(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159316
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20241031BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20241031BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/62 Z
A47C27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075224
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】石山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 正人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 周治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】田中 健志
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JA07
3B084JG01
3B084JG04
3B084JG06
3B087DE02
3B087DE09
3B096AC12
(57)【要約】
【課題】送風機への水の浸入を防止することができる車両用シートを得る。
【解決手段】空気通路28が設けられたクッションパッド22に対してシート下方側にはファン30が配置されている。空気通路28の下壁部28Uのシート上方側には、下壁部28Uを補強するFCプレート50が配設されている。FCプレート50は、下側開口28Bと連通する孔部50Hを有している。FCプレート50の孔部50Hの周囲に設けられ、シート上方側に向かって延在し、ファン30への水の流入を防止する堰部52が設けられている。このため、クッションパッド22の上面側が被水した場合に、水が空気通路28に浸入したとしても、孔部50Hの周囲において堰部52により孔部50H及び下側開口28Bへの水の流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入は防止される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するクッションパッドと、
前記クッションパッド内に設けられ、前記クッションパッドの上面側に上側開口を備えると共に前記クッションパッドの下面側に下側開口を備える空気通路と、
前記クッションパッドに対してシート下方側に配置されて前記空気通路の前記下側開口に接続され、作動することにより前記空気通路に空気流を生じさせる送風機と、
前記空気通路を形成すると共に前記下側開口が形成された下壁部と、
該下壁部のシート上方側に配設され、前記下側開口と連通する孔部を有して前記下壁部を補強する補強板と、
該補強板の前記孔部の周囲に設けられ、シート上方側に向かって延在し、前記送風機への水の流入を防止する堰部と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
乗員が着座するクッションパッドと、
前記クッションパッド内に設けられ、前記クッションパッドの上面側に上側開口を備えると共に前記クッションパッドの下面側に下側開口を備える空気通路と、
前記クッションパッドに対してシート下方側に配置されて前記空気通路の前記下側開口に接続され、作動することにより前記空気通路に空気流を生じさせる送風機と、
前記空気通路を形成すると共に前記下側開口が形成された下壁部と、
該下壁部のシート上方側に配設され、前記空気通路と前記下側開口とを連通する連通孔を有し、かつ水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する水吸収堰部と、
を有する車両用シート。
【請求項3】
前記堰部は、前記孔部の縁部に設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記堰部は、前記補強板がフランジ加工されて形成されている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記水吸収堰部は、圧縮フェルトにより形成されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記堰部は、圧縮フェルトにより形成されている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記空気通路の下壁部及び前記補強板に形成された1以上の水抜き孔を有し、
