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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159352
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】隔膜式センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/404 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01N27/404 341S
G01N27/404 341B
G01N27/404 341R
G01N27/404 341G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075325
(22)【出願日】2023-04-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳晴
(72)【発明者】
【氏名】鹿志村 加緒里
(57)【要約】
【課題】加圧下から大気圧下などに減圧しても適切に測定を行うことが可能な隔膜式センサを提供する。
【解決手段】センサボディ101と、センサボディ101の開口部103に隣接して配置された第1電極104と、第1電極104から離間して前記室に配置された第2電極105と、センサボディ101の内部の室に収容され、第1電極104と第2電極105とに接触する、電解質を含有する内部媒体106と、上記開口部103を封止するように取り付けられた隔膜107と、を有する隔膜式センサ100は、内部媒体106の少なくとも一部は電解質を含有するゲルであるゲル電解質161で構成されており、センサボディ101には、センサボディ101の内部と外部とを連通させる連通孔108が設けられており、連通孔108に対して内部媒体106を封止するようにゲル電解質161に隣接して配置された、ガス透過性の材料で形成されたガス透過層109を有する構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に室を形成し、開口部を有するセンサボディと、
前記開口部に隣接して配置された第1電極と、
前記第1電極から離間して前記室に配置された第2電極と、
前記室に収容され、前記第1電極と前記第2電極とに接触する、電解質を含有する内部媒体と、
前記開口部を封止するように前記センサボディに取り付けられ、測定対象ガスを透過させることが可能な隔膜と、
を有する隔膜式センサにおいて、
前記内部媒体の少なくとも一部は電解質を含有するゲルであるゲル電解質で構成されており、
前記センサボディには、前記センサボディの内部と外部とを連通させる連通孔が設けられており、
前記連通孔に対して前記内部媒体を封止するように前記ゲル電解質に隣接して配置された、ガス透過性の材料で形成されたガス透過層を有することを特徴とする隔膜式センサ。
【請求項2】
前記ガス透過層は、前記室に配置されており、
前記室は、前記内部媒体が収容された第1領域と、前記ガス透過層によって前記第1領域と区画された第2領域と、を有し、
前記連通孔は、前記第2領域に臨むように設けられており、前記連通孔を通して前記第2領域に検体が流入可能であることを特徴とする請求項1に記載の隔膜式センサ。
【請求項3】
前記連通孔として、第1連通孔と第2連通孔とが設けられており、前記第1連通孔は、前記第2連通孔よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の隔膜式センサ。
【請求項4】
前記内部媒体は、前記ゲル電解質で構成された第1層と、電解質を含有する溶液である電解質溶液で構成された第2層と、を有し、前記ゲル電解質は前記ガス透過層及び前記電解質溶液と接触し、前記電解質溶液は前記ゲル電解質及び前記隔膜と接触することを特徴とする請求項1に記載の隔膜式センサ。
【請求項5】
前記第1電極は前記電解質溶液と接触するように配置され、前記第2電極は前記ゲル電解質と接触するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の隔膜式センサ。
【請求項6】
前記内部媒体は、前記隔膜及び前記ガス透過層とそれぞれ接触する前記ゲル電解質の単層で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の隔膜式センサ。
【請求項7】
前記連通孔は、前記室の前記ゲル電解質が充填された領域に臨むように設けられており、
前記ガス透過層は、前記連通孔を封止するように前記センサボディに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の隔膜式センサ。
【請求項8】
前記ゲル電解質は、ポリマーを含有するポリマー電解質で構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の隔膜式センサ。
【請求項9】
前記ポリマー電解質は、アクリルアミド系モノマーが架橋されて形成されたポリマーを含有することを特徴とする請求項8に記載の隔膜式センサ。
【請求項10】
前記ガス透過層は、ガス透過性のゴム又はエラストマーで構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の隔膜式センサ。
【請求項11】
前記ガス透過層は、シリコーンゴムで構成されていることを特徴とする請求項10に記載の隔膜式センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COセンサや溶存酸素センサなどの隔膜式センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、隔膜式センサとしてCOセンサが知られている。このCOセンサは、センサボディと、検知電極としてのpH電極と、比較電極と、センサボディの内部の室に収容された内部液と、センサボディの開口部を封止するように設けられたガス透過性の隔膜と、を有する。検体中のCOガス(炭酸ガス)が隔膜を透過して内部液に溶解すると、CO濃度に比例して内部液のpHが変化する。この内部液のpH変化をpH電極によって測定することで、CO濃度を測定することができる。同様の原理を用いたものとして、アンモニア濃度を測定するアンモニアセンサも知られている。これらCOセンサ、アンモニアセンサは、液体(液相)の検体(被検液)中の溶存CO、溶存アンモニアの濃度の測定に用いることができる他、気体(気相)の検体(被検ガス)中のCO、アンモニアの濃度の測定にも用いることができる。このようなセンサは、隔膜式イオン電極とも呼ばれる(特許文献1)。
【0003】
また、従来、隔膜式センサとして溶存酸素センサが知られている。この溶存酸素センサは、センサボディと、検知電極としての作用極と、対極と、センサボディの内部の室に収容された内部液と、センサボディの開口部を封止するように設けられたガス透過性の隔膜と、を有する。被検液中の溶存酸素が隔膜を透過すると、酸素が隔膜と作用極との間の内部液の薄層を拡散して作用極に至り、作用極において酸素が電解されて、作用極と対極との間に溶存酸素濃度に比例して酸化還元電流が流れる。この酸化還元電流を測定することで、溶存酸素濃度を測定することができる。また、この溶存酸素センサには、外部電源を用いて作用極と対極との間に一定の電圧を印加するポーラログラフ式のものと、外部電源を用いないガルバニ電池式のものとがある。同様の原理を用いたものとして、遊離残留塩素濃度、溶存オゾン濃度、溶存二酸化塩素濃度、亜塩素酸(HClO)濃度、溶存水素濃度をそれぞれ測定するセンサも知られている。このようなセンサは、酸化還元電流測定電極とも呼ばれる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-11453号公報
