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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159302
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】輻射パネル
(51)【国際特許分類】
   F24D 19/02 20060101AFI20241031BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F24D19/02 B
F24F5/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075206
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇次
(72)【発明者】
【氏名】根崎 楓真
(72)【発明者】
【氏名】長崎 忠利
【テーマコード(参考)】
3L073
【Fターム(参考)】
3L073BB02
(57)【要約】
【課題】輻射効率を向上させた輻射パネル。
【解決手段】輻射パネルであって、伝熱管と、パネル部と、伝熱管およびパネル部の間を接続する接続部とを備え、接続部は、伝熱管と接続する第1接続部と、第1接続部に接しパネル部と接続する第2接続部とを有し、伝熱管の長さ方向に垂直な断面において、第1接続部、第2接続部、およびパネル部は、この順に並んでいる。伝熱管は、第2接続部に対して第1接続部と同じ側にあり、第1接続部は、伝熱管の周囲の一部を覆って延在しており、伝熱管の外周のうち半分以上が、第1接続部によって覆われており、第1接続部が第2接続部と接している部分の長さは、伝熱管の外周のうち第1接続部と接していない部分の長さよりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輻射パネルであって、
伝熱管と、パネル部と、前記伝熱管および前記パネル部の間を接続する接続部とを備え、
前記接続部は、前記伝熱管と接続する第1接続部と、前記第1接続部に接し前記パネル部と接続する第2接続部とを有し、
前記伝熱管の長さ方向に垂直な断面において、
前記第1接続部、前記第2接続部、および前記パネル部は、この順に並んでおり、
前記伝熱管は、前記第2接続部から見て前記第1接続部と同じ側にあり、
前記第1接続部は、前記伝熱管の周囲の少なくとも一部を覆って延在しており、
前記伝熱管の外周のうち半分以上が、前記第1接続部によって覆われており、
前記第1接続部が前記第2接続部と接している部分における前記第2接続部の厚さ方向に垂直な方向での長さは、前記伝熱管の前記第1接続部によって覆われていない部分における前記垂直な方向での長さよりも大きく、かつ、前記伝熱管の前記外周の長さ以下であり、
前記伝熱管の前記外周上で前記第2接続部に最も近い点から、前記第2接続部までの距離は、前記伝熱管の厚さ以下であり、
前記第1接続部および前記第2接続部が接する線上での、前記第2接続部における前記垂直な方向の長さは、前記第1接続部における前記垂直な方向の長さよりも大きい、輻射パネル。
【請求項2】
前記パネル部は、金属多孔質焼結体を含み、前記金属多孔質焼結体は、50~500W/m・Kの熱伝導率を有する、請求項1に記載の輻射パネル。
【請求項3】
前記第1接続部は、前記パネル部の主元素と同一の元素を主元素とする金属部材を含み、前記金属部材は、空気を通さない、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項4】
前記伝熱管の前記長さ方向に垂直な前記断面において、前記第1接続部のうち前記伝熱管の中心よりも前記第2接続部から遠い部分は、前記伝熱管の前記外周に沿って湾曲している、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項5】
前記伝熱管の前記長さ方向に垂直な前記断面において、前記第1接続部のうち前記伝熱管の中心よりも前記第2接続部に近い位置にある部分は、外形が双曲線形状である、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項6】
前記第2接続部は、前記パネル部の主元素と同一の元素を主元素とする金属部材を含み、前記金属部材は、空気を通さない、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項7】
前記第2接続部は、パネル部の裏張り形状であって、複数の前記第1接続部と接している、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項8】
前記第2接続部の厚さは、前記パネル部の最大厚さの1倍~3倍である、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項9】
