(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159324
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/18 20060101AFI20241031BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B29C45/18
B29B17/04 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075250
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 伴成
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 優
(72)【発明者】
【氏名】山崎 友
(72)【発明者】
【氏名】畠山 博樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 利一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 肇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓郎
【テーマコード(参考)】
4F206
4F401
【Fターム(参考)】
4F206AA50
4F206AG07
4F206AH55
4F206AJ08
4F206AR06
4F206JA06
4F206JF01
4F206JF11
4F206JL02
4F206JQ01
4F206JQ90
4F401AA22
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA33
4F401CA58
4F401DC05
4F401EA77
4F401FA01Y
4F401FA01Z
4F401FA02Z
(57)【要約】
【課題】ポリエステル系樹脂成形品を回収し、これをメカニカルリサイクルによるリサイクル材料として再利用して、リサイクル品としてプリフォームを製造するにあたり、当該プリフォームの品質低下を抑制する。
【解決手段】回収されたポリエステル系樹脂成形品をフレーク状に粉砕してなる樹脂フレークを用意し、前工程として、ポリエステル系樹脂のガラス転移点以下の温度で、生体高分子触媒を用いて樹脂フレークの表層部の有機系不純物を分解する工程を経た後に、樹脂フレークを可塑化してなる溶融樹脂を射出成形装置500に供給してプリフォームを射出成形する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収されたポリエステル系樹脂成形品をフレーク状に粉砕してなる樹脂フレークを用意し、
前工程として、ポリエステル系樹脂のガラス転移点以下の温度で、生体高分子触媒を用いて前記樹脂フレークの表層部の有機系不純物を分解する工程を経た後に、
前記樹脂フレークを可塑化してなる溶融樹脂を射出成形装置に供給してプリフォームを射出成形することを特徴とするプリフォームの製造方法。
【請求項2】
搬送方向の上流側が下位に位置し、搬送方向の下流側が上位に位置するように傾斜して配置された第一のスクリューフィーダに、加熱処理が施された前記樹脂フレークを投入し、生体高分子触媒溶液で満たされた前記第一のスクリューフィーダの搬送経路を搬送される過程で、前記有機系不純物を分解する請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項3】
搬送方向の上流側が下位に位置し、搬送方向の下流側が上位に位置するように傾斜して配置された第二のスクリューフィーダに、前記第一のスクリューフィーダから排出された前記樹脂フレークを投入し、洗浄水で満たされた前記第二のスクリューフィーダの搬送経路を搬送される過程で、前記樹脂フレークを洗浄する請求項2に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項4】
