(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159284
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】クランプ装置を備えた産業車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/22 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B66F9/22 C
B66F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075168
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 健悟
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB15
3F333AE21
3F333FB01
3F333FH08
(57)【要約】
【課題】ワークを接地してクランプを解除するときのクランプ装置の上昇を抑制できるクランプ装置を備えた産業車両を提供すること。
【解決手段】産業車両において、クランプ装置16によってワークWがクランプされ、かつワークWが接地していない状態であり、開閉弁43が開かれるとともに切換弁22によって給排油路21が遮断されているとき、ワークWの接地後にクランプ解除が実行されると、制御装置30は、開閉弁43を閉じる。これにより、ワークWの除荷時の第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bからリフトシリンダ14への作動油55の流れ込みが規制される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークのクランプ及び前記ワークのクランプの解除を可能とするクランプ装置と、
前記クランプ装置を昇降させるために作動油が給排されるリフトシリンダと、
前記リフトシリンダに対して給排油路を介して接続された油タンクと、
前記給排油路を開閉する切換弁と、
前記作動油の圧力を蓄えるアキュムレータと、
前記アキュムレータと前記給排油路とを接続する接続油路に設けられる開閉弁であって、開くことによって前記接続油路と前記給排油路を介して前記リフトシリンダと前記アキュムレータとを連通させるとともに、閉じることによって前記接続油路を遮断する前記開閉弁と、
前記開閉弁を制御する制御装置と、を備え、
前記クランプ装置によって前記ワークがクランプされ、かつ前記制御装置によって前記開閉弁が開かれるとともに前記切換弁によって前記給排油路が遮断されているとき、
前記ワークを接地してクランプを解除するときの前記アキュムレータから前記リフトシリンダへの前記作動油の流れ込みを規制するために、前記制御装置は、前記開閉弁を閉じることを特徴とするクランプ装置を備えた産業車両。
【請求項2】
前記制御装置には、前記クランプ装置による前記ワークのクランプ又は前記ワークのクランプの解除を実行させる操作を行うクランプ操作部が信号接続されており、前記制御装置は、前記ワークのクランプの解除のための前記クランプ操作部の操作を検出すると前記開閉弁を閉じる請求項1に記載のクランプ装置を備えた産業車両。
【請求項3】
前記制御装置には、前記産業車両の停止を検出する停止検出部が信号接続されており、前記制御装置は、前記停止検出部によって前記産業車両の停止が検出されると前記開閉弁を閉じる請求項1に記載のクランプ装置を備えた産業車両。
【請求項4】
前記接続油路は、前記給排油路に接続された主油路と、当該主油路から分岐した複数の分岐油路と、を備えるとともに、前記複数の分岐油路の各々に前記アキュムレータが接続され、前記開閉弁は、前記主油路に設けられている請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のクランプ装置を備えた産業車両。
【請求項5】
前記クランプ装置によって前記ワークがクランプされ、かつ前記クランプ装置が上昇しているとき、前記制御装置は、前記開閉弁を開いている請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のクランプ装置を備えた産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置を備えた産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両は、車体の前方に固定されたアウタマストと、アウタマストをガイドとするインナマストと、インナマストに連結されたリフトブラケットと、インナマストを昇降させるリフトシリンダと、を備える。インナマストは、リフトシリンダに対する作動油の給排によって昇降する。また、産業車両は、リフトシリンダにおける油圧変動を緩やかにするためにアキュムレータを備える。アキュムレータは、リフトシリンダから作動油が導入される油圧室と、油圧室と隔てられたガス室とを備える。