【特許文献2】特開2006-234508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような隔膜式センサ、例えば、COセンサは、環境(河川、海水、湖沼)、水処理、発酵、養殖などの様々な分野で、モニタリングやプロセス制御のために用いられ得る。多くの場合、隔膜式センサは、大気圧下、又は大気圧付近の圧力下で用いられるが、例えば水深数十メートルといった水中の深い位置における加圧下での測定や、プラントなどにおける加圧下での測定に用いることが望まれることがある。
【0006】
しかしながら、従来の隔膜式センサは、例えば0.5~1MPaといった加圧下から大気圧下などに減圧すると、隔膜が膨張して、適切な測定ができなくなることがあった。これは、加圧により内部液に溶け込んだガス(典型的には空気)が減圧により膨張することで、隔膜がセンサボディの外側に向けて膨らみ、検知電極と隔膜との関係が変化することによるものであると考えられる。この場合、隔膜を交換したり張りなおしたりすることが必要となり、センサの保守の手間やコストが増加する要因となる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、加圧下から大気圧下などに減圧しても適切に測定を行うことが可能な隔膜式センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は本発明に係る隔膜式センサにて達成される。要約すれば、本発明は、内部に室を形成し、開口部を有するセンサボディと、前記開口部に隣接して配置された第1電極と、前記第1電極から離間して前記室に配置された第2電極と、前記室に収容され、前記第1電極と前記第2電極とに接触する、電解質を含有する内部媒体と、前記開口部を封止するように前記センサボディに取り付けられ、測定対象ガスを透過させることが可能な隔膜と、を有する隔膜式センサにおいて、前記内部媒体の少なくとも一部は電解質を含有するゲルであるゲル電解質で構成されており、前記センサボディには、前記センサボディの内部と外部とを連通させる連通孔が設けられており、前記連通孔に対して前記内部媒体を封止するように前記ゲル電解質に隣接して配置された、ガス透過性の材料で形成されたガス透過層を有することを特徴とする隔膜式センサである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加圧下から大気圧下などに減圧しても適切に測定を行うことが可能な隔膜式センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】COセンサの断面図である。
図2図1中のA-A線断面図及びB-B線断面図である。
図3】COセンサの隔膜の近傍の断面図及び隔膜カートリッジの分解断面図である。
図4】溶存酸素センサの断面図である。
図5】溶存酸素センサの隔膜の近傍の断面図及び分解断面図である。
図6】COセンサの他の例の断面図である。
図7図6中のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る隔膜式センサを図面に則して更に詳しく説明する。
【0012】
[実施例1]
本発明に係る隔膜式センサの一実施例について説明する。本実施例では、本発明は、隔膜式センサとしての隔膜式イオン電極の一例であるCOセンサに適用される。
【0013】
1.COセンサの構成
図1は、本実施例のCOセンサ(炭酸ガス電極)100の断面図である。COセンサ100は、全体として一方向に長い棒状の形状を有する。COセンサ100は、通常、その長手軸線方向が鉛直方向に沿うように配置されて測定に使用される。以下、図1中の上下方向に対応する方向を、COセンサ100及びその要素についての上下方向として説明することがあるが、本発明は隔膜式センサの使用時(測定時)の向きを何ら特定するものではない。また、本実施例では、COセンサ100は、液体(液相)の検体(被検液)中の溶存COの濃度の測定に用いられるものとして説明する。
【0014】
COセンサ100は、略円筒状のセンサボディ101を有する。本実施例では、センサボディ101は、メインボディ111と、メインボディ111の下側に接続される袋ナット112と、メインボディ111の上側に接続される電極キャップ113と、袋ナット112によってメインボディ111の下端部に固定される隔膜カートリッジ110の膜張台114及び膜押さえ115と、を有して構成される。メインボディ111の下端部の外周に形成されたネジ部111aと袋ナット112の上端部の内周に形成されたネジ部112aとが螺合されることでメインボディ111と袋ナット112とが結合される。また、メインボディ111の上端部の外周に形成されたネジ部111bと電極キャップ113の下端部の内周に形成されたネジ部113aとが螺合されることでメインボディ111と電極キャップ113とが結合される。センサボディ101は、メインボディ111及び膜張台114によって形成される室である電極室102を内部に有する。また、センサボディ101は、膜張台114によって形成される開口部である検知開口部103を下端部に有する。また、電極キャップ113の内部には、後述するpH電極104やリード線121aなどを支持するリード接続部材(電極支持部材)119が固定されている。リード接続部材119の下端部はメインボディ111の内部に嵌入される。リード接続部材119の下側の先端の近傍の外周には、リード接続部材119とメインボディ111との間を液密的かつ気密的にシールするためのシール部材としてのOリング122が取り付けられている。本実施例では、メインボディ111、袋ナット112はポリプロピレン樹脂で形成されているが、ポリサルフォン樹脂などの他の適宜の樹脂で形成されていてもよい。また、本実施例では、電極キャップ113はSUS(ステンレス鋼)などの金属で構成されているが、ポリサルフォン樹脂などの適宜の樹脂で形成されていてもよい。
【0015】
