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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159351
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】排出装置および雰囲気熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/39 20060101AFI20241031BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20241031BHJP
   F27B 9/22 20060101ALI20241031BHJP
   F27B 9/26 20060101ALI20241031BHJP
   F27D 3/04 20060101ALI20241031BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20241031BHJP
   F27D 3/10 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
F27B9/39
F27B9/04
F27B9/22
F27B9/26
F27D3/04
F27D3/12 Z
F27D3/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075312
(22)【出願日】2023-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】390008431
【氏名又は名称】高砂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】加藤 双美彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 篤
(72)【発明者】
【氏名】宮下 恭一
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050CC07
4K050CF03
4K050CG02
4K050CG04
4K050CG29
4K055AA06
4K055FA05
4K055HA13
4K055HA27
(57)【要約】
【課題】排出装置の構造を簡単化すること、排出時における被処理物の漏出を抑制することを課題とする。
【解決手段】排出装置3は、下向きの筒部側開口401が開設された筒部40と、筒部側開口401を封止し筒部40に対して移動可能な移動部41を有する台板部41と、を有し、熱処理後の被処理物Wが収容された匣鉢4と、匣鉢4を搬送する搬送路Lの排出位置L12において、筒部40が固定された状態で、移動部41を移動させ、筒部側開口401を開放し、被処理物Wの自重を利用して、匣鉢4から被処理物Wを排出する排出部5と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向きの筒部側開口が開設された筒部と、前記筒部側開口を封止し前記筒部に対して移動可能な移動部を有する台板部と、を有し、熱処理後の被処理物が収容された匣鉢と、
前記匣鉢を搬送する搬送路の排出位置において、前記筒部が固定された状態で、前記移動部を移動させ、前記筒部側開口を開放し、前記被処理物の自重を利用して、前記匣鉢から前記被処理物を排出する排出部と、
を備える排出装置。
【請求項2】
前記排出位置には、前記搬送路を上下方向に貫通する排出口が開設され、
前記排出部は、上下方向に貫通する連通口が開設された連通部と、前記連通部および前記移動部を駆動する駆動部と、を有し、
前記駆動部は、前記筒部が固定された状態で、前記筒部の下側に、前記移動部に替えて前記連通部を配置し、前記連通口を介して、前記筒部側開口と前記排出口とを連通させる請求項1に記載の排出装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記台板部である請求項2に記載の排出装置。
【請求項4】
前記台板部は、上下方向に貫通する基部側開口を有する基部と、前記基部側開口を開閉可能なシャッター部と、を有し、
前記移動部は、前記シャッター部であり、
前記駆動部は、前記筒部が固定された状態で、前記筒部の下側に、前記シャッター部に替えて前記連通部を配置し、前記基部側開口と前記連通口とを介して、前記筒部側開口と前記排出口とを連通させる請求項2に記載の排出装置。
【請求項5】
前記筒部はカーボン製である請求項1に記載の排出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の排出装置を備え、前記搬送路により前記匣鉢が搬送される連続式の雰囲気熱処理炉であって、
ハウジングと、前記ハウジングの内部に区画され、所定の雰囲気下で前記被処理物に熱処理を施す熱処理室と、を備え、
前記排出位置は、前記ハウジングの内部において、前記熱処理室の下流側に配置される雰囲気熱処理炉。
【請求項7】
前記雰囲気熱処理炉は、前記台板部を上流側から下流側に向かって押し出すプッシャーを備えるプッシャー炉である請求項6に記載の雰囲気熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被処理物を排出する排出装置、および当該排出装置を備える雰囲気熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、連続焼成炉と、循環ラインと、を備える連続焼成システムが開示されている。循環ラインは、焼成容器から焼成物を取り出す取出装置を備えている。取出装置は、反転機構を備えている。反転機構は、一対のクランプ部材と、ロータリーアクチュエーターと、を備えている。焼成容器から焼成物を取り出す際は、まず、所定の位置で、一対のクランプ部材が焼成容器を挟持する。次に、ロータリーアクチュエーターが焼成容器を上下反転させる。当該反転動作により、焼成容器から焼成物が落下する。反転機構の真下には、収集管が配置されている。焼成容器から落下した焼成物は、収集管に流れ込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7041302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献の取出装置は、反転機構を備えている。このため、構造が複雑である。また、取出装置が大型化しやすい。また、設備コストが高騰化しやすい。また、焼成容器から焼成物を取り出す際、反転機構は、焼成容器を上下反転させている。上下反転時において、焼成容器の開口は、円弧状(半円状)の軌道を描いて、180°向きを変える。また、反転時においては、焼成物に遠心力が作用する。このため、焼成物が、収集管以外の部位に飛散しやすい。すなわち、焼成物が漏出しやすい。そこで、本開示の排出装置および雰囲気熱処理炉は、排出装置の構造を簡単化することを目的とする。また、排出時における被処理物の漏出を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するため、本開示の排出装置は、下向きの筒部側開口が開設された筒部と、前記筒部側開口を封止し前記筒部に対して移動可能な移動部を有する台板部と、を有し、熱処理後の被処理物が収容された匣鉢と、前記匣鉢を搬送する搬送路の排出位置において、前記筒部が固定された状態で、前記移動部を移動させ、前記筒部側開口を開放し、前記被処理物の自重を利用して、前記匣鉢から前記被処理物を排出する排出部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
排出部は、所定の排出位置において、匣鉢から被処理物を排出する。排出の際、排出部は、筒部を固定した状態で、筒部側開口を開放している。すなわち、排出の際、筒部つまり匣鉢は、上下反転しない。このため、構造を簡単化することができる。また、排出の際、筒部つまり筒部側開口が固定されている。並びに、被処理物に遠心力が作用しない。このため、被処理物の漏出を抑制することができる。また、排出部は、被処理物の自重(つまり重力)を利用して、被処理物を排出している。このため、構造を簡単化することができる。
【0007】
(1-1)上記(1)の構成において、前記搬送路の路長方向に対して直交する方向を路幅方向として、前記移動部は、前記筒部に対して、前記路幅方向にスライド可能である構成とする方がよい。本構成によると、移動部を路幅方向にスライドさせることにより、筒部側開口を簡単に開放することができる。
【0008】
(1-2)上記(1)の構成において、前記移動部は、前記筒部に対して、下側に回動可能である構成とする方がよい。本構成によると、移動部を下側に回動させることにより、筒部側開口を簡単に開放することができる。
【0009】
(1-3)上記いずれかの構成において、前記排出部は、被処理物の自重(つまり重力)だけを利用して、被処理物を排出する構成とする方がよい。本構成によると、重力と併せて、押圧力(被処理物を下向きに押し込む力)や吸引力(被処理物を下向きに吸い込む力)などを用いる場合と比較して(勿論、これらの場合も、上述の(1)の構成に含まれる)、構造を簡単化することができる。
【0010】