前記前工程として、1000Pa以下に減圧された、160~240℃の温度雰囲気において、前記樹脂フレークを加熱処理する工程を含む請求項1~3のいずれか一項に記載のプリフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂を用いて有底筒状のプリフォームを作製し、次いで、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。この種の容器は、一般に、PETボトルとして認知されており、近年にあっては、社会的な要請により、使用済みのPETボトルを回収し、これをリサイクル材料として再利用してPETボトルを製造する「ボトルtoボトル」と称されるリサイクル技術が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回収されたポリエステル系樹脂成形品をフレーク状に粉砕してなる樹脂フレークを除染し、これを溶融して作製された樹脂ペレットを固相重合した後に射出成形装置に搬送して、プリフォームを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記背景技術に鑑みて、ポリエステル系樹脂成形品、特に、使用済みのPETボトルを回収し、これをメカニカルリサイクルによるリサイクル材料として再利用して、リサイクル品としてプリフォームを製造するにあたり、当該プリフォームの品質低下を抑制するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプリフォームの製造方法は、回収されたポリエステル系樹脂成形品をフレーク状に粉砕してなる樹脂フレークを用意し、前工程として、ポリエステル系樹脂のガラス転移点以下の温度で、生体高分子触媒を用いて前記樹脂フレークの表層部の有機系不純物を分解する工程を経た後に、前記樹脂フレークを可塑化してなる溶融樹脂を射出成形装置に供給してプリフォームを射出成形する方法としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリエステル系樹脂成形品を回収し、これをメカニカルリサイクルによるリサイクル材料として再利用して、リサイクル品としてプリフォームを製造するにあたり、当該プリフォームの品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態が好適に実施される装置全体を概念的に示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態において、樹脂フレークを減圧条件下で加熱処理する工程を実施する装置の一例を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態において、樹脂フレークの表層部の有機系不純物を分解する工程を実施する装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態にあっては、ポリエステル系樹脂成形品、特に、使用済みのPETボトルを回収し、これをメカニカルリサイクルによるリサイクル材料として再利用する。使用済みのPETボトルに混入した、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの異種材料からなるプラスチック容器を選別して排除するのが好ましいのはいうまでもないが、近年、植物由来のポリ乳酸をジカルボン酸成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂製の透明ボトルが知られている。ポリ乳酸は加水分解性が高く、ポリ乳酸をセグメントに含む脂肪族ポリエステル系樹脂は、芳香族ポリエステ系樹脂に比べて性能も劣るため、リサイクル材料から排除されるのが好ましい。例えば、回収されたPETボトルのベール(PETボトルを圧縮した塊)を水蒸気で加熱処理し、ポリ乳酸をセグメントに含む脂肪族ポリエステル系樹脂製の透明ボトルを選択的に加水分解することによって脆弱化させ、機械的刺激で粉砕して物理的に分級するなどして排除することができる。
【0011】
使用済みのPETボトルを回収し、これをメカニカルリサイクルによるリサイクル材料として再利用するには、先ず、回収された使用済みのPETボトルをフレーク状に粉砕してなる樹脂フレークを用意する。かかる樹脂フレークを用意するにあたり、アルカリ洗浄、温水洗浄などの任意の洗浄手段によって、樹脂フレークの表面に残る内容物の残滓などの汚れや、混入した異物などの不純物成分を取り除くことができるが、例えば、乳飲料を内容物とする用途に供されたPETボトルにおいて、タンパク質や脂質などの内容物由来の有機系不純物が収着されていると、これらを洗浄によって取り除くのは困難である。
【0012】