また、COセンサ100は、検知開口部103に隣接して配置された第1電極としてのpH電極104を有する。本実施例では、pH電極104は、pH電極支持管143と、pH電極支持管143の下側の先端に設けられた感応部としてのpHガラス感応膜141と、pH電極支持管143の内部に収容されたpH電極内部液144に浸漬された内部電極142と、を有するpHガラス電極で構成されている。pH電極104は、COセンサ100の長手軸線方向に沿って電極室102の略中央に配置され、pHガラス感応膜141が検知開口部103に隣接して配置されている。pH電極104は、上端部がリード接続部材119に取り付けられて支持される。また、COセンサ100は、pH電極104から離間して電極室102に配置された第2電極としての比較電極105を有する。本実施例では、比較電極105は、銀/塩化銀電極(Ag/AgCl電極)で構成されている。比較電極105は、上端部及び下端部が開口した比較電極支持管117を通して、電極室102に配置されている。比較電極支持管117は、リード接続部材119に支持されて電極室102へと延在している。更に、本実施例では、COセンサ100は、電極室102に配置された温度センサ120を有する。温度センサ120は、上端部が開口し下端部が閉鎖された温度センサ支持管118の内部に配置されている。温度センサ支持管118は、リード接続部材119に支持されて電極室102へと延在している。pH電極104の内部電極142、比較電極105、温度センサ120には、それぞれリード線121a、121b、121cが接続されている。これらのリード線121a、121b、121cは、リード接続部材119の上端部に接続されたケーブル124内にまとめられてCOセンサ100の外部に導出され、図示しない測定装置(信号処理装置)に接続される。
【0016】
また、COセンサ100は、電極室102に収容され、pH電極104と比較電極105とに接触する、電解質を含有する内部媒体106を有する。内部媒体106の少なくとも一部は電解質を含有するゲルであるゲル電解質(ゲル状内部液、内部液ゲル)161で構成されている。本実施例では、内部媒体106は、上記ゲル電解質161で構成された第1層L1と、電解質を含有する溶液(水溶液)である電解質溶液(液体内部液)162で構成された第2層L2と、を有する。ゲル電解質161は内部媒体106の上層を構成し、電解質溶液162は内部媒体106の下層を構成する。ゲル電解質161は、上方の後述するガス透過層109及び下方の電解質溶液162とそれぞれ接触する。また、電解質溶液162は、上方のゲル電解質161及び下方の後述する隔膜107とそれぞれ接触する。本実施例では、pH電極104のpHガラス感応膜141は電解質溶液162と接触し、比較電極105はゲル電解質161と接触する。図2(a)は、図1中のA-A線断面図である。図2(a)に示すように、ゲル電解質161は、メインボディ111の内周面、pH電極支持管143、比較電極105(及び比較電極支持管117)、及び温度センサ支持管118に密着するように充填されている。また、ゲル電解質161は、後述するガス透過層109に密着するように充填されている。
【0017】
電解質溶液をゲル化する方法としては、例えば、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブチルアクリレートなどのポリマー、合成ゴム、セルロース、酢酸セルロースなどを用いる方法が挙げられる。電解質溶液とポリマーとの混合比などを調整することにより、被接触部材に対する十分な密着性が得られるようにゲルの粘度を調整することができる。本実施例では、ゲル電解質161は、ポリマーを含有するポリマー電解質で構成されている。特に、本実施例では、ポリマー電解質は、アクリルアミド系モノマーが架橋されて形成されたポリマーを含有する。つまり、本実施例では、ポリマー電解質は、ポリアクリルアミドをベースとするポリマー電解質(架橋ポリアクリルアミド)で構成されている。
【0018】
本実施例では、ゲル電解質161は、所定の処方の成分を含む液体の状態でセンサボディ101の内部に注入して、センサボディ101の内部で硬化(ゲル化)させることで、センサボディ101の内部に配置する。ポリマー電解質の処方及び配置方法の一例については後述する。ゲル電解質161と電解質溶液162とで含有する電解質は同じである。本実施例では、ゲル電解質161、電解質溶液162は、電解質として所定の濃度(例えば10-3mol/L)のNaHCO(炭酸水素ナトリウム)を含有する。なお、本実施例では、内部媒体106は、ゲル電解質161と電解質溶液162との2層で構成されているが、内部媒体106はゲル電解質161の単層で構成されていてもよい。内部媒体106がゲル電解質161の単層の場合も、ゲル電解質161は、上記同様、電解質としてNaHCO(炭酸水素ナトリウム)を含有するものとする。
【0019】
また、COセンサ100は、検知開口部103を封止するようにセンサボディ101に取り付けられ、測定対象ガス(本実施例ではCOガス)を透過させることが可能な隔膜107を有する。本実施例では、隔膜107は、予め隔膜107が取り付けられた隔膜カートリッジ110が袋ナット112でメインボディ111に固定されることで、センサボディ101に取り付けられる。図3(a)は、COセンサ100の隔膜107の近傍を拡大して示す断面図である。また、図3(b)は、隔膜カートリッジ110の分解断面図である。図3(a)に示すように、検知開口部103を封止するように隔膜107が設けられている。また、この隔膜107とpH電極104のpHガラス感応膜141との間には、内部媒体106が浸透可能であり内部媒体106を保持可能なスペーサ116が配置されている。図3(b)に示すように、隔膜カートリッジ110は、第1隔膜固定部材としての膜張台114と、第2隔膜固定部材としての膜押さえ115と、を有する。膜張台114は、略円筒状の部材であり、上端部に外径が大きくされた突き当て部114aが設けられ、下端部の縁部114bが平面視略円形の検知開口部103を形成する。膜押さえ115は、略円筒状(円環状)の部材であり、上端部に外径が大きくされた保持受け部115aが設けられ、膜張台114の下端部の外周面114cの外径に対応する内径を有する内周面115bを有している。本実施例では、膜張台114、膜押さえ115は、それぞれポリプロピレン樹脂などの樹脂で構成されているが、これらのうちの少なくとも1つがSUS(ステンレス鋼)などの適宜の金属で形成されていてもよい。また、膜張台114の突き当て部114aの下側に隣接して、隔膜カートリッジ110とメインボディ111との嵌合部を液密的かつ気密的にシールするためのシール部材としてのOリング123が取り付けられている。
【0020】
隔膜107は、検知開口部103よりも広い形状、例えば、膜張台114の縁部114bの外径よりも大きい直径の略円形とされる。また、スペーサ116は、pH電極104の先端(pHガラス感応膜141)を覆うような形状、例えば、膜張台114と同じ外径の略円形とされる。隔膜107の電極室102の内側になる面にスペーサ116を配置し、隔膜107を膜張台114の縁部114b上に配置する。また、膜張台114の下端部に膜押さえ115の内周面115bに嵌合させる。これにより、隔膜107を、膜押さえ115の内周面115bと膜張台114の外周面114cとで挟持し、膜張台114の縁部114bに押し付けて、検知開口部103を封止するように張設することができる。上述のように隔膜107が取り付けられた隔膜カートリッジ110は、膜張台114の突き当て部114aをメインボディ111の下端部に設けられた平面視略円形のカートリッジ受け部111dに嵌合させるようにして、メインボディ111上に配置する。また、膜押さえ115の保持受け部115aを袋ナット112に設けられた平面視略円形のカートリッジ押さえ部112bで押し付けるようにして、袋ナット112をメインボディ111に螺合する。この際に、Oリング123により隔膜カートリッジ110とメインボディ111との嵌合部が液密的かつ気密的にシールされる。
【0021】