【0003】
アキュムレータを備える産業車両において、例えば、凹凸面等の走行に伴って、搬送するワークが沈み込んだとき、リフトシリンダから作動油が押し出される。押し出された作動油は、アキュムレータの油圧室に導入される。このとき、アキュムレータにおいて、ガス室のガスが圧縮されることにより、作動油の圧力は緩やかに上昇するため、油圧変動が緩やかになる結果、大きな衝撃が発生することが抑制される。
【0004】
また、例えば特許文献1には、クランプ装置を備える産業車両が開示されている。クランプ装置は、ワークを側方から掴むようにクランプする。クランプ装置は、リフトシリンダに対する作動油の給排によって、昇降する。このようなクランプ装置を備えた産業車両においても、アキュムレータを搭載することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クランプ装置によってワークがクランプされ、かつワークが上昇している状態では、リフトシリンダの作動油及びアキュムレータの作動油には、ワーク及びクランプ装置を負荷とする圧力が加わっている。そして、ワークのクランプを解除したとき、アキュムレータに蓄えられていた圧力により、アキュムレータの作動油がリフトシリンダに流れ込み、ワーク接地後にクランプ装置が上昇してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためのクランプ装置を備えた産業車両は、ワークのクランプ及び前記ワークのクランプの解除を可能とするクランプ装置と、前記クランプ装置を昇降させるために作動油が給排されるリフトシリンダと、前記リフトシリンダに対して給排油路を介して接続された油タンクと、前記給排油路を開閉する切換弁と、前記作動油の圧力を蓄えるアキュムレータと、前記アキュムレータと前記給排油路とを接続する接続油路に設けられる開閉弁であって、開くことによって前記接続油路と前記給排油路を介して前記リフトシリンダと前記アキュムレータとを連通させるとともに、閉じることによって前記接続油路を遮断する前記開閉弁と、前記開閉弁を制御する制御装置と、を備え、前記クランプ装置によって前記ワークがクランプされ、かつ前記制御装置によって前記開閉弁が開かれるとともに前記切換弁によって前記給排油路が遮断されているとき、前記ワークを接地してクランプを解除するときの前記アキュムレータから前記リフトシリンダへの前記作動油の流れ込みを規制するために、前記制御装置は、前記開閉弁を閉じることを要旨とする。
【0008】
これによれば、クランプ装置によってワークがクランプされ、かつワークを接地していない状態では、リフトシリンダの作動油及びアキュムレータの作動油には、ワーク及びクランプ装置の負荷が加わっている。そして、ワークを接地してクランプを解除するとき、ワークの負荷がリフトシリンダの作動油に残っている場合がある。このとき、リフトシリンダにおいて、ワークのクランプを解除してからワークの負荷がゼロになるまでの移行期間が生じる。一方、アキュムレータの作動油からは、ワークの負荷は除荷されないままである。このため、アキュムレータからリフトシリンダへ作動油が流れ込もうとする。しかし、この作動油の流れ込みは、制御装置によって閉じられた開閉弁によって規制されるため、ワークを接地してクランプを解除するときのクランプ装置の上昇を抑制できる。
【0009】
なお、ワークの「接地」とは、ワークの載置面にワークの下面の全面が接触するだけに限らず、ワークの下面の一部が接触することを意味する。また、ワークの載置面は、ワークの載置されるパレット、荷置き場の床面、トラックの荷台の上面等、ワークを載置可能とする面であれば、特に限定されない。
【0010】
クランプ装置を備えた産業車両について、前記制御装置には、前記クランプ装置による前記ワークのクランプ又は前記ワークのクランプの解除を実行させる操作を行うクランプ操作部が信号接続されており、前記制御装置は、前記ワークのクランプの解除のための前記クランプ操作部の操作を検出すると前記開閉弁を閉じてもよい。
【0011】
これによれば、ワークのクランプを解除するためのクランプ操作部の操作がなされると、開閉弁が閉じられる。このため、クランプの解除に応じて、アキュムレータの作動油が接続油路を経由してリフトシリンダに流れ込むことが規制される。