また、使用済みのPETボトル(ポリエステル系樹脂成形品)を回収し、メカニカルリサイクルによるリサイクル材料として再利用して、リサイクル品を製造するに際しては、当該回収品の製造時に受けた熱履歴などに起因する樹脂の劣化による固有粘度の低下が、リサイクル品の製造工程での不具合の原因となる。さらに、ポリエステル系樹脂の熱分解によって生じるアセトアルデヒド(AA)、ポリエステル系樹脂の解重合によって生じるビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHET),モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET),サイクリックトリマー(CT)等のオリゴマーなどの低分子量の有機系不純物が、不純物成分としてリサイクル材料に多く残存していると、製造されるリサイクル品の品質に影響を及ぼすだけでなく、製造装置を汚損してしまうなどして生産性を低下させる原因にもなる。
【0013】
本実施形態にあっては、固有粘度を回復させるとともに、前述の如き有機系不純物を含む不純物成分を効率よく除去するために、樹脂フレークを減圧条件下で加熱処理するのが好ましい。より具体的には、好ましくは1000Pa以下に減圧された、好ましくは160~240℃の温度雰囲気において、用意した樹脂フレークに加熱処理を施して、樹脂フレークを溶融させることなく、フレーク状の形態のまま、樹脂フレークを形成するポリエステル系樹脂の固相重合反応を進行させるとともに、ポリエステル系樹脂の結晶化を促進させる。
【0014】
固相重合反応を進行させることで、劣化により分子鎖が切断されて重合度が低下したポリエステル系樹脂の末端基が再縮合し、これによって重合度が回復するにつれて、分子量に対応する固有粘度を回復させることができる。さらに、樹脂フレークを減圧条件下で加熱処理することによって、特に、減圧条件下で160~240℃の温度雰囲気に曝すことによって、ポリエステル系樹脂の加水分解を抑制しつつ、減圧による融点降下を利用して結晶化を良好に促進させることができる。
【0015】
これにより、ポリエステル系樹脂の結晶体積分率が増加するとともに、ポリエステル系樹脂の分子鎖間の自由体積が減少(アモルファス相が減少)するに伴い、樹脂フレークの自由体積部に包接又は収着されていた有機系不純物を、樹脂フレークの表層部に選択的にマイグレートさせることができる。その結果、樹脂フレークの表層部にマイグレートされた有機系不純物の多くを、加熱処理中に揮発又は蒸発させることによって除去することができる。
【0016】
そして、樹脂フレークの表層部にマイグレートされた有機系不純物のうち、加熱処理中に除去しきれずに、樹脂フレークの表層部に残存する有機系不純物については、ポリエステル系樹脂のガラス転移点以下の温度(例えば、60℃以下)で、生体高分子触媒を用いて分解することによって、樹脂フレークからより多くの有機系不純物を除去できるようにしている。生体高分子触媒としては、リパーゼ、エステラーゼ、グルコシターゼ、ペプチダーゼ等の加水分解酵素、又はプロテアーゼ等のタンパク質分解酵素などから1種又は2種以上を適宜選択又は組み合わせて用いることができる。
【0017】
本実施形態において、樹脂フレークに加熱処理を施す具体的な方法は、特に限定されない。例えば、少なくとも一つの予熱室102と、加熱処理に適した温度及び圧力となるように内部雰囲気を調整できる処理室103とを含む、
図2に示すような処理装置100を用いて加熱処理を施すのが好ましい。
【0018】
ここで、
図2に示す処理装置100の概略を説明するに、処理装置100は、好ましくは7~18m
3の内容積となるように構築された密閉容器101を備えている。そして、密閉容器101内に処理室103が設けられているとともに、密閉容器101の上方には、系外との気密性を維持した状態で処理室103と連通可能となるように、図示しないスライド式のシャッタなどの開閉機構を介して密閉容器101に接続された、二つの予熱室102が設けられている。
なお、
図2では、処理室103の内部雰囲気を調整するための加熱装置、減圧装置、及びそれらの配管などの付帯的に設置される設備の図示を省略している。
【0019】
このような処理装置100を用いて樹脂フレークに加熱処理を施すには、加熱処理に先立って、樹脂フレークを予熱室102に投入して予熱室102内を密閉し、樹脂フレークを所定の温度まで昇温させるとともに、予熱室102内を所定の圧力に減圧するのが好ましい。その際、例えば、予熱室102の内壁面に開口する噴出孔を設けるなどして、加熱された気体(例えば、N2ガスなどの不活性ガス)を予熱室102内に噴出させ、その噴出方向や噴出量などを適宜調整して予熱室102内に気流を生じせしめて、樹脂フレークを攪拌しながら昇温させるとともに、予熱室102内を減圧吸引することで、樹脂フレークに含まれる不純物成分の少なくとも一部を分散させて、系外に取り除かれるようするのが好ましい。