隔膜107としては、測定対象ガス(本実施例ではCOガス)を透過させることが可能なものを適宜選択して用いることができる。なお、隔膜107は、内部媒体106及び被検液を透過させないものとする。隔膜107を構成する材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などを用いることができる。隔膜107としては、これらの材料を用いて形成された膜を好適に用いることができる。本実施例では、隔膜107として、PTFE製の膜を用いた。
【0022】
スペーサ116は、隔膜107と第1電極(本実施例ではpH電極104)との間に配置され、隔膜107と第1電極(本実施例ではpH電極104)との間の距離を略一定に維持することができるとともに、内部媒体106が浸透可能でありかつ内部媒体106を保持可能なものであればよい。スペーサ116としては、樹脂製、セルロース製又はガラス製の繊維で構成された網目状構造や不織布状構造を有するシートを用いることができる。また、スペーサ116としては、上記同様の繊維で構成された濾材、あるいは樹脂で構成されたスポンジや多孔性フィルムを用いてもよい。スペーサ116を構成する樹脂としては、ポリエステル(PETなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。本実施例では、スペーサ116として、ポリエステル繊維で構成された不織布を用いた。
【0023】
また、図1に示すように、COセンサ100は、センサボディ101の内部と外部とを連通させる、センサボディ101に設けられた連通孔108を有する。本実施例では、センサボディ101には、連通孔108として、第1連通孔181と第2連通孔182とが設けられている。第1連通孔181と第2連通孔182とは、電極室102を挟んで反対側のメインボディ111の壁部を貫通して設けられている。本実施例では、第1連通孔181及び第2連通孔182は平面視略円形とされているが、これに限定されるものではない。また、本実施例では、第1連通孔181は、第2連通孔182よりも下方に配置されている。
【0024】
また、COセンサ100は、連通孔108(第1連通孔181、第2連通孔182)に対して内部媒体106を封止するようにゲル電解質161に隣接して配置された、ガス透過性の材料で形成されたガス透過層109を有する。図2(b)は、図1中のB-B線断面図である。図2(b)に示すように、ガス透過層109は、メインボディ111の内周面、pH電極支持管143、比較電極支持管117、及び温度センサ支持管118に密着するように設けられている。また、ガス透過層109は、ゲル電解質161に密着するように設けられている。ガス透過層109を構成する材料としては、測定対象ガス(本実施例ではCOガス)だけではなく、一般に空気(酸素、窒素)を良く透過するものを適宜選択して用いることが望ましい。なお、ガス透過層109は、内部媒体106及び被検液を透過させないものとする。本実施例では、ガス透過層109は、ガス透過性のゴム又はエラストマーで構成されている。特に、本実施例では、ガス透過層109は、シリコーンゴムで構成されている。ガス透過層109を構成する材料としては、シリコーンゴムの他、天然ゴムなどを用いてもよい。ガス透過層109は、液状のエラストマー(例えばシリコーン接着剤)などのガス透過層109を構成する材料を液体の状態でセンサボディ101の内部に注入して、センサボディ101の内部で硬化させることで、センサボディ101の内部に配置することができる。ガス透過層109を構成する材料として好適なシリコーン接着剤として、信越化学社製のKE-3475RTVを例として挙げることができる。あるいは、ガス透過層109は、予め成形された部品をセンサボディ101の内部に配置してもよい。ガス透過層109の配置方法の一例については後述する。ガス透過層109の厚さ(COセンサ100の長手軸線方向における厚さ)は、ガス透過層109を構成する材料に応じて、十分なガス透過速度が得られるように適宜設定することが望ましい。本実施例では、ガス透過層109の厚さは、5mmとした。
【0025】
ここで、本実施例では、ガス透過層109は、電極室102に配置されている。本実施例では、電極室102は、内部媒体106が収容された第1領域R1と、ガス透過層109によって第1領域R1と区画された第2領域R2と、を有する。そして、本実施例では、連通孔108(第1連通孔181、第2連通孔182)は、電極室102の第2領域R2に臨むように設けられている。つまり、連通孔108(第1連通孔181、第2連通孔182)は、電極室102の第2領域R2とセンサボディ101の外部とを連通させるように、センサボディ101(メインボディ111)の壁部を貫通して設けられている。これにより、本実施例では、連通孔108(第1連通孔181、第2連通孔182)を通して電極室102の第2領域R2に被検液が流入可能である。
【0026】
更に、本実施例では、COセンサ100は、内部媒体106(又はその成分)の注入、補充又は交換などのために用いられる、メインボディ111に設けられた作業用孔111cを有する。本実施例では、作業用孔111cは、電極室102の内部媒体106が収容された第1領域R1のうち電解質溶液162が収容された領域に臨むように、メインボディ111の壁部を貫通して設けられている。作業用孔111cは、COセンサ100の使用時(測定時)には、液及びガスを透過しないネジなどの栓125により液密的かつ気密的に封止されるか、又はゴムなどで構成されたシール材125’で液密的に封止される。シール材125’を構成する材料としては、ガス透過層109を構成する材料と同様の材料を用いることができる。
【0027】
COセンサ100により被検液中の溶存COの濃度を測定する際には、COセンサ100を被検液に浸漬する。この際に、典型的には、センサボディ101の全体を被検液に浸漬する。被検液中のCOガス(炭酸ガス)が隔膜107を透過して内部媒体106に溶解すると、CO濃度に比例して内部媒体106(主に隔膜107とpH電極104のpHガラス感応膜141との間のスペーサ116に保持された電解質溶液162)のpHが変化する。この内部媒体106のpHに応じてpH電極104のpHガラス感応膜141に起電力が生じる。そして、pH電極104の電位と比較電極105の電位との間の電位差(mV)が、リード線121a、121bを介してpH電極104、比較電極105に接続された測定装置(図示せず)により測定される。これにより、被検液中の溶存COの濃度が測定される。なお、測定装置は、リード線121cを介して温度センサ120とも接続されており、温度センサ120によって検知された温度に応じて、CO濃度の測定値を所定の温度(例えば25℃)におけるCO濃度に変換する自動温度補償を行うことができる。
【0028】
2.製造方法
次に、本実施例のCOセンサ100の製造方法、特に、内部媒体106及びガス透過層109の配置方法について説明する。
【0029】
2-1.電解質溶液の層がある場合
COセンサ100が内部媒体106としてゲル電解質161と電解質溶液162とを有する場合のCOセンサ100の製造方法の一例について説明する。この場合、COセンサ100は、例えば、次の各工程を経て製造することができる。
【0030】
