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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159382
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113630
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2023073910
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】加納 善明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB14
5H641GG03
5H641GG08
5H641HH03
5H641JA02
5H641JA09
5H641JA15
(57)【要約】
【課題】コギング推力を低減できる筒型リニアモータを提供する。
【解決手段】筒型リニアモータ1は、筒型リニアモータ1は、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周側に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備え、界磁Fは、円筒状であって外周に周方向に沿って形成されて軸方向に複数設けられる環状溝2cを有する軟磁性体のスリーブ2と、スリーブ2における各環状溝2cにそれぞれ収容される周方向で複数に分割された永久磁石3a,3bとを含み、電機子Eは、スリーブ2の内周面に摺接するガイド9を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の界磁と、
前記界磁の内周に配置されて前記界磁に対して軸方向へ移動可能な電機子とを備え、
前記界磁は、
円筒状であって、外周に周方向に沿って形成されて軸方向に複数設けられる環状溝を有する軟磁性体のスリーブと、
前記スリーブにおける各環状溝にそれぞれ収容される周方向で複数に分割された永久磁石とを含み、
前記電機子は、前記スリーブの内周面に摺接するガイドを有する
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
前記スリーブにおける環状溝の底部における軸方向の両端と、前記永久磁石の軸方向の両端の内周部との間に空隙が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にリニアモータは、N極とS極とが交互に現れるように複数の永久磁石を配して形成される界磁と、界磁に対向して界磁の長手方向に移動可能な電機子とを備えて構成される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来のリニアモータにおける界磁は、電機子の移動方向に沿って互いに両端を当接させながら積層した多数の永久磁石をバックヨークの電機子側を向く面に固定することによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-063201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなリニアモータでは、前述したように多数の永久磁石を積層して界磁が構成されており、個々の永久磁石の幅寸法に誤差があるため、永久磁石を積層していくと前記誤差が積み重なって、各永久磁石を設計値通りに配置することが難しい。
【0006】
よって、従来のリニアモータでは、界磁における永久磁石の配置が設計値から狂ってしまい電機子を駆動する際に発生するコギング推力が大きくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、コギング推力を低減できる筒型リニアモータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、筒状の界磁と、界磁の内周に配置されて界磁に対して軸方向へ移動可能な電機子とを備え、界磁は、円筒状であって、外周に周方向に沿って形成されて軸方向に複数設けられる環状溝を有する軟磁性体のスリーブと、スリーブにおける各環状溝にそれぞれ収容される周方向で複数に分割された永久磁石とを含み、電機子は、スリーブの内周面に摺接するガイドを備えている。
【0009】
このように構成された筒型リニアモータでは、スリーブの外周に形成された環状溝内に永久磁石が装着されるので、スリーブの環状溝の位置と寸法とを精度良く管理しておけば、永久磁石の軸方向長さに寸法誤差があっても、永久磁石の寸法誤差がスリーブの軸方向で積算されることが無く、個々の永久磁石のスリーブに対する設置誤差は環状溝の軸方向の範囲で収まる。また、電機子にスリーブの内周を摺動させるので、電機子の軸方向への移動の案内に別途ガイドする機構を設けずに済むという利点もある。
【0010】
また、本実施の形態の筒型リニアモータでは、スリーブにおける環状溝の底部における軸方向の両端と、永久磁石の軸方向の両端の内周部との間に空隙が設けられてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、環状溝の側壁と永久磁石の軸方向の端部とが面接触できるようになり、スリーブに対して永久磁石を適正な位置に配置でき、電機子の駆動時のコギング推力をより一層低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の筒型リニアモータによれば、コギング推力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