(2)上記いずれかの構成において、前記排出位置には、前記搬送路を上下方向に貫通する排出口が開設され、前記排出部は、上下方向に貫通する連通口が開設された連通部と、前記連通部および前記移動部を駆動する駆動部と、を有し、前記駆動部は、前記筒部が固定された状態で、前記筒部の下側に、前記移動部に替えて前記連通部を配置し、前記連通口を介して、前記筒部側開口と前記排出口とを連通させる構成とする方がよい。
【0011】
排出位置において、筒部は固定されている。本構成によると、当該筒部の下側に、移動部の替わりに、連通部を配置することができる。このため、連通口を介して、筒部側開口と排出口とを連通させることができる。
【0012】
(3)上記(2)の構成において、前記移動部は、前記台板部である構成とする方がよい。本構成によると、筒部の下側に、台板部自体の替わりに、連通部を配置することができる。このため、連通口を介して、筒部側開口と排出口とを連通させることができる。また、台板部の一部に移動部を設ける場合(勿論、この場合も、上述のいずれかの構成に含まれる)と比較して、台板部の構造が簡単になる。
【0013】
(4)上記(2)の構成において、前記台板部は、上下方向に貫通する基部側開口を有する基部と、前記基部側開口を開閉可能なシャッター部と、を有し、前記移動部は、前記シャッター部であり、前記駆動部は、前記筒部が固定された状態で、前記筒部の下側に、前記シャッター部に替えて前記連通部を配置し、前記基部側開口と前記連通口とを介して、前記筒部側開口と前記排出口とを連通させる構成とする方がよい。
【0014】
本構成によると、筒部の下側に、シャッター部の替わりに、連通部を配置することができる。このため、基部側開口と連通口とを介して、筒部側開口と排出口とを連通させることができる。また、排出位置においては、筒部のみならず、台板部の基部も固定されている。このため、被処理物の排出前後(排出位置の通過前後)において、台板部と筒部との間に位置ずれが発生するのを、抑制することができる。
【0015】
(5)上記いずれかの構成において、前記筒部はカーボン製である構成とする方がよい。被処理物を排出する際、筒部つまり匣鉢は、上下反転しない。このため、筒部がカーボン製(脆性の高い材料製)であっても、筒部の破損を抑制することができる。
【0016】
(6)上記課題を解決するため、本開示の雰囲気熱処理炉は、上記(1)の構成を有する排出装置を備え、前記搬送路により前記匣鉢が搬送される連続式の雰囲気熱処理炉であって、ハウジングと、前記ハウジングの内部に区画され、所定の雰囲気下で前記被処理物に熱処理を施す熱処理室と、を備え、前記排出位置は、前記ハウジングの内部において、前記熱処理室の下流側に配置されることを特徴とする。
【0017】
上記(1)に記載したとおり、本開示の雰囲気熱処理炉によると、排出装置の構造を簡単化することができる。また、排出時における被処理物の漏出を抑制することができる。また、排出位置は、ハウジングの内部に配置されている。このため、所定の雰囲気を確保した状態で、被処理物を排出することができる。
【0018】
(6-1)上記(6)の構成において、前記熱処理区間と前記排出位置とは互いに隣接して配置される構成とする方がよい。ここで、「隣接して配置される」とは、匣鉢五つ分以内のスペースを介して、熱処理区間と排出位置とが配置されることをいう。
【0019】
前述したように、特許文献1の取出装置の場合、反転機構の構造が複雑である。このため、耐熱性を確保しにくい。また、焼成容器には蓋が被せられている。このため、焼成容器を反転する前に、予め焼成容器から蓋を取り外す必要がある。したがって、反転機構の上流側に、蓋外し機構を配置する必要がある。よって、同文献の取出装置は、連続焼成炉から離間した位置(循環ラインの中間位置)に配置されている。結果として、所定の雰囲気(炉内雰囲気)を確保する必要がある区間(第1カバーにより外部から隔離する必要がある区間)が長くなってしまう。
【0020】
この点、本開示の雰囲気熱処理炉によると、排出装置の構造を簡単化することができる。このため、排出装置の耐熱性を高くすることができる。したがって、熱処理区間と排出位置とを互いに隣接して配置することができる。よって、所定の雰囲気を確保する必要がある区間(ハウジングにより外部から隔離する必要がある区間)を短くすることができる。
【0021】
(7)上記いずれかの構成において、前記雰囲気熱処理炉は、前記台板部を上流側から下流側に向かって押し出すプッシャーを備えるプッシャー炉である構成とする方がよい。プッシャー炉においては、プッシャーで、被処理物が搭載された台板を押すことにより、被処理物を搬送している。本構成によると、プッシャー炉が本来備える台板を、排出装置の匣鉢の台板部として、転用することができる。このため、雰囲気熱処理炉が本来備える構成部材とは別に、排出装置のために台板部を用意する場合と比較して、雰囲気熱処理炉の部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の排出装置および雰囲気熱処理炉によると、排出装置の構造を簡単化することができる。また、排出時における被処理物の漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第一実施形態のプッシャー炉が配置されている熱処理システムの前後方向断面図である。
図2図2は、図1のII-II方向断面図である。
図3図3は、図1の枠III内の部分の斜視図である。
図4図4は、図3から匣鉢、連通部を除いた斜視図である。
図5図5(A)は、連通部の斜視図である。図5(B)は、匣鉢の斜視図である。図5(C)は、匣鉢の分解斜視図である。
図6図6(A)は、図1の枠III内の部分の拡大図である。図6(B)は、図6(A)のVIB-VIB方向断面図である。
図7図7(A)は、連通部挿入工程後かつ台板部挿入工程前における図1の枠III内の部分の拡大図である。図7(B)は、図7(A)のVIIB-VIIB方向断面図である。
図8図8(A)は、台板部挿入工程後における図1の枠III内の部分の拡大図である。図8(B)は、図8(A)のVIIIB-VIIIB方向断面図である。
図9図9は、第二実施形態の排出装置の部分分解斜視図である。
図10図10は、連通部挿入工程前における同排出装置の部分斜視図である。
図11図11は、連通部挿入工程後かつシャッター部挿入工程前における同排出装置の部分斜視図である。
図12図12は、第三実施形態のローラーハースキルンの部分斜視図である。
図13図13(A)は、第四実施形態のプッシャー炉の前後方向部分断面図である。図13(B)は、図13(A)のXIIIB-XIIIB方向断面図である。
図14図14は、第五実施形態の排出装置の匣鉢の分解斜視図である。
図15図15は、第六実施形態のプッシャー炉の上下方向部分断面図である。
図16図16は、第七実施形態のプッシャー炉の右側から見た前後方向部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の排出装置および雰囲気熱処理炉の実施の形態について説明する。
【0025】
<第一実施形態>
本実施形態においては、本開示の雰囲気熱処理炉がプッシャー炉として具現化されている。
【0026】
[熱処理システムの構成]
まず、本実施形態のプッシャー炉が配置されている熱処理システムの構成について説明する。図1に、本実施形態のプッシャー炉が配置されている熱処理システムの上側から見た前後方向断面図を示す。図1に示すように、熱処理システム1は、搬送路Lと、プッシャー炉2と、出口側置換部90と、入口側置換部91と、複数の搬送シリンダー92a~92fと、を備えている。
【0027】
(搬送路L)
図1に示すように、搬送路Lは、環状に延在している。搬送路Lは、複数の匣鉢4を循環させている。区間的な観点から、搬送路Lは、炉内区間L1と、炉外区間L2と、を備えている。炉内区間L1は、搬入位置L10と、熱処理区間L11と、排出位置L12と、搬出位置L13と、を備えている。炉外区間L2は、出口側置換位置L20と、匣鉢回収区間L21と、入口側置換位置L22と、を備えている。匣鉢回収区間L21の途中には、被処理物供給位置L210が設定されている。
【0028】
構造的な観点から、搬送路Lは、軌道部80と、一対のガイド部81と、を備えている。軌道部80は、搬送路Lの全長に亘って、環状に延在している。軌道部80のうち、匣鉢回収区間L21以外の区間に対応する部分には、上面が滑面の床部800が配置されている。また、軌道部80のうち、匣鉢回収区間L21に対応する部分には、自走式のローラーコンベア801が配置されている。ローラーコンベア801は、複数のローラー801aを備えている。ローラー801aの左右方向両端(軸方向両端)は、左右一対のガイド部81(軸受部)により、回転可能に支持されている。ローラー801aは自身の軸周りに回転可能である。搬送路Lの路長方向に対して直交する方向を路幅方向とする。一対のガイド部81は、軌道部80の路幅方向両側に配置されている。一対のガイド部81は、後述する匣鉢4が軌道部80から脱落するのを、抑制している。
【0029】
(プッシャー炉2)
図2に、図1のII-II方向断面図を示す。図1図2に示すように、プッシャー炉2は、ハウジング20と、プッシャー21と、熱処理室22と、断熱材23と、複数のヒーター24と、複数のガス供給管25と、複数のガス排出管26と、排出装置3と、を備えている。
