(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159307
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】搬送ロボット制御システム及び搬送ロボット制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241031BHJP
【FI】
G05D1/02 W
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075212
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 紘多
(72)【発明者】
【氏名】増田 健太郎
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301FF08
5H301FF11
5H301GG07
5H301GG08
5H301KK02
5H301KK04
5H301KK18
(57)【要約】
【課題】被搬送物の走行の安定化を図る。
【解決手段】搬送ロボット制御システム100は、角度推定部197と、移動制御部193と、初動方向決定部198と、を備える。角度推定部197は、搬送ロボット1によって搬送される被搬送物が有するキャスタの舵角を推定する。移動制御部193は、搬送ロボット1の移動を制御する。初動方向決定部198は、搬送ロボット1による被搬送物の搬送時に角度推定部197が推定したキャスタの舵角に基づいて、搬送ロボット1の初動方向を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロボットによって搬送される被搬送物が有するキャスタの舵角を推定する角度推定部と、
前記搬送ロボットの移動を制御する移動制御部と、
前記搬送ロボットによる前記被搬送物の搬送時に前記角度推定部が推定した前記キャスタの舵角に基づいて、前記搬送ロボットの初動方向を決定する初動方向決定部と、を備える
搬送ロボット制御システム。
【請求項2】
前記搬送ロボットは、本体と、前記本体に設けられ、舵角を変更可能な少なくとも1つの操舵輪と、を有し、
前記移動制御部は、前記少なくとも1つの操舵輪の舵角を変更することにより、前記本体の前記搬送ロボットの進行方向に対する姿勢を一定に保ったまま、前記搬送ロボットを、前記搬送ロボットが移動する移動面上における全方向に移動させる
請求項1に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項3】
前記被搬送物は、基板に対して部品の実装を行う部品実装機に前記部品を供給する部品供給装置である
請求項1又は2に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項4】
前記移動制御部は、前記初動方向と、目標とする目標進行方向と、に基づいて、前記搬送ロボットの現在地点から前記搬送ロボットの移動方向が前記目標進行方向となる地点まで前記搬送ロボットを移動させる
請求項1又は2に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項5】
前記現在地点から前記地点までの経路は、曲線部分を含む
請求項4に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項6】
前記曲線部分は、円弧を含む
請求項5に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項7】
前記初動方向決定部は、前記目標進行方向が変更された場合に、再度前記初動方向を決定する
請求項4に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項8】
前記移動制御部は、前記目標進行方向が変更された場合に、前記目標進行方向の変更後に前記初動方向決定部が決定した前記初動方向と、変更後の前記目標進行方向と、に基づいて、前記搬送ロボットの移動方向が変更後の前記目標進行方向となる地点まで前記搬送ロボットを移動させる
請求項7に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項9】
前記角度推定部は、前記キャスタにおいて基準点との距離が最も近い最近傍点の位置に基づいて前記キャスタの舵角を推定する
請求項1又は2に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項10】
前記角度推定部は、前記被搬送物の種類に応じて設定される所定の前記キャスタの舵角を推定し、
前記初動方向決定部は、前記所定のキャスタの舵角に基づいて、前記初動方向を決定する
請求項1又は2に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項11】
前記被搬送物の種類と前記所定のキャスタとの対応情報を記憶する記憶部を更に備える
請求項10に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項12】
前記被搬送物は、1つ以上の前記キャスタを有し、
前記初動方向決定部は、前記1つ以上の前記キャスタのうち、前記角度推定部が舵角を推定可能である前記キャスタの舵角に基づいて、前記初動方向を決定する
請求項1又は2に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項13】
前記被搬送物は、複数の前記キャスタを有し、
前記角度推定部は、前記複数のキャスタの舵角を推定し、
前記初動方向決定部は、前記角度推定部で推定された前記複数のキャスタの舵角の平均値に基づいて、前記初動方向を決定する
請求項1又は2に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項14】
前記初動方向決定部は、前記角度推定部が前記キャスタの舵角を推定できなかった場合に、前記搬送ロボットの直前の移動方向を前記初動方向とする
請求項1又は2に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項15】
前記角度推定部が前記キャスタの舵角を推定できなかった場合に、上位システムから前記直前の移動方向を取得する取得部を更に備える
請求項14に記載の搬送ロボット制御システム。
【請求項16】
搬送ロボットによって搬送される被搬送物が有するキャスタの舵角を推定する角度推定ステップと、
前記搬送ロボットによる前記被搬送物の搬送時に前記角度推定ステップにおいて推定した前記キャスタの舵角に基づいて、前記搬送ロボットの初動方向を決定する初動方向決定ステップと、を含む
搬送ロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送ロボット制御システム及び搬送ロボット制御方法に関し、より詳細には、キャスタを有する被搬送物を搬送するための搬送ロボット制御システム及び搬送ロボット制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の自律走行装置は、車輪を回動可能に支持するキャスタであり、当該キャスタ全体を車輪の回動軸に対して垂直となる回動軸に沿って回動可能なキャスタを備えた被牽引車を牽引する自律走行装置である。自律走行装置は、自車位置を検出する自車位置検出部と、自律走行装置及び被牽引車が前進を行うように、自律走行装置の駆動車輪を駆動制御する前進制御部と、自律走行装置及び被牽引車が後退を行うように、自律走行装置の駆動車輪を駆動制御する後退制御部と、自律走行装置及び被牽引車が旋回を行うように、自律走行装置の駆動車輪を駆動制御する旋回制御部と、を備える。自律走行装置及び被牽引車の旋回位置への到達が、自車位置検出部で検出された際に、前進制御部及び旋回制御部は、自律走行装置及び被牽引車が前進しながら所定分旋回を行うように、自律走行装置の駆動車輪を駆動制御する。後退制御部は、自律走行装置及び被牽引車が後退位置まで旋回した際に、自律走行装置及び被牽引車が目標位置まで後退するように、自律走行装置の駆動車輪を駆動制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような自律走行装置(搬送ロボット)において、自律走行装置(搬送ロボット)の姿勢を一定に維持したまま自律走行装置(搬送ロボット)及び被牽引車(被搬送物)が移動方向を変更するようなときに、被牽引車(被搬送物)のキャスタの舵角が自律走行装置(搬送ロボット)の移動方向と異なっている場合、被牽引車(被搬送物)の走行が不安定となる可能性があった。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、被搬送物の走行の安定化を図ることができる搬送ロボット制御システム及び搬送ロボット制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る搬送ロボット制御システムは、角度推定部と、移動制御部と、初動方向決定部と、を備える。前記角度推定部は、搬送ロボットによって搬送される被搬送物が有するキャスタの舵角を推定する。前記移動制御部は、前記搬送ロボットの移動を制御する。前記初動方向決定部は、前記搬送ロボットによる前記被搬送物の搬送時に前記角度推定部が推定した前記キャスタの舵角に基づいて、前記搬送ロボットの初動方向を決定する。
【0007】
