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特開2024-159329米飯製品用品質改良剤およびそれを用いた米飯製品の製造方法
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  • 特開-米飯製品用品質改良剤およびそれを用いた米飯製品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159329
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】米飯製品用品質改良剤およびそれを用いた米飯製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241031BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241031BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20241031BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A23L7/10 A
A23L5/00 J
A23L29/00
A23L29/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075258
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 亮人
(72)【発明者】
【氏名】増田 佳南
(72)【発明者】
【氏名】黒瀧 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松元 一頼
【テーマコード(参考)】
4B023
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE11
4B023LE13
4B023LK01
4B023LK04
4B023LK07
4B023LK17
4B023LL02
4B023LP10
4B023LP15
4B023LP20
4B023LQ03
4B035LC03
4B035LC05
4B035LE16
4B035LG01
4B035LG06
4B035LG19
4B035LG34
4B035LG51
4B035LK10
4B035LP01
4B035LP26
4B035LP41
4B035LP43
4B035LP56
4B041LC03
4B041LD10
4B041LK04
4B041LK07
4B041LK12
4B041LK23
4B041LK44
4B041LK45
4B041LP01
4B041LP09
4B041LP16
4B041LP22
(57)【要約】
【課題】 冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を防止または低減することができ、かつ当該チルド解凍後も良好な食感を保持することのできる、米飯製品用品質改良剤およびそれを用いた米飯製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の米飯製品用品質改良剤は、イノシトールと補助成分とを含有する。ここで、補助成分は酵素および有機酸類からなる群から選択される少なくとも1種の成分である。また、本発明の米飯製品の製造方法は、未加工生米にこの米飯製品用品質改良剤を付与して加工生米を得る工程、および加工生米を炊飯する工程を含む。これにより得られた米飯製品では、チルド解凍後の硬くパサついた食感が効果的に防止または低減されている。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イノシトールと補助成分とを含有し、該補助成分が酵素および酸類からなる群から選択される少なくとも1種の成分である、米飯製品用品質改良剤。
【請求項2】
前記酵素が、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、およびアミラーゼからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の米飯製品用品質改良剤。
【請求項3】
前記酸類が、クエン酸、リン酸、グルコン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項2に記載の米飯製品用品質改良剤。
【請求項4】
前記酸類が、クエン酸、リン酸、グルコン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の米飯製品用品質改良剤。
【請求項5】
前記補助成分がヘミセルラーゼである、請求項1に記載の米飯製品用品質改良剤。
【請求項6】
前記補助成分がクエン酸である、請求項1に記載の米飯製品用品質改良剤。
【請求項7】
少なくとも一部の表面に請求項1から6のいずれかに記載の米飯製品用品質改良剤が付与された生米を含む、加工生米。
【請求項8】
米飯製品の製造方法であって、
(a)未加工生米に請求項1から6のいずれかに記載の米飯製品用品質改良剤を付与して加工生米を得る工程、および
