(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159277
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両の運動性能判定装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01M17/007 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075149
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 登
(72)【発明者】
【氏名】福永 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 直一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 勝己
(72)【発明者】
【氏名】広川 大
(57)【要約】
【課題】 車体の電気状態を検出し、その検出値に基づいて車両の運動性能を判定する装置を提供する。
【解決手段】 車体の運動性能判定装置50は、車両10に於ける少なくとも一つの部位70fl-rrに於いて検出された電気状態値に基づいて、車両の運動性能の高さの度合を判定する運動性能度合判定手段を含み、運動性能度合判定手段は、種々の電気状態下にて走行中の車両に於いて検出された電気状態値とそのときに得られた運転性能の高さの度合とを学習データとして用い、学習データに於ける電気状態値が入力されると、それに対応する運転性能の高さの度合を出力するように機械学習のアルゴリズムに従って学習した識別手段を含み、任意の電気状態値に対して識別手段の出力した運転性能の高さの度合がその電気状態値が得られたときの運転性能の高さの度合であると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運動性能判定装置であって、
前記車両に於ける少なくとも一つの部位に於ける電気状態値を検出する電気状態検出手段と、
前記電気状態検出手段により検出された電気状態値に基づいて、前記車両の運動性能の高さの度合を判定する運動性能度合判定手段と
を含み、
前記運動性能度合判定手段が、種々の電気状態下にて走行中の車両に於いて検出された電気状態値と前記電気状態の各々のときに得られた運転性能の高さの度合とを学習データとして用い、前記学習データに於ける電気状態値が入力されると、その電気状態値に対応する運転性能の高さの度合を出力するように機械学習のアルゴリズムに従って学習した識別手段を含み、前記電気状態検出手段により得られた電気状態値に対して前記識別手段の出力した運転性能の高さの度合がその電気状態値が得られたときの運転性能の高さの度合であると判定するよう構成されている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の運動性能を判定するための装置であって、より詳細には、車両の電気的な状態によって変化する車両の運動性能を判定する装置に係る。
【背景技術】
【0002】
本願出願人等による特許文献1にて示されている如く、車両の内外表面部位に於いて、電子の供給されている領域では、揺れや振動が抑制され、電子の除去されている領域では、揺れや振動が許されるという現象が観察される。そこで、本願出願人等は、その現象を利用して、車両の任意の部位に電源の正極及び負極を接続して積極的に電子の供給又は除去をすることにより、車両の空力特性を制御する装置を提案した。かかる車両の空力特性制御装置によれば、車両に於ける電位又は電流の分布を適宜制御することで、走行性能或いは運転性能を改善することが可能である。なお、車両上の電位又は電流に関連して、特許文献2に於いて、車両上の複数のアースポイントのうちで電力系のアースケーブルを接続するアースポイントと信号系のアースケーブルを接続するアースポイントとを決定する方法が開示されている。特許文献3には、車両のバッテリに繋がる電流路における電流値を測定する車両用電流センサが開示されている。特許文献4には、車両に於ける電線の安全性を確保するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-143555
【特許文献2】特開2015-147487
【特許文献3】特開2018-155625