【0012】
クランプ装置を備えた産業車両について、前記制御装置には、前記産業車両の停止を検出する停止検出部が信号接続されており、前記制御装置は、前記停止検出部によって前記産業車両の停止が検出されると前記開閉弁を閉じてもよい。
【0013】
これによれば、ワークを接地するにあたり、ワークを接地する前には産業車両は停止する。この産業車両の停止が停止検出部によって検出されると、制御装置は、開閉弁を閉じる。このため、ワークを接地する前から開閉弁を閉じることができるため、ワークを接地する時点で、アキュムレータの作動油が接続油路を経由してリフトシリンダに流れ込むことを規制できる。
【0014】
クランプ装置を備えた産業車両について、前記接続油路は、前記給排油路に接続された主油路と、当該主油路から分岐した複数の分岐油路と、を備えるとともに、前記複数の分岐油路の各々に前記アキュムレータが接続され、前記開閉弁は、前記主油路に設けられていてもよい。
【0015】
これによれば、複数のアキュムレータを設けることにより、アキュムレータによって衝撃吸収できる圧力を異ならせることができる。このような産業車両において、開閉弁は、主油路に設けられているため、開閉弁を閉じると、全ての分岐油路を一括して遮断できる。このため、いずれのアキュムレータからリフトシリンダに向けて作動油が流れようとしても、その作動油の流れを開閉弁によって遮断できる。
【0016】
クランプ装置を備えた産業車両について、前記クランプ装置によって前記ワークがクランプされ、かつ前記クランプ装置が上昇しているとき、前記制御装置は、前記開閉弁を開いていてもよい。
【0017】
これによれば、クランプされたワークが沈み込んだときは、リフトシリンダの作動油が押し出されるとともに、押し出された作動油は、給排油路及び接続油路を経由してアキュムレータに導入される。そして、アキュムレータに作動油が導入されるのに伴い、ワークに衝撃が発生することが抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ワークを接地してクランプを解除するときのクランプ装置の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態のクランプ装置を備えた産業車両を示す図である。
【
図2】
図2は、油圧装置及び衝撃抑制装置の概略図である。
【
図3】
図3は、クランプ装置の上昇時を示す概略図である。
【
図4】
図4は、クランプ装置の下降時を示す概略図である。
【
図5】
図5は、ワークを接地してクランプを解除するときを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、クランプ装置を備えた産業車両を具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。以下、クランプ装置を備えた産業車両を、単に「産業車両」と記載する。
<産業車両>
図1及び
図2に示すように、産業車両11は、ワークWをクランプすることによって、ワークWを運搬する。産業車両11は、車体12と、マスト13と、リフトシリンダ14と、リフトブラケット15と、クランプ装置16と、リフト操作部18と、クランプ操作部19と、油圧装置20と、衝撃抑制装置40と、を備える。
【0021】
マスト13は、車体12の前部に立設されている。マスト13は、アウタマスト13aと、インナマスト13bと、を備える。アウタマスト13aは、車体12に対して前後に傾動可能に支持されている。インナマスト13bは、アウタマスト13aにスライドして昇降する。アウタマスト13aは、インナマスト13bの上下方向のスライドをガイドする。
【0022】
リフトシリンダ14は、アウタマスト13aの後部に配設されている。リフトシリンダ14は、シリンダチューブ14cと、ピストンロッド14aと、ボトム室14bと、を備える。ピストンロッド14aは、ボトム室14bに対する作動油55の給排によってシリンダチューブ14cに対して出没する。リフトブラケット15は、インナマスト13bに取り付けられている。
【0023】
産業車両11へのアタッチメントとしてのクランプ装置16は、リフトブラケット15に取り付けられている。なお、クランプ装置16の具体例は、ロールクランプ、ベールクランプ、又はドラムクランプである。ピストンロッド14aをシリンダチューブ14cに対して出没させると、チェーン14dを介してリフトブラケット15が昇降する。これに伴って、クランプ装置16は昇降する。したがって、リフトシリンダ14は、クランプ装置16を昇降させる。
【0024】