(b)該加工生米を炊飯する工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯製品用品質改良剤およびそれを用いた米飯製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存技術の向上により、様々な食品が急速冷凍後、冷凍下の温度(例えば-20℃)で保存され、その後10℃付近の温度下で解凍(チルド解凍と呼ぶことがある)することにより、人々に提供されている。
【0003】
こうした冷凍および解凍方法は、当該食品を長期間保存できるだけでなく、解凍後はヒトが直接食することもできるという好都合なものであり、今後ますます利用が増大すると考えられている。
【0004】
しかし、米飯製品を当該食品の一種として加えることは決して容易ではない。一般的な米飯製品は、こうした冷凍後の解凍を通じてダメージや老化を生じ易く、例えばチルド解凍によって米飯部分の老化が進み、その食感は硬くパサついたものとなるからである。
【0005】
一方、例えば、特許文献1には、米麦芽油とイノシトールやγ-オリザノールとを含有する米飯品質改良剤が提案されている。当該米飯改質剤は、特に輸入米を用いた米飯の粘りを出してパサパサ感をなくし、糠臭や輸入米特有の臭いを消して米飯の風味、食味や風味を改良するために使用される。しかし、上記冷凍後の解凍を通じて米飯の老化の進行を十分に抑えられるものではなく、安全でかつ効率的なさらなる技術改良が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-255913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を防止または低減することができ、かつ当該チルド解凍後も良好な食感を保持することのできる、米飯製品用品質改良剤およびそれを用いた米飯製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イノシトールと補助成分とを含有し、該補助成分が酵素および酸類からなる群から選択される少なくとも1種の成分である、米飯製品用品質改良剤である。
【0009】
1つの実施形態では、上記酵素は、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、およびアミラーゼからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0010】
さらなる実施形態では、上記酸類は、クエン酸、リン酸、グルコン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である
【0011】
1つの実施形態では、上記酸類は、クエン酸、リン酸、グルコン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0012】
1つの実施形態では、上記補助成分はヘミセルラーゼである。
【0013】
1つの実施形態では、上記補助成分はクエン酸である。
【0014】
本発明はまた、少なくとも一部の表面に上記米飯製品用品質改良剤が付与された生米を含む、加工生米である。
【0015】
本発明はまた、米飯製品の製造方法であって、
(a)未加工生米に上記米飯製品用品質改良剤を付与して加工生米を得る工程、および
(b)該加工生米を炊飯する工程、
を含む、方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷凍保存後にチルド解凍したとしても、米飯製品における老化の進行を効果的に防止または低減することができる。さらに、本発明の米飯製品用品質改良剤で処理した米飯製品は、チルド解凍後に硬くなることが防止または低減され、良好な粘りを有する食感を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、実施例4~8および比較例4~7において、所定の急速冷凍、冷凍および解凍を経て得られた冷凍米飯の硬さについての機器測定結果を示すグラフであり、(b)は当該冷凍米飯の粘りについての機器測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(米飯製品用品質改良剤)
本発明の米飯製品用品質改良剤はイノシトールおよび補助成分を含有する。
【0019】
イノシトールは糖アルコールの1種である。イノシトールは、食品工業分野における使用実績があり、すでに十分に安全性が確認されているとの理由からmyo-イノシトールであることが好ましい。
【0020】
イノシトールは、米飯製品用品質改良剤の全体質量を基準として、好ましくは0.001質量%~100質量%、より好ましくは0.05質量%~50質量%の割合で含有されている。米飯製品用品質改良剤におけるイノシトールの含有量が0.001質量%を下回ると、得られる米飯製品の冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を防止または低減するために、米飯製品用品質改良剤の使用量を多くすることが必要となることがある。
【0021】
