(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159376
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材とポリウレタン緩効性肥料
(51)【国際特許分類】
C05G 5/30 20200101AFI20241031BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20241031BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20241031BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20241031BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20241031BHJP
C08G 63/664 20060101ALI20241031BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20241031BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20241031BHJP
C05G 3/40 20200101ALI20241031BHJP
C07C 265/04 20060101ALI20241031BHJP
C07C 263/10 20060101ALI20241031BHJP
C12P 7/18 20060101ALI20241031BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C05G5/30
C08G18/73
C08G18/10
C08G18/79
C08G18/42 080
C08G18/42 044
C08G18/42 091
C08G63/664
C08G63/78
C05F11/00
C05G3/40
C07C265/04
C07C263/10
C12P7/18
C08L101/16
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097510
(22)【出願日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】202310478878.5
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523226147
【氏名又は名称】茂施農業科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Maoshi Agricultural Technology Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】Qingyang Economic Development Zone, Chizhou City, Anhui Province,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鐘成虎
(72)【発明者】
【氏名】鐘自勉
(72)【発明者】
【氏名】章力干
(72)【発明者】
【氏名】劉存
【テーマコード(参考)】
4B064
4H006
4H061
4J029
4J034
4J200
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】バイオベースの含有量が高く、製品の生体親和性が高く、緩効性に優れており、耐摩耗性及び耐圧性を大幅に高め、製品の構造性が安定しており、土壌に施用後安全でエコであり、分解性に優れる、全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材とポリウレタン緩効性肥料を提供する。
【解決手段】被膜材に使用される硬化剤はバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物であり、それはバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンモノマー及びそのポリマーの複合物又は異なるバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンポリマーの複合物を含み、それはブドウ糖、リシン等のバイオ由来の原料で、バイオベースの含有量は65~71%であり、被膜材はバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物と本発明が提供するバイオベースの多価アルコールの架橋反応により製造される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材であって、前記全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材の硬化剤であるイソシアネートは、バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンの複合物であり、
