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  • 特開-被覆部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159304
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】被覆部材
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20241031BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20241031BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/20 Z
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075209
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】絹川 謙作
【テーマコード(参考)】
4F100
4H011
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AB24B
4F100AK01B
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA30B
4F100DE01B
4F100EH46
4F100JC00B
4F100YY00B
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC03
4H011BC17
4H011BC19
4H011DA07
4H011DA16
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】基材と基材を覆う皮膜とを備える被覆部材に、つや消しされた外観を付与しながら抗菌抗ウイルス性も付与する。
【解決手段】被覆部材1は、基材2と、基材2を被覆する皮膜3とを備える。皮膜3が、粒子状の抗菌抗ウイルス剤(A)と、抗菌抗ウイルス剤(A)よりも平均粒径の大きい粒子状の外観調整剤(B)とを含む。抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径と、外観調整剤(B)の平均粒径との比が、1:2.5から1:100までである。皮膜の最小厚みT2と皮膜の最大厚みT1との比が、1:1.1から1:4までである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材を被覆する皮膜とを備え、
前記皮膜が、粒子状の抗菌抗ウイルス剤(A)と、前記抗菌抗ウイルス剤(A)よりも平均粒径の大きい粒子状の外観調整剤(B)とを含み、
前記抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径と、前記外観調整剤(B)の平均粒径との比が、1:2.5から1:100までであり、
前記皮膜の最小厚みと前記皮膜の最大厚みとの比が、1:1.1から1:4までである、
被覆部材。
【請求項2】
前記抗菌抗ウイルス剤(A)が、一価銅化合物を含む銅化合物を含有する、
請求項1に記載の被覆部材。
【請求項3】
前記抗菌抗ウイルス剤(A)が、酸化第一銅を含む銅化合物を含有する、
請求項1に記載の被覆部材。
【請求項4】
前記基材が、配線器具である、
請求項1に記載の被覆部材。
【請求項5】
前記基材がフィルムである、
請求項1に記載の被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆部材に関し、詳しくは基材と基材を覆う皮膜とを備える被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a)、ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)、前記水酸基と反応可能な官能基を有する硬化剤(c)、平均粒径が、0.1μm~5.0μmの抗菌抗ウイルス剤(d)および分散剤(e)を含むコーティング用組成物、及びこのコーティング用組成物により形成されたコーティング層を有する塗工物が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-093225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の課題は、基材と基材を覆う皮膜とを備える被覆部材に、つや消しされた外観を付与しながら抗菌抗ウイルス性も付与することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る被覆部材は、基材と、前記基材を被覆する皮膜とを備える。前記皮膜が、粒子状の抗菌抗ウイルス剤(A)と、前記抗菌抗ウイルス剤(A)よりも平均粒径の大きい粒子状の外観調整剤(B)とを含む。前記抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径と、前記外観調整剤(B)の平均粒径との比が、1:2.5から1:100までである。前記皮膜の最小厚みと前記皮膜の最大厚みとの比が、1:1.1から1:4までである。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、基材と基材を覆う皮膜とを備える被覆部材に、つや消しされた外観を付与しながら、抗菌抗ウイルス性も付与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の実施形態における被覆部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図1を参照して説明する。なお、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下において参照する図は、模式的な図であり、図中の構成要素の寸法比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下で示される実施形態の作用機序は推定されたものであり、本開示は以下の作用機序の説明には拘束されない。