補助成分は、上記イノシトールとの併用によって、得られる米飯製品の冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を一層効率的に防止または低減することができる成分である。このような補助成分としては、酵素および酸類、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
酵素は、食品工業分野において一般に使用され得るものであり、具体的な例としては、プロテアーゼ(例えばペプチダーゼ)、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アミラーゼ(例えばα-アミラーゼ)、フィターゼ、ホスファターゼ、およびグルコースオキシダーゼならびにそれらの組み合わせが挙げられる。冷凍保存後のチルド解凍を通じても米飯製品の粘りおよび硬さの両方が良好であるとの理由から、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびフィターゼ、ならびにそれらの組み合わせが好ましく、ヘミセルラーゼがさらに好ましい。
【0023】
ヘミセルラーゼは市販による入手が容易であるとの理由から微生物由来のヘミセルラーゼであることが好ましい。ヘミセルラーゼを産生する微生物の例としては、アスペルギルス属、リゾプス属、トリコデルマ属などの微生物が挙げられる。食品工業分野における使用実績があり、すでに安全性が十分に確認されているとの理由から、ヘミセルラーゼはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)由来のものであることが好ましい。
【0024】
本発明の米飯製品用品質改良剤において、ヘミセルラーゼは、例えば酵素剤の形態で含有されていることが好ましい。
【0025】
ヘミセルラーゼを主成分として含有する酵素剤(ヘミセルラーゼ剤ともいう)は、例えばアラビノキシラン(pH4.5)を基質として、40℃にて1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力の増加をもたらす酵素量を1単位として測定した酵素力価が1000u/g以上、好ましくは2000u/g以上100000u/g以下を有するものである。こうしたヘミセルラーゼ剤は、デキストリンなどの賦形剤をさらに含有していてもよい。
【0026】
上記ヘミセルラーゼ剤は、米飯製品用品質改良剤の全体質量を基準として、好ましくは0.001質量%~20質量%の割合で含有されている。本発明の米飯製品用品質改良剤において、ヘミセルラーゼ剤がこのような範囲内で含有されていることにより、上記イノシトールとの併用効果によって、得られる米飯製品の冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を一層防止または低減することができる。
【0027】
ペクチナーゼは、ペクチン分解酵素とも呼ばれ、具体的な例としては、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼなどが挙げられる。
【0028】
ペクチナーゼは市販による入手が容易であるとの理由から微生物由来のペクチナーゼであることが好ましい。ペクチナーゼを産生する微生物の例としては、アスペルギルス属、リゾプス属などの微生物が挙げられる。食品工業分野における使用実績があり、すでに安全性が十分に確認されているとの理由から、ペクチナーゼはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のものであることが好ましい。
【0029】
本発明の米飯製品用品質改良剤において、ペクチナーゼは、例えば酵素剤の形態で含有されていることが好ましい。
【0030】
ペクチナーゼを主成分として含有する酵素剤(ペクチナーゼ剤ともいう)は、例えば1%柑橘ペクチン溶液(pH3)10mlを基質とし、40℃にて10分間で基質の粘度を半減させる酵素量を1単位とした酵素力価(ペクチン粘度降下力)が300u/g以上、好ましくは300u/g以上3000u/g以下を有するものである。こうしたペクチナーゼ剤は、ヘミセルラーゼなどの別の酵素および/またはデキストリンなどの賦形剤をさらに含有していてもよい。
【0031】
上記ペクチナーゼ剤は、米飯製品用品質改良剤の全体質量を基準として、好ましくは0.001質量%~50質量%の割合で含有されている。本発明の米飯製品用品質改良剤において、ペクチナーゼ剤がこのような範囲内で含有されていることにより、上記イノシトールとの併用効果によって、得られる米飯製品の冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を一層防止または低減することができる。
【0032】
フィターゼは、フィチン酸分解酵素とも呼ばれ、フィチン酸(イノシトール6リン酸)のリン酸モノエステルを加水分解し、無機リン酸を遊離することのできる酵素である。フィターゼは、米の細胞壁構造を構成するタンパク質や食物繊維には直接作用せず、長時間かけて酵素反応を行ったとしても米の構造自体を溶解させる懸念はほとんどない。こうしたフィターゼは、加水分解するリン酸エステルの位置の違いにより、例えば、EC3.1.3.8、EC3.1.3.26、EC3.1.3.62、およびEC3.1.3.72に区別される。
【0033】