前記堰部が、水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有し、前記1以上の水抜き孔の各々と前記孔部との間であって、かつ前記1以上の水抜き孔の各々の縁部に設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記堰部は、圧縮フェルトにより形成されている請求項7に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記クッションパッドに着座した乗員のヒップポイントのシート下方側に前記送風機が配設されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項10】
前記クッションパッドに着座した乗員のヒップポイントのシート下方側に前記送風機が配設されている請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいてはシートクッション内に着座面側に通じる空気通路を設けると共に空気通路の下端側に送風機を配置したものが知られている(例えば下記特許文献1参照)。このような車両用シートでは、送風機の作動によって空気通路を通る空気流を形成することができ、着座面側の空気を吸い込むないしは着座面側に空気を吹き出すことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車両用シートでは、着座面が被水した場合に水が空気通路を伝って送風機内に浸入してしまうと送風機を故障させてしまう要因になり得る。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、送風機への水の浸入を防止することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の車両用シートは、乗員が着座するクッションパッドと、前記クッションパッド内に設けられ、前記クッションパッドの上面側に上側開口を備えると共に前記クッションパッドの下面側に下側開口を備える空気通路と、前記クッションパッドに対してシート下方側に配置されて前記空気通路の前記下側開口に接続され、作動することにより前記空気通路に空気流を生じさせる送風機と、前記空気通路を形成すると共に前記下側開口が形成された下壁部と、該下壁部のシート上方側に配設され、前記下側開口と連通する孔部を有して前記下壁部を補強する補強板と、該補強板の前記孔部の周囲に設けられ、シート上方側に向かって延在し、前記送風機への水の流入を防止する堰部と、を有する。
【0007】
本発明の第1の態様の車両用シートによれば、クッションパッド内に設けられた空気通路は、クッションパッドの上面側に上側開口を備えると共にクッションパッドの下面側に下側開口を備えている。クッションパッドに対してシート下方側に配置された送風機は、空気通路の下側開口に接続され、作動することにより空気通路に空気流を生じさせる。ここで、空気通路の上方側には、下壁部の下側開口と連通する孔部を有した補強板が設けられている。また、補強板の孔部の周囲には、シート上方側に向かって延在し、送風機への水の流入を防止する堰部が設けられている。このため、クッションパッドの上面側が被水した場合に、水が空気通路に浸入したとしても、孔部の周囲において堰部により孔部及び下側開口への水の流入が防止されるので、送風機への水の浸入は防止される。
【0008】
本発明の第2の態様の車両用シートは、乗員が着座するクッションパッドと、前記クッションパッド内に設けられ、前記クッションパッドの上面側に上側開口を備えると共に前記クッションパッドの下面側に下側開口を備える空気通路と、前記クッションパッドに対してシート下方側に配置されて前記空気通路の前記下側開口に接続され、作動することにより前記空気通路に空気流を生じさせる送風機と、前記空気通路を形成すると共に前記下側開口が形成された下壁部と、該下壁部のシート上方側に配設され、前記空気通路と前記下側開口とを連通する連通孔を有し、かつ水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する水吸収堰部と、を有する。
【0009】
本発明の第2の態様の車両用シートによれば、クッションパッド内に設けられた空気通路は、クッションパッドの上面側に上側開口を備えると共にクッションパッドの下面側に下側開口を備えている。クッションパッドに対してシート下方側に配置された送風機は、空気通路の下側開口に接続され、作動することにより空気通路に空気流を生じさせる。ここで、空気通路の上方側には、空気通路と下壁部の下側開口と連通する連通孔を有し、かつ水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する水吸収堰部が設けられている。このため、送風機の作動時には空気は空気通路から連通孔を通って下側開口へ流れる。また、クッションパッドの上面側が被水した場合に、水が空気通路に浸入したとしても、当該水は下側開口へ流入する前に水吸収堰部によって吸収されるので、送風機への水の浸入は防止される。
【0010】
また、水吸収堰部は、自立可能な剛性を有しているので、下壁部を補強する補強材としての機能も備えることができる。これにより、部品点数を増やすことなく、下壁部の補強と送風機への水の浸入の防止とを行うことができる。
