(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159373
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バットのグリップエンドおよび/または先端キャップ用の振動減衰ダンパ
(51)【国際特許分類】
A63B 59/51 20150101AFI20241031BHJP
【FI】
A63B59/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093445
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】18/140,885
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522111149
【氏名又は名称】ヴァン グエン,トゥー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン グエン,トゥー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】野球ボールまたはソフトボールなどの物体を打ったときに生じる振動および衝撃を効果的に放散させるバットの提供。
【解決手段】野球またはソフトボールのバットは、グリップエンド106を有する把持部102から延在するバレル部を含む。ゲルで部分的に満たされたチャンバを画定するキャップは、バットが物体に当たったときに生じる振動を放散させるために、バレル部またはグリップエンド106の先端に取り付けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野球またはソフトボールのバットであって、
先端にグリップエンドを有する把持部と、
前記把持部から延在するバレル部と、
前記バレル部または前記グリップエンドの先端に取り付けられ、チャンバを画定するキャップと、
前記バットが物体に当たったときに生じる振動を少なくとも部分的に放散させるために、前記キャップの前記チャンバを部分的に満たすゲルと
を含む、バット。
【請求項2】
前記キャップは、前記バレル部の先端に取り付けられた先端キャップを備える、請求項1に記載のバット。
【請求項3】
前記キャップの一部は、前記グリップエンド内に形成されたチャンバへと延在している、請求項1に記載のバット。
【請求項4】
前記ゲルは、前記キャップの前記チャンバを25%~90%満たす、請求項1に記載のバット。
【請求項5】
前記ゲルは、前記キャップの前記チャンバを50%~80%満たす、請求項4に記載のバット。
【請求項6】
前記ゲルは、ポリマー材料で構成されている請求項1に記載のバット。
【請求項7】
前記ゲルは、ポリウレタンゲルまたはシリコーンゲルで構成されている、請求項6に記載のバット。
【請求項8】
前記ゲルの粘度は、1800~300,000センチポアズである、請求項1に記載のバット。
【請求項9】
前記ゲルのショアA硬度は0~2である、請求項1に記載のバット。
【請求項10】
前記キャップは、開口したチャンバを共同して形成する末端壁および側壁を有する、請求項1に記載のバット。
【請求項11】
前記キャップの前記側壁は、前記グリップエンドまたは前記バレル部へとねじ式に接続するねじ山を有する、請求項10に記載のバット。
【請求項12】
前記チャンバのアパーチャまたは開口端を覆って配置され、前記チャンバ内に前記ゲルを保持するカバーを含む、請求項1に記載のバット。
【請求項13】
前記キャップは、前記ゲルで部分的に満たされた複数のチャンバを含む、請求項1に記載のバット。
【請求項14】
野球またはソフトボールのバットであって、
先端にグリップエンドを有する把持部と、
前記把持部から延在するバレル部と、
前記バレル部または前記グリップエンドの開口端に取り付けられたキャップであって、開口したチャンバを共同して画定する末端壁から延在する側壁を有するキャップと、
前記バットが物体に当たったときに生じる振動を少なくとも部分的に放散させるために、前記キャップの前記チャンバを25%~90%満たすポリマーゲル材と
を含む、バット。
【請求項15】
前記キャップは、前記バレル部の先端に取り付けられた先端キャップを備える、請求項1に記載のバット。
【請求項16】
前記キャップの一部は、前記グリップエンド内に形成されたチャンバへと延在している、請求項1に記載のバット。
【請求項17】
ゲルは、前記キャップの前記チャンバを50%~80%満たす、請求項14に記載のバット。
【請求項18】
ゲルは、ポリウレタンゲルまたはシリコーンゲルで構成されている、請求項14に記載のバット。