【特許文献4】米国特許公開公報2012/0134062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に示されている如く、車両の内外表面部位に於ける電位若しくは電流の分布(以下、「車体の電気状態」と称する。)は、車両の運動性能(走行性、運転性(ドライバビリティ))と相関があることが見出されている。従って、車体の電気状態を検知すれば、車両の運動性能を推定できることが期待される。そして、車両の運動性能が推定できれば、その推定結果に基づき、車両の運動性能が向上するように車体の電気状態を制御するなどのことも可能となるであろう。この点に関し、本願発明者等の開発研究に於いて、車体の電気状態と車両の運動性能との相関関係はやや複雑であるところ、様々な電気状態下で走行させた車両の種々の部位にて検出された電位若しくは電流(電気状態値)を入力データとして用い、各電気状態に於ける車両の運動性能を正解データとして用いて機械学習のアルゴリズムに従って構成した識別器によれば、電気状態値に対して車両の運動性能を判定できることが見出された。本発明に於いては、この知見が利用される。
【0005】
かくして、本発明の一つの課題は、車体の電気状態を検出し、その検出値に基づいて車両の運動性能を判定する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、車両の運動性能判定装置であって、
前記車両に於ける少なくとも一つの部位に於ける電気状態値を検出する電気状態検出手段と、
前記電気状態検出手段により検出された電気状態値に基づいて、前記車両の運動性能の高さの度合を判定する運動性能度合判定手段と
を含み、
前記運動性能度合判定手段が、種々の電気状態下にて走行中の車両に於いて検出された電気状態値と前記電気状態の各々のときに得られた運転性能の高さの度合とを学習データとして用い、前記学習データに於ける電気状態値が入力されると、その電気状態値に対応する運転性能の高さの度合を出力するように機械学習のアルゴリズムに従って学習した識別手段を含み、前記電気状態検出手段により得られた電気状態値に対して前記識別手段の出力した運転性能の高さの度合がその電気状態値が得られたときの運転性能の高さの度合であると判定するよう構成されている装置
によって達成される。
【0007】
上記の構成に於いて、「電気状態値」とは、車両に於ける少なくとも一つの部位に於ける電位値又は電流値であってよい。従って、「電気状態検出手段」は、車両の少なくとも一つの部位に備えられた電圧センサ又は電流センサであってよい。電気状態値が検出される「少なくとも一つの部位」は、具体的には、適宜選択されてよく、例えば、車体の前部、後部、ピラーなどであってよい。「車両の運動性能の高さの度合」は、任意に設定されてよく、例えば、運動性能が「良好」な状態から「不良」な状態までの度合を複数の段階にて設定するなどであってよい。「運動性能度合判定手段」は、上記の如く、任意の機械学習のアルゴリズムに従って、種々の電気状態下にて走行中の車両に於いて検出された電気状態値と、電気状態の各々のときに得られた運転性能の高さの度合とを学習データとして用い、学習データに於ける電気状態値が入力されると、その電気状態値に対応する運転性能の高さの度合を出力するよう構成された識別手段(識別器)を含み、車両の走行中に於いては、識別手段へ時々刻々に検出された電気状態値が入力されると、それに対応する「運動性能の高さの度合」が出力されるよう構成される。識別手段を構成する機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、線形判別、二次判別、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシンなどが利用可能である。学習データは、例えば、車両に、特許文献1に例示されている如く種々の電気状態を付与して、その際の電気状態値を計測しつつ、運動性能の高さの度合を計測又は決定する試験走行を実行することにより収集されてよい。運動性能の高さの度合は、具体的には、例えば、試験走行中の運転者による運動性能の官能評価による判定によって記録されてよく、或いは、それに代えて(又はそれと合わせて)、車両の走行性能を表わす指標値、例えば、運転中の操舵角の変動の大きさ、操舵後の直進走行に至るまでの軌跡の変動幅若しくは遅れ時間、アクセルペダル若しくはブレーキペダルの踏込みに対する加減速度の応答の速さなどを計測し、それらの計測値に基づいて判定されてよい。
【0008】
