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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159317
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】貼り合わせ工法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20241031BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
G09F9/00 342
G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075232
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 基誠
(72)【発明者】
【氏名】平本 久人
(72)【発明者】
【氏名】森田 久人
【テーマコード(参考)】
2H189
5G435
【Fターム(参考)】
2H189AA53
2H189AA64
2H189CA31
2H189HA11
2H189HA12
2H189LA02
2H189LA07
2H189LA25
2H189LA30
5G435AA14
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF05
5G435FF13
5G435GG43
5G435HH05
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】ダム材の塗布スペースがほぼ無いような狭額縁のディスプレイモジュールでもダム&フィル貼り合わせができ、貼り合わせ後の接着層の品質及び高信頼性の確保を可能にする。
【解決手段】平面視で矩形状となる前面パネル及び表示デバイスを接着剤で貼り合わせる貼り合わせ工法であって、表示デバイスの周囲4辺に接して配置される第1治具部材を、表示デバイスの背面に配置されて表示デバイスの面積より広い面積を有する第2治具部材の上に配置し、第1治具部材の上部にかつ表示デバイスの周囲を囲む第1接着剤を塗布し、第1接着剤の内側でありかつ表示デバイスと前面パネルとの間を第2接着剤で満たし、第1接着剤及び第2接着剤を硬化し、硬化の後に第1治具部材と第2治具部材とを取り外す。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で矩形状となる前面パネル及び表示デバイスを接着剤で貼り合わせる貼り合わせ工法であって、
前記表示デバイスの周囲4辺に接して配置される第1治具部材を、前記表示デバイスの背面に配置されて前記表示デバイスの面積より広い面積を有する第2治具部材の上に配置し、
前記第1治具部材の上部にかつ前記表示デバイスの周囲を囲む第1接着剤を塗布し、
前記第1接着剤の内側でありかつ前記表示デバイスと前記前面パネルとの間を第2接着剤で満たし、
前記第1接着剤及び前記第2接着剤を硬化し、前記硬化の後に前記第1治具部材と前記第2治具部材とを取り外す、
貼り合わせ工法。
【請求項2】
前記前面パネルは、前記表示デバイスからの映像を視認可能とする透過部と、前記透過部の周囲に設けられかつ前記透過部の幅よりも小さい幅を有する非透過部と、を有し、
前記第1接着剤は、前記第1治具部材の上部と前記非透過部の下部とを接着する、
請求項1に記載の貼り合わせ工法。
【請求項3】
前記第1治具部材は、前記表示デバイスと隙間なく接している、
請求項1に記載の貼り合わせ工法。
【請求項4】
前記表示デバイスの映像表示領域の上面に、前記映像表示領域の面積より広い面積を有する偏光板が載置され、
前記第1治具部材の上面は、前記偏光板が載置される前記表示デバイスの前記映像表示領域の上面より低い、
請求項1記載の貼り合わせ工法。
【請求項5】
前記表示デバイスの端部側でありかつ前記第2治具部材上に、前記第2接着剤を前記表示デバイスの底面への流入を遮る液だまり部が設けられる、
請求項1に記載の貼り合わせ工法。
【請求項6】
前記表示デバイスの端部の上面の高さを示す第1高さ、前記第1治具部材の上面の高さを示す第2高さをそれぞれ測定し、
前記第1高さと前記第2高さとの差分を導出し、前記導出された前記差分の値を前記第1接着剤の少なくとも一方の高さとして設定する、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の貼り合わせ工法。
【請求項7】
前記第1接着剤はダム材、前記第2接着剤はフィル材である、
請求項1に記載の貼り合わせ工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テレビジョン装置又はやモニタ等のディスプレイに使用される液晶モジュール或いは有機ELディスプレイモジュールとカバーパネルとの貼り合わせ工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画素がマトリクス状に配列された画像表示領域内に有機EL膜及び電極のパターン、並びに信号線、走査線及びスイッチング素子を備えるアレイ基板と、このアレイ基板に貼り合わされる対向基板と、画像表示領域を囲むように配置されるダム材と、アレイ基板及び対向基板とダム材とにより囲まれる空隙を満たすフィル材とを備える有機EL表示装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-79580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、従来の事情に鑑みて案出され、ダム材の塗布スペースがほぼ無いような狭額縁