(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159372
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】癌の処置のためのB7-H4治療結合分子
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241031BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241031BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241031BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20241031BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241031BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241031BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
A61P 1/06 20060101ALI20241031BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241031BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20241031BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241031BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20241031BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P15/00
A61P1/18
A61P13/08
A61P35/02
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P1/06
A61P11/00
A61K45/00
A61K31/4745
A61K47/68
A61K47/65
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】86
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091938
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】63/498,998
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月4日に、ブラジルヘルスケアプロバイダーASCOディナーイベント(ブラジル,サンパウロ)にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファブリ,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルガ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC29
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC201
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA27
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4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
【課題】 癌の処置のためのB7-H4治療結合分子を提供する。
【解決手段】 本開示は、対象の癌を処置するための方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を対象に投与することを含む、方法に関する。態様では、ADCは、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で対象に投与される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:
a)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
b)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
c)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
d)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は
e)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含むADCを、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
投与される前記ADCの量が、約0.8mg/kg、約1.6mg/kg、約2.4mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、又は約4.8mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与される前記ADCの量が、約1.6mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
投与される前記ADCの量が、約2.4mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
投与される前記ADCの量が、約3.2mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、B7-H4を発現する癌細胞を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ADCが、前記対象に、3週間毎に1回投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌、並びに肺癌から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、ホルモン受容体陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、相同組換え修復欠損(HRD)癌である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記HRD遺伝子における変異が、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体又はその抗原結合断片が:
i.それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
ii.それぞれ配列番号33及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
iii.それぞれ配列番号43及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
iv.それぞれ配列番号46及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
v.それぞれ配列番号47及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
vi.それぞれ配列番号31及び配列番号32のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
vii.それぞれ配列番号35及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
viii.それぞれ配列番号37及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;又は
ix.それぞれ配列番号39及び配列番号40のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアントを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体又はその抗原結合断片が:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、又はそれらの機能的バリアントを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体又はその抗原結合断片が、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体又はその抗原結合断片が、OVCAR4細胞株に結合する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号52のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号48のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体又はその抗原結合断片が、モノクローナル抗体である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化モノクローナル抗体である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記切断性リンカーが、mp-PEG8-val-alaリンカーである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞傷害剤が、トポイソメラーゼ阻害剤である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記トポイソメラーゼ阻害剤が、式A
*
【化1】
の化合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ii)切断性リンカー及びiii)細胞傷害剤が共に、以下の化合物:
【化2】
から選択される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ii)リンカー及びiii)細胞傷害剤が共に、化合物SG3932である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ADCが、約1~約8の薬物対抗体比(DAR)を有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ADCが、約8のDARを有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.式:
【化3】
を有する前記抗体又はその抗原結合断片に複合化された切断性リンカー及び細胞傷害剤とを含む、ADCを、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
投与される前記ADCの量が、約0.8mg/kg、約1.6mg/kg、約2.4mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、又は約4.8mg/kgである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
投与される前記ADCの量が、約1.6mg/kgである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
投与される前記ADCの量が、約2.4mg/kgである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
投与される前記ADCの量が、約3.2mg/kgである、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体又はその抗原結合断片が、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記癌が、B7-H4を発現する癌細胞を含む、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ADCが、前記対象に、3週間毎に1回投与される、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記癌が、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌、並びに肺癌から選択される、請求項31~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記癌が、ホルモン受容体陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記癌が、相同組換え修復欠損(HRD)癌である、請求項31~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記癌が、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記HRD遺伝子における変異が、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象中の癌細胞の少なくとも約25%が、B7-H4陽性細胞であり、任意選択的には、前記癌細胞が免疫組織染色(IHC)を使用して分析される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって:
(i)B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.式:
【化4】
を有する前記抗体又はその抗原結合断片に複合化された切断性リンカー及び細胞傷害剤とを含み、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で投与されるADCを含む、医薬組成物。
【請求項46】
前記医薬組成物が、約0.8mg/kg、約1.6mg/kg、約2.4mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、又は約4.8mg/kgのADCの量で投与される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記医薬組成物が、約1.6mg/kgのADCの量で投与される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記医薬組成物が、約2.4mg/kgのADCの量で投与される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記医薬組成物が、約3.2mg/kgのADCの量で投与される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記ADCの前記抗体又は抗原結合断片が、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む、請求項45~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって:
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:
f)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
g)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
h)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
i)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は
j)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含み、約25mg~約900mgの量で投与されるADCを含む、医薬組成物。
【請求項52】
前記投与されるADCの量が、約25mg、約40mg、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約750mg、又は約900mgである、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記組み合わせた切断性リンカー及び細胞傷害剤が、式:
【化5】
を有する、請求項51又は52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記ADCの前記抗体又は抗原結合断片が、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む、請求項51~53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
請求項45~54のいずれか一項に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項56】
前記医薬組成物を投与するための使用説明書を更に含む、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
癌の処置での使用のための、請求項45~54のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記癌が、B7-H4を発現する癌細胞を含む、請求項57に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項59】