前記バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物は、バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンモノマーとそのポリマーの複合物又は異なるバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンのポリマーで構成される複合物を含む、ことを特徴とする全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項2】
前記バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物の平均官能度を2.8~3.5の間に制御し、NCO含有量を24%~30%に制御し、バイオ由来の原料の比率が65~71%である、ことを特徴とする請求項1に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項3】
バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンのポリマーは、バイオベースのPDI三量体及びその誘導体、バイオベースのPDI四量体及びその誘導体、その他のバイオベースのPDI重合体及びその誘導体を含み、
前記バイオベースのPDIモノマーは、バイオ原料をバイオ酵素作用により発酵させ1,5-ペンタンジアミンを得て、1,5-ペンタンジアミンのホスゲン化反応を経て製造され、前記バイオ原料はブドウ糖、リシンのうちの少なくとも一種から選ばれ、
前記バイオベースのPDI三量体及びその誘導体、バイオベースのPDI四量体及びその誘導体、その他のバイオベースのPDI重合体及びその誘導体は、前記PDIモノマーを触媒により重合することで得られる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項4】
前記全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材は、前記バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物とバイオベースの多価アルコールの架橋反応により合成され、
前記バイオベースの多価アルコール中のヒドロキシ基とバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物中のNCO基のモル比は0.98~1.10:1である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項5】
前記バイオベースの多価アルコールは、エポキシ化脂肪酸エステルとバイオベースの酸及びバイオベースのアルコールを開環重合して成るものであり、
前記バイオベースの酸は乳酸であり、前記バイオベースのアルコールはグリセリン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールのうちの少なくとも一種から選ばれ、
具体的な製造方法は、
(1)まず乳酸、バイオベースのアルコール及びエステル化触媒でエステル化反応を行い、乳酸エステル多価アルコール中間産物を得て、ここで乳酸とバイオベースのアルコールにおけるヒドロキシ基のモル比を4:1~8:1に制御するステップ、
(2)乳酸エステル多価アルコール中間産物に、エポキシ化脂肪酸エステルを分けて加え開環反応を行い、前記バイオベースの多価アルコールを得て、ここで、エポキシ化脂肪酸エステルの総添加量は総反応物質量の質量百分率の15%~20%を占めるステップ、である、ことを特徴とする請求項4に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項6】
前記エポキシ化脂肪酸エステルは、10から24の炭素原子を有する脂肪族鎖及び少なくとも一つのエチレンオキシド基の長鎖不飽和脂肪酸のエポキシ化物又はそのエステルであるか、
又は、10から24の炭素原子を有するエステル化脂肪酸鎖の長鎖不飽和脂肪酸油のエポキシ化物であり、前記エステル化脂肪酸鎖は少なくとも一つのエチレンオキシド基を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項7】
前記エポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ化脂肪酸油、エポキシ化された不飽和脂肪酸又は不飽和長鎖脂肪酸のエポキシ化エステルであり、
前記エポキシ化脂肪油は、エポキシ化大豆油、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化綿実油、エポキシ化ヘンプ油、エポキシ化トール油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化落花生油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化菜種油のうちの少なくとも一種であり、
前記エポキシ化された不飽和脂肪酸は、5,6-エポキシカプリン酸、9,10-エポキシリシノール酸、9,10-エポキシステアリン酸、4,5-エポキシカプリン酸、9,10-エポキシオクタデカン酸、9,10-エポキシ酪酸、8,9-エポキシ-1-ヒドロキシデカン酸、9,10-エポキシ-1-ヒドロキシオクタデカン酸のうちの少なくとも一種であり、
前記不飽和長鎖脂肪酸のエポキシ化エステルは、エポキシ化された不飽和脂肪酸のアルキルエステルである、ことを特徴とする請求項6に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項8】