【0009】
実施形態に係る被覆部材1は、基材2と、基材2を被覆する皮膜3とを備える。皮膜3が、粒子状の抗菌抗ウイルス剤(A)と、抗菌抗ウイルス剤(A)よりも平均粒径が大きい粒子状の外観調整剤(B)とを含む。抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径と、外観調整剤(B)の平均粒径との比が、1:2.5から1:100までである。皮膜3の最小厚みT2と皮膜3の最大厚みT1との比が、1:1.1から1:4までである。
【0010】
なお、抗菌抗ウイルス剤(A)とは、抗菌抗ウイルス性を有する物質である。抗菌抗ウイルス性とは、抗菌性と抗ウイルス性とのうち少なくとも一方のことである。皮膜3は、基材2の表面全体を被覆してもよく、基材2の表面の一部を被覆してもよい。
【0011】
抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径は、動的光散乱法により測定される散乱強度基準の粒度分布から算出されるキュムラント解析粒子径である。なお、抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径は、組成物(X)中及び皮膜3中での抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径である。この平均粒径は、抗菌抗ウイルス剤(A)に解砕処理が施されることなく測定される値であり、そのため抗菌抗ウイルス剤(A)の粒子5が凝集している場合には平均二次粒径であり、凝集していない場合は平均一次粒径である。
【0012】
外観調整剤(B)の平均粒径は、レーザー回折法により測定される散乱強度基準の粒度分布から算出される50%積算粒子径(メジアン径D50)である。この平均粒径は一次粒子径である。
【0013】
実施形態によると、皮膜3によってつや消しされた外観が付与され、かつ皮膜3が抗菌抗ウイルス剤(A)を含んでいても外観が損なわれにくい。
【0014】
すなわち、皮膜3が抗菌抗ウイルス剤(A)を含むことで、皮膜3が被覆部材1に抗菌抗ウイルス性を付与でき、かつ皮膜3が外観調整剤(B)を含むことで、皮膜3が被覆部材1につや消しされた外観を付与できる。さらに、外観調整剤(B)の平均粒径が抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径の2.5倍以上100倍以下であり、かつ皮膜3の最大厚みT1が皮膜3の最小厚みT2の1.1倍以上であるため、抗菌抗ウイルス剤(A)による抗菌抗ウイルス性の付与と、外観調整剤(B)によるつや消しされた外観の付与とが、ともに良好に実現されうる。
【0015】
なお、粒子状の抗菌抗ウイルス剤(A)のみでは被覆部材1につや消しされた外観を付与しながら良好な抗菌抗ウイルス性も付与することは難しい。また皮膜3の厚み、並びに抗菌抗ウイルス剤(A)の粒径と外観調整剤(B)の粒径との関係を考慮せずに、単に抗菌抗ウイルス剤(A)と外観調整剤(B)とを併用しただけでも、被覆部材1につや消しされた外観を付与しながら良好な抗菌抗ウイルス性も付与することは難しい。実施形態は、単に抗菌抗ウイルス剤(A)と外観調整剤(B)とを併用しただけではなく、皮膜3の最大厚みT1と最小厚みT2との関係と、抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径と外観調整剤(B)の平均粒径との関係を、上記のとおり規定することで、被覆部材1につや消しされた外観を付与しながら良好な抗菌抗ウイルス性も付与できる。
【0016】
被覆部材1は、例えば良好な意匠性が求められ、かつ人の手に触れられる部材に、好ましく適用されうる。例えば、被覆部材1における基材2が、スイッチ又はコンセントなどの、配線器具であることが好ましい。より具体的には、例えばスイッチにおけるスイッチパネル(スイッチカバー又はスイッチプレートなどともいう)の外面、又はコンセントにおけるコンセントパネル(コンセントカバー又はコンセントプレートなどともいう)の外面などの、配線器具における化粧パネルの外面を覆うように、皮膜3が形成される。
【0017】
皮膜3は、例えば皮膜形成用の組成物(以下、組成物(X)ともいう)から作製される。
【0018】
組成物(X)は、例えば粒子状の抗菌抗ウイルス剤(A)と、抗菌抗ウイルス剤(A)以外の外観調整剤(B)と、バインダー成分(C)とを、含有する。
【0019】
