(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159350
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像送信方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075311
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】石黒 和宏
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AB17
5C062AB22
5C062AB23
5C062AB38
5C062AB40
5C062AC02
5C062AC04
5C062AC05
5C062AC22
5C062AC25
5C062AC34
5C062AC55
5C062AC58
5C062AE01
(57)【要約】
【課題】画像異常が発生した場合に画像異常が発生した画像の全体を効率的に送信できるようにする。
【解決手段】画像処理装置1は、原稿の画像を読み取って画像データGAを生成する画像読取部13と、画像データGAにおいて画像異常が生じている異常領域ERを検出する異常領域検出部26と、画像データGAから異常領域ERの画像を抽出して第1画像G1を生成すると共に、画像データGAから異常領域ER以外の領域を含む第2画像G2を生成する画像生成部27と、第1画像G1及び第2画像G2を画像診断装置2へ送信する通信部17と、を備える。画像生成部27は、第1画像G1の鮮明度を第2画像G2の鮮明度よりも高く設定し、第1画像G1及び第2画像G2のそれぞれを生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取部と、
前記画像データにおいて画像異常が生じている異常領域を検出する異常領域検出部と、
前記画像データから前記異常領域の画像を抽出して第1画像を生成すると共に、前記画像データから前記異常領域以外の領域を含む第2画像を生成する画像生成部と、
前記第1画像及び前記第2画像を画像診断装置へ送信する通信部と、
を備え、
前記画像生成部は、前記第1画像の鮮明度を、前記第2画像の鮮明度よりも高くすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、前記第1画像に対して画像圧縮を行わず、前記第2画像に対して前記画像圧縮を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、前記第1画像に対して所定圧縮率で画像圧縮を行い、前記第2画像に対して前記所定圧縮率よりも高い圧縮率で画像圧縮を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記第1画像に対して可逆圧縮を行い、前記第2画像に対して所定圧縮率で画像圧縮を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像生成部は、前記第1画像に対して平滑化処理を行わず、前記第2画像に対して前記平滑化処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像生成部は、前記第1画像と前記第2画像とを合わせたデータ量を所定値以下とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記異常領域検出部は、ユーザーによって指定された指定領域を前記異常領域として検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記異常領域検出部は、前記指定領域を含む矩形領域を前記異常領域として検出することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像データに基づくプレビュー画像を表示する表示部と、
前記プレビュー画像に対するユーザーの操作を受け付ける操作部と、
を備え、
前記異常領域検出部は、前記操作部を介して指定された前記指定領域を前記異常領域として検出することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記異常領域検出部は、前記画像異常が前記画像データに含まれる画像要素の一部のみに含まれる場合、前記画像要素の全体を前記異常領域として検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記異常領域検出部は、前記画像データにおいて、前記異常領域以外の領域に、前記異常領域に類似する画像要素が存在する場合、前記画像要素を前記異常領域として更に検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記画像読取部は、前記画像異常を含む原稿を読み取って第1原稿画像データを生成すると共に、前記画像異常を含まない原稿を読み取って第2原稿画像データを生成し、
前記異常領域検出部は、前記第1原稿画像データと前記第2原稿画像データとの差分を抽出して前記異常領域を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像読取部によって生成される画像データを記憶する画像記憶部、
を更に備え、
前記画像読取部は、前記画像記憶部に記憶されている画像データに画像異常が生じている場合、原稿の画像を再度読み取って画像データを生成し、
前記異常領域検出部は、前記画像読取部によって生成される画像データと、前記画像記憶部に記憶されている画像データとの差分を抽出して前記異常領域を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
印刷対象画像データを記憶する画像記憶部と、
前記印刷対象画像データに基づいてシートに画像を形成して出力する画像形成部と、
を更に備え、
前記画像読取部は、前記シートに形成された画像に画像異常が生じている場合、前記シートの画像を読み取って画像データを生成し、
前記異常領域検出部は、前記画像読取部によって生成される画像データと、前記画像記憶部に記憶されている前記印刷対象画像データとの差分を抽出して前記異常領域を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記画像生成部は、前記異常領域と前記異常領域以外の領域とを含む前記第2画像を生成し、前記第2画像における前記異常領域を所定色で塗り潰すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記異常領域検出部は、前記第1画像及び前記第2画像が前記画像診断装置へ送信された後に、前記画像診断装置から再送要求を受信した場合、前記異常領域を拡大し、
前記画像生成部は、前記異常領域検出部によって拡大された前記異常領域に基づいて前記第1画像と前記第2画像とを再度生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項17】
画像処理装置において行われる画像送信方法であって、