フィターゼは市販による入手が容易であるとの理由から微生物由来のフィターゼであることが好ましい。フィターゼを産生する微生物の例としては、アスペルギルス属、ペニシリウム属、バシラス属、ストレプトマイセス属、キサントモナス属、シュードモナス属、およびシゾサッカロミセス属の微生物が挙げられる。イノシトールとの併用により米飯製品用品質改良剤として特に良好に機能し得るとの理由から、フィターゼはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のものであることが好ましい。
【0034】
本発明の米飯製品用品質改良剤において、フィターゼは、例えば酵素剤の形態で含有されている。
【0035】
フィターゼを主成分として含有する酵素剤(フィターゼ剤ともいう)は、例えばpH6.0で天野法により測定した酵素力価(フィターゼ力)が100u/g以上、好ましくは100u/g以上10000u/g以下、より好ましくは500u/g以上8000u/g以下を有するものである。こうしたフィターゼ剤はまた、至適pHが5.5付近であり、pH2.5~6.5の間にて安定性あり、至適温度が55℃付近であり、45℃まで安定であるという性質を有するものであることが好ましい。
【0036】
上記フィターゼ剤は、米飯製品用品質改良剤の全体質量を基準として、好ましくは0.001質量%~50質量%の割合で含有されている。本発明の米飯製品用品質改良剤において、フィターゼ剤がこのような範囲内で含有されていることにより、上記イノシトールとの併用効果によって、得られる米飯製品の冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を一層防止または低減することができる。
【0037】
本発明の米飯製品用品質改良剤において酸類はpH調整剤の1種として機能し得る。酸類の例としては、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、リン酸、グルコン酸、フィチン酸、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびそれらの塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、グルコノデルタラクトン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。上記イノシトールとの併用によって、得られる米飯製品の冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を一層防止または低減することができるという理由から、酸類はクエン酸、リン酸、グルコン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、およびそれらの塩であることが好ましく、クエン酸であることがより好ましい。
【0038】
上記酸類はまた、当該酸類を含有する食品(その抽出物および発酵物を包含する)の形態で本発明の米飯製品用品質改良剤に含有されていてもよい。酸類を含有する食品の例としては、レモン果汁、アセロラ果汁、および梅酢、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
上記酸類は、米飯製品用品質改良剤の全体質量を基準として、好ましくは0.01質量%~70質量%、より好ましくは0.1質量%~50質量%の割合で含有されている。改良剤に含まれる酸類の含有量が0.01質量%を下回ると、後述の浸漬水または炊飯水を調製する際に、得られる米飯製品の食感の改良に適したpHに達しないことがある。改良剤に含まれる有機酸塩の含有量が20質量%を上回ると、得られる米飯製品の冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化進行の防止または低減に大きな変化が見られず、むしろ米飯製品の製造効率を低下することがある。
【0040】
本発明の米飯製品用品質改良剤はまた賦形剤を含有していてもよい。賦形剤の例としては特に限定されないが、食物繊維、穀類発酵物、および糖類、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
食物繊維の例としては、セルロース、イヌリン、グァーガム分解物、およびサイリウムシードガム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
穀物発酵物の例としては、みりんおよび酒粕、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
糖類としては、糖および上記イノシトール以外の糖アルコールが包含され、具体的な例としては、トレハロース、パラチノース、ソルビトール、およびマルトース、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
本発明の米飯製品用品質改良剤における上記賦形剤の含有量は特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0045】
本発明の米飯製品用品質改良剤はまた、その他の成分を含有していてもよい。
【0046】