【0011】
本発明の第3の態様の車両用シートは、第1の態様において、前記堰部が、前記孔部の縁部に設けられている。
【0012】
本発明の第3の態様の車両用シートによれば、堰部が、孔部の縁部に設けられているので、孔部の縁部において堰部により孔部及び下側開口への水の流入が防止されるので、送風機への水の浸入をより好適に防止することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の車両用シートは、第3の態様において、堰部は、補強板がフランジ加工されて形成されている。
【0014】
本発明の第4の態様の車両用シートによれば、堰部が補強板をフランジ加工することにより形成されているので、補強板と堰部とを一体的に形成することができ、部品点数の増加を抑制することができる。また、フランジ加工では立ち上がりの根元が直角ではなく曲面となるため、直角に比べて角部に水や汚れが溜まるのを防止することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の車両用シートは、第2の態様において、前記水吸収堰部が、圧縮フェルトにより形成されている。
【0016】
本発明の第5の態様の車両用シートは、水吸収堰部が、圧縮フェルトにより形成されているので、水が空気通路に浸入したとしても当該水は圧縮フェルトによって吸収されるため、送風機への水の浸入は防止される。また、圧縮フェルトは、下壁部を補強する補強材としての機能も備えることができるので、部品点数を増やすことなく、下壁部の補強と送風機への水の浸入の防止とを行うことができる。
【0017】
本発明の第6の態様の車両用シートは、第3の態様において、前記堰部は、圧縮フェルトにより形成されている。
【0018】
本発明の第6の態様の車両用シートは、孔部の縁部に設けられた堰部が、圧縮フェルトにより形成されているので、水が空気通路に浸入したとしても当該水は孔部の縁部において圧縮フェルトによって吸収されるため、送風機への水の浸入は防止される。また、圧縮フェルトは、下壁部を補強する補強材としての機能も備えることができるので、部品点数を増やすことなく、下壁部の補強と送風機への水の浸入の防止とを行うことができる。
【0019】
本発明の第7の態様の車両用シートは、第1の態様において、前記空気通路の下壁部及び前記補強板に形成された1以上の水抜き孔を有し、前記堰部が、水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有し、前記1以上の水抜き孔の各々と前記孔部との間であって、かつ前記1以上の水抜き孔の各々の縁部に設けられている。
【0020】
本発明の第7の態様の車両用シートは、空気通路の下壁部及び補強板に形成された1以上の水抜き孔の各々と孔部との間であって、1以上の水抜き孔の各々の縁部に、水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する堰部が設けられている。そのため、水抜き孔によって水が排出しきれなかった場合に、排出されなかった水を堰部によって吸収することができる。これにより、孔部及び下側開口への水の流入が防止されるので、送風機への水の浸入は防止される。
【0021】
本発明の第8の態様の車両用シートは、第7の態様において、前記堰部は、圧縮フェルトにより形成されている。
【0022】
本発明の第8の態様の車両用シートは、1以上の水抜き孔の各々と孔部との間であって、1以上の水抜き孔の各々の縁部に設けられた堰部が、圧縮フェルトにより形成されているので、水抜き孔によって水が排出しきれなかったとしても当該水は水抜き孔の縁部において圧縮フェルトによって吸収されるため、送風機への水の浸入は防止される。
【0023】
本発明の第9の態様の車両用シートは、第1の態様、第3の態様、第4の態様、及び第6~第8の態様の何れか1つの態様において、前記クッションパッドに着座した乗員のヒップポイントのシート下方側に前記送風機が配設されている。
【0024】
クッションパッドに着座した乗員のヒップポイントのシート下方側は、着座面が被水した場合に水が流れ込み易いとされる箇所である。一方、本発明の第9の態様の車両用シートには、送風機への水の流入を防止する堰部が設けられている。このため、本発明の第9の態様の車両用シートのように、水が流れ込み易いとされる箇所であるクッションパッドに着座した乗員のヒップポイントのシート下方側に送風機が配設されている場合であっても、堰部により孔部及び下側開口への水の流入が防止されるので、送風機への水の浸入は防止される。このように、水が流れ易いとされる箇所であっても冷風機を配設することができるので、送風機のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0025】
本発明の第10の態様の車両用シートは、第2の態様又は第5の態様において、前記クッションパッドに着座した乗員のヒップポイントのシート下方側に前記送風機が配設されている。