原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取ステップと、
前記画像データにおいて画像異常が生じている異常領域を検出する異常領域検出ステップと、
前記画像データから前記異常領域の画像を抽出して第1画像を生成すると共に、前記画像データから前記異常領域以外の領域を含む第2画像を生成する画像生成ステップと、
前記第1画像及び前記第2画像を画像診断装置へ送信する送信ステップと、
を有し、
前記画像生成ステップは、前記第1画像の鮮明度を、前記第2画像の鮮明度よりも高くすることを特徴とする画像送信方法。
【請求項18】
画像処理装置において実行されるプログラムであって、前記画像処理装置に、
原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取ステップと、
前記画像データにおいて画像異常が生じている異常領域を検出する異常領域検出ステップと、
前記画像データから前記異常領域の画像を抽出して第1画像を生成すると共に、前記画像データから前記異常領域以外の領域を含む第2画像を生成する画像生成ステップと、
前記第1画像及び前記第2画像を画像診断装置へ送信する送信ステップと、
を実行させ、
前記画像生成ステップは、前記第1画像の鮮明度を、前記第2画像の鮮明度よりも高くすることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像送信方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MFP(Multifunction Peripherals)などの画像処理装置は、スキャンジョブ、プリントジョブ、コピージョブなどの各種のジョブを実行する。画像処理装置においてそれらのジョブを実行すると、画像異常が生じることがある。例えば、スキャンジョブの場合、原稿(シート)の画像を読み取って生成される画像データに、筋状の画像汚れが発生することがある。また、プリントジョブの場合も同様に、印刷用紙などのシートに形成された画像に筋状の画像汚れが発生することがある。ただし、画像処理装置において発生する画像異常は、筋状の画像汚れには限られず、その他様々な異常が発生する。
【0003】
一方、近年では、サービス拠点に滞在するサービスマンが、画像処理装置のユーザーと電話回線を介した通話などを行い、画像処理装置において発生したトラブルの原因を特定し、ユーザー自身による部品交換や清掃を案内したり、又は、メンテナンス作業のためにサービスマンを派遣したりすることが行われている。
【0004】
ところが、画像処理装置において画像異常が発生した場合、専門知識のないユーザーが症状を適切に説明することは難しい。画像異常に関する表現は抽象的になりやすく、また人によってそれぞれ異なる表現となる。そのため、サービスマンにとっては、ユーザーとの通話だけで画像異常の原因を特定することが難しい。
【0005】
そこで、画像異常の発生した画像を画像処理装置のスキャンジョブで読み取り、画像データをサービス拠点に送信することにより、サービス拠点で実際の画像を診断する手法を採用することが考えられる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スキャンジョブの実行時に画像を高解像度で読み取ると、画像データのデータ量が大きくなるため、画像データを送信する際に時間がかかるという問題がある。また、電子メールに添付して画像データを送信する場合には、画像データのデータ量が電子メールサーバーの許容量を超えてしまうと、電子メールを送信することができなくなるという問題がある。
【0008】
一方、画像データの送信時間や電子メールサーバーの許容量を考慮し、画像データの圧縮率を高くしたり、又は、解像度を低くしたりすると、画像が不鮮明になるため、画像異常の原因を特定することが難しくなる。
【0009】
また、画像データのうちから画像異常が発生している部分だけを切り出して送信する手法も考えられる。しかし、画像異常の原因を適切に特定するためには、画像異常が発生している部分だけを解析するのではなく、画像全体を解析することが好ましい。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するため、画像異常が発生した場合に画像異常が発生した画像の全体を効率的に送信できるようにした画像処理装置、画像送信方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、画像処理装置であって、原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取部と、前記画像データにおいて画像異常が生じている異常領域を検出する異常領域検出部と、前記画像データから前記異常領域の画像を抽出して第1画像を生成すると共に、前記画像データから前記異常領域以外の領域を含む第2画像を生成する画像生成部と、前記第1画像及び前記第2画像を画像診断装置へ送信する通信部と、を備え、前記画像生成部は、前記第1画像の鮮明度を、前記第2画像の鮮明度よりも高くすることを特徴とする構成である。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、前記画像生成部は、前記第1画像に対して画像圧縮を行わず、前記第2画像に対して前記画像圧縮を行うことを特徴とする構成である。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、前記画像生成部は、前記第1画像に対して所定圧縮率で画像圧縮を行い、前記第2画像に対して前記所定圧縮率よりも高い圧縮率で画像圧縮を行うことを特徴とする構成である。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、前記画像生成部は、前記第1画像に対して可逆圧縮を行い、前記第2画像に対して所定圧縮率で画像圧縮を行うことを特徴とする構成である。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかの画像処理装置において、前記画像生成部は、前記第1画像に対して平滑化処理を行わず、前記第2画像に対して前記平滑化処理を行うことを特徴とする構成である。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかの画像処理装置において、前記画像生成部は、前記第1画像と前記第2画像とを合わせたデータ量を所定値以下とすることを特徴とする構成である。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかの画像処理装置において、前記異常領域検出部は、ユーザーによって指定された指定領域を前記異常領域として検出することを特徴とする構成である。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項7の画像処理装置において、前記異常領域検出部は、前記指定領域を含む矩形領域を前記異常領域として検出することを特徴とする構成である。
【0019】