本開示の一態様に係る搬送ロボット制御方法は、角度推定ステップと、初動方向決定ステップと、を含む。前記角度推定ステップでは、搬送ロボットによって搬送される被搬送物が有するキャスタの舵角を推定する。前記初動方向決定ステップでは、前記搬送ロボットによる前記被搬送物の搬送時に前記角度推定ステップにおいて推定した前記キャスタの舵角に基づいて、前記搬送ロボットの初動方向を決定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、被搬送物の走行の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る搬送ロボット制御システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の搬送ロボット制御システムが用いられる部品実装システムの外観図である。
【
図3】
図3は、同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの、被搬送物を搬送している状態の下面図である。
【
図4】
図4は、同上の搬送ロボット制御システムの角度推定部の動作を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、同上の搬送ロボット制御システムの角度推定部の動作を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、同上の搬送ロボット制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの動作を説明するための平面図である。
【
図8】
図8は、第1動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの搬送開始エリアでの動作を説明するための平面図である。
【
図9】
図9は、第1動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの搬送開始エリアでの動作を説明するための平面図である。
【
図10】
図10は、第1動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの第1方向変更エリアでの動作を説明するための平面図である。
【
図11】
図11は、第1動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの第1方向変更エリアでの動作を説明するための平面図である。
【
図12】
図12は、第1動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの第2方向変更エリアでの動作を説明するための平面図である。
【
図13】
図13は、第1動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの第2方向変更エリアでの動作を説明するための平面図である。
【
図14】
図14は、第1動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの目標エリアでの動作を説明するための平面図である。
【
図15】
図15は、第2動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの、被搬送物を搬送している状態の下面図である。
【
図16】
図16は、第2動作例における同上の搬送ロボット制御システムが有する搬送ロボットの動作を説明するための平面図である。
【
図17】
図17は、変形例に係る搬送ロボット制御システムの初動方向決定部の動作を説明するための下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態に係る搬送ロボット制御システム100について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において参照する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(1)概要
まず、本実施形態の搬送ロボット制御システム100の概要について、
図1、
図4、
図5及び
図8を参照して説明する。
【0012】
搬送ロボット制御システム100は、
図1に示すように、角度推定部197と、移動制御部193と、初動方向決定部198と、を備える。
【0013】
角度推定部197は、
図4、
図5及び
図8に示すように、搬送ロボット1によって搬送される被搬送物2が有するキャスタC0の舵角θ0を推定する。
【0014】
移動制御部193は、搬送ロボット1の移動を制御する。
【0015】
初動方向決定部198は、搬送ロボット1による被搬送物2の搬送時に角度推定部197が推定したキャスタC0の舵角θ0に基づいて、搬送ロボット1の初動方向Dfを決定する。
【0016】
ここにおいて、「搬送ロボット1の初動方向Df」とは、角度推定部197によるキャスタC0の舵角θ0の推定が完了した後に、搬送ロボット1が移動を開始する方向である。
【0017】
上記の構成によれば、搬送ロボット1が移動方向を変更する場合に、キャスタC0の舵角θ0に基づいて決定された初動方向Dfに搬送ロボット1の移動を開始することによって、キャスタC0の舵角θ0が急激に変化することを抑制することができ、被搬送物2の走行の安定化を図ることができる。なお、「搬送ロボット1が移動方向を変更する」とは、走行中の搬送ロボット1が移動方向を変更することに加えて、停止中の搬送ロボット1が移動を開始することを含む。
【0018】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る搬送ロボット制御システム100について図面を参照して詳しく説明する。以下の説明では、
図7~
図14及び
図16において、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向と規定し、X軸方向の正の向きを右側、Y軸方向の正の向きを前側とする。これらの方向は、搬送ロボット1が被搬送物2を牽引して走行する状態で規定した方向であって、搬送ロボット1の使用時の方向をこれらの方向に限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0019】
(2.1)搬送ロボット制御システムの全体構成
搬送ロボット制御システム100は、
図1に示すように、被搬送物2を搬送する搬送ロボット1と、搬送ロボット1による被搬送物2の搬送作業を制御する上位システム3と、を有する。
【0020】
搬送ロボット1と上位システム3とは互いに通信可能に構成されている。なお本開示における「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワークNT1若しくは中継装置6等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。本実施形態では、上位システム3と搬送ロボット1とは双方向に通信可能であり、上位システム3から搬送ロボット1への情報の送信、及び搬送ロボット1から上位システム3への情報の送信の両方が可能である。なお、
図1では搬送ロボット1の数が1台であるが、搬送ロボット1の数は2台以上でもよい。つまり、上位システム3は、複数台の搬送ロボット1の各々による搬送作業を制御してもよい。また、搬送ロボット1は、複数種類の被搬送物2を搬送可能である。つまり、上位システム3は、複数台の搬送ロボット1による、複数種類の被搬送物2の搬送作業を制御してもよい。
【0021】
本実施形態の搬送ロボット制御システム100は、
図2に示すように、部品E1を基板E2に実装する部品実装機4を含む部品実装システム200に用いられる。
【0022】
部品実装機4への部品E1の供給は、部品供給装置5によって実施される。ここで、部品供給装置5は、搬送ロボット制御システム100が有する被搬送物2であり、搬送ロボット制御システム100が備える搬送ロボット1によって部品実装機4まで搬送される。換言すると、被搬送物2は、基板E2に対して部品E1の実装を行う部品実装機4に部品E1を供給する部品供給装置5である。
【0023】
本実施形態では、搬送ロボット1は、例えば上位システム3からの指示を受けて、部品実装システム200が設置される所定エリア内のある場所に置かれている被搬送物2を、部品実装機4に接続される位置まで移動させる。
【0024】
(2.2)被搬送物
「(2.1)搬送ロボット制御システムの全体構成」にて説明したように、本実施形態では、被搬送物2は、基板E2に対して部品E1の実装を行う部品実装機4に部品E1を供給する部品供給装置5である。ここで、部品供給装置5は、例えば、部品E1が取り付けられたテープが巻かれたリールを供給するテープ供給ユニット、部品が載せられたトレイを供給するためのトレイ供給ユニット、複数種類の部品を供給するための一括交換台車、テープ屑回収箱、マスクマガジン台車、半田ポッド交換台車及び仕掛前後の材料を搭載する台車の少なくとも1つを含む。
【0025】
被搬送物2は、
図3に示すように、本体20と、複数(例えば4つ)のキャスタC0と、を有する。
【0026】
本体20は、例えば直方体状に形成される。ここで、本体20の短手方向を第1方向DR1、長手方向を第2方向DR2とする。
【0027】
本体20の前面201には、搬送ロボット1の把持部13(後述する)によって把持される被把持部21が設けられる。
【0028】
4つのキャスタC0(C1A~C4A)は、本体20の下面に設けられる。具体的には、キャスタC1A、C2Aは、下面の前面201側において、第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、キャスタC3A、C4Aは、下面の後面202側において、第1方向DR1に沿って並んで設けられている。これにより、被搬送物2は移動面G1(