ステップ(1)で、前記エステル化触媒の添加量は総反応物質量の0.2~0.8%であり、エステル化触媒は、有機チタン酸エステル類触媒、有機スズ類触媒、酸化カルシウム、酢酸亜鉛のうちのいずれか一種であり、前記有機チタン酸エステル類触媒は、チタン酸イソプロピル、チタン酸ブチルのうちのいずれか一種である、ことを特徴とする請求項5に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項9】
前記バイオベースの多価アルコールのヒドロキシの値は120~350mgKOH/gであり、バイオベースの含有量は90%~100%である、ことを特徴とする請求項5に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材。
【請求項10】
粒状肥料及び前記粒状肥料の表面を被覆するポリウレタン緩効性肥料被膜により構成されるポリウレタン緩効性肥料であって、前記ポリウレタン緩効性肥料被膜は、請求項1又は2に記載の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材が粒状肥料の表面で硬化し成膜して得られる、ことを特徴とするポリウレタン緩効性肥料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩効性肥料被膜材技術分野に属し、具体的には全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材とポリウレタン緩効性肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
農業科学技術の発展に伴い、農業生産で使用される肥料にも変化が生じ、緩効性肥料、液体肥料、気体肥料などの新型肥料が登場している。緩効性肥料は、従来の粒状肥料(作物専用の複合肥料又は尿素など)の外層が一層の特殊な緩効機能を備える膜で包まれており、作物の成長における養分への要求に応じて、養分の溶出速度と溶出量を制御し、養分の溶出速度と作物の要求を一致させるようにしたものである。このため、緩効性肥料は作物の成長に従い規則正しく同期的に有効養分を供給でき、よって肥料の養分の有効利用率が大幅に高まり、化学肥料の利用率を高める働きをする。また、肥料の被膜に吸水で圧力が生じ養分がゆっくりと溶出することで、栄養素の揮発及び雨水で濡れた時の養分の損失量を低減し、化学肥料の利用効率を高めることができる。
【0003】
緩効性肥料の被膜の緩効技術における核心は主として膜材料および対応する添加剤であり、被膜材の調合及び製造工程を調整することにより水蒸気の透過率、機械的強度、伸長率、耐摩耗性等の物理的な性能を調整することができる。調合の改良により異なる架橋密度及び材料結晶性能の材料が得られ、これにより膜の水蒸気及び肥料コア水溶液の透過率を制御し、養分の溶出を制御する目的を実現する。また、緩効性肥料の養分の溶出は温度、水分などの条件による制限を受けることもあるが、作物を植えた土壌などの環境条件及びその養分の要求に応じて溶出時間及び溶出ピークの調整を行うことができ、スマートで、エコな新型肥料である。
【0004】
農業生産様式の絶え間ない発展に伴い、田畑の作物の高収量・高効率な生産において緩効性肥料の使用は必要に迫られている。被膜技術は絶え間なく進歩しているが、やはりコストや製品のタイプで一定の制限を受けており、田畑の作物における大面積での使用を普及させることができない。被膜の主な材料には硫黄、ポリエチレン、アルキド樹脂及びポリウレタン(略称PU)がある。このうち、ポリウレタン被膜材はその他の被膜材と比較して強度が高く、弾性が良好で、耐熱性に優れ、孔径が細かく均一で、生分解しやすい等の利点を備えているため、近年ポリウレタン被膜材の研究開発・生産は緩効性肥料被膜材の主要な発展方向となっている。
【0005】
従来のポリウレタン被膜材は主として多価アルコールと粗MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)を反応させて得られる。多価アルコールはさらにポリエステル類とポリエーテル類に分けられ、ポリエステル類は二塩基酸又は酸無水物とグリコール又は多価アルコールとを反応させて製造され、ポリエーテル類は多価アルコールを開始剤として酸化エチレン、酸化プロピレンを開環重合反応させて得られる。ポリエーテル類ポリウレタン材はポリエステル類ポリウレタン材と比較して水に分解しにくく、生分解性が緩慢で、価格も高いため、緩効性肥料のポリウレタン材被膜においてはポリエステル材が優先的に選ばれている。
【0006】
例えば、特許文献1は緩効性肥料に用いられるバイオベースの芳香族ポリエステルポリオール及びその応用を開示しており、脂肪酸、ジエチレングリコール、グリセリン等を順番に反応釜に真空吸入し、反応釜の固体材料投入口からテレフタル酸、無水フタル酸及びトリメチロールプロパンを投入し、エステル化反応を行い、バイオベースの芳香族ポリエステルポリオール製品が製造される。バイオベースの芳香族ポリエステルポリオール:ヒマシ油:エポキシ化大豆油=90:5:5の比率に基づいて配合し混合タンクに投入して均一に撹拌し5~10分反応させ、温度を30℃前後に制御し、A原料を得る。粗MDIを混合タンクに投入し撹拌して同様に温度を30℃前後に制御し、B原料を得る。当該案におけるエポキシ化大豆油は可塑剤助剤として使用されるだけで、化学反応の過程には関与せず、且つ当該特許においてバイオベースの含有量は50%より低いと同時に、当該特許において使用される粗MDIは石油ベースのイソシアネートに属し、非バイオベースの原料であり、石油化学原料はコストが高く且つ資源が再生できない。このため全バイオベースの被膜材に属さず、コストが高く且つ再生不可能である。
