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  • 特開-自立分散式転がり軸受 図1
  • 特開-自立分散式転がり軸受 図2
  • 特開-自立分散式転がり軸受 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015932
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】自立分散式転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20240130BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118323
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】306037229
【氏名又は名称】株式会社 空スペース
(72)【発明者】
【氏名】河島 壯介
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA03
3J701AA04
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701FA46
3J701GA21
3J701GA26
3J701XB03
3J701XB12
3J701XB14
3J701XB18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸受の取付け位相に対する荷重方向などの限定を受けず、玉同士の接触を防ぐ自律分散式転がり軸受の機構を有する自律分散式転がり軸受の提供。
【解決手段】玉3を1点で接触させる形状の軌道溝1aの中に、玉が2点接触する小径溝を螺旋状に軌道溝1周分以上に渡り形成する。これにより玉は、軸受の回転動作に伴う公転によって、軌道溝の1点接触領域と2点接触領域を交互に通過するので、2点接触部分で公転速度を減速させた玉が1点接触部分で加速し、玉同士の接触を防ぐ自律分散式転がり軸受が成立する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、前記内輪軌道溝と 前記外輪軌道溝との間に介在する複数の転動体により構成される自立分散式転がり軸受であって、前記外輪軌道溝、または前記内輪軌道溝の少なくとも一方について、断面の曲率半径を玉半径よりも小径とした小径溝を、少なくとも前記軸受軌道溝の周方向全周に渡り、らせん状に形成したことを特徴とする自立分散式転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転動体の間に間隔を生成させる自律分散式転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、転がり軸受の玉が1点接触する軌道溝の一部に、玉を2点接触させる接触角変化路を形成することにより、転動体の間に間隔を生成させ、保持器を不要にする構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-177993公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される従来の自律分散式転がり軸受の実施例図によると、外輪軌道溝の一部で玉と2点接触させる断面形状としていることより、この部分に最大荷重が掛かることを避ける、などの理由により円形状である外輪の廻り止めが必要となる可能性があった。
【0005】
また、結果的にこの様な工夫が不要になるとしても、 自動車等の量産製品の場合、信頼性確認のテストにおいては、 外輪の取付位相と負荷荷重の方向をパラメータとして管理する必用が生じ、試験ロードが増大する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の自律分散式転がり軸受は、玉を2点接触させるべく、その断面の曲率半径を玉半径よりも小径とした小径溝を、少なくとも軸受軌道溝の周方向全周に渡り連続的に、らせん状に形成したことを特徴とする。
【0007】
軸受の内外輪が相対回転する際の玉の公転軌跡面は、軸受の軸中心線に直角であることより、当該軸受の内輪を回転させると玉は小径溝を斜めに横切って転がる。これにより小径溝に位置する玉は2点接触し、その前後の小径溝から外れた位置にある玉は1点接触することより、2点接触部分で公転速度を減速させた玉が1点接触部分で加速し、玉同士の接触を防ぐ自律分散式転がり軸受が成立する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自律分散式転がり軸受は、接触角変化路である小径溝が軸受軌道溝の全周に渡り形成されているため、軸受に位相(軌道溝一周の中の特異点)が存在しない。よって装置への軸受組込時に位相を合わせる必用が無い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の自立分散式転がり軸受の軸中心線に平行な方向の部分断面図。
図2図1の外輪の軌道溝の展開図
図3図2のYY断面拡大図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。ただし、図面はもっぱら解説のためであって、本発明の記述範囲を限定するものではない。
【実施例0011】
図1は本発明の自立分散式転がり軸受の実施例の軸中心線に平行な方向の部分断面図である。本軸受は外輪1と内輪2、及び複数の玉3により構成され、その初期接触角が15degのアンギュラ玉軸受である。外輪1の軌道溝1aは、概ね接触角0degから40degに渡り、その平均曲率半径Raは玉半径Rbの120%としている。
【0012】
図2図1の軌道溝1a面の展開図、図3はそのY-Y断面図である。軌道溝1aの平均曲率半径Raは、詳しくは、接触角15degを中心として幅10degの領域の曲率半径R2は玉半径よりも小さい(例えば玉半径Rbの50%)小径溝に、その両隣の領域の曲率半径R1は玉半径よりも大きい(例えば玉半径Rbの150%)大径溝にしている。理解を容易にするため、小径溝の部分をハッチングしている。
そしてこの、大小の曲率半径の境界は段差無く接続されている。
【0013】
また、この大小の曲率半径を持つ軌道溝と軸中心線との角度βは直角では無く若干傾斜(例えば傾斜角β=95deg)させることにより、曲率半径R1とR2の領域共、螺旋形状とし、軌道溝の全域に伸延している。すなわち、外輪軌道溝1aは、小径溝と大径溝を交互に螺旋状に形成した平均曲率半径Raの溝である。
そして小径溝(ハッチング部)は曲率半径が玉半径より小さいので、当該部を通過する玉は小径溝の中央には接触せず、両隣の大径溝との境界P1に接触する、2点接触領域を形成している。
【0014】
続いて実施例に係る作用について説明する。図2で、外輪軌道溝上の玉の走行跡を太い破線Sで示した。走行跡の角度は軸中心線と直交する面となるので、軸受回転中の玉は、螺旋状の大径溝と小径溝を斜めに横切る。玉が小径溝を通過する領域が、自立分散式転がり軸受の接触角変化路aであり、その他の1点接触領域bと区別される。
具体的には、玉が領域bから領域aへ侵入すると、玉の公転速度が低下し、aから脱出しbへ入ると逆に公転速度が増加し、後継の玉との間に隙間を生成する、自立分散式転がり軸受の作用が得られる。
【0015】
実施例に記載の各数値は、軸受の要求性能によって適宣変更され得る。例えば、小径溝の幅10degは、1deg、ないし15degとすることができよう。また、大径溝と小径溝の螺旋の巻数は、1巻、ないし10巻とすることができよう。
さらに、実施例の大径溝と小径溝は各々1条の螺旋であるが、各々2条以上の複数溝とすることもできる。
いずれの数値をとるとしても、本発明の螺旋状の接触角変化は走行跡の位置に依らず、2点接触と1点接触を交互に繰り返すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、ターボチャ―ジャーのタービン軸支持軸受等に広く産業用に使用される。
【符号の説明】
【0017】
1・・・・・外輪
2・・・・・内輪
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
すくなくとも外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、前記内輪軌道と 前記外輪軌道との間に介在する複数のにより構成される自立分散式転がり軸受であって、前記外輪軌道、または前記内輪軌道の少なくとも一方について、断面の曲率半径を玉半径よりも小径とした小径溝を、少なくとも軸受軌道面の周方向全周に渡り、らせん状に形成したことを特徴とする自立分散式転がり軸受。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
実施例に記載の各数値は、軸受の要求性能によって適宣変更され得る。例えば、小径溝の幅10degは、1deg、ないし15degとすることができよう。また、大径溝と小径溝の螺旋の巻数は、1巻、ないし10巻とすることができよう。
さらに、実施例の大径溝と小径溝は各々1条の螺旋であるが、各々2条以上の複数溝とすることもできる。
いずれの数値をとるとしても、本発明の螺旋状の接触角変化は走行跡の位置に依らず、2点接触と1点接触を交互に繰り返すことができる。
また、個々の玉を囲う保持器を設けた軸受であっても良いし、シール、スリンガー、潤滑剤、防錆剤等、軸受に選択的に装着される部材を具備した軸受であっても良い。これらの付帯部品は本発明の作用効果に直接的な影響を与えるものでは無い。