(1)電極キャップ113に固定されたリード接続部材119にpH電極104、比較電極105(及び比較電極支持管117)、温度センサ120(及び温度センサ支持管118)を取り付け、リード接続部材119に固定されたケーブル124からリード接続部材119に導かれているリード線121a、121b、121cを上記pH電極104などにそれぞれ接続する。
【0031】
(2)予め成形されているガス透過層109の穴にpH電極104、比較電極105(及び比較電極支持管117)、温度センサ120(及び温度センサ支持管118)を通して、ガス透過層109を上記pH電極104などに取り付ける。
【0032】
(3)隔膜カートリッジ110、メインボディ111及び袋ナット112が結合された状態で、メインボディ111と、リード接続部材119が固定された電極キャップ113と、を結合する。
【0033】
(4)メインボディ111の作業用孔111cの栓125を外し、センサボディ101を図1に示す向きとは上下を逆にして、作業用孔111cから所定の処方の成分を含む液体の状態のゲル電解質161を所定量注入する。
【0034】
(5)ゲル電解質161の硬化(ゲル化)後に、作業用孔111cから電解質溶液162を注入して電極室102の第1領域R1を満たし、作業用孔111cを栓125で封止する。
【0035】
なお、作業用孔111cをガス透過性のシール材125’で封止する構成の場合は、上記栓125で封止する代わりに該シール材125’で封止すればよい。
【0036】
2-2.電解質溶液の層がない場合
COセンサ100が内部媒体106として電解質溶液162を有しておらずゲル電解質161のみを有する場合のCOセンサ100の製造方法の一例について説明する。この場合、COセンサ100は、例えば、次の各工程を経て製造することができる。
【0037】
(1)電極キャップ113に固定されたリード接続部材119にpH電極104、比較電極105(及び比較電極支持管117)、温度センサ120(及び温度センサ支持管118)を取り付け、リード接続部材119に固定されたケーブル124からリード接続部材119に導かれているリード線121a、121b、121cを上記pH電極104などにそれぞれ接続する。
【0038】
(2)隔膜カートリッジ110、メインボディ111及び袋ナット112が結合された状態で、メインボディ111と、リード接続部材119が固定された電極キャップ113と、を結合する。
【0039】
(3)メインボディ111の作業用孔111cから栓125を外し、作業用孔111cから所定の処方の成分を含む液体の状態のゲル電解質161を所定量注入し、作業用孔111cを栓125で封止する。その際、連通孔108(第1連通孔181、第2連通孔182)は仮に封止しておく。なお、液体の状態のゲル電解質161は、作業用孔111cから注入する代わりに、連通孔108(例えば第1連通孔181)から注入してもよい。その際には、作業用孔111cは栓125で封止しておく。あるいは、液体の状態のゲル電解質161を連通孔108から注入する場合には、COセンサ100に作業用孔111c及び栓125を設けなくてもよい。
【0040】
(4)ゲル電解質161の硬化(ゲル化)後に、液状のエラストマー(例えばシリコーン接着剤)などのガス透過層109を構成する材料を液体の状態で連通孔108(例えば第1連通孔181)から第1連通孔181の下の所定の位置まで注入し、硬化させる。
【0041】
2-3.ゲル電解質の作製方法
本実施例におけるゲル電解質161の作製方法の一例について説明する。上述のように、本実施例では、ゲル電解質161は、アクリルアミド系モノマーが架橋されて形成されたポリマーを含有するポリマー電解質で構成されている。ポリマー電解質は、例えば、次の各工程を経て作製することができる。なお、以下に記載する各成分の量は、硬化前の液体の状態のポリマー電解質の重量に対する重量比(%)である。
【0042】
(1)適宜の容器に所定の濃度(例えば10-3mol/L)のNaHCO(炭酸水素ナトリウム)水溶液(約53%)を調製する。NaHCO水溶液は、ポリマー電解質に導電性を持たせる役割を有する電解質水溶液である。また、この水溶液に所定量のグリセリン(約33%)を加える。グリセリンは、ポリマー電解質の耐熱性を高める、ポリマー電解質の体積を増加する、ポリマー電解質に柔軟性を持たせるといった役割を有する有機溶媒(充填剤)である。
【0043】
(2)上記工程(1)で得られた液を数分間撹拌し、所定量のN,N-ジメチルアクリルアミド(約10%)、メチレンビスアクリルアミド(約0.3%)、トリエトキシビニルシラン(約3.0%)、ツイーン(約0.2%)を加える。N,N-ジメチルアクリルアミドは、ポリマー電解質の主骨格を形成するモノマーである。メチレンビスアクリルアミドは、ポリマー電解質を溶媒に溶解又は融解しないようにするための架橋剤である。トリエトキシビニルシランは、ポリマー電解質の被接触部材に対する密着性を向上させるためのシランカップリング剤である。ツイーン(Tween)は、親油性の高いシランカップリング剤を他の親水性材料と均一に混合させるための界面活性剤である。
【0044】
(3)上記工程(2)で得られた液を数分間撹拌し、所定量のテトラメチルエチレンジアミン(約0.1%)、過硫酸アンモニウム(約0.03%)を加える。テトラメチルエチレンジアミンは、ポリマー電解質を常温硬化させる場合に重合反応を進みやすくするための重合促進剤である。過硫酸アンモニウム(APS)は、ラジカル重合を開始するための重合開始剤である。
【0045】
(4)上記工程(3)で得られた液を10分間撹拌し、センサボディ101の内部に注入して、常温硬化(例えば1時間程度静置)させる。
【0046】
なお、上記工程(3)でテトラメチルエチレンジアミン(硬化促進剤)を加えず、上記工程(4)で加熱硬化(例えば70℃で12時間程度)させてもよい。
【0047】
なお、ポリマー電解質の処方は、上記作製例のものに限定されるものではない。例えば、アクリルアミド系モノマーとしては、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)-N-メチル]アクリルアミド、N-グリセロール-アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス-ヒドロキシメチル-エチル)-2-メタクリルアミド(トリスアクリルアミド)、及びこれらのうち2種以上の混合物を例として挙げることができる。また、アクリルアミド系架橋剤としては、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、N,N’-エチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド]、N,N’-トリメチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド]、N,N’-{[(2-アクリルアミド-2-[(3-アクリルアミドプロポキシ)メチル]プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ)]ビス(プロパン-1,3-ジイル)}ジアクリルアミド、N,N’,N’’-トリアクリロイジエチレントリアミン、N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイトリエチレンテトラミン、及びこれらのうち2種以上の混合物を例として挙げることができる。