【0020】
このようにして、樹脂フレークを昇温させるにあたり、予熱室102内の最終的な温度及び圧力は、処理室103の内部雰囲気を考慮して適宜調整するのが好ましい。そして、開閉装置を開いて、系外との気密性を維持した状態で、予熱室102内の樹脂フレークを自重によって落下させることで、加熱処理に適した温度及び圧力に調製された処理室103の内部雰囲気を損なうことなく、処理室103内に樹脂フレークが供給されるようにするのが好ましい。
【0021】
図2に示す処理装置100にあっては、二つの予熱室102に樹脂フレークを順次投入して、樹脂フレークを昇温させる予熱処理が交互になされるようにするとともに、投入された樹脂フレークが所定の温度まで昇温した予熱室102から順に、処理室103に樹脂フレークを落下させるように構成されているが、これに限定されない。処理装置100の処理能力、すなわち、単位時間当たりに加熱処理を施すことができる樹脂フレークの総量に応じて、予熱室102を一つ、又は三つ以上とすることもできる。いずれにしても、予熱室102から処理室103に樹脂フレークを落下させる操作を繰り返して、落下させた集合毎に層をなしながら順に積み重ねられていくようにするのが好ましい。そして、処理室103内に樹脂フレークを堆積させた状態で、処理室103の内部雰囲気に曝すことによって、樹脂フレークに加熱処理を施すことができるようにするのが好ましい。
【0022】
また、樹脂フレークを加熱処理する際の処理時間は、通常は、30分以上であり、樹脂の色相劣化を抑制しつつ、固相重合反応を進行させる上で、1~8時間の範囲で適宜調整するのが好ましい。処理室103内に堆積させた樹脂フレークは、かかる処理時間経過後に、上記の如く層をなして堆積する下層側から順に、予熱室102から落下させた分量と等量ずつ処理室103から順次取り出されるようにして、その処理時間を管理するのが好ましい。その際、予熱室102での予熱処理に要する時間は、樹脂フレークの含水量や形状などにも依存し、樹脂フレークを落下させる操作を繰り返す間隔にはバラつきが生じ得ることから、樹脂フレークを落下させた集合毎に処理時間を管理するのが好ましい。
【0023】
このようにして、樹脂フレークを加熱処理する際の処理時間を管理する上で好適となるように、
図2に示す処理装置100にあっては、密閉容器101内の底部側に開閉機構104が設けられている。そして、かかる開閉機構104が、処理室103の底面を形成するとともに、密閉容器101内の底部に設けられた取出部105との仕切りとなるように構成されている。これにより、開閉機構104を開いた際に、樹脂フレークが取出部105にこぼれ落ちるようにするとともに、開閉機構104を開閉するタイミングを適宜調整することによって、予熱室102から落下させた分量と等量の樹脂フレークを取り出すことを可能とし、若干の混在はあるものの、予熱室102から落下させた集合毎に樹脂フレークを取り出せるようにしている。
【0024】
また、減圧条件下で加熱処理を施すことによって、有機系不純物を効率よく除去することができるのは前述した通りであるが、揮発又は蒸発させた有機系不純物が処理室103内に滞留しているのは好ましくない。このため、
図2に示す処理装置100にあっては、処理室103内の気相成分が循環可能とされ、かつ、有機系不純物を分解する触媒槽107を経路中に含む循環流路106を備え、かかる循環流路106が処理室103に接続されるように構成されている。処理装置100をこのように構成して、例えば、N
2ガスなどの不活性ガスをキャリアガスに用いるなどして、処理室103の内部雰囲気を損なうことなく、処理室103内の気相成分を循環流路106に導いて循環させることによって、処理室103内に滞留する有機系不純物を低減させるのが好ましい。
【0025】
このようにして加熱処理が施された樹脂フレークは、例えば、
図3に示すような処理装置800に送られて、ポリエステル系樹脂のガラス転移点以下の温度で、生体高分子触媒を用いて、樹脂フレークの表層部の有機系不純物が分解されるようにすることができる。
【0026】