【0030】
(ハウジング20、プッシャー21、熱処理室22、断熱材23、ヒーター24、ガス供給管25、ガス排出管26)
ハウジング20は、前後方向に延在する筒状を呈している。ハウジング20は、プッシャー炉2の外殻を構成している。ハウジング20は、搬送路Lの炉内区間L1に対応している。すなわち、ハウジング20の内部には、前側(搬送路Lの上流側)から後側(搬送路Lの下流側)に向かって、搬入位置L10、熱処理区間L11、排出位置L12、搬出位置L13が配置されている。
【0031】
プッシャー21は、複動式であって、ハウジング20の前端(上流端)に配置されている。軌道部80の床部800の上面には、複数の匣鉢4が、前後方向(路長方向)に並んで載置されている。プッシャー21は、複数の匣鉢4を、前側から後側に移動させている。匣鉢4の構成については後述する。プッシャー21は、シリンダーチューブ210と、ロッド211と、を備えている。シリンダーチューブ210は、搬入位置L10の前側(ハウジング20の外側)に配置されている。ロッド211は、シリンダーチューブ210に対して、後側に突出可能である。また、前側に没入可能である。すなわち、ロッド211は、前後方向かつ双方向(前側→後側、後側→前側)に直線移動可能である。ロッド211の先端(突出端)には、押圧板211aが配置されている。
【0032】
熱処理室22は、熱処理区間L11に対応している。熱処理室22は、ハウジング20の内部に区画されている。熱処理区間L11には、前側から後側に向かって、図示しない昇温帯、温度保持帯、冷却帯が設定されている。熱処理室22においては、所定の雰囲気(窒素と水素とを含む混合ガス雰囲気)下において、所定の温度パターンで、匣鉢4内部の粉体状の被処理物Wに熱処理が施される。
【0033】
断熱材23は、ハウジング20の内側に積層されている。熱処理室22は、断熱材23の内側に区画されている。複数のヒーター24は、熱処理室22に配置されている。複数のヒーター24は、匣鉢4(被処理物W)を加熱可能である。複数のガス供給管25の下流端は、熱処理室22に開口している。ガス供給管25は、熱処理室22に雰囲気ガス(窒素と水素とを含む混合ガス)を供給している。複数のガス排出管26の上流端は、熱処理室22に開口している。ガス排出管26は、熱処理室22から排ガスを排出している。
【0034】
(排出装置3)
図3に、図1の枠III内の部分の斜視図を示す。図4に、図3から匣鉢、連通部を除いた斜視図を示す。図5(A)に、連通部の斜視図を示す。図5(B)に、匣鉢の斜視図を示す。図5(C)に、匣鉢の分解斜視図を示す。なお、図3図4においては、一点鎖線で示すハウジング20を透過して、内部の部材を示す。
【0035】
図1図3図4に示すように、排出装置3は、排出位置L12付近に配置されている。排出位置L12には、軌道部80を上下方向に貫通する排出口802が開設されている。排出装置3は、排出位置L12において、匣鉢4から被処理物Wを排出するために用いられる。すなわち、排出装置3は、排出位置L12において、後述する匣鉢4の筒部40が固定された状態で、台板部41を移動させ、筒部側第二開口401と排出口802とを連通させ、被処理物Wの自重を利用して被処理物Wを排出する。排出位置L12の左側(路幅方向一方)には、第一待機位置L120が区画されている。排出位置L12の右側(路幅方向他方)には、第二待機位置L121が区画されている。
【0036】
排出装置3は、匣鉢4と、排出部5と、を備えている。図5(B)、図5(C)に示すように、匣鉢4は、筒部40と、台板部41と、を備えている。筒部40は、カーボン(黒鉛)製であって、筒軸が上下方向に延在する角筒状を呈している。筒部40は、一体物であって、上向きの筒部側第一開口400と、下向きの筒部側第二開口401と、を備えている。筒部側第二開口401は、本開示の「筒部側開口」の概念に含まれる。台板部41は、軌道部80の床部800に載置されている。台板部41は、カーボン(黒鉛)製であって、四角形の平板状を呈している。台板部41は、一体物であって、筒部側第二開口401を、下側から封止している。台板部41は、筒部40に対して、左右方向(路幅方向)に移動(スライド)可能である。
【0037】
図3図4に示すように、排出部5は、連通部50と、駆動部51と、排出シュート52と、バルブ53と、を備えている。連通部50は、第一待機位置L120に配置されている。図5(A)に示すように、連通部50は、四角形の平板状を呈している。連通部50には、上下方向に貫通する連通口500が開設されている。
【0038】
図3図4に示すように、駆動部51は、第一シリンダー510と、第二シリンダー511と、第三シリンダー512と、第四シリンダー513と、を備えている。第一シリンダー510は、複動式のエアシリンダー(流体シリンダー)である。第一シリンダー510は、シリンダーチューブTと、ロッドRと、を備えている。シリンダーチューブTは、第一待機位置L120の左側(ハウジング20の外側)に配置されている。ロッドRは、シリンダーチューブTに対して、右側に突出可能である。また、左側に没入可能である。すなわち、ロッドRは、左右方向かつ双方向(左側→右側、右側→左側)に直線移動可能である。ロッドRの先端(突出端)には、押圧板Raが配置されている。ロッドRは、連通部50および台板部41を左側から右側に移動させる。
【0039】
第二シリンダー511は、第一シリンダー510と構成が同一である。第二シリンダー511は、搬送路Lを基準に、第一シリンダー510と左右対称に配置されている。第二シリンダー511のシリンダーチューブTは、第二待機位置L121の右側(ハウジング20の外側)に配置されている。第二シリンダー511は、連通部50および台板部41を右側から左側に移動させる。
【0040】
第三シリンダー512は、第一シリンダー510と構成が同一である。第三シリンダー512のシリンダーチューブTは、排出位置L12に配置された匣鉢4の筒部40の左側(ハウジング20の外側)に配置されている。
【0041】
第四シリンダー513は、第三シリンダー512と構成が同一である。第四シリンダー513は、搬送路Lを基準に、第三シリンダー512と左右対称に配置されている。第四シリンダー513のシリンダーチューブTは、排出位置L12に配置された匣鉢4の筒部40の右側(ハウジング20の外側)に配置されている。第三シリンダー512と第四シリンダー513とは、協働して、左右方向から、筒部40を挟持(固定)、解放可能である。
【0042】
排出シュート52は、排出口802の真下に配置されている。排出シュート52は、ハウジング20の下面(外面)に配置されている。排出シュート52には、排出口802から被処理物Wが流れ落ちる。
【0043】
バルブ53は、排出シュート52の下側に連なっている。バルブ53は、いわゆるロータリーバルブである。バルブ53は、被処理物Wを、定量ずつ排出可能である。バルブ53は、バルブ53の上側の空間(排出シュート52の内部空間)とバルブ53の下側の空間(タンク(図略)の内部空間)とを、連通、遮断可能である。
【0044】
(出口側置換部90)
図1に示すように、出口側置換部90は、出口側置換位置L20付近に配置されている。出口側置換部90は、ハウジング900と、置換室901と、炉内側ドア902と、炉外側ドア903と、を備えている。
【0045】
ハウジング900は、出口側置換部90の外殻を構成している。置換室901は、出口側置換位置L20に対応している。置換室901には、配管(図略)を介して、窒素が供給される。炉内側ドア902は、置換室901の左側(搬送路Lの上流側)に配置されている。炉内側ドア902は、開閉可能である。炉内側ドア902は、置換室901と搬出位置L13(つまり炉内空間)とを連通、遮断可能である。炉外側ドア903は、置換室901の後側(搬送路Lの下流側)に配置されている。炉外側ドア903は、開閉可能である。炉外側ドア903は、置換室901と炉外空間とを連通、遮断可能である。
【0046】
(入口側置換部91)
図1に示すように、入口側置換部91は、入口側置換位置L22付近に配置されている。入口側置換部91は、出口側置換部90と構成が同じである。すなわち、入口側置換部91は、ハウジング910と、置換室911と、炉内側ドア912と、炉外側ドア913と、を備えている。置換室911は、入口側置換位置L22に対応している。炉内側ドア912は、置換室911と搬入位置L10(つまり炉内空間)とを連通、遮断可能である。炉外側ドア913は、置換室911と炉外空間とを連通、遮断可能である。
【0047】
(搬送シリンダー92a~92f)
図1に示すように、搬送シリンダー92aは搬出位置L13付近に、搬送シリンダー92bは出口側置換位置L20付近に、搬送シリンダー92cは出口側置換位置L20と匣鉢回収区間L21の後端(上流端)との中間位置付近に、搬送シリンダー92dは匣鉢回収区間L21の前端(下流端)付近に、搬送シリンダー92eは匣鉢回収区間L21の前端と入口側置換位置L22との中間位置付近に、搬送シリンダー92fは入口側置換位置L22付近に、各々配置されている。複数の搬送シリンダー92a~92fは、各々、第一シリンダー510と構成が同じである。すなわち、複数の搬送シリンダー92a~92fは、各々、シリンダーチューブTとロッドRとを備えている。