クランプ装置16は、後に説明する油圧装置20の駆動によってワークWのクランプ及びワークWのクランプの解除を可能とする。ワークWは、例えば、円柱状のロールである。クランプ装置16は、ワークWの周面を側方から掴むようにワークWをクランプする。クランプ装置16によってワークWのクランプが解除されると、ワークWは、載置面Fに接地される。載置面Fは、ワークWの下面の全面が接触するだけに限らず、ワークWの下面の一部が接触することを意味する。また、載置面Fは、ワークWの載置されるパレット、荷置き場の床面、トラックの荷台の上面等、ワークWを載置可能とする面であれば、特に限定されない。
【0025】
車体12には、運転室17が設けられている。リフト操作部18及びクランプ操作部19は、運転室17に配置されている。リフト操作部18は、クランプ装置16を昇降させるために操作される。リフト操作部18が操作されると油圧装置20が駆動するとともに、油圧装置20の駆動によってリフトシリンダ14が駆動する。クランプ操作部19は、クランプ装置16によるワークWのクランプ又はワークWのクランプを解除させるために操作される。クランプ操作部19が操作されると油圧装置20が駆動するとともに、クランプ装置16が駆動する。
【0026】
<油圧装置>
油圧装置20は、給排油路21と、切換弁22と、油圧ポンプ23と、油タンク24と、クランプ装置用油路26と、制御装置30と、を備える。
【0027】
給排油路21は、リフトシリンダ14と油タンク24を接続する。詳細には、給排油路21は、リフトシリンダ14のボトム室14bと油タンク24とを接続する。言い換えると、油タンク24は、リフトシリンダ14に対して給排油路21を介して接続されている。油圧ポンプ23は、給排油路21に設けられている。
【0028】
クランプ装置用油路26は、給排油路21を介してクランプ装置16と油タンク24を接続する。油タンク24は、クランプ装置16に対して給排油路21及びクランプ装置用油路26を介して接続されている。クランプ装置用油路26は、給排油路21から分岐している。
【0029】
切換弁22は、給排油路21を開閉する第1弁部22aと、クランプ装置用油路26を開閉する第2弁部22bと、を備える複合弁である。油圧ポンプ23は、油タンク24に貯留された作動油55を給排油路21に圧送する。
【0030】
制御装置30は、リフト操作部18及びクランプ操作部19と信号接続されているとともに、切換弁22と信号接続されている。なお、図示していないが、制御装置30は、油圧ポンプ23と信号接続されている。
【0031】
図4に示すように、制御装置30の制御によって切換弁22の第1弁部22aが開かれると、給排油路21を経由した、油タンク24からリフトシリンダ14への作動油55の供給、又はリフトシリンダ14から油タンク24への作動油55の排出が可能になる。なお、
図3~
図5において、切換弁22及び開閉弁43において、弁を開くことを「開弁」と記載するとともに、弁を閉じることを「閉弁」と記載する。
【0032】
制御装置30の制御によって切換弁22の第1弁部22aが閉じられると、給排油路21が遮断される。これにより、油タンク24からリフトシリンダ14への作動油55の供給、又はリフトシリンダ14から油タンク24への作動油55の排出が不可能になる。
【0033】
制御装置30の制御によって切換弁22の第2弁部22bが開かれると、給排油路21及びクランプ装置用油路26を経由した、油タンク24からクランプ装置16への作動油55の供給が可能になる。一方、制御装置30の制御によって切換弁22の第2弁部22bが閉じられると、クランプ装置用油路26が遮断される。これにより、油タンク24からクランプ装置16への作動油55の供給が不可能になる。
【0034】
クランプ装置16を上昇させるためのリフト操作部18の操作がなされると、リフト操作部18の操作中、制御装置30は、切換弁22の第1弁部22aを開くとともに、油圧ポンプ23を駆動させる。すると、油タンク24に貯留された作動油55は、給排油路21を経由して、油タンク24からリフトシリンダ14のボトム室14bに圧送される。すると、ボトム室14bの作動油55の圧力が上昇して、リフトブラケット15が上昇するとともに、リフトブラケット15に一体のクランプ装置16は上昇する。その後、クランプ装置16が所望する高さまで上昇されて、リフト操作部18が中立位置に移動されると、制御装置30は、切換弁22の第1弁部22aを閉じるとともに、油圧ポンプ23の駆動を停止させる。これにより、クランプ装置16は所望する高さに保持される。
【0035】