前記ADCが、3週間毎に1回投与される、請求項57又は58に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項60】
前記癌が、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌、並びに肺癌から選択される、請求項57~59のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項61】
前記癌が、ホルモン受容体陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である、請求項57~60のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項62】
前記癌が、相同組換え修復欠損(HRD)癌である、請求項57~61のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項63】
前記癌が、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む、請求項57~62のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項64】
前記HRD遺伝子における変異が、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される、請求項63に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項65】
対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって:
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:
k)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
l)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
m)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
n)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は
o)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含むADCを前記対象に投与することを含み、
前記対象中の癌細胞の少なくとも約25%が、B7-H4陽性細胞である、方法。
【請求項66】
癌試料をB7-H4陽性と診断する方法であって、任意選択的には、免疫組織染色(IHC)を使用して前記癌試料を分析し、前記細胞の少なくとも25%が膜性B7-H4を発現するかどうかを判断することを含み、更に、任意選択的には、前記IHCが、抗体試薬を使用して実行される、方法。
【請求項67】
前記B7-H4陽性細胞が、前記ADCの投与前に膜性B7-H4発現を測定することによって決定され、任意選択的には、前記B7-H4発現が、免疫組織染色(IHC)を使用して測定され、更に、前記IHCが、任意選択的には、抗体試薬を使用して実行される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記ADCが、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で投与される、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記ADCが、前記対象に、3週間毎に1回投与される、請求項65又は67~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、白金系化学療法剤で予め処置されている、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記癌が、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌、並びに肺癌から選択される、請求項65~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記癌が、ホルモン受容体陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である、請求項65~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記癌が、相同組換え修復欠損(HRD)癌である、請求項65~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記癌が、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記HRD遺伝子における変異が、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記抗体又はその抗原結合断片が、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む、請求項65又は67~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項65又は67~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記抗体又はその抗原結合断片が、モノクローナル抗体である、請求項65~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化モノクローナル抗体である、請求項65~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記切断性リンカーが、mp-PEG8-val-alaリンカーである、請求項65~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記細胞傷害剤が、トポイソメラーゼ阻害剤である、請求項65~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記トポイソメラーゼ阻害剤が、式A
*
【化6】
の化合物である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記ii)切断性リンカー及びiii)細胞傷害剤が共に、以下の化合物:
【化7】
から選択される、請求項65~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記ii)リンカー及びiii)細胞傷害剤が共に、化合物SG3932である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記ADCが、約1~約8の薬物対抗体比(DAR)を有する、請求項65~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記ADCが、約8のDARを有する、請求項65~84のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、対象の癌を処置するための方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
手術、放射線療法、又は化学療法を、単独又は組み合わせて行うのが、最も伝統的且つ広く使用されている癌の処置法である。これらの処置法は癌細胞を除去又は死滅させるのに有効である一方で、これらは、処置を受けた患者に脱毛、貧血、重度の吐き気、及び健康な細胞の死などの望ましくない副作用を引き起こすことが多い。こうした限界があるため、革新的で害の少ない癌治療法が緊急に必要とされている。抗体ベースの癌治療は、癌細胞上の特定のタンパク質に対する抗体-薬物コンジュゲートの認識及び結合に依存している。抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、コンジュゲートの抗体部分の特異性を利用して、細胞に毒性の高い薬物を直接送達して死滅させることができる。抗体又はADC癌治療を単独で使用するか、又は他の小分子ベースの癌治療と組み合わせて使用すると、1つ以上の方法で悪性細胞及び腫瘍を攻撃することにより、治療成績を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022-0211863号
【特許文献2】米国特許出願公開第2017-0291955号
【特許文献3】米国特許第7521541号
【特許文献4】米国特許第7723485号
【特許文献5】国際公開第2009/052249号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991)
【非特許文献2】Hamblett et al(2004)Clin.Cancer Res.10:7063-7070;Sanderson et al(2005)Clin.Cancer Res.11:843-852
【非特許文献3】Junutula, et al., 2008b Nature Biotech., 26(8):925-932; Dornan et al (2009) Blood 114(13):2721-2729
【非特許文献4】“Remington:The Science&Practice of Pharmacy,”2lst ed.,Lippincott Williams&Wilkins,(2005)
【非特許文献5】”Physician’s Desk Reference,”60th ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(2005)
【非特許文献6】Guo et al 2017
【非特許文献7】Eisenhauer et al, 2009
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示は、対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で対象に投与することを含む、方法を提供する。ADCは:
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:
a)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
b)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
c)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;(d)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は(e)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;を含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含む。
【0006】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.8mg/kg、約1.6mg/kg、約2.4mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、又は約4.8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約3.2mg/kgである。
【0007】
いくつかの態様では、癌は、B7-H4を発現する癌細胞を含む。
【0008】
いくつかの態様では、ADCは、対象に、3週間毎に1回投与される。
【0009】
いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌並びに肺癌から選択される。いくつかの態様では、癌は、ホルモン受容体-陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である。いくつかの態様では、癌は、相同組換え修復欠損(HRD)癌である。いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む。いくつかの態様では、HRD遺伝子における変異は、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される。
【0010】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は:
i.それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
ii.それぞれ配列番号33及び配列番号34のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
iii.それぞれ配列番号43及び配列番号34のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
iv.それぞれ配列番号46及び配列番号34のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
v.それぞれ配列番号47及び配列番号34のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
vi.それぞれ配列番号31及び配列番号32のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
vii.それぞれ配列番号35及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;
viii.それぞれ配列番号37及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;又は
ix.それぞれ配列番号39及び配列番号40のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアントを含む。
【0011】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0012】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0013】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、OVCAR4細胞株に結合する。
【0014】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号52のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
【0015】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号48のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0016】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0017】
いくつかの態様では、切断性リンカーは、mp-PEG8-val-alaリンカーである。
【0018】
いくつかの態様では、細胞傷害剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。
【0019】
いくつかの態様では、トポイソメラーゼ阻害剤は、式A
*
【化1】
の化合物である。
【0020】
いくつかの態様では、ii)切断性リンカー及びiii)細胞傷害剤は共に、以下の化合物:
【化2】
から選択される。
【0021】
いくつかの態様では、ii)リンカー及びiii)細胞傷害剤は共に、化合物SG3932である。
【0022】
いくつかの態様では、ADCは、約1~約8の薬物対抗体比(DAR)を有する。いくつかの態様では、ADCは、約8のDARを有する。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は更に、対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.式:
【化3】
を有する抗体又はその抗原結合断片に複合化された切断性リンカー及び細胞傷害剤とを含む、ADCを、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0024】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.8mg/kg、約1.6mg/kg、約2.4mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、又は約4.8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約3.2mg/kgである。
【0025】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0026】
いくつかの態様では、癌は、B7-H4を発現する癌細胞を含む。
【0027】
いくつかの態様では、ADCは、対象に、3週間毎に1回投与される。
【0028】
いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌並びに肺癌から選択される。
【0029】