抗菌抗ウイルス剤(A)は、抗菌抗ウイルス性を有するあらゆる物質を含みうる。例えば、抗菌抗ウイルス剤(A)は、結晶性アルミノケイ酸ナトリウム、銀置換ゼオライト、銀・亜鉛ゼオライト、銀ゼオライト、リン酸ジルコニウム・酸化銀、リン酸ジルコニウム・酸化銀・酸化亜鉛、リン酸チタン、酸化亜鉛及び酸化チタンのゲル混合物、リン酸チタン銀担持ゲルと酸化亜鉛の混合物、銀担持二酸化ケイ素、酸化銀、ポリリン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、塩化銀、銀、酸化亜鉛、銅化合物、金属銅、テトラアミン銅イオン、リン酸系・ガラス、及び金属酸化物を含む親水性アミノシリコンポリマーなどの、金属塩;ピグアナイド、グルコン酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン・ポロクトオラミン、ポリヘキサメチレンピグアナイド塩酸塩、クロルヘキシジン、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸共重合物、及びポリヘキサメチレンピグアナイドハイロドクロライドと酸化亜鉛配合物などの、有機系合成抗菌剤;トリクロカルバン、トリクロカルバンとナリジクス酸の配合物、及びフェニルアミド系化合物などの、カーバニリド;アルキルアミドプロピルジメチルβ-ヒドロキシアンモニウム塩・ポリオキシエチレン(ジメチルアミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンクロライドなどの、両性界面活性剤;ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸塩と硫酸亜鉛の配合物、及びナリジクスサン(1-エチル-1,4-ジハイドロ-7-メチル-4-オキソ-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸などの、カルボン酸;多価アルコール系化合物などの、アルコール;塩化ベンザルコニウム、有機シリコーン第四アンモニウム塩、N-ポリオキシアルキレン-N,N,N-トリアルキレンアンモニウム塩、アルキルダニョンアンモニウム・カルボン酸塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンザルコニウム塩、アルキル第四アンモニウム塩、N,N,N,N-テトラアルキル第四アンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキル第四アンモニウム塩、テトラアルキル第四アンモニウム塩、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、3-(メトキシシリル)-プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウムクロライド・多価アルコール系化合物、アルキルトリメチルアンモニウムジブチリン酸塩、ジシアンアミドジエチレントラミン・塩化アンモニウム縮合物、及びジシアンアミドポリアルキレントリアミン・塩化アンモニウム重縮合体などの、第四級アンモニウム塩;アルキレンビスフェノールナトリウム塩、パラクロールメタキシレノール、及びビス(2.6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)ペンタエリスリテールジフォスフェートなどの、フェノール;N-アルキロイル-L-グルタミン酸銀銅などの、アミノ酸;N,N-ジメチル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)-N”-フェニルスルファミドなどの、スルファミド;ジンクピチオンなどの、ピリジン;2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリルなどの、ニトリル;アクリロニトリル・アクリル酸共重合物架橋物、アクリロニトリル硫化銅複合体、アクリルアミド・ジアリルアミン塩酸塩共重合体、及びメタクリレート共重合体などの、ポリマー;並びに硫酸フルアブルなどの、その他の物質、などからなる群から選択される、少なくとも一種を、含有できる。
【0020】
抗菌抗ウイルス剤(A)は、例えば光触媒粒子と、銅化合物粒子とのうち、少なくとも一方を含有する。
【0021】
銅化合物粒子は、銅イオンが菌類及びウイルス等の代謝機能を阻害し、かつ有機物の分解を促進することで、抗菌抗ウイルス作用を発現しうる。銅化合物粒子は、一価銅化合物を含有することが好ましい。この場合、一価銅イオンによって、より高い抗菌抗ウイルス作用が発現しうる。銅化合物が、酸化第一銅(亜酸化銅)を含有すれば、より好ましい。
【0022】
抗菌抗ウイルス剤(A)が光触媒粒子を含有すると、皮膜3に光が照射された場合に光触媒粒子の光触媒作用により、光触媒粒子表面での還元・酸化反応が起こり、これにより皮膜3が抗菌抗ウイルス作用を発現しうる。光触媒粒子は、例えば二酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化亜鉛、及び酸化錫よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。耐薬品性が高いこと、及び入手が容易であることから、光触媒粒子は二酸化チタンを含むことが好ましい。二酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタンとルチル型二酸化チタンとのうち少なくとも一方を含みうる。光触媒粒子は、例えば二酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化亜鉛、及び酸化錫よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0023】
抗菌抗ウイルス剤(A)が、光触媒粒子と銅化合物粒子とを、両方含有することも好ましい。この場合、銅化合物粒子による抗菌抗ウイルス作用がより長期間維持されうる。その理由は次の通りであると推察される。皮膜3に光が照射されると、光触媒粒子の価電子帯の電子が導電帯へ励起されることで価電子帯に正孔が生じ、この正孔によって光触媒粒子が酸化作用を生じる。このため、光触媒粒子が抗菌抗ウイルス作用を発現するが、銅酸化物粒子に二価の銅イオンが含まれている場合、光触媒粒子における導電帯へ励起した電子によって二価の銅イオンが還元されて一価の銅イオンに変化されうる。このため、銅酸化物粒子の抗菌抗ウイルス作用が更に維持されうる。