【0048】
[熱処理システム1における匣鉢4の動き]
次に、熱処理システム1における匣鉢4の動きについて説明する。以下に説明する動きは、熱処理システム1の制御装置が自動的に実行する。図1に示すように、被処理物供給位置L210において、匣鉢4には、上側のホッパー(図略)の供給口93から、図5(B)に示す筒部側第一開口400を介して、被処理物Wが供給される。匣鉢4は、匣鉢回収区間L21を、ローラーコンベア801により、後側(上流側)から前側(下流側)に向かって、搬送される。
【0049】
図1に示すように、匣鉢4は、匣鉢回収区間L21の前端(下流端)から、匣鉢回収区間L21と入口側置換位置L22との中間位置まで、搬送シリンダー92dにより、押し出される。炉内側ドア912が閉状態のまま、入口側置換部91の炉外側ドア913は、閉状態から開状態に切り替わる。ここで、外気(空気)は、開状態の炉外側ドア913を介して、置換室911に流入する。ただし、炉内側ドア912は閉状態である。このため、外気は炉内区間L1に流入しない。また、炉内の雰囲気ガスは、外部に流出しない。
【0050】
匣鉢4は、匣鉢回収区間L21の前端と入口側置換位置L22との中間位置から、入口側置換位置L22まで、搬送シリンダー92eにより、押し出される。すなわち、匣鉢4は、開状態の炉外側ドア913を介して、置換室911に搬入される。匣鉢4の搬入後、炉外側ドア913は、開状態から閉状態に切り替わる。すなわち、置換室911は密閉状態になる。この状態で、置換室911に、窒素を供給する。置換室911の雰囲気は、外気から窒素に置換される。
【0051】
雰囲気置換後、炉内側ドア912は、閉状態から開状態に切り替わる。ここで、窒素は、開状態の炉内側ドア912を介して、炉内区間L1に流入する。ただし、炉外側ドア913は閉状態である。このため、外気は炉内区間L1に流入しない。また、炉内の雰囲気ガスは、外部に流出しない。
【0052】
匣鉢4は、入口側置換位置L22から、搬入位置L10まで、搬送シリンダー92fにより、押し出される。匣鉢4は、開状態の炉内側ドア912を介して、搬入位置L10に搬入される。匣鉢4の搬入後、炉内側ドア912は、開状態から閉状態に切り替わる。すなわち、炉内区間L1は密閉状態になる。
【0053】
搬入位置L10に搬入された匣鉢4は、炉内区間L1を、プッシャー21により、前側(上流側)から後側(下流側)に向かって、搬送される。匣鉢4は、熱処理室22(熱処理区間L11)を通過する。図2に示すように、熱処理室22には、ガス供給管25から、雰囲気ガス(窒素と水素とを含む混合ガス)が供給されている。また、熱処理室22の温度は、ヒーター24により、所定の温度に設定されている。このため、熱処理室22を通過する際、匣鉢4内部の被処理物Wには、所定の雰囲気かつ所定の温度パターンで熱処理が施される。
【0054】
図1に示す排出位置L12においては、匣鉢4内部の被処理物W(熱処理済みの被処理物W)の排出作業が行われる。排出作業については、後述する。被処理物W排出後の空の匣鉢4は、プッシャー21により、搬出位置L13まで搬送される。出口側置換部90の置換室901の雰囲気は、窒素に設定されている。炉外側ドア903が閉状態のまま、炉内側ドア902は、閉状態から開状態に切り替わる。ここで、炉内の雰囲気ガスは、開状態の炉内側ドア902を介して、置換室901に流入する。ただし、炉外側ドア903は閉状態である。このため、雰囲気ガスは外部には流出しない。また、外気は、炉内区間L1に流入しない。
【0055】
匣鉢4は、搬出位置L13から、出口側置換位置L20まで、搬送シリンダー92aにより、押し出される。すなわち、匣鉢4は、開状態の炉内側ドア902を介して、置換室901に搬入される。匣鉢4の搬入後、炉内側ドア902は、開状態から閉状態に切り替わる。すなわち、置換室901は密閉状態になる。この状態で、置換室901に、窒素を供給する。置換室901の雰囲気は、炉内の雰囲気ガスから窒素に置換される。
【0056】
雰囲気置換後、炉外側ドア903は、閉状態から開状態に切り替わる。ここで、外気は、開状態の炉外側ドア903を介して、置換室901に流入する。ただし、炉内側ドア902は閉状態である。このため、外気は炉内区間L1に流入しない。また、炉内の雰囲気ガスは、外部に流出しない。
【0057】
匣鉢4は、出口側置換位置L20から、出口側置換位置L20と匣鉢回収区間L21の後端(上流端)との中間位置まで、搬送シリンダー92bにより、押し出される。匣鉢4は、出口側置換位置L20と匣鉢回収区間L21の後端との中間位置から、匣鉢回収区間L21の後端まで、搬送シリンダー92cにより、押し出される。匣鉢4は、匣鉢回収区間L21を、ローラーコンベア801により、後側から前側に向かって搬送され、匣鉢4を清掃する清掃装置(図略)を経由し、前述の被処理物供給位置L210に回帰する。このように、匣鉢4は、搬送路Lを循環移動している。
【0058】
[被処理物Wの排出作業]
次に、排出位置L12において、本実施形態の排出装置3を用いて行われる、匣鉢4内部の被処理物Wの排出作業(排出方法)について説明する。以下に説明する排出方法は、熱処理システム1の制御装置(またはプッシャー炉2の制御装置)が自動的に実行する。
【0059】
排出方法は、連通部挿入工程と、台板部挿入工程(移動部挿入工程)と、を有している。図6(A)に、図1の枠III内の部分の拡大図を示す。図6(B)に、図6(A)のVIB-VIB方向断面図を示す。図7(A)に、連通部挿入工程後かつ台板部挿入工程前における図1の枠III内の部分の拡大図を示す。図7(B)に、図7(A)のVIIB-VIIB方向断面図を示す。図8(A)に、台板部挿入工程後における図1の枠III内の部分の拡大図を示す。図8(B)に、図8(A)のVIIIB-VIIIB方向断面図を示す。なお、図6(A)、図6(B)に示すのは、連通部挿入工程前の状態である。
【0060】
(連通部挿入工程)
図6(A)、図6(B)に示すように、排出位置L12において、匣鉢4は、排出口802の真上に配置されている。第一待機位置L120の連通部50と、排出位置L12の台板部41と、は左右方向に並んでいる。筒部40の左側には第三シリンダー512が、筒部40の右側には第四シリンダー513が、各々配置されている。
【0061】
本工程においては、筒部40の下側の空間(台板部41または連通部50を収容する収容部)に対して、台板部41を退避させ、連通部50を進入させる。まず、図6(B)に示す第三シリンダー512と第四シリンダー513とにより、左右方向から、筒部40を挟持する。すなわち、筒部40を固定する。次に、図6(A)に示す第一シリンダー510により、連通部50および台板部41を左側から右側に移動(スライド)させる。ここで、筒部40は、第三シリンダー512および第四シリンダー513により、固定されている。このため、連通部50および台板部41が移動する際、筒部40から連通部50、台板部41に、荷重(筒部40の自重)が加わらない。したがって、台板部41は、円滑に排出位置L12から第二待機位置L121に移動する。並びに、連通部50は、円滑に第一待機位置L120から排出位置L12に移動する。このように、第一シリンダー510は、筒部40の下側の空間に対して、台板部41を退避させ、連通部50を進入させる。なお、第二シリンダー511のロッドRは、連通部50および台板部41の移動に応じて、左側から右側に移動する。
【0062】
連通部50は連通口500を備えている。図7(A)、図7(B)に示すように、本工程の後においては、上側から下側に向かって、筒部側第二開口401と、連通口500と、排出口802と、が直線状に連通する。このため、筒部40内部の粉体状の被処理物Wは、自重により、筒部側第二開口401、連通口500、排出口802を流下し、排出シュート52内に滞留する。なお、バルブ53は閉状態である。このため、炉内の雰囲気ガスは、外部に流出しない。また、外気は炉内区間L1に流入しない。
【0063】
(台板部挿入工程)
本工程においては、筒部40の下側の空間に対して、連通部50を退避させ、台板部41を進入させる。まず、図7(A)に示す第二シリンダー511により、台板部41および連通部50を右側から左側に移動(スライド)させる。ここで、筒部40は、第三シリンダー512および第四シリンダー513により、固定されている。このため、台板部41および連通部50が移動する際、筒部40から台板部41、連通部50に、荷重が加わらない。したがって、連通部50は、円滑に排出位置L12から第一待機位置L120に移動(復動)する。並びに、台板部41は、円滑に第二待機位置L121から排出位置L12に移動(復動)する。このように、第二シリンダー511は、筒部40の下側の空間に対して、連通部50を退避させ、台板部41を進入させる。なお、第一シリンダー510のロッドRは、連通部50および台板部41の移動に応じて、右側から左側に移動する。台板部41は連通口を備えていない。図8(A)、図8(B)に示すように、本工程の後においては、筒部側第二開口401と排出口802との連通は、台板部41により遮断されている。
【0064】