前記伝熱管は、前記パネル部の主元素と同一の元素を主元素とする金属層と、前記金属層を両側から挟む樹脂層を含む3層構造である、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項10】
前記パネル部の主元素はアルミニウム(Al)であり、前記パネル部は、溶融樹脂が通過可能なサイズの空隙を有する、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項11】
前記パネル部は、前記第2接続部と接続する側と反対側に、電磁波調整層を有する、請求項1または2に記載の輻射パネル。
【請求項12】
前記電磁波調整層は、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ウレタン樹脂、およびフッ素樹脂のいずれか1種以上を含む、請求項11に記載の輻射パネル。
【請求項13】
請求項1に記載の輻射パネルを備える、輻射ユニット。
【請求項14】
さらに吸音パネルを備える、請求項13に記載の輻射ユニット。
【請求項15】
請求項13および/または14に記載の輻射ユニットを備える、輻射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射パネルに関し、より詳細には、輻射空調設備用の輻射パネル、それを用いた輻射ユニット、それを用いた輻射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、輻射熱(放射熱)を利用した輻射(放射)空調システムが広く開発されている。輻射空調システムでは、天井面や床面に設置した輻射パネルを加熱/冷却することにより、遠赤外線の輻射効果で室内の空気が加熱/冷却される。このような輻射空調システムは、温度調整した空気を室内に吹き出す旧来の空調と比べて、稼働時に静音であることや、室内空気の温度ムラが少ない等の利点がある。
【0003】
特許文献1は、輻射面に金属多孔質基板を用いることで、空調性能に加えて吸音性を備えた輻射パネルを記載している。また、この輻射パネルは、金属多孔質基板の空隙率を調整することで、火災時等において熱によりパイプの樹脂が溶けた場合にも、溶融樹脂が基板を通過して滴下することを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-040663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の輻射パネルは、伝熱管であるパイプからパネル部への熱移動に供する面積の大きさが考慮されてないために輻射効率が十分でなく、また、溶融樹脂が基板を通過することを完全に防止することまでは期待できない。これらの点は輻射パネルにおいて重要な課題であり、改善が求められる。
【0006】
従って、本発明の目的は、輻射効率を向上し、火災等の際に溶融した樹脂が滴下することを確実に防止する輻射パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、輻射パネルであって、
伝熱管と、パネル部と、伝熱管およびパネル部の間を接続する接続部とを備え、
接続部は、伝熱管と接続する第1接続部と、第1接続部に接しパネル部と接続する第2接続部とを有し、
伝熱管の長さ方向に垂直な断面において、
第1接続部、第2接続部、およびパネル部は、この順に並んでおり、
伝熱管は、第2接続部から見て第1接続部と同じ側にあり、
第1接続部は、伝熱管の周囲の少なくとも一部を覆って延在しており、
伝熱管の外周のうち半分以上が、第1接続部によって覆われており、
第1接続部が第2接続部と接している部分における第2接続部の厚さ方向に垂直な方向での長さは、伝熱管の第1接続部によって覆われていない部分における該垂直な方向での長さよりも大きく、かつ、伝熱管の外周の長さ以下であり、
伝熱管の外周上で第2接続部に最も近い点から、第2接続部までの距離は、伝熱管の厚さ以下であり、
第1接続部および第2接続部が接する線上での、第2接続部における該垂直な方向の長さは、第1接続部における該垂直な方向の長さよりも大きい、輻射パネル
が提供される。
【0008】
好ましくは、パネル部は、金属多孔質焼結体を含み、金属多孔質焼結体は、50~500W/m・Kの熱伝導率を有する。
【0009】
好ましくは、第1接続部は、パネル部の主元素と同一の元素を主元素とする金属部材を含み、金属部材は、空気を通さない。
【0010】
好ましくは、伝熱管の長さ方向に垂直な断面において、第1接続部のうち伝熱管の中心よりも第2接続部から遠い部分は、伝熱管の外周に沿って湾曲している。
【0011】
好ましくは、伝熱管の長さ方向に垂直な断面において、第1接続部のうち伝熱管の中心よりも第2接続部に近い位置にある部分は、外形が双曲線形状である。
【0012】