クランプ装置16を下降させるためのリフト操作部18の操作がなされると、リフト操作部18の操作中、制御装置30は、切換弁22の第1弁部22aを開く。このとき、制御装置30は、油圧ポンプ23を駆動させない。すると、ボトム室14bの作動油55は、給排油路21を経由して、ボトム室14bから油タンク24へ排出される。すると、ボトム室14bの作動油55の圧力が低下して、リフトブラケット15が下降するとともに、リフトブラケット15に一体のクランプ装置16は下降する。
【0036】
なお、リフト操作部18の操作がなされないと、制御装置30は、開閉弁43を開かない。このため、リフト操作部18の操作がなされないと、開閉弁43は閉じたままである。
【0037】
ワークWをクランプさせるため、クランプ操作部19の操作がなされると、制御装置30は、切換弁22の第2弁部22bを開くとともに、油圧ポンプ23を駆動させる。すると、油タンク24に貯留された作動油55は、給排油路21及びクランプ装置用油路26を経由して、油タンク24からクランプ装置16に圧送される。すると、クランプ装置16がワークWをクランプする。その後、ワークWがクランプされて、クランプ操作部19が中立位置に移動されると、制御装置30は、切換弁22の第2弁部22bを閉じるとともに、油圧ポンプ23の駆動を停止させる。これにより、クランプ装置16によってワークWがクランプされた状態が維持される。
【0038】
ワークWのクランプの解除を実行させるためのクランプ操作部19の操作がなされると、制御装置30は、切換弁22の第2弁部22bを開くとともに、油圧ポンプ23を駆動させる。すると、クランプ装置16に供給された作動油55は、クランプ装置用油路26及び給排油路21を経由して、油タンク24からクランプ装置16へ供給される。すると、クランプ装置16によるワークWのクランプが解除される。
【0039】
<衝撃抑制装置>
衝撃抑制装置40は、第1アキュムレータ41Aと、第2アキュムレータ41Bと、開閉弁43と、接続油路44と、制御装置30と、を備える。
【0040】
接続油路44は、給排油路21と、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bとを接続する。接続油路44は、給排油路21と接続された主油路441と、主油路441から分岐した2本の分岐油路442と、を備える。主油路441は、給排油路21と各分岐油路442とを接続する。2つの分岐油路442のうちの一方には第1アキュムレータ41Aが接続されるとともに、他方には第2アキュムレータ41Bが接続されている。
【0041】
第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bの各々は、ボディ41aと、ピストン41bとを備える。ピストン41bは、ボディ41aの内部に収容されている。ピストン41bは、ボディ41aの内部を油圧室41cとガス室41dとに区画する。各油圧室41cは、分岐油路442に接続されている。給排油路21の作動油55は、油圧室41cに対して給排される。
【0042】
ガス室41dには、ガスが封入されている。第1アキュムレータ41Aのガス室41dにおける初期封入圧は、第2アキュムレータ41Bのガス室41dにおける初期封入圧より低い。第1アキュムレータ41Aは、低圧における作動油55の圧力変動を吸収するとともに、第2アキュムレータ41Bは、高圧における作動油55の圧力変動を吸収する。
【0043】
第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bの各々は、ガス室41dの容積が最大になるまでガスが充填された状態で圧力を蓄える。ガス室41dの容積が最大になるまで、図示しない付勢部材によってピストン41bが付勢された状態において、油圧室41cに作動油55が導入されると、ガス室41dのガスが圧縮されるとともに、油圧室41cに作動油55の圧力が蓄えられる。
【0044】
開閉弁43は、接続油路44の主油路441に設けられている。制御装置30は、開閉弁43を制御する。開閉弁43は、制御装置30による制御によって開いた状態と閉じた状態に切り替え可能である。制御装置30は、ワークWのクランプを解除するためのクランプ操作部19の操作を検出すると、開閉弁43を閉じる。また、制御装置30は、ワークWをクランプするためのクランプ操作部19の操作を検出すると、開閉弁43を開く。
【0045】
開閉弁43は、開くことによって、主油路441及び各分岐油路442を含む接続油路44と給排油路21とを介して、リフトシリンダ14と第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bとを連通させる。
【0046】