その他の成分としては、酸化防止剤、乳化剤、保存料、安定剤、甘味料、発色剤、着色料、調味料、糖類、および加工用助剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これら他の成分のより具体的な例としては、必ずしも限定されないが、食塩、砂糖、黒糖蜜、米こうじ、果汁(例えばパインアップル粉末果汁およびマンゴー粉末果汁)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、トコフェロール、乾燥卵白、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルコール製剤、酢酸、乳酸カルシウム、乳化油脂、クチナシ色素、カロチノイド色素、アスパラギン酸、グリシン、プロピレングリコールなどが挙げられる。他の成分の含有量は特に限定されず、上記イノシトールおよび補助成分が奏する効果を阻害しない範囲において当業者によって適切な量が選択され得る。
【0047】
さらに本発明の米飯製品用品質改良剤は、溶媒として、例えば水(例えば、天然水、水道水、イオン交換水、蒸留水)、およびエタノール、ならびにそれらの組み合わせを含有していてもよい。溶媒の含有量は特に限定されず、上記イノシトールおよび補助成分が奏する効果を阻害しない範囲において当業者によって適切な量が選択され得る。
【0048】
本発明の米飯製品用品質改良剤は、後述する様々な米飯製品の品質の改良に寄与し、低温保管下での当該米飯製品の老化の進行を防止または低減することができる。このため、例えば、急速冷凍後、冷凍下の温度(例えば-20℃)で保存され、その後10℃付近の温度下で解凍されるような米飯製品に使用することができる。
【0049】
(米飯製品の製造方法)
次に本発明の米飯製品の製造方法について説明する。
【0050】
本発明の米飯製品の製造方法では、まず未加工生米に上記米飯製品用品質改良剤を付与することにより加工生米が作製される。
【0051】
未加工生米は、ジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種のいずれの系統のものであってもよく、かつ精白などの加工の分類に基づけば、精白米、玄米、発芽玄米、胚芽米、無洗米、または早炊き米、あるいはそれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0052】
未加工生米としては、特に限定されないが、例えば、日本国内で生産されているものが挙げられ、具体的な例としては、あいちのかおり、愛のゆめ、あかね空、あきげしき、あきほ、あきたこまち、あきた39、アキツホ、アキニシキ、秋音色、秋の詩、秋晴、あきろまん、アケボノ、あこがれ、朝の光、朝日、あさひの夢、味こだま、彩、彩南月、彩のかがやき、あやひめ、あわみのり、いただき、いわた3号、いわた11号、いわた15号、いわてっこ、岩手68号、イワヒカリ、うこん錦、エルジーシー1、黄金錦、おおいた11、オオセト、おきにいり、おとめごころ、おまちかね、おわら美人、加賀ひかり、かぐや姫、かけはし、鹿児島18号、鹿児島22号、家族だんらん、かりの舞、関東29号、吉備の華、キヌヒカリ、きぬむすめ、キヨニシキ、きらら397、きらり宮崎、きらりん、吟おうみ、金南風、こいむすび、こいもみじ、コガネマサリ、黄金晴、こしいぶき、越路早生、コシヒカリ、こころまち、ゴロピカリ、西海232号、西海248号、さがうらら、佐賀1号、さきひかり、ササニシキ、里のうた、さわかおり、さわのはな、さわぴかり、白雪姫、スノーパール、千秋楽、大地の星、大地の風、たかねみのり、たきたて、たんぼの夢、ちば28号、チヨニシキ、チヨホナミ、ちゅらひかり、月の光、ツクシホマレ、つくしろまん、つやおとめ、でわ75ひかり、天使の詩、てんたかく、十和錦、とがおとめ、土佐錦、とさぴか、トドロキワセ、とねのめぐみ、どまんなか、富山67号、トヨニシキ、どんとこい、どんぴしゃり、中生新千本、ながのほまれ、なごりゆき、なすひかり、なつしずか、なつのたより、ナツヒカリ、ななつぼし、南海157号、南国そだち、にこまる、ニシホマレ、日本晴、ねばり勝ち94、農林1号、農林21号、農林22号、農林48号、能登ひかり、はいみのり、はえぬき、はぎのかおり、はなさつま、花キラリ、はたじるし、ハツシモ、初星、ハナエチゼン、はなの舞、はなぶさ、春陽、晴るる、バンバンザイ、ヒエリ、ひとめぼれ、ヒヨクモチ、びわみのり、フクヒカリ、ふくひびき、ふくみらい、ふさおとめ、ふさこがね、ふじの舞、ふっくりんこ、ホウレイ、ほしたろう、ほしのゆめ、ほほえみ、ほほほの穂、まいひめ、松山三井、祭り晴、まなむすめ、みえのみえ、みえのゆめ、みきさやか、瑞穂黄金、みつひかり、ミナミヒカリ、ミネアサヒ、峰ひびき、みのにしき、ミルキークイーン、ミルキープリンセス、むらさきの舞、めんこいな、森のくまさん、ヤマウタ、山形84号、ヤマヒカリ、ヤマビコ、ヤマホウシ、柔小町、雪化粧、ゆきの精、ゆきひかり、ゆきまる、ゆめあこがれ、夢一献、夢いっぱい、ゆめおうみ、夢ごこち、ゆめさやか、夢しずく、夢つくし、夢の華、ユメヒカリ、ゆめひたち、ゆめみずほ、ゆめむすび、ヨネシロ、レーク65、わせじまん、およびLGCソフトが挙げられる。
【0053】
未加工生米はまた、予め他の穀物または豆類(例えば、オオムギ、アワ、ヒエ、ハトムギ、エンバク、大豆、小豆、インゲンマメ、ソバ、ゴマ、およびトウモロコシ、ならびにそれらの組み合わせ)と一緒に混合されたものであってもよい。