【0026】
本発明の第10の態様の車両用シートには、空気通路と下側開口とを連通する連通孔を有し、かつ水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する水吸収堰部が設けられている。このため、本発明の第10の態様の車両用シートのように、水が流れ込み易いとされる箇所であるクッションパッドに着座した乗員のヒップポイントのシート下方側に送風機が配設されている場合であっても、水は下側開口へ流入する前に水吸収堰部によって吸収されるので、送風機への水の浸入は防止される。このように、水が流れ易いとされる箇所であっても冷風機を配設することができるので、送風機のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、送風機への水の浸入を防止することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの一部を簡略化して示す側面視の断面図(車両用シートを平面視で
図3の1L-1L線の位置に沿って切断した断面に相当する図)である。
【
図2】
図1のシートクッションの一部を分解及び簡略化して示す分解斜視図である。
【
図3】
図1のシートクッションを斜め上方側から見た状態で簡略化して示す斜視図である。
【
図4】
図2のFCプレート及びその周囲部を拡大して上方側から見た状態で示す図である。
【
図5】
図4のA-A線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図6】
図4のA-A線に沿って切断した状態を示す第1変形例の断面図である。
【
図7】
図4のA-A線に沿って切断した状態を示す第2変形例の断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る車両用シートのシートクッションの一部を分解及び簡略化して示す分解斜視図である。
【
図9】
図8のFCプレート及びその周囲部を拡大して上方側から見た状態で示す図である。
【
図10】
図9のB-B線に沿って切断した状態を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る車両用シートについて
図1~
図5を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはシート前方側を示しており、矢印UPはシート上方側を示しており、矢印Wはシート幅方向を示している。
【0030】
(構成)
図1には、車両用シート10の一部が側面視の断面図が簡略化されて示されている。また、
図2には、シートクッション12の一部を分解した分解斜視図が一部簡略化されて示されている。なお、
図1では、厚みが薄い部材の断面については便宜上肉厚を付けないで太線で示す。
図1に示されるように、車両用シート10は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト(図示省略)と、を備えている。
【0031】
図2に示されるように、シートクッション12は、トリムカバー24、クッションパッド22、裏面シール材26、補強板としてのFCプレート50、クッションスプリング21及び送風機としてのファン30を含んで構成されている。
図1に示されるように、シートクッション12は、骨格部材であるクッションフレーム20に、クッション材であるクッションパッド22が被せ付けられると共に、クッションパッド22の表面が表皮材であるトリムカバー24によって覆われている。トリムカバー24に覆われたクッションパッド22は、乗員によって着座される構成部である。トリムカバー24は通気性を有している。なお、クッションパッド22とトリムカバー24とは接触しているが、図を見易くするために、
図1では僅かに離して図示している。
図1及び
図2に示されるように、クッションパッド22の下面側には、不織布からなる裏面シール材26がホットメルト接着剤(又は両面テープ)で接合されている。
【0032】
クッションパッド22は、例えばポリウレタン等の材料で発泡成形されている。また、裏面シール材26は、クッションパッド22よりも通気性が低い。クッションパッド22内には、空気通路28が設けられている。空気通路28は、クッションパッド22の上面側に上側開口28Aを備えると共にクッションパッド22の下面側に下側開口28Bを備えている。空気通路28は、クッションパッド22を上下方向に貫通する貫通部22Hと、クッションパッド22の下部でシート下方側に開口する凹部22Uと、凹部22Uの開口側に配置される裏面シール材26の一部と、で形成されている。空気通路28の下壁部28Uは、裏面シール材26の一部によって構成されている。
【0033】
図3には、シートクッション12を斜め上方側から見た状態の斜視図が簡略化されて示されている。なお、図示を省略するが、車両用シート10は、シートクッション12の他にシートバック及びヘッドレストを備えている。また、