のディスプレイモジュールでもダム&フィル貼合ができて、貼り合わせ後の接着層の品質および高信頼性の確保を可能にする貼り合わせ工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、平面視で矩形状となる前面パネル及び表示デバイスを接着剤で貼り合わせる貼り合わせ工法であって、前記表示デバイスの周囲4辺に接して配置される第1治具部材を、前記表示デバイスの背面に配置されて前記表示デバイスの面積より広い面積を有する第2治具部材の上に配置し、前記第1治具部材の上部にかつ前記表示デバイスの周囲を囲む第1接着剤を塗布し、前記第1接着剤の内側でありかつ前記表示デバイスと前記前面パネルとの間を第2接着剤で満たし、前記第1接着剤及び前記第2接着剤を硬化し、前記硬化の後に前記第1治具部材と前記第2治具部材とを取り外す、貼り合わせ工法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ダム材の塗布スペースがほぼ無いような狭額縁のディスプレイモジュールでも、ダム&フィル貼り合わせができて、貼り合わせ後の接着層の品質および高信頼性の確保を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一般的なダム&フィル工法で貼り合わせされたディスプレイモジュールの断面図
図2】一般的なダム&フィル貼合で貼り合わせされた狭額縁ディスプレイモジュールの断面図
図3】ダム&フィル貼合で貼り合わせを狭額縁ディスプレイモジュールに適用する際の課題の説明図
図4】実施の形態1に係る狭額縁ディスプレイモジュールの基本構造例を示す概略断面図
図5】実施の形態1に係る接着剤硬化プロセスの概略断面図
図6】実施の形態1に係る治具部材取り外しプロセスの概略断面図
図7】実施の形態1に係る狭額縁ディスプレイモジュールでのフィル材の浸透例を示す概略断面図
図8】実施の形態2に係る狭額縁ディスプレイモジュールの基本構造例を示す概略断面図
図9】実施の形態2の変形例に係る狭額縁ディスプレイモジュールの基本構造例を示す概略断面図
図10】実施の形態1に係る狭額縁ディスプレイモジュールにおいて一端側が反った形状となった表示デバイスをダム&フィル工法で貼り合わせする際の概略断面図
図11】高さの差分値の計測例を示す概略断面図
図12】実施の形態3に係る狭額縁ディスプレイモジュールの基本構造例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
スマートフォン等の携帯電話、タブレット端末を代表とする昨今のモバイル端末には、タッチパネルとディスプレイデバイスとの両方が搭載されているケースが多い。ここでいうディスプレイデバイスとは、例えば液晶モジュール、有機Electroluminescence(EL)モジュールが代表的である。従来ではこのタッチパネルとディスプレイデバイスとはそれぞれ別部品となっており、モバイル端末の筐体内部にディスプレイデバイスが取り付けられていた。そして、ディスプレイデバイスの前面側に外装の一部を兼ねてタッチパネルが搭載され、これらの2つの部品の間には空気層が介在するのが一般的であった。
【0009】
しかし昨今、小型のディスプレイを中心にこれらのタッチパネルとディスプレイデバイスとを光学接着剤で接着する技術(以下、「ダイレクトボンディング」と称する場合がある)が確立され、既に市場にも多くの製品が普及を始めている。ダイレクトボンディングのメリットとしては、反射の抑制、輝度向上、強度向上、結露防止、粉塵混入防止等の様々なメリットが見込まれる。
【0010】
しかし、一方で、接着するタッチパネル、ディスプレイデバイスの形状及び仕様が多様化してきており、その多様化に伴って多種の貼り合わせ工法が提案されている。材料面でみると、接着に使われる材料も多種存在している。例えばOptical Clear Adhesive(OCA)と呼ばれる高透過の両面粘着剤、Optical Clear Resin(OCR)と呼ばれる高透過の液体樹脂、ハイブリッドOCRと呼ばれる半硬化させて貼り合わせるための液体樹脂、等が存在している。一方、貼り合わせ工法としても、大気環境下でOCAを用いてローラー加圧することにより貼り合わせするローラー貼合工法、OCRでダム材料とフィル材料の2種類を用いることで真空環境下で空気を抜きながら貼り合わせするダム&フィル工法がある(例えば、特許文献1参照)。特に後者の真空環境下で貼り合わせする工法は、気泡が入りにくく、入ったとしても後のプロセスで消失しやすいといったメリットがあることが知られている。このため、ダム材料の高さを自由に調整することにより接着層の厚みを自在にコントロール可能となり、高信頼性の貼り合わせが可能で、昨今、自動車業界等の製品信頼性が重視される業界の多くの製造業者で採用されているという実情がある。
【0011】
一般的に、ダム&フィル工法は大型吋の貼り合わせに向いていると言われている。その理由は、ダム材料(以下、「ダム材」と略記する場合がある)で接着層の厚さを自在に調整することができるからである。大型吋になればなるほど。タッチパネルとディスプレイデバイスとを貼り合わせた際の接着層の信頼性が課題になる。ダム&フィル工法で用いられる接着剤料(例えばOCR)は通常、非常に柔らかく貯蔵弾性率の低い材料が選定される。しかし、接着層を薄く設定してしまうと、タッチパネルとディスプレイデバイスとの熱膨張、熱収縮の差により、加熱又は冷却した際に、タッチパネルとディスプレイデバイスとの間の接着層に負荷がかかり、接着層の剥離等の問題が発生する。そのため、大型吋になればなるほど、接着層を厚く設定し貼り合わせる工法が通常よく用いられる。したがって、ダム&フィル工法ではダム材を厚く塗ることにより接着層厚みをコントロールできるため、大型吋を中心に多く用いられている。しかし、この工法にはデメリットも存在している。