【請求項19】
ゲルの粘度は、1800~300,000センチポアズである、請求項14に記載のバット。
【請求項20】
ゲルのショアA硬度は0~2である、請求項14に記載のバット。
【請求項21】
前記キャップは、前記グリップエンドまたは前記バレル部にねじ式に接続するねじ山を有する、請求項14に記載のバット。
【請求項22】
前記チャンバのアパーチャまたは開口端を覆って配置され、前記チャンバ内にゲルを保持するカバーを含む、請求項14に記載のバット。
【請求項23】
前記キャップは、ゲルで部分的に満たされた複数のチャンバを含む、請求項14に記載のバット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月25日に出願された米国出願第17/212,151号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、一般に、野球およびソフトボールのバットに関する。より具体的には、本発明は、バットがボールなどの物体を打ったときに生じる振動を減衰させるために、バットのグリップエンド(knob)および/または先端キャップに取り付けられた、野球またはソフトボールのバット用のダンパに関する。
【背景技術】
【0003】
野球およびソフトボールは、米国、メキシコ、日本などを含む多くの国で非常に人気のあるスポーツである。これらのスポーツの競争的性質のために、選手は、常にパフォーマンスを向上させる方法を模索している。野球およびソフトボールの重要な側面の1つは、ボールを効果的に打つ能力である。
【0004】
典型的に、木製バットがプロレベルで使用される一方で、アルミニウムや他の金属合金などの金属バットおよび複合素材のバットは、他のリーグやレベル、具体的にはリトルリーグから大学レベルまでの野球のアマチュアプレイ、ならびにスローピッチソフトボールおよびファストピッチソフトボールにおいても広く使用されている。金属バットおよび複合バットは、木製バットのように折れたり割れたりしないという点で、木製バットよりも有利であり、そのため繰り返し使用することができ、結果的にコストを節約することが可能である。金属バットおよび複合バットは、木製バットよりも大きな、スイートスポットと呼ばれることの多い最適打球領域またはパワーゾーンも有している。
【0005】
しかしながら、これらのバットにはいくつかの欠点もある。金属もしくは複合材料、またはそれらの組み合わせで構成されるバットは、特にボールがバットのスイートスポット内で打たれない場合、衝撃によって振動する。バットがボールを打つことによって生じる衝撃は、打者の手や腕に痛みを伴う振動を与える可能性がある。
【0006】
振動を放散または吸収する特性を持つバットを製造しようとする試みは、組み立てや形成が本質的に複雑であることが多い。振動を放散または吸収することを目的としたバットの様々なコンポーネント間の相互接続点は、バットが繰り返し使用されるため故障しやすくなることがよくある。また、多くの設計では、バットが野球ボールまたはソフトボールなどの物体を打ったときに生じる振動を効果的に低減していない。
【0007】
したがって、野球ボールまたはソフトボールなどの物体を打ったときに生じる振動および衝撃を効果的に放散させるバットが引き続き必要とされている。このようなバットは、設計が複雑であってはならず、製造や組み立てコストが高価であってはならず、構造上破損しやすいものであってはならない。このようなバットは、把持部(handle)とバットのバレル部(barrel)との間の堅固で耐久性のある接続を維持する必要もある。本発明は、こうしたニーズを満たすとともに他の関連する利点も提供している。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、野球またはソフトボールのバットに存する。より具体的には、本発明は、バットが野球ボールまたはソフトボールなどの物体を打ったときに生じる振動および衝撃を放散させる、バットのグリップエンドおよび/または先端キャップに取り付けられたゲルダンパを有するバットに存する。
【0009】
野球またはソフトボールのバットは、一般的に、先端にグリップエンドを有する把持部を備える。バレル部は把持部から延在している。キャップは、バレル部またはグリップエンドの先端に取り付けられる。キャップは、バレル部の先端に取り付けられた先端キャップを備えていてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、キャップの一部がグリップエンド内に形成されたチャンバへと延在していてもよい。
【0010】