【0024】
抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径は、10nm以上500nm以下であることが好ましい。平均粒径が10nm以上であれば、抗菌抗ウイルス剤(A)が抗菌抗ウイルス作用を効果的に発揮しうる。平均粒径が500nm以下であれば、抗菌抗ウイルス剤(A)の粒子5の凝集及び沈殿が抑制されうる。平均粒径は20nm以上であればより好ましい。また平均粒径が200nm以下であればより好ましく、150nm以下であれば更に好ましい。
【0025】
外観調整剤(B)は、例えば樹脂粒子である。樹脂粒子は、例えばアクリル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ポリアミド樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、ポリアクリロニトリル樹脂粒子などの樹脂粒子やシルクプロテイン(絹粉砕品);及びポリエチレンワックス等の有機艶消し剤等よりなる群から選択される少なくとも一種の樹脂からなる。
【0026】
外観調整剤(B)の平均粒径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μm以上であれば、外観調整剤(B)の粒子が皮膜3の中に埋没しにくくなるため、外観調整剤(B)により、皮膜3の表面に良好なつや消しされた外観が付与されうる。平均粒径が30μm以下であると、組成物(X)中での外観調整剤(B)の粒子の沈降及び凝集が抑制され、かつ皮膜3の摩耗による皮膜からの外観調整剤(B)の粒子の脱落が抑制されて皮膜3の耐久性が高まりうる。平均粒径が1.5μm以上であればより好ましく、2μm以上であれば更に好ましい。また平均粒径が10μm以下であればより好ましく、5μm以下であれば更に好ましい。
【0027】
上述のとおり、抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径と、外観調整剤(B)の平均粒径との比が、1:2.5から1:100までである。すなわち、外観調整剤(B)の平均粒径が、抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径の2.5倍以上100倍以下である。この範囲内において、皮膜3が良好な抗菌抗ウイルス性を発現しうる。外観調整剤(B)の平均粒径が抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径の2.5倍以上であることで、皮膜3中において外観調整剤(B)の粒子6の表面に抗菌抗ウイルス剤(A)の粒子5が安定して保持され、そのため皮膜3の表面付近に抗菌抗ウイルス剤(A)の粒子5が存在しうる。このため皮膜3中で抗菌抗ウイルス剤(A)の作用が発現しやすいと推察される。また、外観調整剤(B)の平均粒径が抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径の100倍以下であると、皮膜3内に抗菌抗ウイルス剤(A)の粒子5が沈み込みにくくなり、そのために皮膜3中で抗菌抗ウイルス剤(A)の作用が発現しやすいと推察される。外観調整剤(B)の平均粒径が、抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径の3倍以上であれば更に好ましい。外観調整剤(B)の平均粒径が、抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径の80倍以下であれば更に好ましい。
【0028】
抗菌抗ウイルス剤(A)と外観調整剤(B)との体積比は、1:9から1:110までであることが好ましい。この場合、皮膜3の外観と抗菌抗ウイルス性とがバランス良く高まりやすい。外観調整剤(B)の体積が抗菌抗ウイルス剤(A)の17倍以上であればより好ましく、30倍以上であれば更に好ましい。外観調整剤(B)の体積が抗菌抗ウイルス剤(A)の80倍以下であればより好ましく、60倍以下であれば更に好ましい。
【0029】
組成物(X)及び皮膜3は、皮膜3の外観及び抗菌抗ウイルス性を過度に阻害しない範囲で、抗菌抗ウイルス剤(A)及び外観調整剤(B)以外の粒子(E)を更に含有してもよい。組成物(X)が粒子(E)を含有する場合、抗菌抗ウイルス剤(A)と外観調整剤(B)との合計体積に対する粒子(E)の体積の割合は、4倍以下であれば好ましく、2倍以下であればより好ましく、1.5倍以下であれば更に好ましい。
【0030】
バインダー成分(C)は、皮膜3のマトリクス4を形成するための成分である。バインダー成分(C)には、皮膜3を形成するために適用可能であり、かつ皮膜3の安定性、抗菌抗ウイルス性が確保されるならば、特に制限はない。
【0031】
バインダー成分(C)は、例えば溶剤に分散又は溶解する樹脂を含有してもよい。この場合、組成物(X)に溶剤を含有させ、この組成物(X)を膜状に成形してから溶剤を揮発させて除去することで、皮膜3が作製されうる。
【0032】
バインダー成分(C)は、反応硬化性の化合物を含有してもよい。この場合、組成物(X)を膜状に成形してから反応硬化性の化合物を反応させて硬化させることで、皮膜3が作製されうる。
【0033】