【0012】
例えば昨今、デザイン性の観点から、スマートフォン、タブレット等の最終製品において狭額縁のディスプレイが多く普及してきている。通常ダム材はディスプレイデバイスの画像表示エリア(一般的には「アクティブエリア」と呼ばれる)の外側の領域に塗布される。しかし、狭額縁ディスプレイになると、この外側領域が従来のディスプレイデバイスの画像表示エリアの外側領域よりも狭くなり、ダム材を塗布するスペースがなくなる又は限りなく狭くなる。ダム材としてもフィル材料(以下、「フィル材」と略記する場合がある)と屈折率が近いものが選定されることが多く、ダム材とフィル材との境界エリアは目視では見えないことが多いため、画面表示エリアの外側ぎりぎりまでダム材を近づけて塗布する工法でなんとか製造している場合もある。しかしながら、異なる2つの材料(ダム材、フィル材)が合わさる面では、製造中に気泡が入ったり、製品の信頼性試験でその境界界隈で剥離等の外観不良が発生したりする。このため、製品側としては不具合が発生する可能性が高くなる。つまり、これまでのダム&フィル工法は狭額縁のディスプレイの製造に不向きな工法と言え、ダム材を塗布するスペースの確保が難しいため、タッチパネルとディスプレイデバイスとの貼り合わせには適用が困難であるという課題があった。
【0013】
そこで、以下の実施の形態では、ダム材の塗布スペースが無いような狭額縁のディスプレイモジュールでもダム&フィル貼合ができて、貼り合わせ後の接着層の品質および高信頼性の確保を可能にする貼り合わせ工法の例を説明する。
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る貼り合わせ工法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0015】
まず、本開示に係る貼り合わせ工法の実施の形態(本実施の形態)を具体的に説明する前に、図1図3を参照して、一般的なダム&フィル工法で貼り合わせされたディスプレイモジュール、ダム&フィル工法で貼り合わせされた狭額縁ディスプレイモジュールの例を説明する。図1は、一般的なダム&フィル工法で貼り合わせされたディスプレイモジュール100の断面図である。図2は、一般的なダム&フィル貼合で貼り合わせされた狭額縁ディスプレイモジュール200の断面図である。図3は、ダム&フィル貼合で貼り合わせを狭額縁ディスプレイモジュール300に適用する際の課題の説明図である。
【0016】
なお、以下の説明において、ディスプレイの上下左右方向は各添付図面に示した方向とする。つまり、上下方向はディスプレイの厚み方向を示し、左右方向はディスプレイの面方向を示す。また、図2及び図3の説明において、図1又は図2の説明と重複する要素については同一の符号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0017】
2.一般的なダム&フィル工法で貼合されたディスプレイモジュール
図1に示すディスプレイモジュール100は、前面パネル101と、表示デバイス103と、偏光板105と、フィル材106と、ダム材107と、により構成される。
【0018】
前面パネル101は、例えばタッチパネル、カバーガラス、樹脂製のカバーレンズ等である。
【0019】
表示デバイス103は、液晶パネル、有機ELディスプレイ、microLEDディスプレイ等であり、ベゼル部材108により前面側の一部及び側面全周が覆われている。図1に示す前面パネル101及び表示デバイス103は、ダム&フィル工法により、ダム材107及びフィル材106によって貼り合わせされている。一般的にはダム材107もフィル材106も光学接着剤と呼ばれる種類の高透過接着剤が使われることが多く、材料としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂が主流である。
【0020】
ダム&フィル工法では、まずダム材107を平面視で矩形状となる表示デバイス103の映像表示領域(つまりアクティブエリア104)上に塗布し、その次にダム材107で囲われたエリアの中にフィル材106を塗布し、上から前面パネル101を下して貼り合わせする。なお、ダム&フィル工法自体は既知の技術であるので、製造プロセスの詳細説明は割愛する。
【0021】
図1の断面構造例で特徴的であるのは、ダム材107の位置である。前面パネル101は、その背面(言い換えると、下側)にシルク印刷処理が施されたシルク印刷部102(非透過部)と、表示デバイス103の映像を見るための透過部109と、を備えている。一般的なモニタ製品はこの形態をとっていることが多い。また、表示デバイス103は、アクティブエリア104という映像を表示する部分と、その上にアクティブエリア104より広い面積を有する偏光板105とを備える。偏光板105は、アクティブエリア104の上に配置されている。
【0022】
ダム材107は、この偏光板105の上にであって、かつ、アクティブエリア104よりさらに外周側で、なおかつシルク印刷部102の裏側(言い換えると、下側)に塗布される。つまり、ダム材107は、外部から目視では見えない位置に塗布される。これは、ダム材107とフィル材106とが別々の材料で屈折率が異なる材料である(但し、比較的近い材料が選ばれる)ため、ダム材107とフィル材106との接触界面が目視で確認できるケースがあるからである。したがって、ダム材107とフィル材106との接触界面がアクティブエリア104内に入ってしまうと、画質品位を落としてしまう。
【0023】
3.一般的なダム&フィル工法で貼合された狭額縁ディスプレイモジュール