キャップはチャンバを画定する。キャップは、開口したチャンバを共同して形成する末端壁および側壁を有していてもよい。キャップの側壁は、バットのグリップエンドまたはバレル部へとねじ式に接続するねじ山を有していてもよい。キャップは複数のチャンバを含んでもよい。
【0011】
ゲルは、バットが物体に当たったときに生じる振動を少なくとも部分的に放散させるために、キャップのチャンバを部分的に満たす。ゲルは、ポリマー材料で構成されてもよい。ゲルは、ポリウレタンゲルまたはシリコーンゲルで構成されてもよい。ゲルのショアA硬度は、0~2であってもよい。ゲルの粘度は、1800~300,000センチポアズであってもよい。ゲルは、キャップのチャンバを25%~90%満たしてもよい。ゲルは、キャップのチャンバを50%~80%満たしてもよい。チャンバ内にゲルを保持するカバーは、チャンバのアパーチャまたは開口端を覆って配置されてもよい。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原則を例示的に示す添付の図面とともに、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は、本発明を図示するものである。そのような図面では、
【
図1】
図1は、本発明のゲルダンパをグリップエンドおよび先端キャップに組み込んだ、ソフトボールまたは野球のバットの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る、バットのグリップエンドのチャンバ内に配置された、振動放散または減衰ゲルを示す、
図1の領域「2」の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る、バットのバレル部の先端に取り付けられるとともに、そのチャンバ内に配置された振動減衰または放散ゲルを有する先端キャップを示す、
図1の領域「3」の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る、先端キャップのチャンバへと注がれるゲルを示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る、先端キャップのチャンバ内のゲルを示す、
図4のコンポーネントの部分断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る、ゲルを入れた可撓性のある筐体を収容するチャンバと、筐体をグリップエンド内に保持するためのカバーとを有するグリップエンドの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、バットの把持部の先端に取り付けられたグリップエンドを有する、組み立てられた
図6のコンポーネントの断面図である。
【
図8】
図8は、ゲルを中に有する可撓性のある筐体を収容するチャンバと、筐体を先端キャップ内に保持するためのカバーとを有する先端キャップを示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、バットのバレル部の先端に組み立てられた状態の
図8のコンポーネントの断面図である。
【
図10】
図10は、本発明を具体化したキャップの正面斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る、振動減衰ゲル材で部分的に満たされた
図10のキャップの正面斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明に係る、バットのグリップエンドに取り付けられ、部分的にゲルで満たされたキャップを示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明を具体化した別のキャップの上方斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明に係る、ゲルで部分的に満たされたそのチャンバを示す、
図13のキャップの断面図である。
【
図15】
図15は、本発明に係る、バットのバレル部の先端に取り付けられた
図14のキャップを示す部分断面斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明を具体化したキャップの上方斜視図である。
【
図17】
図17は、ゲルで部分的に満たされたそのチャンバを示す、
図16のキャップの断面図である。
【
図18】
図18は、本発明に係る、バットのバレル部の先端に取り付けられた
図17のキャップの部分断面斜視図である。
【
図19】
図19は、