【0007】
特許文献2はバイオベースのポリマーの被膜材及びその被膜緩効性肥料と製造方法を開示している。当該バイオベースのポリマー被膜材は以下の重量百分率で調合して製造される。ヒドロキシ基を含む構成成分50~70%及びイソシアネート30~50%、ヒドロキシ基を含む構成成分はヒドロキシ末端のプレポリマー50~90%、助剤2~10%、多価アルコール7~50%、低分子鎖延長剤1~10%により構成される。ヒドロキシ末端のプレポリマーはバイオマス液化生成物80~100%とイソシアネート0~20%を反応させることにより製造される。当該案において使用される硬化剤であるイソシアネートも石油ベース由来であり、コストが高く且つ資源が再生できず、全バイオベースの被膜材に属さず、且つ原料の種類が多く、製造方法が複雑で、コストが高い。
【0008】
バイオベース材料は、よく見られる農作物、その他の植物、穀物、豆類、わら、竹粉等を含む再生可能なバイオマスを原料として利用し、生物、化学及び物理等の方法により製造される新型材料である。バイオベース材料の登場に伴い、低炭素と環境保護のニーズを満たすと同時に市場の多様化する消費ニーズを満たせるようになったため、バイオベース材料は現在のカーボンニュートラルという時代背景において新たな選択肢となっている。バイオベース材料はグリーン・低炭素、省エネ・エコ、原料が再生可能といった多くの優位性を有し、優れた生分解特性を備え、また応用できる範囲が非常に広範である。
【0009】
このため、本発明は生体親和性が高く、生分解率が高く、環境を保護し安全性に優れ且つ低コストで大量生産に適する全バイオベースのポリウレタン緩効性被膜材の開発を目的としており、中国の緩効性肥料業界の発展にとって重要な意義を持つものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許第107383347B号公報
【特許文献2】中国特許第113105604B号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする技術的な課題は、全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材とポリウレタン緩効性肥料を提供することである。ポリウレタン緩効性肥料被膜材は、バイオベースの多価アルコールとバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物を架橋反応させることにより得られ、製品の生体親和性が高く、生分解率が高く、環境を保護し安全性に優れ、耐摩耗性及び耐圧性に優れ且つコストが低く、大量生産に適する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術的な課題を解決するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0013】
第1の態様として、本発明はまず全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材を提供するが、全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材の硬化剤であるイソシアネートは複合物である。
【0014】
バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物は、バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンモノマーとそのポリマーの複合物又は異なるバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンポリマーから成る複合物を含む。
【0015】
さらに、バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物の平均官能度は2.8~3.5の間に制御し、
NCO含有量を24%~30%に制御し、バイオ由来の原料の比率は65~71%である。
【0016】
本発明において、NCOは化学材料中のイソシアネート基を指し、その値は100gのサンプルに含有するイソシアネート(-NCO)基の質量を指す。
【0017】
バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンモノマー(即ちPDIモノマー)の化学構造式は以下の式(1)に示される。
【0018】
さらに、バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタンポリマー(PDIポリマー)は、バイオベースのPDI三量体及びその誘導体、バイオベースのPDI四量体及びその誘導体、並びにその他のバイオベースのPDI重合体及びその誘導体を含む。PDI三量体の化学構造式は以下の式(2)に示され、PDI四量体の化学構造式は以下の式(3)に示される。
【0019】
PDIポリマーはPDIモノマーと比べて網状の化学構造を備えるため、製造された被膜材は成膜後により大きな架橋密度を備えることができることを理解されたい。
【0020】
【0021】
さらに、バイオベースのPDIモノマーはバイオ原料をバイオ酵素作用により発酵させ1,5-ペンタンジアミンを得て、1,5-ペンタンジアミンのホスゲン化反応を経て製造され、バイオ原料はブドウ糖、リシンのうちの少なくとも一種から選ばれる。
