(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159318
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】昆虫成分含有組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241031BHJP
【FI】
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075238
(22)【出願日】2023-04-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構「ムーンショット型農林水産研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】503303466
【氏名又は名称】学校法人関西文理総合学園
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】小倉 淳
(72)【発明者】
【氏名】永井 信夫
(72)【発明者】
【氏名】俣野 泰毅
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD76
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF07
(57)【要約】
【課題】 新規な抗酸化作用を有する昆虫類成分を含む組成物を提供する。
【解決手段】 コオロギ成分を含む、腎臓用抗酸化剤である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コオロギ成分を含む、腎臓用抗酸化剤。
【請求項2】
コオロギ成分が粉末又はエキスである、請求項1記載の抗酸化剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の抗酸化剤を含む、機能性飲食品又はサプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫成分含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来より人類は昆虫を食し、現在もアジア、中南米、アフリカ等で一般的な食品として約20億人が2000種類以上の昆虫を食している。対象昆虫は、多岐にわたり、例えば、カメムシ目(例えば、タガメ、カメムシ、セミ)、コウチュウ目(例えば、ゲンゴロウ、ガムシ、タマムシ、ゴミムシダマシ、カミキリムシ、コガネムシ、クワガタムシ科、ゾウムシ、ヨーロッパコフキコガネ)、チョウ目(カイコガ、ヤママユガ、スズメガ、ボクトウガの幼虫、ヤガの幼虫、コウモリガ、ツトガ、メイガ、モンクロシャチホコ)、ハチ目(ハチ、アリ、ツムギアリ、ハキリアリ、ミツツボアリ)、バッタ目(イナゴ、バッタ、コオロギ、ケラ)、ハエ目(ハエ、チーズバエ、ミギワバエ、カ、ユスリカ、ウシバエ属)、その他(カワゲラ、トビケラ、ヘビトンボ、シロアリ、ゴキブリ)を挙げることができる。
【0003】
ここで、昆虫類の抽出液が抗酸化作用を有することが知られている(例えば非特許文献1)。活性酸素が増え酸化ストレス状態になると、動脈硬化、がん、免疫機能の低下等、様々な病気に繋がるといわれている。このような人体の酸化を防ぐため、抗酸化作用を有する飲食品等が有効である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】オレオサイエンス 第22巻第4号(2022)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有用な抗酸化作用を有する昆虫類成分を含む組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、各種昆虫類について様々な角度から抗酸化性を検証した結果、コオロギ成分が腎臓に対して特異的に抗酸化性を有する知見を得、本発明を完成させた。具体的には、本発明は下記の通りである。
本発明(1)は、コオロギ成分を含む、腎臓用抗酸化剤である。
本発明(2)は、コオロギ成分が粉末又はエキスである、前記発明(1)の抗酸化剤である。
本発明(3)は、前記発明(1)又は(2)の抗酸化剤を含む、機能性飲食品又はサプリメントである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有用な抗酸化作用を有する昆虫類成分を含む組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例における、ICR系統マウスにおける、各種臓器での総酸化活性(TAC)の評価結果を示した図である。
【
図2】
図2は、実施例における、ICR系統マウスにおける、各種臓器でのSuperoxide Dismutase(SOD)活性の評価結果を示した図である。
【
図3】