図2参照)の上を移動することができる。
【0029】
図3、
図8~
図14に示すように、4つのキャスタC0(C1A~C4A)は、移動面G1に垂直な方向(上下方向)に沿った操舵軸Ax0(Ax1~Ax4)を中心に、各々回転可能に構成されている。換言すると、4つのキャスタC0は、搬送ロボット1の搬送された状態において、搬送ロボット1の移動方向に追従して各々の舵角θ0(θ1~θ4)が変化するように構成されている。なお、本開示において「キャスタC0の舵角θ0」とは、キャスタC0の回転軸(車軸)Aw0の第1方向DR1に対する傾きである。なお、以下の説明において、キャスタC1A~C4Aの車軸Aw0をそれぞれ車軸Aw1~Aw4と表記することがある。
【0030】
また、キャスタC0の操舵軸Ax0は、上下方向から見た場合に、キャスタC0の車軸Aw0から離間した位置に設けられる。ここで、被搬送物2が搬送ロボット1によって搬送された状態において、車軸Aw0が第1方向DR1と平行であり、かつ、車軸Aw0が操舵軸Ax0に対して本体20の後面202側にあるとき、舵角θ0が0°(360°)であるとする。また、キャスタC0の舵角θ0は、(
図8~
図14における)反時計回りに増加するものとする。
【0031】
(2.3)搬送ロボット
搬送ロボット1は、
図2及び
図3に示すように、被搬送物2を搬送するための車両型ロボットである。以下の説明では、搬送ロボット1が、被搬送物2を牽引することによって搬送する牽引型の車両型ロボットであるとして説明する。
【0032】
本実施形態では、上位システム3が、ネットワークNT1及び中継装置6を介して搬送ロボット1と通信し、搬送ロボット1の移動を間接的に制御する。
【0033】
搬送ロボット1は、
図8~
図14に示すように、例えば床面等からなる平坦な移動面G1を自律走行する。搬送ロボット1は、被搬送物2を把持した状態で移動面G1上を走行可能である。これにより、搬送ロボット1は、例えば、ある場所に置かれている被搬送物2を、搬送ロボット1で牽引したり、搬送ロボット1で押し動かしたりすることで、別の場所(目標地点Pg)に搬送することが可能である。
【0034】
搬送ロボット1は、例えばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池等の蓄電池を備え、蓄電池に蓄積された電気エネルギを利用して動作する。
【0035】
搬送ロボット1は、
図3に示すように、本体10と、本体10に設けられ、舵角を変更可能な少なくとも1つ(例えば2つ)の操舵輪11と、を有する。また、搬送ロボット1は、複数(本実施形態では例えば2つ)の補助輪12と、を更に有する。
【0036】
本体10は、例えば直方体状に形成される。ここで、搬送ロボット1が被搬送物2を把持した状態において、本体10の長手方向が、被搬送物2の本体20の短手方向である第1方向DR1に沿い、本体10の短手方向が、本体20の長手方向である第2方向DR2に沿った状態となる。つまり、搬送ロボット1が被搬送物2を把持した状態において、本体10の長手方向が第1方向DR1であり、本体10の短手方向が第2方向DR2である。
【0037】
2つの操舵輪11と2つの補助輪12とは本体10の下面に配置されている。本実施形態では、本体10に対して、2つの操舵輪11が第1方向DR1に沿って並ぶように配置されている。また、本体10には、第2方向DR2に沿って、2つの補助輪12が並ぶように配置されている。
【0038】
本実施形態では、上述したように、操舵輪11は、舵角を変更可能である。ここで、「操舵輪11の舵角」とは、操舵輪11の回転軸(車軸)の第1方向DR1に対する傾きである。すなわち、操舵輪11は、操舵輪11を車軸を中心に回転させる駆動機構と、操舵輪11の車軸の第1方向DR1に対する傾きを変更する操向機構とが一体化されている。
【0039】
2つの補助輪12は、搬送ロボット1の移動方向に追従して向きが変わる従動輪である。
【0040】
搬送ロボット1は、把持部13を更に有する。把持部13は、本体10の後面101に設けられる。把持部13は、被搬送物2が備える被把持部21と対応して設けられる。
【0041】
搬送ロボット1は、把持部13によって被搬送物2の被把持部21を把持することによって、被搬送物2を保持する。搬送ロボット1は、搬送ロボット1が保持している被搬送物2と共に移動する。ここで、把持部13による被把持部21の把持は、機械的な機構によって実現してもよいし、磁力による吸引力を用いた機構等によって実現してもよい。
【0042】
搬送ロボット1が被搬送物2を搬送する場合、搬送ロボット1が先頭になって被搬送物2を牽引する走行形態と、被搬送物2を先頭にして搬送ロボット1が被搬送物2を押していく走行形態と、搬送ロボット1が第1方向DR1にスライド移動して被搬送物2を搬送する走行形態とがある。一般的に、被搬送物2を後側から押す走行形態に比べて、被搬送物2を牽引する走行形態の方が、走行状態が安定するので、搬送ロボット1は通常は被搬送物2を牽引して移動する。
【0043】
搬送ロボット1は、
図1に示すように、把持駆動部14と、移動部15と、検知部16と、通信部17と、記憶部18と、制御部19と、を更に備える。
【0044】
把持駆動部14は、把持部13を駆動して、搬送ロボット1に被搬送物2を保持させる。把持駆動部14は、本体10内部に収容されている。
【0045】
移動部15は、操舵輪11の回転と舵角とを制御する。移動部15は、本体10に内蔵されている。移動部15は、例えば、電動機(モータ)を含み、ギアボックス及びベルト等を介して、電動機で発生する駆動力を間接的に操舵輪11に与える。また、移動部15は、インホイールモータのように、操舵輪11に対して直接的に駆動力を与える構成であってもよい。
【0046】
これにより、搬送ロボット1は移動面G1上を任意の方向に移動することができる。また、搬送ロボット1は、本体10を一定の姿勢に保ったまま、移動面G1上を任意の方向に移動することができる。
【0047】
検知部16は、
図3に示すように、搬送ロボット1の本体10の周囲の検知領域A1における物体の有無を検知する。検知領域A1は、検知部16を中心とした扇形の領域に設定される。なお、検知領域A1は扇形の領域に限定されず、任意に設定が可能である。
【0048】
検知部16は測域センサ(測距センサ)であり、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)によって実現される。なお、検知部16はLiDARに限定されない。この種のセンサとしては、音波、光、及び電波のうちの少なくとも一つを利用して物体との距離を測定するセンサでもよい。
【0049】
検知部16は、
図3に示すように、本体10の下面において、第1方向DR1に沿った中心位置に設けられる。なお、搬送ロボット1は、検知部16以外に、例えば検知部16とは異なる検知領域における物体の有無を検知する測域センサを更に有してもよい。
【0050】
通信部17は、上位システム3と通信可能に構成されている。本実施形態では、通信部17は、搬送ロボット1を運用するエリア内に設置された1以上の中継装置6のいずれかと、電波を媒体とする無線通信によって通信を行う。そのため、通信部17と上位システム3とは、少なくともネットワークNT1及び中継装置6を介して、間接的に通信を行うことになる。つまり、各中継装置6は、通信部17と上位システム3との間の通信を中継する機器(アクセスポイント)である。中継装置6は、ネットワークNT1を介して、上位システム3と通信する。本実施形態では一例として、中継装置6と通信部17との間の通信には、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、無線通信を採用する。また、ネットワークNT1は、インターネットに限らず、例えば、搬送ロボット1を運用するエリア内又はこのエリアの運営会社内のローカルな通信ネットワークが適用されてもよい。
【0051】
記憶部18は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory)などの書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶部18には、搬送ロボット1が移動する移動面G1の電子的なマップ情報等が予め記憶されている。移動面G1の電子的なマップ情報には、移動面G1に配置される物体の位置情報等が含まれている。
【0052】
制御部19は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御部19の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0053】
制御部19は、
図1に示すように、把持制御部191、位置検出部192、移動制御部193、移動エリア設定部194、進行方向設定部195、判定部196、角度推定部197、初動方向決定部198、取得部199、要求部190等の機能を有する。なお、これらは、制御部19によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0054】
把持制御部191は、把持駆動部14を制御して、把持部13に被把持部21を把持させる。
【0055】
