IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エアウィーヴの特許一覧

<>
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図1
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図2
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図3
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図4
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図5
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図6
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図7
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図8
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図9
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図10
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図11
  • 特開-クッションおよびクッションカバー 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159326
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】クッションおよびクッションカバー
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/00 20060101AFI20241031BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20241031BHJP
   A47C 31/11 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A47C27/00 M
A47C27/12 B
A47C31/11 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075253
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 絵美香
(72)【発明者】
【氏名】今村 寿子
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA03
3B096AC05
3B096AD04
(57)【要約】
【課題】 椅子および椅子の張地を損傷せず、美観を低下させず、留め紐を容易に分離することができるクッションおよびクッションカバーを提供する。
【解決手段】 クッション1は、椅子Cに装着されるクッションであって、クッション材2と、クッション材2が収容されるカバー体3と、カバー体3に接合される固定テープ4a,4bと、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション材と、
前記クッション材が収容されるカバー体と、
前記カバー体に接合される固定テープと、を含むことを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記固定テープと前記カバー体との間に挿通される留め紐をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記カバー体は、通気性を有する布帛から成る袋体と、前記袋体の開口部に開閉可能に設けられるファスナ部材と、を含む請求項1または2に記載のクッション。
【請求項4】
前記固定テープは、前記カバー体の対向する2つの側縁部に沿って平行に配設されている請求項1または2に記載のクッション。
【請求項5】
前記袋体は、第1袋体部分と、第2袋体部分と、を含み、
前記クッション材は、前記第1袋体部分に収容される第1クッション材部分と、前記第2袋体部分に収容される第2クッション材部分と、を含む請求項1に記載のクッション。
【請求項6】
クッション材を収容可能であるカバー体と、
前記カバー体に接合される固定テープと、を含むことを特徴とするクッションカバー。
【請求項7】