図2】一実施の形態の筒型リニアモータの界磁の拡大断面である。
図3】一実施の形態の一変形例における筒型リニアモータの界磁の拡大断面図である。
図4】一実施の形態の他の変形例における筒型リニアモータの界磁の断面図である。
図5】一実施の形態の他の変形例における筒型リニアモータのスリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備えて構成されている。
【0014】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。本実施の形態では、界磁Fは、円筒状であって、外周に周方向に沿って形成されて軸方向に複数設けられる環状溝2cを有する軟磁性体のスリーブ2と、スリーブ2における各環状溝2cにそれぞれ収容される周方向で複数に分割された永久磁石3a,3bとを備えている。
【0015】
スリーブ2は、図1および図2に示すように、軟磁性体で形成される円筒部2aと、円筒部2aの外周に周方向に沿って突出して軸方向に間隔を空けて設けられる軟磁性体で形成される複数の凸部2bと、円筒部2aの外周であって凸部2b,2b間に周方向に沿って形成される空隙で形成されて軸方向に複数設けられる環状溝2cとを備えている。
【0016】
スリーブ2は、1つの軟磁性体の材料を加工することで形成されており、円筒部2aと凸部2bとが一体不可分となっている。また、図2に示すように、スリーブ2における環状溝2cの底部の軸方向の両端、つまり、円筒部2aの外周であって凸部2bの軸方向の両側の根元部分には、フィレット加工が施してあり、凸部2bの根元から円筒部2aの外周にかけて湾曲面2dが形成されている。なお、各環状溝2cの軸方向幅は、本実施の形態では全て等しく、凸部2bの軸方向幅よりも長い。また、環状溝2cは、スリーブ2の外周に等間隔に設けられている。なお、本実施の形態では、スリーブ2の両端にも凸部2bを設けているが、スリーブ2の両端の終端を環状溝2cとして凸部2bを両端に設けなくてもよい。
【0017】
永久磁石3a,3bは、それぞれ、円筒を周方向で複数に分割して得られた形状の磁石ピースを組み合わせることによって形成されている。本実施の形態では、磁石ピースは、軸方向から見て半円筒形状となっていて、2つの磁石ピースの周方向の両端同士を向かい合わせて組み合わせることにより円筒状の永久磁石3a,3bを形成している。このように永久磁石3a,3bが周方向で分割された磁石ピースによって形成されているので、スリーブ2の外周に設けられた環状溝2cに無理なく容易に装着することができる。
【0018】
さらに、各永久磁石3a,3bの両端の内周は面取りされて傾斜面3a1,3b1が設けられている。また、永久磁石3a,3bの軸方向幅は、環状溝2cの軸方向幅とほぼ同じであるが僅かに小さく、永久磁石3a,3bを環状溝2c内に嵌合可能となっている。
【0019】
さらに、永久磁石3a,3bの着磁方向は、軸方向に着磁されており、軸方向の一端がN極となっており、軸方向の他端がS極となっている。永久磁石3a,3bのS極とN極の配置は互いに逆向きとなっており、スリーブ2の環状溝2cに交互に設置される。
【0020】
このように構成された永久磁石3a,3bをスリーブ2の環状溝2c内に交互に装着すると、隣り合う永久磁石3aと永久磁石3bとが凸部2bを挟んでN極同士とS極同士とを対向させる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3aの軸方向中央から隣の永久磁石3bの軸方向中央まで1つの磁極を形成しており、N極同士を向かい合わせにしている永久磁石3a,3bのN極とN極同士で挟まれた凸部2bとが1つのN極として機能し、S極同士を向かい合わせにしている永久磁石3a,3bのS極とS極同士で挟まれた凸部2bとが1つのS極として機能する。このように構成された界磁Fでは、永久磁石3a,3bの内周側に軟磁性体で形成されるスリーブ2の円筒部2aが配置されるためN極からS極へ向かう磁力線がスリーブ2の内周側に偏って多く通るため、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界を大きくできる。
【0021】
また、環状溝2cの軸方向の両端の底部(円筒部2aの外周)と側壁(凸部2bの根元)の角部にフィレット加工によって湾曲面2dが形成されており、永久磁石3a,3bの両端の内周には面取りによって形成された傾斜面3a1,3b1が設けられているので、図2に示すように、環状溝2c内に永久磁石3a,3bを装着すると、環状溝2cの湾曲面2dと永久磁石3a,3bの傾斜面3a1,3b1とが干渉しないように向き合って両者の間に隙間が形成され、永久磁石3a,3bの端面と凸部2bの側面とが面接触できる。
【0022】
円筒状の母材の外周を切削して環状溝2cを形成すると、環状溝2cの底部の軸方向の両端の角部を直角に加工するのは難しく、何ら手立てしないと、当該角部に永久磁石3a,3bの内周の角部が乗り上げてしまって、永久磁石3a,3bが環状溝2cの底部である円筒部2aの外周から浮き上がったり、凸部2bの側壁と永久磁石3a,3bの端面とが面接触できなったりして、環状溝2cに対する永久磁石3a,3bの位置が各環状溝2cで一定しなくなる場合がある。