図3に示す処理装置は、生体高分子触媒の至適pH、至適温度(ポリエステル系樹脂のガラス転移点以下の温度)に調製された、生体高分子触媒溶液を攪拌貯留する貯留タンク810と、第一のスクリューフィーダ820と、第二のスクリューフィーダ830と、第三のスクリューフィーダ840とを備えている。各スクリューフィーダ820,830,840は、搬送方向の上流側が下位に位置し、搬送方向の下流側が上位に位置するように傾斜して配置されている。
【0027】
図示する例において、第一のスクリューフィーダ820の排出口823側を除く搬送経路821は、貯留タンク810から供給される生体高分子触媒溶液で満たされており、下流側から供給された生体高分子触媒溶液が、上流側から貯留タンク810に戻されて循環するように構成されている。第二のスクリューフィーダ830の排出口833側を除く搬送経路831は、洗浄水Wで満たされており、上流側から供給された洗浄水Wが、下流側から排出されるように構成されている。第三のスクリューフィーダ840は、搬送経路の外周側にヒーター844が設けられている。
【0028】
このような処理装置の動作について説明するに、加熱処理後に処理室103から取り出された樹脂フレークは、第一のスクリューフィーダ820の上流側に設けられた投入口822から投入され、スクリューの回転によって、生体高分子触媒溶液で満たされた搬送経路821を攪拌されながら搬送される。このようにして、搬送経路821を搬送される過程で、生体高分子触媒が作用して、樹脂フレークの表層部の有機系不純物が分解される。その際、スクリューの回転速度を調整することで、生体高分子触媒が有機系不純物に作用する時間を適宜調整することができる。生体高分子触媒溶液中の生体高分子触媒濃度は、処理対象の樹脂フレークの重量に対して適宜調整することができ、処理対象の樹脂フレークの重量に対して、好ましくは0.0001~10重量%、より好ましくは0.1~1重量%となるように調製することができる。
【0029】
第一のスクリューフィーダ820の搬送経路821を搬送された樹脂フレークは、その下流側に設けられた排出口823から排出されて、第二のスクリューフィーダ830に投入される。第二のスクリューフィーダ830の上流側に設けられた投入口832から投入された樹脂フレークは、スクリューの回転によって、洗浄水で満たされた搬送経路831を攪拌されながら搬送され、搬送経路831を搬送される過程で洗浄されてから、第二のスクリューフィーダ830の下流側に設けられた排出口833から排出される。第二のスクリューフィーダ830から排出された樹脂フレークは、第三のスクリューフィーダ840に投入される。第三のスクリューフィーダ840の上流側に設けられた投入口842から投入された樹脂フレークは、スクリューの回転によって、その搬送経路841を搬送される。そして、搬送経路841を搬送される過程で、第三のスクリューフィーダ840の搬送経路841の外周側に設けられたヒーター844によって乾燥されて、第三のスクリューフィーダ840の下流側に設けられた排出口843から排出される。
【0030】
このようにして、至適温度が、ポリエステル系樹脂のガラス転移点以下の生体高分子触媒を用いて有機系不純物を分解することで、ポリエステル系樹脂の熱分解や解重合を抑制しつつ、樹脂フレークの表層部の有機系不純物を除去できるが、そのための具体的な方法は、図示する例には限定されない。
【0031】
例えば、生体高分子触媒を用いて有機系不純物を分解する際には、バッチ式の処理槽を用いて処理してもよく、連続していない個別のモジュール装置を用いた個別処理でもよい。2種以上の生体高分子触媒を用いる場合には、生体高分子触媒毎に処理するようにしてもよい。
また、生体高分子触媒を用いて、表層部の有機系不純物が除去された樹脂フレークを乾燥させるには、特に図示しないが、表面にスパイラル状の溝を有した2本のジャケット付きロールを用いて、ロール回転で生じる剪断発熱を利用して、樹脂フレークの表層部を半溶着圧着させて、回転前送乾燥装置(オープンロール式二軸押出機)で、さらに樹脂フレーク表層部に残存する有機系不純物や水分の除去を行うことも可能である。この場合、オープンロール式二軸押出機で乾燥処理された樹脂フレークは、ロール後段冷却部の圧着ロール圧で簡単にフレークに分離分散でき、樹脂フレークとして回収できる。
【0032】
本実施形態では、以上のようにして、樹脂フレークを減圧条件下で加熱処理して、樹脂フレークの表層部にマイグレートされた有機系不純物を可及的に取り除いた後に、樹脂フレークを可塑化する。その際、樹脂フレークを押出機200に投入して、加熱シリンダからの熱とスクリューによる剪断熱によって溶融混練しながら可塑化すればよいが、二軸押出機を用いて可塑化するのが好ましい。二軸押出機は、混練効果が高く、より均一に樹脂フレークを可塑化でき、可塑化に要する時間を短縮することも可能であるため、樹脂の劣化や、熱分解、解重合を抑制する上でも好ましい。