前記固定テープと前記カバー体との間に挿通される留め紐をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のクッションカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に使用されるクッションおよびクッションカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のクッションは、たとえば特許文献1,2に記載れている。これらの従来技術では、内部にクッション材を有するクッション本体の四隅に、椅子に固定するための留め紐が直接縫付けられたクッションが座布団として記載されている。椅子の構造が異なると、背板、背柱および脚などの形状が異なり、クッション本体の四隅に固定されている留め紐を結び付けることができない場合がある。また、留め紐を椅子の適切な位置に結び付けることができない場合、留め紐は不要となるが、留め紐はクッション本体に縫付けられているので、留め紐をクッション本体から容易に取外すことができない。したがって椅子には留め紐が垂れ下がったクッションを載置しなければならず、美観が低下してしまう。また、垂れ下がった留め紐は、クッションの使用者の邪魔になり、クッションを椅子に対して適切な位置に維持することが困難となり、誤って椅子からクッションを落下させてしまい、使い勝手が悪いという問題がある。
【0003】
他の従来技術のクッションは、たとえば特許文献3,4に記載されている。これらの従来技術では、クッション本体にベルト状の留め紐が縫付けられている。これらの従来技術では、上記特許文献1,2の留め紐と椅子の形状とが合致しないという問題を解決するために、留め紐ではなく、ベルト状の留め具がクッション本体に直接縫付けられている。留め紐を紐ではなくベルト状にすることによって、適応できる椅子の種類は広がるが、留め具に使用されているプラスチック製のバックルが椅子に直接接触して椅子を損傷するという問題がある。また、留め具は、特許文献1,2と同様にクッション本体から取外せないので、留め具を使用しない場合であってもクッションに留め具が付いたままクッションを使用しなければならず、美観が低下し、留め具が邪魔になるという同様な問題を有する。
【0004】
また、他の従来技術のクッションは、たとえば特許文献5に記載されている。この従来技術では、ボタンおよび面状ファスナによって留め紐がクッション本体に対して着脱可能な構成が記載れている。この従来技術では、クッション本体の椅子への固定が不要である場合、留め紐をクッション本体から取外すことができるが、留め紐はホックによってクッション本体に固定されるので、留め紐のホックが椅子に接触すると椅子を損傷してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3096002号公報
【特許文献2】実用新案登録第3184319号公報
【特許文献3】実用新案登録第3239390号公報
【特許文献4】特開2017-6553号公報
【特許文献5】意匠登録第16587176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、椅子および椅子の張地を損傷せず、美観を低下させず、留め紐を容易に分離することができるクッションおよびクッションカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクッションは、クッション材と、
前記クッション材が収容されるカバー体と、
前記カバー体に接合される固定テープと、
を含む。
【0008】
また、本発明のクッションは、前記固定テープと前記カバー体との間に挿通される留め紐を含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明のクッションは、前記カバー体が、通気性を有する布帛から成る袋体と、前記袋体の開口部に開閉可能に設けられるファスナ部材と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明のクッションは、前記固定テープが、前記カバー体の対向する2つの側縁部に沿って平行に配設されていることを特徴とする。
【0011】
また本発明のクッションは、前記袋体が、前記背板に沿って配置される第1袋体部分と、前記座板に乗載される第2袋体部分と、を含み、前
前記クッション材が、前記第1袋体部分に収容される第1クッション材部分と、前記第2袋体部分に収容される第2クッション材部分と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のクッションカバーは、クッション材を収容可能であるカバー体と、
前記カバー体に接合される固定テープと、を含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明のクッションカバーは、前記固定テープと前記カバー体との間に挿通される留め紐を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクッションによれば、カバー体には固定テープが接合されており、固定テープとカバー体との間に、留め紐を挿通することが可能である。使用時には、クッションとして使用することが可能である。
【0015】
本発明のクッションによれば、固定テープに留め紐を椅子に結束することによって、クッションが椅子から脱落することが防がれる。留め紐には前記従来技術のように、バックルおよびボタンなどの硬質の部品が取付けられていないので、椅子および椅子の張地を損傷することが防がれるとともに美観が低下せず、異音を生じることもない。また、クッションを椅子に固定する必要がない場合には、留め紐を固定テープとカバー体との間から容易に抜取り、美観が低下することが防がれる。