【0054】
未加工生米への米飯製品用品質改良剤の付与は、例えば、米飯製品用品質改良剤を含有する浸漬水に未加工生米を浸漬すること(浸漬による付与)、未加工生米に、米飯製品用品質改良剤を一緒に投入し加水すること(加水による付与)によって行われる。このとき、米飯製品用品質改良剤の使用量は、有効成分であるイノシトールが未加工生米の100質量に対して、好ましくは0.001質量部~23質量部、より好ましくは0.05質量部~10質量部となるような量が選択される。
【0055】
上記浸漬による付与を行う場合、浸漬水は、水(天然水、水道水、イオン交換水、蒸留水など)に所定量の米飯製品用品質改良剤を添加することにより調製される。
【0056】
浸漬水中の米飯製品用品質改良剤は、有効成分として含まれるイノシトールの濃度が、好ましくは0.001g/L~143g/L、より好ましくは0.005g/L~50g/Lとなるように調製される。浸漬水に含まれるイノシトールの濃度が0.001g/Lを下回ると、得られる米飯製品における冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を十分に防止または低減することが困難となることがある。浸漬水に含まれるイノシトールの濃度が143g/Lを上回ると、得られる米飯製品における冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行の防止または低減の効果にほとんど変化がなく、むしろ生産効率が低下することがある。
【0057】
浸漬時間は、使用する未加工生米の種類および量、浸漬温度等によって変動するため必ずしも限定されないが、好ましくは10秒間~720分間、より好ましくは10分間~360分間である。
【0058】
その後、未加工米は浸漬水から取り出され、例えば、適度に水切りされる。
【0059】
一方、上記加水による付与を行う場合、水(天然水、水道水、イオン交換水、蒸留水など)に所定量の米飯製品用品質改良剤を添加することにより、後述の炊飯工程にそのまま使用する炊飯用水溶液(以下、炊飯水という)が調製される。
【0060】
炊飯水中の米飯製品用品質改良剤は、有効成分として含まれるイノシトールの濃度が、好ましくは0.001g/L~50g/L、より好ましくは0.005g/L~10g/Lであるとなるように調製される。炊飯水に含まれるイノシトールの濃度が0.001g/Lを下回ると、得られる米飯製品における冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行を十分に防止または低減することが困難となることがある。炊飯水に含まれるイノシトールの濃度が50g/Lを上回ると、得られる米飯製品における冷凍保存後のチルド解凍を通じた老化の進行の防止または低減の効果にほとんど変化がなく、むしろ生産効率が低下することがある。
【0061】
なお、炊飯水に未加工生米を添加した場合、当該生米が米飯製品用品質改良剤と適切になじむまで、そのまま静置することが好ましい。この静置に要する時間は、好ましくは10秒間~720分間、より好ましくは10分間~360分間である。
【0062】
このようにして未加工生米の少なくとも一部の表面に米飯製品用品質改良剤が付与され、加工生米が作製される。
【0063】
得られた加工生米は、次の炊飯工程にそのまま使用される。なお、この加工生米は、それ自体を製品として市場に流通させることも可能である。
【0064】
次いで、加工生米の炊飯が行われる。
【0065】
まず、この炊飯により米飯製品として白飯を作製する場合について説明する。
【0066】
白飯の作製にあたり、上記未加工生米への米飯製品用品質改良剤の付与を、米飯製品用品質改良剤を含有する浸漬水に当該未加工精米を浸漬すること(浸漬による付与)により行った場合は、当該加工生米に所定量の水(天然水、水道水、イオン交換水、蒸留水など)が加えられ、当業者によって適宜選択され得る温度および時間によって炊飯が行われる。
【0067】
あるいは、上記未加工生米への米飯製品用品質改良剤の付与を、当該未加工生米に、米飯製品用品質改良剤を一緒に投入し加水すること(加水による付与)、すなわち炊飯水の形態で行った場合は、そのままの状態で当業者によって適宜選択され得る温度および時間によって炊飯が行われてもよい。
【0068】
炊飯後、本発明においては、当該分野において公知の方法を用いて蒸らしおよび/ほぐしの作業が行われてもよい。
【0069】
このようにして白飯を製造することができる。
【0070】
一方、米飯製品として炊き込みご飯(味飯、かやくご飯を包含する)を製造する場合は、炊飯の際に上記のようにして作製された加工生米にその他の材料(例えば、野菜、鶏肉、魚肉、こんにゃく、調味料等)が添加され、上記と同様にして炊飯が行われる。さらに、米飯製品は、例えば上記のように米飯製品用品質改良剤を付した加工生米から白飯を作製し、これを当業者に公知の手段を用いて調理することにより得られたものであってもよい。
【0071】
このように米飯製品の例としては、精白米を炊飯して得られる米飯の他に、例えば玄米ご飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ピラフ、チャーハン、ドライカレー、寿司飯、おにぎりなどが挙げられる。