バインダー成分(C)が反応硬化性の化合物を含有する場合、バインダー成分(C)は、光硬化性化合物などの活性エネルギー線硬化性化合物を含有してもよい。この場合、組成物(X)に活性エネルギー線を照射すれば、組成物(X)を加熱することなく硬化させて皮膜3を作製できる。このため、加熱による抗菌抗ウイルス剤(A)の酸化が抑制され、組成物(X)及び皮膜3中の抗菌抗ウイルス剤(A)の抗菌抗ウイルス性が損なわれにくくなる。
【0034】
バインダー成分(C)は、例えばアルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂、アクリル酸系モノマー、及びアクリレート系モノマー等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。
【0035】
バインダー成分(C)が活性エネルギー線硬化性化合物を含有する場合、活性エネルギー線硬化性化合物は、例えばラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物を含有する。活性エネルギー線硬化性化合物は、例えば多官能(メタ)アクリレートなどを含有できる。より具体的には、活性エネルギー線硬化性化合物は、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール類、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール類、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のメチロール類、並びにビスフェノールAジエポキシアクリレート等のエポキシアクリレート類等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。活性エネルギー線硬化性化合物がペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0036】
なお、「(メタ)アクリ-」は、「アクリ-」及び「メタクリ-」の上位概念的な総称であり、「アクリ-」と「メタクリ-」とのうちの一方、又は「アクリ-」と「メタクリ-」との両方を、意味する。
【0037】
バインダー成分(C)は上記のみには限られない。例えば皮膜3の形成が可能であるならば、バインダー成分(C)は無機化合物を含有してもよい。
【0038】
バインダー成分(C)が活性エネルギー線硬化性化合物を含有する場合、組成物(X)は光重合開始剤を更に含有してもよい。光重合開始剤は、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテル等の炭素数14~18のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、及び1,1-ジクロロアセトフェノン等の炭素数8~18のアセトフェノン化合物;2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等;2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、及び2-アミルアントラキノン等の炭素数14~19のアントラキノン化合物;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、及び2-クロロチオキサントン等の炭素数13~17のチオキサントン化合物;アセトフェノンジメチルケタール、及びベンジルジメチルケタール等の炭素数16~17のケタール化合物;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、及び4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等の炭素数13~21のベンゾフェノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、及びビス-(2、6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等の炭素数22~28のホスフィンオキサイド化合物;並びにビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0039】
光重合開始剤の量は、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、例えば0.1質量部以上5質量部以下である。
【0040】
組成物(X)中の抗菌抗ウイルス剤(A)、外観調整剤(B)及びバインダー成分(C)の割合は、皮膜3の表面が外観調整剤(B)によって適度な凹凸を有し、皮膜3の最小厚みT2に対する最大厚みT1の倍率が適切に調整されるように、適宜調整されうる。
【0041】
抗菌抗ウイルス剤(A)の割合は、例えば組成物(X)の不揮発成分100質量部に対して0.1質量部以上1質量部以下である。この割合は、0.2質量以上であればより好ましく、0.3質量以上であれば更に好ましい。この割合は0.9質量部以下であればより好ましく、0.8質量以下であれば更に好ましい。
【0042】
外観調整剤(B)の割合は、例えば組成物(X)の不揮発成分100質量部に対して0.5質量部以上6質量部以下である。この割合は、1質量部以上であればより好ましく、1.5質量部以上であれば更に好ましい。この割合は5部以下であればより好ましく、4部以下であれば更に好ましい。
【0043】
バインダー成分(C)の割合は、例えば組成物(X)の不揮発成分100質量部に対して5質量部以上50部質量以下である。この割合は、6質量部以上であればより好ましく、7部以上であれば更に好ましい。この割合は40質量以下であればより好ましく、20質量以下であれば更に好ましい。