図18と同様の断面図であり、部分的にゲルで満たされたキャップのチャンバを覆って配置されたカバーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例示を目的とする添付図面に示すように、本発明は、野球またはソフトボールなどのバットのグリップエンドおよび/または先端キャップ用の振動減衰ダンパに関する。ボールとバット間の激しい衝突は、バットの振動および屈曲モード形状を生じ、打者の片手または両手に刺すような痛みを引き起こす。これは、典型的に、バットのバレル部の先端から約4~7インチの「スイートスポット」から離れてバットがボールに衝突したときに生じ、打者が把持部を支持する場所である、把持部分の小さな部分で感じられることが最も多い。刺痛振動は、把持部の先端にあるグリップエンドから最も離れた上の手の親指と人差し指の間で感じられることが多い。本発明の振動減衰ダンパは、強度、変形、およびエネルギー吸収の組み合わせを通じて、動力に耐えるように設計されている。ダンパは、ボールとバット間の衝撃によって生じる振動を放散させるが、そうでなければ振動は伝達され、打者の手や腕に刺痛または怪我を引き起こすことになる。
【0015】
ここで、
図1を参照すると、バット(100)の断面図が示されている。バット(100)は、典型的に野球およびソフトボールで使用される種類のものである。バット(100)は、打者が握る把持部分(102)と、典型的に把持部(102)に対して直径が拡大され、ボールまたは他の物体を打つために使用されるバレル部分(104)とで構成される。把持部(102)およびバレル部(104)は、互いに取り付けられた別個の部分として、互いに一体的に形成されてもよく、あるいは把持部分(102)および/またはバレル部分(104)は、複数の部分から形成されてもよい。バット(100)は、典型的には金属もしくは複合材料、またはそれらの組み合わせで構成される。例えば、バット(100)は、アルミニウム合金材、他の金属合金、複合材料、またはそれらの組み合わせで構成されてもよい。本発明のダンパは、多数の様々な種類の材料で構成され、多数の様々な構造を有する多種多様な種類のバットに組み込むことができる。
【0016】
本発明によれば、ゲル減衰材は、バット(100)内のチャンバ内に配置および収容される。本明細書でさらに十分に説明されるように、ゲル減衰材は、典型的に把持部(102)の先端に取り付けられたグリップエンド(106)またはバレル部(104)の開口端に取り付けられた先端キャップ(108)のチャンバ内に配置される。ダンパは、最小粘度が1800センチポアズ(cps)である任意のゲルであり得る。典型的には、ゲル材は、最小粘度が1800cpsであるポリマーゲルである。ゲルは、シリコーンベースのゲルまたはポリウレタンゲルを含んでもよい。ゲルの粘度は、動的粘度が30,000~300,000cpsであるなど、1800cpsを超えてもよい。ゲル減衰材のショアA硬度は、典型的に0~2(単位:A)である。コーン貫入試験によるゲル減衰材の流動性は、本発明に従って使用され得るゲル材などの材料の流動性または動的粘度の指標として、100~300(単位:1/10mm)であってもよい。
【0017】
次に、
図3~5を参照すると、バット(100)の先端キャップ(108)内に配置されたゲル減衰材が示されている。具体的には、
図4に示されるように、先端キャップ(108)は、先端キャップ(108)によって画定されたチャンバ(114)内へとゲル(112)が挿入されるアパーチャまたは開口部(110)を含んでもよい。ゲル(112)は、
図4に示されるように、アパーチャ(110)を通じてチャンバ(114)へと注がれてもよく、チャンバ(114)へと注入されてもよく、またはゲル材(112)をチャンバ(114)内に配置するのに適した他の任意の手段によって配置されてもよい。ゲル材は、成分を混合した直後や高温であるときなど、チャンバ(114)に添加されるときは液体状であってもよいが、その後徐々にゲル材へと硬化する。
【0018】
チャンバ(114)は、体積比がチャンバ(114)の10%から90%であるなど、部分的にまたは完全に満たされてもよい。しかしながら、ゲル(112)がチャンバ(114)を20%未満しか満たさないとき、振動減衰効果はあるが、この減衰は所望されるほど大きくないことが分かっている。したがって、好ましくは、ゲル(112)は、体積比がチャンバ(114)の少なくとも25%であるか、少なくとも25%満たし、より好ましくは、チャンバ(114)を少なくとも50%満たす。また、チャンバ(114)が100%満たされると、振動減衰効果がわずかに低減することも分かっている。したがって、振動減衰効果を最大にするために、チャンバ(114)は25%~90%、より好ましくは50%~80%満たされる。これらの体積比内では、バットがボールまたは他の物体を打ったときに生じる振動は、ゲル減衰材(112)によって顕著に放散される。