好ましくは、第2接続部は、パネル部の主元素と同一の元素を主元素とする金属部材を含み、金属部材は、空気を通さない。
【0013】
好ましくは、第2接続部は、パネル部の裏張り形状であって、複数の第1接続部と接している。
【0014】
好ましくは、第2接続部の厚さは、パネル部の最大厚さの1倍~3倍である。
【0015】
好ましくは、伝熱管は、パネル部の主元素と同一の元素を主元素とする金属層と、金属層を両側から挟む樹脂層を含む3層構造である。
【0016】
好ましくは、パネル部の主元素はアルミニウム(Al)であり、パネル部は、溶融樹脂が通過可能なサイズの空隙を有する。
【0017】
好ましくは、パネル部は、第2接続部と接続する側と反対側に、電磁波調整層を有する。
【0018】
好ましくは、電磁波調整層は、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ウレタン樹脂、およびフッ素樹脂のいずれか1種以上を含む。
【0019】
さらに、輻射パネルを備える輻射ユニットが提供される。
【0020】
さらに、吸音パネルを備える輻射ユニットが提供される。
【0021】
さらに、輻射ユニットを備える輻射システムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の輻射パネルは、伝熱管とパネル部との間の構造の最適化を実現したことで、輻射空調の効率を向上させている。また、伝熱管とパネル部との間に接続部、特に第2接続部を備えることで、伝熱管からパネル部への熱伝導効率を向上させ、かつ、火災等の際に伝熱管に用いられる材料(例えば樹脂)が溶融した場合にも、溶融樹脂が室内に滴下することを確実に防ぎ、室内の延焼を防止することができる。
【0023】
本発明およびその利点について、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。図面は、非限定的な実施例を例示の目的でのみ示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による輻射パネルの断面模式図を示す。
図2】本発明の一実施形態による伝熱管、ヒートシンク、および裏金層の断面模式図を示す。
図3】本発明の一実施形態による伝熱管およびヒートシンクの断面模式図を示す。
図4】比較例による伝熱管およびヒートシンクの断面模式図を示す。
図5】本発明の一実施形態による輻射パネルの上面図を示す。
図6】本発明の輻射システムの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
本明細書で記載する「輻射」とは、物体が粒子線や電磁波を放出、吸収する現象を意味し、当技術分野では、特に温度に依存する電磁波の放出、吸収する現象を意味する、一般に広く知られた用語である。また、「輻射」と「放射」は、概ね同義と考えてよい。
【0027】
本発明の一実施形態による輻射パネルの構造を以下に詳細に説明する。
【0028】
本発明の輻射パネル1の断面模式図を図1に示す。輻射パネル1は、伝熱管10と、第1接続部20と、第2接続部30と、パネル部40とを備えている。伝熱管10は、内部を水等の流体が流れるように構成されており、伝熱管10の断面は略円形となっている。伝熱管10の外周は第1接続部20に接して配置されている。第1接続部20は、伝熱管10内外への熱伝達を効率的に行わせることができる。第1接続部20は第2接続部30と接して配置されており、第2接続部30はパネル部40に接して配置されている。第2接続部30は、パネル部40と第1接続部20との間で熱移動を媒介する。パネル部40の第2接続部30と反対側の面は、室内に向けられている。本発明の輻射パネル1は、このような構成を備えることにより、システムの稼働時に、伝熱管10内を流れる流体と室内の気体との間で熱移動を行わせることができる。なお、具体的には、第1接続部は、ヒートシンクと呼ぶこともでき、第2接続部は、裏金層と呼ぶこともできる。これらの部材について、以下では、ヒートシンク20および裏金層30として説明する。
【0029】
伝熱管10は、パイプ形状であり、金属層と、その内側および外側に樹脂層とを備える3層構造としてよい。金属層の材料は、たとえばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはそれらの合金を使用してよい。樹脂層の材料は、たとえば架橋ポリエチレン、ポリブデン、エチレンビニルアルコール共重合樹脂を使用してよい。伝熱管10の内側には樹脂層が設けられていることにより、伝熱管10の内部を流れる流体によって伝熱管10が腐食/孔食されることを防ぐことができる。伝熱管10の外側は、部分的に樹脂層が存在しない部分があってもよい。また、伝熱管10は、外側の樹脂層を備えず、金属層およびその内側の樹脂層を備える2層構造としてもよい。樹脂層のみからなる1層構造としてもよいし、金属層や樹脂層に別成分の金属層や樹脂層を重ねてもよい。強度および耐食性の面から樹脂層-金属層-樹脂層の3層構造が望ましい。樹脂層と金属層との間に、接着性に優れた別の樹脂層を介させてもよい。