上記の本発明の装置の構成によれば、車両の走行中に車両の電気状態に応じて車両の運動性能の高さが迅速に評価できることとなる。そして、その評価結果は、車両の各部に電圧又は電流を印加して、電気状態を変更するなどにより、車両の運動性能をより改善する際に有用な情報となる。また、本発明の装置を用いた評価結果は、車両の設計に於いても有用な情報となることが期待される。
【0009】
上記の本発明の装置に於いて、電気状態値を計測する少なくとも一つの部位は、実験的に適宜選択されてよいところ、より詳細には、例えば、車両の各部に種々の態様にて電圧又は電流を印加するなどして、車両に於いて互いに異なる電気状態を与えたときに、検出される電圧値又は電流値ができるだけ大きく変化する部位が選択されてよい。これにより、車両に於ける電気状態の差異を、検出される電気状態値で精度よく識別することができ、従って、運動性能の高さの度合もより明確に識別できるようになることが期待される。具体的には、例えば、種々の電気状態に於いて複数の部位にて設けられたセンサにより計測された電圧値又は電流値に対して、ReliefF法のアルゴリズムを適用し、電気状態の変化に対して電圧値又は電流値の変化の大きかったセンサの順位を決定し、順位の高いセンサの設けられた部位が電気状態値を計測する部位として選択されてよい。
【0010】
上記の本発明の装置は、特許文献1に記載の車両の空力特性制御装置と共に、或いはその一部として用いられてよい。本発明の装置によれば、任意の電気状態に於ける車両の運動性能の高さの度合が判別できるので、その判別結果を参照して、運動性能より良くなるように任意の態様にて車両の電気状態の変更が実行されてよい。
【発明の効果】
【0011】
かくして、上記の本発明の装置によれば、車両の電気状態に対応した運転性能の高さを把握できるので、空力性能を向上するべく車両の電気状態を制御又は調整する際に試行錯誤の過程が短縮され、より迅速に運転性能を改善する電気状態を得られるようになることが期待される。また、既に触れた如く、本発明の装置により得られる結果は、車両の設計に於いて、運動性能がより高くなるように車両に於ける電気状態を調整する際に有用な情報となる。例えば、補機のアースポイントの位置によって車両に於ける電気状態が変化するところ、本発明の装置により得られる情報によれば、補機のアースポイントの配置に応じた運動性能を検出できるので、より高い運動性能を与えるアースポイントの探索の際に有利に用いることができる。
【0012】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)は、本実施形態による車両の運動性能判定装置が搭載された車両の模式的な平面図である。
図1(B)は、本実施形態による車両の運動性能判定装置の概略構成をブロック図の形式で表わした図である。
【
図2】
図2(A)は、車体の各部に電気状態を計測するためのセンサが配置された車両の模式的な平面図である。
図2(B)は、
図2(A)に記載の車両に於いて設置されたセンサのReliefF法で決定した重要度スコア(車体の電気状態の変化に対する感度が大きいほど、大きくなる数値。詳細は本文参照。)を表わした図である。
【
図3】
図3(A)は、車体に種々の電気状態を付与した場合に二つのセンサ(車体の電気状態の変化に対する感度の大きい部位に設置されたセンサ)で計測された電気状態値(電圧値)の分布と、その分布に基づいて決定された運動性能コード(良好⇔不良)を判別する判別面とを表わしたグラフ図である。
図3(B)は、
図3(A)で与えられた電気状態とは異なる電気状態を付与した場合の二つのセンサで計測された電気状態値(電圧値)の分布を表わしたグラフ図である。
【符号の説明】
【0014】
10…車両、12FL,FR,RL,RR…タイヤ、20…電源、21f,R…端子、30…電気状態制御装置、40…判定表示部、50…判定部、70fl~rr…電気状態センサ、s11~s17…電気状態センサ
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
装置の構成
本実施形態による車両の運動性能判定装置は、