また、有機溶剤(充填剤)としては、グリセリン、エチレングリコール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、アセトン、及びこれらのうち2種以上の混合物を例として挙げることができる。また、電解質水溶液の電解質(無機塩)としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硝酸カリウム、過塩素酸カリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化ジメチルアンモニウム、塩化トリメチルアンモニウム、塩化セシウム、硝酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、及びこれらのうち2種以上の混合物を例として挙げることができる。また、シランカップリング剤(有機ケイ素化合物)としては、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、7-オクテニルトリメトキシシランを例として挙げることができる。
【0048】
3.作用効果
前述のように、従来の隔膜式センサは、例えば0.5~1MPaといった加圧下から大気圧下などに減圧すると、隔膜が膨張して、適切な測定ができなくなることがあった。
【0049】
これに対し、本実施例のCOセンサ100では、内部媒体106の上部にガス透過層109を設け、その上部は被検液が流入可能な構造としている。つまり、本実施例のCOセンサ100では、ガス透過層109によって、電極室102を内部媒体106が収容された第1領域R1と、圧力補償のための被検液が流入可能な第2領域R2と、を区分けしている。これにより、加圧時には、下部の隔膜107側と上部の圧補償側(電極室102の第2領域R2側)とでの圧力バランスがとられる。つまり、連通孔108(第1連通孔181、第2連通孔182)を介してセンサボディ101の内部と外部とが連通されているため、センサボディ101の内部と外部とが略等圧となる。そのため、加圧時に、隔膜107に過大な圧力が加わることを抑制して、隔膜107の損傷を抑制することができる。そして、加圧時に内部媒体106中に溶解したガス(典型的には空気)は、減圧後はガス透過層109を通して被検液側に逃げていく。そのため、減圧により隔膜107が膨張することを抑制することができる。これにより、COセンサ100の耐圧性能を向上させることができる。
【0050】
また、本実施例のCOセンサ100では、連通孔108として第1連通孔181と第2連通孔182とを設け、第1連通孔181を第2連通孔182よりも下方に配置(第2連通孔182を第1連通孔181よりも上方に配置)している。これにより、COセンサ100を被検液に浸漬した際に、被検液が第1連通孔181を通ってセンサボディ101の外部から電極室102の第2領域R2に流入すると共に、空気が該第2領域R2から第2連通孔182を通ってセンサボディ101の外部に排出され、スムーズに電極室102の第2領域R2を被検液で満たすことができる。
【0051】
また、本実施例のCOセンサ100では、内部媒体106にゲル電解質161を用い、その上部にガス透過層109を設けた構造としている。これにより、ガス透過層109の厚さ(COセンサ100の長手軸線方向における厚さ)を薄くして、ガス透過速度を速くすることができる。つまり、内部媒体106の全部を液体とする場合には、ガス透過層109に強度を持たせて液体の内部媒体106の漏出を防止するために、ガス透過層109を厚くする必要がある。ガス透過速度は厚さに反比例するため、ガス透過層109を厚くするとガス透過速度が遅くなってしまう。その結果、上述のような減圧時にガス透過層109を通して内部媒体106からガスを逃がす効果を十分に得ることが難しくなる。ガス透過層109に隣接する内部媒体106をゲル電解質161とすることで、ガス透過層109に液体の漏出を防止する役割を持たせなくてよい。そのため、ガス透過層109を薄くして、ガス透過速度を速くすることで、上述のような減圧時にガス透過層109を通して内部媒体106からガスを逃がす効果を十分に得ることが可能となる。
【0052】
また、本実施例のCOセンサ100では、内部媒体106にゲル電解質161を用いることにより、ガス透過層109の材料としてシリコーン接着剤のような液状樹脂を使用することが容易となり、ガス透過層109の形成が容易となる。例えば、前述のように、ゲル電解質161上に液状樹脂を流し込むことで、所望の厚さのガス透過層109を容易に形成することができる。また、ゲル電解質161で比較電極105を覆うことで、比較電極105の表面状態が安定し、安定な電極電位を得ることが容易となる。また、内部媒体106をゲル電解質161の第1層L1と、電解質溶液162の第2層L2との2層に分けることにより、例えば電解質溶液162や隔膜107が劣化した場合に、電解質溶液162や隔膜107の交換が容易となる。
【0053】
なお、本実施例では、COセンサ100は、液体(液相)の検体(被検液)中の溶存COの濃度の測定に用いられるものとして説明したが、COセンサ100は、気体(気相)の検体(被検ガス)中のCOの濃度の測定にも用いることもできる。
【0054】
また、本実施例では、隔膜式センサとして隔膜式イオン電極の一例であるCOセンサ100について説明したが、同様の構成を隔膜式イオン電極の他の例であるアンモニアセンサに適用することもできる。この場合、ゲル電解質161、電解質溶液162は、電解質として所定の濃度のNHCl(塩化アンモニウム)を含有するものとする。なお、内部媒体106がゲル電解質161の単層の場合も、ゲル電解質161は、上記同様、電解質としてNHCl(塩化アンモニウム)を含有するものとする。
【0055】
また、本実施例では、センサボディ101は複数の部材で構成されているが、単一の部材で構成されていてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施例によれば、加圧下から大気圧下などに減圧しても適切に測定を行うことが可能な隔膜式センサとしてのCOセンサ100を提供することができる。
【0057】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例では、本発明は、隔膜式センサとしての酸化還元電流測定電極の一例である溶存酸素センサに適用される。本実施例の溶存酸素センサにおいて、実施例1のCOセンサにおけるものに対応する機能あるいは構成を有する要素については、200番台の対応する符号を付して適宜詳しい説明は省略する。なお、本実施例では、溶存酸素センサ200は、ポーラログラフ式のものであるものとする。
【0058】
図4は、本実施例の溶存酸素センサ(溶存酸素電極)200の断面図である。溶存酸素センサ200は、全体として一方向に長い棒状の形状を有する。溶存酸素センサ200は、略円筒状のセンサボディ201を有する。センサボディ201は、内部に形成された室である電極室202を有する。また、センサボディ201は、その下端部に形成された開口部である検知開口部203を有する。また、センサボディ201は、電極支持部201aと、電極支持部201aの上方に設けられたリード接続部201bを有する。本実施例では、センサボディ201は、ポリプロピレン樹脂で構成されているが、ポリサルフォン樹脂などの他の適宜の樹脂で形成されていてもよい。