位置検出部192は、本体10の現在位置(現在地点)を検出する。位置検出部192は、一例として、搬送ロボット1が備える検知部16による周囲の物体の検出情報と、施設内の移動面G1の電子的なマップ情報とに基づいて、移動面G1における本体10の現在位置を推定する。なお、位置検出部192は、電波ビーコンを用いたLPS(Local Positioning System)を利用して、移動面G1における現在位置を推定してもよい。すなわち、位置検出部192は、施設内に設置された複数の送信機からそれぞれ送信されるビーコン信号を、搬送ロボット1に設けられた受信機で受信したときの電波強度と、各送信機の設置位置とに基づいて現在位置を推定してもよい。また、位置検出部192は、例えばGPS(Global Positioning System)等の全球衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用して、本体10の現在位置を推定するものでもよい。位置検出部192により検出される本体10の位置座標は、移動面G1に設定された二次元直交座標系での位置座標でもよいし、三次元直交座標系での位置座標でもよい。
【0056】
移動制御部193は、搬送ロボット1の移動を制御する。ここで、移動制御部193は、2つの操舵輪11の舵角を変更することにより、本体10の搬送ロボット1の進行方向に対する姿勢を一定に保ったまま、搬送ロボット1を、搬送ロボット1が移動する移動面G1上における全方向に移動させることが可能である。
【0057】
移動制御部193は上位システム3から通信部17が受信した制御指令に基づいて移動部15を制御して、本体10を移動させる。
【0058】
移動エリア設定部194は、位置検出部192が検出した本体10の現在地点の情報と、上位システム3から受信した目標地点Pgの情報とに基づいて、現在地点から目標地点Pgまでの本体10の移動エリアAR10(
図7参照)を設定する。なお移動エリアAR10は、移動面G1における領域であり、現在地点及び目標地点Pgを含む。本体10は、移動エリアAR10内を移動して、現在地点から目標地点Pgに移動する。なお、本体10の位置は、例えば本体10の第1方向DR1及び第2方向DR2における中心点の位置で定義される。
【0059】
進行方向設定部195は、移動エリアAR10内の所定の単位エリアAR0における本体10の目標進行方向Dtを設定する。進行方向設定部195の機能及び目標進行方向Dtについては、「(2.5)動作例」において詳細に説明する。
【0060】
判定部196は、検知部16が搬送ロボット1によって搬送される被搬送物2が有するキャスタC0の舵角θ0を検知可能か否かを判定する。
【0061】
角度推定部197は、判定部196が検知部16による舵角θ0の検知が可能と判定した場合に、舵角θ0を推定する。以下に、一例として、角度推定部197によるキャスタC1Aの舵角θ0(θ1)の推定方法について、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、キャスタC2A~C4Aの各々の舵角θ2~θ4も舵角θ1と同様の方法で推定可能である。
【0062】
図4及び
図5に示すように、キャスタC1Aは操舵軸Ax1を中心に回転領域As内において回転可能である。
【0063】
図4に示すように、検知領域A1に含まれ、検知部16の中心点(基準点Ps)と、操舵軸Ax1との距離を半径とする扇状の領域である扇状領域Afと、回転領域Asとが重なる共通領域Ac内にキャスタC1Aの後端部C11が位置している場合について説明する。なお、ここでいう「後端部C11」とは、キャスタC1Aを下から見た場合に、キャスタC1Aの長手方向における操舵軸Ax1と反対側の端部である。
【0064】
この場合、角度推定部197は、キャスタC1Aにおいて基準点Psとの距離が最も近い最近傍点Pcの位置に基づいてキャスタC1Aの舵角θ1を推定する。より詳細には、共通領域Ac内にキャスタC1Aの後端部C11が位置している場合、最近傍点Pcは後端部C11上の点となる。このため、角度推定部197は、最近傍点Pcの位置と、例えば予め取得された操舵軸Ax1の位置とに基づいて、操舵軸Ax1に対するキャスタC1Aの後端部C11が存在する方向が推定できるため、舵角θ1を推定することができる。つまり、最近傍点Pcと操舵軸Ax1とを結ぶ直線と直交する直線の第1方向DR1に対する傾きを舵角θ1と推定する。これにより、検知部16が検知したキャスタC2Aの形状全体から舵角θ1を推定する場合と比較して、角度推定部197の舵角θ2の推定処理を簡易化できる。
【0065】
また、
図5に示すように、共通領域Ac外に後端部C11が位置している場合、最近傍点Pcの位置から舵角θ1を推定することができないため、角度推定部197は、検知部16が検知したキャスタC1Aの形状全体から舵角θ1を推定する。
【0066】
初動方向決定部198は、搬送ロボット1による被搬送物2の搬送時に角度推定部197が推定したキャスタC0の舵角θ0に基づいて、搬送ロボット1の初動方向Dfを決定する。なお、初動方向決定部198は、角度推定部197がキャスタC0の舵角θ0を推定できなかった場合には、搬送ロボット1の直前の移動方向を初動方向Dfとする。ここで、「搬送ロボット1の直前の移動方向」とは、角度推定部197がキャスタC0の舵角θ0の推定を開始する直前に、搬送ロボット1が移動していた方向である。初動方向決定部198の機能及び初動方向Dfについては、「(2.5)動作例」において詳細に説明する。
【0067】
取得部199は、角度推定部197がキャスタC0の舵角θ0を推定できなかった場合に、上位システム3から搬送ロボット1の直前の移動方向を取得する。具体的には、取得部199は角度推定部197がキャスタC0の舵角θ0を推定できなかった場合に、搬送ロボット1の移動履歴を記憶する上位システム3の記憶部35から搬送ロボット1の直前の移動方向を取得する。
【0068】
要求部190は、上位システム3が複数種類の被搬送物2の搬送作業を制御している場合に、搬送ロボット1が現在搬送している被搬送物2の種類を上位システム3に問い合わせる。具体的には、要求部190は、被搬送物2の種類を上位システム3に回答させるための要求信号を上位システム3に送信する。
【0069】
また、搬送ロボット1は、上記以外の構成、例えば、蓄電池の充電回路等を適宜備えている。
【0070】
(2.4)上位システム
上位システム3は、搬送ロボット1を制御するためのシステムであって、例えばコンピュータシステムを含むサーバ装置で実現されている。上位システム3は、搬送ロボット1に対して指示を出すことで、搬送ロボット1を間接的に制御する。具体的には、上位システム3が搬送ロボット1に対して被搬送物2の搬送指示を出すと、搬送ロボット1は、搬送指示を受けて、被搬送物2を目標地点Pgまで移動させる搬送作業を自律的に行う。なお、上位システム3は搬送ロボット1が搬送作業を行う施設の内部にあってもよいし、施設の外部にあってもよい。
【0071】
上位システム3は、
図1に示すように、制御部31と、通信部32と、操作受付部33と、表示部34と、記憶部35と、を備える。
【0072】
通信部32は、ネットワークNT1及び中継装置6を介して、搬送ロボット1と通信する。通信部32と中継装置6との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。
【0073】
操作受付部33は、上位システム3を利用するユーザの操作を受け付ける機能を有している。本実施形態では、操作受付部33は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、又はこれらの組み合わせにて実現される。また、操作受付部33は、ユーザが発する音声で操作を受け付ける音声認識部にて実現されてもよい。なお、操作受付部33は、ユーザが使用するタブレット端末等の端末に入力した情報を、通信部32を介して受け付けてもよい。
【0074】
表示部34は、上位システム3を利用するユーザに対して情報を提示するために用いられる。表示部34は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置にて実現される。なお、上位システム3がタッチパネルディスプレイを有している場合、タッチパネルディスプレイが操作受付部33及び表示部34として機能してもよい。
【0075】
記憶部35は、例えば、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶部35は、例えば、上位システム3のユーザ等によって入力された、被搬送物2の搬送計画等を記憶する。また、記憶部35は、搬送ロボット1の移動履歴を記憶する。
【0076】
ここで、被搬送物2の搬送計画は、被搬送物2の搬送先、搬送する日時等を含む。また、上位システム3が複数種類の被搬送物2の搬送作業を制御する場合、記憶部35は、複数種類の被搬送物2の各々の搬送計画を記憶している。なお、記憶部35は、搬送計画に基づいて被搬送物2の搬送を指示した搬送ロボット1の情報(例えば、個々の搬送ロボット1に割り当てた移動体ID)を記憶してもよい。
【0077】
制御部31は、例えば、メモリ及びプロセッサを含むコンピュータシステムを主構成とする。すなわち、コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、プロセッサが実行することにより、制御部31の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0078】
制御部31は、搬送指示部311、回答部312等の機能を有する。なお、これらは、制御部31によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0079】