いくつかの態様では、癌は、ホルモン受容体-陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である。
【0030】
いくつかの態様では、癌は、相同組換え修復欠損(HRD)癌である。
【0031】
いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む。
【0032】
いくつかの態様では、HRD遺伝子における変異は、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される。
【0033】
上記方法のいくつかの態様では、対象中の癌細胞の少なくとも約25%は、B7-H4陽性細胞である。上記方法のいくつかの態様では、B7-H4陽性細胞は、免疫組織染色(IHC)を使用して分析される。
【0034】
いくつかの態様では、本開示は更に、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.式:
【化4】
を有する抗体又はその抗原結合断片に複合化された切断性リンカー及び細胞傷害剤とを含み、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で投与されるADCを含む、医薬組成物を提供する。
【0035】
いくつかの態様では、医薬組成物は、約0.8mg/kg、約1.6mg/kg、約2.4mg/kg、約3.2mg/kg、又は約3.6mg/kg、又は約4.8mg/kgのADCの量で投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は、約1.6mg/kgのADCの量で投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は、約2.4mg/kgのADCの量で投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は、約3.2mg/kgのADCの量で投与される。
【0036】
いくつかの態様では、ADCの抗体又は抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0037】
いくつかの態様では、本開示は更に、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって:
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:
a)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
b)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
c)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
d)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は
e)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と、
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含み、約25mg~約900mgの量で投与されるADCを含む、医薬組成物を提供する。
【0038】
医薬組成物のいくつかの態様では、投与されるADCの量は、約25mg、約40mg、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約750mg、又は約900mgである。
【0039】
医薬組成物のいくつかの態様では、組み合わせた切断性リンカー及び細胞傷害剤は、式:
【化5】
を有する。
【0040】
医薬組成物のいくつかの態様では、ADCの抗体又は抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0041】
本開示は更に、上記の医薬組成物を含むキットを提供する。いくつかの態様では、キットは更に、医薬組成物を投与するための使用説明書を含む。
【0042】
本開示は更に、癌の処置での使用のための上記の医薬組成物を提供する。いくつかの態様では、癌は、B7-H4を発現する癌細胞を含む。
【0043】
いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌並びに肺癌から選択される。いくつかの態様では、癌は、ホルモン受容体-陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である。いくつかの態様では、癌は、相同組換え修復欠損(HRD)癌である。
【0044】
いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む。いくつかの態様では、HRD遺伝子における変異は、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される。
【0045】
いくつかの態様では、本開示は、対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって:
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:
a)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
b)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
c)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
d)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は
e)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と、
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含むADCを対象に投与することを含み、
対象中の癌細胞の少なくとも約25%が、B7-H4陽性細胞である、方法を提供する。
【0046】
いくつかの態様では、B7-H4陽性細胞は、ADCの投与前に膜性B7-H4発現を測定することによって決定され、任意選択的には、B7-H4発現は、免疫組織染色(IHC)を使用して測定され、更に、IHCは、任意選択的には、抗体試薬で実施される。いくつかの態様では、本開示は、癌試料をB7-H4陽性と診断する方法であって:任意選択的には、免疫組織染色(IHC)であって、更に、任意選択的には、抗体試薬で実施されるIHCを使用して癌試料を分析し、癌細胞の少なくとも25%が膜性B7-H4を発現するかどうかを判断することを含む、方法に関する。
【0047】
いくつかの態様では、ADCは、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で投与される。いくつかの態様では、ADCは、対象に、3週間毎に1回投与される。いくつかの態様では、患者は、別の化学療法剤で予め処置されている。いくつかの態様では、対象は、白金系化学療法剤で予め処置されている。いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌並びに肺癌から選択される。いくつかの態様では、癌は、ホルモン受容体-陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である。いくつかの態様では、癌は、相同組換え修復欠損(HRD)癌である。いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む。いくつかの態様では、HRD遺伝子における変異は、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト化モノクローナル抗体である。いくつかの態様では、切断性リンカーは、mp-PEG8-val-alaリンカーである。いくつかの態様では、細胞傷害剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。いくつかの態様では、トポイソメラーゼ阻害剤は、式A
*
【化6】
の化合物である。
いくつかの態様では、ii)切断性リンカー及びiii)細胞傷害剤は共に、以下の化合物:
【化7】
から選択される。
いくつかの態様では、ii)リンカー及びiii)細胞傷害剤は共に、化合物SG3932である。いくつかの態様では、ADCは、約1~約8の薬物対抗体比(DAR)を有する。いくつかの態様では、ADCは、約8のDARを有する。
【0048】
図面の簡単な説明
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、更に本開示の例示的な態様を実証するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】実施例に記載の処置のマスタープロトコル構造を示す概略図である。マスタープロトコル構造は、AZD8205単剤療法のサブ試験1、及びAZD8205と別の活性医薬剤を使用する1つ以上の組み合わせサブ試験で構成される。
【
図2】実施例に記載の単剤療法用量漸増フェーズ(パートA)及び単剤療法用量拡大フェーズ(パートB)を含む例示的な処置方法を示す概略図である。
【
図3】それぞれ0.8mg/kg、1.6mg/kg、2.4mg/kg、及び3.2mg/kgの量でのAZD8205処置に対するヒト卵巣癌(OVCA)対象の奏効のチャートである。奏効は、対象の癌抗原125(CA-125)レベルを検出することによって確認される。測定可能なCA-125(>2×正常上限(ULN))を有する対象が示されている。循環腫瘍DNA(ctDNA)は分子奏効(MR)を検出するために使用され、ここで、P-MRは部分分子奏効(塩基からのctDNAの≧50%の減少)を示し、C-MRは完全分子奏効(クリアランス)を示し、N-MRは非分子奏効(<50%の減少、変化なし、又はctDNAの増加)を示す。
【
図4】実施例9に記載のマウス異種移植片試験におけるB7-H4を発現する細胞のパーセントに対する腫瘍成長の変化パーセントによって測定したAZD8205有効性のプロットを示す。
【
図5】実施例9に記載のマウス異種移植片試験についてのB7-H4を発現する細胞のパーセンテージに対するYouden統計量のプロットである。
図5で見られるように、Youden統計量は、B7-H4が25%になるとプラトーになり始める。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義
本明細書において特に定義しない限り、本開示において使用される科学技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。更に、文脈から別の解釈が要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0051】
本明細書において使用される「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る。本明細書において使用され、語「含む(comprising)」と同時に使用される場合、語「a」又は「an」は、1つ又は2つ以上を意味し得る。本明細書において使用される「別の」又は「更なる」は、少なくとも第2のもの以上を意味し得る。
【0052】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すと明示されない限り又はその代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「含んでいる(comprising)」(並びに「含んでいる」の任意のバリアント又は形態、例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有している(having)」(並びに「有している」の任意のバリアント又は形態、例えば、「有する(have)」及び「有する(has)」)、「包含している(including)」(並びに「包含している」の任意のバリアント又は形態、例えば、「包含する(includes)」及び「包含する(include)」)又は「含有している(containing)」(並びに「含有している」の任意の形態、例えば、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)は、包含的又はオープンエンドであり、追加の引用されない要素又は方法工程を除外するものではない。
【0054】
本出願全体にわたり、用語「約」は、値が、その値を決定するために用いられている方法/装置についての誤差の固有の変動又は試験対象間で存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、用語「約」は、状況に応じておよそ又は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、若しくは20%未満、又はそれら以上の変動性(指定された値より「大きい」又は「小さい」)を包含することを意味する。いくつかの態様では、当業者は、本明細書で用いられる文脈に応じて、用語「約」によって示される変動のレベルを理解するであろう。用語「約」の使用には、具体的に列挙された値も含まれることも理解されるべきである。
【0055】
「例えば」という用語及びその対応する略語「e.g.(イタリックかそうでないかを問わない)」の使用は、引用される規定の用語が、別途明示されない限り、参照されるか又は引用される具体例に限定されることを意図していない本開示の代表的な例及び態様であることを意味する。
【0056】
本明細書で提供される範囲は、いかなるタイプであっても、記載された特定の範囲内の全ての値、及び特定の範囲のエンドポイントに近い値を含む。本明細書で使用される場合、「間」とは、範囲の両端を含む範囲である。例えば、xとyの間の数値には、数値xとy、及びxとyに含まれるあらゆる数値が明示的に含まれる。
【0057】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原を認識して特異的に結合する能力があるタンパク質を指す。通常の又は従来の哺乳類抗体は、テトラマーを含み、このテトラマーは、典型的には、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成されており、各対は、1つの「軽」鎖(典型的には約25kDaの分子量を有する)及び1つの「重」鎖(典型的には約50~70kDaの分子量を有する)で構成される。「重鎖」及び「軽鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、標的抗原に対する特異性を付与するのに十分な可変ドメイン配列を有する任意の免疫グロブリンポリペプチドを指す。各軽鎖及び各重鎖のアミノ末端部分は、典型的には、抗原認識に通常関与する約100~110個又はより多くのアミノ酸の可変ドメインを含む。各鎖のカルボキシル末端部分は、典型的には、エフェクター機能に関与する定常ドメインを画定する。そのため、天然に存在する抗体では、完全長の重鎖免疫グロブリンポリペプチドは、可変ドメイン(VH)、並びに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)、並びにCH1とCH2との間のヒンジ領域を含み、VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端に存在しており、CH3ドメインは、カルボキシル末端に存在しており、完全長の軽鎖免疫グロブリンポリペプチドは、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含み、VLドメインは、ポリペプチドのアミノ末端に存在しており、CLドメインは、カルボキシル末端に存在している。しかしながら、当業者は、天然に存在する抗体におけるドメインの位置は、抗原結合能力を失うことなく、特定の抗体様結合タンパク質形式で修飾できることを理解するであろう。ヒト軽鎖の部類はカッパ及びラムダ軽鎖と称される。
【0058】
いくつかの態様では、軽鎖定常領域は、カッパ鎖である。いくつかの態様では、軽鎖定常領域は、ラムダ鎖である。
【0059】
完全長の軽鎖及び重鎖内では、可変ドメイン及び定常ドメインは、典型的には、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖は、約10個超のアミノ酸の「D」領域も含む。各軽鎖対/重鎖対の可変領域は、典型的には、抗原結合部位を形成する。天然に存在する抗体の可変ドメインは、典型的には、相補性決定領域又はCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって連結された、全体構造が同一の比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を示す。各対の2本の鎖由来のCDRは、典型的には、フレームワーク領域によって整列されており、これにより、特定のエピトープに結合することが可能となり得る。アミノ末端からカルボキシル末端まで、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインは、典型的には、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。
【0060】
用語「抗体断片」は、インタクト若しくは完全長の鎖又は抗体の一部、一般的には標的結合領域又は可変領域を指す。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「機能的断片」は、一般に「抗体断片」と同義であり、抗体に関しては、Fv、Fab、F(ab’)2などの抗体断片を指し得る。