請求項9に係る発明は、請求項7の画像処理装置において、前記画像データに基づくプレビュー画像を表示する表示部と、前記プレビュー画像に対するユーザーの操作を受け付ける操作部と、を備え、前記異常領域検出部は、前記操作部を介して指定された前記指定領域を前記異常領域として検出することを特徴とする構成である。
【0020】
請求項10に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、前記異常領域検出部は、前記画像異常が前記画像データに含まれる画像要素の一部のみに含まれる場合、前記画像要素の全体を前記異常領域として検出することを特徴とする構成である。
【0021】
請求項11に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、前記異常領域検出部は、前記画像データにおいて、前記異常領域以外の領域に、前記異常領域に類似する画像要素が存在する場合、前記画像要素を前記異常領域として更に検出することを特徴とする構成である。
【0022】
請求項12に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、前記画像読取部は、前記画像異常を含む原稿を読み取って第1原稿画像データを生成すると共に、前記画像異常を含まない原稿を読み取って第2原稿画像データを生成し、前記異常領域検出部は、前記第1原稿画像データと前記第2原稿画像データとの差分を抽出して前記異常領域を検出することを特徴とする構成である。
【0023】
請求項13に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、前記画像読取部によって生成される画像データを記憶する画像記憶部、を更に備え、前記画像読取部は、前記画像記憶部に記憶されている画像データに画像異常が生じている場合、原稿の画像を再度読み取って画像データを生成し、前記異常領域検出部は、前記画像読取部によって生成される画像データと、前記画像記憶部に記憶されている画像データとの差分を抽出して前記異常領域を検出することを特徴とする構成である。
【0024】
請求項14に係る発明は、請求項1の画像処理装置において、印刷対象画像データを記憶する画像記憶部と、前記印刷対象画像データに基づいてシートに画像を形成して出力する画像形成部と、を更に備え、前記画像読取部は、前記シートに形成された画像に画像異常が生じている場合、前記シートの画像を読み取って画像データを生成し、前記異常領域検出部は、前記画像読取部によって生成される画像データと、前記画像記憶部に記憶されている前記印刷対象画像データとの差分を抽出して前記異常領域を検出することを特徴とする構成である。
【0025】
請求項15に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかの画像処理装置において、前記画像生成部は、前記異常領域と前記異常領域以外の領域とを含む前記第2画像を生成し、前記第2画像における前記異常領域を所定色で塗り潰すことを特徴とする構成である。
【0026】
請求項16に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかの画像処理装置において、前記異常領域検出部は、前記第1画像及び前記第2画像が前記画像診断装置へ送信された後に、前記画像診断装置から再送要求を受信した場合、前記異常領域を拡大し、前記画像生成部は、前記異常領域検出部によって拡大された前記異常領域に基づいて前記第1画像と前記第2画像とを再度生成することを特徴とする構成である。
【0027】
請求項17に係る発明は、画像処理装置において行われる画像送信方法であって、原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取ステップと、前記画像データにおいて画像異常が生じている異常領域を検出する異常領域検出ステップと、前記画像データから前記異常領域の画像を抽出して第1画像を生成すると共に、前記画像データから前記異常領域以外の領域を含む第2画像を生成する画像生成ステップと、前記第1画像及び前記第2画像を画像診断装置へ送信する送信ステップと、を有し、前記画像生成ステップは、前記第1画像の鮮明度を、前記第2画像の鮮明度よりも高くすることを特徴とする構成である。
【0028】
請求項18に係る発明は、画像処理装置において実行されるプログラムであって、前記画像処理装置に、原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取ステップと、前記画像データにおいて画像異常が生じている異常領域を検出する異常領域検出ステップと、前記画像データから前記異常領域の画像を抽出して第1画像を生成すると共に、前記画像データから前記異常領域以外の領域を含む第2画像を生成する画像生成ステップと、前記第1画像及び前記第2画像を画像診断装置へ送信する送信ステップと、を実行させ、前記画像生成ステップは、前記第1画像の鮮明度を、前記第2画像の鮮明度よりも高くすることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、異常領域の画像を抽出した第1画像の鮮明度を、異常領域以外の領域を含む第2画像の鮮明度よりも高くして第1画像及び第2画像のそれぞれを生成するため、画像異常を含む第1画像の鮮明度を高く維持しつつ、画像サイズの大きい第2画像のデータ量を低減させることができる。それ故、本発明は、画像異常が発生した場合に画像異常が発生した画像の全体を効率的に送信することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】画像処理装置を含むネットワークシステムの構成例を示す図である。
【
図2】画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】画像異常処理部による処理の概念を示す図である。
【
図4】リモートメンテナンスモードにおける画像処理装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第1画像生成処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2画像生成処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第2画像の圧縮率を決定する際の処理概念を示す図である。
【
図9】コピージョブで画像異常が発生した場合に異常領域検出部が異常領域を自動検出する例を示す図である。
【
図10】スキャンジョブで画像異常が発生した場合に異常領域検出部が異常領域を自動検出する例を示す図である。
【
図11】プリントジョブで画像異常が発生した場合に異常領域検出部が異常領域を自動検出する例を示す図である。
【
図12】画像データに含まれる画像要素の一部のみに画像異常が含まれる場合に異常領域を検出する例を示す図である。
【