開閉弁43は、閉じることによって接続油路44を遮断する。この接続油路44の遮断により、主油路441及び各分岐油路442を含む接続油路44と給排油路21とを介した、リフトシリンダ14と第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bとの連通が遮断される。
【0047】
制御装置30には、産業車両11の停止を検出するための車速センサ31が信号接続されている。
<実施形態の作用>
次に、産業車両11の作用を説明する。
【0048】
ワークWを搬送する際、オペレータは、クランプ装置16によってワークWをクランプするために、クランプ操作部19を操作する。ワークWをクランプするためのクランプ操作部19の操作がなされると、制御装置30は、切換弁22の第2弁部22bを開くとともに、油圧ポンプ23を駆動させる。すると、クランプ装置16によってワークWがクランプされる。ワークWのクランプが完了すると、オペレータは、クランプ操作部19を中立位置に移動させて、クランプ操作部19の操作を停止する。クランプ操作部19の操作が停止されると、制御装置30は、切換弁22の第2弁部22bを閉じるとともに、油圧ポンプ23の駆動を停止させる。これにより、クランプ装置16は、ワークWをクランプした状態に保持される。
【0049】
次に、オペレータは、ワークWを上昇させるべくリフト操作部18を操作する。制御装置30は、ワークWを上昇させるためのリフト操作部18の操作を検出すると、切換弁22の第1弁部22aを開くとともに、油圧ポンプ23を駆動させる。また、制御装置30は、開閉弁43を開く。すると、油タンク24の作動油55が、油圧ポンプ23によって給排油路21に供給される。
【0050】
作動油55は、第1アキュムレータ41Aの油圧室41c、及び第2アキュムレータ41Bの油圧室41cに導入される。第1アキュムレータ41Aの油圧室41cへの作動油55の充填が完了した後、第2アキュムレータ41Bの油圧室41cへの作動油55の充填が完了する。各ガス室41dのガスは、油圧室41cへの作動油55の充填に伴って圧縮されるため、各ガス室41dのガス圧が上昇する。そして、作動油55の圧力が、クランプ装置16を上昇させたときの位置に保持するための保持圧に達すると、リフトシリンダ14のピストンロッド14aが上昇を開始して、リフトブラケット15とともにクランプ装置16が上昇する。
【0051】
その後、
図3に示すように、ワークWが所望する高さまで上昇されると、オペレータはリフト操作部18を中立位置に移動させて、リフト操作部18の操作を停止する。リフト操作部18の操作が停止されると、制御装置30は、切換弁22の第1弁部22aを閉じるとともに、油圧ポンプ23の駆動を停止させる。なお、開閉弁43は、開いたままである。すると、ボトム室14bと、各油圧室41cとが給排油路21及び接続油路44を介して連通した閉回路が形成される。
【0052】
閉回路では、作動油55の圧力は、クランプ装置16を上昇位置に保持するための保持圧に保持される。保持圧は、クランプ装置16、及びワークWからなる負荷を上昇位置に保持するために必要な圧力である。そして、閉回路では、ボトム室14bの作動油55の圧力と、各油圧室41cの作動油55の圧力とが同じになって均衡する。なお、クランプ操作部19は操作されておらず、第2弁部22bは閉じたままであるため、クランプ装置16は、ワークWをクランプしたままである。
【0053】
クランプ装置16によってクランプされたワークWを上昇位置に保持させた状態で、産業車両11は荷置き場所まで走行する。走行途中に産業車両11が凹凸面に乗り上げたりすると、ワークWが沈み込む。すると、リフトシリンダ14のボトム室14bの作動油55の圧力が変動して押し出されるとともに、押し出された作動油55は、給排油路21及び接続油路44を経由して各油圧室41cに導入される。
【0054】
押し出された作動油55が油圧室41cに導入されるのに伴い、ガス室41dのガスが圧縮されるため、この圧縮によって作動油55の圧力は緩やかに上昇する。その結果、ワークWに衝撃が発生することで抑制される。なお、ボトム室14bの作動油55の圧力変動が小さい場合、その圧力変動は、第1アキュムレータ41Aによって吸収される。ボトム室14bの作動油55の圧力変動が大きい場合、その圧力変動は、第1アキュムレータ41Aによって吸収されつつ、第2アキュムレータ41Bによっても吸収される。
【0055】
荷置き場所まで産業車両11が走行すると、オペレータは、ワークWを下降させるべく、リフト操作部18を操作する。制御装置30は、リフト操作部18の操作を検出すると、