【0022】
バイオベースのPDI三量体及びその誘導体、バイオベースのPDI四量体及びその誘導体、その他のバイオベースのPDI重合体及びその誘導体は、バイオベースのPDIモノマーが触媒により重合反応することで得られる。
【0023】
具体的には、三井化学が提供しているシリーズ製品であり、バイオベースのPDIモノマー製品StabioTM PDI、バイオベースのPDI三量体製品StabioTM PDI D-370N、D-376N、及びバイオベースのPDI四量体製品StabioTM PDI D-3725Nなどである。
【0024】
例としては、PDIとそのポリマーの複合物は、PDIモノマー製品StabioTM PDIとPDI三量体製品StabioTM PDI D-370Nの複合物、PDIモノマー製品StabioTM PDIとPDI三量体製品StabioTM PDI D-376Nの複合物、あるいはPDIモノマー製品StabioTM PDIとPDI四量体製品StabioTM PDI D-3725Nの複合物である。さらにPDIモノマー製品とその他の重合度の製品の複合物であってもよいことを理解されたい。
【0025】
例としては、PDIの異なるポリマーから成る複合物は、異なる官能度及び/又は粘度のPDI三量体製品もしくは四量体製品又はその他の重合体製品から成る複合物であってもよい。例えば、異なる型番の三量体製品StabioTM PDI D-370NとD-376Nから成る複合物などである。あるいは、異なる重合度のPDIポリマーから成る複合物であり、例えば、PDI三量体製品StabioTM PDI D-370N又はD-376NとPDI四量体製品StabioTM PDI D-3725Nから成る複合物などである。
【0026】
本発明において、複合物は2種類以上の製品の混合を含むことを理解されたい。
【0027】
さらに、全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材は、バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物とバイオベースの多価アルコールの架橋反応により合成される。
【0028】
バイオベースの多価アルコール中のヒドロキシ基とバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン複合物中のNCO基のモル比は0.98~1.10:1である。例としては、0.981:1、0.99:1、1:1、1.1:1を含むがこれらに限定されない。好適なのは1:1である。
【0029】
さらに、バイオベースの多価アルコールは、エポキシ化脂肪酸エステルとバイオベースの酸及びバイオベースのアルコールを開環重合して成るものである。
【0030】
バイオベースの酸は乳酸であり、バイオベースのアルコールは、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールのうちの少なくとも一種から選ばれる。
【0031】
さらに、バイオベースの多価アルコールの製造方法は以下のとおりである。
(1)まず乳酸、バイオベースのアルコール及びエステル化触媒でエステル化反応を行い、乳酸エステル多価アルコール中間産物を得る。ここで乳酸とバイオベースのアルコールにおけるヒドロキシ基のモル比は4:1~8:1に制御する。
(2)乳酸エステル多価アルコール中間産物に、エポキシ化脂肪酸エステルを分けて加え開環反応を行い、バイオベースの多価アルコールを得る。ここでエポキシ化脂肪酸エステルの総添加量は反応物質の総量の質量百分率の15%~20%を占める。
【0032】
さらに、バイオベースの多価アルコールの具体的な製造方法は以下のとおりである。
(1)まず乳酸、バイオベースのアルコール及びエステル化触媒を反応釜に加え、120~200℃に温度を上げてエステル化反応を行い、酸の値が20mgKOH/g以下に下がると、乳酸エステル多価アルコール中間産物が得られる。ここで乳酸とバイオベースのアルコールにおけるヒドロキシ基のモル比は4:1~8:1に制御する。
(2)140~150℃の乳酸エステル多価アルコール中間産物に、エポキシ化脂肪酸エステルを分けて加え開環反応を行う。ここでエポキシ化脂肪酸エステルの総添加量の百分率は総反応物(乳酸エステル多価アルコール中間産物とエポキシ化脂肪酸エステルの質量の和)の15%~20%を占める。反応過程は発熱反応のため、エポキシ化脂肪酸エステルの添加速度を制御することにより、反応温度を150~180℃に保ち、エポキシ化脂肪酸エステルの添加終了後、材料の温度を140℃に下げ、その後160~180℃に温度を上げて開環反応を行い0.5~0.8時間熟成し保温するが、好適なのは0.5時間である。再び加熱して220~260℃に温度を上げて保温し且つ酸の値を検出し、酸の値が5mgKOH/g以下に下がったら、200~230℃に温度を下げ、真空精留を開始し、真空度は-0.075~-0.095MPaに制御し、精留後の生産物の酸の値が2.0mgKOH/g以下になるまで行い、水分の質量分率が0.1%より低くなったら温度を下げて材料を出し、バイオベースの多価アルコールを得る。
【0033】
好ましくは、エポキシ化脂肪酸エステルの総添加量の質量百分率は総反応物の15.5%~18.5%を占め、例としては、15.5%、15.7%、15.9%、16%、16.5%、16.8%、16.9%、17%、17.2%、17.3%、17.5%、17.8%、18.0%、18.2%、18.5%を含むがこれらに限定されない。