【0030】
ヒートシンク20は、伝熱管10の外周を覆うように設けられ、かつ裏金層30に接して形成されている。伝熱管10は、図1では裏金層30と反対側の外周の一部がヒートシンク20に覆われずに露出しているが、伝熱管10の外周の全部がヒートシンク20に覆われる構成としてもよい。伝熱管10の外周がヒートシンク20によって50%~100%覆われる構成であればよい。伝熱管10の外周がヒートシンク20によって覆われる面積が大きいほど、伝熱管10と裏金層30との間の熱伝導が効率的に行われる。
【0031】
ヒートシンク20は、伝熱管10と裏金層30との間の熱伝導を効率的に行わせるために、伝熱管10との接触面積が大きい形状とし、また、伝熱管10と裏金層30との間の距離が小さい形状とする。熱の伝達が分散し過ぎないように、ヒートシンク20自体はできるだけ小さい形状とするのが望ましい。具体的には、図1において、伝熱管10が露出している部分の長さaは、ヒートシンク20が裏金層30と接する部分の長さdより小さく、伝熱管10と裏金層30との間に存在するヒートシンク20の厚さcは、伝熱管10の厚さbよりも小さい。ここで、長さaは、伝熱管10の長さ方向に垂直な断面において、伝熱管10がヒートシンク20によって覆われていない部分の、裏金層30の厚さ方向tに垂直な方向wの長さを指す。即ち、長さaは、裏金層30から最も離れた位置におけるヒートシンク20の先端部と先端部との間の距離である。ヒートシンク20が裏金層30と接する部分の長さdは、伝熱管10の外周長さ以下である。また、ヒートシンク20は、図1に示されるように、伝熱管10の中心よりも裏金層30に近い部分の稜線が、略双曲線の形状となっている。伝熱管10の厚さbは1.5~4.5mm、伝熱管10の外径は10~40mmとすることが好ましい。
【0032】
ヒートシンク20の形状について、図2を参照してより詳細に説明する。図2は、図1と同様に伝熱管10の長さ方向に垂直な断面を表す模式図である。伝熱管10を覆うヒートシンク20の外縁間の方向wの距離は、裏金層30の表面に近い部分が最も大きく、裏金層30の表面から離れるに従って小さくなるように構成してよい。
好ましくは、ヒートシンク20のうち伝熱管10の中心よりも裏金層30から遠い部分の厚さは、裏金層30の表面からの距離が伝熱管10の中心と同程度となる位置において最小の厚さx(方向wに平行な、伝熱管10の中心を通る仮想線mとの交点x間距離)となり、裏金層30の表面からさらに離れた位置においても同じ最小の厚さ(伝熱管10の中心からの放射方向線との交点間距離)であってよい。このように、ヒートシンク20の端部(すなわち、伝熱管10を覆わせる部分)の厚さが一定に設計されていると、ヒートシンク20の加工前の中間部品を準備し易く、都合がよい。
さらに好ましくは、ヒートシンク20のうち伝熱管10の中心よりも裏金層30から遠い部分の厚さは、裏金層30の表面からの距離が伝熱管10の中心よりも離れた位置でxよりも薄い厚さx(方向wに平行な、裏金層30の表面からの距離が伝熱管10の中心よりも離れた位置を通る仮想線nとの交点x間距離)となるように構成してよい。このように、ヒートシンク20の端部(すなわち、伝熱管10を覆わせる部分)の厚さが、裏金層30の表面からの距離が伝熱管10の中心と同程度である部分から、ヒートシンク20の最先端部に向かうにつれて次第に薄くなるように設計されていると、ヒートシンク20を湾曲させて伝熱管10を覆わせる加工がし易くなる。その結果、ヒートシンク20を伝熱管10の外周に対してより密着させることができ、伝熱管10と裏金層30との間の熱伝導効率を向上させることができる。
【0033】
ヒートシンク20の材料は、たとえばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはそれらの合金を使用することができる。ヒートシンク20は、溶融樹脂や空気を通さないように形成してよい。
【0034】
伝熱管10およびヒートシンク20の拡大図を図3に示す。図3の(a)は、伝熱管10およびヒートシンク20を組み合わせた状態を示しており、ヒートシンク20の端部を湾曲させて伝熱管10を覆わせることで、(b)に示す伝熱管10およびヒートシンク20が得られる。なお、(b)では伝熱管10の外周がヒートシンク20によって完全に覆われているが、上述のように、伝熱管10の外周がヒートシンク20によって50%~100%覆われる構成であればよい。
【0035】