図1の断面は、
図3の1L-1L線の位置に沿って切断した断面に相当する。
図1及び
図2に示されるようにシートクッション12のクッションパッド22内には、空気通路28が設けられている。
【0034】
図1~
図3に示されるように、空気通路28の上側開口28Aとしては、一例として、第一上側開口28A1、左右一対の第二上側開口28A2、左右一対の第三上側開口28A3、左右一対の第四上側開口28A4及び左右一対の第五上側開口28A5が設けられている。第一上側開口28A1は、シート前端部側のシート幅方向中央部に形成され、左右一対の第二上側開口28A2は、第一上側開口28A1よりも若干シート後方側でシート幅方向の両サイド部に形成されている。
【0035】
また、左右一対の第三上側開口28A3は、左右一対の第二上側開口28A2に対してシート後方側の位置に形成され、左右一対の第四上側開口28A4は、左右一対の第三上側開口28A3に対してシート後方側の位置に形成されている。さらに、左右一対の第五上側開口28A5は、左右一対の第三上側開口28A3に対してシート幅方向内側の位置に形成されている。なお、以下の説明において、第一上側開口28A1、第二上側開口28A2、第三上側開口28A3、第四上側開口28A4及び第五上側開口28A5を区別しないで説明するときには単に上側開口28Aという。
【0036】
一方、空気通路28の下側開口28Bは、シート後部で左右一対の第四上側開口28A4よりもシート後方側かつシート幅方向中央部に形成されている。下側開口28Bは、上側開口28Aよりも大きい開口とされている。空気通路28の下側開口28Bは、
図2に示されるように、裏面シール材26の円孔26Hによって構成されている。
【0037】
また、
図3に示されるように、空気通路28は、左右一対の第一通路28C1と、左右一対の第二通路28C2と、を備えている。左右一対の第一通路28C1は、第一上側開口28A1、第二上側開口28A2、第三上側開口28A3及び第四上側開口28A4からそれぞれ垂下された通路を合流させて下側開口28Bに至っている。左右一対の第二通路28C2は、第五上側開口28A5から垂下された通路と下側開口28Bとを繋いでいる。
【0038】
図1及び
図2に示されるように、裏面シール材26の上方側には、FCプレート50が配設されている。FCプレート50は、裏面シール材26を補強する樹脂板であり、円孔26Hと同形状の孔部50Hを有している。FCプレート50は、孔部50Hと円孔26H(下側開口28B)とが重なるように、すなわち孔部50Hと円孔26Hを連通させて裏面シール材26に接合されている。なお、図示を省略するが、ファン30には下側開口28Bを貫通する爪部が設けられており、この爪部がFCプレート50に係止するようになっている。
【0039】
図4には、FCプレート50及びその周囲部を拡大して上方側から見た状態の図が、
図5には、
図4のA-A線に沿って切断した状態の断面図がそれぞれ示されている。
図4及び
図5に示されるように、本実施形態のFCプレート50は、孔部50Hの縁部において、上方側に向かって延在し、ファン30への水の流入を防止する堰部52を備えている。堰部52は、一例として、FCプレート50を構成する板材に対してフランジ加工を施すことにより形成されており、略円筒状に形成されている。
【0040】
図2に示されるように、クッションスプリング21は、クッションフレーム20(
図1参照)の前後の構成部に対してシート前後方向に掛け渡されるものであり、クッションパッド22をシート下方側から弾性的に支持する。また、
図1及び
図2に示されるように、クッションパッド22、裏面シール材26、及びクッションスプリング21に対してシート下方側には、送風機としてのファン(「ベンチレーションファン」ともいう)30が配置されている。ファン30は、空気通路28の下側開口28Bに接続され、作動することにより空気通路28に空気流を生じさせる。
【0041】
ファン30は、作動時に空気通路28内の空気を吸い込むように配置されている。これにより、空気通路28の上側開口28Aは吸気口として機能する。なお、以下の説明においては、ファン30の作動時における空気流の上流側を単に上流側と略し、ファン30の作動時における空気流の下流側を単に下流側と略す。
【0042】
また、
図2に示されるように、ファン30の四隅の取付部30Fはタッピングネジ38を用いてクッションスプリング21に固定される。なお、第1実施形態を示す
図1では
図2に示されるクッションスプリング21の図示が省略されている。
【0043】
(クッションパッドアッシーの製造について)
図2に示されるクッションパッド22と裏面シール材26とFCプレート50とは、クッションパッドアッシーを構成する。このクッションパッドアッシーの製造について概説する。
【0044】