【0023】
これに対して、前述したように、フィレット加工を行うことで湾曲面2dを形成し、永久磁石3a,3bの両端の内周部に面取りを行って湾曲面2dとの干渉を回避するため傾斜面3a1,3b1を設けると、環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部に空隙Gが形成されて、環状溝2c内に永久磁石3a,3bを装着すると、環状溝2cの側壁となる凸部2bによって永久磁石3a,3bを位置決めできる。環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部に空隙Gが形成されると、凸部2bの側壁と永久磁石3a,3bの端面とが面接触できるので、電機子Eの駆動時に受ける軸方向の荷重によって永久磁石3a,3bの一部に応力が集中するのを回避できる。また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bを環状溝2cに接着剤を利用して定着させるようにしており、上記のように環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部に空隙Gが形成されると、余分な接着剤が前記空隙Gに逃げて収容されるため、永久磁石3a,3bが接着剤の存在によって環状溝2c内で適正な位置に配置されなくなるのを防止できる。ただし、環状溝2cの底部の両端のフィレット加工、永久磁石3a,3bの両端の内周部の面取り加工は、不要であれば省略してもよい。
【0024】
なお、図3に示すように、環状溝2cの軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部に空隙Gを設けるには、環状溝2cの底部の軸方向の両端となる円筒部2aの凸部2bに近接する部分を全周に亘って削って溝を設ける加工を行ってもよく、この場合、永久磁石3a,3bの両端の内周部に面取りを設けなくてもよい。また、環状溝2cの軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部に空隙Gを設ける場合、永久磁石3a,3bの両端の内周部に面取りによって傾斜面3a1,3b1或いは湾曲面を設けることにより、環状溝2cの底部の軸方向の両端の角部についてフィレット加工を設けなくても、環状溝2cの軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部に空隙Gが形成されて永久磁石3a,3bの端面と凸部2bの側面とが面接触できる場合には、前記フィレット加工を省略してもよい。
【0025】
このように構成された界磁Fは、非磁性体で形成された筒状のバレル4内に収容される。バレル4および界磁Fの図1中左端はキャップ5によって閉塞されており、バレル4および界磁Fの図1中右端は環状のヘッドキャップ6によって閉塞されている。なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、界磁Fが非磁性体のバレル4によって覆われており、スリーブ2の外周に装着された永久磁石3a,3bの保護と永久磁石3a,3bのスリーブ2からの飛散を防止できるとともに、外部の鉄分を含んだ塵等が界磁Fによって吸引されるのをバレル4によって抑制できる。
【0026】
つづいて、電機子Eは、筒状のコア7と、コア7に装着される巻線8と、スリーブ2の内周面に摺接するガイド9とを備えて構成されて、界磁F内に軸方向に移動自在に挿入されている。つまり、本実施の形態では、電機子Eは、界磁Fの内周側に配置されており、界磁Fに対して軸方向に相対移動できる。
【0027】
コア7は、本実施の形態では、円筒状のヨーク7aと、環状であってヨーク7aの界磁側となる外周に周方向に沿ってかつ軸方向に間隔を空けて設けられる軸方向の断面が矩形状の複数のティース7bと、ティース7b,7b間の空隙で形成されて巻線8が装着されるスロット7cとを備えて構成されている。
【0028】
ヨーク7aは、前述の通り円筒状であって、その横断面積はティース7bにおける磁路断面積以上となるように肉厚が確保されている。本実施の形態では、図1および図2に示すように、ヨーク7aの外周に7個のティース7bが軸方向に等間隔に並べて設けられており、コア7の界磁F側となる外周側であって、ティース7b,7b間に巻線8が装着される環状溝でなるスロット7cが形成されている。なお、本実施の形態では、ティース7bの断面形状は、矩形となっているが、基端側の磁路断面積を大きく確保できるように外周となる先端側の幅よりも内周となる基端側の幅を大きくした台形となっていてもよい。
【0029】
本実施の形態では、図1中で隣り合うティース7b,7b同士の間には、環状溝でなるスロット7cが合計で6個設けられている。スロット7cは、コア7の周方向に沿って設けられており、コア7の外周に軸方向に等ピッチで並べて設けられている。
【0030】
そして、このスロット7cには、巻線8が巻き回されて装着されている。巻線8は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。各相の巻線8は、6個のスロット7cに界磁Fの磁極配置に応じて適した配置となるように装着される。
【0031】
このように構成された電機子Eは、出力軸である非磁性体で形成されたロッド10の先端の外周に装着され、ロッド10とともに界磁F内に移動自在に挿入される。