【0016】
また本発明のクッションによれば、カバー体は通気性を有する布帛から成る袋体13と、ファスナ部材とを含むので、長時間にわたって着座しても臀部が蒸れることが防がれ、快適な着座状態を維持することができる。またカバー体の開口部にファスナ部材が設けられるので、ファスナ部材によって開口部を開放し、クッション材をカバー体から容易に取出してカバー体を洗うことができ、これによってカバー体を清浄に保ち、美観の低下を防ぐことができる。
【0017】
また本発明のクッションによれば、固定テープがカバー体の対向する2つの側縁部に平行に配設されるので、クッションを椅子に対して高い強度で結束することができ、着座時のクッションへの外力の作用によって、クッションが椅子からずれること、および浮き上がることが防がれ、これによって、クッションが椅子から脱落することが防がれ、クッションが椅子に対して定位置に保たれ、良好な座り心地を維持することができる。
【0018】
また本発明のクッションによれば、カバー体が第1カバー体部分と第2カバー体部分とを有し、第1カバー体部分に第1クッション材が収容され、第2カバー体部分には第2クッション材が収容されるので、使用者が椅子の背板にもたれても、背部にクッション性が得られ、対体圧分散による身体の安定性が得られ、優れた着座感を得ることができる。
【0019】
本発明のクッションカバーによれば、カバー体に固定テープが接合されており、固定テープとカバー体との間に留め紐を挿通することが可能である。使用時には、クッション材を収容することによって、クッションとして使用することが可能である。
【0020】
本発明のクッションカバーによれば、固定テープとカバー体との間に留め紐を挿通することによって、椅子に留め紐を結束して使用することができる。これによって、着座時のクッションへの外力の作用によって、クッションが椅子からずれること、および浮き上がることが防がれ、これによって、クッションが椅子から脱落することが防がれ、クッションが椅子に対して定位置に保たれ、良好な座り心地を維持することができる。留め紐には前記従来技術のように、バックルおよびボタンなどの硬質の部品が取付けられないので、椅子および椅子の張地を損傷することが防がれるとともに美観が低下せず、異音を生じることもない。また、クッションを椅子に固定する必要がない場合には、留め紐を固定テープとカバー体との間から容易に抜取り、美観が低下することが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態のクッション1を裏側から見た斜視図である。
図2図1に示されるクッション1の留め紐5a,5bを省略した状態を示す斜視図である。
図3図1のクッション1を表側から見た斜視図である。
図4】留め紐を示す図である。
図5】クッション1を椅子に取付けられた状態を正面側から見た斜視図である。
図6】クッション1を椅子に取付けられた状態を背後側から見た斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態のクッション1aが椅子に取付けられた状態を背後側から見た斜視図である。
図8】クッション1の背面図である。
図9図8の切断面線IX-IXから見たクッション1の断面図である。
図10図8の切断面線X-Xから見たクッション1の断面図である。
図11】本発明の他の実施形態のクッション1bを示す背面図である。
図12】本発明の他の実施形態のクッション1cを示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態のクッション1を裏側から見た斜視図であり、図2は、図1のクッション体1から留め紐が省略された状態を示す斜視図であり、図3は、図1のクッション1を表側から見た斜視図であり、図4は留め紐を示す図である。本実施形態のクッション1は、図5に示される椅子Cに装着され、クッション材2と、クッション材2が収容されるカバー体3と、を含む。クッション1は、カバー体3に接合される2つの固定テープ4a,4bと、固定テープ4a,4bとカバー体3との間に挿通され、椅子Cに結束される2本の留め紐5a,5bと、を含む。
【0023】
カバー体3は、通気性を有する布帛から成る袋体13と、袋体13の開口部14に開閉可能に設けられるファスナ部材15と、を含む。袋体13は、第1袋体部分13aと、第2袋体部分13bと、を含む。クッション材2は、第1袋体部分13aに収容される第1クッション材部分2aと、第2袋体部分13bに収容される第2クッション材部分2bと、を含む。
【0024】
カバー体3は、展開状態で長方形の3つのパーツである第1生地3a、第2生地3b、および第3生地3cを有する。第1生地3aと第2生地3bとは、第3生地3cの約1/2の大きさであり、互いに隣接する各一方の長辺部がファスナ部材15によって連結されることによって、第3生地3cとほぼ同一の大きさを成す。第1生地3aおよび第2生地3bと第3生地3cとを重ねた状態で周縁部が連結されている。袋体13は、ファスナ部材15を開放した状態では、第1生地3aおよび第2生地3bの互いに隣接した各一側辺部によって開口部14が形成され、この開口部14にファスナ部材15が縫着されている。