次に、図8(B)に示す第三シリンダー512と第四シリンダー513とを、筒部40から離間させる。すなわち、筒部40を解放する。また、バルブ53を、閉状態から開状態に切り替える。排出口802は台板部41により封止されている。このため、炉内の雰囲気ガスは、外部に流出しない。また、外気は炉内区間L1に流入しない。
【0065】
[作用効果]
次に、本実施形態の排出装置およびプッシャー炉の作用効果について説明する。図6(A)~図8(B)に示すように、排出部5は、所定の排出位置L12において、匣鉢4から被処理物Wを排出する。排出の際、排出部5は、筒部40を固定した状態で、筒部側第二開口401と排出口802とを連通させている。すなわち、筒部側第二開口401を開放している。排出の際、筒部40つまり匣鉢4は、上下反転しない。このため、構造を簡単化することができる。また、排出部5は、被処理物Wの自重(つまり重力)を利用して、被処理物Wを排出している。この点においても、構造を簡単化することができる。また、排出時に被処理物Wに遠心力が作用しない。このため、被処理物Wの漏出を抑制することができる。また、排出時に筒部40つまり筒部側第二開口401が固定されている。この点においても、被処理物Wの漏出を抑制することができる。
【0066】
また、台板部41は、筒部40に対して、左右方向(路幅方向)にスライド可能である。このため、筒部側第二開口401と排出口802とを簡単に連通させることができる。また、排出部5は、被処理物Wの自重だけを利用して、被処理物Wを排出している。このため、重力と併せて、押圧力(被処理物Wを、筒部側第二開口401から排出口802に向かって、押し込む力)や吸引力(被処理物Wを、筒部側第二開口401から排出口802に向かって、吸い込む力)などを用いる場合と比較して、構造を簡単化することができる。
【0067】
また、本実施形態の排出装置3によると、筒部40の下側の空間に、台板部41自体の替わりに、連通部50を配置することができる。このため、連通口500を介して、筒部側第二開口401と排出口802とを連通させることができる。また、台板部41自体ではなく、台板部41の一部だけが移動する場合と比較して、台板部41の構造を簡単化することができる。
【0068】
図5(B)、図5(C)に示す筒部40はカーボン(黒鉛)製である。このため、脆性が高い。この点、本実施形態の排出装置3によると、被処理物Wを排出する際、筒部40つまり匣鉢4は、上下反転しない。このため、筒部40がカーボン製であっても、筒部40の破損を抑制することができる。また、筒部40のみならず台板部41も、高い自己潤滑性を有するカーボン(黒鉛)製である。このため、筒部40と台板部41との摺動性、台板部41と床部800との摺動性を高くすることができる。
【0069】
図1に示すように、本実施形態のプッシャー炉2によると、排出位置L12はハウジング20の内部に配置されている。このため、所定の雰囲気を確保した状態で、被処理物Wを排出することができる。
【0070】
図3図4に示すように、本実施形態の排出装置3は、匣鉢4の反転機構を備えていない。このため、構造を簡単化することができる。したがって、排出装置3の耐熱性を高くすることができる。よって、図1に示すように、熱処理区間L11と排出位置L12とを、匣鉢4一つ分のスペースを介して、互いに隣接して配置することができる。結果、所定の雰囲気を確保する必要がある区間(ハウジング20により外部から隔離する必要がある区間。炉内区間L1)を短くすることができる。
【0071】
図7(B)に示すように、筒部40の下側の空間に対して、台板部41と連通部50とを入れ替える際、筒部40は、第三シリンダー512と第四シリンダー513とにより、左右方向から、挟持、固定されている。このため、台板部41、連通部50の入れ替え作業を円滑に行うことができる。
【0072】
図1に示すように、本実施形態においては、本開示の雰囲気熱処理炉として、プッシャー炉2が採用されている。プッシャー炉2においては、プッシャー21で、被処理物Wが搭載された台板を押すことにより、被処理物Wを搬送している。本実施形態によると、プッシャー炉2が本来備える台板を、排出装置3の匣鉢4の台板部41として、転用することができる。このため、雰囲気熱処理炉が本来備える構成部材とは別に、排出装置3のために台板部41を用意する場合と比較して、雰囲気熱処理炉の部品点数を削減することができる。
【0073】
図3図5(A)、図6(A)に示すように、連通部50の右前隅、第二シリンダー511の押圧板Raの左前隅には、各々、曲面状の面取部が配置されている。このため、上流側から排出位置L12に搬入される匣鉢4の台板部41を、左右方向からガイド、位置決めすることができる。
【0074】
<第二実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、匣鉢の台板部が、一体物ではなく、二つの部材からなる点である。また、匣鉢の筒部が、一体物ではなく、四つの部材からなる点である。また、第一シリンダーの押圧板が連通部に固定されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0075】
図9に、本実施形態の排出装置の部分分解斜視図を示す。図10に、連通部挿入工程前における同排出装置の部分斜視図を示す。図11に、連通部挿入工程後かつシャッター部挿入工程前における同排出装置の部分斜視図を示す。
【0076】
なお、これらの図において、図3図8と対応する部位については、同じ符号で示す。また、図3図8に示すハウジング20、第一シリンダー510のシリンダーチューブT、第二シリンダー511のシリンダーチューブT、第三シリンダー512、第四シリンダー513は省略して示す。また、搬送路Lは簡略して示す。また、図10図11においては、筒部40、被処理物Wを透過して示す。
【0077】
図9に示すように、台板部41は、基部410と、シャッター部411と、を備えている。基部410は、ステンレス鋼製であって、四角形の中空平板状を呈している。すなわち、基部410には、上下方向に貫通する基部側開口410aが開設されている。また、基部410には、左右方向(路幅方向)に貫通するガイド口410bが開設されている。基部側開口410aと、ガイド口410bと、は交差(直交)かつ連通している。
【0078】
基部側開口410aは、筒部40の筒部側第二開口401の真下に連なっている。また、基部側開口410aの真下には、図4に示す排出口802が連なっている。ガイド口410bの前後方向両縁には、前後一対のガイド溝410cが配置されている。左右方向から見て、ガイド溝410cの溝側面は、ガイド口410bの内側から外側に向かって尖る、V字状を呈している。
【0079】
シャッター部411は、ガイド口410b(基部410の内部空間)と同形状を呈している。すなわち、シャッター部411は、四角形の平板状を呈している。左右方向から見て、シャッター部411の前後方向両縁は、各々、シャッター部411の内側から外側に向かって尖る、V字状を呈している。シャッター部411は、ガイド口410bに対して、左右方向に進退可能である。シャッター部411は、基部側開口410aを開閉可能である。図10に示すように、排出作業時を除いて、シャッター部411は、ガイド口410bに挿入されている。
【0080】
連通部50は、シャッター部411と同寸、同形状を呈している。ただし、連通部50には、上下方向に貫通する連通口500が開設されている。連通部50は、ガイド口410bに対して、左右方向に進退可能である。図10に示すように、排出作業時を除いて、連通部50は、第一待機位置L120に配置されている。連通部50は、第一シリンダー510の押圧板Raに固定されている。このため、連通部50は、第一シリンダー510と一体的に、左右方向に往復動可能である。
【0081】
排出位置L12においては、匣鉢4内部の被処理物Wの排出作業(排出方法)が実行される。排出方法は、連通部挿入工程と、シャッター部挿入工程(移動部挿入工程)と、を有している。図10に示すように、連通部挿入工程前の状態において、連通部50と第二シリンダー511の押圧板Raとの間の距離は、台板部41の左右方向幅よりも、大きく設定されている。連通部挿入工程においては、ガイド口410bに対して、シャッター部411を退避させ、連通部50を進入させる。まず、図6(B)に示す第三シリンダー512と第四シリンダー513とにより、筒部40を固定する。次に、図10に示す第一シリンダー510により、連通部50およびシャッター部411を左側から右側に移動(スライド)させる。ただし、基部410は移動しない。シャッター部411は、ガイド口410bから退出し、排出位置L12から第二待機位置L121に移動する。連通部50は、ガイド口410bに進入し、第一待機位置L120から排出位置L12に移動する。このように、第一シリンダー510は、ガイド口410bに対して、シャッター部411を退避させ、連通部50を進入させる。なお、第二シリンダー511のロッドRは、シャッター部411に干渉しないように、第二待機位置L121の右側に退避している。
【0082】
図11に示すように、本工程の後においては、上側から下側に向かって、筒部側第二開口401と、基部側開口410a(上側部分)と、連通口500と、基部側開口410a(下側部分)と、排出口802(図4参照)と、が直線状に連通する。このため、筒部40内部の粉体状の被処理物Wは、自重により、筒部側第二開口401、基部側開口410a(上側部分)、連通口500、基部側開口410a(下側部分)、排出口802(図4参照)を流下する。