【0032】
ロッド10は、界磁Fの図1中右端に取り付けられたヘッドキャップ6内を通して筒型リニアモータ1外へ突出している。また、ロッド10のコア7の図1中左右には界磁Fにおけるスリーブ2の内周面に摺接する環状のウェアリング9aを外周に備えた環状のガイド9,9が装着されている。
【0033】
このようにコア7は、軸方向の両側からガイド9,9によって挟持されてロッド10に固定されている。電機子Eは、ガイド9,9を備えており、スリーブ2の内周面にガイド9,9が摺動自在に挿入されているので、界磁Fに対して軸ぶれせず、界磁Fに干渉することなく軸方向に移動できる。このように、電機子Eは、スリーブ2によって、界磁Fに対する軸方向への移動が案内される。
【0034】
また、軟磁性体で形成されたスリーブ2は、電機子Eとの間の磁気的なギャップを小さくして界磁Fが電機子Eへ作用させる磁界を大きくでき、ガイド9,9と協働してコア7の軸方向移動を案内する役割を果たしている。また、コア7の外径は、スリーブ2の円筒部2aの内径よりも小さく、スリーブ2に干渉することはなく、筒型リニアモータ1は円滑に伸縮できる。
【0035】
なお、ロッド10は、図示はしないが、筒状とされており、ロッド10内に通される図外の電線を通じて筒型リニアモータ1の外方に設置される外部電源から巻線8へ電力供給できる。
【0036】
そして、たとえば、巻線8の界磁Fに対する電気角をセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線8の電流量を制御すれば、筒型リニアモータ1における推力と電機子Eの移動方向とを制御できる。なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子Eと界磁Fとを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線8への通電、あるいは、巻線8に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
【0037】
以上のように構成された筒型リニアモータ1は、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周側に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備え、界磁Fは、円筒状であって外周に周方向に沿って形成されて軸方向に複数設けられる環状溝2cを有する軟磁性体のスリーブ2と、スリーブ2における各環状溝2cにそれぞれ収容される周方向で複数に分割された永久磁石3a,3bとを含み、電機子Eは、スリーブ2の内周面に摺接するガイド9を備えている。
【0038】
このように構成された筒型リニアモータ1では、スリーブ2の外周に形成された環状溝2c内に永久磁石3a,3bが装着されるので、スリーブ2の環状溝2cの位置と寸法とを精度よく管理しておけば、永久磁石3a,3bの軸方向長さに寸法誤差があっても、永久磁石3a,3bの寸法誤差がスリーブ2の軸方向で積算されることが無く、個々の永久磁石3a,3bのスリーブ2に対する設置誤差は環状溝2cの軸方向の範囲で収まる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、スリーブ2に対する永久磁石3a,3bの設置位置の設計値に対する軸方向のずれが低減されるので、電機子Eの駆動時のコギング推力を低減できる。また、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、スリーブ2の内周面に摺接するガイド9を電機子Eが備えているので、電機子Eがスリーブ2に対して径方向へ偏心することが無く、永久磁石3a,3bと電機子Eとの径方向の相対位置が安定して、安定した推力を発生できる。以上より、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、コギング推力を低減しつつ安定した推力の発揮が可能となる。
【0039】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bと電機子Eとの間に軟磁性体のスリーブ2の円筒部2aが配置されるとともに、コア7をスリーブ2の至近に配置してもガイド9によってコア7がスリーブ2に干渉するのを防止できるから、永久磁石3a,3bが発生する磁界を効率よく電機子Eに作用させ得るとともに永久磁石3a,3bとコア7との間のギャップを極小さくできるので、電機子Eに大きな磁界を作用させ得る。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、界磁Fの内側の電機子Eに大きな磁界を作用させるとともに、電機子Eと界磁Fとの間の径方向の磁気的なエアギャップをより一層狭くできるので推力を大きくでき、その結果、質量推力密度を向上できる。
【0040】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、界磁Fのスリーブ2に電機子Eのガイド9を摺接させて、電機子Eの軸方向への移動を案内するので、電機子Eの軸方向への移動の案内に別途ガイドする機構を設けずに済む。
【0041】
なお、ガイド9が対向しない範囲であれば、スリーブ2の軸方向の両側或いは片側に軟磁性体で形成される円筒状であって外周に永久磁石が装着される環状溝を備えて界磁の一部を構成する補助界磁を設けてもよい。