【0033】
二軸押出機を用いて樹脂フレークを可塑化するにあたり、二軸押出機がベント口を備えるように構成し、例えば、加熱シリンダを貫通して設けられたベント口を介して、二軸押出機内に滞留するポリエステル系樹脂由来の低分子量の有機系不純物を含む気相成分を減圧吸引して系外に排出するのが好ましい。これにより、可塑化されたポリエステル系樹脂中に残存する有機系不純物が、より低減されるようにすることができる。その際、特に、サイクリックオリゴマーなどは、熱溶融時の平衡反応で生成するため、ポリエチレンテレフタレートの溶融時にサイクリックオリゴマーが生成してくる。そのため、二軸押出機のベント口で減圧吸収除去する操作は重要である。サイクリックオリゴマーの気液分離の最適条件(温度・圧力)について推定する。サイクリックオリゴマーの融点は319℃で、昇華性である。ポリエチレンテレフタレートの二軸押出機のベント口における樹脂溶融温度を300℃と仮定した場合、サイクリックオリゴマーが昇華(気体に転移)できる減圧真空圧は、概ね0.1KPa(100Pa)以下となるため、比較的高い真空度に調圧する必要がある。そのため、ベント口で溶融樹脂がベントアップする可能性も高くなる。ベントアップを回避するためには、用いる二軸押出機のスクリュー回転方向が、同じ(同方向)タイプのものよりも、逆回転(異方向)タイプのものを用いる方が好ましい。
【0034】
また、前述したようにして、表層部の有機系不純物が可及的に取り除かれた樹脂フレークは、そのまま押出機200に投入して可塑化してもよいが、バッファータンク300に貯留させ、しかる後に押出機200に投入して可塑化するようにしてもよい。
【0035】
バッファータンク300を設置するに際しては、バッファータンク300の内容積を適宜調整して、より多くの樹脂フレークを貯留できるようにしておくのが好ましい。このようにすることで、樹脂フレークを可塑化する工程以降の後続の工程で不具合が生じ、後続の工程が停止するといったトラブルが発生した場合でも、樹脂フレークの加熱処理を停止することなく継続し、後続の工程に送れなくなった分をバッファータンク300に貯留することもできる。
【0036】
また、このようなトラブルが発生した場合や、後続の工程の処理速度が速まったり、遅くなったりするといった状況の変化を想定して、樹脂フレークをバッファータンク300に搬送する搬送路の途中に、リリーフタンク400を設置しておくこともできる。そして、搬送途中の樹脂フレークをリリーフタンク400に退避可能としつつ、バッファータンク300に搬送するのが好ましい。
【0037】
このようにすることで、例えば、後続の工程が停止した場合には、樹脂フレークをリリーフタンク400に退避させ、バッファータンク300への搬送を制限することができる。後続の工程の処理速度が速まった場合には、リリーフタンク400に退避させておいた樹脂フレークも一緒にバッファータンク300に搬送されるようにすることができる。後続の工程の処理速度が遅くなった場合には、樹脂フレークの一部をリリーフタンク400に退避させ、バッファータンク300に搬送される樹脂フレークの量を適宜調整することができる。このようにして、樹脂フレークを必要に応じてリリーフタンク400に退避させるにあたり、リリーフタンク400の内部雰囲気は、樹脂フレークが含水してしまわないように、100℃以上とするのが好ましい。
【0038】
本実施形態にあっては、以上のような工程を経た後に、樹脂フレークを可塑化してなる溶融樹脂から異物を除去しつつ、かかる溶融樹脂を射出成形装置500に供給してプリフォームを射出成形する。樹脂フレークを可塑化してなる溶融樹脂から異物を除去するには、例えば、押出機200の吐出口側に、異物除去のためのフィルター600を設けるなどすればよい。さらに、射出成形装置500の具体的な構成は特に限定されず、例えば、供給された溶融樹脂を計量し、次いで、一定量の溶融樹脂を射出するように構成された、少なくとも一つの射出ポットと、プリフォーム成形型とを備える射出成形装置500を用いて、プリフォームを射出成形することができる。
【0039】