図13】異常領域以外の領域に、異常領域に類似する画像要素が存在する場合に異常領域を検出する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態である画像処理装置1を含むネットワークシステムの構成例を示す図である。このネットワークシステムは、ユーザーのローカル環境6に設置される画像処理装置1と、遠隔のサービス拠点7に設置される画像診断装置2とがインターネットなどのネットワーク3を介して通信可能なシステムである。
【0033】
ローカル環境6には、LAN(Local Area Network)などのローカルネットワーク4が設置される。そのローカルネットワーク4には、画像処理装置1と、複数の情報処理装置5とが接続される。
【0034】
画像処理装置1は、MFPなどで構成され、スキャンジョブ、プリントジョブ、コピージョブなどの各種のジョブを実行する。例えばスキャンジョブの場合、画像処理装置1は、ユーザーによってセットされた原稿の画像を読み取り、画像データを生成する。また画像処理装置1は、ローカルネットワーク4を介して情報処理装置5からプリントジョブを受信した場合、そのプリントジョブを実行する。画像処理装置1は、プリントジョブを実行すると、そのプリントジョブにおいて指定された印刷対象画像データに基づき、印刷用紙などのシートに画像形成を行って出力する。更に、コピージョブの場合、画像処理装置1は、ユーザーによってセットされた原稿の画像を読み取って画像データを生成し、その画像データに基づく画像をシートに形成して出力する。
【0035】
このように画像処理装置1は、ジョブを実行することによって画像を出力する。ユーザーは、画像処理装置1から出力される画像を確認することにより、画像処理装置1において正常にジョブが実行されたか否かを判断する。例えば、画像処理装置1から出力された画像に汚れや輝点、筋状の汚れが付着していると、ユーザーは、画像異常が生じていると判断する。ユーザーは、画像異常を確認すると、サービス拠点7のサービスマンに連絡して画像異常を解消するための作業を行う。例えば、ユーザーは、画像処理装置1の動作モードを通常ジョブモードからリモートメンテナンスモードに切り替え、画像異常が発生している画像をサービス拠点7の画像診断装置2へ送信する。
【0036】
サービス拠点7のサービスマンは、画像診断装置2において表示される画像を確認し、画像処理装置1における画像異常の発生原因を特定する。特定した画像異常の発生原因に基づき、サービスマンは、ユーザー自身による部品交換や清掃を案内したり、又は、メンテナンス作業のために別のサービスマンをローカル環境6に派遣したりする。
【0037】
図2は、画像処理装置1の構成例を示すブロック図である。画像処理装置1は、制御部10と、操作パネル11と、自動原稿搬送部12と、画像読取部13と、画像メモリ14と、給紙部15と、画像形成部16と、通信インタフェース17とを備え、これらがバス18を介して相互にデータの入出力を行うことができる構成である。
【0038】
制御部10は、CPU20と、メモリ21とを備え、画像処理装置1の動作を統括的に制御する。CPU20は、メモリ21に記憶されているプログラム22を読み出して実行するハードウェアプロセッサである。メモリ21は、プログラム22を記憶する記憶部である。
【0039】
操作パネル11は、ユーザーが画像処理装置1を使用する際のユーザーインタフェースである。操作パネル11は、各種画面を表示する表示部11aと、ユーザーによる操作を受け付ける操作部11bとを備える。表示部11aは、例えばカラー液晶ディスプレイによって構成される。操作部11bは、例えば表示部11aの画面上に配置されるタッチパネルキーによって構成される。
【0040】
自動原稿搬送部12及び画像読取部13は、画像処理装置1においてスキャンジョブ又はコピージョブが実行される際に動作する。自動原稿搬送部12は、ユーザーによってセットされる原稿を自動搬送する。画像読取部13は、ユーザーによってセットされた原稿の画像を読み取って画像データを生成する。画像読取部13は、自動原稿搬送部12による原稿の搬送動作と連動し、自動原稿搬送部12によって搬送される原稿の画像を自動読み取りすることができる。例えば、自動原稿搬送部12によって複数枚の原稿の連続自動搬送が行われるとき、画像読取部13は、それら複数枚の原稿の画像を連続的に自動読み取りすることができる。
【0041】
画像メモリ14は、ジョブの実行によって生成される画像データ、又は、印刷対象となる画像データを記憶するメモリである。画像メモリ14は、データ容量が十分に大きく、複数枚分の画像データを記憶しておくことができる。
【0042】
給紙部15及び画像形成部16は、画像処理装置1においてプリントジョブ又はコピージョブが実行される際に動作する。給紙部15は、印刷用紙などのシートを給紙し、画像形成部16へ搬送する。画像形成部16は、給紙部15によって給紙されるシートに対し、印刷対象画像データに基づく画像を形成し、その画像をシートに定着させて出力する。
【0043】
通信インタフェース17は、画像処理装置1をネットワーク3及びローカルネットワーク4に接続して通信を行う通信部である。画像処理装置1は、この通信インタフェース17を介して情報処理装置5から送信されるプリントジョブを受信する。また、画像処理装置1は、この通信インタフェース17を介して画像診断装置2と通信を行う。
【0044】
制御部10のCPU20は、プログラム22を実行することにより、ジョブ制御部23、及び、画像異常処理部24として機能する。ジョブ制御部23は、通常ジョブモードにおいて動作する制御部であり、スキャンジョブ、コピージョブ、及び、プリントジョブのそれぞれの動作を制御する。
【0045】
画像異常処理部24は、通常ジョブモードにおいてジョブを実行した結果、画像異常が発生し、ユーザーによって動作モードがリモートメンテナンスモードに切り替えられた場合に動作する。画像異常処理部24は、画像取得部25と、異常領域検出部26と、画像生成部27とを備えている。
【0046】
画像取得部25は、ジョブの実行によって画像異常が発生している画像の画像データを取得する。例えばコピージョブ又はプリントジョブにおいて画像異常が発生した場合、その画像異常は、画像形成部16から出力されたシートの印刷画像に含まれている。この場合、画像取得部25は、ユーザーの指示に基づいて画像読取部13を駆動し、画像異常を含むシートの画像を読み取ることによって生成される画像データを取得する。また、スキャンジョブにおいて画像異常が発生した場合、その画像異常は、画像メモリ14に保存されている画像データに含まれている。この場合、画像取得部25は、画像メモリ14に保存されている画像データを取得する。例えば、画像メモリ14に複数種類の画像データが保存されている場合、画像取得部25は、複数種類の画像データのうちから、ユーザーによって指定された画像データを、画像異常を含む画像データとして取得する。
【0047】
異常領域検出部26は、画像取得部25によって取得される画像データにおいて画像異常が生じている異常領域を検出する。例えば、異常領域検出部26は、ユーザーによって指定された領域を異常領域として検出する。異常領域検出部26によって検出される異常領域は矩形の領域である。そのため、異常領域検出部26は、画像異常が生じている部分を包含する矩形領域を異常領域として検出する。
【0048】