【0044】
なお、組成物(X)の不揮発成分とは、組成物(X)中の全成分から、組成物(X)から皮膜3が作製される過程で揮発する成分を除いた成分、すなわち組成物(X)の全成分のうち皮膜3を構成する成分、のことである。
【0045】
組成物(X)が溶剤を含有する場合、溶剤は、例えばトルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール、1,1,1-トリメチルメタノール、エチレングリコール、及びプロピレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド系溶剤;並びにアセトニトリル、プロピオニトリル、及びピバロニトリル等のニトリル系溶剤よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0046】
組成物(X)は、必要により、分散剤、消泡剤、シランカップリング剤、チクソトロピー性付与剤、増粘剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤等よりなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を含有してもよい。添加剤の各々の割合は、組成物(X)の全体に対し、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
組成物(X)の製造方法について説明する。組成物(X)を調製するにあたり、抗菌抗ウイルス剤(A)を含有する分散液を調製してから、この分散液と、外観調整剤(B)及びバインダー成分(C)等とを混合することで、組成物(X)を調製することが、好ましい。
【0048】
抗菌抗ウイルス剤(A)を含有する分散液を調製するにあたり、例えば抗菌抗ウイルス剤(A)と溶剤とを混合しから、ニーダー、二本ロール、三本ロール、SS5(商品名、エム・テクニック株式会社)、又はミラクルKCK(登録商標)(商品名、浅田鉄工株式会社製)といった混練機;超音波分散機;マイクロフルイダイザー(商品名、みづほ工業株式会社製)、又はナノヴェイタ(登録商標)(商品名、吉田機械興業株式会社製)などの高圧ホモジナイザー;スターバースト(登録商標)(商品名、株式会社スギノマシン);G-スマッシャー(商品名、リックス株式会社);ボールミル;ビーズミル;サンドミル;横型メディアミル分散機;又はコロイドミルなどを使用して、抗菌抗ウイルス剤(A)を分散させる処理を行う。抗菌抗ウイルス剤(A)を分散させる処理の条件を調整することで、組成物(X)中での抗菌抗ウイルス剤(A)の粒子5の凝集の程度を調整でき、これにより、組成物(X)中での抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径を調整できる。
【0049】
実施形態に係る被覆部材1は、図1に示すように、基材2と、基材2を覆う、組成物(X)から作製された皮膜3とを備える。
【0050】
皮膜3を作製するにあたり、例えばまず基材2の表面に組成物(X)を塗布して塗膜を作製し、この塗膜を硬化させることで皮膜3を作製できる。
【0051】
組成物(X)を基材2に塗布する方法は、例えばスピンコート法、ディップコート法、ロールコート法又はスプレーコート法であるが、これらに制限されない。
【0052】
塗膜は、組成物(X)の組成に応じた適宜の方法で硬化される。例えば塗膜を乾燥させて塗膜中の溶媒を揮発させることで、塗膜を硬化させる。更に組成物(X)中のバインダー成分(C)が活性エネルギー線硬化性化合物を含有する場合、塗膜に紫外線、電子線、X線、赤外線、又は可視光線などの活性エネルギー線を照射することで、塗膜を硬化させる。
【0053】
皮膜3は、主に外観調整剤(B)の粒子6が皮膜3の表面で突出することにより、表面に凹凸を有する。
【0054】
皮膜3の平均厚みは、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。厚みが0.1μm以上であると、皮膜3が良好な硬度及び耐久性を有しうる。厚みが5μm以下であると、皮膜3の抗菌抗ウイルス作用がより強く発現しうる。皮膜3の平均厚みが0.5μm以上であればより好ましく、0.8μm以上であれば更に好ましい。皮膜3の平均厚みが3μm以下であればより好ましく、2μm以下であれば更に好ましい。なお、皮膜3の平均厚みは、皮膜3の、長さ50μmの断面の電子顕微鏡写真にあらわれる、10箇所の凸部の厚みと、10箇所の凹部の厚みとを測定した結果の、平均値である。
【0055】
上述のとおり、皮膜3の最小厚みT2と皮膜3の最大厚みT1との比が、1:1.1から1:4までである。すなわち、皮膜3の最大厚みT1は、皮膜3の最小厚みT2の1.1倍以上4倍以下である。皮膜3の最大厚みT1は、皮膜3の最小厚みT2の1.1倍以上であると、皮膜3の表面の凹凸によって、被覆部材1につや消しされた良好な外観が付与されうる。また、外観調整剤(B)の粒子6に保持された抗菌抗ウイルス剤の粒子5が皮膜3の表面付近に存在しやすくなるために、抗菌抗ウイルス剤(A)の抗菌抗ウイルス性が発現しやすくなる。皮膜3の最大厚みT1が、皮膜3の最小厚みT2の4倍以下であると、外観調整剤(B)の粒子6に抗菌抗ウイルス剤(A)の粒子5が安定して保持されやすく、そのため抗菌抗ウイルス剤(A)の抗菌抗ウイルス性が発現しやすくなる。皮膜3の最大厚みT1は、皮膜3の最小厚みT2の1.1倍以上であればより好ましく、1.5倍以上であれば更に好ましい。皮膜3の最大厚みT1が、皮膜3の最小厚みT2の4倍以下であればより好ましく、2倍以下であれば更に好ましい。