昨今、デザイン面の観点から、モニタ部材の狭額縁化が進んできており、そういった部材にダム&フィル工法を適用するのは非常に難しくなってきており、その構造は図1とは異なった形態になってきている。そのダム&フィル工法で貼り合わせされた狭額縁化が進んだディスプレイモジュールの例について図2及び図3を用いて説明する。
【0024】
図2に示す狭額縁ディスプレイモジュール200は、図1に示すディスプレイモジュール100と同様に、前面パネル101と、表示デバイス103と、偏光板105と、フィル材106と、ダム材107と、により構成される。同様に、図3に示す狭額縁ディスプレイモジュール300は、図1に示すディスプレイモジュール100又は図2に示す狭額縁ディスプレイモジュール200と同様に、前面パネル101と、表示デバイス103と、偏光板105と、フィル材106と、ダム材107と、により構成される。
【0025】
例えば狭額縁ディスプレイモジュール200では、図1のディスプレイモジュール100に比べて、前面パネル101のシルク印刷部102の額縁幅201(言い換えると、前面パネルの額縁幅)と、表示デバイス103の額縁部202と、の両方が狭くなる。なお、表示デバイス103の額縁部202は、アクティブエリア104より外側を意味する。
【0026】
図2の狭額縁ディスプレイモジュール200では、図1のディスプレイモジュール100と異なり、偏光板105の上にダム材107を塗布する十分なスペースがない。このため、図2の狭額縁ディスプレイモジュール200では、前面パネル101と表示デバイス103とを貼り合わせする際のダム材107の位置は、偏光板105の外周端部の一部と、表示デバイス103のベゼル部材108の偏光板105側の一部との両方にかかった位置となる。ここで、ベゼル部材108は通常テープ或いは金属であることが多く、特に小型吋についてはテープが主流である。この際ベゼル部材108がテープである場合、テープの皺等によりダム材107の高さが安定せず、接着層の厚みが均一にできず表示ムラ等の表示不具合を引き起こすことがある。また、ダム材107がベゼル部材108と偏光板105とに跨って塗布されているので、3つの異なる材料が混在しているエリアが存在し、各部材の熱膨張量の差により、熱をかけた信頼性試験等で剥離或いは亀裂の輝点になる等の製品品質上の不具合が発生する原因になる。また一方で、貼り合わせ工法内ではダム材107が一部だけ高さが高いことにより、ダム材107の外にフィル材106が決壊し、部材の汚れ或いは破損等の製造上の問題も引き起こす。
【0027】
また、この図2の状態よりもさらに狭額縁化が進んだ状態について、図3の模式図を使って説明する。
【0028】
図3の狭額縁ディスプレイモジュール300では、図2の狭額縁ディスプレイモジュール200と比べて、シルク印刷部102の額縁幅201及び表示デバイス103の額縁部202の額縁幅がさらに狭くなっている。有機ELディスプレイ等では、図3に示す構造例が採用されていることが多いことが知られている。図3ではベゼル部材108が設けられている例を示しているが、場合によってはベゼル部材108が省略されていることもある。図3の構造例では、そもそもダム材107を塗布する物理的スペースがなく、ダム材107が表示デバイス103から殆どはみ出るような状態となる。このため、狭額縁ディスプレイモジュール300の製造にあたり、ダム&フィル工法は適用できないという課題があった。
【0029】
(実施の形態1)
次に、図1図3の説明を踏まえ、本開示に係る貼り合わせ工法の実施の形態1について、図4図6を参照して説明する。図4は、実施の形態1に係る狭額縁ディスプレイモジュール400の基本構造例を示す概略断面図である。図5は、実施の形態1に係る接着剤硬化プロセスの概略断面図である。図6は、実施の形態1に係る治具部材取り外しプロセスの概略断面図である。また、図4図6の説明において、図1図3の説明と重複する要素については同一の符号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0030】
図4に示す狭額縁ディスプレイモジュール400は、前面パネル101と、表示デバイス103と、偏光板105と、フィル材106と、ダム材107と、により構成される。なお、ダム材107は省略されても構わない。また、狭額縁ディスプレイモジュール400においても、図3の構造例と同様に、図2の狭額縁ディスプレイモジュール200と比べて、シルク印刷部102の額縁幅201及び表示デバイス103の額縁部202の額縁幅がさらに狭くなっている。
【0031】
4.実施の形態1に係るダム&フィル工法の詳細手順
図4に示す狭額縁ディスプレイモジュール400において、狭額縁の前面パネル101と狭額縁の表示デバイス103とを貼り合わせるダム&フィル工法(より具体的には、ダム&フィル貼り合わせ工法)を説明する。
【0032】
実施の形態1では、表示デバイス103の外周周りに第1治具部材401が配置されるとともに、表示デバイス103の裏側(言い換えると、下側)に第2治具部材402が配置されている。第1治具部材401は第2治具部材402と勘合している。第1治具部材401の上面403は、表示デバイス103のアクティブエリア104の上側に配置されている偏光板105の上面404と同じ高さ、若しくはその高さよりも低くなっている。また、第1治具部材401と表示デバイス103の外周側面とは隙間なく接していることが好ましい。このような隙間を無くすためには、例えばバネ等による押圧、弾性体若しくは粘着剤による接触が考えられる。
【0033】
実施の形態1に係るダム&フィル工法による貼り合わせ工法では、以下の手順により実行される。
(手順1)表示デバイス103を2つの治具部材で取り付けるプロセス