比較例による伝熱管10´、ヒートシンク20´、および裏金層30´の断面図を図4に示す。図4の構成では、伝熱管10´が露出している部分の長さa´は、ヒートシンク20´が裏金層30´と接する部分の長さd´より大きい。このようなヒートシンク20´の形状では、伝熱管10´と裏金層30´との間の熱伝導が効率的に行われないので、好ましくない。
【0036】
裏金層30は、パネル部40の裏張り状に形成されており、ヒートシンク20とパネル部40との間を接続している。裏金層30の材料は、たとえばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはそれらの合金を使用してよく、また、溶融樹脂や空気を通さないように形成されていてよい。
【0037】
ヒートシンク20および裏金層30は、それぞれ独立した部材として別個に設けられていてもよいし、一体化した部材であってもよい。
【0038】
図1に示されるように、伝熱管10の長さ方向に垂直な断面において、裏金層30の方向wの長さである幅eは、ヒートシンク20の方向wの長さである幅dよりも大きい。図1に示される裏金層30は、1つのヒートシンク20と接続しているが、裏金層30が複数のヒートシンク20と接続していてもよい。また、図1に示されるように、裏金層30は、ヒートシンク20に対して全面的に接していることが好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されず、裏金層30がヒートシンク20に対して部分的に接し、残りの部分がヒートシンク20からはみ出す構成としてもよい。裏金層30の幅eは、パネル部40の方向wの長さである幅fと等しいことが好ましい。
【0039】
パネル部40は、裏金層30に接続して設けられており、パネル部40の裏金層30と反対側の面は、室内に向けられている。パネル部40は、金属多孔質焼結体から構成されている。多孔質焼結体の金属としては、たとえばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはそれらの合金を使用してよく、該金属または合金の熱伝導率は、100~450W/m・Kであってよい。金属多孔質焼結体としての熱伝導率は、50~500W/m・Kが好ましい。
【0040】
パネル部40の金属多孔質焼結体の空隙の大きさである孔サイズは、溶融樹脂および空気を通過させる程度の大きさであってよい。これにより、パネル部40は、伝熱管10からの熱移動のために機能するだけでなく、室内の騒音や反響音を吸収する吸音パネルとしても良好に機能することができる。
【0041】
パネル部40の室内側の面に、さらに、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を含む電磁波調整層50(図示せず)を備えてもよい。この電磁波調整層50は、パネル部40の輻射性能を向上させる効果がある。電磁波調整層50の厚さは、5~50μmとすることが好ましい。電磁波調整層50の厚さがこのような範囲であれば、パネル部40として金属多孔質焼結体を用いる場合、室内側の面での金属多孔質焼結体の凹部を塞ぎきることなく骨格表面に倣わせた膜を設け易い。また、電磁波調整層50の厚さが上記の範囲であれば、電磁波調整層50自体の体積が比較的小さいので、火災等が発生した際には熱により完全に蒸発する見込みが高く、室内の延焼の原因となる溶融樹脂の滴下が発生するリスクが少ない。電磁波調整層50の厚さは、20~30μmとすることがより好ましい。電磁波調整層50の製造方法としては、所定樹脂を溶かした溶液にパネル部40を浸す工法を採ると、金属多孔質焼結体の内部にまで電磁波調整層50を設け易い。所定樹脂を溶かした溶液をパネル部40の室内側の面に吹き付ける工法を採ると、金属多孔質焼結体の当該面やその近傍深さまでの電磁波調整層50を設け易い。用途に応じて樹脂種や深さや厚さを制御すればよい。
【0042】
裏金層30の厚さは、パネル部40の最大厚さの1倍~3倍としてよく、具体的には、例えば2mmとしてよい。また、裏金層30とパネル部40との厚さの合計は2~3mmとしてよい。
【0043】
本発明の輻射パネル1は、溶融樹脂を通過させない裏金層30を備えることにより、火災時等において熱により伝熱管10であるパイプの樹脂が溶けた場合にも、溶融樹脂がパネル部40を通過して室内に滴下することを確実に防ぎ、室内の延焼を防止することができる。
【0044】
本発明の輻射パネル1の上面図を図5に示す。伝熱管10は、直線部Aおよび曲線部Bを備えており、輻射パネル1の上面を広く覆うように配置されている。伝熱管10は、直線部Aの80%以上の部分において、図1に示したヒートシンク20断面構造を備えている。さらに、曲線部Bにおいても図1の接続部断面構造を備えていてもよい。
【0045】