また、樹脂フレークを可塑化してなる溶融樹脂を射出成形装置500に供給するにあたっては、その輸送中に、樹脂が劣化(特に、色相劣化)してしまうのは好ましくない。そのためには、輸送経路中に溶融樹脂が滞留する時間が短くなるように、異物除去後に、射出成形装置500に供給されるまでの輸送距離、より具体的には、フィルター600の下流側に設置されたギアポンプ700の出口から、射出成形装置500が備える射出ポットの入り口までの距離を1~7mとするのが好ましい。その際、溶融樹脂の輸送量は、900~1500kg/hであるのが好ましい。
【0040】
以上のような本実施形態によれば、ポリエステル系樹脂成形品、特に、使用済みのPETボトルを回収し、これをメカニカルリサイクルによるリサイクル材料として再利用して、リサイクル品としてプリフォームを製造するにあたり、当該プリフォームの品質低下を抑制することができる。特に、本実施形態によれば、回収されたポリエステル系樹脂成形品をリサイクルして製造されたものでありながらも、アセトアルデヒドの残存量が1~15ppm、好ましくは1~10ppm、より好ましくは1~5ppm、ビスヒドロキシエチルテレフタレートの残存量が1~35ppm、好ましくは1~30ppm、より好ましくは1~20ppm、モノヒドロキシエチルテレフタレートの残存量が1~35ppm、好ましくは1~30ppm、より好ましくは1~20ppm、サイクリックトリマーの残存量が6000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下であり、好ましくは、プリフォームの質量が14~50gのときに、L*a*b*表色系におけるL*値が70~90、b*値が2~18であるプリフォームを良好に製造することができる。
【0041】
ここで、アセトアルデヒド、ビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)、サイクリックトリマー(CT)の残存量は、例えば、次のようにして求めることができる。
【0042】
<アセトアルデヒドの残存量>
プリフォームから切り出した切片を試料として、かかる試料をガラス瓶に1.0g秤量し、5.0mLの純水を加えて密封する。この懸濁液を120℃に温調したオーブン内にて60分間加熱した後、氷水中にて冷却する。懸濁液の上澄みを1.0mL採取し、これに濃度0.1%の2,4-ジニトロフェニルヒドラジン・リン酸溶液を0.2mL加え、30分間放置したものを高速液体クロマトグラフィーにて測定する。同時に標準溶液の測定も行い、得られた検量線をもとにアセトアルデヒド含有量を計算する。
【0043】
<BHET、MHET、CTの残存量>
プリフォームから切り出した切片を試料として、かかる試料を0.2g秤量し、これにヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒(重量比1/1)を1mL加えて完全に溶解する。溶液に4mLのクロロホルムを加えた後、5mLのアセトニトリルを徐々に加え、3時間放置してPETポリマーを析出させる。この懸濁液から1mL採取し、細孔径0.45μmのメンブレンフィルターにて濾過し、濾液を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。同時に標準溶液の測定も行い、得られた検量線をもとにペレット中のMHET、BHET及びCTの含有量を計算する。
【0044】
また、L*a*b*表色系におけるL*値、b*値は、プリフォームの胴部を測定部位とし、分光色彩計を使用してD65光源、2°視野の測定条件で測定するものとする。
【0045】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0046】
例えば、前述した実施形態では、前工程として、樹脂フレークを減圧条件下で加熱処理する工程と、生体高分子触媒を用いて樹脂フレークの表層部の有機系不純物を分解する工程とを経た後に、樹脂フレークを可塑化しているが、樹脂フレークを減圧条件下で加熱処理する工程は、適宜省略することもできる。
また、生体高分子触媒を用いて樹脂フレークの表層部の有機系不純物を分解する工程は、樹脂フレークを減圧条件下で加熱処理する工程の前に行うこともできる。すなわち、樹脂フレークの表層部の有機系不純物を予め十分に除去しておいてから、当該樹脂フレークに加熱処理を施すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
500 射出成形装置
820 第一のスクリューフィーダ
821 搬送経路
830 第二のスクリューフィーダ
831 搬送経路
W 洗浄水