クッションパッドアッシーの製造にあたっては、前工程としてFCプレート50と裏面シール材26とを接合してサブアッシーを製造する。この接合には、例えば、ホットメルト接着剤、ミシン縫製及び両面テープのいずれかを適用することができる。また、上記のサブアッシー化の工程とは別の工程で、発泡成形によってクッションパッド22を製造する。そして、前記サブアッシーをクッションパッド22の下面に対してホットメルト接着剤又は両面テープを用いて貼り付ける。以上により、クッションパッドアッシーを製造することができる。
【0045】
(作用・効果)
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
本実施形態では、
図1に示されるように、空気通路28が設けられたクッションパッド22に対してシート下方側にはファン30が配置されている。このファン30は作動すると空気通路28の下側開口28Bから空気通路28内の空気を吸い込む。これにより、空気通路28にはその上側開口28Aから下側開口28Bへ向けた空気流が生じ、シートクッション12の上方側の空間(着座乗員の臀部及び大腿部の周囲の空間)における空気の冷却がなされる。また、前記空気流によって、乗員着座時のシートクッション12の着座面付近における蒸れを解消して除湿効果を得ることもできる。
【0047】
ここで、空気通路28の下壁部28Uの上方側には、
図5に示されるように、下壁部28Uの下側開口28Bと連通する孔部50Hを有したFCプレート50が設けられている。また、FCプレート50の孔部50Hの周囲には、シート上方側に向かって延在し、ファン30への水の流入を防止する堰部52が設けられている。このため、クッションパッド22の上面側が被水した場合に、水WFが空気通路28に浸入したとしても、孔部50Hの周囲において堰部52により孔部50H及び下側開口28B(円孔26H)への水WFの流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入は防止される。これにより、錆等によるファン30の故障発生が防止又は抑制される。
【0048】
また、第1実施形態においては、堰部52が、孔部50Hの縁部に設けられているので、孔部50Hの縁部において堰部52により孔部50H及び下側開口28Bへの水WFの流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入をより好適に防止することができる。
【0049】
また、第1実施形態においては、堰部52が、FCプレート50をフランジ加工することにより形成されているので、FCプレート50と堰部52とを一体的に形成することができ、部品点数の増加を抑制することができる。また、フランジ加工では立ち上がりの根元が直角ではなく曲面となるため、直角に比べて角部に水や汚れが溜まるのを防止することができる。
【0050】
なお、水WFが空気通路28に浸入する場合としては、
図1に示される車両用シート10に乗員が着座している場合には、例えば、乗員の股等の間に配置された穴から侵入する場合等が想定される。
【0051】
また、
図1に示される車両用シート10に乗員が着座していない場合において水WFが空気通路28に浸入する場合としては、例えば、
図1に示される車両用シート10の隣の席(図示省略)の乗員が、キャップがよく締められていない状態のペットボトルを
図1に示される車両用シート10のシートクッション12の上面に放り投げた結果、キャップが外れてペットボトルの中の水が流出してしまった場合等が想定される。
【0052】
以上説明したように、第1実施形態の
図1に示される車両用シート10によれば、ファン30への水の浸入を防止することができる。その結果、ファン30を防水仕様にしなくても済むので、ファン30のサイズ及び浸水対策のコストを抑えることができる。
【0053】
[第1実施形態の第1変形例]
上記第1実施形態では、堰部52はFCプレート50がフランジ加工されて形成されているが、第1実施形態の第1変形例として、堰部52はフランジ加工以外によって形成されていてもよい。
図6には、
図4のA-A線に沿って切断した状態の第1変形例の断面図が示されている。なお、
図6において、上記第1実施形態と同様の構成については同符号で示してここでの詳細な説明は省略する。
【0054】
図6に示されるように、第1変形例の堰部52Aは、FCプレート50Aの孔部50Hの縁部に設けられている。堰部52Aは、孔部50Hと同形状の内径を有する円筒状に形成されており、FCプレート50に溶接や接着剤等の公知の技術により固着されている。なお、堰部52Aは、FCプレート50と同様に材料によって構成してもよいし、異なる材料によって構成してもよい。異なる材料としては、例えば、水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する圧縮フェルト等の集積材であってもよい。
【0055】
図6に示される第1実施形態の第1変形例であっても、上記第1実施形態と同様に、クッションパッド22の上面側が被水した場合に、水WFが空気通路28に浸入したとしても、孔部50Hの周囲において堰部52Aにより孔部50H及び下側開口28B(円孔26H)への水WFの流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入は防止される。これにより、錆等によるファン30の故障発生が防止又は抑制される。