図4に示すように、切換弁22の第1弁部22aを開いて、ボトム室14bと油タンク24を給排油路21を介して連通させる。このとき、開閉弁43は、開いたままである。なお、クランプ操作部19は操作されておらず、第2弁部22bは閉じたままであるため、クランプ装置16は、ワークWをクランプしたままである。
【0056】
ワークW、及びクランプ装置16が負荷となって、ボトム室14bから作動油55が排出されていく。ボトム室14bから排出された作動油55は、給排油路21を経由して油タンク24に排出される。
【0057】
また、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bのうち、初期封入圧の高い第2アキュムレータ41Bの油圧室41cから作動油55が排出された後、第1アキュムレータ41Aの油圧室41cから作動油55が排出される。このとき、ボトム室14bと、第1アキュムレータ41Aの油圧室41cと、第2アキュムレータ41Bの油圧室41cとは、相互に同じ圧力を維持しながら圧力が低下していく。
【0058】
そして、
図5に示すように、ワークWを接地すると、オペレータは、リフトブラケット15の下降を停止させるべく、リフト操作部18を操作する。なお、ワークWを接地する前の状態は、クランプ装置16によってワークWがクランプされているため、切換弁22の第2弁部22bは閉じたままである(
図4の状態)。また、開閉弁43が開いているとともに、第1弁部22aは開いたままである。そして、制御装置30は、リフト操作部18の操作を検出すると、切換弁22の第1弁部22aを閉じて、給排油路21を遮断する。これにより、給排油路21から油タンク24への作動油55の排出が停止される(
図5の状態)。
【0059】
ワークWを接地させるとき、オペレータは、クランプを解除するためのクランプ操作部19を操作する。制御装置30は、クランプを解除するためのクランプ操作部19の操作を検出すると、第2弁部22bを開くとともに、開閉弁43を閉じる。すると、接続油路44が遮断されるため、リフトシリンダ14と第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bとの連通が遮断される。
【0060】
ワークWのクランプを解除するとき、ワークWの負荷がリフトシリンダ14の作動油55に残っている場合がある。この場合、リフトシリンダ14において、ワークWのクランプを解除してからワークWの負荷がゼロになるまでの移行期間が生じる。一方、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bの作動油55からは、ワークWの負荷は除荷されずに高いままである。また、切換弁22の第1弁部22aは、閉じたままであり、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bの作動油55が油タンク24に排出されることはない。このため、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bに蓄えられていた圧力によって、各油圧室41cの作動油55が、接続油路44を経由してリフトシリンダ14に流れ込もうとする。しかし、開閉弁43は閉じられている。このため、各油圧室41cからリフトシリンダ14への作動油55の流れ込みは、制御装置30によって閉じられた開閉弁43によって規制される。したがって、制御装置30は、ワークWを接地するときにおけるクランプ解除時の第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bからリフトシリンダ14への作動油55の流れ込みを規制するために、開閉弁43を閉じる。
【0061】
なお、産業車両がフォークリフトの場合は、フォークの上面からワークが離れた状態になるまで下降操作を続けないと、ワークからフォークを抜くことができない。そして、フォークの上面からワークが離れると、フォークにはワークの負荷が全く残っておらず、リフトシリンダにもワークの負荷は残っていないため、アキュムレータからリフトシリンダに向けて作動油が流れ込むことはない。一方、クランプ装置16では、ワークWを側方から挟み込んで搬送するため、ワークWを接地した瞬間には、クランプ装置16やリフトシリンダ14にはワークWの負荷が残っているとともに、クランプ装置16は、ワークWが完全に接地する前にワークWを離すことが可能である。このため、クランプ装置16によってワークWを離すと、ワークWの負荷に相当した分の、アキュムレータ41A,41Bに蓄えられた作動油55がリフトシリンダ14に流れ込むことがある。