搬送指示部311は、通信部32を介して搬送ロボット1に被搬送物2を搬送するための制御指示(搬送指示)を与える。搬送指示部311は、例えば移動面G1上のある場所に配置されている被搬送物2を目標地点Pgに搬送する搬送指示を搬送ロボット1に与えることで、搬送ロボット1に被搬送物2を目標地点Pgまで搬送させる。例えば、搬送指示部311は、被搬送物2が存在する位置の情報、目標地点Pgの情報等を含む搬送指示を搬送ロボット1に送信することによって、搬送ロボット1に、被搬送物2を把持する把持作業、及び把持した被搬送物2を目標地点Pgまで搬送する搬送作業を実行させる。
【0080】
回答部312は、搬送ロボット1の要求部190から被搬送物2の種類を回答させるための要求信号を受信すると、被搬送物2の種類に固有の情報(被搬送物ID)を搬送ロボット1に送信する。
【0081】
(2.5)動作例
以下に、搬送ロボット制御システム100の動作例について、
図6~
図16を参照して説明する。なお、
図6に示すフローチャートは、搬送ロボット制御システム100の動作の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0082】
また、
図8~
図14においては、実際には本体20によって隠されているキャスタC1A~C4Aを可視化している。
【0083】
以下の説明においては、
図7に示すように、移動面G1上には左右方向に並ぶ4台の部品実装機4(41~44)が設置されており、搬送ロボット制御システム100は、搬送ロボット1を制御して、被搬送物2(部品供給装置5)を部品実装機42に部品E1を供給可能な位置まで搬送させることとする。
【0084】
また、搬送ロボット制御システム100は複数種類の被搬送物2の搬送を制御しており、複数種類の被搬送物2各々は、例えばキャスタC0の個数、配置等が異なるとする。
【0085】
(2.5.1)第1動作例
以下に、搬送ロボット1が、
図3に示すように、搬送ロボット制御システム100の搬送対象である複数種類の被搬送物2のうちの一の種類の被搬送物2である被搬送物2Aを搬送する場合の搬送ロボット制御システム100の動作例について説明する。
【0086】
被搬送物2Aは、本体10と4つのキャスタC0(キャスタC1A~C4A)とを有する。キャスタC1A、C2Aは、第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、キャスタC3A、C4Aは、第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、キャスタC1A、C3Aは、第2方向DR2に沿って並んで設けられている。また、キャスタC2A、C4Aは、第2方向DR2に沿って並んで設けられている。つまり、キャスタC1AとキャスタC2Aとの間隔と、キャスタC3AとキャスタC4Aとの間隔が等しい。
【0087】
まず、上位システム3の搬送指示部311が、例えば待機場所等で待機をしている搬送ロボット1に対して、被搬送物2を目標地点Pgまで搬送する搬送指示を与える。このとき、搬送指示部311から、搬送ロボット1に対して、搬送対象の被搬送物2の位置の情報、搬送対象の被搬送物2の搬送先(目標地点Pg)の情報が送信される。通信部17が搬送指示部311から搬送指示を受信すると、移動制御部193は、本体10を、被搬送物2を把持可能な地点(把持地点)まで移動させる。
【0088】
本体10が把持地点に到着すると、把持制御部191は、把持駆動部14を制御して、把持部13に被把持部21を把持させる(ステップST1)。
【0089】
把持地点において、把持部13が被把持部21を把持すると、移動制御部193は、本体10を所定の搬送開始地点P0まで搬送する。
【0090】
搬送開始地点P0において、移動エリア設定部194は、位置検出部192が検出した本体10の現在地点(搬送開始地点P0)の情報と、上位システム3から受信した目標地点Pgの情報とに基づいて、搬送開始地点P0から目標地点Pgまでの本体10の移動エリアAR10を設定する(ステップST2)。具体的には、移動エリア設定部194は、移動面G1を仮想的に複数の正方形状の単位エリアAR0に分割する。移動エリアAR10は、
図7に示すように、搬送開始エリアARs、接続エリアAR1~AR4、第1方向変更エリアARc1、第2方向変更エリアARc2、目標エリアARgを含む。搬送開始エリアARsは搬送開始地点P0を含む単位エリアAR0である。第1方向変更エリアARc1、第2方向変更エリアARc2は、それぞれ、本体10の移動方向の変更が必要となる単位エリアAR0である。また、接続エリアAR1、AR2は、搬送開始エリアARsと第1方向変更エリアARc1とを接続する単位エリアAR0である。また、接続エリアAR3、AR4は、第1方向変更エリアARc1と第2方向変更エリアARc2とを接続する単位エリアAR0である。目標エリアARgは、目標地点Pgを含む単位エリアAR0である。ここで、搬送開始エリアARsにおいて、被搬送物2A及び被搬送物2Aを把持している搬送ロボット1は、第1方向DR1が移動面G1における左右方向と一致しており、第2方向DR2が移動面G1における前後方向と一致しているとする。
【0091】
また、例えば本体10が搬送開始地点P0に到達すると、要求部190は、上位システム3に被搬送物2の種類を回答させるための要求信号を送信する。このとき、要求信号には、例えば、要求信号を送信した搬送ロボット1に固有の情報(移動体ID)が含まれる。
【0092】
上位システム3の回答部312は、通信部32を介して、要求部190からの要求信号を受信すると、要求信号に含まれる移動体IDと、記憶部35に記憶されている被搬送物2の搬送計画とに基づいて、搬送ロボット1が搬送する被搬送物2の種類を特定する。第1動作例においては、回答部312は、搬送ロボット1が搬送する被搬送物2の種類を被搬送物2Aと特定する。
【0093】
回答部312は、特定した被搬送物2の種類(被搬送物2A)を含む特定情報を搬送ロボット1に送信する。
【0094】
被搬送物2の種類(被搬送物2A)を含む特定情報を上位システム3から受信すると、進行方向設定部195は、搬送開始エリアARsにおける本体10の目標進行方向Dt(第1目標進行方向Dt1)を設定する(ステップST3)。具体的には、進行方向設定部195は、第1目標進行方向Dt1を、搬送開始エリアARsから第1方向変更エリアARc1に向かう方向(前方)に設定する。
【0095】
次に、判定部196は、検知部16が被搬送物2の種類に応じて設定される所定のキャスタC0の舵角θ0を検知可能か否かを判定する(ステップST4)。ここで、第1動作例においては、被搬送物2の種類に応じて設定される所定のキャスタC0は、被搬送物2Aが有するキャスタC1A~C4Aである。被搬送物2の種類と所定のキャスタC0との対応情報は、例えば、搬送ロボット1の記憶部18が記憶している。なお、所定のキャスタC0はキャスタC1A~C4Aのうち一部のキャスタC0であってもよい。
【0096】
ここで、本体10が搬送開始地点P0に位置している状態において、
図3に示すように、検知部16の検知領域A1はキャスタC1A、C2Aによって各々遮蔽される遮蔽領域Ah1A、Ah2Aが含まれる。しかし、本体10が搬送開始地点P0に位置している状態においては、キャスタC3A、C4Aは検知領域A1内の遮蔽領域Ah1A、Ah2A外の領域に位置している。したがって、検知部16はキャスタC1A~C4Aを検知可能であるため、判定部196は所定のキャスタC0(キャスタC1A~C4A)を検知可能と判定する(ステップST4:Yes)。つまり、判定部196は角度推定部197が所定のキャスタC0(キャスタC1A~C4A)の舵角θ0(θ1~θ4)を推定可能と判定する。
【0097】
判定部196がキャスタC1A~C4Aを検知可能と判定すると、搬送ロボット1の角度推定部197は、被搬送物2の種類に応じて設定される所定のキャスタC0の舵角θ0(θ1~θ4)を推定する(ステップST5)。
【0098】
初動方向決定部198は、舵角θ1~θ4に基づいて、搬送ロボット1(本体10)の初動方向Dfを決定する(ステップST6)。具体的には、初動方向決定部198は、角度推定部197で推定された舵角θ1~θ4の平均値に基づいて、本体10の初動方向Dfを決定する。ここで、第1動作例においては、角度推定部197は、搬送開始エリアARsにおいて、舵角θ1~舵角θ4を、舵角θ1=-45°、舵角θ2=-60°、舵角θ3=-45°、舵角θ4=-60°と推定したとする。このとき、舵角θ1~θ4の平均値(平均舵角θav)は-52.5°となる。初動方向決定部198は、搬送開始エリアARsにおける本体10の初動方向Df(第1初動方向Df1)を前後方向(
図8におけるY軸方向)から平均舵角θavだけ傾いた方向に決定する。より詳細には、初動方向決定部198は、搬送開始エリアARsにおける本体10の第1初動方向Df1を前後方向に対して右側に52.5°だけ傾いた方向に決定する。
【0099】
移動制御部193は、第1初動方向Df1と、目標とする第1目標進行方向Dt1と、に基づいて、搬送ロボット1の本体10の現在地点(搬送開始地点P0)から本体10の移動方向が第1目標進行方向Dt1となる目標方向地点である第1地点P1まで本体10を移動させる(ステップST7)。以下に、移動制御部193による本体10の搬送開始地点P0から第1地点P1までの移動動作について詳細に説明する。
【0100】
移動制御部193は、進行方向設定部195が第1目標進行方向Dt1を前方に設定すると、
図7~