図1(A)に模式的に描かれている如く通常の自動車等の車両10に搭載されてよい。車両10に於いては、図示の如く、車体の内外表面の適宜選択された少なくとも一つの部位、例えば、ピラー、車体の前後端などに、かかる部位に於ける電位値又は電流値(電気状態値)を検出するセンサ70fl~rrが設けられ、かかるセンサの検出値が判定部50へ送信される。判定部50は、具体的には、プログラムに従って作動する通常の形式のコンピュータ装置であってよく、後に説明される如く、任意の形式の教師あり機械学習のアルゴリズムに従って、センサ70fl~rrからの電気状態値が入力されると、判定結果として、車両の運動性能の高さの度合を表わす「運動性能コード」を出力する識別器として作動するよう構成され、判定結果は、任意の形式の表示部40にて表示されてよい。また、車両10に於いては、特許文献1に記載されている如き、車体の任意の部位に電子の供与又は除去をするための手段が搭載されていてよい。かかる手段として、具体的には、図示の如く、車両にバッテリ等の電源20が搭載され、その電源の電極端子21fl~rrが適宜選択された部位に配置され、車体の選択された部位又は領域にて電子の供与又は除去が実行されてよい。そして、電気状態制御装置30が、判定部50の判定結果に基づいて、運動性能を改善すべく、任意の態様にて、電源20から電極端子21fl~rrのいずれにどの程度の電圧又は電流を印加するかを制御するように構成されていてよい。電気状態制御装置30は、プログラムに従って作動する通常の形式のコンピュータ装置と電源の出力を制御する駆動回路又はアクチュエータとから構成されてよい。
【0016】
判定部50に於いては、
図1(B)の如く、教師あり機械学習モデルのアルゴリズムに従って、車両の少なくとも一つの部位で検出された電気状態値に対して、かかる電気状態値が検出されたときの車両の運動性能の高さの度合を表わす運動性能コードが出力される。ここで、「運動性能」とは、車両の運転操作に対する車両の挙動の正確性や応答性(例えば、旋回性能、直進性能、加減速性能)であってよく、具体的には、運転者に於ける運転時の感覚であってよく、運転者が運転し易いと感じるほど、運動性能の高さの度合が高いと判断されてよい。運動性能コードは、かかる運動性能の高さの度合を高い状態から低い状態までを複数の段階の判別するよう設定されたものであってよく、具体的には、運動性能が「良好」である状態から「不良」である状態までの間が少なくとも二つの段階に分割して表現した指標であってよい。
【0017】
車両にて検出された電気状態値から運動性能コードを出力する判定部50(識別器)の学習に於いては、先ず、車両にて種々の電位分布又は電流分布(電気状態)を付与した状態で、車両を試験的に走行させながら、車両の少なくとも一つの部位に於ける電気状態値(V1,V2,…I1,…)を検出しつつ、そのときの運動性能コード(S)を記録し、検出された電気状態値と記録された運動性能コードとの組(V1,V2,…I1,…;S)が学習データとして収集される。運動性能コードは、一つの態様に於いては、運転者の運転時の時々刻々の官能評価によって決定されてよい。その場合、具体的には、例えば、運転者が、その時々刻々に感じた運転のし易さが複数の段階(良好⇔不良)のうちのいずれであるかを判定することにより、運動性能コードが決定されてよい。また、別の態様に於いては、車両に於いて、電気状態値の検出と共に、車両の挙動を表わす指標値、例えば、運転中の操舵角の変動の大きさ、操舵後の直進走行に至るまでの軌跡の変動幅若しくは遅れ時間、アクセルペダル若しくはブレーキペダルの踏込みに対する加減速度の応答の速さなど、が検出され、それらの検出された指標値に基づいて、運転のし易さに対応して運動性能コードが決定されてもよい。
【0018】
上記の如く学習データが収集されると、そこに於ける電気状態値を入力データとし、運動性能コードを正解データとして、任意の形式の教師あり機械学習モデルのアルゴリズムに従って、或る電気状態値に対して、その電気状態値が得られたときの運動性能コードが出力されるように学習演算処理が実行され、これにより、任意の電気状態値を入力すると、その状態値が与えられるときに得られると推定される運動性能コードを出力する識別器が構成される。機械学習モデルのアルゴリズムとしては、線形判別、二次判別、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシンなどが利用されてよい。
【0019】
電気状態値の検出部位の選択
本実施形態の運動性能判定装置に於いて、電気状態値を検出する部位は、車両に於ける電気状態(電位分布、電流分布)の変化に対する感度が良いほど、即ち、その部位の電気状態値の変化が大きいほど、電気状態の変化をより良く捉えることができ、有利である。実際、本実施形態の発明者等に於いて、