【0061】
本明細書で記載されるアミノ酸残基のナンバリングへの言及を、EUナンバリングシステムに従って実施している((非特許文献1)にも記載されている)。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に実質的に対応する可変及び定常領域を有する抗体を含む。いくつかの態様では、ヒト抗体は、マウス及びラットなどのげっ歯類、ウサギなどのウサギ目などが挙げられるがこれらに限定されない非ヒト哺乳動物で産生される。他の態様では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞で産生される。なお他の態様では、ヒト抗体は、組換え的に産生される。いくつかの態様では、二重特異性結合タンパク質は、ヒト又はヒト化抗体である。
【0063】
本明細書で使用される用語「抗原」又は「標的抗原」は、本開示の結合タンパク質によって認識され、結合することができる分子又は分子の一部を指す。標的抗原は、動物においてその抗原のエピトープに結合できる抗体を産生するために使用することができる。標的抗原は、1つ以上のエピトープを有し得る。
【0064】
本明細書で使用される用語「エピトープ」は、本開示の結合タンパク質によって認識され、結合される抗原の領域又は構造要素を指す。より正確には、エピトープは、結合タンパク質のCDRにより結合される特定の構造である。エピトープは、タンパク質構造要素、炭水化物、又は更には膜に見られる脂質構造の一部を含み得る。結合タンパク質は、タンパク質及び/又は高分子の複雑な混合物中の抗原標的を優先的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われている。用語「特異的に結合する」は、分子又はその断片(例えば抗原)に特異的に結合する結合タンパク質を指す。分子又はその断片に特異的に結合する結合タンパク質は、例えば、免疫アッセイ、BIAcore、又は当該技術分野で既知の他のアッセイにより決定した場合に、より低い親和性で他の分子に結合し得る。特に、少なくとも1つの分子又はその断片に特異的に結合する抗体又は断片は、非特異的に結合する分子と競合し得る。本開示は、具体的には、複数の特異性を有する抗体(例えば、2種以上の別々の抗原に対する特異性を有する抗体)を包含する。例えば、二重特異性抗体は、単一の標的抗原上の2つの隣接するエピトープに結合し得るか、又は2種の異なる抗原に結合し得る。
【0065】
本明細書で使用される用語「ネイティブFc」は、単量体型であるか多量体型であるかを問わず、抗体の消化により生じる又は他の手段によって産生される非抗原結合断片の配列を含む分子を指し、ヒンジ領域を含み得る。ネイティブFcの元々の免疫グロブリン源は、好ましくはヒト起源であり、且つ任意の免疫グロブリンであり得る。ネイティブFc分子は単量体ポリペプチドから構成され、これらは共有結合(すなわちジスルフィド結合)及び非共有結合による会合により連結されて二量体型又は多量体型となり得る。ネイティブFc分子の単量体サブユニット間の分子内ジスルフィド結合数は、クラス(例えばIgG、IgA、及びIgE)又はサブクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgA1、及びIgGA2)に応じて1~4の範囲である。ネイティブFcの1つの例は、IgGのパパイン消化により生じるジスルフィド結合型二量体である。本明細書で使用される用語「ネイティブFc」は、単量体型、二量体型、及び多量体型の総称である。
【0066】
本明細書で使用される用語「Fcバリアント」は、ネイティブFcから修飾されているが、依然としてサルヴェージ受容体FcRn(胎児性Fc受容体)に対する結合部位を含む分子又は配列を指す。例示的なFcバリアント及びサルヴェージ受容体とのその相互作用は、当該技術で公知である。したがって、用語「Fcバリアント」は、非ヒトネイティブFcからヒト化された分子又は配列を含み得る。更に、ネイティブFcは、本開示の結合タンパク質に必要とされない構造的特徴又は生物学的活性を提供する、特定の残基を変更するFcバリアントを産生するために除去又は変異され得る領域を含む。したがって、用語「Fcバリアント」は:(1)ジスルフィド結合の形成、(2)選択された宿主細胞との不適合性、(3)選択された宿主細胞における発現の場合のN末端の不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルヴェージ受容体以外のFc受容体への結合性、又は(7)抗体依存的な細胞の細胞傷害性(ADCC)に影響するか又はこれらに関与する1つ以上のネイティブFc部分若しくは残基を欠いているか、又は1つ以上のFc部分若しくは残基が修飾されている分子又は配列を含む。
【0067】
本明細書で使用される用語「Fcドメイン」は、上記で定義されたようなネイティブFc及びFcバリアント及び配列を包含する。Fcバリアント及びネイティブFc分子と同様、用語「Fcドメイン」は、全長抗体から消化されたものであるか又はその他の手段によって作製されたものであるかを問わず、単量体型又は多量体型の分子を含む。
【0068】
用語「処置すること」又は「処置」は、対象における疾患、障害、若しくは病態の変化又は改善を達成するために化合物又は医薬組成物を対象に投与することを指す。本明細書で使用される用語「処置」又は「処置する」は、治療処置及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)措置の両方を指し得る。処置を必要とする者として、疾患又は状態を有する対象、並びに疾患若しくは状態を有しやすい者、又は疾患若しくは状態を予防すべき者が挙げられる。
【0069】
用語「用量」は、単回投与又は特定の期間に提供される化合物又は医薬品の特定の量を意味する。いくつかの態様では、用量は、2回以上のボーラス、錠剤、又は注射により投与することができる。例えば、皮下投与が所望されるいくつかの態様では、所望の用量は、単回注射では容易に収容されない容量が必要となる場合がある。そのような態様では、所望の用量を達成するために、2回以上の注射を用いることができる。いくつかの態様では、個体における注射部位反応を最小限に抑えるために、用量を2回以上の注射で投与してもよい。他の態様では、化合物又は医薬品は、長期間にわたって、又は持続的に、注入によって投与される。用量は、時間、日、週、又は1か月当たりの医薬剤の用量として決められ得る。
【0070】
「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、本明細書中で哺乳動物対象を指すために交換可能に使用される。一態様では、「対象」は、ヒト、飼育動物、家畜、スポーツ用の動物及び動物園の動物、例えばヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシなどである。一態様では、対象は、カニクイザル(マカカ・ファスシキュラリス(Macaca fascicularis))である。好ましい態様では、対象は、ヒトである。本発明の方法において、対象は、癌を有すると以前に診断されているものでなくてもよい。或いは、対象は、癌を有すると以前に診断されているものであり得る。対象はまた、疾患リスク因子を示す者、又は癌に対して無症候性である者であり得る。対象はまた、癌に罹患している者、又はそれを発症するリスクのある者でもあり得る。したがって、一態様では、本発明の方法は、対象において癌の存在を確定するために使用され得る。例えば、対象は、代替的な手段により以前癌があると診断されている者であり得る。一態様では、対象は、癌治療を以前受けたことがある。
【0071】
用語「有効性」は、所望の効果をもたらす能力を意味する。「治療上有効な用量」又は「治療用量」とは、所望の臨床結果をもたらすのに(即ち、治療効果を達成するのに)十分な量のことである。治療上有効な用量を、1回又は複数回の投与で投与し得る。
【0072】
用語「副作用」は、処置に起因する、所望の効果以外の生理学的疾患及び/又は症状を意味する。いくつかの態様では、副作用としては、注射部位反応、肝機能検査異常、腎機能異常、肝毒性、腎毒性、中枢神経系異常、ミオパチー、及び倦怠感が挙げられる。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼレベルの増大は、肝毒性又は肝機能異常を示し得る。例えば、ビリルビンの増大は、肝毒性又は肝機能異常を示し得る。「疾患」又は「病態」は、本開示の方法を使用する処置から利益を得るであろう任意の状態を指す。「疾患」及び「病態」は、本明細書では互換的に使用されており、問題の障害に患者をかかりやすくする病的状態等の慢性及び急性の障害又は疾患を含む。いくつかの態様では、疾患は、腫瘍である。いくつかの態様では、疾患は、固形腫瘍である。いくつかの態様では、疾患は、癌である。いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、膀胱癌、頭部及び頚部癌、黒色腫、膵臓癌、腎細胞癌、並びに肺癌のうちの1つ以上である。
【0073】
本明細書で使用される用語「投与」又は「投与すること」は、所望の効果を達成するのに適切なあらゆる経路により、化合物を提供すること、接触させること、及び/又は送達することを指す。投与としては、限定はされないが、経口、舌下、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、動脈内、関節滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病変内、又は頭蓋内注射)、経皮、局所、頬側、直腸、膣、経鼻、点眼、吸入経由、及びインプラントを挙げてよい。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」又は「治療用組成物」は、対象に適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導する能力がある化合物又は組成物を指す。いくつかの態様では、本開示は、薬学的に許容される担体及び治療有効量の本開示の結合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0075】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」又は「生理学的に許容される担体」は、本開示の1つ以上の結合タンパク質の送達を達成又は増強するのに好適な1つ以上の製剤材料を指す。
【0076】
癌を処置する方法
本開示は、対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-コンジュゲート(ADC)を、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの態様では、ADCの投与量は、対象一体当たり、約25mg~約900mgである。本開示はまた、医薬組成物を含む組成物、及びこのようなADCを含むキットを提供する。
【0077】
いくつかの態様では、ADCは:
i.B7-H4ポリペプチド結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
a)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
b)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
c)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
(d)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は
(e)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と、
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含む。
【0078】
B7-H4(V-セットドメイン-含有T-細胞活性化阻害剤1としても知られ、VTCN1遺伝子によりコードされる)は、同時刺激タンパク質のB7ファミリーの膜貫通ポリペプチドである。B7-H4は、免疫細胞(例えばCD28が可能性のあるリガンドであるT-リンパ球)のリガンドとの相互作用のために抗原提示細胞の表面上で発現されることが理解される。B7-H4は、様々な癌タイプの細胞で高度に発現していることが観察されており、腫瘍関連抗原であると考えられている。更に、B7-H4発現は特定の癌のタイプに限定されず、これは、広い範囲の癌タイプを処置するための標的抗原に相当するようなものである。
【0079】
「B7-H4ポリペプチド」は、B7-H4(例えば配列番号55)の全長ポリペプチド配列を含み得るか、又は本開示の抗体若しくは抗原結合断片に結合し得る(例えばそれにより結合され得る)エピトープを含むB7-H4の全長ポリペプチド配列のいずれかの長さのB7-H4の断片(例えばB7-H4の全長ポリペプチド配列の5%、15%、25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%又は95%のポリペプチド配列を含む)を含み得る。B7-H4ポリペプチドは、配列番号55の配列に対して75%、80%、85%、90%、又は90%の配列同一性を有する配列を含み得る。好ましくは、B7-H4ポリペプチドは、配列番号55の配列を含む。
【0080】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、種にわたりB7-H4分子に結合し得、例えば本抗体又は断片は、マウスB7-H4、ラットB7-H4、ウサギ、ヒトB7-H4、及び/又はカニクイザルB7-H4に結合し得る。いくつかの態様では、抗体又は断片は、ヒトB7-H4及びカニクイザルB7-H4に結合し得る。いくつかの態様では、抗体又は抗原結合断片は、マウスB7-H4にも結合し得る。
【0081】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、B7-H4、例えばヒトB7-H4及びカニクイザルB7-H4に特異的に結合し得るが、ヒトB7-H1、B7-H2及び/又はB7-H3に特異的に結合しない。
【0082】
いくつかの態様では、ADCの抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、又はそれらの機能的バリアントを含む。上記配列を含む抗体又はその抗原結合断片は、本明細書中で「ZY0EQD-E02」又は「EQD-E02」と呼ばれ得る。
【0083】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、又はそれらの機能的バリアントを含む。上記配列を含む抗体又はその抗原結合断片は、本明細書中で「ZY0EPQ-E02」又は「EPQ-E02」と呼ばれ得る。
【0084】
いくつかの態様では、ADCの抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、又はそれらの機能的バリアントを含む。上記配列を含む抗体又はその抗原結合断片は、本明細書中で「ZY0EOB-F05」又は「EOB-F05」と呼ばれ得る。
【0085】
いくつかの態様では、ADCの抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、又はそれらの機能的バリアントを含む。上記配列を含む抗体又はその抗原結合断片は、本明細書中で「ZY0EO5-E07」又は「EO5-E07」と呼ばれ得る。
【0086】
いくつかの態様では、ADCの抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、又はそれらの機能的バリアントを含む。上記配列を含む抗体又はその抗原結合断片は、本明細書中で「ZY0EP0-C07」又は「EP0-C07」と呼ばれ得る。
【0087】
いくつかの態様では、上記で開示されるアミノ酸配列を有するCDRを有する抗体又はその抗原結合断片は、癌細胞表面のB7-H4ペプチドに対する高い標的特異性又は結合活性などの有益な利点を有する。
【0088】
更に又は或いは、本明細書中に記載の抗体又はその抗原結合断片は、その可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)によって記載され得る。
【0089】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は:それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖若しくはそれらの機能的バリアント;それぞれ配列番号33及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;それぞれ配列番号43及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;それぞれ配列番号46及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;それぞれ配列番号47及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;それぞれ配列番号31及び配列番号32のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;それぞれ配列番号35及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;それぞれ配列番号37及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアント;又はそれぞれ配列番号39及び配列番号40のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖若しくはそれらの機能的バリアントを含む。