図9に示すように、本体10の姿勢を一定に保ったまま、曲線部分Cv1を含む経路(第1経路R1)に沿って、本体10を搬送開始地点P0から移動させる。換言すると、搬送開始地点P0から第1地点P1までの第1経路R1は、曲線部分Cv1を含む。より詳細には、曲線部分Cv1は円弧Ca1を含む。円弧Ca1は、例えば、第1初動方向Df1を接線とする円弧である。
【0101】
ここで、被搬物2の本体20は本体10に追随して移動するため、舵角θ1~θ4は、本体10が第1経路R1に沿って移動するにしたがって、操舵軸Ax1~Ax4を中心に各々反時計回りに回転する。そして、
図9に示すように、第1地点P1おいて、本体10の移動方向が第1目標進行方向Dt1である前方となったとき、舵角θ1~θ4はそれぞれ略0°となる。なお、移動制御部193は、舵角θ1~θ4の単位時間当たりの変化量(回転量)が一定になるように本体10を第1経路R1に沿って移動させてもよい。
【0102】
これにより、舵角θ1~θ4を急激に変化させることなく本体10及び被搬送物2の本体20の移動方向を第1初動方向Df1から第1目標進行方向Dt1へ徐々に変化させることができ、被搬送物2Aの走行を安定化させることができる。
【0103】
本体10の移動方向が第1目標進行方向Dt1となると、
図7に示すように、移動制御部193は、本体10を第1方向変更エリアARc1内の第2地点P2まで直線経路Rs1に沿って前方に移動させる。
【0104】
本体10が第1方向変更エリアARc1の第2地点P2まで移動すると、進行方向設定部195は、目標進行方向Dtを、第1方向変更エリアARc1から第2方向変更エリアARc2に向かう方向(左方)である第2目標進行方向Dt2に変更する(ステップST8:Yes)。
【0105】
初動方向決定部198は、目標進行方向Dtが変更された場合に、再度初動方向Dfを決定する。なお第1動作例においては、第1方向変更エリアARc1、第2方向変更エリアARc2において、判定部196はキャスタC1A~C4Aを検知可能と判定することとする(ステップST4:Yes)。
【0106】
初動方向決定部198は、本体10が第2地点P2にある状態における舵角θ1~θ4に基づいて、本体10の初動方向Dfを再度決定する(ステップST5~ST6)。ここで、角度推定部197は、第1方向変更エリアARc1において、舵角θ1~舵角θ4を、すべて0°と推定したとする。このとき、舵角θ1~θ4の平均値(平均舵角θav)は0°となる。初動方向決定部198は、第1方向変更エリアARc1における本体10の初動方向Df(第2初動方向Df2)を前後方向に対して傾いていない方向である前方に決定する。
【0107】
移動制御部193は、目標進行方向Dtが変更された場合に、目標進行方向Dtの変更後に初動方向決定部198が決定した初動方向Df(第2初動方向Df2)と、変更後の目標進行方向Dt(第2目標進行方向Dt2)とに基づいて、搬送ロボット1の移動方向が変更後の目標進行方向Dtとなる目標方向地点(第3地点P3)まで搬送ロボット1を移動させる(ステップST7)。以下に、移動制御部193による本体10の第2地点P2から第3地点P3までの移動動作について詳細に説明する。
【0108】
移動制御部193は、進行方向設定部195が目標進行方向Dtを第2目標進行方向Dt2(左方)に変更すると、
図7、
図10及び
図11に示すように、本体10の姿勢を一定に保ったまま、第2初動方向Df2を接線とする円弧Ca2を含む第2経路R2に沿って、本体10を第2地点P2から移動させる。
【0109】
ここで、舵角θ1~θ4は、本体10が第2経路R2に沿って移動するにしたがって、操舵軸Ax1~Ax4を中心に各々反時計回りに回転する。そして、
図11に示すように、第3地点P3において、本体10の移動方向が第2目標進行方向Dt2である左方となったとき、舵角θ1~θ4はそれぞれ略90°となる。
【0110】
本体10の移動方向が第2目標進行方向Dt2となると、
図7に示すように、移動制御部193は、本体10を第2方向変更エリアARc2内の第4地点P4まで直線経路Rs2に沿って左方に移動させる。
【0111】
本体10が第2方向変更エリアARc2の第4地点P4まで移動すると、進行方向設定部195は、目標進行方向Dtを、第2方向変更エリアARc2から目標エリアARgに向かう方向(下方)である第3目標進行方向Dt3に変更する(ステップST8:Yes)。
【0112】
初動方向決定部198は、目標進行方向Dtが変更された場合に、再度初動方向Dfを決定する(ステップST4:Yes~ST6)。具体的には、初動方向決定部198は、本体10が第4地点P4にある状態における舵角θ1~θ4に基づいて、本体10の初動方向Dfを再度決定する。ここで、角度推定部197は、第2方向変更エリアARc2において、舵角θ1~舵角θ4を、すべて90°と推定したとする。このとき、舵角θ1~θ4の平均値(平均舵角θav)は90°となる。初動方向決定部198は、第2方向変更エリアARc2における本体10の初動方向Df(第3初動方向Df3)を前後方向に対して左側に90°傾いた方向(左方)に決定する。
【0113】
移動制御部193は、目標進行方向Dtが変更された場合に、目標進行方向Dtの変更後に初動方向決定部198が決定した初動方向Df(第3初動方向Df3)と、変更後の目標進行方向Dt(第3目標進行方向Dt3)と、に基づいて、搬送ロボット1の移動方向が変更後の第3目標進行方向Dt3(下方)となる目標方向地点(第5地点P5)まで搬送ロボット1を移動させる(ステップST7)。以下に、移動制御部193による本体10の第4地点P4から第5地点P5までの移動動作について詳細に説明する。
【0114】
移動制御部193は、進行方向設定部195が目標進行方向Dtを第3目標進行方向Dt3(下方)に変更すると、
図7、
図12及び
図13に示すように、本体10の姿勢を一定に保ったまま、第3初動方向Df3を接線とする円弧Ca3を含む第3経路R3に沿って、本体10を第4地点P4から移動させる。
【0115】
ここで、舵角θ1~θ4は、本体10が第3経路R3に沿って移動するにしたがって、操舵軸Ax1~Ax4を中心に各々反時計回りに回転する。そして、
図13に示すように、第5地点P5おいて、本体10の移動方向が第3目標進行方向Dt3である下方となったとき、舵角θ1~θ4はそれぞれ略180°となる。
【0116】
本体10の移動方向が第3目標進行方向Dt3となると、
図7及び
図14に示すように、移動制御部193は、本体10を目標エリアARg内の目標地点Pgまで直線経路Rs3に沿って下方に移動させる。
【0117】
ここで、目標地点Pgにおいては目標進行方向Dtの変更が行われず(ステップST8:No)、把持制御部191は、把持駆動部14を制御して、把持部13に被把持部21を開放(非把持)させる(ステップST9)。
【0118】
(2.5.2)第2動作例
以下に、搬送ロボット1が、
図15に示すように、搬送ロボット制御システム100の搬送対象である複数種類の被搬送物2のうちの一の種類の被搬送物2である被搬送物2Bを搬送する場合の搬送ロボット制御システム100の動作例について説明する。被搬送物2Bは、被搬送物2Aとは異なる種類の被搬送物2である。以下の説明において、第1動作例と共通する動作については詳細な説明を省略する。
【0119】
被搬送物2Bは、本体20と4つのキャスタC0(キャスタC1B~C4B)とを有する。キャスタC1B、C2Bは、第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、キャスタC3B、C4Bは、第1方向DR1に沿って並んで設けられている。ここで、キャスタC1B、C2B間の間隔は、キャスタC3B、C4B間の間隔よりも狭くなっている。
【0120】
移動制御部193は、本体10を、被搬送物2を把持可能な地点(把持地点)まで移動させる。
【0121】
本体10が把持地点に到着すると、把持制御部191は、把持駆動部14を制御して、把持部13に被把持部21を把持させる(ステップST1)。
【0122】
把持地点において、把持部13が被把持部21を把持すると、移動エリア設定部194は、移動エリアAR10を設定する(ステップST2)。
【0123】
把持地点において、把持部13が被把持部21を把持すると、移動制御部193は、本体10を所定の搬送開始地点P0まで搬送する。
【0124】
搬送開始地点P0において、移動エリア設定部194は、搬送開始地点P0の情報と、目標地点Pgの情報とに基づいて、移動エリアAR10を設定する(ステップST2)。
【0125】
また、例えば本体10が搬送開始地点P0に到達すると、要求部190は、上位システム3に被搬送物2の種類を回答させるための要求信号を送信する。
【0126】
上位システム3の回答部312は、通信部32を介して、要求部190からの要求信号を受信すると、要求信号に含まれる移動体IDと、記憶部35に記憶されている被搬送物2の搬送計画とに基づいて、搬送ロボット1が搬送する被搬送物2の種類を被搬送物2Bと特定する。
【0127】
回答部312は、特定した被搬送物2の種類(被搬送物2B)を含む特定情報を搬送ロボット1に送信する。
【0128】
被搬送物2の種類(被搬送物2B)を含む特定情報を上位システム3から受信すると、進行方向設定部195は、搬送開始エリアARsにおける本体10の目標進行方向Dtを前方に設定する(ステップST3)。
【0129】
次に、判定部196は、被搬送物2の種類に応じて設定される所定のキャスタC0の舵角θ0を検知部16が検知可能か否かを判定する(ステップ4)。ここで、第2動作例においては、被搬送物2の種類に応じて設定される所定のキャスタC0は、被搬送物2Bが有するキャスタC1B~C4Bである。
【0130】