(手順2)前面パネル101と表示デバイス103との貼り合わせプロセス
(手順3)2つの接着剤を対象とした接着剤硬化プロセス
(手順4)2つの治具部材の取り外しプロセス
【0034】
以下、それぞれのプロセスを順に説明する。
【0035】
(手順1)表示デバイス103を2つの治具部材で取り付けるプロセス
表示デバイス103が第1治具部材401及び第2治具部材402に取り付けられる。具体的には、第1治具部材401により表示デバイス103の外周側面が保持され、その状態で第1治具部材401及び表示デバイス103が第2治具部材402上に配置される。表示デバイス103はアクティブエリア104を備えており、表示デバイス103の上側にはアクティブエリア104より広い面積を有する偏光板105が配置されていることは図1図3の構造例と変わりない。
【0036】
(手順2)前面パネル101と表示デバイス103との貼り合わせプロセス
(手順1)の後、前面パネル101と表示デバイス103とがダム&フィル工法により貼り合わせされる。この時、ダム材107は、シルク印刷部102の裏側(言い換えると、下側)に塗布されることは図1図3の構造例と共通している。しかし、ダム材107は、偏光板105の上でもベゼル部材108の上でもなく、第1治具部材401の上に塗布されることを特徴としている。(手順2)のダム&フィル工法による貼り合わせプロセスでは、より具体的には、先にダム材107が塗布される。その後、ダム材107により囲まれたエリア内にフィル材106が塗布される。これにより、前面パネル101と表示デバイス103とが貼り合わせされる。
【0037】
(手順3)2つの接着剤を対象とした接着剤硬化プロセス
(手順2)によってダム&フィル工法により前面パネル101と表示デバイス103とが貼り合わせされた後、2つの接着剤(つまり、ダム材107、フィル材106)の硬化プロセスに移る。その際も第1治具部材401及び第2治具部材402は取り付いた図4の状態でハンドリングが行われ、接着剤硬化プロセスが行われる(図5参照)。
【0038】
接着剤硬化プロセスは、前面UV硬化装置501及び側面UV硬化装置502により実現される。前面UV硬化装置501は前面パネル101の透過部109に対向する位置に配置され、1対の側面UV硬化装置502のそれぞれが前面パネル101のシルク印刷部102を主な被写体として前面パネル101の外周側面に対向する位置に配置される。
【0039】
前面UV硬化装置501は、照射したUV(つまり紫外光)により、前面パネル101の透過部109を通してフィル材106を硬化させることにより、フィル材106が接着する部材同士を固めることを目的とした装置である。側面UV硬化装置502は、照射したUV(つまり紫外光)により、前面パネル101のシルク印刷部102の裏側部分(つまり、前面UV硬化装置501からUVが照射されない部分)を硬化させることにより、前面UV硬化装置501からUVが照射されないシルク印刷部102の部分とフィル材106とを固めることを目的とした装置である。
【0040】
ここで、第1治具部材401の上面403が偏光板105の上面404より下にあることで、側面UV硬化装置502から照射されたUVが奥まで届く(言い換えると、浸透する)ため、シルク印刷部102の背面側にわたって接着剤の硬化を安定させる効果を得ることができる。なお、第1治具部材401は、透明体等で、UVを透過させる材料であることが好ましい。側面からのUVは狭い隙間に照射しないといけないため、第1治具部材401がUVを透過することでより多くのUV光をシルク印刷部102の背面側の隙間に照射する事が可能になり、ひいては接着剤(ダム材107、フィル材106)の硬化不良を抑制する効果を得ることが可能である。
【0041】
なお、接着剤(ダム材107、フィル材106)にUV硬化型の樹脂を用いた場合、この2種類の装置(前面UV硬化装置501、側面UV硬化装置502)で接着層を固めることが好ましい。しかし、常温硬化型の接着剤を用いた場合、これらの装置(前面UV硬化装置501、側面UV硬化装置502)を使わない場合もあり得る。いずれの場合においても、実施の形態1に係る貼り合わせ工法では、第1治具部材401及び第2治具部材402に表示デバイス103を位置固定しつつ、その状態でダム&フィル工法により前面パネル101と表示デバイス103とが貼り合わせされた状態で接着剤(つまり、ダム材107、フィル材106)を硬化させることを特徴としている。
【0042】
(手順4)2つの治具部材の取り外しプロセス
(手順3)の後、2つの治具部材の取り外しプロセスが実行される。このプロセスは、接着剤の硬化後に貼り合わせされた狭額縁ディスプレイモジュール400を第1治具部材401及び第2治具部材402から取り外す工程である。
【0043】
この工程において、第1治具部材401は、作業者により、ダム材107が塗布された状態で狭額縁ディスプレイモジュール400から切り離される、若しくはダム材107が狭額縁ディスプレイモジュール400に残った状態で取り外しされる。ダム材107とフィル材106との接着力がダム材107と第1治具部材401との接着力より強い場合、ダム材107が狭額縁ディスプレイモジュール400の側に残ることが多い。また逆にフィル材106にゲル状の材料が選定されている場合、ダム材107と第1治具部材401の接着力の方が強くなり、ダム材107は第1治具部材401に接着した状態で狭額縁ディスプレイモジュール400から分離する。
【0044】