画像生成部27は、画像異常が生じている部分を含む第1画像と、画像異常が生じている部分以外の画像を含む第2画像とを生成する。例えば、画像生成部27は、画像取得部25によって取得された画像データから、異常領域検出部26によって検出された異常領域の画像を抽出して第1画像を生成する。また、画像生成部27は、画像取得部25によって取得された画像データから、異常領域検出部26によって検出された異常領域以外の画像を含む第2画像を生成する。尚、画像生成部27は、第2画像を生成するとき、異常領域の画像と、異常領域以外の画像との双方を含む画像を生成しても良い。
【0049】
図3は、画像異常処理部24による処理の概念を示す図である。画像異常処理部24は、まず画像取得部25を機能させる。画像取得部25は、例えば
図3(a)に示すように汚れなどの画像異常30を含む画像データGAを取得する。
図3(a)では、画像データGAに含まれるグラフの一部に円形の汚れが画像異常30として含まれる例を示している。
【0050】
画像取得部25によって
図3(a)に示すような画像データGAが取得されると、画像異常処理部24は、異常領域検出部26を機能させる。異常領域検出部26は、
図3(b)に示すように画像データGAにおいて画像異常30が生じている異常領域ERを検出する。
図3(b)の例では、画像データGAのグラフの一部に含まれる円形の汚れが昭事例輝領域を異常領域ERとして検出している。
【0051】
異常領域検出部26によって異常領域ERが検出されると、画像異常処理部24は、画像生成部27を機能させる。画像生成部27は、
図3(c)に示すように、画像データGAから異常領域ERの画像を抽出して第1画像G1を生成すると共に、異常領域ER以外の領域を含む第2画像G2を生成する。例えば、画像生成部27は、第2画像G2を生成するとき、画像データGAの全体から第2画像G2を生成し、第2画像G2における異常領域ERを所定色で塗り潰す。
図3(c)では、第2画像G2における異常領域ERを黒色で塗り潰した例を示している。ただし、異常領域ERを塗り潰す色は、黒色に限られるものではなく、所定階調のグレー色であっても構わない。
【0052】
図2に戻り、画像生成部27は、画像処理部28を備えている。画像処理部28は、画像データGAから生成される第1画像G1及び第2画像のそれぞれに対して画像処理を行う。具体的には、画像処理部28は、第1画像G1に対して画像の鮮明度をなるべく低下させない画像処理を行う。尚、画像処理部28は、第1画像G1に対する画像処理を行わないようにしても構わない。第1画像G1は、画像異常30が生じている部分を含んでいる。そのため、サービス拠点のサービスマンは、鮮明度の高い第1画像G1を確認することで画像異常30の症状や発生原因を特定しやすくなる。
【0053】
これに対し、画像処理部28は、第2画像G2に対して画像の鮮明度を第1画像G1よりも低下させる画像処理を行う。第2画像G2は、画像異常30が生じている部分の周辺の画像を含んでいる。例えば、第1画像G1だけでは画像異常30の症状や発生原因を特定できない場合、画像異常30の周辺部分を含む第2画像G2は、画像異常30の症状や発生原因を特定するために有用である。つまり、第2画像G2は、画像異常30の症状や発生原因を特定するために副次的に参照される画像である。それ故、画像異常30の診断における第2画像G2の重要度は第1画像G1よりも低く、第2画像G2が鮮明度の低い画像であっても構わない。
【0054】
画像の鮮明度を低下させると、画像のデータ量を低減することができる。そのため、画像処理部28は、第1画像G1よりも画像サイズの大きい第2画像G2の鮮明度を低下させてデータ量を低減することにより、第1画像G1及び第2画像G2の双方を含むデータ量を低減することができる。
【0055】
例えば、画像処理部28は、第1画像G1に対してJPEGなどの画像圧縮を行わず、第2画像に対してJPEGなどの画像圧縮を行う。これにより、画像処理部28は、第1画像G1の鮮明度を高く維持すると共に、第2画像G2の鮮明度を低下させてデータ量を低減させることができる。
【0056】
また、画像処理部28は、第1画像G1に対して所定圧縮率でJPEGなどの画像圧縮を行い、第2画像G2に対して所定圧縮率よりも高い圧縮率でJPEGなどの画像圧縮を行うようにしても良い。この場合、第1画像G1は、鮮明度を若干低下させてしまうが、第2画像G2よりも高い鮮明度を維持することができる。加えて、第2画像G2の圧縮率を所定圧縮率よりも高く設定することにより、画像処理部28は、第2画像G2データ量をかなり低減させることができる。
【0057】
また、画像処理部28は、第1画像G1に対して可逆圧縮を行い、第2画像G2に対して所定圧縮率でJPEGなどの画像圧縮(非可逆圧縮)を行うようにしても良い。この場合、第1画像G1は、可逆圧縮によってデータ量が低減する。また、第1画像G1に対する圧縮処理が可逆圧縮であるため、画像診断装置2は、画像処理装置1から受信した第1画像G1に対して復元処理を行うことにより、元の鮮明度の高い第1画像G1を復元することができる。これに対し、第2画像G2は、比較的高い圧縮率である所定圧縮率で非可逆圧縮されるため、データ量がかなり低減する。
【0058】
また、画像処理部28は、第1画像G1に対して画像の平滑化処理を行わず、第2画像に対して画像の平滑化処理を行うようにしても良い。これにより、画像処理部28は、第1画像G1の鮮明度を高く維持すると共に、第2画像G2の鮮明度を低下させてデータ量を低減させることができる。また、画像処理部28は、第2画像G2に対して平滑化処理を行った後、更に非可逆の画像圧縮を行うようにしても良い。第2画像G2に平滑化処理を行ってから画像圧縮することにより、第2画像G2のデータ量を著しく低減できるという利点がある。
【0059】
画像生成部27は、第1画像G1及び第2画像G2のそれぞれに対して予め設定された画像処理を個別に行った後、第1画像G1及び第2画像G2を、通信インタフェース17を介してサービス拠点7の画像診断装置2へ送信する。これにより、画像診断装置2は、画像処理装置1から第1画像G1及び第2画像G2を受信する。このとき、画像処理装置1から送信される第1画像G1は高い鮮明度が維持されている。また、画像サイズの大きい第2画像G2はデータ量が低減されている。つまり、画像生成部27は、画像異常30の症状や発生原因を特定しやすい状態を確保しつつ、しかもデータ量を低減させた状態で第1画像G1及び第2画像G2を送信するため、画像送信に要する時間を短くできる。それ故、サービス拠点7のサービスマンは、画像診断装置2によって表示される第1画像G1及び第2画像G2を速やかに確認し、画像異常30の症状や発生原因を早期に特定することができる。
【0060】
図4は、リモートメンテナンスモードにおける画像処理装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、制御部10のCPU20がメモリ21に記憶されているプログラム22を読み出して実行することにより行われる。制御部10は、この処理を開始すると、画像処理装置1の動作モードがリモートメンテナンスモードに切り替えられたか否かを判断する(ステップS1)。動作モードがリモートメンテナンスモードでない場合(ステップS1でNO)、制御部10は、