【0056】
また、堰部52Aが、孔部50Hの縁部に設けられているので、孔部50Hの縁部において堰部52Aにより孔部50H及び下側開口28Bへの水WFの流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入をより好適に防止することができる。
【0057】
また、堰部52Aが、圧縮フェルトにより形成されている場合には、水WFが空気通路28に浸入したとしても水WFは孔部50Hの縁部において圧縮フェルトによって吸収されるため、ファン30への水WFの浸入は防止される。
【0058】
[第1実施形態の第2変形例]
上記第1実施形態では、堰部52はFCプレート50がフランジ加工されて形成されているが、第1実施形態の第2変形例として、堰部52はFCプレート50に形成されていなくてもよい。
図7には、
図4のA-A線に沿って切断した状態の第2変形例の断面図が示されている。なお、
図7において、上記第1実施形態と同様の構成については同符号で示してここでの詳細な説明は省略する。
【0059】
図7に示されるように、第2変形例においては、FCプレート50は備えていない。第2変形例の堰部50Bは、裏面シール材26の上方側に配設され、空気通路28(
図1参照)と円孔26H(下側開口28B)とを連通させる連通孔50Kを備えている。第2変形例においては、堰部50Bは円孔26Hと同形状の内径を有する円筒状に形成されており、裏面シール材26に接着剤等の公知の技術により固着されている。なお、堰部50Bの内孔が連通孔50Kとされる。第2変形例の堰部50Bは、水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する水吸収堰部とされ、圧縮フェルト等の集積材によって構成されている。
【0060】
図7に示される第1実施形態の第2変形例であっても、上記第1実施形態と同様に、クッションパッド22の上面側が被水した場合に、水WFが空気通路28に浸入したとしても、円孔26H(下側開口28B)の周囲において堰部50Bにより下側開口28B(円孔26H)への水WFの流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入は防止される。これにより、錆等によるファン30の故障発生が防止又は抑制される。
【0061】
また、堰部50Bが、円孔26H(下側開口28B)の縁部に設けられているので、円孔26H(下側開口28B)の縁部において堰部50Bにより下側開口28Bへの水WFの流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入をより好適に防止することができる。
【0062】
また、堰部50Bは、空気通路28と円孔26H(下側開口28B)と連通する連通孔50Kを有し、かつ水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する。このため、ファン30の作動時には空気は空気通路28から連通孔50Kを通って下側開口28Bへ流れる。また、クッションパッド22の上面側が被水した場合に、水WFが空気通路28に浸入したとしても、水WFは下側開口28Bへ流入する前に堰部50Bによって吸収されるので、ファン30への水WFの浸入は防止される。
【0063】
また、堰部50Bは、自立可能な剛性を有しているので、下壁部28U(裏面シール材26)を補強する補強材としての機能も備えることができる。これにより、部品点数を増やすことなく、下壁部28U(裏面シール材26)の補強とファン30への水WFの浸入の防止とを行うことができる。
【0064】
なお、第2変形例において、連通孔50Kは、
図7に示されるように円孔26H(下側開口28B)と重なるように設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、堰部50Bの上方側が塞がっている構成の場合には、連通孔は、側面から円孔26Hに向かって連通する構成であってもよい。この構成であっても、連通孔を介して空気通路28から円孔26H(下側開口28B)へ空気を流すことができるとともに、堰部50Bによって水WFを吸収させることができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用シートについて、
図8~
図10を用いて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同様の構成部については便宜上同一符号を付して適宜説明を省略する。
【0066】
(構成)
シートクッション12Aのクッションパッド22内には、空気通路44(
図3参照)が設けられている。空気通路44は、その下壁部44Uの構成の一部が第1実施形態の空気通路28(
図1~