ここで、本体10が搬送開始地点P0に位置している状態において、
図15に示すように、検知領域A1はキャスタC1B、C2Bによって各々遮蔽される遮蔽領域Ah1B、Ah2Bが含まれる。第2動作例では、本体10が搬送開始地点P0に位置している状態において、キャスタC3B、C4Bは、遮蔽領域Ah1B、Ah2B内にそれぞれ位置しており、キャスタC3B、C4BはキャスタC1B、C2Bに遮蔽されて検知部16が検知不可能な状態となっている。このため、判定部196は所定のキャスタC0(キャスタC1B~C4B)を検知不可能と判定する(ステップST4:No)。つまり、判定部196は、角度推定部197が所定のキャスタC0の舵角θ0を推定不可能と判定する。
【0131】
判定部196が所定のキャスタC0(キャスタC1B~C4B)を検知不可能と判定すると、角度推定部197は、キャスタC1B~C4Bの舵角θ0を推定しない。
【0132】
初動方向決定部198は、角度推定部197が舵角θ0を推定できなかった場合には、搬送ロボット1の直前の移動方向を初動方向とする。以下に、第2動作例における初動方向Dfの決定方法について説明する。
【0133】
第2動作例において、搬送ロボット1は、
図16に示すように、前後方向に対して右側に角度φ傾いた方向(移動方向Dm)へ向かって移動することにより、被搬送物2Bを搬送開始エリアARs内に搬送したとする。上述のように、上位システム3の記憶部35は、搬送ロボット1の移動履歴を記憶している。ここで、記憶部35が記憶している搬送ロボット1の移動履歴は移動方向Dmの情報を含む。
【0134】
取得部199は、本体10が搬送開始地点P0に位置している状態において、角度推定部197が舵角θ1~θ4を推定できなかった場合に、上位システム3の記憶部35から搬送ロボット1の直前の移動方向を取得する(ステップST10)。ここで、搬送ロボット1の直前の移動方向は移動方向Dmである。
【0135】
初動方向決定部198は、取得部199が移動方向Dmを取得すると、搬送開始エリアARsにおける本体10の初動方向Df(第1初動方向Df1)を移動方向Dmに設定する(ステップST11)。
【0136】
このように、角度推定部197がキャスタC0の舵角θ0を推定できなかった場合でも初動方向Dfを決定することができ、被搬送物2の走行の安定化を図ることができる。
【0137】
以降の動作については、第1動作例と略共通の動作となるので詳細な説明を省略する。ただし、第1方向変更エリアARc1、第2方向変更エリアARc2において、目標進行方向Dtが変更されるときに(ステップST8:Yes)、判定部196が、所定のキャスタC0(キャスタC1B~C4B)を検知不可能と判定した場合は(ステップST4:No)、以降の動作はステップST10、ステップST11となる。
【0138】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、搬送ロボット制御システム100と同様の機能は、制御方法(搬送ロボット制御方法)、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。
【0139】
上記実施形態に係る搬送ロボット制御方法は、角度推定ステップと、初動方向決定ステップと、を含む。角度推定ステップでは、搬送ロボット1によって搬送される被搬送物2が有するキャスタC0の舵角θ0を推定する。初動方向決定ステップでは、搬送ロボット1による被搬送物2の搬送時に角度推定ステップにおいて推定したキャスタC0の舵角θ0に基づいて、搬送ロボット1の初動方向を決定する。また、上記実施形態に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上述の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0140】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0141】
上記実施形態の第2動作例において、判定部196は所定のキャスタC0(キャスタC1B~C4B)の内の一部(キャスタC3B、C4B)が検知不可能な状態にあった場合、所定のキャスタC0(キャスタC1B~C4B)が検知不可能と判定するが、判定部196は、キャスタC1B、C2Bのみ検知可能と判定してもよい。つまり、判定部196はキャスタC3B、C4Bが検知不可能な状態にあった場合、角度推定部197がキャスタC1B、C2Bの舵角θ1、θ2を推定可能と判定してもよい。判定部196がキャスタC1B、C2Bを検知可能と判定すると、角度推定部197は、キャスタC1B、C2Bの舵角θ1、θ2を推定する。つまり、角度推定部197は、キャスタC1B~C4BのうちキャスタC1B、C2Bの舵角θ1、θ2を推定可能であり、初動方向決定部198は、舵角θ1、θ2に基づいて、第1初動方向Df1を決定してもよい。これにより、キャスタC1B~C4Bのうちのうちの一部のキャスタC0の舵角θ0が推定不可能な状態であっても、初動方向Dfを決定することができる。
【0142】
上記実施形態の第1動作例において、初動方向決定部198は、舵角θ1~θ4に基づいて搬送ロボット1(本体10)の初動方向Dfを決定するが、キャスタC0(キャスタC1A~C4A)の回転軸(車軸)Aw0(Aw1~Aw4)の互いの交点の位置に基づいて初動方向Dfを決定してもよい。以下に具体的に説明する。まず、初動方向決定部198は、角度推定部197で推定された舵角θ1~θ4の傾きを持つ回転軸(車軸)Aw0(Aw1~Aw4)の交点の重心位置を計算する。例えば、初動方向決定部198は、
図17に示すように、舵角θ1~θ4から車軸Aw1~Aw4の方向を計算し、更に、車軸Aw1~Aw4の各々の交点Q1~Q6の位置を計算する。そして、初動方向決定部198は、交点Q1~Q6の重心位置Q7を計算する。初動方向決定部198は、重心位置Q7を中心とし、キャスタC1A~C4Aの各接地点(K1~K4)の重心K5を通る円弧の接線方向Dsを初動方向Dfとしてもよい。
【0143】
上記実施形態の第1動作例において、初動方向決定部198は、角度推定部197で推定された舵角θ1~θ4の平均値に基づいて、搬送ロボット1(本体10)の初動方向Dfを決定するが、単純平均に限らず、重み付き平均を使用してもよい。この場合、被搬送物2のモーメントや被搬送物2の積載物の重心を考慮することで、単純平均で初動方向Dfを決定する場合より走行を安定させることができる。具体的には、
図3に示すように、本体20の前面201側(搬送ロボット1が把持している側)のキャスタC0(C1A、C2A)は、本体20の後面202側のキャスタC0(C3A、C4A)よりモーメントが働かないため、キャスタC1A、C2Aの角度平均の重み付けを大きくした重み付き平均に基づいて初動方向Dfを決定することで走行をより安定させることができる。また、積載物の重心位置が偏る被搬送物2の場合は、積載物の重心とキャスタC0間の距離に応じ、互いの距離が近い複数のキャスタC0の角度平均の重みを大きくした重み付き平均に基づいて初動方向Dfを決定することで走行をより安定させることができる。
【0144】
搬送ロボット1の制御部19の機能の少なくとも一部(例えば移動エリア設定部194、進行方向設定部195、判定部196、角度推定部197、初動方向決定部198等の機能)が、上位システム3の制御部31が有してもよい。
【0145】
搬送ロボット1の移動履歴は、搬送ロボット1の記憶部18が記憶してもよい。この場合、取得部199は角度推定部197がキャスタC0の舵角θ0を推定できなかった場合に、記憶部18から搬送ロボット1の直前の移動方向を取得してもよい。
【0146】
本開示における搬送ロボット制御システム100は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における搬送ロボット制御システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0147】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様の搬送ロボット制御システム(100)は、角度推定部(197)と、移動制御部(193)と、初動方向決定部(198)と、を備える。角度推定部(197)は、搬送ロボット(1)によって搬送される被搬送物(2)が有するキャスタ(C0)の舵角を推定する。移動制御部(193)は、搬送ロボット(1)の移動を制御する。初動方向決定部(198)は、搬送ロボット(1)による被搬送物(2)の搬送時に角度推定部(197)が推定したキャスタ(C0)の舵角(θ0)に基づいて、搬送ロボット(1)の初動方向(Df)を決定する。
【0148】
この態様によれば、搬送ロボット(1)が移動方向を変更する場合に、キャスタ(C0)の舵角(θ0)が急激に変化することを抑制することができ、被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0149】
第2の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1の態様において、搬送ロボット(1)は、本体(10)と、本体(10)に設けられ、舵角を変更可能な少なくとも1つの操舵輪(11)と、を有する。移動制御部(193)は、少なくとも1つの操舵輪(11)の舵角を変更することにより、本体(10)の搬送ロボット(1)の進行方向に対する姿勢を一定に保ったまま、搬送ロボット(1)を、搬送ロボット(1)が移動する移動面(G1)上における全方向に移動させる。
【0150】