【0072】
得られた米飯製品は、例えば-40℃等の温度下にて急速冷凍が行われ、通常の冷凍下の温度(例えば-20℃)で保存される。その後、例えば10℃付近の温度下でチルド解凍を行うことにより、当該米飯製品は、その後特に加熱等の調理を行うことなく、人々が直接食することも可能である。その際、本発明の方法により得られる米飯製品では、老化の進行が防止または低減されていることを個々の人々が実感することができる。これにより、当該加工米飯の低温下での保存を通じて乾燥して硬くなり、パサつきやざらつきのような所望でない食感となることが回避され得る。
【0073】
なお、上記では、本発明の品質改良剤について、米飯製品の品質改良の観点から説明したが、フィターゼ、ならびに必要に応じて上記pH調整剤、ペクチナーゼ、および/または糖アルコールを含有する製剤は、穀類加工食品用の品質改良剤としても機能し得る。
【0074】
ここで、「穀類加工食品」とは、米、小麦、大麦、トウモロコシ、蕎麦、大豆、小豆、菜種、ゴマ、ひまわり等の穀物またはその粉を原材料として使用する加工食品を総称していう。穀類加工食品としては、うどん、そば、中華麺、スパゲッティ、ペンネ、マカロニ、ラザニアなどの麺類;食パン、菓子パン、デニッシュペストリー、調理パン、蒸しパンなどのパン類;ビスケット、クッキー、クラッカー、ボーロ、せんべい、ウェハース、ドーナツ、かりんとう、焼饅頭、どらやき、今川焼き、たい焼き、蒸饅頭、ケーキ類(例えばスポンジケーキ、バターケーキ、ワッフル、ホットケーキ、シュークリーム、パイ、バウムクーヘン)などの菓子;プレミックス;等が挙げられる。
【0075】
このような穀類加工食品を得るための原材料に対して、本発明の品質改良剤を、例えば加熱による調理前に付与(例えば、水との共存下での浸漬、塗布、噴霧、練り込み)することにより、得られる穀類加工食品の品質(例えば、柔らかさ、粘り、くちどけ、歯切れなどの食感;風味;等)を改良することができる。
【実施例0076】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0077】
なお、実施例および比較例で得られた急速冷凍後の冷凍米飯製品について、以下の方法を用いて保管かつ評価した。
【0078】
(冷凍保存方法)
急速冷凍した冷凍米飯製品を冷凍庫内に配置し、-20℃にて7日間保存した。
【0079】
(評価方法)
冷凍庫から冷凍米飯製品を取り出し、8℃にて16時間かけて解凍した。これらの解凍した米飯製品について未加熱のまま以下の官能評価および機械的測定を行った。
【0080】
(1)硬さ
解凍した米飯製品を専門家10名が実際に食して以下の基準で個々が採点し、その平均値を算出した。
(4点)適度に柔らかく、良好であった。
(3点)やや硬いが、製品としての市場流通に十分耐え得るものと判断した。
(2点)硬く、製品としての市場流通を行うとしても限定的になると判断した。
(1点)非常に硬く、このままでは製品としての市場流通は困難であると判断した。
【0081】
(2)粘り
解凍した米飯製品を専門家10名が実際に食して以下の基準で個々が採点し、その平均値を算出した。
(4点)適度な粘りがあり、良好であった。
(3点)やや粘りがあり、製品としての市場流通に十分耐え得るものと判断した。
(2点)あまり粘りがなく、ざらつきを感じ、製品としての市場流通を行うとしても限定的になると判断した。
(1点)全く粘りがなく、ざらつきを強く感じ、このままでは製品としての市場流通は困難であると判断した。
【0082】
(3)粒感
解凍した米飯製品を専門家10名が実際に食して以下の基準で個々が採点し、その平均値を算出した。
(4点)米の原型(粒感のある食感)が無添加の米飯(RC0)と同程度であり良好であった。
(3点)わずかに粒感を欠くが製品としての市場流通に十分耐え得るものと判断した。
(2点)明らかに粒感が欠き、製品としての市場流通を行うとしても限定的になると判断した。
(1点)著しく粒感が損なわれており、このままでは製品としての市場流通は困難であると判断した。
【0083】
(4)米飯製品の硬さおよび粘りについての機器測定
実施例および比較例で得られた米飯製品(上記急速冷凍から-20℃で7日間保存の後、8℃にて16時間かけて解凍した米飯製品)の一部をサンプルとして使用し、テクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製Ez Test EX-SX)による最大荷重(硬さ)および最大付着力(粘り)を以下のようにして測定した。
【0084】
20℃に調温した各米飯製品のサンプル20gを直径3.5cm、および高さ2.5cmの円柱容器に充填し、テクスチャーアナライザーの穴あきステージに当該容器を固定し、プランジャーにはφ10mmの円筒治具を用いて、速度100mm/秒、圧縮率30%の条件で圧縮することにより、各サンプルの最大荷重(硬さ)および最大付着力(粘り)を測定した。
【0085】
(実施例1~3および比較例1~3:サンプル製剤(SE1)~(SE3)および(SC1)~(SC3)の調製)
以下の(1)~(7)の材料を表1に記載の量にて組み合わせることにより、サンプル製剤(SE1)~(SE3)および(SC1)~(SC3)を得た:
(1)イノシトール(myo-イノシトール)