【0090】
例えば、一態様では、ADCの抗体又はその抗原結合断片は:(i)配列番号31、33、35、37、39、43、45、46、若しくは47のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、又はそれらの機能的バリアント;及び(ii)配列番号32、34、36、38、若しくは40のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0091】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0092】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖、又はそれらの機能的バリアントを含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一であるアミノ酸配列を有するVH鎖を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一であるアミノ酸配列を有するVL鎖を含む。
【0093】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、VH及びVLに加えて、任意選択的に重鎖定常領域又はその断片、軽鎖定常領域又はその断片を含み得る。いくつかの態様では、軽鎖定常領域はκλ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ定常領域又はヒトλ定常領域である。
【0094】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一である重鎖定常領域を含む。
【0095】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号52のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一である重鎖定常領域を含む。
【0096】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一である軽鎖定常領域を含む。
【0097】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号51のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一である重鎖を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一である軽鎖を含む。
【0098】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号48のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一である重鎖を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一である軽鎖を含む。
【0099】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0100】
有利には、本開示は、上記の抗体又は抗原結合断片が、B7-H4を標的とすることが報告されている既存の(市販の)利用可能な抗体と比較した場合、より広いスペクトルのB7-H4発現細胞を標的とし得ることを明らかにした。したがって、本開示は、臨床的に意義のある標的に対する親和性及び特異性を有するその抗体(又は抗原結合断片)を提供するだけでなく、それと関連する特有の長所(例えば予想外の技術的な効果)も明らかにした。
【0101】
いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌並びに肺癌から選択される。
【0102】
いくつかの態様では、癌は、ホルモン受容体-陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である。
【0103】
いくつかの態様では、癌は、相同組換え修復欠損(HRD)癌である。
【0104】
いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む。いくつかの態様では、HRD遺伝子における変異は、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される。
【0105】
いくつかの態様では、ADCの抗体又はその抗原結合断片は、OVCAR4細胞株に結合する。いくつかの態様では、本明細書中に記載の抗体又はその抗原結合断片は、OVCAR4細胞株及び/又はCHO細胞株(例えばB7-H4をコードする外因性核酸を欠き得る)に結合し得る。例えば、本抗体又はその抗原結合断片は、OVCAR4細胞株及び/又はCHO細胞株(例えばB7-H4をコードする外因性核酸を欠き得る)のB7-H4(例えばB7-H4エピトープ)に結合する。
【0106】
いくつかの態様では、本抗体又はその抗原結合断片は、E Biosciences 14-5949抗ヒトB7H4マウスIgG、US biological B0000-35B抗ヒトB7H4マウスIgG、R and D systems AF2514抗マウスB7H4ヤギIgG1、Sigma SAB2500141抗B7H4ヤギIgG1、アイソタイプ1 CAT004 SP06-003、アイソタイプ2 R及びD正常ヤギIgG対照(AB-108C)、AdD serotec MCA2632、Epitomics 2516-1、eBiosciences、145972-82、eBioscience 145970-85又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の抗体と比較した場合、より高い親和性で、OVCAR4細胞株及び/又はCHO細胞株(例えばB7-H4をコードする外因性核酸を欠き得る)に結合する。親和性(例えば結合親和性)は、本明細書中に記載の結合親和性を測定するいずれかの適切な方法により測定され得る。
【0107】
OVCAR4細胞株はヒト卵巣癌細胞株であり、CHO細胞株はチャイニーズハムスターの卵巣から誘導される上皮細胞株であり、広く入手可能である。
【0108】
いくつかの態様では、癌細胞の少なくとも約25%は、B7-H4陽性細胞である。いくつかの態様では、癌細胞の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%は、B7-H4陽性細胞である。いくつかの態様では、B7-H4陽性細胞は、その細胞表面にB7-H4を発現する細胞である。いくつかの態様では、B7-H4陽性細胞のパーセンテージは、試料、例えば対象からの癌組織の生検を分析することによって決定される。いくつかの態様では、B7-H4陽性細胞のパーセンテージは、B7-H4検出用の抗体を使用して決定される。
【0109】
いくつかの態様では、B7-H4陽性である癌細胞のパーセンテージは、免疫組織染色(IHC)によって決定される。IHCは、抗体を使用して組織試料内の抗原(バイオマーカー)を検出する検査法である。態様では、抗体を、酵素又は蛍光色素と結合させる。抗体が組織試料内の抗原に結合した後、酵素又は色素が活性化されると、顕微鏡又はその他の視覚化デバイスを使用して抗原を検出することができる。
【0110】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、リンカーにより細胞傷害剤に連結される。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、リンカーにより細胞傷害剤に複合化される。本明細書で使用される場合、「複合化される」は、共有結合又はイオン結合を介して連結されることを意味する。いくつかの態様では、リンカーは、アミノ残基、例えばADCの抗体又は抗原結合断片のアミノ酸に切断可能に連結される(例えば複合化される)。いくつかの態様では、ADCの切断性リンカーは、mp-PEG8-val-alaリンカーである。
【0111】
細胞傷害剤は、本明細書では「薬剤」又は「活性剤」と呼ばれ得る。いくつかの態様では、細胞傷害剤は、薬物である。細胞傷害剤又は細胞毒は、細胞の機能を阻害し又は妨げる、及び/又は細胞の破壊(細胞死)を引き起こす、及び/又は抗新生物/抗増殖効果を及ぼす、当技術分野で公知のいずれかの分子であり得る。いくつものクラスの細胞傷害剤がADC分子において潜在的な有用性を有することが知られている。これらとしては、トポイソメラーゼI阻害剤、アマニチン、アウリスタチン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、エンジイン、レキシトロプシン、タキサン、ピューロマイシン、メイタンシノイド、ビンカアルカロイド、ツブリシン、及びピロロベンゾジアゼピン(PBD)が挙げられるが限定されない。このような細胞傷害剤の例は、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、パクリタキセル、ドセタキセル、CC-1065、SN-38、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、ドラスタチン-10、エキノマイシン、コンブレタトスタチン(combretatstatin)、カリケアミシン、メイタンシン、DM-1、ビンブラスチン、メトトレキサート、及びネトロプシン並びにこれらの誘導体及び類似体である。
【0112】
いくつかの態様では、細胞傷害剤は、薬物である。いくつかの態様では、ADCの細胞傷害剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリシン誘導体、ピロロベンゾジアゼピン、又はこれらの組み合わせである。いくつかの態様では、細胞傷害剤は、(特許文献1)及び(特許文献2)(どちらもその全体が本明細書に参照として組み込まれる)で公開されている細胞傷害剤のうちの1つである。
【0113】
好ましい態様では、細胞傷害剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼ(トポイソメラーゼI及びII)の作用を阻止する化学的化合物であり、これは、正常な細胞周期中のDNA鎖のリン酸ジエステル骨格の切断及び再結合を触媒することによって、DNA構造の変化を制御する酵素の一種である。トポイソメラーゼI阻害剤は、例えば、以下で提供されるSG3932、SG4010、SG4057、又はSG4052であり得る。
【0114】
本開示は、上記のリンカー(連結単位)を介してADCのリガンド単位に接続される、ADCの細胞傷害剤(薬物単位)を提供する。リガンド単位は、好ましくは、抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの態様では、本開示は、以下のトポイソメラーゼ阻害剤誘導体(A
*、薬物単位):
【化8】
を含むコンジュゲートを提供する。
【0115】
いくつかの態様では、細胞傷害剤は、トポイソメラーゼ阻害剤であり、ここでADCの切断性リンカー及び細胞傷害剤は共に式I:
【化9】
の化合物並びにその塩及び溶媒和物を含む。R
Lは、上記の切断性リンカーである。
【0116】
いくつかの態様では、リンカー及び細胞傷害剤は共に、以下の化合物:
【化10】
のうちの1つを含む。
【0117】
いくつかの態様では、リンカー及び細胞傷害剤は共に、化合物SG3932である。
【0118】
細胞傷害剤は、典型的には、抗体又は抗原結合断片に連結されるか又は「その上に載せられる」。薬剤負荷(p)は、抗体又は抗原結合断片(例えばリガンド単位)当たりの平均薬剤数である。
【0119】
複合化反応からADCを調製する場合の抗体当たりの薬物の平均数は、UV、逆相HPLC、HIC、質量分析法、ELISAアッセイ、及び電気泳動などの従来法で特性決定することができる。pに関するADCの定量的分布も決定し得る。ELISAにより、ADCの特定の調製物におけるpの平均値を決定し得る((非特許文献2))。しかしながら、p(薬物)値の分布を、抗体抗原結合及びELISAの検出限界により識別することはできない。また、抗体薬物複合体を検出するためのELISAアッセイは、薬物部分が抗体のどこに結合しているのか、例えば重鎖若しくは軽鎖断片なのか、又は特定のアミノ酸残基なのかを明らかにはしない。場合によっては、pがある特定の値である均一なADCを、薬物積載量が異なるADCから分離、精製、及び特性決定することは、逆相HPLC又は電気泳動などの手段により達成できる。そのような技法は、他の型の複合体にも応用可能である。
【0120】
典型的には、複合化反応の間に、最大理論値より少ない個数の薬物部分を抗体と複合させる。抗体は、例えば、薬物リンカーと反応しないリシン残基を多数含有し得る。最も反応性の高いリシン基のみが、アミン反応性リンカー試薬と反応することができる。また、最も反応性の高いシステインチオール基のみが、チオール反応性リンカー試薬と反応することができる。一般に、抗体は、薬物部分と連結することができる遊離反応性システインチオール基を、含んでいたとしても、多くは含まない。化合物の抗体にあるほとんどのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在し、部分又は全還元条件下で、還元剤(ジチオトレイトール(DTT)又はTCEPなど)を用いて還元しなければならない。ADCの積載量(薬物/抗体比)は、複数の異なる様式で制御することができ、そのような様式として以下が挙げられる:(i)抗体に対して薬物リンカーのモル過剰量を制限する、(ii)複合化反応時間又は温度を制限する、及び(iii)システインチオール修飾の部分的又は制限的還元条件。
【0121】
特定の抗体は、還元できる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、DTT(ジチオトレイトール)などの還元剤で処理することにより、リンカー試薬との複合化に反応するようになることができる。こうして、各システイン架橋は、理論的には、2つの反応性チオール求核剤になる。リシンと2-イミノチオラン(トラウト試薬)の反応によりアミンをチオールに変換することで、抗体に更なる求核基を導入することができる。1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のシステイン残基を操作する(例えば、1つ以上の非天然システインアミノ酸残基を含む変異抗体を調製する)ことにより、抗体(又はその断片)に反応性チオール基を導入することができる。(特許文献3)は、反応性システインアミノ酸の導入による抗体操作を教示する。
【0122】
抗体の反応性部位にあり、鎖間又は分子間ジスルフィド架橋を形成しないシステインアミノ酸は、操作することができる((非特許文献3);(特許文献3);(特許文献4);(特許文献5))。操作されたシステインチオールは、チオール反応性求電子基(マレイミド又はα-ハロアミドなど)を有する本発明の薬物リンカーと反応して、システイン操作された抗体を有するADCを形成することができる。したがって、薬物単位の配置を設計し、制御し、知り得る。薬物積載量は制御され得、これは、改変されたシステインチオール基が、典型的には、高収率で、薬物リンカー試薬と反応するからである。IgG抗体を改変して、重鎖又は軽鎖上の1カ所で置換によりシステインアミノ酸を導入することにより、対称抗体上で2つの新たなシステインを与える。
【0123】
いくつかの態様では、抗体(又はその抗原結合断片)当たりの平均薬剤数は、1~20の範囲である。いくつかの態様では、範囲は、1~10、2~10、2~8、2~6、及び4~10から選択される。いくつかの態様では、抗体(又はその抗原結合断片)当たり1つの薬剤がある。いくつかの態様では、抗体(又はその抗原結合断片)当たりの薬剤数は、抗体に対する薬剤(即ち薬物)の比として表現され得る。この比は、薬物対抗体比(DAR)と呼ばれる。DARは、各抗体に連結される薬物(即ち薬剤)の平均数である。本開示のいくつかの態様では、DARは1~20の範囲である。いくつかの態様では、DARの範囲は、1~10、2~10、2~8、2~6、及び4~10から選択される。いくつかの態様では、DARは、約1~約8の間である。本開示の特定の態様では、DARは約8である。本開示の特定の態様では、DARは8である。
【0124】
いくつかの態様では、ADCはAZD8205である。AZD8205は、トポイソメラーゼ阻害剤(TOPO)弾頭に複合化した抗B7H4 Abである。いくつかの態様では、AZD8205は、卵巣癌及び胆管癌(CCA)を標的としている。いくつかの態様では、AZD8205は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を標的としている。
【0125】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.5mg/kg~約8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.2mg/kg~約3.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.4mg/kg~約3.2mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kg~約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.8mg/kg~約2.2mg/kgである。