【0056】
なお、皮膜3の最大厚みT1は、皮膜3の、長さ50μmの断面の電子顕微鏡写真にあらわれる凸部の厚みのうち、最も値の大きい厚みである。皮膜3の最小厚みT2は、皮膜3の、長さ50μmの断面の電子顕微鏡写真にあらわれる凹部の厚みのうち、最も値の小さい厚みである。
【0057】
上述のとおり、基材2はスイッチ又はコンセントなどの、配線器具であることが好ましいが、基材2は配線器具には限られない。基材2は、スイッチ又はコンセントなどの配線器具のほか、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床又は造作材などの建築資材;自動車のインストルメントパネル、シート又は天井材等の内装材;冷蔵庫又はエアコン等の家電製品;衣類又はカーテン等の繊維製品;工業用設備;医療用設備;ドア、ドアハンドル、引き手、手摺り、内装カウンター、家具、キッチン、トイレ、風呂、照明器具、又はタッチパネルなどであってもよい。
【0058】
基材2の材質は、例えば金属、セラミックス、ガラス、繊維、不織布、フィルム、プラスチック、ゴム、紙、又は木材等であるが、これらに制限されない。基材2の形状は、例えば板状、球状、円柱状、円筒状、棒状、角柱状、若しくは中空の角柱状などの単純形状、又は複雑形状などであるが、これらに制限されない。基材2は多孔質体でもよい。
【0059】
基材2は、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂フィルムであってもよい。この場合、被覆部材1を別の部材に重ねることで、被覆部材1によって別の部材に抗菌抗ウイルス性を付与できる。また、基材2が樹脂フィルムである場合、工場などで被覆部材1を大量生産することが容易であり、その際、皮膜3の作製条件の管理が容易である。そのため、部材に抗菌抗ウイルス性を付与するにあたり、部材の上に直接皮膜3を作製する場合と比べて、皮膜3の特性を安定化させることができる。このため、皮膜3の信頼性が高まる。この場合、被覆部材1における基材2を別の部材の上に単に重ねてもよく、被覆部材1における基材2を別の部材に接着剤などで接着してもよい。
【0060】
別の部材の材質は、例えば金属、セラミックス、ガラス、繊維、不織布、フィルム、プラスチック、ゴム、紙、又は木材等であるが、これらに制限されない。部材の形状は、例えば板状、球状、円柱状、円筒状、棒状、角柱状、若しくは中空の角柱状などの単純形状、又は複雑形状などであるが、これらに制限されない。
【0061】
部材として、スイッチ又はコンセントなどの配線器具;天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床又は造作材などの建築資材;自動車のインストルメントパネル、シート又は天井材等の内装材;冷蔵庫又はエアコン等の家電製品;衣類又はカーテン等の繊維製品;工業用設備;医療用設備;ドア、ドアハンドル、引き手、手摺り、内装カウンター、家具、キッチン、トイレ、風呂、照明器具、又はタッチパネルなどが挙げられる。
【実施例0062】
以下、実施形態について具体的な実施例について説明する。
【0063】
1.実施例及び比較例
(1)実施例1
銀粒子(アズワン社製。品名銀ナノ粒子粉末N。平均一次粒径30nm、比重5.9)10質量部と、リン酸エステル系分散剤(ビックケミー・ジャパン社製。品名DISPERBYK-111)1質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(富士フイルム和光純薬社製)89質量部とを混合し、超音波分散装置(ヒールッシャー社製。型番UP200)を用いて冷却及び循環しながら出力200Wにて1時間処理することで、銀粒子の分散液を得た。分散液中の銀粒子の粒度分布を動的散乱法で測定し、その結果から平均粒径を算出した結果、120nmであった。
【0064】
この銀粒子の分散液9質量部と、紫外線硬化性樹脂(ポリマー型アクリレート。DIC社製。品名ユニディックV-6841。固形分割合60質量%)16質量部と、光重合開始剤(BASFジャパン社製。品名IRGACURE754)1質量部と、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)66質量部と、外観調整剤(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子。積水化成品工業社製。品名テクポリマーMBX-2H。平均粒径3μm、比重1.19)9質量部と、を混合して攪拌することで、加熱残分の割合が20質量%であるコーティング組成物を得た。なお、加熱残分は、日本工業規格JIS K5601-1-2(塗料成分試験方法-第1部:通則-第2節:加熱残分)に準拠して測定される。
【0065】
基材2であるポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製。品名A4360。厚み100μm)の上にコーティング組成物を、バーコーター#6を用いて塗工して塗膜を作製し、塗膜を120℃で1分間加熱することで乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて塗膜に紫外線を積算光量300mJ/cmの条件で照射することで、塗膜を硬化させた。これにより基材2を覆う皮膜を作製した。
【0066】
この皮膜の長さ50μmの断面を電子顕微鏡で撮影し、この画像に現れている10箇所の凸部の厚みと10箇所の凹部の厚みとを測定した結果の平均値を算出した。また、凸部の厚みの最大値を最大厚みとし、凹部の厚みの最小値を最小厚みとした。その結果を表1に示す。