(2)キシリトール
(3)ラクチトール
(4)ヘミセルラーゼ剤
エイチビィアイ株式会社製セルロシンTP25;(トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)由来;アラビノキシラン(pH4.5)を基質とし、40℃にて1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力の増加をもたらす酵素量を1単位として測定したアラビノキシラン糖化力が25000u/g以上)
(5)ペクチナーゼ剤
エイチビィアイ株式会社製可溶性ペクチナーゼT(ペクチン粘度降下力700u/g以上)
(6)フィターゼ剤
天野エンザイム株式会社製フィターゼ「アマノ」3000(フィターゼ力2000u/g以上)
(7)クエン酸
【0086】
【表1】
【0087】
(実施例4:サンプル製剤(SE1)を用いた冷凍米飯(RE1)の作製と評価)
実施例1で得られたサンプル製剤(SE1)0.0075g(0.005質量部)を255g(170質量部)の水道水が入った電気炊飯器(タイガー魔法瓶株式会社製JKO-G)に添加し、匙で均一にかき混ぜて分散かつ溶解させた。生米(アイリスオーヤマ株式会社製低温製法米つや姫 無洗米)150g(100質量部)を入れ、室温で30分間浸漬した後に白米モードで炊飯した。炊き上がった米飯を直ちにコンテナ容器に移し、中心温度が30℃になるまで冷却した。このコンテナ容器に蓋をして、-40℃にて2時間かけて急速冷凍することにより冷凍米飯(RE1)を得た。この冷凍米飯(RE1)について、各評価および機器測定を行った。結果を表2および図1に示す。
【0088】
(実施例5および6:サンプル製剤(SE1)を用いた冷凍米飯(RE2)および(RE3)の作製と評価)
実施例1で得られたサンプル製剤(SE1)の添加量をそれぞれ0.030g(0.02質量部)および0.075g(0.05質量部)に変更したこと以外は実施例4と同様にして冷凍米飯(RE2)および(RE3)を得た。これら冷凍米飯(RE2)および(RE3)について各評価および機器測定を行った。結果を表2および図1に示す。
【0089】
(実施例7および8:サンプル製剤(SE2)および(SE3)を用いた冷凍米飯(RE4)および(RE5)の作製と評価)
実施例1で得られたサンプル製剤(SE1)の代わりに、実施例2および3で得られたサンプル製剤(SE2)および(SE3)0.075g(0.05質量部)のいずれかを用いたこと以外は実施例4と同様にして冷凍米飯(RE4)および(RE5)を得た。これら冷凍米飯(RE4)および(RE5)について各評価および機器測定を行った。結果を表2および図1に示す。
【0090】
(比較例4:サンプル製剤を使用しない冷凍米飯(RC0)の作製と評価)
実施例1で得られたサンプル製剤(SE1)を添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして冷凍米飯(RC0)を得た。この冷凍米飯(RC0)について各評価および機器測定を行った。結果を表2および図1に示す。
【0091】
(比較例5~7:サンプル製剤(SC1)~(SC3)を用いた冷凍米飯(RC1)~(RC3)の作製と評価)
実施例1で得られたサンプル製剤(SE1)の代わりに、比較例1~3で得られたサンプル製剤(SC1)~(SC3)0.075g(0.05質量部)のいずれかを用いたこと以外は実施例4と同様にして冷凍米飯(RC1)~(RC3)を得た。これら冷凍米飯(RC1)~(RC5)について各評価および機器測定を行った。結果を表2および図1に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示すように、実施例4~8で得られた冷凍米飯(RE1)~(RE5)はいずれもサンプル製剤中にイノシトールが含有されていることにより、比較例4~7の冷凍米飯(RC0)~(RC3)と比較して硬さおよび粘りの官能評価の結果が良好であり、具体的には解凍後に加熱なく直接食しても良好な硬さと粘りを有していたことがわかる。また、実施例4~8で得られた冷凍米飯(RE1)~(RE5)の粒感は、サンプル製剤を用いることなく炊飯した比較例4と略同様であり、サンプル製剤(SE1)~(SE3)を用いたことによって冷凍米飯の粒感は損なわれていなかった。
【0094】
さらに、図1に示すように、上記表2における官能評価の結果は、得られた冷凍米飯についての硬さおよび粘りの機器測定結果とも整合しているものであった。すなわち、図1の(a)に示すように、実施例4~8で得られた冷凍米飯(RE1)~(RE5)はいずれも、比較例4~7の冷凍米飯(RC0)~(RC3)と比較して硬さの測定値が低く抑えられていた。また、図1の(b)に示すように、実施例4~8で得られた冷凍米飯(RE1)~(RE5)はいずれも、比較例4~7の冷凍米飯(RC0)~(RC3)と比較して粘りの測定値が同等またはそれ以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば、米飯や家庭用調味料を取り扱う食品工業分野;レストランや弁当販売店などの飲食店;コンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店などの小売店;等において有用である。
図1