【0034】
本発明のバイオベースの多価アルコールの製造方法では、まず低沸点の乳酸をポリオ―ルシステムに組み込み、十分に反応を行って、高いヒドロキシ含有量の状態下で乳酸の構造が十分に反応し、ポリオ―ルシステムに確実に組み込まれるようにしている。
【0035】
本発明において、乳酸、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等はいずれもバイオベースの製品である。
【0036】
上記製造方法における反応の原理は以下のとおりである。
【化2】
ヒドロキシ基とエポキシ基の開環反応;
【化3】
カルボキシル酸とエポキシ基の開環反応;
【化4】
ヒドロキシ基とカルボキシル基のエステル化反応
【0037】
さらに、ステップ(1)で、エステル化触媒の添加量は総反応物質量の0.2~0.8%である。
【0038】
さらに、ステップ(1)で、エステル化触媒は、有機チタン酸エステル類触媒、有機スズ類触媒、酸化カルシウム、酢酸亜鉛のうちのいずれか一種である。好ましくは、有機チタン酸エステル類触媒はチタン酸イソプロピル、チタン酸ブチルのうちのいずれか一種である。
【0039】
さらに、エポキシ化脂肪酸エステルは、10から24の炭素原子を有する脂肪族鎖及び少なくとも一つのエチレンオキシド基の長鎖不飽和脂肪酸のエポキシ化物又はそのエステルである。
【0040】
又は、10から24の炭素原子を有するエステル化脂肪酸鎖の長鎖不飽和脂肪酸油のエポキシ化物であり、エステル化脂肪酸鎖は少なくとも一つのエチレンオキシド基を含む。
【0041】
好ましくは、エポキシ化脂肪酸エステルのエポキシ値は6%より大きい。
【0042】
さらに、エポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ化脂肪酸油、エポキシ化された不飽和脂肪酸又は不飽和長鎖脂肪酸のエポキシ化エステルである。
【0043】
さらに、エポキシ化脂肪酸油は、エポキシ化大豆油、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化綿実油、エポキシ化ヘンプ油、エポキシ化トール油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化落花生油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化菜種油のうちの少なくとも一種である。
【0044】
さらに、エポキシ化された不飽和脂肪酸は、5,6-エポキシカプリン酸、9,10-エポキシリシノール酸、9,10-エポキシステアリン酸、4,5-エポキシカプリン酸、9,10-エポキシオクタデカン酸、9,10-エポキシ酪酸、8,9-エポキシ-1-ヒドロキシデカン酸、9,10-エポキシ-1-ヒドロキシオクタデカン酸のうちの少なくとも一種である。
【0045】
不飽和長鎖脂肪酸のエポキシ化エステルはエポキシ化された不飽和脂肪酸のアルキル基エステルである。例えば、9,10-エポキシステアリン酸のメチル基、エチル基、ブチル基、デシル基エステル、9,10,12,13-エポキシステアリン酸プロピル又は2-エチルヘキシルエステルなどである。
【0046】
分子構造はエポキシ油脂を例にすると、以下の式の構造で示される。
【化5】
【0047】
さらに、
バイオベースの多価アルコールのヒドロキシの値は120~350mgKOH/gであり、バイオベースの含有量は90%~100%である。
【0048】
第2の様態として、本発明はポリウレタン緩効性肥料をさらに提供するが、それは粒状肥料及び粒状肥料の表面を被覆するポリウレタン緩効性肥料被膜により構成され、その特徴として、ポリウレタン緩効性肥料被膜は上記の全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材が粒状肥料の表面で硬化し成膜して得られる。
【0049】
具体的には、粒状肥料は尿素、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム等の一般的な粒状肥料である。
【発明の効果】
【0050】
1、本発明のポリウレタン緩効性肥料被膜材に使用される硬化剤であるイソシアネートはバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)の複合物であり、従来の石油ベースのイソシアネート(MDI)と異なり、それはブドウ糖、リシン等のバイオ由来の原料で、且つバイオ原料の比率が65~71%のため、バイオベースの含有量が高い。ポリウレタン緩効性肥料被膜材をバイオマス製品にすることができ、優れた生体親和性、生分解率を備え、エコで安全性に優れている。
2、本発明のポリウレタン緩効性肥料被膜材で採用されるバイオベースの多価アルコールは、バイオベースの原材料であるエポキシ化脂肪酸エステル、乳酸、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールをエステル化、開環及び再エステル化することにより得るバイオベースの多価アルコールを採用しており、開環後の脂肪酸エステルの軟性と乳酸の剛性が結合し、ポリウレタン樹脂膜(即ち本発明の緩効性肥料被膜)に優位な機械的性能を提供し、その耐摩耗性及び耐圧性を大幅に高めている。さらに、ポリウレタン膜の抗菌及び防カビ性能を高めることができる。また、得られるバイオベースの多価アルコールのバイオ原料比率が90%~99%であり、バイオベースの含有量が高い。