図3は、実施例における、ICR系統マウスにおける、コオロギ粉末(HCP)の投与量による腎臓でのTAC又はSOD活性変化の評価結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本形態は、コオロギ成分を含む、腎臓用抗酸化剤である。以下、本形態に係る腎臓用抗酸化剤を詳述する。
【0010】
≪腎臓用抗酸化剤≫
本形態に係る腎臓用抗酸化剤は、コオロギ成分を含む。ここで、コオロギ成分を含むものであれば、特に限定されず、典型的には、コオロギそのものでも、コオロギの粉末や該粉末の圧着物であっても、コオロギの抽出物であってもよい。
【0011】
ここで、原料であるコオロギは、コオロギ科昆虫であれば特に限定されず、例えば、ヨーロッパイエコオロギ、フタホシコオロギ、エンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギ等が挙げられる。これらの内、ヨーロッパイエコオロギであることが好ましい。
【0012】
≪製造方法≫
本形態に係る剤は、好適には、粉末又は抽出物である。ここで、コオロギの粉末手法は、特に限定されず、例えば、コオロギを煮沸・乾燥した後、粉砕して粉末状にする手法でよい。また、コオロギの抽出手法も、特に限定されず、例えば、真空低温抽出手法であってもよい。
【0013】
≪用途≫
本形態に係る剤は、腎臓用である。本形態に係る剤は、単独で又は他の成分と共に、機能性飲食品の形態でもサプリメントの形態であってもよい。ここで、適用方法は、例えば、一日当たり最大投与量を3000 mg/kgとして1回経口摂取する。
【実施例0014】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0015】
動物舎で1週間馴化させたICR系統マウスの健康状態を確認して体重測定を行ない、0.9% 生理食塩水(SA)投与群(Control)、ヨーロッパイエコオロギ粉末(HCP)投与群(3000 mg/kg)及び陽性対照群としてAstaxanthin(AXT: 10 mg/kg)投与群の3群に分けた(3-4 匹/群)。マウスにSA、HCP又はAXTの14日間の連続経口投与を行い、体重測定、状態異常及び生死を毎日確認した。14日目の投与後に16時間以内の絶食を行い、200 mg/kgのセコバルビタールナトリウム溶液の腹腔内投与による深麻酔を誘導し、全採血を行なった後に脳、眼球、腎臓、腓腹筋、ヒラメ筋を摘出した。摘出した臓器はSAで0.5 g/ml(湿重量)に調整し、ビーズスマッシャーを用いて破砕した。その後、4℃、8000 rpmで遠心し、上清を水溶性抽出サンプルとした。各臓器の水溶性抽出サンプルの抗酸化活性は、総抗酸化活性(TAC)及びSuperoxide Dismutase(SOD)活性を、TAC assay kit及びSOD assay kit-WSTを用いて測定し、各臓器のTAC及びSOD活性はControl群の活性を100%として、各群の比活性を算出した。
【0016】
その結果、腎臓においてControl群と比較してHCP投与群でTAC活性の有意な上昇が認められた。また、脳と腎臓でControl群又はHCP投与群と比較してAXT投与群でTAC活性の有意な上昇が認められた。一方で、脳、眼球、ヒラメ筋、腓腹筋及び血清ではHCP投与によるTAC活性に差は認められなかった(
図1)。次に、全ての臓器でControl群と比較してHCP投与群でSOD活性に差が認められなかった(
図2)。統計検定にはOne-way ANOVAを用いてp <0.05を有意差有りとし、グラフのカラム内にマウスの使用個体数を示した。
【0017】
動物舎で1週間馴化させたICR系統マウスの健康状態を確認して体重測定を行ない、0.9% SA投与群(Control)、HCP: 300、1000、3000 mg/kg投与群の4群に分けた(5-6 匹/群)。マウスにSA又はHCPの14日間の連続経口投与を行い、体重測定、状態異常及び生死を毎日確認した。14日目の投与後に16時間以内の絶食を行い、200 mg/kgのセコバルビタールナトリウム溶液の腹腔内投与による深麻酔を誘導し、全採血を行なった後に腎臓を摘出した。摘出した腎臓はSAで0.5 g/ml(湿重量)に調整し、ビーズスマッシャーを用いて破砕した。その後、4℃、8000 rpmで1時間遠心し、上清を水溶性抽出サンプルとした。腎臓の水溶性抽出サンプルのTAC及びSOD活性を測定し、TAC及びSOD活性はControl群の活性を100%として、各群の比活性を算出した。
【0018】
その結果、腎臓においてTAC assayではControl群と比較して全てのHCP投与群でTACの有意な上昇が認められ、HCP: 1000 mg/kg投与群で最も高い活性上昇が認められた。一方で、SOD assayではControl群と比較してHCP: 1000 mg/kg投与群でのみSOD活性の有意な上昇が認められた(
図3)。統計検定にはOne-way ANOVAを用いてp <0.05を有意差有りとし、グラフのカラム内にマウスの使用個体数を示した。