図5参照)とは異なるが、その他は第1実施形態の空気通路28と実質的に同様であるため実質的に同様の構成部については同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
図8には、シートクッション12Aの一部を分解した分解斜視図が示されている。
図8に示されるように、シートクッション12Aは、トリムカバー24、クッションパッド22、裏面シール材46、FCプレート60、クッションスプリング21及びファン30を含んで構成されている。
【0068】
トリムカバー24、クッションパッド22、クッションスプリング21及びファン30は、第1実施形態と同様の構成とされている。
【0069】
裏面シール材46は、第1実施形態における裏面シール材26に対して、さらに水抜き用の水抜き孔48を備えている点で第1実施形態の裏面シール材26とは異なるが、その他は第1実施形態の裏面シール材26と実質的に同様の構成とされる。FCプレート60は、裏面シール材46を補強する樹脂板であり、第1実施形態におけるFCプレート50(
図2参照)に代えて配置されている。空気通路44の下壁部44U(いずれも
図3参照)は、裏面シール材46の一部によって構成されている。なお、
図3に点線で示される空気通路44においてクッションパッド22(
図8参照)の下面側に形成されている下側開口44Bは、
図8に示される裏面シール材46の円孔46HとFCプレート60の孔部60Hとで構成されている。
【0070】
図9には、FCプレート60及びその周囲部を拡大して上方側から見た状態の図が示されている。なお、
図9の部分拡大図は、シート上方側かつ若干斜め前方側から見た状態で拡大している。また、
図9では、空気通路44の平面視での外形を二点鎖線で図示している。
図10には、
図9のB-B線に沿って切断した状態を拡大した断面図が示されている。
図8及び
図9に示されるように、空気通路44の下壁部44Uにはスリット状に形成された水抜き孔62が設けられている。
【0071】
図9に示されるように、水抜き孔62は、シート上下方向に見て空気通路44の延在方向に対して交差する方向を長手方向としている。水抜き孔62は、左右互い違いになるように、空気通路44の延在方向に沿って並んでおり、それぞれ空気通路44の幅方向中央部を含む位置に形成されている。水抜き孔62の位置は、水抜き孔62から下方側に排水した場合に図示しないワイヤハーネス(特にワイヤハーネスの端末部分(チューブで被覆されていないコネクタ、分岐点))が被水しにくい位置に設定されている。
【0072】
また、
図10に示されるように、裏面シール材46には、水抜き孔62に対応する部分及びその周囲部を含む範囲で貫通した水抜き用の水抜き孔48が貫通形成されている(
図8参照)。なお、
図9に示されるように、FCプレート60の前端側には、裏面シール材46の水抜き孔48の前縁部の一部と共に水抜き孔62(便宜上、既述した水抜き孔62と同一符号を付す)を形成している部分がある。
【0073】
図9の部分拡大図に示されるように、水抜き孔62の長辺部の縁部には堰部64が設けられている。堰部64は、水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有し、圧縮フェルト等の集積材によって構成されている。堰部64は、空気通路44に浸入した水が水抜き孔62から排出できなかった場合に排出されなかった水WFを吸収する。より具体的に説明すると、
図9の部分拡大図及び
図10に示されるように、堰部64は、水抜き孔62の長辺部の縁部のうち下側開口44B(
図9参照)に近い側の縁部においてシート上方側に延在される。
【0074】
(作用・効果)
次に、第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0075】
第2実施形態の車両用シート10は、空気通路44の下壁部44U及びFCプレート60に形成された1以上の水抜き孔48、62の各々と孔部60Hとの間であって、1以上の水抜き孔48、62の各々の縁部に、水分を吸収する吸収性を有するとともに自立可能な剛性を有する堰部64が設けられている。そのため、水抜き孔48、62によって水WFが排出しきれなかった場合に、排出されなかった水WFを堰部64によって吸収することができる。これにより、孔部60H及び下側開口44Bへの水WFの流入が防止されるので、ファン30への水WFの浸入は防止される。
【0076】
[実施形態の補足説明]
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
10 車両用シート
22 クッションパッド
28 空気通路
28A 上側開口
28B 下側開口
28U 空気通路の下壁部
30 ファン(送風機)
44 空気通路
44B 下側開口
44U 空気通路の下壁部
48 水抜き孔
50 FCプレート(補強板)
50B 堰部(水吸収堰部)
50K 連通孔
50H 孔部
52 堰部
52A 堰部(水吸収堰部)
60 FCプレート(補強板)
60H 孔部
62 水抜き孔
64 堰部
WF 水