【0126】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.5mg/kg、約0.8mg/kg、約1.0mg/kg、約1.2mg/kg、約1.4mg/kg、約1.6mg/kg、約1.8mg/kg、約2.0mg/kg、約2.2mg/kg、約2.4mg/kg、約2.6mg/kg、約2.8mg/kg、約3.0mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、約4.0mg/kg、約4.4mg/kg、約4.8mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約7.0mg/kg、又は約8mg/kgである。
【0127】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.2mg/kg、約1.6mg/kg、約1.8mg/kg、約2.0mg/kg、約2.2mg/kg、約2.4mg/kg、又は約3.2mg/kgである。
【0128】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.0mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約3.2mg/kgである。
【0129】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約25mg~約900mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約40mg~約600mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約60mg~約450mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約80mg~約300mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約100mg~約240mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約120mg~約200mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約140mg~約180mgである。
【0130】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約25mg、約40mg、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約750mg、又は約900mgである。
【0131】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約240mg、約280mg、又は約320mgである。
【0132】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約120mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約160mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約200mgである。
【0133】
いくつかの態様では、ADCは、対象に、3週間毎に1回(Q3W)投与される。いくつかの態様では、ADCは、対象に、1週間毎に1回(Q1W)、2週間毎に1回(Q2W)、4週間毎に1回(Q4W)、5週間毎に1回(Q5W)、又は6週間毎に1回(Q6W)投与される。
【0134】
いくつかの態様では、本開示は更に、対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの態様では、ADCは:i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアントを含む抗体又はその抗原結合断片と、ii.式:
【化11】
を有する抗体又はその抗原結合断片に複合化された切断性リンカー及び細胞傷害剤とを含む。
【0135】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む。
【0136】
いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌並びに肺癌から選択される。
【0137】
いくつかの態様では、癌は、ホルモン受容体-陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である。いくつかの態様では、癌は、相同組換え修復欠損(HRD)癌である。
【0138】
いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子における変異を有する1つ以上の細胞を含む。いくつかの態様では、HRD遺伝子における変異は、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される。
【0139】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.5mg/kg~約8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.2mg/kg~約3.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.4mg/kg~約3.2mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kg~約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.8mg/kg~約2.2mg/kgである。
【0140】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.5mg/kg、約0.8mg/kg、約1.0mg/kg、約1.2mg/kg、約1.4mg/kg、約1.6mg/kg、約1.8mg/kg、約2.0mg/kg、約2.2mg/kg、約2.4mg/kg、約2.6mg/kg、約2.8mg/kg、約3.0mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、約4.0mg/kg、約4.4mg/kg、約4.8mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約7.0mg/kg、又は約8mg/kgである。
【0141】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.2mg/kg、約1.6mg/kg、約1.8mg/kg、約2.0mg/kg、約2.2mg/kg、約2.4mg/kg、又は約3.2mg/kgである。
【0142】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.0mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約3.2mg/kgである。
【0143】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約25mg~約900mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約40mg~約600mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約60mg~約450mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約80mg~約300mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約100mg~約240mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約120mg~約200mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約140mg~約180mgである。
【0144】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約25mg、約40mg、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約750mg、又は約900mgである。
【0145】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約240mg、約280mg、又は約320mgである。
【0146】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約120mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約160mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約200mgである。
【0147】
いくつかの態様では、ADCは、対象に、3週間毎に1回(Q3W)投与される。いくつかの態様では、ADCは、対象に、1週間毎に1回(Q1W)、2週間毎に1回(Q2W)、4週間毎に1回(Q4W)、5週間毎に1回(Q5W)、又は6週間毎に1回(Q6W)投与される。
【0148】
いくつかの態様では、本開示は更に、対象の癌を処置する方法であって、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって:
i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:
f)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアント;
g)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
h)それぞれ配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;
i)それぞれ配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアント;又は
j)それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3、若しくはそれらの機能的バリアントを含む、抗体又はその抗原結合断片と;
ii.切断性リンカーと;
iii.細胞傷害剤とを含むADCを対象に投与することを含み、
対象中の癌細胞の少なくとも約25%が、B7-H4陽性細胞である、方法を提供する。
【0149】
本方法における使用のためのADCの切断性リンカー及び細胞傷害剤は、本明細書に記載されている。本方法により処置可能な癌は、本明細書に記載されている。
【0150】
いくつかの態様では、癌細胞の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%は、B7-H4陽性細胞である。いくつかの態様では、B7-H4陽性細胞は、その細胞表面にB7-H4を発現する細胞である。いくつかの態様では、B7-H4陽性細胞のパーセンテージは、試料、例えば対象からの癌組織の生検を分析することによって決定される。いくつかの態様では、B7-H4陽性細胞のパーセンテージは、B7-H4検出用の抗体を使用して決定される。
【0151】
方法のいくつかの態様では、ADCは、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で投与される。態様では、投与されるADCの量は、約0.8mg/kg、約1.6mg/kg、約2.4mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、又は約4.8mg/kgである。態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kgである。態様では、投与されるADCの量は、約2.4mg/kgである。態様では、投与されるADCの量は、約3.2mg/kgである。
【0152】
方法のその他の態様では、ADCは、本明細書で開示される量で投与される。
【0153】
いくつかの態様では、ADCは、対象に、3週間毎に1回(Q3W)投与される。いくつかの態様では、ADCは、対象に、1週間毎に1回(Q1W)、2週間毎に1回(Q2W)、4週間毎に1回(Q4W)、5週間毎に1回(Q5W)、又は6週間毎に1回(Q6W)投与される。
【0154】
本明細書に記載される方法又は使用のいずれかの態様では、対象は、別の化学療法剤で予め処置されている。いくつかの態様では、対象は、白金系化学療法剤で予め処置されている。いくつかの態様では、白金系化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ロバプラチン、又はヘプタプラチンである。
【0155】
医薬組成物
いくつかの態様では、本開示は更に、B7-H4に特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgの量で投与されるADCを含む、医薬組成物を提供する。いくつかの態様では、ADCは:i.B7-H4ポリペプチドに結合する抗体又はその抗原結合断片であって:それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、重鎖CDR3(HCDR3)、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)、若しくはそれらの機能的バリアントを含む抗体又はその抗原結合断片と、ii.式:
【化12】
を有する抗体又はその抗原結合断片に複合化された切断性リンカー及び細胞傷害剤とを含む。
【0156】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.5mg/kg~約8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.8mg/kg~約4.8mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.2mg/kg~約3.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.4mg/kg~約3.2mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kg~約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.8mg/kg~約2.2mg/kgである。
【0157】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約0.5mg/kg、約0.8mg/kg、約1.0mg/kg、約1.2mg/kg、約1.4mg/kg、約1.6mg/kg、約1.8mg/kg、約2.0mg/kg、約2.2mg/kg、約2.4mg/kg、約2.6mg/kg、約2.8mg/kg、約3.0mg/kg、約3.2mg/kg、約3.6mg/kg、約4.0mg/kg、約4.4mg/kg、約4.8mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約7.0mg/kg、又は約8mg/kgである。
【0158】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.2mg/kg、約1.6mg/kg、約1.8mg/kg、約2.0mg/kg、約2.2mg/kg、約2.4mg/kg、又は約3.2mg/kgである。
【0159】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約1.6mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.0mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約2.4mg/kgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約3.2mg/kgである。
【0160】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約25mg~約900mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約40mg~約600mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約60mg~約450mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約80mg~約300mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約100mg~約240mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約120mg~約200mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約140mg~約180mgである。
【0161】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約25mg、約40mg、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約750mg、又は約900mgである。