最終製品の設計としてダム材107が最終製品の筐体内に残してもよい場合、第1治具部材401を離型性の高い材料(例えば、シリコンやテフロン(登録商標))を選定したり、離型剤を第1治具部材401の上に塗ったりすることにより、ダム材107と第1治具部材401との間が分離し、ダム材107を最終製品の筐体内に残すことが可能である。通常ダム材107はダム&フィル工程を行うために製造上必要な材料であり、狭額縁ディスプレイモジュール400の最終製品の性能に影響を与えるものではない。このため、ダム材107が最終製品の筐体に残る状態であってもよいし残存していなくても良く、設計者が適宜決めれば良い事項で、実施の形態1において限定するものではない。また、第1治具部材401と第2治具部材402とは同時に切り離しされる。第1治具部材401と第2治具部材402とは切り離しできる構造にすることで狭額縁ディスプレイモジュール400からの分離が格段に実施しやすく、かつ接着剤の清掃がしやすくなるという効果が得られる。
【0045】
以上により、実施の形態1に係る貼り合わせ工法によれば、狭額縁のディスプレイ部材であってもダム&フィル工法を実施することができ、信頼性の高い製品を得られる効果がある。
【0046】
(実施の形態2)
次に、本開示に係る貼り合わせ工法の実施の形態2について、図7図9を参照して説明する。図7は、実施の形態1に係る狭額縁ディスプレイモジュール400でのフィル材の浸透例を示す概略断面図である。図8は、実施の形態2に係る狭額縁ディスプレイモジュールの基本構造例を示す概略断面図である。図9は、実施の形態2の変形例に係る狭額縁ディスプレイモジュールの基本構造例を示す概略断面図である。また、図7図9の説明において、図1図6の説明と重複する要素については同一の符号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0047】
まず、図7を参照して、実施の形態1に係る貼り合わせ工法に対して更なる改善策を検討した際に起こり得る事象を説明する。
【0048】
実施の形態1に係る貼り合わせ工法では、ダム材107を塗布した後にフィル材106を塗布する工程がある(手順2参照)。ここで、ダム材107の周囲にフィル材106を塗布した際、毛細管現象によって、表示デバイス103と第1治具部材401との間の隙間701にフィル材106が垂れこみ、かつ表示デバイス103と第2治具部材402との間の隙間702にまで浸透する可能性がある。
【0049】
これはフィル材106の粘度に依存することが多い。例えば、フィル材106の粘度が低ければ低いほど、上述した浸透の現象が発生する可能性が高くなる。この浸透の現象が起こった際、最終的に第1治具部材401と第2治具部材402とを狭額縁ディスプレイモジュール400から分離させる工程で、フィル材106の表面張力により、第1治具部材401と第2治具部材402とが分離させにくくなり、分離させる際に狭額縁ディスプレイモジュール400に外的負荷を与えてしまう可能性がある。特に昨今の狭額縁ディスプレイを構成する部品には薄型のものが多く、外的負荷によりダメージを受けやすい構造になっている。
【0050】
そこで、以下の実施の形態2では、実施の形態1に係る貼り合わせ工法に基づいて製造される狭額縁ディスプレイモジュールにおいて、上述した浸透の減少が生じ難くする構造例を説明する。
【0051】
5.実施の形態2に係るダム&フィル工法の詳細手順
実施の形態2に係るダム&フィル工法の詳細手順は、実施の形態1に係るダム&フィル工法の詳細手順と殆ど同一である。以下、実施の形態1とは異なる内容について詳細に説明する。
【0052】
図8に示す狭額縁ディスプレイモジュール500は、前面パネル101と、表示デバイス103と、偏光板105と、フィル材106と、ダム材107と、により構成される。なお、ダム材107は省略されても構わない。また、狭額縁ディスプレイモジュール500においても、図3又は図4の構造例と同様に、図2の狭額縁ディスプレイモジュール200と比べて、シルク印刷部102の額縁幅201及び表示デバイス103の額縁部202の額縁幅がさらに狭くなっている。
【0053】
実施の形態2では、実施の形態1と異なり、第2治具部材402に液だまり部801が設けられている。液だまり部801は、平面視で第2治具部材402の一部を四角柱状に切り欠くことにより形成される凹部として設けることが可能である。
【0054】
図8の例では、液だまり部801が第2治具部材402に彫り込む形で設けられている。液だまり部801は、例えば表示デバイス103の外周端部側の近いエリアに設けられることが好ましい。このように構成することにより、表示デバイス103と第1治具部材401との間の隙間701を伝って流れてきたフィル材106が液だまり部801内で溜まることが可能となる。したがって、液だまり部801がフィル材106をせき止める構造として機能し、表示デバイス103と第2治具部材402との間の隙間702にフィル材106が流れ込むことを防止でき、第1治具部材401と第2治具部材402との取り外し工程(手順4参照)で表示デバイス103に外的負荷をかけることなく取り外すことが可能となる。
【0055】
図9に示す狭額縁ディスプレイモジュール600は、図8に示す狭額縁ディスプレイモジュール500と同様に、前面パネル101と、表示デバイス103と、偏光板105と、フィル材106と、ダム材107と、により構成される。なお、ダム材107は省略されても構わない。また、狭額縁ディスプレイモジュール600においても、図3又は図4の構造例と同様に、図2の狭額縁ディスプレイモジュール200と比べて、シルク印刷部102の額縁幅201及び表示デバイス103の額縁部202の額縁幅がさらに狭くなっている。
【0056】
また、実施の形態2に係る液だまり部として、図8に示す例に限定せず、例えば図9に示す液だまり部901のような設け方をしても良い。
【0057】