【0025】
袋体13は、第1生地3aと第3生地3cとが幅方向に一部が縫着されることによって形成された縫目6を有する。また、第2生地3bと第3生地3cとが幅方向に一部が縫着されることによって形成された縫目7を有する。袋体15を2つの縫目6,7で折り畳むことによって、第1袋体部分13aと第2袋体部分13bとが形成される。第1袋体部分13aに第1クッション材部分2aが収容され、第2袋体部分13bに第2クッション材部分2bが収容されることによって、椅子Cの座板C1に乗載される第1クッション部分11と、椅子Cの背板C2に取付けられる第2クッション部分12とが形成される。他の実施形態では、第1クッション部分11と第2クッション部分12とを個別に作製し、第1クッション部分11と第2クッション部分12とを縫着またはファスナによって着脱可能なクッション1が構成されてもよい。この場合、個別に作製される第1クッション部分11および第2クッション部分12のそれぞれには、ファスナ部材が設けられる。
【0026】
第1生地3aおよび第2生地3bの素材としては、クッションカバーの椅子側(裏側)に用いられ、ポリエステル糸から成るダブルラッセル編みの目付260g/mの編地を使用することができる。このような編地は、伸縮性および通気性に優れている。また、第3生地3cの素材としては、クッションカバーの使用者側(表面側)に用いられ、ポリエステル糸から成るニットの目付230g/mの編地を使用することができる。このような編地は、吸水速乾性、通気性、および伸縮性に優れている。これらの第1生地3a、第2生地3b、および第3生地3cは、触感を向上するため、生地と生地との間にキルト綿を挟んで縫製したキルト仕様で製造されてもよい。
【0027】
第1生地3a、第2生地3b、および第3生地3cは、前述の素材に限らず、他の実施形態では、綿、麻、レーヨンおよびこれらを混合したものが用いられてもよい。また、第1生地3a、第2生地3b、および第3生地3cの目付についても、上記の値に限定されるものではなく、伸縮性、通気性、吸水速乾性などの材料特性に応じて適切な数値に変更可能である。
【0028】
袋体13は、縫目6,7を有するので、1本のファスナ部材15を第1生地3aおよび第2生地3bの開口部14に取付け、第1クッション材部分2aおよび第2クッション材部分2bを第1袋体部分13aおよび第2袋体部分13bに出し入れするための広い開口を形成することができる。また、クッション1が椅子Cに装着された状態では、ファスナ部材15のある第1生地3aおよび第2生地3bが座板C1および背板C2に対向し、第3生地3cは使用者側に位置し、第1クッション部分11と第2クッション部分12との間には、使用者側に開放した略V字状の凹所50を有するので、第1クッション部分11と第2クッション部分12とは、凹所50によって互い緩衝することなく、容易に略L字状に折り曲げて椅子Cに装着することができる。
【0029】
したがって、第1クッション部分11は、第1袋体部分13aと第1クッション材部分2aとを含んで構成され、第2クッション部分12は、第2袋体部分13bと第2クッション材部分2bとを含んで構成される。
【0030】
袋体13の材料である前述の通気性を有する布帛としては、たとえば、ダブルラッセル編物によって形成されてもよい。固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bは、たとえばポリエステル繊維の目付250g/m2の織物から成る。固定テープ4a,4bは、幅19mm、長さ90mmであり、留め紐5a,5bは、幅12mm、長さ500mmである。固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bの材料としては、ポリエステル繊維に限らず、綿繊維、麻繊維、レーヨン繊維およびこれらを混合した繊維が用いられてもよい。また固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bの幅および長さは上記の寸法に限らず、椅子の構造などに応じて適宜変更が可能である。本発明の他の実施形態では、前記留め紐5a,5bに代えて、2本の帯状体に面状ファスナを接合し、2本の帯状体を面状ファスナによって着脱可能な構成が採用されてもよい。
【0031】
参考までに、クッション1の各寸法を一例として述べると、クッション1は、正面視において矩形状であり、全長L1が700mm、幅L4が400mm、第1クッション部分11の長さL2が400mm、第2クッション部分12の長さL3が300mm、厚さTが約50mmである。これらの各寸法は、取付け対象とする椅子Cの形状に応じて適切に選択され、上記寸法に限定されるものではない。
【0032】