【0162】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約240mg、約280mg、又は約320mgである。
【0163】
いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約120mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約160mgである。いくつかの態様では、投与されるADCの量は、約200mgである。
【0164】
癌の処置のための本明細書で開示される医薬組成物の使用のいくつかの態様では、ADCは、対象に、3週間毎に1回(Q3W)投与される。癌の処置のための本明細書で開示される医薬組成物の使用のいくつかの態様では、ADCは、対象に、1週間毎に1回(Q1W)、2週間毎に1回(Q2W)、4週間毎に1回(Q4W)、5週間毎に1回(Q5W)、又は6週間毎に1回(Q6W)投与される。
【0165】
癌の処置のための本明細書で開示される医薬組成物の使用のいくつかの態様では、癌を有する患者は、別の化学療法剤で予め処置されている。いくつかの態様では、対象は、白金系化学療法剤で予め処置されている。いくつかの態様では、白金系化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ロバプラチン、又はヘプタプラチンである。
【0166】
いくつかの態様では、ADCの抗体又は抗原結合断片は、それぞれ配列番号45及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVH鎖及びVL鎖又はそれらの機能的バリアントを含む。いくつかの態様では、ADCの抗体又は抗原結合断片は、配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVH鎖及び配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVL鎖を含む。
【0167】
いくつかの態様では、本明細書で開示される医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤と共に製剤化され得る。特定の態様では、このような医薬組成物は、当該技術分野において公知の方法を用いた任意の1つ以上の投与経路によるヒト又は非ヒト動物への投与に好適である。「薬学的に許容される担体」という用語は、活性成分の生物活性の有効性に干渉しない1種又は複数種の非毒性物質を意味する。そのような調製物は、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、及び任意選択的な他の治療剤を常に含み得る。そのような薬学的に許容される調製物はまた、ヒトへの投与に好適な適合性のある固体又は液体の充填剤、希釈剤、又は封入物質も含み得る。本明細書で記載される製剤で利用され得る他の検討される担体、賦形剤、及び/又は添加剤として、例えば、香味剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、脂質、タンパク質賦形剤、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン、塩形成対イオン、例えばナトリウム、及び同類のものが挙げられる。本明細書で記載される製剤での使用に好適なこれらの及び更なる既知の医薬担体、賦形剤、及び/又は添加剤は、当該技術分野で既知であり、例えば、(非特許文献4)及び(非特許文献5)に記載されている。所望の又は必要な投与様式、溶解度、及び/又は安定性に好適な薬学的に許容される担体が選択され得る。
【0168】
本開示は更に、癌の処置での使用のための上記の医薬組成物を提供する。いくつかの態様では、癌は、B7-H4を発現する癌細胞を含む。いくつかの態様では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、子宮内膜癌、胆管癌、NSCLC(扁平及び/又は腺癌)、胃癌及び大腸癌などの消化器癌並びに肺癌から選択される。いくつかの態様では、癌は、ホルモン受容体-陽性(HR+)乳癌、ヒト上皮増殖因子受容体2陽性(HER2+)乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される乳癌である。いくつかの態様では、癌は、相同組換え修復欠損(HRD)癌である。いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lから選択されるHRD遺伝子において変異を有する1つ以上の細胞を含む。いくつかの態様では、HRD遺伝子における変異は、BRCA1、BRCA2、及びATMから選択される。
【0169】
キット
いくつかの態様では、本開示は更に、上記の医薬組成物のいずれかを含むキットを提供する。いくつかの態様では、キットは、医薬組成物を投与するための使用説明書を含む。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載の更なる抗癌剤を含む。
【0170】
ADCの抗体又は抗原結合断片配列
本開示の態様には、下記の表1の配列を使用して作製されたB7-H4ポリペプチドに結合するDuetMab形式の抗体又は抗原結合断片が含まれる。表1のCDRは、Kabatのシステムに基づいて決定される。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
本明細書に引用される全ての参考文献、例えば特許、特許出願、論文、教科書等及びこれらに引用される参考文献は、それらが既に引用されていない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
本開示を限定することなく、本開示のいくつかの態様が例示目的で本明細書に記載される。
【実施例0178】
実施例
以下の実施例は、本開示の具体的な態様、及びそれらの様々な使用を例示する。それらは、あくまで説明を目的として記載され、決して本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0179】
AZD8205は実施例における処置のために提供される。AZD8205は、B7-H4(VTCN1)を標的とするADCであり、切断性マレイミド-PEG8-バリン-アラニンリンカーを介してTOP1i弾頭(「AZ14170132」)に複合化されるヒト抗-B7-H4抗体(「INT016」)からなる。AZD8205は約8のDARを有する。AZD8205の抗体成分は細胞表面のB7-H4に結合し、ADCの内部移行並びにリソソームへの輸送を促進する。リンカーが酵素的に切断されるとTOP1i弾頭が放出され、TOP1がDNA上にトラップされ、二本鎖DNA切断が形成される。修復されない場合、二本鎖の切断は最終的にはプログラムされた細胞死につながる。
【0180】
前臨床薬理学的試験は、AZD8205の主な作用機序はB7-H4陽性腫瘍細胞へのTOP1i弾頭の細胞内送達であることを示唆している。in vitroでのアッセイにより、AZD8205はB7-H4発現腫瘍細胞に特異的に結合し、細胞傷害性を示すが、B7-H4陰性細胞には結合しないことが実証された。ヒト腫瘍異種移植マウスモデルを用いたin vivoでの薬物動態試験の結果は、AZD8205の用量依存的な蓄積及びγH2AX病巣(DNA二本鎖切断の指標)の陽性染色の増加、切断型カスパーゼ-3の上昇、並びに経時的な上皮細胞密度の全体的な減少を示し、AZD8205が腫瘍細胞でB7-H4に結合することを示唆しており、DNA損傷及びアポトーシスによる細胞死を引き起こし、TOP1i弾頭の作用機序と一致している。
【0181】
その後の、ヒト腫瘍細胞株由来異種移植片及びトリプルネガティブ乳癌の患者由来異種移植片モデルにおけるAZD8205のin vivoでの有効性試験では、AZD8205の単回IV投与が標的依存性と用量依存性の両方に抗腫瘍効果をもたらすことが更に実証された。トリプルネガティブ乳癌の患者由来異種移植モデル(N=26)を評価する試験では、1.25mg/kg又は3.5mg/kgの単回IV投与により、それぞれ26モデル中12モデル(46%)と26モデル中18モデル(69%)で、効果的な腫瘍退縮(ベースラインから30%以上の腫瘍体積の減少)が生じた。B7-H4発現とAZD8205奏効の関係を解明するために、免疫組織染色及び画像解析技術を使用して、各患者由来の異種移植片モデルにおけるB7-H4発現を定量化した。1.25mg/kgのAZD8205による処置後にB7-H4発現と抗腫瘍効果との間に統計的に有意な関連性が観察され、B7-H4レベルの上昇がAZD8205奏効と関連していることが示唆された。
【0182】
実施例1:開始用量の正当性
以下の実施例に記載されるように、AZD8205単剤療法は、0.8mg/kg~3.2mg/kgの範囲の用量レベルで静脈内Q3Wで調査される。単剤AZD8205の推奨開始用量0.8mg/kgは、カニクイザルにおける優良試験所基準(GLP)毒性研究、カニクイザルからヒトへの薬物動態(PK)のスケーリング、及びFDA規制ガイドラインの結果に基づく。用量の増分及び臨床的に有効な用量範囲(0.8~2.4mg/kg)が決定され、モデル化された曝露量が推定された。AZD8205の重度の毒性が発現しない最大投与量(HNSTD)は、カニクイザルを対象としたGLP試験において、3週間毎(Q3W)合計2回の用量で15mg/kgと特定され、このHNSTDのヒト等価用量(HED)は「米国FDAの業界向けガイダンス:成人健康ボランティアを対象とした治療薬の初期臨床試験における最大安全開始用量の推定」に基づいて4.8mg/kgと計算された。ヒト初回投与(FTIH)試験における臨床開始用量0.8mg/kg Q3Wの選択は、4.8mg/kgのHEDの6分の1に基づく。用量0.8mg/kgのAZD8205 Q3Wを1時間の静脈内注入で投与すると、AZD8205の定常状態血漿曝露は16μg/mLのCmax、77μg.d/mLのAUC0-21dと予測される。
【0183】
ADCの開始用量を特定するためのこのアプローチは、FTIH試験において安全性及び効率的な用量漸増の許容可能なバランスをもたらすことが一般に示されている。ヒトの開始用量0.8mg/kgは、HNSTDに基づく安全マージン:HEDに基づく6.05、Cmaxに基づく20.4、及びAUCに基づく11.2を有すると予想される。
【0184】
実施例2:試験設計及び定義
このヒト初回投与(FTIH)試験は、AZD8205の安全性、忍容性、及び予備的有効性を最初は単剤療法として評価し、推奨される第2相用量(RP2D)を定義した後、進行性又は転移性の固形悪性腫瘍を発現するB7-H4を有する対象において、他の抗癌剤と組み合わせて、マスタープロトコルの文脈内で実施される。このプロトコルでは、薬物動態(PK)、薬力学(PDx)、探索的バイオマーカー、及び抗腫瘍活性を特徴付けることにより、AZD8205の潜在的な生物学的活性も調査する。
【0185】
図1はマスタープロトコルの設計を示す。
図1で示されるとおり、試験の目的、理論的根拠、一般的な包含基準と除外基準、安全性評価、並びに全ての副試験に共通する有害事象(AE)報告など、試験全体に関する情報はマスタープロトコルに記載されている。計画された用量レベルとその根拠、毒性管理、及び用量の変更などのサブ試験固有の情報は、関連するサブ試験で見つけることができる。
【0186】
マスタープロトコルは、AZD8205を評価するいくつかのサブ試験で構成されている。組み合わせ処置のサブ試験は、新たな裏付けとなる前臨床及び/又は臨床データと科学的根拠に基づいて単剤療法の推奨第2相用量(RP2D)を定義した後に追加される。各サブ試験には、用量漸増(例えば、パートA)及び用量拡大(例えば、パートB)が含まれる。各サブ試験の用量漸増(パートA)の目的は、B7-H4発現腫瘍を有する対象におけるAZD8205の安全性、忍容性、RP2D及び/又は最大耐用量(MTD)を決定することである。実施例9に記載されているように、この試験のために選択された全ての対象は、それらの腫瘍生検中の細胞の少なくとも25%がB7-H4陽性であった腫瘍を有していた。RP2Dは、適切なPK、PD、有効性、安全性、及び忍容性を含む、利用可能な全てのデータをプールして評価することによって選択される。各サブ試験の用量拡大(パートB)の目的は、AZD8205の抗腫瘍活性を評価することである。各サブ試験のパートBの開始は、パートAの安全性結果の評価、並びにAZD8205単剤療法及び各組み合わせのRP2Dの決定に依存する。
【0187】
図2は、以下の実施例で概説されるサブ試験1の試験フローを示す。サブ試験1の事前スクリーニング選択プロセス及びAZD8205の開始用量、全てのサブ試験のパートAの用量漸増、中止基準、及びコホートサイズなどの試験の重要な側面は、第I/II相腫瘍学試験の許容される方法論に基づく。更に、AZD8205PKの特性評価、及び必要に応じて追加の代謝物の調査を可能にするために、血液試料が収集される。
【0188】
AZD8205の臨床医薬品開発プログラムの一環として、PDx及び探索的バイオマーカー(DNA、RNA、タンパク質又は代謝物)プロファイルが調査され、それらと薬の効果との関係が研究される。この探索的研究の潜在的な利点としては、(1)処置から最も恩恵を受ける可能性が高い対象の特定;(2)どの対象が処置に反応しない可能性があるかの予測;(3)薬物曝露に関連する副作用の特定;及び(4)新たな毒性の特徴付けが挙げられる。
【0189】
要約すると、実施例は、B7-H4を発現する腫瘍を有する対象に安全で効果的な新薬を送達するために必要な情報及び理解を提供する。
【0190】
定義-以下の用語は、以下の実施例で記載される試験で使用される。
用量制限毒性(DLT)。DLTをパートA(用量漸増)の間に評価する。DLT評価期間は、サイクル1の1日目のAZD8205の初回投与から21日間、又は代替投与スケジュールが検討されている場合はサイクル1の予定終了日まで(これを含む)である。DLTは、DLT評価期間中に発生し、原疾患又は疾患関連プロセス又は併発疾患に起因しない、変更又は例外を含む、任意のグレード3以上の処置により発生したAEと定義される。
【0191】
最大耐容量(MTD)。MTDは、目標DLT確率が30%である最高用量として定義される。MTDは、修正毒性発現確率区間-2(mTPI-2)法を使用して、用量漸増フェーズ中に観察されたDLT率に適用される等張回帰分析によって決定される((非特許文献6))。
【0192】
有効性の評価。腫瘍奏効は、スケジュールに従ってRECIST v1.1((非特許文献7))により評価される。
【0193】
腫瘍の評価。腫瘍の評価では、IV造影剤とともに、胸部、腹部、及び骨盤のコンピュータ断層撮影(CT、推奨)又は磁気共鳴画像法(MRI)による画像を使用し、更に個々の対象の徴候及び症状に基づいて関与している可能性のある領域を調査し、スクリーニング/ベースライン中、及び試験介入中の定期的な(経過観察)間隔で収集される。この試験の全ての対象についてスクリーニング/ベースラインでは脳のスキャン(MRIが好ましい)が必須である。ベースライン後の脳MRIは、ベースラインで脳転移のある対象にのみ実施する必要があるが、脳転移のない対象は、臨床的に指示されない限り、その後の腫瘍評価のために追加の脳スキャンを必要としない。ベースラインの腫瘍評価に使用される画像診断法は、可能であれば試験全体を通じてその後の各追跡評価でも一貫して同じに保たれる。
【0194】
スクリーニング/ベースライン画像処理は、試験介入開始の28日以上前に実施され、理想的には試験介入開始のできるだけ直前に、及び開始前に実施される。標準的な臨床診療の一環として、スキャンは、インフォームドコンセントの前に得る(ただし28日以内に取得されたスキャンは許容される)。腫瘍の評価は、RECIST v1.1によって定義され、治験責任医師によって評価される客観的な疾患の進行、又は同意の撤回まで、それぞれのサブ試験のスケジュールに従って実行される。奏効(完全奏効(CR)又は部分奏効(PR))は、最初の奏効の記録から少なくとも4週間後に、繰り返しの連続スキャンによって確認される。
【0195】
RECIST v1.1に従って、腫瘍マーカーは腫瘍奏効の評価には使用されない。腫瘍マーカーは個別の分析のために収集される。しかしながら、結果は、RECIST v1.1評価に基づく腫瘍奏効には寄与しない。
【0196】
Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステイタス(PS)。対象のパフォーマンスステイタスは、ECOG PSスケールを使用して、それぞれのサブ試験のスケジュールに詳細に記載されているように評価される。
【0197】
有害事象。有害事象(AE)とは、医薬品を投与された対象又は臨床試験対象における任意の望ましくない医学的出来事の発生であり、必ずしもこの処置との因果関係を有さないものである。したがって、AEは、医薬品に関連しているとみなされるかどうかに関係なく、医薬品の使用に一時的に関連する、好ましくない意図しない兆候(検査所見の異常など)、症状(例えば、吐き気、胸痛)、又は疾患である可能性がある。
【0198】
AEという用語は、重篤なAEと非重篤なAEの両方を含むために使用され、既存の医学的出来事の悪化を含み得る。AEは、試験介入が行われていない場合でも、導入期間又はウォッシュアウト期間を含め、いつでも発生する可能性がある。
【0199】