【0059】
また、溶存酸素センサ200は、検知開口部203に隣接して配置された第1電極としての作用極204を有する。作用極204は、白金、金、銀などで構成されている。作用極204は、溶存酸素センサ200の長手軸線方向に沿って電極室202の略中央に配置された電極支持管245の下側の先端に封入されて、検知開口部203に隣接して配置されている。電極支持管245は、電極支持部201aに支持されている。また、溶存酸素センサ200は、作用極204から離間して電極室202に配置された第2電極としての対極205を有する。対極205は、鉛、銀、錫、亜鉛などで構成されている。対極205は、電極支持管245の外周に取り付けられて、電極室202に配置されている。更に、本実施例では、溶存酸素センサ200は、リード接続部201bに配置された温度センサ220を有する。作用極204、対極205、温度センサ220には、それぞれリード線221a、221b、221cが接続されている。これらのリード線221a、221b、221cは、センサボディ201の上端部に接続されたケーブル224内にまとめられて溶存酸素センサ200の外部に導出され、図示しない測定装置(信号処理装置)に接続される。
【0060】
また、溶存酸素センサ200は、電極室202に収容され、作用極204と対極205とに接触する、電解質を含有する内部媒体206を有する。内部媒体206の少なくとも一部はゲル電解質261で構成されている。本実施例では、内部媒体206は、上記ゲル電解質(内部液ゲル)261と、電解質溶液(液体内部液)262と、を有する。ゲル電解質261は内部媒体206の上層を構成し、電解質溶液262は内部媒体206の下層を構成する。ゲル電解質261は、上方の後述するガス透過層209及び下方の電解質溶液262とそれぞれ接触する。また、電解質溶液262は、上方のゲル電解質261及び下方の後述する隔膜207とそれぞれ接触する。本実施例では、作用極204は電解質溶液262と接触し、対極205はゲル電解質261と接触する。本実施例では、ゲル電解質261は、アクリルアミド系モノマーが架橋されて形成されたポリマーを含有するポリマー電解質で構成されている。本実施例では、ゲル電解質261、電解質溶液262は、それぞれ電解質として所定の濃度(例えば0.5mol/L)のKCl(塩化カリウム)を含有する。なお、本実施例では、内部媒体206は、ゲル電解質261と電解質溶液262との2層で構成されているが、内部媒体206はゲル電解質261の単層で構成されていてもよい。
【0061】
また、溶存酸素センサ200は、検知開口部203を封止するようにセンサボディ201に取り付けられ、測定対象ガス(本実施例では酸素ガス)を透過させることが可能な隔膜207を有する。図5(a)は、溶存酸素センサ200の隔膜207の近傍を拡大して示す断面図である。また、図5(b)は、溶存酸素センサ200の隔膜207の近傍の分解断面図である。図5(a)に示すように、検知開口部203を封止するように隔膜207が設けられている。また、この隔膜207と作用極204との間には、内部媒体206が浸透可能であり内部媒体206を保持可能なスペーサ216が配置されている。また、センサボディ201の下端部には、隔膜固定部材としての膜押さえリング215と、膜押さえリング215をセンサボディ201に固定するための袋ナット212が設けられている。袋ナット212は、センサボディ201の下端部の外周に形成されたネジ部201cと袋ナット212の上端部の内周に形成されたネジ部212aとが螺合されることでセンサボディ201に結合される。また、膜押さえリング215とセンサボディ201との間には、膜押さえリング215とセンサボディ201との嵌合部を液密的かつ気密的にシールするためのシール部材としてのOリング223が設けられている。図5(b)に示すように、隔膜207をセンサボディ201の下端部に配置し、センサボディ201の下端部に膜押さえリング215を嵌合させ、袋ナット212をセンサボディ201に螺合する。これにより、隔膜207を、センサボディ201の下端部の外周面と膜押さえリング215の内周面とで挟持し、センサボディ201の下端部の縁部に押し付けて、検知開口部203を封止するように張設することができる。なお、上述のように隔膜207をセンサボディ201に取り付ける際に、スペーサ216を作用極204上あるいは隔膜207上に配置しておくことで、作用極204と隔膜207との間にスペーサ216が配置することができる。本実施例では、袋ナット212、膜押さえリング215は、それぞれSUS(ステンレス鋼)などの金属で構成されているが、ポリサルフォン樹脂などの適宜の樹脂で形成されていてもよい。
【0062】
また、溶存酸素センサ200は、センサボディ201の内部と外部とを連通させる、センサボディ201に設けられた連通孔208を有する。本実施例では、センサボディ201には、連通孔208として、第1連通孔281と第2連通孔282とが設けられている。第1連通孔281と第2連通孔282とは、電極室202を挟んで反対側のセンサボディ201の壁部を貫通して設けられている。また、本実施例では、第1連通孔281は、第2連通孔282よりも下方に配置されている。
【0063】
また、溶存酸素センサ200は、連通孔208(第1連通孔281、第2連通孔282)に対して内部媒体206を封止するようにゲル電解質261に隣接して配置された、ガス透過性の材料で形成されたガス透過層209を有する。本実施例では、ガス透過層209は、シリコーンゴムで構成されている。本実施例では、ガス透過層209は、電極室202に配置されている。本実施例では、電極室202は、内部媒体206が収容された第1領域R1と、ガス透過層209によって第1領域R1と区画された第2領域R2と、を有する。そして、本実施例では、連通孔208(第1連通孔281、第2連通孔282)は、電極室202の第2領域R2に臨むように設けられている。これにより、本実施例では、連通孔208(第1連通孔281、第2連通孔282)を通して電極室202の第2領域R2に被検液が流入可能である。
【0064】
溶存酸素センサ200により被検液中の溶存酸素の濃度を測定する際には、溶存酸素センサ200を被検液に浸漬する。この際に、典型的には、センサボディ201の全体を被検液に浸漬する。また、測定装置(図示せず)からリード線221a、221bを介して作用極204と対極205との間に一定の電圧を連続して印加する。被検液中の溶存酸素が隔膜207を透過すると、酸素が隔膜207と作用極204との間の内部媒体206の薄層(スペーサ216に保持された電解質溶液262)を拡散して作用極204に至り、作用極204において酸素が電解されて、作用極204と対極205との間に溶存酸素濃度に比例して酸化還元電流が流れる。この酸化還元電流が、リード線221a、221bを介して測定装置により測定される。これにより、被検液中の溶存酸素濃度が測定される。なお、測定装置は、リード線221cを介して温度センサ220とも接続されており、温度センサ220によって検知された温度に応じて、溶存酸素濃度の測定値を所定の温度(例えば25℃)における溶存酸素濃度に変換する自動温度補償を行うことができる。