図5は、クッション1を椅子に取付けた状態を正面側から見た斜視図であり、図6は、クッション1を椅子に取付けた状態を背後側から見た斜視図である。各留め紐5a,5bは、袋体13と固定テープ4a,4bとの間に挿通される。固定テープ4a,4bは、袋体13の対向する2つの側縁部23,24に沿って平行に配設される。各固定テープ4a,4bは、留め紐5a,5bの幅よりも大きい間隔ΔL1をあけて複数箇所、たとえば4箇所で縫目16において袋体13に縫着される。したがって、固定テープ4a,4bは、袋体13に対して各縫目16間に3つの未接合部分を有し、たとえば中央の未接合部分に留め紐5a,5bが挿通される。固定テープ4a,4bと留め紐5a,5bとは、交差部で面接触するので、クッション1に着座時に外力が作用しても、固定テープ4a,4bと留め紐5a,5bとの交差部の狭い領域に力が集中せず、固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bの素材の繊維の切断などの損傷が生じにくく、耐久性を向上することができる。
【0033】
また各固定テープ4a、4bが袋体1の対向する2つの側縁部23,24に沿って平行に配設されるので、ファスナ部材15が各固定テープ4a,4b間の中央部に位置し、クッション1に外力が作用しても、袋体13の各固定テープ4a,4bとファスナ部材15との間の領域で引張力が分散され、ファスナ部材15に局所的に過大な引張力が作用することが防がれる。これによってファスナ部材15を外力の作用によって損傷することが防がれる。また、各固定テープ4a,4bが第2クッション部分12に設けられるので、クッション1は椅子Cに対して背板C2だけに固定されるので、椅子Cに対するクッション1の着脱作業は、2つの留め紐5a,5bだけを結束し、または結束状態を解除すればよいので、クッション1の椅子Cへの着脱作業を容易に短時間で行うことができ、作業に手間を要しない。
【0034】
図7は、本発明の他の実施形態のクッション1aが椅子Cに取付けられた状態を背後側から見た斜視図である。前述の実施形態では、各固定テープ4a,4bに留め紐5a,5bをそれぞれ挿通する構成について述べたが、本発明の他の実施形態では、各留め紐5a1,5b1を長尺とし、カバー体3の第2クッション部分12の対向する側縁部23,24に沿って上下2箇所に固定テープ4a1,4b1,4a2,4b2が配設され、上段の固定テープ4a1,4b1に留め紐5a1を挿通し、下段の固定テープ4a2,4b2に留め紐5b1を挿通し、各留め紐5a1,5b1の各両端部を背板C2の裏側で結束してもよい。この場合、第1クッション部分11には、前述と同様な固定テープ4a,4bが配設され、各固定テープ4a,4bに留め紐5a,5bを挿通して座板C1に結束してもよく、あるいはこれらの固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bを省略してもよい。
【0035】
図8は、クッション1の背面図であり、図9は、図8の切断面線X1-IXから見たクッション1の断面図であり、図10は、図8の切断面線X-Xから見たクッション1の断面図である。ファスナ部材15は、袋体13のたとえば開口部14に縫着されてもよい。固定テープ4a,4bは、袋体13の対向する長辺側の2つの側縁部23,24に沿って平行に配設されている。固定テープ4a,4bは、袋体13の側縁部23,24のうち、第2クッション部分12の第1クッション部分11との境界部25に近接した位置に縫着される。したがって各固定テープ4a,4bに挿通された留め紐5a,5bは、図6に示されるように、椅子Cの背板C2の縦桟26,27に巻掛けられて結束される。
【0036】
使用時に各固定テープ4a,4bに各留め紐5a,5bから引張力が作用しても、各固定テープ4a,4bとファスナ部材15とは、第2クッション部分12の境界部25に近接した位置に2つの側縁部23,24に平行に袋体13に縫着されているので、各固定テープ4a、4bに作用する引張力は、ファスナ部材15との間の領域で分散され、ファスナ部材15に作用する引張力が緩和される。これによってファスナ部材15の負荷が低減され、耐久性が向上される。また、各固定テープ4a,4bが側縁部23,24に沿って平行に設けられるので、使用者が第2クッション部分12を介して背板C2のもたれても、使用者の背部と背板C2との間に各固定テープ4a,4bが挟まれて、使用者が違和感を感じることがなく、均一で良好なクッション性を得ることができる。
【0037】
前述のファスナ部材15を目立ち難くするため、ファスナ部材15が袋体13材の生地で隠れるように、いわゆるファスナ部材15の裏使いの仕様を採用してもよく、あるいはファスナ部材15としてコンシールファスナーを採用してもよい。
【0038】
第1クッション材部分2aおよび第2クッション材部分2bは、熱可塑性樹脂のフィラメントを3次元的に融着結合させて得られるフィラメント3次元結合体から成る。第1袋体部分13aおよび第2袋体部分13bは、第1クッション材部分2aおよび第2クッション材部分2bよりも反発力の低い多孔性シート体から成る。そのため、第1袋体部分13aおよび第2袋体部分13bは、通気性を有し、クッション1に長時間にわたって着座しても、湿気が放散され、快適性が向上されている。