【0019】
カバーまたはプラグ(116)は、チャンバ(114)内にゲル減衰材(112)を保持するように、チャンバのアパーチャ(110)を覆って配置されてもよい。プラグや蓋などの形態であり得るカバー(116)は、ねじ山が刻設されるか、またはされない場合がある外面に塗布された薄い接着剤層を有しており、かつゲル(112)が挿通されるアパーチャ(110)を完全に覆うように先端キャップ(108)に取り付けられてもよい。
図2~5に示される実施形態では、アパーチャ(110)は、プラグ(116)のカバーのように比較的小さい。さらに、カバーまたはプラグ(116)にはねじ山が刻設されない。しかしながら、アパーチャ(110)は、はるかに大きくてもよく、カバー(116)は、先端キャップ(108)またはグリップエンド(106)へのねじ式取付け部を有してもよいことが理解されよう。
【0020】
再び
図3~
図5を参照すると、先端キャップ(108)のチャンバ(114)にゲル材(112)が添加され、カバー(116)が先端キャップ(108)にしっかりと位置決めされて取り付けられると、先端キャップ(108)がバレル部(104)にしっかりと取り付けられるように、先端キャップ(108)は、バットの中空開口端などで、バットのバレル部(104)に取り付けられる。この取付けは、当技術分野で知られているように、ねじ式取付け、スナップフィット取付け、および、これに代えて、またはこれに加えて、接着剤での取付けなど、さまざまな配置およびプロセスによって行われてもよい。
【0021】
ここで、
図2を参照すると、通常バット(100)のバレル部(104)の反対側にある把持部(102)の先端に取り付けられたグリップエンド(106)を有する、
図1の領域「2」の拡大断面図が示されている。グリップエンド(106)内には、ゲルを収容するチャンバ(120)が形成されている。グリップエンド(106)は、典型的に、アルミニウムなどの金属またはポリマー材料で構成される。グリップエンド(106)は、グリップエンド(106)にすぐ隣接した把持部(102)の部分よりも直径の大きい、拡径先端部(122)を有していてもよい。グリップエンド(106)はまた、
図2に示されるように、把持部(102)の開口端へと挿入可能となるように、より狭小な部分(124)を含んでもよい。チャンバ(120)は、グリップエンド(106)のこれらの部分(122)および/もしくは(124)のいずれか一方、または両方に形成されてもよい。
図2に示されるように、チャンバ(120)は、拡径部分(122)と、より狭小な部分(124)との両方に形成される。
【0022】
上述したように、
図3~5では、ゲル減衰材(112)はチャンバ(120)内に配置される。この配置は、注ぎ込みや注入などによって行われてもよい。チャンバ(120)は、ゲル材(112)で例えば少なくとも10%など、少なくとも部分的に満たされ、例えばチャンバ(120)を100%満たすなど、完全に満たされてもよく、より好ましくは、上記に示したように、チャンバ(120)は25%~90%、より好ましくは50%~80%満たされる。ゲル材(112)はアパーチャまたは開口部(126)を通過した後、上述のようにカバー(128)で密封される。その後、グリップエンド(106)が把持部(102)の開口端に取り付けられる。この取付けは、例えば、グリップエンド(106)のより狭小な部分(124)を把持部(102)に挿入することにより行われてもよく、これにより、その間に摩擦嵌合および/または接着嵌合が形成され、グリップエンド(106)を把持部(102)の先端に保持することができる。
【0023】
バット(100)は、その中にゲル減衰材を有するグリップエンド(106)、および/またはゲル減衰材を有する先端キャップ(108)を備えてもよい。ゲル(112)は比較的高い粘度を有するので、バット(100)がボールなどの物体に当たったときに、顕著な振動減衰効果がある。ゲルの振動数がバットの振動数と一致することで、このような振動減衰効果または放散効果がもたらされると考えられている。バットの振動によるエネルギーは、打者の手や腕ではなく、ゲルに伝達される。
【0024】
次に、
図6~9を参照すると、グリップエンド(106)または先端キャップ(108)のチャンバ内にゲルを注ぎ込む、注入する、またはその他の方法で直接挿入する代わりに、ゲルは、可撓性のある筺体(130)内に入れられてもよい。このような可撓性のある筐体(130)は、例えば、可撓性があるとともにゲル材(112)をその中に保持する、プラスチックまたはエラストマー材料などを含んでもよい。