3、本発明のポリウレタン緩効性肥料被膜材は、製造されたバイオベースの多価アルコール及びバイオベースのPDIイソシアネート複合物を迅速に架橋することにより成膜し、ポリウレタン膜材が直接粒状肥料の表面に被覆されてポリウレタン緩効性肥料が製造され、膜材のバイオ原料の比率は58.5%~70.29%に達し得る。
4、本発明が提供する全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材は、原料がすべてバイオベースの製品で、且つ製品を取得しやすい。製造された緩効性肥料被膜材は従来の石油ベースのMDI又はヒマシ油で生産される被膜材と比較して、バイオベースの含有量が高く、緩効性が優れており、低温脆性が低く、耐摩耗性が高く、製品の構造性能が安定している等の利点を備え、土壌に施用後安全でエコであり、分解性に優れ、環境汚染が非常に少ない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の実施例1における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【
図2】本発明の実施例2における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【
図3】本発明の実施例3における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【
図4】本発明の実施例4における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【
図5】本発明の実施例5における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【
図6】本発明の実施例6における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【
図7】本発明の対比例1における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【
図8】本発明の対比例2における異なる被膜率の被膜尿素の静水抽出による累積窒素溶出率の測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下で実施例を関連付けて発明をさらに説明するが、以下の実施例は本発明の技術的解決手段を明確に説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0053】
下記の実施例の緩効性肥料ポリウレタン被膜材の主な原料は、バイオベースの多価アルコール、バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン及びそのポリマー、粒状肥料である。
【0054】
1)バイオベースの多価アルコールの製造及び原料の由来
本発明が提供するバイオベースの多価アルコールは、エポキシ化脂肪酸エステルとバイオベースの酸及びバイオベースのアルコールを開環重合して成るものであり、具体的にエポキシ化脂肪酸エステルは、10から24の炭素原子を有する脂肪族鎖及び少なくとも一つのエチレンオキシド基の長鎖不飽和脂肪酸のエポキシ化物又はそのエステルである。例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化綿実油、エポキシ化ヘンプ油、エポキシ化トール油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化落花生油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化菜種油のうちの少なくとも一種を含むがこれらに限定されない。
【0055】
エポキシ化脂肪酸エステルは、10から24の炭素原子を有するエステル化脂肪酸鎖の長鎖不飽和脂肪酸油のエポキシ化物でもよく、エステル化脂肪酸鎖は少なくとも一つのエチレンオキシド基を含む。さらに、エポキシ化脂肪酸エステルはエポキシ化脂肪油、エポキシ化された不飽和脂肪酸又は不飽和長鎖脂肪酸のエポキシ化エステルである。例えば、エポキシ化された不飽和脂肪酸は、5,6-エポキシカプリン酸、9,10-エポキシリシノール酸、9,10-エポキシステアリン酸、4,5-エポキシカプリン酸、9,10-エポキシオクタデカン酸、9,10-エポキシ酪酸、8,9-エポキシ-1-ヒドロキシデカン酸、9,10-エポキシ-1-ヒドロキシオクタデカン酸のうちの少なくとも一種を含むがこれらに限定されない。不飽和長鎖脂肪酸のエポキシ化エステルは、エポキシ化された不飽和脂肪酸のアルキルエステルである。例えば、9,10-エポキシステアリン酸のメチル基、エチル基、ブチル基、デシル基エステル、9,10,12,13-エポキシステアリン酸プロピル又は2-エチルヘキシルエステル、及び上記エポキシ化された不飽和脂肪酸のアルキルエステルである。以下の実施例では具体的にエポキシ化大豆油を例として説明を行う。
【0056】
バイオベースの酸は乳酸である。バイオベースのアルコールはグリセリン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールのうちの少なくとも一種から選ばれ、バイオベースのグリセリンは、バイオディーゼル油の生産による副産物から製造されたグリセリンを精留して製造される。バイオベースのエチレングリコールは、バイオベースのエタノールから製造された酸化エチレンを水と開環反応させ、精留して製造される。バイオベースの1,3-プロパンジオールは、華峰集団(元アメリカデュポン)が提供するZemea及びSusterraプロパンジオールである。バイオベースの1,4-ブタンジオールは、山東蘭典生物科技股▲フン▼有限公司及び元利化学集団股▲フン▼有限公司が提供するものである。