【0039】
フィラメント3次元結合体は、たとえば、水平に配置された複数のノズルから溶融状態の熱可塑性樹脂を鉛直方向下向きに押し出した後、直径が1mm前後の溶融フィラメント群(線条集合体)を水中に落下させて、水の浮力でループを形成させると同時に、ループ形成した複数の溶融フィラメント同士を3次元的に融着結合させて製造したものであってもよい。
【0040】
図11は、本発明の他の実施形態のクッション1bを示す背面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。前述の実施形態のクッション1bは、椅子Cの座板C1および背板C2に沿って配置される第1クッション部分11および第2クッション部分12を有する2つ折れ構成であったが、本実施形態のクッション1bは、例えば座布団として使用することができる第1クッション部分11に対応する大きさの単一枚のクッションによって構成される。クッション1bは、クッション材2と、クッション材2が収容されるカバー体13と、カバー体13に接合される一対の固定テープ4a,4bと、各固定テープ4a,4bとカバー体13との間に挿通される一対の留め紐5a,5bとを含む。カバー体13は、一側縁部に開口部14が形成され、開口部14にはファスナ部材15が設けられる。各固定テープ4a,4bは、カバー体3の開口部14付近にファスナ部材15に沿ってほぼ平行に配設される。これによって、クッション1bが椅子Cの座板C1に固定したまま、ファスナ部材15を開放しても、カバー体13のたるみが少なく、クッション材2の交換を容易に行うことができる。
【0041】
第1クッション材2の素材である熱可塑性樹脂としては、たとえばポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル径エラストマー、およびスチレン系エラストマーの少なくとも1種によって構成されてもよい。特に、スチレン系エラストマーのフィラメント3次元結合体であるのが好ましい。スチレン系エラストマーはゴムに近い柔らかさを有しているので、フィラメント3次元結合体のフィラメントの径を過度に細くすることなく反発力を低くでき、ソフトな感触が得られる。
【0042】
図12は、本発明の他の実施形態のクッション1cを示す背面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。前述の図1図9の実施形態のクッション1,1aは、椅子Cの座板C1および背板C2に沿って配置される第1クッション部分11および第2クッション部分12を有する2つ折れ構成であったが、本実施形態のクッション1cは、第2クッション部分12に対応する大きさに形成され、1つの固定テープ4がカバー体3の中央に配設された構成とされる。
【0043】
本実施形態のクッション1cによれば、カバー体3には3つの固定テープ4a,4b,4cが接合され、固定テープ4a,4bとカバー体3との間には、留め紐5a,5bが挿通される。3つの固定テープ4a,4b,4cのうち2つの固定テープ4a,4bは、カバー3のファスナ部材15が設けられる一側縁部の両側に直角に延びる一対の側縁部に沿って平行に、各側縁部の中央部に配設される。また残余の1つの固定テープ4cは、クッション1cの正面視において中央部に、ファスナ部材15と平行に配設される。この固定テープ4cによって、クッション1cをたとえば1本の背柱によって背板C2が脚などに連結される場合、固定テープ4cに留め紐5を挿通して背柱に結束することができ、クッションの椅子Cへの取付け態様を増やすことができる。
【0044】
また前述のように2つの留め紐5a,5bを椅子Cの座板C1または背板C2のいずれかに結束することによって、クッション1が椅子Cから脱落することが防がれる。留め紐5a,5bには、前記従来技術のように、バックルおよびボタンなどの硬質の部品が取付けられていないので、椅子Cおよび椅子Cの張地を損傷することが防がれるとともに、美観が低下せず、異音を生じることもない。また、クッション1を椅子Cに固定する必要がない場合には、留め紐5a,5bを固定テープ4a,4bと袋体1カバー体3との間から容易に抜取り、美観が低下することが防がれる。
【0045】
また本実施形態のクッション1cによれば、カバー体3は通気性を有する布帛から成る袋体13と、ファスナ部材15とを含むので、長時間にわたって着座しても臀部が蒸れることが防がれ、快適な着座状態を維持することができる。またカバー体3の開口部14にファスナ部材15が設けられるので、ファスナ部材15によって開口部14を開放し、クッション材2を袋体13から容易に取出してカバー体3を洗うことができる。これによってカバー体3を清浄に保ち、美観の低下を防ぐことができる。
【0046】
また本実施形態のクッション1cによれば、固定テープ4a,4bがカバー体の対向する2つの側縁部23,24に平行に配設されるので、クッション1を椅子Cに対して大きな強度で結束することができ、着座時のクッション1への外力の作用によって、クッション1が椅子Cからずれおよび浮き上がりを生じることが防がれ、これによって、クッション1が椅子Cから脱落することが防がれ、クッション1が椅子Cに対して定位置に保たれ、良好な座り心地を維持することができる。