図2(A)に示されている如く、車両10にて電位センサs11~s16、電流センサs17を配置し、種々の電気状態の変化を与えたところ、センサ毎に検出値の変化の態様が異なることが見出された。そして、同一の電気状態においてセンサ平均値が一貫しないセンサ信号はランクを下げ、異なる電気状態に対して十分異なる値を持つセンサ信号はランクを上げるというReliefF法のアルゴリズムを適用して、各センサの各重要度スコアを決定したところ、
図2(B)のようになった。同図に於いては、重要度スコアが大きいほど、電気状態の変化に対する感度が高いことを示している。また、後に説明される如く、重要度スコアの大きいセンサの検出値を用いると、好適に運動性能コードの判別ができることも見出された。かくして、本実施形態に於いて、車両に種々の電気状態の変化を与えたときに、検出された電気状態値の変化の大きい部位を探索し、かかる電気状態値の変化の大きい部位が電気状態値を検出する部位として選択されてよい。
【0020】
電気状態値に基づく運動性能の高さの度合の判定例
車両の各部にて検出された電気状態値に基づいて運動性能の高さの度合を判定できることを確認するべく、以下の如く実験を行った。
【0021】
実験に於いては、先ず、
図2(A)に示されている如く、電位センサs11~s16、電流センサs17を車両10の各部位に配置し、各部位の電位値、電流値を検出できるようにした。ここで、各電位センサは、ボデー鉄板上の各点の補機バッテリの負極端子を基準とした電位を検出し、電流センサ17は左Bピラーに搭載されたECU(図示せず)を駆動する電流がボデー経由でバッテリの負極に帰還するべくBピラーに設けたアースポイント(s13と共通)までのアース線に流れる電流を検出する。そして、車両10を、互いに異なる電気状態I、II、III、IV、Vを与えた状態(図示せず)で、周回路で車速40~70km/hにて走行させ、各センサにて電気状態値を検出しながら、1周毎に運転者による運動性能の高さの官能評価(良好、不良)を記録した。なお、電気状態値のデータ値は、10km/h以上で走行中に各センサに於いて10m秒毎に検出された値の10秒毎の平均値(連続する各平均期間は、5秒ずつ重複させた)とした。
【0022】
図3(A)は、各電気状態I、II、III、IVが付与された条件下で、7つのセンサのうちで感度が1番高いセンサs13と、その次に感度の高いセンサs16とで検出された電圧値を、それぞれ、横軸及び縦軸の値としてプロットした状態の分布図である。なお、運転者による官能評価では、運動性能は、電気状態I、IVのとき、不良であり、電気状態II、IIIのとき、良好であった。同図を参照すると、プロット空間に於いて、各電気状態のプロットの拡がり方により領域を分ける3本の判別線31~33を引くことができ、更に、運動性能が良好であった状態のプロット(□、○)の分布の領域と、運動性能が不良であった状態のプロット(+、×)の分布の領域とが、判別線100を境界として概ね分離できることが観察された。また、各電気状態I、II、III、IVの付与された条件下で車両の走行中に7つのセンサで検出された電気状態値と運転者による運動性能の官能評価とを学習データとして用いて、二次判別の手法により、運動性能を「良好」、「不良」とに識別する識別器を構成し、その識別器に電気状態I、II、III、IVのそれぞれで得られた電気状態値を入力して、運動性能の識別を行ったところ、正解率は、それぞれ、
I:96.8%,II: 90.3%,III:91.7%,IV:98.3%
となり、いずれの状態でも高い正解率が得られた。
【0023】
更に、電気状態Vの付与された条件下では、運動性能は良好であったところ、その状態でセンサs13、センサs16で検出された電圧値を、
図3(A)の場合と同様にプロットすると、
図3(B)の如く、プロットは、概ね、電気状態I、II、III、IVのデータを用いて決定された判別線100により画定された「良好」の領域内に分布した。そして、電気状態I、II、III、IVのデータを用いて構成された識別器へ電気状態Vで得られた電気状態値を入力して得られた運動性能の識別結果の正解(「良好」)の割合は、83.3%であった。
【0024】
上記の結果によれば、車両の各部位で検出された電気状態値と運動性能の高さの度合とは相関があり、電気状態値に基づいて運動性能の高さの度合を高正解率にて判定できることが示された。
【0025】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。