重篤な有害事象。重篤な有害事象(SAE)は、以下の基準の1つ以上を満たす、任意の研究フェーズ(つまり、導入、処置、ウォッシュアウト、経過観察)中に発生するAEである:(1)死に至る;(2)即座に生命を脅かす;(3)対象の入院若しくは既存の入院の延長が必要;(4)持続的若しくは重大な障害若しくは無能力をもたらす;(5)先天性異常若しくは先天性欠損症である;(6)対象を危険にさらす可能性がある、又は上記の結果のいずれかを防ぐために医学的処置が必要になる可能性がある重要な医療事象である。
【0200】
疾患の進行。疾患の進行は、治験薬が試験されている病気に起因する対象の病態の悪化と考えることができる。それは、試験中の疾患の重症度の増加、及び/又は疾患の症状の増加であり得る。試験中の原発癌への新たな転移の発生又は既存の転移の進行は、AEではなく疾患の進行と考えるべきである。明らかに疾患の進行が原因である事象は、試験中にAEとして報告されるべきではない。
【0201】
新たな癌。新たな癌の発生は、SAEとみなされる必要がある。新たな原発癌とは、試験介入を実施する主な理由ではなく、対象がこの試験に参加した後に特定された癌のことである。元々の癌の転移は含まれない。
【0202】
実施例3:AZD8205の製剤化及び投与
本実施例は、AZD8205の製剤化及び投与を示す。AZD8205は、凍結乾燥又は液体製品のいずれかとしてパートA及びパートBで供給される。
【0203】
凍結乾燥AZD8205は、1バイアル当たり100mgのAZD8205(公称)を含む滅菌凍結乾燥固体として、20Rの琥珀色バイアルに入れて供給される。AZD8205治験薬(IP)は、使用前は2℃~8℃(冷蔵)で保存し、光にさらされないよう保護されなければならない。AZD8205バイアルは凍結させてはならない。
【0204】
液体AZD8205は、IV注入コンポーネント及び希釈液に対するAZD8205の適合性を確保するために、静脈内バッグ保護剤(IVBP)溶液として供給される。IVBPは、2℃~8℃(冷蔵)で保存した。凍結乾燥AZD8205は、IVBP溶液では再構成されなかった。再構成のために注射用滅菌水が使用される。
【0205】
全てのIPは安全で乾燥した場所に保管する必要がある。バイアルは遮光して2℃~8℃(冷蔵)で保管しなければならず、凍結させてはならない。
【0206】
体重に基づく用量は、次式を使用して計算される:
【数1】
【0207】
実施例4:初期のリスク/効果の評価
AZD8205投与のリスクを評価し、パートA及びパートBに適切なAZD8205用量を提供するために試験が実施される。
【0208】
AZD8205の安全性を評価する前臨床毒性研究では、予想される臨床有効範囲を超えるレベルでカニクイザルにおけるAZD8205への曝露により、市販されている他のTOP1iADCと一致する変化が誘発されることが示された。毒性の主要な標的臓器は、細胞の代謝回転が速い臓器(例えば、骨髄及び精巣)であった。
【0209】
非GLP用量範囲調査試験では、オスのカニクイザルを15、20、22.5、及び25mg/kgの用量レベルでAZD8205に曝露した(IV Q3W×2)。結果は予想どおりであり、細胞傷害性TOP1阻害剤と一致した。用量レベル≧20mg/kgは許容されなかった。用量レベル≧20mg/kgでは、瀕死の兆候に加えて、造血系に対して中等度から顕著な影響(最も顕著なのはリンパ球、好中球、及び網赤血球の減少)があり、中等度から顕著な骨髄の細胞性低下及び他のリンパ系器官の細胞性の低下との組織学的相関を伴った;胃腸管毒性は大腸及び小腸の粘膜に認められ(最小限から顕著な変性及び再生)、動物の瀕死状態の主な原因と考えられた。
【0210】
AZD8205処置関連薬理効果を示す他の臓器には、腎臓、肝臓、膵島、及び精巣における可逆的な軽度から中等度の組織病理学的所見が含まれていた。これらの処置関連所見の一部は、ストレス/体調不良及び臨床状態の悪化を示すものでもあった。
【0211】
肝臓及び腎臓では、軽度の一過性の肝臓酵素の増加(4~6日目のみ、対照のALT/ASTレベルの2倍であるが、組織病理学的相関は見られない)及び脱水症状の臨床観察と相関関係がある腎臓酵素の顕著な増加など、臨床化学変化が認められた。全ての変化は、43日目の予定された解剖前に回復可能であった。生残動物(22.5mg/kgで2/3、及び15mg/kgで3/3)では、造血系への影響も見られたが、その影響は最小限から軽度であった。唯一の処置関連顕微鏡所見が、22.5mg/kg IV Q3W×2を投与された動物の試験で認められ、やはりTOP1阻害剤の作用機序(MOA)と一致していた。15mg/kgでは、検査されたどの臓器にも組織病理学的所見はなかった。
【0212】
カニクイザルを対象とした、6週間の回復期間を伴う極めて重要なGLP6週間反復投与(Q3W×2)IV試験では、15mg/kg以下の用量レベルでは有害な所見は示されなかった(試験した最大用量及びHNSTD)。全ての主要な臓器及び機能(呼吸器、心血管、腎臓、肝臓、及び神経系)が評価され、生存率、局所(皮膚)耐性、体重、心電図、血圧、呼吸数、検眼鏡検査、神経学的エンドポイント、臨床化学、尿検査、全身性サイトカイン放出又は凝固パラメータに関して、AZD8205関連の臨床兆候又は影響は認められなかった。唯一の処置関連変化は、用量レベル≧10mg/kgで観察され、造血系に対するAZD8205の予想される薬理活性と関連しており、6週間の回復フェーズ中に可逆的であった一部の赤血球パラメータに対する最小限の一時的な影響が含まれていた。
【0213】
オス及びメスのカニクイザルを対象とした極めて重要なGLP AZD8205毒性試験では、15mg/kg以下の用量レベル(性混合平均 963μg.d/mLのAUC及び323μg/mLのCmaxの全身曝露)で肝酵素上昇、過敏症/アナフィラキシー、又は注入関連奏効の証拠は見出されなかった。これらの値は、本試験の開始用量で予測される最小臨床有効性AUC(77μg.d/mL)及びCmax(16μg/mL)レベルをそれぞれ上回る約13倍及び20倍の安全マージンを提供すると予想される。用量範囲調査試験で肝酵素の変化が認められた場合、それらは最小限(約2倍)、一過性(一部の動物では1~2日で認められる)であり、肝細胞壊死を伴わず、動物への15mg/kgのAZD8205の投与終了までに完全に回復可能である。
【0214】
実施例5:試験対象
本実施例は、サブ試験1のパートA及びパートB試験のための対象を選択するための基準を提供する。
【0215】
パートA及びパートBのための組み入れ基準:
1. 試験に登録する際は18歳以上である必要がある。
2. 登録時、0又は1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステイタス。
3. 再発/転移性固形腫瘍を有する対象は、腫瘍の種類及び病期に応じた、又は以前の処置に対する奏効及び/又は忍容性に基づいて臨床試験が次の処置に最適な選択肢である場合は、以前に十分なSoC療法を受けていなければならない。
4. 対象は、CT又はMRIで最長直径で≧10mmとしてベースラインで正確に測定可能であり(≧15mmの短軸を有する必要があるリンパ節を除く)、正確な繰り返し測定に適している、少なくとも1つの病変によって定義される、RECIST v1.1に従って測定可能な疾患を患っていなければならない。以前に放射線照射を受けた病変又は放射線分野の病変は、その病変(複数可)がRECIST v1.1によって明確な疾患進行を示していない限り、標的病変として使用すべきではない。他に生検に適した病変がなく、所定の要件を満たしている場合を除き、標的病変をベースライン腫瘍生検に使用すべきではない。
5. 予測される平均余命≧12週。
6. 表2に定義されている適切な臓器機能。
【0216】
【0217】
実施例6:パートA用量漸増
本実施例は、パートBに対するAZD8205の投与量を決定するためのパートAの用量漸増試験について記載する。
【0218】
本サブ試験は、単剤療法としてのAZD8205の安全性及び忍容性を調査し、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、及び胆道癌におけるAZD8205の抗腫瘍活性を評価するために実施されている。AZD8205はQ3Wで静脈内投与される。この試験は、パートA及びBの両方に適用される次のフェーズで実施される:
1. プレスクリーニングフェーズ:全ての対象は、B7-H4分析用のベースライン組織試料を提供する。B7-H4を発現する腫瘍を有する対象は次のフェーズに入る。
2. スクリーニングフェーズ:対象は試験介入の適格性について評価される。包含基準を全て満たし、除外基準を全く満たさない対象のみが試験に割り当てられる。
3. 処置フェーズ:更なる投与を禁忌とする任意のAE若しくはAE、又は放射線学的進行を含む中止基準のうちの1つが満たされるまで、対象は試験介入を受け続ける。
4. 追跡調査フェーズ:全ての対象は生存について追跡調査される。
【0219】
パートA(用量漸増)では、陽性レベルのB7-H4腫瘍発現を有する約60人の対象において AZD8205を評価し、MTD及び/又はRP2Dを決定する。RP2Dは、適切なPK、PD、有効性、安全性、及び忍容性を含む、利用可能な全てのデータをプールして評価することによって選択される。安全性、PK、PDxデータに基づいて、SRCは中間の用量レベル及び/又は代替の投与スケジュール並びにより長い処置間隔を推奨する場合がある。新たなデータに基づいて、MTDを超えない任意の用量レベルは、最大18人の対象(PDxバックフィルコホートと呼ばれ、合計36人の対象)まで追加で拡大してもよい。PDxバックフィルコホートに登録された対象は、mTPI-2アルゴリズムに基づいてSRCによって行われた投与決定に影響を与えない。PDxバックフィルコホートでは、処置前及び処置中の腫瘍生検が必須である特定の腫瘍タイプを登録する場合がある。これらのPDxバックフィルコホートは、利用可能なデータに基づいて拡大のための最適な用量レベルの選択を知らせる追加のPDx及び安全性データを提供する。
【0220】
パートAでは、IVを介してQ3Wで、0.8mg/kg、1.6mg/kg、2.4mg/kg、及び3.2mg/kgの4つの用量レベルを投与した。
【0221】
最長28日間の最初のスクリーニング期間に続いて、パートAの介入期間が計画された。パートAの介入期間には20サイクル以上が含まれ、各サイクルは21日又は28日であり、AZD8205は3週間毎(Q3W)、つまり21日のサイクル毎又は28日のサイクル毎に1回投与される。
【0222】
適格性のある対象は、サイクル1の1日目から開始して20サイクル以上、選択された用量で静脈内(IV)注入によりAZD8205 Q3Wの投与を受ける。対象は、疾患の進行、許容できない毒性、研究者の決定、最大処置サイクルの完了、又は同意の撤回に至るまで、試験介入によって処置される。試験終了まで、生存期間について全ての対象を追跡調査する。
【0223】
本発明の期間の後、対象は、疾患の進行、処置の終了病態、及び経過追跡病態について更に評価される。
【0224】
実施例7:パートB用量拡大
本実施例のパートBの研究フェーズは、用量拡大を研究するために2.4mg/kg用量のAZD8205を使用して実施された。
【0225】
目的及びエンドポイントは上記の実施例6で記載されている。
【0226】
パートB(用量拡大)は、予備的な有効性を調査し、特定の集団からの約220人の対象における安全性データに基づいて開始される。パートAからの新たなデータのレビューを保留中、4つの拡大コホートが計画されている:
BTCコホートの約40人の対象(コホートB1)
卵巣癌コホートの約60人の対象(コホートB2)
-PRRを有する約30人の対象(コホートB2A)
-PSRを有する約30人の対象(コホートB2B)
HER2陰性(IHC:0、1+、2+/ISH-、最新のASCO/CAPガイドラインで定義されている)乳癌コホート全体で約90人の対象(コホートB3):
-HR+、HER2陰性乳癌を有する約30人の対象(コホートB3A)
-TNBCを有する約30人の対象(コホートB3B)
-TOP1i ADCで予め処置されているHR±、HER2陰性乳癌を有する約30人の対象(コホートB3C)
子宮内膜癌コホートの約30人の対象(コホートB4)。
【0227】
各拡大コホートは、新たなデータに応じて、複数の用量レベル又はスケジュールで開始されてもよい。拡大コホートは、並行又は時間差アプローチで同時に又は個別に開始されてもよい。新しい投与スケジュールが検討された場合、用量変更が合意され、以前に確立された安全な曝露範囲に基づいて変更される。拡大コホート内で2つの用量レベル/スケジュールを調査することが決定された場合、パートBの全体の試料サイズは最大440人の対象まで増加する可能性がある。このような場合、対象は、選択された用量レベル/スケジュールにランダム化されてもよく;割り当ては盲検化されない。ランダム化は1日目に行われる。
【0228】
全ての対象についての安全性及び忍容性のデータは定期的に評価され、対象の臨床反応状態はRECIST v1.1に従って分類される。
【0229】
実施例8:予備的なパートA及びパートBの結果
上記の実施例で記載した試験のパートA及びパートB部分で35人の対象が評価されており、16人の対象の評価が進行中である。
【0230】
表3は、パートA及びパートBで評価される対象の個体群統計を示す。
【0231】
【0232】
予備的なPKデータが提供される。データは、n=3ポイント(0.8mg/kg)、n=9ポイント(1.6mg/kg)、n=9(2.4mg/Kg)、及びn=5ポイント(3.2mg/Kg)から入手できる。PKデータによれば、AZD8205 ADCの総濃度及び抗体の総濃度は、試験した全ての用量レベルで同等であり、弾頭の結合が対象内で安定していることを示している。特に、AZD8205の曝露は前臨床予測と一致しており、用量に比例して増加し、半減期=4.9~7.2日である。更に、1.6及び2.4mg/kg(それぞれ、AUC(0-21)143.5±39.2及び190.9±10.1日*μg/mL)でのAZD8205曝露は、予測有効範囲(80~230日*μg/mL)内である。血漿中の非共役弾頭の暴露は、予測されるAUCの1.2倍以内である。
【0233】
コンピュータ断層撮影データは、AZD8205が、乳癌(BC)、卵巣癌(OC)、及び子宮内膜癌(EC)で活性を有することを示唆している。特に、4人の対象では、腫瘍マーカーの減少+標的病変(1uPR及び3cPR)の縮小(>30%)の両方が示された。18人の対象はRECISTによりBoRとしてSDと示された(腫瘍縮小率が20%以上で継続中の対象4人を含む)。腫瘍マーカーは、OC、BC、及びECの全ての用量レベルにわたって、評価可能な10/24ポイントで>50%減少した。ctDNA分子測定により、評価可能な対象N=14/21(約67%)で奏効が示された-用量レベル2(DL2)ではN=5/8対象(63%)、用量レベル3(DL3)ではN=6/9対象(67%)、用量レベル4(DL4)では3/4対象(75%)、パターンは臨床奏効及び腫瘍マーカーとほぼ一致していた。
【0234】
測定可能なCA125を有するOvCa対象(>2×ULN)を
図3にプロットし、ここでは、1.6、2.4、及び3.2mg/kgのAZD8205に対する奏効が確認されている。ctDNA分子奏効は、1.6、2.4、及び3.2mg/kgで約67%の評価可能な対象(n=14/21)で観察された。ctDNAの変化は主に臨床奏効を反映しており、利益を得ている対象で観察されるctDNAの減少がより大きくなる。新たな前臨床/臨床有効性の結果を表6に示す。
【0235】
【0236】
実施例9:選択した対象のB7-H4カットオフの決定
上記の実施例に記載したヒトにおける最初の試験の初期段階において、より高い全奏効率(ORR)が、より高いレベルのB7-H4発現を有する腫瘍を有する対象において見られ、AZD8205による処置によりよく奏効することが観察された。全対象対B7-H4発現対象のORRを以下の表7にまとめる。
【0237】
【0238】
継続的なヒト試験のためのB7-H4発現カットオフを決定するために、CCA、卵巣癌、及びTNBCについてマウス異種移植片試験を実施した。AZD8205の投与の21日前に、無胸腺ヌードマウス(Fox1
nu)又はNOD-SCIDマウスのいずれかに腫瘍を異種移植した。AZD8205は、0日目に単回静脈内投与として投与された。腫瘍成長の変化を処置後28日目にモニタリングした。腫瘍成長パーセントの変化対B7-H4を発現する細胞のパーセンテージのプロットを
図4に示す。
【0239】
受信者操作特性(ROC)曲線が各用量について決定され、その曲線を使用して各用量でのYouden統計量が計算された。Youden統計量は、
図5に示されるように、B7-H4細胞のパーセンテージに対してプロットされる。Youden統計量1は完全なバイオマーカーを表し、統計量0はバイオマーカーが非分化であることを意味する。
図5で見られるように、Youden統計量は、B7-H4パーセンテージが25%以上でプラトーになった。したがって、25%B7-H4発現カットオフを使用して使用される用量を評価する。
【0240】
実施例10:高度に予め処置を受けた対象の全奏効率。
上記の実施例に記載した試験からの高度に予め処置を受けた合計44人の対象を客観的奏効率(ORR)について評価した。表6を考慮した2番目のデータカットの一部として表8に示すように、44人の対象は、卵巣癌を有する18人の対象、胆管癌(CCA)を有する9人の対象、乳癌(BC)を有する12人の対象、及び子宮内膜癌(EC)を有する5人の対象を含む。これらの44人の対象のうち、40人のORRについて評価した。対象の一部は、表8に示すように、以前にプラチナ化学療法で処置を受けていた。表8に示されるように、腫瘍マーカーの大幅な減少及び/又はctDNAの減少を有する対象の場合、平均ORRは約25%である。
【0241】