【0025】
ここで、
図6および
図7を参照すると、グリップエンド(106)のアパーチャまたは開口部(126)は、その中にゲル(112)を入れた可撓性のある筐体(130)をグリップエンド(106)のチャンバ(120)内に収容するのに十分な大きさである。可撓性のある筐体(130)はチャンバ(120)を例えば10%~95%など、部分的に満たすか、または完全に満たしてもよいが、より好ましくは、チャンバ(120)を25%~90%、さらに好ましくは50%~80%満たすことで、減衰および放散効果が最大になる。あるいは、可撓性のある筐体(130)はチャンバ(120)を満たしてもよいが、可撓性のある筐体(130)はゲル材で部分的にのみ満たされる。
【0026】
その後、アパーチャ(126)を覆い、チャンバ(120)内にゲルで満たした筐体(130)を保持するように、より大きなカバー(132)がグリップエンド(106)に取り付けられる。カバーは、グリップエンド(106)に接着剤で取り付けてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、カバー(132)は、図示されるように、グリップエンドのめねじ山(136)に受けられるおねじ山(134)を有することなどによって、ねじ式取付け部を有してもよい。接着剤の薄層をカバー(132)のおねじ山(134)に塗布して、カバー(132)をグリップエンド(106)にしっかりと取り付け、ゲルで満たした可撓性のある筐体(130)をグリップエンド(106)内に保持することができる。カバー(132)は、カバー(132)とグリップエンド(106)とを互いにしっかりと取り付けて結合するように、カバー(132)をグリップエンド(106)に対して機械的かつ物理的に回転させるための窪み(138)を含んでもよい。その後、組み立てられたグリップエンド(106)は、
図7に示されるように、上述したように、かつ当技術分野で周知のように、把持部(102)に取り付けられる。
【0027】
次に、
図8および
図9を参照すると、ゲル減衰材(112)を入れた可撓性のある筐体(130)は、先端キャップ(108)のチャンバ(114)内へと同様の方法で挿入されてもよい。先端キャップ(108)のアパーチャまたは開口部(110)は、可撓性のある筐体(130)がそこを通ってチャンバ(114)へと挿入され得る十分な大きさである。その後、上記で図示し、説明したグリップエンドと同様に、カバー(140)は、開口部(110)を覆って配置され、ゲル材の可撓性のある筐体(130)をチャンバ(114)内および先端キャップ(108)内に保持する。上記と同様に、カバー(140)は、先端キャップ(108)のめねじ山(144)にねじ式に取り付けられたおねじ山(142)を有していてもよい。これに加えて、またはこれに代えて、接着剤の層をカバー(140)の外面および/または先端キャップ(108)の内面上に配置してもよく、カバー(140)を先端キャップ(108)に接着し、しっかりと取り付ける。上記のように、可撓性のある筐体(130)は、例えば10%~95%など、チャンバ(114)を少なくとも部分的、または完全に満たしてもよいが、より好ましくは、25%~90%、さらに好ましくは50%~80%の体積比で満たすことで、本発明の振動減衰および放散効果は最大になる。その後、組み立てられた先端キャップ(108)は、
図9に示されるように、かつ上述したように、バットのバレル部(104)の先端(118)に取り付けられる。
【0028】
次に、
図10~12を参照すると、キャップ(146)は、末端壁(148)と、末端壁(148)から延在する側壁(150)とを有しており、開口端のチャンバ(152)を画定する。キャップ(146)の側壁(150)は、グリップエンド(158)のめねじ山(156)にねじ式に接続するためのねじ山(154)を含んでもよい。グリップエンド(158)は、例えば上記のように、バット(100)の把持部(102)の先端に接続されている。キャップ(146)は、図示されるねじ式取付け、スナップフィット取付け、接着による取付け、またはそれらの組合せを含む様々な手段および配置によって、例えばグリップエンド(158)の内側空洞部またはチャンバ(162)など、グリップエンド(158)に取り付けられてもよいことが理解されよう。
【0029】