【0083】
シャッター部挿入工程においては、ガイド口410bに対して、連通部50を退避させ、シャッター部411を進入させる。まず、図11に示す第二シリンダー511により、シャッター部411および連通部50を右側から左側に移動(スライド)させる。連通部50は、ガイド口410bから退出し、排出位置L12から第一待機位置L120に移動(復動)する。シャッター部411は、ガイド口410bに進入し、第二待機位置L121から排出位置L12に移動(復動)する。このように、第二シリンダー511は、ガイド口410bに対して、連通部50を退避させ、シャッター部411を進入させる。なお、第一シリンダー510のロッドRは、シャッター部411および連通部50の移動に応じて、右側から左側に移動する。ここで、第一シリンダー510のロッドRは、連通部50に固定されている。このため、連通部50には、第一シリンダー510から、右側から左側に向かって、引張力が作用する。シャッター部411は連通口を備えていない。本工程の後においては、筒部側第二開口401と排出口802との連通は、シャッター部411により遮断されている。次に、図8(B)に示す第三シリンダー512と第四シリンダー513とを移動させ、筒部40を解放する。
【0084】
本実施形態の排出装置3およびプッシャー炉と、第一実施形態の排出装置およびプッシャー炉とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の排出装置3によると、筒部40の下側の空間(基部410の内部空間であるガイド口410b)に、シャッター部411の替わりに、連通部50を配置することができる。このため、基部側開口410aと連通口500とを介して、筒部側第二開口401と排出口802とを連通させることができる。また、排出位置L12においては、筒部40のみならず、台板部41の基部410も不動である。このため、被処理物Wの排出前後(排出位置L12の通過前後)において、台板部41と筒部40との間に位置ずれが発生するのを、抑制することができる。
【0085】
匣鉢4の筒部40は、四つの壁部により構成されている。このため、筒部40の一部に不具合が生じた場合、当該一部が属する壁部だけを、部分的に交換することができる。したがって、筒部40が一体物である場合と比較して、筒部40の交換コスト(メンテナンスコスト)を削減することができる。第一シリンダー510の押圧板Raは、連通部50に固定されている。このため、第一シリンダー510単独で、連通部50を左右両方向に駆動することができる。なお、本実施形態のように、連通部挿入工程前の状態において、連通部50と第二シリンダー511の押圧板Raとの間の距離が、台板部41の左右方向幅よりも、大きく設定されていてもよい。
【0086】
<第三実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、雰囲気熱処理炉として、プッシャー炉ではなく、ローラーハースキルンが配置されている点である。図12に、本実施形態のローラーハースキルンの部分斜視図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。また、図4と同様に、図12においては、匣鉢、連通部を省略して示す。
【0087】
搬送路Lの軌道部80のうち、炉内区間L1に対応する部分には、自走式のローラーコンベア801つまりローラーハースキルン2aが配置されている。ローラーハースキルン2aは、本開示の「雰囲気熱処理炉」の概念に含まれる。ローラーコンベア801は、複数のローラー801aを備えている。ローラー801aの左右方向両端(軸方向両端)は、左右一対のガイド部81(軸受部)により、回転可能に支持されている。ただし、排出位置L12において、複数のローラー801aは、排出口802を避けて配置されている。このため、排出口802の左右方向両側の短軸のローラー801aの内端(排出口802側端)は、ブラケット82(軸受部)により支持されている。ブラケット82は、ガイド部81に固定されている。ローラー801aは自身の軸周りに回転可能である。
【0088】
本実施形態の排出装置3およびローラーハースキルン2aと、第一実施形態の排出装置およびプッシャー炉とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のように、雰囲気熱処理炉として、ローラーハースキルン2aを用いてもよい。
【0089】
<第四実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、搬送路の炉内区間が複数のレーンを備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図13(A)に、本実施形態のプッシャー炉の前後方向部分断面図を示す。図13(B)に、図13(A)のXIIIB-XIIIB方向断面図を示す。なお、図13(A)は、図1図6(A)の枠III内の部分に対応している。また、図6(A)、図6(B)と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0090】
炉内区間L1は、左右方向に並ぶ二つのレーンL1a、L1bを備えている。左側のレーンL1aには、排出位置L12aが設定されている。また、排出位置L12aに対応して、第一待機位置L120a、第二待機位置L121a、排出口802a、排出シュート52a、バルブ(図略)が配置されている。同様に、右側のレーンL1bには、排出位置L12bが設定されている。また、排出位置L12bに対応して、第一待機位置L120b、第二待機位置L121b、排出口802b、排出シュート52b、バルブ(図略)が配置されている。
【0091】
図13(B)に示すように、二つの排出位置L12a、12bの中間位置の真上には、第五シリンダー514が配置されている。第五シリンダー514は、シリンダーチューブTと、ロッドRと、を備えている。ロッドRの先端(突出端)には、仕切板Rbが配置されている。仕切板Rbは、排出位置L12aの筒部40と排出位置L12bの筒部40との隙間に対して、上下方向に進退可能である。
【0092】
本実施形態の排出装置3を用いて行われる、被処理物Wの排出作業(排出方法)は、連通部挿入工程と、台板部挿入工程(移動部挿入工程)と、を有している。連通部挿入工程においては、左右二つの筒部40の下側の空間(二つの台板部41または連通部50を収容する収容部)に対して、左右二つの台板部41を退避させ、連通部50を進入させる。まず、図13(B)に示す第五シリンダー514のロッドRを下側に突出させ、仕切板Rbを左右二つの筒部40の隙間に挿入する。次に、第三シリンダー512と第四シリンダー513とを左右方向内側に突出させる。そして、第三シリンダー512の押圧板Raと第五シリンダー514の仕切板Rbとにより、左右方向から、左側の筒部40を挟持する。並びに、第四シリンダー513の押圧板Raと第五シリンダー514の仕切板Rbとにより、左右方向から、右側の筒部40を挟持する。このようにして、二つの筒部40を固定する。次に、図13(A)に示す第一シリンダー510により、連通部50および左右二つの台板部41を左側から右側に移動(スライド)させる。ここで、二つの筒部40は、第三シリンダー512、第四シリンダー513、第五シリンダー514により、固定されている。このため、連通部50および左右二つの台板部41が移動する際、二つの筒部40から連通部50、二つの台板部41に、荷重(二つの筒部40の自重)が加わらない。したがって、左側の台板部41は、円滑に排出位置L12aから第二待機位置L121aに移動する。また、右側の台板部41は、円滑に排出位置L12bから第二待機位置L121bに移動する。並びに、連通部50は、円滑に第一待機位置L120a、L120bから排出位置L12a、L12bに移動する。このように、第一シリンダー510は、二つの筒部40の下側の空間に対して、二つの台板部41を退避させ、連通部50を進入させる。なお、第二シリンダー511のロッドRは、連通部50および二つの台板部41の移動に応じて、左側から右側に移動する。
【0093】
本工程の後においては、上側から下側に向かって、左右二つの筒部側第二開口401と、連通口500と、左右二つの排出口802a、802bと、が直線状に連通する。このため、二つの筒部40内部の粉体状の被処理物Wは、自重により、二つの筒部側第二開口401、連通口500、二つの排出口802a、802bを流下し、排出シュート52a、50b内に滞留する。
【0094】