【0065】
本実施例の溶存酸素センサ200は、例えば、次の各工程を経て製造することができる。
【0066】
(1)作用極204、対極205などが取り付けられたセンサボディ201に、予め成形されているガス透過層209を取り付ける。
【0067】
(2)センサボディ201を図4に示す向きとは逆にして、検知開口部203から所定の処方の成分を含む液体の状態のゲル電解質261を所定量注入する。
【0068】
(3)ゲル電解質261の硬化(ゲル化)後に、検知開口部203から電解質溶液262を注入して電極室202の第1領域R1を満たす。
【0069】
(4)隔膜207を膜押さえリング215でセンサボディ201に取り付け、袋ナット212によって固定する。
【0070】
本実施例の溶存酸素センサ200では、内部媒体206の上部にガス透過層209を設け、その上部は被検液が流入可能な構造としている。これにより、連通孔208(第1連通孔281、第2連通孔282)を介してセンサボディ201の内部と外部とが連通されているため、センサボディ201の内部と外部とが略等圧となる。そのため、加圧時に、隔膜207に過大な圧力が加わることを抑制して、隔膜207の損傷を抑制することができる。そして、加圧時に内部媒体206中に溶解したガス(典型的には空気)は、減圧後はガス透過層209側から被検液側に逃げていく。そのため、減圧により隔膜207が膨張することを抑制することができる。これにより、溶存酸素センサ200の耐圧性能を向上させることができる。
【0071】
また、本実施例の溶存酸素センサ200では、第1連通孔281を第2連通孔282よりも下方に配置しているため、スムーズに電極室202の第2領域R2を被検液で満たすことができる。
【0072】
その他、本実施例の溶存酸素センサ200では、内部媒体106にゲル電解質161を用いることによる実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0073】
なお、本実施例では、隔膜式センサとして酸化還元電流測定電極の一例である溶存酸素センサ200について説明したが、同様の構成を酸化還元電流測定電極の他の例である、遊離残留塩素濃度、溶存オゾン濃度、溶存二酸化塩素濃度、亜塩素酸(HClO)濃度、溶存水素濃度をそれぞれ測定するセンサに適用することもできる。また、酸化還元電流測定電極は、外部電源を用いないガルバニ電池式のものとしてもよい。
【0074】
以上説明したように、本実施例によれば、加圧下から大気圧下などに減圧しても適切に測定を行うことが可能な隔膜式センサとしての溶存酸素センサ200を提供することができる。
【0075】
[実施例3]
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例では、本発明は、実施例1と同様に、隔膜式センサとしての隔膜式イオン電極の一例であるCOセンサに適用される。本実施例のCOセンサにおいて、実施例1のCOセンサのものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0076】
図6は、本実施例のCOセンサ100の断面図である。また、図7は、図6中のC-C線断面図である。
【0077】
本実施例においても、実施例1と同様に、センサボディ101には、センサボディ101の内部と外部とを連通させる連通孔108が設けられている。ただし、本実施例では、連通孔108は、電極室102のゲル電解質161が充填された領域に臨むように設けられている。つまり、実施例1では、電極室102は、内部媒体106が収容された第1領域R1と、ガス透過層109によって第1領域R1と区画された第2領域R2と、を有し、連通孔108(第1連通孔181、第2連通孔182)は、電極室102の第2領域R2に臨むように設けられていた。本実施例では、電極室102は、実施例1における第1領域R1に相当する内部媒体106が収容された領域のみを有する。そして、連通孔108は、この電極室102の内部媒体106が収容された領域のうちゲル電解質161が充填された領域とセンサボディ101の外部とを連通させるように、メインボディ111の壁部を貫通して設けられている。本実施例では、連通孔108は平面視略円形とされているが、これに限定されるものではない。なお、内部媒体106はゲル電解質161の単層で構成されていてもよい。
【0078】
また、本実施例では、ガス透過層109は、連通孔108を封止するようにセンサボディ101(メインボディ111)に取り付けられている。ガス透過層109は、電極室102に収容されたゲル電解質161と接触(密着)する。本実施例では、ガス透過層(ガス透過膜)109は、平面視略円形のシート状とされている。また、本実施例では、ガス透過層109は、シリコーンゴムで構成されている。連通孔108は、小径部183と、小径部183の外側に設けられた大経部184と、を有し、小径部183と大経部184との間に平面視略円形の膜張台部185が形成されている。ガス透過層109を膜張台部185に配置し、膜固定部材としての膜押さえリング131を連通孔108の大経部184に圧入又は螺合する。これにより、ガス透過層109を、膜張台部185と膜押さえリング131とで挟持することで、メインボディ111に固定することができる。ガス透過層(ガス透過膜)109の厚さは、ガス透過層109を構成する材料に応じて、十分なガス透過速度が得られるように適宜設定することが望ましい。本実施例では、ガス透過層(ガス透過膜)109の厚さは、1mmとした。
【0079】
本実施例のCOセンサ100は、例えば、pH電極104などをリード接続部材119に取り付け、メインボディ111、隔膜カートリッジ110、袋ナット112及び電極キャップ113を結合し、ガス透過層109をメインボディ111に取り付けて連通孔108を封止した後に、作業用孔111cを用いてゲル電解質161の注入・硬化、電解質溶液162の注入を行うことで、製造することができる。
【0080】
本実施例では、加圧時には、連通孔108に設けられたガス透過層109を介してセンサボディ101の内部と外部とでの圧力バランスがとられる。また、加圧時に内部媒体106中に溶解したガス(典型的には空気)は、減圧後はガス透過層109を通してセンサボディ101の外部に逃げていく。そのため、減圧により隔膜107が膨張することを抑制することができる。これにより、COセンサ100の耐圧性能を向上させることができる。
【0081】
なお、本実施例の構成では、実施例1の構成と比較して、ガス透過層109の面積が小さくなりやすい。その場合、十分なガス透過速度を得るために、連通孔108及びガス透過層109をセンサボディ101に複数設けることができる。
【0082】
以上説明したように、本実施例のような構成によっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0083】
100 COセンサ(隔膜式センサ)
101 センサボディ
102 電極室
103 検知開口部
104 pH電極(第1電極)
105 比較電極(第2電極)
106 内部媒体
107 隔膜
108 連通孔
109 ガス透過層
161 ゲル電解質
162 電解質溶液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7