キャップ(146)のチャンバ(152)は、振動減衰ゲル材(160)で部分的に満たされている。上記のように、ゲル材は、ショアA硬度が0~2、かつセンチポアズの定格が少なくとも1800、より好ましくは30,000~300,000cpsであるシリコーンゲルまたはポリウレタンゲルなどのポリマーゲルである。ゲル材(160)は、チャンバ(152)を10%~95%満たすが、より好ましくは25%~90%、さらに好ましくは50%~80%満たすことで、振動減衰および放散効果が最大になる。ゲル材は、硬化すると、接着剤のようにチャンバ(152)の内壁に付着する。
【0030】
ゲルが硬化した後、キャップ(146)はグリップエンド(158)に取り付けられ、バット(100)が使用されて振動が生じると、この振動は、グリップエンド(158)に接触しているキャップ(146)の側壁(150)に接触しているゲル材(160)に伝達され、打者の手を保護するように放散される。
【0031】
次に、
図13~15を参照すると、本発明を具体化した別のキャップ(164)が示されている。このキャップ(164)も、そこから延在し、少なくとも1つのチャンバ(170)を形成する側壁(168)を有する末端壁(166)を含む。ここでは、側壁(168)内の仕切り壁(172)が複数のチャンバ(170)を形成する。
【0032】
図14および
図15に示されるように、ゲル材(160)は、チャンバ(170)の少なくとも1つ、好ましくはチャンバ(170)のすべてを部分的に満たす。ゲルが硬化したら、バレル部(104)の先端キャップとして機能するキャップ(164)をバレル部の開口端に取り付ける。この取付けは、ねじ式接続、接着剤、プレスフィットなど、様々な手段によって行うことができ、ここでキャップ(164)およびバレル部(104)の先端は、相互に係合し、かみ合う形状などを有している。再び、バット(100)が物体に当たって振動が生じると、この振動は、バレル部(104)を通ってキャップ(164)へ、そしてゲル材(160)へと伝達され、振動が放散される。
【0033】
次に、
図16~19を参照すると、バレル部の先端キャップの形態の別のキャップ(174)が示されている。キャップ(174)は、そこから延在する側壁(178)を有する末端壁(176)を含む。末端壁(176)および側壁(178)は、共同して少なくとも1つのチャンバ(180)を画定する。図示される実施形態では、内部の仕切り壁(182)は、中央のチャンバ(180)と付加的な周辺のチャンバ(184)とを形成する。
【0034】
図17に示されるように、チャンバの少なくとも1つ、典型的には中央のチャンバ(180)は、ゲル材(160)で部分的に満たされている。チャンバの1つのみもしくは複数、または全てのチャンバがゲル材で満たされる可能性がある。しかしながら、ゲル材(160)が、バレル部(104)と接触している少なくとも1つの壁(178)および/または(182)および/または(176)と物理的に接続されていることが重要であり、これにより、物体がバット(100)に当たって振動が発生したときに、この振動は、バレル部(104)を通って先端キャップ(174)へ、そしてゲル材(160)へと伝達され、振動が減衰かつ放散される。
【0035】
ここで、
図19を参照すると、カバー(186)は、ゲル(160)を入れたチャンバ(180)のアパーチャまたは開口端を覆って配置されてもよい。カバー(186)は、バット(100)の使用中、チャンバ(180)内にゲル材を保持する機能を果たす。そうでなければ、ゲル材(160)がチャンバ(180)からはみ出る可能性がある。カバーは、ゲル材が入れた、本明細書に図示するチャンバのいずれか1つを覆って配置され、キャップのチャンバ内にゲル材を保持する可能性があることが理解されよう。
【0036】
バット(100)がボールなどの物体に当たって振動が生じると、振動のエネルギーはキャップを通じてゲル減衰材へと伝達されるため、振動のエネルギーが打者の手や腕に伝わり、痛みを引き起こすことを防ぐことができる。本発明の振動を放散または減衰させる効果を最大にするためには、最小量のゲルが必要であると考えられる。しかながら、ゲル材の重量は、好ましくはバットの全体重量の0.5~2.5%であるべきである。減衰材(112)は、グリップエンドおよび/または先端キャップに形成されたチャンバ内に配置されるものとして上に図示され、記載されてきたが、本発明は、チャンバが、バレル部、把持部またはその間のテーパ部分などのバットの他の領域に形成される可能性があることも企図している。
【0037】
いくつかの実施形態は、例示目的のために詳細に記載されているが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更が行われてもよい。したがって、本発明は添付の請求項による場合を除いて、限定されないものとする。
【外国語明細書】