図4のフローチャートに基づく処理を終了させる。
【0061】
動作モードがリモートメンテナンスモードに切り替わった場合(ステップS1でYES)、制御部10は、ユーザーによる画像読み取り指示があるまで待機する(ステップS2でNO)。例えば、ユーザーは、画像異常が発生したシートを自動原稿搬送部12にセットし、操作パネル11を介して画像読み取り指示を入力する。制御部10は、ユーザーによる画像読み取り指示を検知すると(ステップS2でYES)、自動原稿搬送部12及び画像読取部13を動作させてユーザーによってセットされたシートの画像を読み取る(ステップS3)。制御部10は、シートから読み取った画像データGAを画像メモリ14へ保存する(ステップS4)。
【0062】
次に制御部10は、画像メモリ14に保存した画像データGAにおいて画像異常30が生じている領域を検出する異常領域検出処理を実行する(ステップS5)。
図5は、異常領域検出処理の一例を示す図である。例えば、プリントジョブやコピージョブによって画像処理装置1から出力されたシートをユーザーが確認した結果、汚れなどの画像異常30を認めると、そのシートに対し、画像異常30の部分を囲んだマーキング31を手書きする。例えば、マーキング31は、赤色などの所定色でシートに書き込まれる。ユーザーは、マーキング31を書き込んだシートを、自動原稿搬送部12にセットし、画像処理装置1にスキャンジョブを実行させることで、シートの画像を読み取らせる。その結果、画像処理装置1は、
図5(a)に示すような画像データGAを取得し、画像メモリ14へ保存する。
【0063】
異常領域検出処理(ステップS5)において、制御部10は、まず
図5(b)に示すように、画像データGAのうちから、ユーザーが手書きで書き込んだマーキング31を検出する。例えば、制御部10は、画像データGAのうちから赤色などの所定色を検出することにより、マーキング31を検出する。マーキング31を検出すると、制御部10は、画像データGAにマーキング31を包含する矩形領域を付与し、その矩形領域を異常領域ERとして検知する。制御部10は、このような異常領域検出処理によって、画像異常30を包含する異常領域ERを検知する。
【0064】
また、マーキング31は、必ずしも画像処理装置1から出力されたシートに書き込まれていなくても構わない。例えば、制御部10は、画像異常30を含む画像データGAからマーキング31を検出できないとき、画像データGAに基づくプレビュー画像を操作パネル11の表示部11aに表示し、プレビュー画像に対するユーザーの操作に基づいて、画像異常30を含む領域を特定するようにしても構わない。この場合、制御部10は、操作部11bに対するユーザーの操作を検知し、プレビュー画像に対してユーザーが指定した指定領域を特定する。そして制御部10は、プレビュー画像に対してユーザーが指定した指定領域を異常領域ERをとして検知する。このように制御部10は、画像データGAにユーザーが手書きしたマーキング31が含まれていない場合であっても、操作パネル11にプレビュー画像を表示してユーザーによる領域の指定操作を受け付けることで異常領域ERを検出することができる。
【0065】
図4のフローチャートに戻り、制御部10は、画像データGAにおける異常領域ERを検出することができると、第1画像生成処理を実行する(ステップS6)。第1画像生成処理は、第1画像G1を生成する処理である。
【0066】
図6は、第1画像生成処理(ステップS6)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、第1画像生成処理を開始すると、画像データGAから異常領域ERの画像を抽出する(ステップS10)。制御部10は、画像データGAから切り出した異常領域ERの画像で構成される第1画像G1を生成する(ステップS11)。制御部10は、第1画像G1を生成すると、第1画像G1に対して画像圧縮を行うか否かを判断する(ステップS12)。例えば、第1画像G1に対して画像圧縮を行うか否かは予め設定されている。第1画像G1に対して画像圧縮を行う場合(ステップS12でYES)、制御部10は、可逆圧縮を行うか否かを判断する(ステップS13)。例えば、第1画像G1に対して画像圧縮を行うことが設定されている場合、その画像圧縮が可逆圧縮であるか否かについても予め設定されている。制御部10は、可逆圧縮を行うと判断すると(ステップS13でYES)、第1画像G1に対する可逆圧縮処理を実行する(ステップS14)。
【0067】
また、可逆圧縮ではないと判断すると(ステップS13でNO)、制御部10は、第1画像G1に対する圧縮率を設定する(ステップS15)。このとき、制御部10は、第1画像G1の鮮明度をあまり低下させないように所定値よりも低い第1の圧縮率を設定する。制御部10は、その第1の圧縮率を適用して第1画像G1に対する画像圧縮処理を実行する(ステップS16)。これにより、第1画像G1は、鮮明度を低下させることなく、データ量がある程度小さくなる。尚、ステップS12において、第1画像G1に対する画像圧縮を行わないと判断した場合、制御部10は、ステップS13~S16の処理を行わない。その後、制御部10は、第1画像G1を画像メモリ14に保存する(ステップS17)。以上で、第1画像生成処理(ステップS6)が終了する。
【0068】
次に、制御部10は、第2画像生成処理を実行する(ステップS7)。第2画像生成処理は、第2画像G2を生成する処理である。
【0069】
図7は、第2画像生成処理(ステップS7)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、第2画像生成処理を開始すると、画像メモリ14から画像データGAを読み出し、その画像データGAの異常領域ERを所定色で塗り潰す(ステップS20)。制御部10は、画像データGAの異常領域ERを塗り潰した画像で構成される第2画像G2を生成する(ステップS21)。制御部10は、第2画像G2を生成すると、第2画像G2に対して平滑化処理を行うか否かを判断する(ステップS22)。例えば、第2画像G2に対して平滑化処理を行うか否かは予め設定されている。第2画像G2に対して平滑化処理を行う場合(ステップS22でYES)、制御部10は、第2画像G2に対する平滑化処理を実行する(ステップS23)。
【0070】
次に、制御部10は、第2画像G2に対する圧縮率を設定する(ステップS24)。このとき、制御部10は、第2画像G2のデータ量を所定値よりも低減できるように第1の圧縮率よりも高い第2の圧縮率を設定する。制御部10は、その第2の圧縮率を適用して第2画像G2に対する画像圧縮処理を実行する(ステップS25)。これにより、第2画像G2は、画像データGAと比較してデータ量がかなり小さくなる。その後、制御部10は、第2画像G2を画像メモリ14に保存する(ステップS26)。以上で、第2画像生成処理(ステップS7)が終了する。
【0071】