図9の例では、第2治具部材402に複数の段差(例えば左右それぞれに2つの段差)を形成しておき、最外周の段(つまり最も下側の段)の面上に第1治具部材401を載置し、内側の段差部分を液だまり部901にする構造である。図9の構造例においても表示デバイス103と第1治具部材401との間の隙間701を伝って流れてきたフィル材106が表示デバイス103と第2治具部材402との間の隙間702にフィル材106が流れ込むことを防止する効果があり、第1治具部材401と第2治具部材402の取り外し工程(手順4参照)で表示デバイス103に外的負荷をかけることなく取り外すことが可能となる。
【0058】
以上により、実施の形態2に係る貼り合わせ工程によれば、製造工程における外的負荷に起因する不良を抑制する効果を得ることができる。
【0059】
(実施の形態3)
次に、本開示に係る貼り合わせ工法の実施の形態3について、図10図12を参照して説明する。図10は、実施の形態1に係る狭額縁ディスプレイモジュール400において一端側が反った形状となった表示デバイスをダム&フィル工法で貼り合わせする際の概略断面図である。図11は、高さの差分値の計測例を示す概略断面図である。図12は、実施の形態3に係る狭額縁ディスプレイモジュール700の基本構造例を示す概略断面図である。また、図10図12の説明において、図1図9の説明と重複する要素については同一の符号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0060】
まず、図10を参照して、実施の形態1に係る貼り合わせ工法に対して更なる改善策を検討した際に起こり得る事象を説明する。例えば実施の形態1に係る貼り合わせ工法を使用する際に、表示デバイス103の一端側が反ってしまったものを使用する可能性がある。これは、例えば表示デバイス103の製造ばらつき等に起因するものであって不可避な課題とも言える。
【0061】
図10に示すように、表示デバイス103の一端側が反ってしまっている場合、ダム材107の高さは第2治具部材402及び第1治具部材401のみの高さによって所定の高さになっている。このため、反っている一端側(右側)で接着層(ダム材107、フィル材106)の厚みh1が、反っていない他端側(左側)の接着層(ダム材107、フィル材106)の接着層の厚みh2よりも薄くなるという現象が発生する。
【0062】
ダイレクトボンディング技術の特にダム&フィル工法については、接着層の厚みをコントロールし、かつ厚い接着層を構成でき、高信頼性の接着ができることがメリットである。しかしながら、部分的に接着層が薄いところができると、信頼性低下につながる。したがって、反った表示デバイス103の貼り合わせをする際、実施の形態1に係る貼り合わせ工法を用いるとデメリットが発生する。
【0063】
そこで、以下の実施の形態3では、このデメリットを解決し、反った表示デバイス103を使用する場合でも、表示デバイス103の外周側面の全域において既定の厚みを有した接着層を構成する例を説明する。
【0064】
6.実施の形態3に係るダム&フィル工法の詳細手順
実施の形態3に係るダム&フィル工法の詳細手順は、実施の形態1に係るダム&フィル工法の詳細手順と殆ど同一である。以下、実施の形態1とは異なる内容について詳細に説明する。
【0065】
図11において、表示デバイス103は、その一端側において部分的に反って変形している部分を有している。その状態で、表示デバイス103は、実施の形態1と同様に、第1治具部材401及び第2治具部材402に取付されている。実施の形態3では、この状態において、表示デバイス103の端部の上面1105、第1治具部材401の上面1106、の両方の高さを図る変位計1101が配置されている。なお、ここでいう高さとは、例えば第2治具部材402の底面からの高さを示している。
【0066】
変位計1101はレーザー変位計等の非接触型が好ましい。例えばレーザー変位計の場合、表示デバイス103の端部の上面1105の高さは、変位計1101から照射されたレーザー光1103の往路及び復路の時間和とレーザー光1103の速度とに基づいて測定される。同様に、第1治具部材401の上面1106の高さは、変位計1101から照射されたレーザー光1104の往路及び復路の時間和とレーザー光1104の速度とに基づいて測定される。これにより、部分的に反っている表示デバイス103の一端部と第1治具部材401との間の高さの差(厚みh3)の情報を導出することが可能となる。
【0067】
なお、レーザー変位計ではない場合、接触型の変位計等も可能であるが、実施の形態3では変位測定手段を限定するものではない。
【0068】
また、実施の形態3は、表示デバイス103と第1治具部材401との高さの差(厚みh1)は、この後に塗布されるダム材107の高さ設定に反映されることを特徴としている。つまり、この高さの差が大きければ、表示デバイス103の部分的に反っている一端側のダム材107を、その高さの差(厚みh3)だけ、反っている側のダム材107の高さ(所定の設定値)より高く塗布するというように、フィードバックがかけられるようになっている。
【0069】
ダム&フィル工法において、ダム材107は通常ディスペンサーから塗布されるが、そのディスペンサーの吐出量を増やしたり、ディスペンサーの移動速度を遅くしたりする事で、より高いダムを構成することが可能である。これにより塗布および貼合された構造を図12に示す。
【0070】
図12において、右側のダム材107aは左側のダム材107より、表示デバイス103と第1治具部材401の高さの差(厚みh3)分だけ高く塗布されている。これにより、右端エリア1201でも厚い接着層を構成する事ができ、ひいては製品の信頼性を高める効果を発現する。
【0071】