台板部挿入工程においては、二つの筒部40の下側の空間に対して、連通部50を退避させ、二つの台板部41を進入させる。まず、図13(A)に示す第二シリンダー511により、二つの台板部41および連通部50を右側から左側に移動(スライド)させる。ここで、二つの筒部40は、第三シリンダー512、第四シリンダー513、第五シリンダー514により、固定されている。このため、連通部50および左右二つの台板部41が移動する際、二つの筒部40から二つの台板部41、連通部50に、荷重が加わらない。したがって、連通部50は、円滑に排出位置L12a、L12bから第一待機位置L120a、L120bに移動(復動)する。また、左側の台板部41は、円滑に第二待機位置L121aから排出位置L12aに移動(復動)する。並びに、右側の台板部41は、円滑に第二待機位置L121bから排出位置L12bに移動(復動)する。このように、第二シリンダー511は、二つの筒部40の下側の空間に対して、連通部50を退避させ、二つの台板部41を進入させる。なお、第一シリンダー510のロッドRは、連通部50および二つの台板部41の移動に応じて、右側から左側に移動する。本工程の後においては、二つの筒部側第二開口401と二つの排出口802a、802bとの連通は、二つの台板部41により遮断されている。
【0095】
本実施形態の排出装置3およびプッシャー炉と、第一実施形態の排出装置およびプッシャー炉とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のように、炉内区間L1が複数のレーンつまり複数の排出位置L12a、L12bを備えていてもよい。こうすると、単位時間あたりの被処理物Wの排出量(生産量)を増やすことができる。
【0096】
<第五実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、匣鉢が複数の筒部を備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図14に、本実施形態の排出装置の匣鉢の分解斜視図を示す。なお、図5(C)と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0097】
図14に示すように、匣鉢4は、単一の台板部41と、複数の筒部40a~40cと、を備えている。複数の筒部40a~40cは、台板部41の上側に積み重ねられている。筒部40a~40cの上端には、段差部(上側係合部)402が形成されている。筒部40a~40cの下端には、段差部(下側係合部)403が凹設されている。
【0098】
本実施形態の排出装置およびプッシャー炉と、第一実施形態の排出装置およびプッシャー炉とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のように、匣鉢4の筒部40a~40cが積み重ねられていてもよい。こうすると、単位時間あたりの被処理物Wの排出量(生産量)を増やすことができる。
【0099】
また、上下方向に隣り合う任意の二つの筒部40間において、下側の筒部40の上端の段差部402と、上側の筒部40の下端の段差部403と、は互いに噛合(係合)している。このため、二つの筒部40が前後左右方向(水平方向)にずれるのを抑制することができる。したがって、搬送時に、積層状態の複数の筒部40a~40cが崩れるのを、抑制することができる。
【0100】
<第六実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、駆動部が第六シリンダーを備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図15に、本実施形態のプッシャー炉の上下方向部分断面図を示す。なお、図15に示すのは、被処理物の排出作業(排出方法)の連通部挿入工程後かつ台板部挿入工程前の状態である。また、図7(B)と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0101】
図15に示すように、排出位置L12の匣鉢4の真上には、第六シリンダー(押出部)515が配置されている。連通部挿入工程後かつ台板部挿入工程前の状態において、第六シリンダー515の押圧板Raは、筒部側第一開口400、筒部側第二開口401、連通口500、排出口802内を、上下方向に往復動可能である。
【0102】
本実施形態の排出装置3およびプッシャー炉と、第一実施形態の排出装置3およびプッシャー炉とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の排出装置3によると、被処理物Wを排出する際、第六シリンダー515により、筒部40の内部から、被処理物Wを、下向きに押し出すことができる。このため、筒部40の内部に被処理物Wが残留するのを、抑制することができる。したがって、被処理物Wの歩留まりを向上させることができる。本実施形態のように、被処理物Wを排出する際、被処理物Wの自重(重力)と併せて、第六シリンダー515の押圧力(重力以外の力)を用いてもよい。
【0103】
<第七実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、台板部が、筒部に対して、下側に回動可能な点である。また、匣鉢が蓋部を備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図16に、本実施形態のプッシャー炉の右側から見た前後方向部分断面図を示す。なお、図7(A)、図7(B)と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0104】
図16に示すように、筒部40の下端後縁(下流側の縁)と台板部41とは、ヒンジ部6を介して、連結されている。このため、筒部40に対して、台板部41は、回動軸60を中心に、下側に回動可能である。
【0105】
匣鉢4は、蓋部42を備えている。蓋部42は、筒部40の筒部側第一開口400を封止している。排出位置L12の前側(上流側)において、匣鉢4の台板部41は、床部800に載置されている。このため、台板部41は、筒部40の筒部側第二開口401に埋設されている。すなわち、台板部41は、筒部側第二開口401を封止している。
【0106】
匣鉢4が排出位置L12に到達すると、被処理物Wおよび台板部41の自重により、台板部41が下向きに回動し、排出口802の内部に進入する(落ち込む)。当該回動により、台板部41は、筒部側第二開口401を開放する。このため、筒部40内部の被処理物Wは、自重により、筒部側第二開口401、排出口802を流下し、排出シュート52内に流れ落ちる。
【0107】
匣鉢4が排出位置L12から後側(下流側)に移動する際、台板部41は、排出口802の後縁により、相対的に後側から押圧される。当該押圧力により、台板部41は、上向きに回動し、床部800の上面に復帰する。当該回動により、台板部41は、筒部側第二開口401を封止する。
【0108】
本実施形態の排出装置3およびプッシャー炉と、第一実施形態の排出装置3およびプッシャー炉とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の排出装置3によると、台板部(移動部)41を下側に回動させることにより、筒部側第二開口401と排出口802とを簡単に連通させることができる。
【0109】
また、本実施形態の排出装置3によると、重力を利用して台板部41を下側に回動させることができる。並びに、匣鉢4の搬送用の力(図1に示すプッシャー21の押圧力)を利用して、台板部41を上側に回動(復動)させることができる。このため、被処理物Wを排出する際、シリンダー等を用いて台板部41を駆動する場合と比較して、排出装置3の構造を簡単化することができる。また、被処理物Wを排出する際、台板部41は、上下方向に回動する。このため、台板部41が左右方向(路幅方向)にスライドする場合と比較して、雰囲気熱処理炉の排出装置3付近を、路幅方向に小型化することができる。
【0110】
また、匣鉢4は、蓋部42を備えている。このため、コンタミネーションが発生するのを抑制することができる。また、蓋部42を筒部40に被せたまま、筒部側第二開口401を介して、被処理物Wを排出することができる。このため、プッシャー炉や熱処理システムに、蓋部42を筒部40から取り外す、蓋外し装置を配置する必要がない。したがって、プッシャー炉や熱処理システムの構造を簡単化することができる。
【0111】
また、蓋外し装置を配置する必要がないため、熱処理区間と排出位置とを互いに隣接して配置することができる。よって、所定の雰囲気を確保する必要がある区間(ハウジング20により外部から隔離する必要がある区間)を短くすることができる。
【0112】
<その他>
以上、本開示の排出装置および雰囲気熱処理炉の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0113】
任意の実施形態の排出装置3および雰囲気熱処理炉(プッシャー炉2、ローラーハースキルン2a)の構成部材は、適宜、他の実施形態の排出装置3および雰囲気熱処理炉に組み込むことができる。
【0114】
例えば、図16に示す蓋部42付きの匣鉢4を、図3に示すスライド式の排出装置3の匣鉢4、図12に示すローラーハースキルンの排出装置3の匣鉢、図13に示す複数のレーンL1a、L1bを有するプッシャー炉の排出装置3の匣鉢として用いてもよい。また、図14に示す上下に積層された複数の筒部40a~40cのうち、最上段の筒部40cに、図16に示す蓋部42を被せてもよい。
【0115】
搬送路Lの構成、配置は特に限定しない。例えば、排出位置L12の位置は特に限定しない。排出位置L12の位置は、熱処理区間L11の下流側、かつ被処理物供給位置L210の上流側であればよい。好ましくは、排出位置L12の位置は、熱処理区間L11の下流側、かつ出口側置換位置L20の上流側であればよい。単一の搬送路Lに、複数の排出位置L12を配置してもよい。