輻射ユニット101は、1枚以上の輻射パネル1と組付部材を組み合わせて構成することができる。また、輻射ユニット101を、1枚以上の輻射パネル1および1枚以上の吸音パネルを組み合わせて構成してもよい。ここで、吸音パネルは、輻射パネル1のパネル部40と同等のパネル部を備え、輻射パネル1の伝熱管10、ヒートシンク20、および裏金層30は備えない構成とすることができる。室内から視認される輻射パネル1と吸音パネルの形状を同様にすることで、輻射ユニット101全体の統一感を生み出し、審美性を向上させることができる。また、吸音特性への要求度合に従って、輻射パネル1および吸音パネルの配置、大きさ、数等を調整してもよい。求められる吸音特性が高い場合は、吸音パネルの占める面積や厚さを大きくするのが好ましい。
【0046】
本発明の輻射システム100の構成例を図6に示す。輻射システム100は、複数の輻射パネル1と複数の吸音パネルとを備える輻射ユニット101に加えて、外調機102、熱交換ユニット103、熱源機104等を含んで構成される。図6の例では、複数の輻射パネルが天井面に敷設されており、伝熱管からの熱を輻射によって室内に供給する、または室内からの熱を伝熱管へ移動させるように構成されている。図6において、輻射パネルの表面温度は15℃~45℃の低温式としてよい。伝熱管に流通させる熱媒体は、たとえば水を用いることができる。
【0047】
本発明の輻射パネルの製造方法を説明する。
【0048】
(パネル部の材料)
パネル部40の金属多孔質焼結体の材料は、純アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末、またはこれらの混合粉末のうちいずれか1種類を基材粉末として選択することができる。基材粉末の粒度は、個数割合で70%以上が30~800μmの粒子径を有するものを使用することができる。基材粉末の組成は、アルミニウムまたはアルミニウム合金をベースとして、不可避不純物と、(1)0.5~5.0質量%のCu、(2)0.5~3.0質量%のSi、または(3)0.5~3.0質量%のMnから1種類以上を含んでいてよい。
【0049】
(パネル部の粒子径および空孔率)
パネル部40の粒子径および空孔率は、基材粉末の大きさや基材粉末に含まれる球形粉および異形粉の割合や焼結条件を変えることにより孔サイズや孔形状と共に調整することができる。パネル部40の空孔率は、10%~60%の範囲であることが好ましい。空孔率が10%以上であれば、パネル部40が空気を通す性質や吸音性の機能を備えることができる。また、空孔率が60%以下であれば、パネル部40が加工や設置等に必要な機械的強度を備え、一定以上の熱伝導率を有することができる。空孔率を調整して熱伝導率を制御してもよい。
【0050】
(パネル部の製造方法)
パネル部40は、黒鉛プレートに上記の基材粉末を散布し、加圧をせずに、600℃~700℃の還元雰囲気で焼結することで製造することができる。
【0051】
(裏金層の接着方法)
裏金層30は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはそれらの合金から形成される。裏金層30は、パネル部40の焼結後に、接着剤等または溶接等によりパネル部40と接着してもよいし、パネル部40の焼結前の基材粉末にアルミニウム板または銅板を載せ、600℃~700℃の還元雰囲気で焼結することで、接着してもよい。
【0052】
(ヒートシンクの製造方法)
ヒートシンク20は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を原料として、押し出し、引き抜き、削り、鋳造、鍛造、ダイキャスト等の一般的なアルミニウム系部材の製造方法により製造することができる。
【0053】
(ヒートシンクの接着方法)
ヒートシンク20は、上記アルミニウム(Al)の他、銅(Cu)、またはそれらの合金から形成される。ヒートシンク20は、上記の通りパネル部40を接着させた裏金層30から見て、パネル部40とは反対の側から、樹脂系接着剤、パテ、アクリル樹脂等により接着することができる。また、あらかじめヒートシンク20と裏金層30とが一体化したものを製造し、パネル部40の焼結前の基材粉末とともに600℃~700℃の還元雰囲気で焼結することで接着してもよい。他の方法としては、あらかじめヒートシンク20と裏金層30とが一体化したものを製造し、これを焼結後のパネル部40に接着剤や溶接等により接着してもよい。
【0054】
以上、図面を参照して、本発明の実施形態および実施例を詳述してきたが、具体的な構成はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない程度の変更は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 輻射パネル
10 伝熱管
20 第1接続部/ヒートシンク
30 第2接続部/裏金層
40 パネル部
50 電磁波調整層
100 輻射システム
101 輻射ユニット
102 外調機
103 熱交換ユニット
104 熱源機
図1
図2
図3
図4
図5
図6