のいずれか1つに記載の二次電池。
<10>
前記外装部材の前記蓋部は、前記第1方向に沿って前記電池素子に向けて窪んだ窪み部を有し、
前記貫通口は、前記窪み部に設けられている
<1>から<9>のいずれか1つに記載の二次電池。
【符号の説明】
【0138】
10…外装缶、M1,M2…底部、M3…側壁部、11,14…収納部、11K,14K…開口部、12,15…蓋部、12H…窪み部、12K…貫通口、12R…周辺部、13…芯材、20…外部端子、30…ガスケット、40…電池素子、41…正極、41A…正極集電体、41B…正極活物質層、42…負極、42A…負極集電体、42B…負極活物質層、43…セパレータ、51…正極リード、52…負極リード、62,64…絶縁フィルム、PC…中心線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8