図4のフローチャートに戻り、最後に、制御部10は、画像メモリ14に保存されている第1画像G1と第2画像G2とを画像診断装置2へ送信する(ステップS8)。つまり、制御部10は、画像異常30を含む異常領域ERから成る第1画像G1を高精細な画像として画像診断装置2へ送信すると共に、異常領域ERの周辺部分を含む大サイズの第2画像G2をデータ量の少ない画像として画像診断装置2へ送信する。したがって、画像処理装置1は、ジョブの実行によって画像異常30が発生した場合に、画像異常30が発生した画像の全体を効率的に画像診断装置2へ送信することができる。例えば、制御部10は、画像診断装置2との間で確立している通信路を利用して第1画像G1及び第2画像G2をそのまま画像診断装置2へ送信する。ただし、これに限られるものではなく、制御部10は、第1画像G1及び第2画像G2を添付ファイルとして添付した電子メールを作成し、その電子メールを画像診断装置2のアドレスへ送信しても構わない。
【0072】
図8は、第2画像G2の圧縮率を決定する際の処理概念を示す図である。例えば、第1画像G1と第2画像G2とを加算したデータ量が
図8に示す許容量を超えると、転送効率が低下することがある。そこで、制御部10は、鮮明度の高い第1画像G1を生成することによって許容量までの残りデータ量がXである場合、第2画像G2のデータ量がX以下となるように第2画像G2の圧縮率を決定する。これにより、制御部10は、第2画像G2に対する画像圧縮を行うと、第2画像G2のデータ量をX以下に抑えることができる。つまり、制御部10は、第1画像G1と第2画像G2とを合わせたデータ量を所定値(許容量)以下とすることができるのである。これにより、第1画像G1と第2画像G2とを画像診断装置2へ送信する際に転送効率が低下することを防ぐことができる。
【0073】
また、制御部10が電子メールに添付して第1画像G1と第2画像G2とを送信する場合にも、電子メール全体のデータ量を許容量以下とすることができる。電子メールの場合、電子メールのデータ量が電子メールサーバーの許容量を超えてしまうと、電子メールを送信することができなくなる。しかし、制御部10は、電子メールサーバーの許容量を超えないように第2画像G2のデータ量を低減できるため、第1画像G1と第2画像G2とを添付した電子メールが画像診断装置2へ送信されないという不具合を未然に防ぐことができる。
【0074】
次に、画像異常処理部24が異常領域ERを自動検出する実施例について説明する。
図9は、コピージョブで画像異常が発生した場合に異常領域検出部26が異常領域ERを自動検出する例を示す図である。コピージョブで画像異常が発生すると、画像異常処理部24は、
図9(a)に示すように画像異常32が発生したシート(第1原稿)41の画像を画像読取部13で読み取り、画像異常32を含む画像データ(第1原稿画像データ)GAを生成する。
図9(a)では、シート41に縦方向の筋状の汚れが画像異常32として発生している例を示している。
【0075】
続いて画像異常処理部24は、
図9(b)に示すように、コピージョブで使用したコピー元のシート(第2原稿)42の画像を画像読取部13で読み取り、画像異常32を含まない画像データ(第2原稿画像データ)GBを生成する。その結果、画像メモリ14には、画像データGAと画像データGBとが記憶される。その後、画像異常処理部24は、異常領域検出部26を機能させる。異常領域検出部26は、画像メモリ14に記憶されている画像データGA,GBを読み出し、画像データGAと画像データGBとの差分を抽出する。画像データGAには画像異常32が含まれており、画像データGBには画像異常32が含まれていない。そのため、画像データGAと画像データGBとの差分を抽出することにより、異常領域検出部26は、
図9(c)に示すように画像データGAに含まれる画像異常32を抽出する。異常領域検出部26は、画像異常32を抽出すると、その画像異常32を含む矩形領域を異常領域ERとして検出する。このとき、異常領域検出部26は、画像異常32よりも若干大きい領域を異常領域ERとして検出する。したがって、画像異常処理部24は、コピージョブで画像異常32が発生した場合にその画像異常32を含む異常領域ERを自動検出することができる。
【0076】
次に、
図10は、スキャンジョブで画像異常が発生した場合に異常領域検出部26が異常領域ERを自動検出する例を示す図である。スキャンジョブで画像異常が発生すると、その画像異常32を含む画像データGAは、画像メモリ14に保存されている。そのため、画像異常処理部24は、
図10に示すようにスキャンジョブで使用したオリジナルのシート42の画像を画像読取部13で読み取る。これにより、画像メモリ14に画像異常32を含まない画像データGBが保存される。その後、画像異常処理部24は、異常領域検出部26を機能させる。異常領域検出部26は、画像メモリ14に記憶されている画像データGA,GBを読み出し、画像データGAと画像データGBとの差分を抽出する。画像データGAには画像異常32が含まれており、画像データGBには画像異常32が含まれていない。そのため、画像データGAと画像データGBとの差分を抽出することにより、異常領域検出部26は、
図10に示すように画像データGAに含まれる画像異常32を抽出する。異常領域検出部26は、画像異常32を抽出すると、その画像異常32を含む矩形領域を異常領域ERとして検出する。このとき、異常領域検出部26は、画像異常32よりも若干大きい領域を異常領域ERとして検出する。このように画像異常処理部24は、スキャンジョブを実行した結果、画像メモリ14に記憶されている画像データGAに画像異常32が生じている場合、原稿の画像を再度読み取って画像データGBを生成する。そして、異常領域検出部26は、画像読取部13によって生成される画像データGBと、画像メモリ14に記憶されている画像データGAとの差分を抽出して異常領域ERを検出する。したがって、画像異常処理部24は、スキャンジョブで生成した画像データGAに画像異常32が含まれる場合においても、画像データGAにおいて画像異常32が生じている異常領域ERを自動検出することができる。
【0077】
次に、
図11は、プリントジョブで画像異常が発生した場合に異常領域検出部26が異常領域ERを自動検出する例を示す図である。プリントジョブで画像異常32が発生すると、その画像異常32は、画像処理装置1から出力されたシート41に含まれる。そのため、画像異常処理部24は、
図11に示すようにプリントジョブによって出力されたシート41の画像を画像読取部13で読み取る。これにより、画像メモリ14に画像異常32を含む画像データGAが保存される。一方、画像異常32を含まない画像データGBは、印刷対象画像データとして既に画像メモリ14に記憶されている。異常領域検出部26は、画像メモリ14に記憶されている画像データGA,GBを読み出し、画像データGAと画像データGBとの差分を抽出する。画像データGAには画像異常32が含まれており、画像データGBには画像異常32が含まれていない。そのため、画像データGAと画像データGBとの差分を抽出することにより、異常領域検出部26は、