第3の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1又は第2の態様において、被搬送物(2)は、基板(E2)に対して部品(E1)の実装を行う部品実装機(4)に前記部品を供給する部品供給装置(5)である。
【0151】
この態様によれば、部品供給装置(5)の走行の安定化を図ることができる。
【0152】
この態様によれば、搬送ロボット(1)が本体(10)の姿勢を一定に保ったまま移動方向を変更する場合に、キャスタ(C0)の舵角(θ0)が急激に変化することを抑制することができ、被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0153】
第4の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1~第3のいずれかの態様において、移動制御部(193)は、初動方向(Df)と、目標とする目標進行方向(Dt)と、に基づいて、搬送ロボット(1)の現在地点から搬送ロボット(1)の移動方向が目標進行方向(Dt)となる地点まで搬送ロボット(1)を移動させる。
【0154】
この態様によれば、本体(10)の移動方向を初動方向(Df)から目標進行方向(Dt)へ徐々に変化させることができる。また、キャスタ(C0)の舵角(θ0)を徐々に変化させることができる。
【0155】
第5の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第4の態様において、現在地点から搬送ロボット(1)の移動方向が目標進行方向(Dt)となる地点までの経路は、曲線部分(Cv1)を含む。
【0156】
この態様によれば、曲線部分(Cv1)に沿って本体(10)の移動方向を初動方向(Df)から目標進行方向(Dt)へ徐々に変化させることができる。また、キャスタ(C0)の舵角(θ0)を徐々に変化させることができる。
【0157】
第6の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第5の態様において、曲線部分(Cv1)は、円弧(Ca1)を含む。
【0158】
この態様によれば、円弧(Ca1)に沿って本体(10)の移動方向を初動方向(Df)から目標進行方向(Dt)へ徐々に変化させることができる。また、キャスタ(C0)の舵角(θ0)を徐々に変化させることができる。
【0159】
第7の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第4~第6のいずれかの態様において、初動方向決定部(198)は、目標進行方向(Dt)が変更された場合に、再度初動方向(Df)を決定する。
【0160】
この態様によれば、目標進行方向(Dt)が変更された後に、搬送ロボット(1)が移動方向を変更する場合に、キャスタ(C0)の舵角(θ0)が急激に変化することを抑制することができ、被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0161】
第8の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第7の態様において、移動制御部(193)は、目標進行方向(Dt)が変更された場合に、目標進行方向(Dt)の変更後に初動方向決定部(198)が決定した初動方向(Df)と、変更後の目標進行方向(Dt)と、に基づいて、搬送ロボット(1)の移動方向が変更後の目標進行方向(Dt)となる地点まで搬送ロボット(1)を移動させる。
【0162】
この態様によれば、目標進行方向(Dt)が変更された後に、本体(10)の移動方向を初動方向(Df)から目標進行方向(Dt)へ徐々に変化させることができる。
【0163】
第9の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1~第8のいずれかの態様において、角度推定部(197)は、キャスタ(C0)において基準点(Ps)との距離が最も近い最近傍点(Pc)の位置に基づいてキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定する。
【0164】
この態様によれば、角度推定部(197)の舵角(θ0)の推定処理を簡易化できる。
【0165】
第10の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1~9のいずれかの態様において、角度推定部(197)は、被搬送物(2)の種類に応じて設定される所定のキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定する。初動方向決定部(198)は、所定のキャスタ(C0)の舵角(θ0)に基づいて、初動方向(Df)を決定する。
【0166】
この態様によれば、複数種類の被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0167】
第11の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第10の態様において、被搬送物(2)の種類と所定のキャスタ(C0)との対応情報を記憶する記憶部(18)を更に備える。
【0168】
この態様によれば、複数種類の被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0169】
第12の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1~第11のいずれかの態様において、被搬送物(2)は、1つ以上のキャスタ(C0)を有する。初動方向決定部(198)は、1つ以上のキャスタ(C0)のうち、角度推定部(197)が舵角(θ0)を推定可能であるキャスタ(C0)の舵角(θ0)に基づいて、初動方向(Df)を決定する。
【0170】
この態様によれば、1つ以上のキャスタ(C0)のうちの一部のキャスタ(C0)の舵角(θ0)が推定不可能な状態であっても、初動方向(Df)を決定することができる。
【0171】
第13の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1~第12のいずれかの態様において、被搬送物(2)は、複数のキャスタ(C0)を有する。角度推定部(197)は、複数のキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定する。初動方向決定部(198)は、角度推定部(197)で推定された複数のキャスタ(C0)の舵角(θ0)の平均値に基づいて、初動方向(Df)を決定する。
【0172】
この態様によれば、複数のキャスタ(C0)の舵角(θ0)が異なっている場合に、初動方向(Df)を決定することができる。
【0173】
第14の態様の搬送ロボット制御システム(100)では、第1~第13のいずれかの態様において、初動方向決定部(198)は、角度推定部(197)がキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定できなかった場合に、搬送ロボット(1)の直前の移動方向を初動方向(Df)とする。
【0174】
この態様によれば、角度推定部(197)がキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定できなかった場合でも初動方向(Df)を決定することができ、被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0175】
第15の態様の搬送ロボット制御システム(100)は、第14の態様において、角度推定部(197)がキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定できなかった場合に、上位システム3から直前の移動方向を取得する取得部(199)を更に備える。
【0176】
この態様によれば、角度推定部(197)がキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定できなかった場合でも初動方向(Df)を決定することができ、被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0177】
第16の態様の搬送ロボット制御方法は、角度推定ステップと、初動方向決定ステップと、を含む。角度推定ステップでは、搬送ロボット(1)によって搬送される被搬送物(2)が有するキャスタ(C0)の舵角(θ0)を推定する。初動方向決定ステップでは、搬送ロボット(1)による被搬送物(2)の搬送時に角度推定ステップにおいて推定したキャスタ(C0)の舵角(θ0)に基づいて、搬送ロボット(1)の初動方向(Df)を決定する。
【0178】
この態様によれば、搬送ロボット(1)が移動方向を変更する場合に、キャスタ(C0)の舵角(θ0)が急激に変化することを抑制することができ、被搬送物(2)の走行の安定化を図ることができる。
【0179】
なお、第2~第15の態様は、搬送ロボット制御システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。
【符号の説明】
【0180】
1 搬送ロボット
2 被搬送物
4 部品実装機
5 部品供給装置
10 本体
11 操舵輪
18 記憶部
100 搬送ロボット制御システム
193 移動制御部
197 角度推定部
198 初動方向決定部
199 取得部
C0 キャスタ
Ca1 円弧
Cv1 曲線部分
Df 初動方向
Dt 目標進行方向
E1 部品
E2 基板
G1 移動面
Pc 最近傍点
Ps 基準点
θ0 舵角