【0047】
また本実施形態のクッション1,1aによれば、カバー体3が第1袋体部分13aと第2袋体部分13bとを有し、第1袋体部分13aに第1クッション材部分13aが収容され、第2カバー体部分3bには第2クッション材部分13aが収容されるので、使用者が椅子Cの背板C2にもたれても、背部にクッション性が得られ、体圧分散による身体の安定性が得られ、優れた着座感を得ることができる。
【0048】
また本実施形態のクッション1,1a~1cによれば、クッション材2は、フィラメント2次元結合体を含むので、フィラメント3次元結合体は高い通気性を有し、また洗うことも容易であるため、清潔に使用できる。
【0049】
また本実施形態のクッション1,1a~1cによれば、留め紐5a,5bは伸縮性を有する帯状の布帛から成るので、幅の狭い紐に比べて固定テープ4a,4bに対する接触面積が大きく、固定テープ4a,4bとの接触箇所で締付け力が分散され、摩擦による損耗が少なく、高い耐久性を得ることができる。
【0050】
本実施形態のクッションカバーによれば、袋体13に固定テープ4a,4bが接合され、固定テープ4a,4bと袋体13との間に留め紐5a,5bが挿通される。使用時には、クッション材2を収容することによって、椅子Cに留め紐5a,5bを結束してクッション1として使用することができる。留め紐5a,5bには前記従来技術のように、バックルおよびボタンなどの硬質の部品が取付けられないので、椅子Cおよび椅子Cの張地を損傷することが防がれるとともに美観が低下せず、異音を生じることもない。また、クッション1を椅子Cに固定する必要がない場合には、留め紐5a,5bを固定テープ4a,4bと袋体13との間から容易に抜取り、座布団等として使用することができ、美観が低下することが防がれる。
【0051】
また本実施形態のクッションカバーによれば、使用時には、クッション材2を収容することによって、椅子Cに留め紐5a,5bを結束してクッション1として使用することができる。カバー体3は通気性を有する布帛から成る袋体13と、ファスナ部材15とを含むので、長時間にわたって着座しても臀部が蒸れることが防がれ、快適な着座状態を維持することができる。またカバー体3の開口部14にファスナ部材15が設けられるので、ファスナ部材15によって開口部14を開放し、クッション材2をカバー体3から容易に取出してカバー体3を洗うことができる。これによってカバー体3を清浄に保ち、美観の低下を防ぐことができる。
【0052】
また本実施形態のクッションカバーによれば、使用時には、クッション材2を収容することによって、椅子Cに留め紐を結束してクッションとして使用することができる。固定テープがカバー体の対向する2つの側縁部に平行に配設されるので、クッションを椅子に対して大きな強度で結束することができ、着座時のクッションへの外力の作用によって、クッションが椅子からずれおよび浮き上がりを生じることが防がれ、これによって、クッションが椅子から脱落することが防がれ、クッションが椅子に対して定位置に保たれ、良好な座り心地を維持することができる。
【0053】
また本実施形態のクッションカバーによれば、使用時には、クッション材2を収容することによって、椅子Cに留め紐5a,5bを結束してクッションとして使用することができる。袋体13が第1袋体部分13aと第2袋体部分13bとを有し、第1袋体部分13aに第1クッション材部分2aが収容され、第2袋体部分13bには第2クッション材部分2bが収容されるので、使用者が椅子Cの背板C2にもたれても、背部にクッション性が得られ、体圧分散による身体の安定性が得られ、優れた着座感を得ることができる。
【0054】
また本実施形態のクッションカバーによれば、使用時には、クッション材2を収容することによって、椅子Cに留め紐5a,5bを結束してクッションとして使用することができる。クッション材2はフィラメント3次元結合体を含むので、フィラメント3次元結合体は良好な通気性を有し、また洗うことも容易であるため、クッションとして清潔に使用できる点でも優れている。
【0055】
また本実施形態のクッションカバーによれば、使用時には、クッション材2を収容することによって、椅子Cに留め紐5a,5bを結束してクッションとして使用することができる。留め紐5a,5bは伸縮性を有する帯状の布帛から成るので、幅の狭い紐に比べて固定テープ4a,4bに対する接触面積が大きく、固定テープ4a,4bとの接触箇所で締付け力が分散され、摩擦による損耗が少なく、高い耐久性を得ることができる。
【0056】