以上により、実施の形態3に係る貼り合わせ工法によれば、表示デバイス103の反りを加味して、ダム&フィル工法で使用するダム材の高さを互いに同一或いは異なるように調整することが可能となる。したがって、表示デバイス103の反りに起因して接着層の厚みが薄くなる問題を解決することができ、ひいてはダム&フィル工法の特徴である高信頼性の貼り合あわせ構造を提供することも可能となる。
【0072】
以上説明したように、本開示には以下に示す技術思想が開示されている。
【0073】
<技術1>
平面視で矩形状となる前面パネル(101)及び表示デバイス(103)を接着剤(107、106)で貼り合わせる貼り合わせ工法であって、
前記表示デバイスの周囲4辺に接して配置される第1治具部材(401)を、前記表示デバイスの背面に配置されて前記表示デバイスの面積より広い面積を有する第2治具部材(402)の上に配置し、
前記第1治具部材の上部にかつ前記表示デバイスの周囲を囲む第1接着剤(107)を塗布し、
前記第1接着剤の内側でありかつ前記表示デバイスと前記前面パネルとの間を第2接着剤(106)で満たし、
前記第1接着剤及び前記第2接着剤を硬化し、前記硬化の後に前記第1治具部材と前記第2治具部材とを取り外す、
貼り合わせ工法。
【0074】
これにより、貼り合わせ工法によれば、ダム材の塗布スペースが無いような狭額縁のディスプレイモジュールでもダム&フィル貼り合わせができ、貼り合わせ後の接着層の品質及び高信頼性の確保を可能にする。
【0075】
<技術2>
前記前面パネルは、前記表示デバイスからの映像を視認可能とする透過部(109)と、前記透過部の周囲に設けられかつ前記透過部の幅よりも小さい幅を有する非透過部(102)と、を有し、
前記第1接着剤は、前記第1治具部材の上部と前記非透過部の下部とを接着する、
技術1に記載の貼り合わせ工法。
【0076】
これにより、貼り合わせ工法によれば、前面パネルの狭額縁化が進んだとしても安定して高品質に前面パネルと表示デバイスとの接着層を形成できる。
【0077】
<技術3>
前記第1治具部材は、前記表示デバイスと隙間なく接している、
技術1又は2に記載の貼り合わせ工法。
【0078】
これにより、貼り合わせ工法によれば、表示デバイスと第1の治具部材および第2の治具部材との間へのフィル材の垂れ込みを防止できる。
【0079】
<技術4>
前記表示デバイスの映像表示領域の上面に、前記映像表示領域の面積より広い面積を有する偏光板が載置され、
前記第1治具部材の上面は、前記偏光板が載置される前記表示デバイスの前記映像表示領域の上面より低い、
技術1~3のうちいずれか一項に記載の貼り合わせ工法。
【0080】
これにより、貼り合わせ工法によれば、側面からのUVの照射に対して、安定的なフィル材の硬化を提供できる。
【0081】
<技術5>
前記表示デバイスの端部側でありかつ前記第2治具部材上に、前記第2接着剤を前記表示デバイスの底面への流入を遮る液だまり部(801、901)が設けられる、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の貼り合わせ工法。
【0082】
これにより、貼り合わせ工法によれば、第2接着剤(つまりフィル材106)が表示デバイス103の底面に流れ込むことを阻止できる。
【0083】
<技術6>
前記表示デバイスの端部の上面の高さを示す第1高さ、前記第1治具部材の上面の高さを示す第2高さをそれぞれ測定し、
前記第1高さと前記第2高さとの差分を導出し、前記導出された前記差分の値を前記第1接着剤の少なくとも一方の高さとして設定する、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の貼り合わせ工法。
【0084】
これにより、貼り合わせ工法によれば、表示デバイス103が部分的に反って変形している場合であっても、表示デバイス103全体において接着層の厚みを略一定に保つことができ、製品信頼性の劣化を抑制できる。
【0085】
<技術7>
前記第1接着剤はダム材、前記第2接着剤はフィル材である、
請求項1~6のうちいずれか一項に記載の貼り合わせ工法。
【0086】
これにより、貼り合わせ工法によれば、周知のダム&フィル工法を利用できて高品質な接着層を実現できる。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、ダム材の塗布スペースがほぼ無いような狭額縁タイプの前面パネル(例えばカバーガラスもしくはタッチパネル)と表示デバイス(例えば液晶モジュール)の貼り合わせに適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
100 ディスプレイモジュール
101 前面パネル
102 シルク印刷部
103 表示デバイス
104 アクティブエリア
105 偏光板
106 フィル材
107 ダム材
108 ベゼル部材
109 透過部
200 狭額縁ディスプレイモジュール
201 額縁幅
202 額縁部
300 狭額縁ディスプレイモジュール
400 狭額縁ディスプレイモジュール
401 第1治具部材
402 第2治具部材
403 第1治具部材の上面
404 上面
500 狭額縁ディスプレイモジュール
501 前面UV硬化装置
502 側面UV硬化装置
701 隙間
702 隙間
801 液だまり部
901 液だまり部
1001 接着層厚み
1101 変位計
1102 表示デバイス端部と第1治具部材の高さの差
1103 レーザー光
1104 レーザー光
1105 表示デバイス端部の上面
1106 第1治具部材の上面
1201 ディスプレイモジュール右端エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12