【0042】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、スリーブ2における環状溝2cの底部における軸方向の両端と、永久磁石3a,3bの軸方向の両端の内周部との間に空隙Gが設けられている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部に空隙Gが形成されるので、環状溝2cの側壁となる凸部2bと永久磁石3a,3bの軸方向の端部とが面接触できるようになり、永久磁石3a,3bを環状溝2c内で凸部2bを利用して位置決めできる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、永久磁石3a,3bを環状溝2c内で狙った位置に位置決めできるので、スリーブ2に対して永久磁石3a,3bを適正な位置に配置でき、電機子Eの駆動時のコギング推力をより一層低減できる。さらに、このように構成された筒型リニアモータ1では、凸部2bの側壁と永久磁石3a,3bの端面とが面接触できるので、電機子Eの駆動時に受ける軸方向の荷重によって永久磁石3a,3bの一部に応力が集中するのを回避できる。加えて、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bを環状溝2cに接着剤を利用して定着させる場合、余分な接着剤が前記空隙Gに逃げて収容されるため、永久磁石3a,3bが接着剤の存在によって環状溝2c内で適正な位置に配置されなくなるのを防止できる。
【0043】
また、永久磁石3a,3bは、周方向で半分に分割された磁石ピースを円筒状に組み合わせて形成されるが、周方向で3分割以上に分割された磁石ピースで形成されてもよいし、周方向に加えて軸方向にも分割された磁石ピースで形成されてもよい。さらに、永久磁石3a,3bは、軸方向で着磁されているが、径方向で着磁されて、スリーブ2の内周側に軸方向でN極とS極とが現れるようにしてもよい。
【0044】
また、実施の形態の筒型リニアモータ1では、スリーブ2が円筒部2aと円筒部2aの外周に凸部2bを一体に備える構造を採用しているが、軟磁性体で形成されてはいても円筒部2a自体にも磁気抵抗があるため、円筒部2aの径方向の肉厚が薄ければ薄いほど電機子Eへ大きな磁界を作用させ得る。その一方で、スリーブ2は電機子Eを駆動する際に軸方向に荷重を受けるため、円筒部2aの肉厚を薄くすればするほどスリーブ2の強度が低下して界磁Fを保持する部材としての利用が難しくなる。そこで、図4および図5に示すように、円筒部2aの外周に軸方向に沿って凸部2bと交差するリブ2eを設けて、円筒部2aの径方向の肉厚を薄肉化して電機子Eへ作用させる磁界を大きくしつつも、円筒部2aの強度の低下を抑制するようにしてもよい。このようにスリーブ2における円筒部2aの外周にリブ2eを設けた筒型リニアモータでは、円筒部2aの強度を確保しつつ肉厚を薄くできるから、電機子Eにより大きな磁界を作用させてより一層の推力の向上を達成できる。
【0045】
リブ2eは、図示したところでは、円筒部2aの周方向で120度の位相差をもって3つ設けられており、凸部2bと同様に円筒部2aに一体不可分に設けられており、凸部2bと交差する部分で凸部2bに接続されている。また、図示したところでは、リブ2eの径方向の肉厚は、凸部2bの径方向の肉厚と同じとされているが、スリーブ2の強度を確保できる限りにおいて凸部2bの肉厚よりも薄くてもよいし、厚くてもよい。さらに、円筒部2aの周方向においてリブ2eの幅についてもスリーブ2の強度を確保できる限りにおいて任意に設定できる。また、リブ2eの設置数および断面形状についても、円筒部2aの強度を確保できる限りにおいて任意に設定できる。
【0046】
このように、スリーブ2の外周にリブ2eを設けると、円筒部2aの外周にリブ2eと凸部2bとで仕切られる円弧状の溝に永久磁石3a,3bを収容することになるか、或いは、リブ2eの径方向の肉厚が薄い場合には、永久磁石3a,3bの内周にリブ2eの収容を可能とする溝を設けてスリーブ2の外周に永久磁石3a,3bを装着できるようにしてもよい。よって、リブ2eを設ける場合、永久磁石3a,3bがリブ2eを避け得るように、永久磁石3a,3bを周方向で分割して構成してもよいし、永久磁石3a,3bの内周形状を設定してもよい。
【0047】
円筒部2aに対して凸部2bおよびリブ2eを一体に備えるスリーブ2の製造には、たとえば、3Dプリンタを利用すればよい。また、円筒部2aの外周に凸部2bとリブ2eとで仕切られる円弧状の溝をスリーブ2の外周に設ければよいので、転削加工によってスリーブ2の外周に凸部2bとリブ2eとを設けてもよい。
【0048】
さらに、図示したところでは、各リブ2eは、円筒部2aの外周に軸方向に沿って凸部2bに交差しており、スリーブ2を軸方向から見て一直線に設置されているが、凸部2b,2b間に架け渡されていれば円筒部2aの強度を向上できるので、凸部2b,2b間のリブ2eとその隣の凸部2b,2b間のリブ2eとがスリーブ2に対して周方向でずれた位置に設けられてもよい。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・筒型リニアモータ、2・・・スリーブ、2c・・・環状溝、3a,3b・・・永久磁石、9・・・ガイド、E・・・電機子、F・・・界磁、G・・・空隙
図1
図2
図3
図4
図5