図11に示すように画像データGAに含まれる画像異常32を抽出する。異常領域検出部26は、画像異常32を抽出すると、その画像異常32を含む矩形領域を異常領域ERとして検出する。このとき、異常領域検出部26は、画像異常32よりも若干大きい領域を異常領域ERとして検出する。したがって、画像異常処理部24は、プリントジョブで生成した画像データGAに画像異常32が含まれる場合においても、画像データGAにおいて画像異常32が生じている異常領域ERを自動検出することができる。
【0078】
このように本実施形態の画像処理装置1は、ジョブの実行によって画像異常32が発生した場合、その画像異常32を含む異常領域ERを自動検出することができる。そのため、ユーザーは、画像異常32が生じた部分に対し、上述したマーキング31などを手書き入力しなくても良い。
【0079】
次に、
図12は、画像データGAに含まれる画像要素の一部のみに画像異常30が含まれる場合に異常領域ERを検出する他の例を示す図である。
図12(a)では、画像データGAに含まれる折れ線グラフ(画像要素)34の一部のみに画像異常30が含まれる場合を例示している。異常領域検出部26は、
図12(a)に示すように、画像異常30が画像データGAに含まれる折れ線グラフ34の一部のみに含まれる場合、
図12(b)に示すように、その折れ線グラフ34の全体を異常領域ERとして検出する。異常領域検出部26は、画像異常30が含まれる画像要素の全体を異常領域ERとして検出することにより、サービス拠点においてサービスマンが画像異常30の症状などを解析する際に画像要素の全体を見ながら解析することができるため、より正確に画像異常30の発生原因を特定することができる。
【0080】
次に、
図13は、異常領域ER以外の領域に、異常領域ERに類似する画像要素が存在する場合に異常領域ERを検出する他の例を示す図である。例えば、
図13(a)では、画像異常30が含まれる画像データGAに、互いに類似する画像要素である2つの折れ線グラフ34,35が含まれている。また、
図13(a)に示すように、2つの折れ線グラフ34,35のうちの1つの折れ線グラフ34の一部に画像異常30が含まれている。異常領域検出部26は、
図13(a)に示すように画像異常30が折れ線グラフ34の一部のみに含まれている場合、その折れ線グラフ34の全体を異常領域ERとして検出する。続いて、異常領域検出部26は、画像データGAにおける異常領域ER以外の領域に、異常領域ERに類似する画像要素が存在するか否かを判別する。その結果、異常領域検出部26は、異常領域ERに類似する画像要素として、他方の折れ線グラフ35を検出する。この場合、異常領域検出部26は、
図13(b)に示すように、画像異常30が含まれる画像要素に類似する画像要素である折れ線グラフ35の領域も異常領域ERとして検出する。これにより、サービス拠点においてサービスマンが画像異常30の症状などを解析する際には、互いに類似する複数の画像要素を見比べながら解析することができるため、より正確に画像異常30の発生原因を特定することができる。
【0081】
ところで、サービス拠点においてサービスマンが画像診断装置2で表示される第1画像G1及び第2画像G2を確認しても、画像異常30の原因を特定することができないことがある。その場合、サービスマンは、画像診断装置2を操作することにより、画像処理装置1に対して画像の再送要求を送信する。画像処理装置1は、画像診断装置2から再送要求を受信すると、第1画像G1及び第2画像G2を再度生成し、画像診断装置2へ送信する。このとき、異常領域検出部26は、異常領域ERを前回よりも拡大する。そのため、画像生成部27は、異常領域検出部26によって拡大された異常領域ERに基づいて第1画像G1と第2画像G2とを再度生成し、画像診断装置2へ送信する。
【0082】
図14は、異常領域ERを拡大する例を示す図である。例えば、
図14(a)に示すように画像データGAに縦方向の筋状の汚れが画像異常32として含まれており、その画像異常32を包含する状態で最初の異常領域ERが設定されたと仮定する。この場合、画像処理装置1は、
図14(a)に示す異常領域ERに含まれる画像のみから成る第1画像G1と、画像データGAの全体から成る第2画像G2とを生成し、画像診断装置2へ送信する。サービス拠点においてサービスマンがそのような第1画像G1及び第2画像G2を確認しても、画像異常32の原因を特定できない場合、サービスマンは、画像診断装置2を操作して画像処理装置1へ画像の再送要求を送信する。画像処理装置1は、その再送要求を受信すると、
図14(b)に示すように前回よりも異常領域ERを拡大する。そして、画像処理装置1は、
図14(b)に示す異常領域ERに含まれる画像のみから成る第1画像G1と、画像データGAの全体から成る第2画像G2とを生成し、画像診断装置2へそれらを再度送信する。これにより、サービスマンは、拡大された第1画像G1を確認することにより、画像異常30の発生原因を比較的簡単に特定できるようになる。
【0083】
以上のように、本実施形態の画像処理装置1は、画像データGAにおいて画像異常が生じている異常領域ERを検出する異常領域検出部26と、画像データGAから異常領域ERの画像を抽出して第1画像G1を生成すると共に、画像データGAから異常領域ER以外の領域を含む第2画像G2を生成する画像生成部27と、を備えている。そして画像生成部27は、第1画像G1の鮮明度が第2画像の鮮明度よりも高くなる設定を行い、第1画像G1及び第2画像G2を生成する。このような構成を有する画像処理装置1は、画像異常が発生すると、画像異常が発生した画像の全体を効率的に画像診断装置2へ送信することができる。また、このような画像処理装置1は、画像異常が発生している部分を高精細な画像として送信するため、画像診断装置2において画像異常の発生原因を適切に特定することができる。
【0084】
以上、本発明に関する好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態では、画像データGAの1箇所に画像異常が発生している場合を例示した。しかし、これに限られず、画像データGAの複数箇所に画像異常が発生することがある。その場合、画像処理装置1は、画像データGAにおいて複数の異常領域ERを検出するため、画像データGAから複数の第1画像G1を生成することもある。
【0086】
また、上記実施形態で説明したプログラム22は、画像処理装置1のメモリ21に予め記憶されているものに限られない。例えば、プログラム22は、それ単体で取引の対象となるものであっても構わない。この場合、プログラム22は、インターネットなどのネットワークを介してダウンロード可能な態様で提供されるものであっても良いし、またCD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0087】
1 画像処理装置
2 画像診断装置
11 操作パネル
11a 表示部
11b 操作部
13 画像読取部
14 画像メモリ(画像記憶部)
16 画像形成部
23 ジョブ制御部
24 画像異常処理部
25 画像取得部
26 異常領域検出部
27 画像生成部
28 画像処理部
30,32 画像異常
GA 画像データ
ER 異常領域
G1 第1画像
G2 第2画像