【0062】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)産業車両11は、接続油路44に開閉弁43を備える。ワークWを接地するとき、ワークWのクランプを解除すると、制御装置30は、開閉弁43を閉じる。クランプの解除に伴って、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bの作動油55がリフトシリンダ14に流れ込もうとしても、閉じられた開閉弁43によって規制される。したがって、クランプの解除に伴って、クランプ装置16が上昇することを抑制できる。
【0063】
(2)制御装置30は、ワークWのクランプを解除するためのクランプ操作部19の操作を検出すると、開閉弁43を閉じる。これによれば、クランプ装置16によるクランプの解除に応じて制御装置30は開閉弁43を閉じる。このため、クランプの解除に応じて、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bの作動油55が接続油路44を経由してリフトシリンダ14に流れ込むことを規制できる。
【0064】
(3)衝撃抑制装置40は、第1アキュムレータ41Aと第2アキュムレータ41Bを備える。第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bには、接続油路44の分岐油路442が接続されている。分岐油路442は、主油路441を介して給排油路21に接続されている。そして、開閉弁43は、主油路441に設けられている。このため、開閉弁43は、主油路441を開閉できる。よって、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bのいずれかからリフトシリンダ14に向けて作動油55が流れようとしても、その作動油55の流れを開閉弁43によって遮断できる。
【0065】
(4)クランプ装置16によってワークWをクランプし、かつクランプ装置16を上昇させているとき、制御装置30は、開閉弁43を開く。これによれば、クランプされたワークWが沈み込んだときは、リフトシリンダ14の作動油55が押し出されるとともに、押し出された作動油55は、給排油路21及び接続油路44を経由して第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bに導入される。そして、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bに作動油55が導入されるのに伴い、ワークWに衝撃が発生することを抑制できる。
【0066】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○開閉弁43を閉じる契機は、クランプ操作部19の操作が検出されたときでなくてもよい。例えば、クランプ装置16に、ワークWのクランプと、ワークWのクランプの解除とを検出するクランプ検出部を設けるとともに、そのクランプ検出部を制御装置30と信号接続する。そして、クランプ検出部によってクランプの解除が検出されると、制御装置30が開閉弁43を閉じてもよい。
【0067】
○開閉弁43を閉じる契機は、産業車両11の停止時としてもよい。この場合、制御装置30には、車速センサ31が、産業車両11の停止を検出する停止検出部として信号接続されている。ワークWを接地する前には、オペレータは、産業車両11を停止させる。車速センサによって、産業車両11の停止が検出されると、制御装置30は開閉弁43を閉じる。これによれば、ワークWを接地する前に開閉弁43を閉じることができるため、ワークWを接地した時点で、第1アキュムレータ41A及び第2アキュムレータ41Bの作動油55が接続油路44を経由してリフトシリンダ14に流れ込むことを規制できる。
【0068】
○切換弁22は、制御装置30によって駆動が制御される電磁弁としたが、リフト操作部18やクランプ操作部19と機械的に連結された手動弁であってもよい。
○接続油路44に接続されるアキュムレータは1つだけでもよいし、3つ以上でもよい。
【0069】
○アキュムレータを複数設ける場合、ガス室41dへの初期封入圧を同じとしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
W…ワーク、11…クランプ装置を備えた産業車両、14…リフトシリンダ、16…クランプ装置、19…クランプ操作部、21…給排油路、22…切換弁、24…油タンク、30…制御装置、31…停止検出部としての車速センサ、41A…第1アキュムレータ、41B…第2アキュムレータ、43…開閉弁、44…接続油路、55…作動油、441…主油路、442…分岐油路。