【0116】
搬送路Lのレーン数は特に限定しない。単一でも複数であってもよい。搬送路Lのコーナー部に、適宜、ターンテーブルやカーブコンベアなどを配置してもよい。搬送路Lに炉外区間L2が配置されていなくてもよい。すなわち、搬送路Lは循環路でなくてもよい。
【0117】
軌道部80の構成は特に限定しない。ローラーコンベア、ベルトコンベア、チェーンコンベアなどを用いてもよい。図1に示す炉内区間L1の途中で軌道部80が切り替わってもよい。例えば、熱処理区間L11(冷却帯)までを床部800、熱処理区間L11以降を図12に示すローラーコンベア801としてもよい。
【0118】
図6(A)、図6(B)に示す第一待機位置L120と排出位置L12と第二待機位置L121との並置方向は特に限定しない。並置方向は、左右方向(路幅方向)であっても、左右方向および前後方向(路長方向)に対して、交差する方向であってもよい。並置方向は、前後方向に対して、交差する方向であればよい。図13(A)、図13(B)に示す第一待機位置L120a、L120bと排出位置L12a、L12bと第二待機位置L121a、L121bとの並置方向についても同様である。
【0119】
熱処理室22の雰囲気は特に限定しない。例えば、被処理物Wの熱分解を行う場合、酸素比1以下の還元雰囲気に熱処理室22を設定してもよい。また、雰囲気ガスの種類は特に限定しない。不活性ガス(ヘリウム、アルゴンなど)、還元性ガス(水素、一酸化炭素など)などを用いてもよい。また、複数種類のガスを混合して用いてもよい。また、熱処理室22内を雰囲気制御しなくてもよい。熱処理室22の熱源は特に限定しない。電熱式ヒーター、マイクロ波などであってもよい。
【0120】
シリンダー類(プッシャー21、第一シリンダー510、第二シリンダー511、第三シリンダー512、第四シリンダー513、第五シリンダー514、第六シリンダー515、搬送シリンダー92a~92f)の駆動機構は特に限定しない。動力源として、空気圧、油圧、水圧などの流体圧を用いてもよい。また、単動式であっても複動式であってもよい。また、シリンダー類の替わりに、あるいはシリンダー類と共に、付勢部材(ばねなど)を併用してもよい。
【0121】
被処理物Wの排出方向(筒部側第二開口401と排出口802と排出シュート52とが並ぶ方向)は、上下方向(重力が作用する方向。垂直方向)、斜め方向(上下方向および水平方向に対して交差する方向)であってもよい。すなわち、排出方向は、上下方向成分を含んでいればよい。同様に、筒部側第二開口401、連通口500、基部側開口410a、排出口802、排出シュート52、各々の延在方向は、上下方向成分を含んでいればよい。
【0122】
連通部挿入工程、移動部挿入工程(台板部挿入工程、シャッター部挿入工程)における連通部50、台板部41、シャッター部411の移動(スライド)方法は特に限定しない。例えば、図6(A)~図8(B)に示すように、連通部挿入工程においては、第一シリンダー510で、連通部50および台板部41を押圧することにより、連通部50および台板部41を移動させてもよい。また、第一シリンダー510と第二シリンダー511とで、連通部50および台板部41を左右方向から挟持した状態で、第一シリンダー510と第二シリンダー511とを移動させることにより、連通部50および台板部41を移動させてもよい。
【0123】
同様に、台板部挿入工程においては、第二シリンダー511で、連通部50および台板部41を押圧することにより、連通部50および台板部41を移動させてもよい。また、第一シリンダー510と第二シリンダー511とで、連通部50および台板部41を左右方向から挟持した状態で、第一シリンダー510と第二シリンダー511とを移動させることにより、連通部50および台板部41を移動させてもよい。
【0124】
雰囲気熱処理炉の種類は特に限定しない。プッシャー炉2、ローラーハースキルン2a、メッシュベルトキルンなどであってもよい。また、雰囲気熱処理炉以外の熱処理炉に、排出装置3を配置してもよい。また、連続炉ではなくバッチ炉に、排出装置3を配置してもよい。このように、排出装置3は、雰囲気熱処理炉から独立して用いることができる。
【0125】
匣鉢4の形状は特に限定しない。筒部40は、多角形(三角形、四角形、六角形、八角形など)筒状、円形(真円形、楕円形など)筒状などであってもよい。台板部41、基部410、シャッター部411、連通部50は、各々、多角形板状、円形板状などであってもよい。匣鉢4の材質は特に限定しない。金属、樹脂、CFRP(炭素繊維強化樹脂)、GFRP(ガラス繊維強化樹脂)、カーボン、セラミックなどであってもよい。被処理物Wの種類は特に限定しない。例えば、金属のコンタミネーションを嫌う電池材料(LFP(リン酸鉄リチウム)、LMP(リン酸マンガンリチウム)、カーボンなど)などであってもよい。この場合、非金属製(カーボン製、CFRP製、GFRP製、セラミック製など)の匣鉢4を用いる方がよい。被処理物Wの状態は特に限定しない。粉状、塊状などであってもよい。
【符号の説明】
【0126】
1:熱処理システム、2:プッシャー炉、2a:ローラーハースキルン(雰囲気熱処理炉)、20:ハウジング、21:プッシャー、210:シリンダーチューブ、211:ロッド、211a:押圧板、22:熱処理室、23:断熱材、24:ヒーター、25:ガス供給管、26:ガス排出管、3:排出装置、4:匣鉢、40:筒部、40a~40c:筒部、400:筒部側第一開口、401:筒部側第二開口(筒部側開口)、402:段差部、403:段差部、410:基部、410a:基部側開口、410b:ガイド口、410c:ガイド溝、411:シャッター部、41:台板部、42:蓋部、5:排出部、50:連通部、500:連通口、51:駆動部、510:第一シリンダー、511:第二シリンダー、512:第三シリンダー、513:第四シリンダー、514:第五シリンダー、515:第六シリンダー、52:排出シュート、52a:排出シュート、52b:排出シュート、53:バルブ、6:ヒンジ部、60:回動軸、80:軌道部、800:床部、801:ローラーコンベア、801a:ローラー、802:排出口、802a:排出口、802b:排出口、81:ガイド部、82:ブラケット、90:出口側置換部、900:ハウジング、901:置換室、902:炉内側ドア、903:炉外側ドア、91:入口側置換部、910:ハウジング、911:置換室、912:炉内側ドア、913:炉外側ドア、92a~92f:搬送シリンダー、93:供給口、L:搬送路、L1:炉内区間、L1a:レーン、L1b:レーン、L10:搬入位置、L11:熱処理区間、L12:排出位置、L12a:排出位置、L12b:排出位置、L120:第一待機位置、L120a:第一待機位置、L120b:第一待機位置、L121:第二待機位置、L121a:第二待機位置、L121b:第二待機位置、L13:搬出位置、L2:炉外区間、L20:出口側置換位置、L21:匣鉢回収区間、L210:被処理物供給位置、L22:入口側置換位置、R:ロッド、Ra:押圧板、Rb:仕切板、T:シリンダーチューブ、W:被処理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向きの筒部側開口が開設された筒部と、前記筒部側開口を封止し前記筒部に対して移動可能な移動部を有する台板部と、を有し、熱処理後の被処理物が収容された匣鉢と、
前記匣鉢を搬送する搬送路の排出位置において、前記筒部が固定された状態で、前記移動部を移動させ、前記筒部側開口を開放し、前記被処理物の自重を利用して、前記匣鉢から前記被処理物を排出する排出部と、
を備え
前記排出位置には、前記搬送路を上下方向に貫通する排出口が開設され、
前記排出部は、上下方向に貫通する連通口が開設された連通部と、前記連通部および前記移動部を駆動する駆動部と、を有し、
前記駆動部は、前記筒部が固定された状態で、前記筒部の下側に、前記移動部に替えて前記連通部を配置し、前記連通口を介して、前記筒部側開口と前記排出口とを連通させる排出装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記台板部である請求項1に記載の排出装置。
【請求項3】
前記台板部は、上下方向に貫通する基部側開口を有する基部と、前記基部側開口を開閉可能なシャッター部と、を有し、
前記移動部は、前記シャッター部であり、
前記駆動部は、前記筒部が固定された状態で、前記筒部の下側に、前記シャッター部に替えて前記連通部を配置し、前記基部側開口と前記連通口とを介して、前記筒部側開口と前記排出口とを連通させる請求項に記載の排出装置。
【請求項4】
前記筒部はカーボン製である請求項に記載の排出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の排出装置を備え、前記搬送路により前記匣鉢が搬送される連続式の雰囲気熱処理炉であって、
ハウジングと、前記ハウジングの内部に区画され、所定の雰囲気下で前記被処理物に熱処理を施す熱処理室と、を備え、
前記排出位置は、前記ハウジングの内部において、前記熱処理室の下流側に配置される雰囲気熱処理炉。
【請求項6】
前記雰囲気熱処理炉は、前記台板部を上流側から下流側に向かって押し出すプッシャーを備えるプッシャー炉である請求項5に記載の雰囲気熱処理炉。