本実施形態によれば、さらに以下の効果を奏する。固定テープ4a,4bの任意の位置に留め紐5a,5bを通して使用することができるので、椅子Cの形状、大きさに寄らず留め紐5a,5bを椅子Cに結び付けることができる。また、留め紐5a,5bを通す位置と留め紐5a,5bの長さを任意に調整することができるので、種類の異なる様々な椅子Cに固定することができる。また、留め紐5a,5bの長さが不足して椅子Cに固定できない場合には、長さの異なる代わりの留め紐5a,5bを準備して使用することができる。クッション1の椅子Cへの固定が不要な場合には、留め紐5a,5bを固定テープ4a,4bから抜取って簡単に取外すことができる。また、固定テープ4a,4bは、薄いリボン状であるため、そのまま他の用途に使用しても邪魔にならない。固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bは、布製であるため、ボタンおよび両面ファスナのように椅子Cを傷つけることがない。また、第1クッション部分11のみ、第2クッション部分12のみ、および第1クッション部分11および第2クッション部分12の両方を備えるクッション1のいずれの態様でも、椅子Cへの固定を可能とする。
【0057】
前述の実施形態では、袋体13にフィラメント3次元結合体から成るクッション材2が収容された構成について述べたが、本発明の他の実施形態では、クッション材2として、前述のフィラメント3次元結合体と、フィラメント3次元結合体よりも反発力の低いパッドとを重ねて袋体13に収容するようにしてもよい。パッドは、たとえばポリエステル素材から成る、厚さ10~20mm程度のシート状であってもよい。このようなフィラメント3次元結合体とパッドとの2層構造を採用することによって、着座したときの底付き感を緩和することができ、クッション性をさらに向上することができる。また、さらに他の実施形態では、前述のフィラメント3次元結合体に代えて、スポンジなどの発泡合成樹脂が用いられてもよい。
【0058】
本発明のさらに他の実施形態では、前述の固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bは、平ゴムテープによって形成されてもよい。この場合、固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bは、約2倍~約3倍に伸びることができ、着座時にクッション1に大きな引張力が作用しても、固定テープ4a,4bおよび留め紐5a,5bが弾発的に伸長して、袋体13およびファスナ部材15に作用する引張力を緩和することができ、これによって袋体13およびファスナ部材15の損耗を抑制することができる。また、袋体13は、飲料の食べこぼしなどによる液体の浸透を防ぐため、たとえばシリコン樹脂などの撥水剤を被覆させる通気性防水加工によって撥水性を付与してもよく、あるいはフッ素系加工剤を併用して、撥油性を付与してもよい。
【0059】
本発明は、以下の態様(1)~(7)で実施可能である。
【0060】
(1)クッション材と、
前記クッション材が収容されるカバー体と、
前記カバー体に接合される固定テープと、を含むクッション。
【0061】
(2)前記固定テープと前記カバー体との間に挿通される、留め紐をさらに含む上記態様(1)に記載のクッション。
【0062】
(3)前記カバー体は、通気性を有する布帛から成る袋体と、前記袋体の開口部に開閉可能に設けられるファスナ部材と、を含む上記態様(1)または(2)に記載のクッション。
【0063】
(4)前記固定テープは、前記カバー体の対向する2つの側縁部に沿って平行に配設されている上記態様(1)~(3)のいずれか1つに記載のクッション。
【0064】
(5)前記袋体は、第1袋体部分と、第2袋体部分と、を含み有し、
前記クッション材は、前記第1袋体部分に収容される第1クッション材部分と、前記第2袋体部分に収容される第2クッション材部分と、を含む上記態様(1)に記載のクッション。
【0065】
(6)クッション材を収容可能である、カバー体と、
前記カバー体に接合される固定テープと、
を含むクッションカバー。
【0066】
(7)前記固定テープと前記カバー体との間に挿通される留め紐をさらに含むことを特徴とする上記態様(6)に記載のクッションカバー。
【0067】
本発明に係るクッションは、椅子Cだけでなく、フローリング床、畳においても座布団として使用することができる。また、椅子Cは、ダイニングチェア、オフィスチェアなどの座板C1および背板C2を有するものに限らず、スツールなどの背板C2のない椅子Cにも使用することができ、あるいは車椅子などに使用されてもよい。
【0068】
以上、本実施形態の実施形態について詳細に説明したが、また、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1 クッション
2 クッション材
2a 第1クッション材部分
2b 第2クッション材部分
3 カバー体
3a 第1生地
3b 第2生地
3c 第3生地
4,4a,4b 固定テープ
5a,5b 留め紐
6,7 縫目
11 第1クッション部分
12 第2クッション部分
13 袋体
13a 第1袋体部分
13b 第2袋体部分
14 開口部
15 ファスナ部材
50 凹所
C 椅子
C1 座板
C2 背板
L 全長
L2,L3 長さ
L4 幅
T 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12