【0067】
(2)実施例2
銀粒子の代わりに、酸化第一銅粒子(古川ケミカルズ株式会社製。品名FRC-N10。平均一次粒径50nm)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法及び条件で、銀粒子の分散液を得た。分散液中の銀粒子の粒度分布を動的散乱法で測定し、その結果から平均粒径を算出した結果、120nmであった。
【0068】
この銀粒子の分散液を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法及び条件で、基材を覆う皮膜を作製した。
【0069】
実施例1の場合と同様に、皮膜の厚みの平均値、最大厚み及び最小厚みを、表1に示す。
【0070】
(3)実施例3、実施例4
超音波分散装置による処理条件を変更することで分散液中の酸化第一銅粒子の平均粒径を表1に示すように調整したこと以外は、実施例2と同じ方法及び条件で、基材を覆う皮膜を作製した。超音波分散装置による処理条件については、実施例3では超音波処理を出力200Wにて15分処理し、実施例4では超音波処理を出力100Wにて5分処理した。
【0071】
実施例1の場合と同様に、皮膜の厚みの平均値、最大厚み及び最小厚みを、表1に示す。
【0072】
(4)実施例5
外観調整剤として、積水化成品工業社製の品名テクポリマーSSX101(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子。平均粒径1.5μm。比重1.19)を用いたこと以外は、実施例2と同じ方法及び条件で、基材を覆う皮膜を作製した。
【0073】
実施例1の場合と同様に、皮膜の厚みの平均値、最大厚み及び最小厚みを、表2に示す。
【0074】
(5)比較例1
コーティング組成物を塗工するためにバーコーター#3を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法及び条件で、基材を覆う皮膜を作製した。
【0075】
実施例1の場合と同様に、皮膜の厚みの平均値、最大厚み及び最小厚みを、表2に示す。
【0076】
(6)比較例2
銀粒子の分散液を調製する際、超音波分散装置を用いた処理の時間を30秒間に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法及び条件で、銀粒子の分散液を得た。分散液中の銀粒子の粒度分布を動的散乱法で測定し、その結果から平均粒径を算出した結果、1.5μmであった。
【0077】
実施例1の場合と同様に、皮膜の厚みの平均値、最大厚み及び最小厚みを、表2に示す。
【0078】
(7)比較例3
外観調整剤として、積水化成品工業社製の品名テクポリマーMBX-20(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子。平均粒径20μm。比重1.19)を用いたこと以外は、実施例2と同じ方法及び条件で、基材を覆う皮膜を作製した。
【0079】
実施例1の場合と同様に、皮膜の厚みの平均値、最大厚み及び最小厚みを、表2に示す。
【0080】
2.評価試験
(1)外観評価
皮膜の表面の光沢度を、ハンディ光沢計(堀場製作所社製。品名グロスチェッカ IG-331)を用いて、測定角60°の条件で測定した。光沢度が20以下である場合、皮膜の表面が十分につや消しされていると評価できる。
【0081】
(2)抗ウイルス活性評価
ISO 21702に従い、インフルエンザウイルスを対象とする皮膜の表面の抗ウイルス活性値を評価した。抗ウイルス活性値が2以上である場合に、十分に高い抗ウイルス活性が発現していると評価できる。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
[態様]
第一の態様に係る被覆部材(1)は、基材(2)と、基材(2)を被覆する皮膜(3)とを備える。皮膜(3)が、粒子状の抗菌抗ウイルス剤(A)と、抗菌抗ウイルス剤(A)よりも平均粒径の大きい粒子状の外観調整剤(B)とを含む。外観調整剤(B)の平均粒径が、抗菌抗ウイルス剤(A)の平均粒径の2.5倍以上100倍以下である。皮膜(3)の最大厚み(T1)が、皮膜(3)の最小厚み(T2)の1.1倍以上4倍以下である。
【0085】
この態様によると、被覆部材(1)に、つや消しされた外観を付与しながら抗菌抗ウイルス性も付与しうる。
【0086】
第二の態様では、第一の態様において、抗菌抗ウイルス剤(A)が、一価銅化合物を含む銅化合物を含有する。
【0087】
この態様によると、被覆部材(1)の抗菌抗ウイルス性をより高めうる。
【0088】
第三の態様では、第一又は第二の態様において、抗菌抗ウイルス剤(A)が、酸化第一銅を含む銅化合物を含有する。
【0089】
この態様によると、被覆部材(1)の抗菌抗ウイルス性をより高めうる。
【0090】
第四の態様では、第一から第三のいずれか一の態様において、基材(2)が、配線器具である。
【0091】
この態様によると、配線器具に、つや消しされた外観を付与しながら抗菌抗ウイルス性も付与しうる。
【0092】
第五の態様では、第一から第三のいずれか一の態様において、基材(2)がフィルムである。
【0093】
この態様によると、フィルムに、つや消しされた外観を付与しながら抗菌抗ウイルス性も付与でき、このフィルムを適宜の部材に重ねることでこの部材につや消しされた外観を付与しながら抗菌抗ウイルス性も付与しうる。
【符号の説明】
【0094】
1 被覆部材
2 基材
3 皮膜
4 マトリクス
5 粒子(抗菌抗ウイルス剤の粒子)
6 粒子(外観調整剤の粒子)
図1