【0057】
本発明において、採用されるバイオベースの酸及びバイオベースのアルコール等はいずれもバイオベースの製品である。以上の原材料はいずれも市販品である。
【0058】
2)バイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン及びそのポリマーの製造と選択
本発明のバイオベースの1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)モノマーは、ブドウ糖、リシン等のバイオ由来の原料をバイオ酵素作用により発酵して1,5-ペンタンジアミンを得た後、1,5-ペンタンジアミンをホスゲン化反応させることにより得られる1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)モノマーであり、PDIモノマーからさらに触媒によりPDI三量体、PDI四量体等の重合体製品が得られる。
【0059】
以下の実施例では、三井化学が提供するStabioTM PDI及びStabioTM D-370N、D-376NとD-3725N等のシリーズ製品をそのまま使用した。そのうちのStabioTM PDIはバイオベースのPDIモノマー製品であり、StabioTM D-370N、D-376NはバイオベースのPDI三量体製品であり、StabioTM D-3725NはバイオベースのPDI四量体製品である。
【0060】
3)粒状肥料
本発明が提供するポリウレタン緩効性肥料被膜材は、尿素、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム等の一般的な粒状肥料に適する。
【0061】
以下の実施例では、具体的に大粒の尿素を例として説明を行う。
【実施例0062】
(一)バイオベースの多価アルコールの製造
(1)まず16molの乳酸と1.2molのエチレングリコール、0.3molのグリセリン、0.5molの1,3-プロパンジオール及び総反応物の質量分率の千分の五の酢酸亜鉛をエステル化触媒として反応釜に加え、100℃に温度を上げエステル化反応を行い、酸の値が20mgKOH/g以下に下がると、乳酸エステル多価アルコール中間産物が得られた。
(2)100~120℃の乳酸エステル多価アルコール中間産物に、6.1%エポキシ値のエポキシ化大豆油を分けて加え開環反応を行い、エポキシ化大豆油の総添加量の質量百分率は総反応物(乳酸エステル多価アルコール中間産物とエポキシ化大豆油の質量の和)の18.02%を占め、反応釜の釜内の温度を100℃に保ち、調合中のエポキシ化大豆油の添加終了後、材料を140℃に下げ始め、再び160℃前後に温度を上げ開環反応を完全にし、再び160~180℃前後に温度を上げて開環反応させ、30分熟成し保温してから、再び加熱して温度を260℃に上げて保温し且つ酸の値を検出し、酸の値が5mgKOH/g以下に下がったら、230℃に温度を下げ、真空精留を開始し、真空度を-0.065~-0.095MPaに制御し、精留後の産物の酸の値が2.0mgKOH/g以下に下がるまで行い、水分の質量分率が0.1%より低くなったら温度を下げて材料を出し、バイオベースの多価アルコール製品を得た。
【0063】
中国国家標準GB/T12008.3-2009に従い、無水フタル酸法を採用して測定を行い、得られたバイオベースの多価アルコールのヒドロキシの値は124mgKOH/gであり、そのうちのバイオ原料の比率は約95%である。
【0064】
(二)全バイオベースのポリウレタン緩効性肥料被膜材及びポリウレタン緩効性肥料の製造
(1)三井製品のStabioTM D-370NとStabioTM D-376Nを質量比90:10で混合してバイオベースのPDIイソシアネート複合物を得た。
(2)粒径2.00mm~4.75mmの粒状尿素50キログラムを称取し高効率なコーティング機に入れ65℃前後に加熱し、バイオベースのPDIイソシアネート複合物中のNCO基とバイオベースの多価アルコール中のヒドロキシ基のモル比1:1に基づき、且つそれぞれ2.1%、2.7%、3.3%の被膜率に基づき、バイオベースのPDIイソシアネート複合物及びステップ(一)で製造されたバイオベースの多価アルコールを称取し、等しい重量で3つに分け、3回に分けて加えた。被膜率に対応して1回に加えたバイオベースのPDIイソシアネート複合物及びバイオベースの多価アルコールの量は下の表1に示す通りである。混合撹拌後、移動し続ける肥料表面に噴霧し、被膜材が迅速に成膜されて各粒状肥料の表面が被覆される。これを3回繰り返し、対応する被膜率に達するまで行った。3~5分硬化し、被膜材が尿素表面で硬化し緻密でしっかりしたポリウレタン被膜になるまで待った。最後に肥料の総質量の0.2%のパラフィンを加え粒状肥料同士がくっつくのを防止し、20℃まで冷却すると、全バイオベースのポリウレタン緩効性被膜尿素が得られた。サンプルS1と記入した。
【0065】
中国国家標準GB/T12008.3-2009に従い、無水フタル酸法を採用して測定を行い、得られたバイオベースの多価アルコールのヒドロキシの値は158mgKOH/gであり、そのうちのバイオ原料の比率は約99%である。